説明

ポリマ電子装置を持つころがり軸受

本発明は、軸受に作用する物理的量を検出するセンサ、及びセンサ出力信号及びこれから誘導される特性値を評価しかつ/又は軸受外にある電気又は電子装置へ伝送する導体条片及び電子部品を有するこりがり軸受に関する。そのためセンサ、導体条片及び電子部品は、測定データ検出及び/又は測定データ処理システムを形成して、少なくとも1つの軸受部材に設けられている。このような測定軸受の製造費を減少しかつ製造及び測定の品質を改善するため、センサ、導体条片及び/又は電子部品が少なくとも1つの導体又は半導体有機材料から形成されるように考慮されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ころがり軸受であって、軸受に作用する物理的量を検出するセンサ、及びセンサ出力信号又はそれから誘導される特性値を評価しかつ/又は軸受外にある電気又は電子装置へ伝送する電子部品を有し、センサ、導体条片及び電子部品が、測定データ検出及び/又は測定データ処理システムを形成して少なくとも1つの軸受部材上に設けられているものに関する。更に本発明は、請求項22及び32の上位概念に記載のこれに関する製造方法及び製造機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10136438号明細書から、ころがり軸受にあるセンサ装置が公知であり、軸受に作用する物理的量がこのセンサ装置により検出可能である。このセンサ装置では、ころがり軸受の軸受メタルに作用する力及びモーメントが検出されて、機械的応力又は軸受メタルのその他の物理的影響が、軸受メタルに設けられるセンサ素子及び場合によってはそれと統合される電子部材によって検出される。センサはひずみ計として構成され、なるべく静止している軸受メタルの周囲溝に取付けられ、この軸受メタルはころがり軸受の内側メタル又は外側メタルとすることができる。
【0003】
この刊行物によれば、担体材料として作用する基板上にセンサ装置を設けることができる。センサの先に述べたひずみ計は、更に絶縁層を介して、例えば板片のような不撓金属中間担体上に設けられている。回路担体として構成される担体材料は、この刊行物によれば、ころがり軸受の適当な個所に溶着または圧入可能である。
【0004】
更にこのドイツ連邦共和国特許出願公開第10136438号明細書から、金属中間担体上に、軸線方向及び接線方向に測定するひずみ計を全ブリッジ回路又は半ブリッジ回路で設けることが公知である。更にこの公知のブリッジ回路は電子部品とも接続され、これらの電子部品により、信号評価及び別の測定個所又は他の評価回路又はコネクタへの信号伝送が可能である。
【0005】
この公知の測定軸受における信号伝送は、ディジタルバス又はアナログバスを介して逐次行うことができる。従ってこの機械電子装置は、ころがり軸受への電子信号処理用電子部品の付加的な直接対応を可能にするので、例えばディジタル出力信号を発生し、センサ装置を例えば自動車にあるバスシステムへ直接接続することができる。
【0006】
更にドイツ連邦共和国特許出願公開第4218949号明細書から力測定軸受が公知であり、センサが力測定箔の形に形成され、軸受部材の周囲溝へ挿入されている。これらの箔センサは積層された2つのポリマ層から成り、一方の層は櫛状にかみ合う電極で被覆され、他方の層に抵抗材料が塗布されている。センサが力の作用を受けると、抵抗材料が電極を多く又は少なく並列に閉じるので、圧力荷重の増大を共に電気抵抗が減少する。圧力に関係するこの抵抗変化は、それから評価電子装置により精確に求めることができる。
【0007】
更にまだ公開されてないドイツ連邦共和国特許出願公開第10304592.9号明細書により、測定データ検出及び測定データ処理システムが公知であり、少なくとも1つの共通な可撓担体箔上に設けられて軸受の部材に取付けられるセンサ、導体条片及びマイクロコンピュータから成っている。
【0008】
このころがり軸受では、センサ及び電子部品は、可撓担体箔と共に、例えば固定外レースなるべくその外側の環状溝に取付けられている。
【0009】
この測定データ検出及び測定データ処理システムにおいて可撓担体箔上に集積されているセンサに関して、これらは、少なくとも軸受に支持される物体の回転数及び/又は回転方向、軸受に作用する半径方向力及び/又は軸線方向力、力方向、軸受騒音、軸受温度及び場合によっては生じる不平衡の検出のために構成されている。
【0010】
この従来技術によれば、電子部品は、例えば演算増幅器、コンデンサ、抵抗のような個々の分離した電子部品として、又はセンサと接続されかつ可撓担体箔上の信号伝送導線を介して互いに接続されている非常に小さい複合マイクロコンピュータとしても構成されることができる。センサ、センサ導線及び/又はデータ導線及び電子部品は、例えば薄膜法(PVD法)により又はスパッタリング技術により担体箔に塗布され、非導電性弾性覆い材料により覆われている。
【0011】
最後にドイツ連邦共和国特許出願公開第4231610号明細書、刊行物として米国の特許出願第2003/59975号、第2003/59984号、第2003/59987号及び第2003/60038号から、電子構造体を製造するための有機材料を使用し、これを例えば液体噴射圧力(インクジェット印刷)により担体基板に塗布することが公知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、電気部材及び部品の製造及び配置に関して今までより安価に質的によくかつ融通性のあるように製造可能な最初にあげた種類の測定軸受を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題の解決策は、測定軸受に対しては請求項1から、このような測定軸受の製造方法及びこれに関する製造機械に対しては請求項22及び32から明らかになる。本発明の有利な構成及び展開は従属請求項からわかる。
【0014】
従ってころがり軸受は、軸受に作用する物理的量を検出するセンサ、及びセンサ出力信号又はそれから誘導される特性値を評価しかつ/又は軸受外にある電気又は電子装置へ伝送する電子部品を備え、センサ、導体条片及び電子部品が、測定データ検出及び/又は測定データ処理システムを形成して少なくとも1つの軸受部材上に設けられている。さて本発明に関して特に重要なことは、センサ、導体条片及び/又は電子部品が、側方を構造化される少なくとも1つの導体又は半導体有機材料又はその先駆物質から構成されていることである。
【0015】
本発明の好ましい構成では、導体又は半導体有機材料又はその先駆物質が、印刷技術及び/又は被覆材料により、液相又は固相から少なくとも1つの軸受部材上に印刷されている。
【0016】
この構成により、このような測定軸受が、非常に速くかつ安価に、また生産の可変性及び測定精度に関して非常に有利に製造可能である。これは、センサ、導体条片及び/又はその他の電気部品が、少なくとも1つの導体又は半導体有機材料から、印刷、液相及び/又は固相被覆法により、関係する軸受部材の場合によっては湾曲した表面にも直接塗布可能であり、そのために費用のかかる高価な真空又は担体ガス製造過程及び/又は付加的な接着剤その他の取付け手段の使用が必要でないことに、帰せられる。
【0017】
この簡単化された製造可能性のほかに、センサと軸受部材との直接接触が、接着される軸受センサ装置に対して、更に測定精度を改善する。
【0018】
信号伝送導線、電気コイル及び電気抵抗を製造するため、ドーピングされたポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン又はポリエチレンジオキシチオフェンのような真性の導体又は半導体有機材料が好ましい。
【0019】
これらのポリマは必ずしも溶解性ポリマでなくてもよい。多くの真性導電ポリマは、溶液からではなくコロイド分散から沈殿される。更に前記有機印刷材料の溶液又は分散した先駆物質相から適当な材料の沈殿も考えられ、これらの材料は後処理例えば加熱又は紫外線照射により半導体又は導体ポリマ相へ移行せしめられ、最終状態でもはや必ずしも溶性でなくてもよい。
【0020】
更に導体又は半導体構造体を、熱伝達法により中間担体から電子装置の担体基板へ転写することも可能である。
【0021】
別の製造方法は、導体又は半導体構造体を、いわゆる「レーザ誘導熱結像」方法(米国の特許第5,521,035号、第6,114,688号、第6,242,140号及び第6,194,119号明細書に記載されている)により、軸受部材に塗布することである。この場合材料は、固体の状態で担体箔から側方を構造化されて軸受部材へ転写される。
【0022】
本発明の別の構成では、信号伝送導線、電気コイル及び電気抵抗が、黒鉛又は金属を満たされたポリマペーストのような外因性の導体又は半導体有機材料から形成されている。
【0023】
本発明による測定軸受の展開において、電界効果トランジスタ及び/又はダイオードが、その半導体構造に関して、ポリ(3−アルキルーチオフェン)、α、ω−ジヘキシルセキシチオフェン、アルキル−ナフタリンビスイミド及びフルオルアルキル−ナフタリンビスイミドから成り、誘導体がポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルフェノール)又はポリイミドから形成されている。
【0024】
測定軸受に統合されるセンサ(特に力及び/又は伸びセンサ)に関して、これらのセンサが、ピエゾ抵抗効果形又は圧電効果形センサとして構成されていると、有利とみなされる。圧電センサの構成のために、ポリビニリデンフルオリド又はビニリデンフルオリドとトリフルオルエチレンとのコポリマから成る成分を有利に使用することができる。
【0025】
別の変形例では、圧電効果形センサ又は同様な電子部品が、ポリマ層にある無機微結晶の組成物から成り、圧電成分として、ポリマにジルコン酸−チタン酸鉛又はBaTiOが含まれている。
【0026】
本発明により構成される測定軸受では、コンデンサが例えば真性又は外因性ポリマペースト又はポリマ誘電体から成っている。
【0027】
このような測定ころがり軸受では、本発明の構成において、センサ、導体条片及び電子部品が、一般に内レース又は外レースに設けられている。センサ及び電子部品は、静止した内レースの外側又は内側にある環状溝のような凹所に置かれるのがよい。
【0028】
本発明により構成される測定軸受は、軸受に支持される物体の回転数及び/又は回転方向、軸受に作用する半径方向力及び軸線方向力、力の方向、軸受騒音又はそこで測定可能な振動、軸受温度、及び場合によっては生じる不平衡を検出するセンサをなるべく含んでいる。
【0029】
更に少なくとも1つの導体又は半導体有機材料から成る電子部品が、なるべく同じ軸受部材上にある信号伝送導線を介して他の電子部品及び/又はセンサと接続されている少なくとも1つのマイクロコンピュータを含むか又は形成しているように、測定軸受を構成することができる。
【0030】
非常に大きいセンサデータ量の検出及び処理のため、及び/又はこれらのデータの処理のために必要な場合、複数のマイクロコンピュータを1つ又は別の軸受部材上に設けることもできる。その場合これらのマイクロコンピュータは、デイジタルデータ又はアナログデータ又は信号を交換するため、なるべく導体又は半導体有機材料から成るデータ導線を介して互いに接続されている。
【0031】
センサ及び/又は電子部品により検出されるか又は形成される値を伝送するため、これらのセンサ及び/又は電子部品が、軸受及び/又は軸受と結合される部材の現在の物理的状態についての測定信号生データ及び/又は処理された情報を伝送するため、軸受外にある少なくとも1つの別個の表示装置、データ記憶装置及び/又はデータ処理装置との少なくとも1つの接続個所を持っている。
【0032】
本発明により構成される測定軸受の他の好ましい実施形態では、センサ、センサ導線、データ導線、電子部品又はマイクロコンピュータが、共通な製造プロセスで、1つ又は複数の軸受部材上に塗布されているので、これらがなるべく導体及び/又は半導体有機材料から成る閉じた面構成体を形成している。
【0033】
本発明の構成では、センサ、センサ導線、データ導線、電子部品又はマイクロコンピュータが、外部の影響に対して保護するため、同様に電気絶縁材料から成る非導電性の可撓覆い材料で被覆されている。
【0034】
本発明の他の変形例では、少なくとも1つの軸受部材上に、従来の半導体技術による半導体構造体から成る論理電気回路が設けられ、この回路に属しかつ少なくとも1つの導体又は半導体有機材料から成る別の構造体が、軸受部材上に印刷されている。
【0035】
非常に複雑な測定及び評価装置を構成するため、センサ、センサ導線及びデータ導線及び電子部品又はマイクロコンピュータが、異なる面において絶縁層を介して軸受部材の1つに設けられている。異なる面に設けられる導体条片及び/又は電子部品を電気接続するため、本発明の構成では、導体条片の縦範囲に対して実質的に直角に向けられる導体材料又は半導体有機材料製の(貫通)接触子が、前記絶縁層を通って導かれている。
【0036】
更に電気的接触を回避するため、少なくとも1つの軸受材料の表面と、導体条片、電子部品及び/又はセンサとの間に、適当な電気絶縁材料なるべく無機材料から成る絶縁層が形成されている。
【0037】
最後に測定軸受が、光学的に作用しかつ導体又は半導体有機材料から製造される送信装置を持ち、この送信装置が、センサ信号及び/又はこれから誘導される量を軸受部材からこの軸受外にある部材へ伝送するために設けられている。しかしこの変形例では、高周波電波による無線伝送も可能である。
【0038】
軸受に作用する物理的量を検出するセンサ、及びセンサ出力信号又はそれから誘導される特性値を評価しかつ/又は軸受外にある電気又は電子装置へ伝送する電子部品を有する、ころがり軸受の本発明による製造方法では、センサ、導体条片及び電子部品が、測定データ検出及び/又は測定データ処理システムを形成して少なくとも1つの軸受部材上に設けられており、少なくとも1つの導体又は半導体有機材料又はその先駆物質から成るセンサ、導体条片及び電子部品が、ころがり軸受の少なくとも1つの部材の表面に構成されることを特徴としている。
【0039】
この方法は、公知の技術に対して、センサ及び(一般的に定義される)電子装置構造体を非常に容易にかつ速やかに任意のいかなる部材構造体上にも構成でき、このために例えば真空技術を必要としない、という大きな利点を持っている。これは、このような測定軸受の製造費を減少するのみならず、センサ及び電気装置構造体を強く湾曲するか又は構造化される部材表面上にも問題なく場所を節約して設けるか又は構成できることが重要である。
【0040】
導体又は半導体有機材料を軸受部材の少なくとも1つの表面に設けることに関して、印刷技術が好まれる。即ちセンサ、導体条片及び/又は電子部品が、例えばスクリン印刷、凹版印刷、フレキソ印刷又は間接凹版印刷により、軸受部材表面に形成される。
【0041】
別の変形例では、センサ及び電子装置構造体が、液体噴流印刷法(「インク噴流印刷」としても公知である)により、液体及びその中に溶解されるか又は分散される導体又は半導体有機材料を使用して、少なくとも1つの軸受部材の表面に印刷されることによっても、比較可能な結果が得られる。
【0042】
更にセンサ、導体条片及び電子部品を、スクリン印刷と液体噴流印刷との組合わせにより、少なくとも1つの軸受部材上に構成することも可能である。
【0043】
更にセンサ、導体条片及び/又は電子部品が、導体又は半導体有機材料又はその先駆物質を溶解又は分散した形で軸受部材上へ面状に塗布し、続いて直接石版印刷又はレーザ除去により、製造されることも、提案される。
【0044】
更にセンサ、導体条片及び/又は電子部品が、熱転写印刷方法により、中間担体から電子装置の担体基板又は直接軸受部材へ転写可能である。
【0045】
本発明による方法の別の展開では、センサ、導体条片及び/又は電子部品が、いわゆる「レーザ誘導熱結像」方法により構成され、有機材料が担体箔上に塗布され、固体状態でこの担体箔から側方を構造化されて軸受部材へ転写される。
【0046】
センサ、導体条片及び/又は電子部品を保持する軸受部材が導電材料から成る場合、ポリマ電子装置を構成する前に、適当な例えば無機材料から成る絶縁層が、この部材とポリマ電子装置との間に設けられて、充分な絶縁作用を生じるのがよい。
【0047】
本発明による製造方法の別の構成では、少なくとも1つの軸受部材上に、半導体構造体から成る論理電子回路が(例えばシリコンに基く)従来の半導体技術で設けられ、続いてこの回路に属しかつ導体又は半導体有機材料から成る別の電子構造体が、軸受部材になるべく印刷される。このような組合わせ構造により、従来の半導体技術及びポリマ技術の有利な特性が利用される。
【0048】
本発明による製造方法の有利な変形例によれば、導体又は半導体有機材料又はその先駆物質から成る電子回路及び/又は個々のセンサが、まず可撓箔上に印刷され、続いて別々にされ、最後に所定の形状で少なくとも1つの軸受部材上に取付けられ、かつ互いに電気接続される。
【0049】
最後に本発明の方法によれば、1つの面に設けられずかつ絶縁体により互いに分離されているセンサ、導体条片及び/または電子部品が、導体又は半導体有機材料により互いに電気接続され、この導体又は半導体有機材料が、導体条片又は電子部品の縦範囲に対して実質的に直角に方向づけられる。
【0050】
本発明は、少なくとも1つの導体又は半導体有機材料から成るセンサ、導体条片及び/又は電子部品(ポリマ電子装置)をころがり軸受に形成する製造機械に関し、ポリマ電子装置が設けられる軸受部材を受入れる締付け装置、導体又は半導体有機材料又はその先駆物質を供給する少なくとも1つの供給装置、及び有機材料を供給する供給装置と結合される少なくとも1つの印刷装置を持ち、この印刷装置が、少なくとも1つの有機材料又はその先駆物質をころがり軸受部材上に層状に塗布するのを可能にする。
【0051】
印刷材料が液体に溶解するか又は分散する導体又は半導体有機材料である場合、印刷材料用の供給装置が液体導管として構成され、この液体導管により有機印刷材料が印刷装置へ運搬可能である。
【0052】
製造機械の最後にあげた構成では、液体印刷装置が、スクリン印刷装置、フレキソ印刷装置又は凹版印刷装置として構成され、好ましい構成では液体印刷装置が液体噴流印刷ヘッドとして構成され、導体又は半導体有機材料の供給のため少なくとも1つの導管がこの印刷ヘッドに取付けられている。
【0053】
このような液体噴流印刷ヘッドの操作は、なるべく少なくとも1つの圧電操作器によって行われる。
【0054】
製造機械が凹版印刷又はフレキソ印刷方法により軸受部材上にポリマ電子装置を構成するために使用される場合、前記の液体導管をなくすことができる。その代わりに、凹版又はフレキソ印刷媒体用の適当な供給装置が製造機械に設けられている。
【0055】
本発明が、具体的な実施例により添付図面を用いて説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
図1には、斜視図で典型的なころがり軸受1が示され、相対回転しないように設けられる外レース2及びその中に回転可能に支持される内レース3が、このころがり軸受に属している。外レース2と内レース3との間に、玉として構成されるころがり体4が設けられ、玉保持器5にはまっている。
【0057】
内レース3に支持されるが図示してない荷重は、ころがり軸受1へ3つのすべての空間座標の力Fx,Fy,Fzを及ぼし、これらの力は、従来技術の説明において述べたセンサにより測定可能である。更に図示されているように、特に内レース3の回転数n及び回転角θ、内レース3及び外レース2の温度Ti,Ta、及びトルクMzが、適当なセンサにより検出可能である。
【0058】
図1によるころがり軸受の図2に示す断面図からわかるように、前記又は他の物理的量を測定するセンサは、ころがり軸受1の異なる個所に設けることができる。その取付け位置は、若干の場合選択される測定方法及び/又は軸受の物理/技術的境界条件及び例えば機械又は車両への取付け状態に関係している。
【0059】
本発明による製造方法に従って、センサ及び例えば導体条片、増幅器、抵抗、コンデンサ及び全マイクロコンピュータのような電子装置構造体は、異なる位置で外レース及び内レースに構成される。図2からわかるように、このようなセンサ及びポリマ電子装置構造体6,7,8,9,10,11,12,13,14は、内レース3及び外レース2の軸線方向溝及び半径方向溝へ挿入することができる。しかしセンサ及びポリマ電子装置構造体6,7,8,9,10,11,12,13,14が溝により保護されない軸受部材の範囲にも設けられることが可能であり、取付け場所として一層強く構造化された範囲を利用することもできる。
【0060】
本発明による製造方法における特別な利点は少なくとも1つの導体又は半導体有機材料から成るポリマ電子装置構造体が、ころがり軸受の少なくとも1つの部材の表面に構成されることである。
【0061】
この構成プロセスは、液体に溶解されるか又は分散される導体又は半導体有機材料又はその先駆物質が直接軸受部材の表面へ印刷されるスクリン印刷方法又は液体噴流印刷方法のような印刷方法によって行われる。更にポリマ電子装置構造体の構成は、既に述べたように間接凹版方法又はフレキソ印刷方法によっても行うことができる。
【0062】
しかし軸受部材が導体有機材料から成っている場合、印刷方法とは無関係に、絶縁層の中間層が推奨される。
【0063】
例えばスパッタリング技術と異なり、この方法によれば、レースの湾曲した半径方向表面に、所望のセンサ及び電子装置構造体を非常に有利に形成することができる。特に軸受部材は、スパッタリング技術において普通であるように、真空中へ入れる必要はない。更にコンピュータ印刷機の公知の液体噴流と同じように液体噴流印刷方法により、溶解されるか又は分散された異なる導体又は半導体有機材料を、同時に部材へ吹付けることができるので、ポリマ電子装置構造体は非常に経済的に製造可能である。
【0064】
更にこのような液体印刷ヘッドを備えた製造機械は、製造コンピュータ及びその中に記憶されている電子装置構成プランにより制御されて、高度の融通性で、同じ又は異なるポリマ電子装置を持つ異なる形式の軸受に印刷することができる。
【0065】
別の利点は、このようなポリマ電子装置は、僅かな原料費及び環境調和のため、高度に受入れられることである。
【0066】
本発明により構成されて図3に示される測定ころがり軸受15では、センサ及び他の電子装置構造体は、集積ポリマ電子装置18のために、内レース3に回転可能に支持される外レース2の外側にある半径方向溝へ、前記印刷方法の1つにより入れられている。このポリマ電子装置18の構成は、従来の半導体技術から公知のように、層状に行われ、異なる電気的性質を持つ有機材料の層順により、抵抗、コンデンサ、増幅器及び全マイクロコンピュータのようなすべての必要なセンサ及び/又は電子装置部材が製造可能である。
【0067】
更に図からわかるように、ポリマ電子装置18により回転するシステムにおいて発生されるか又は処理される情報は、センサ導線及び/又はデータ導線22を介して、導体又は半導体有機材料から環状に形成されて光学的に作用する送信装置(有機発光ダイオード)16へ伝送される。
【0068】
光学的に作用するこの送信装置16は、照明区間23を介して、ポリマ電子装置18により発生されるデータ流を、固定軸受部材(ここには図示されていない)又はここに図示されている非常にこじんまりした形状で固定電気励磁コイル20に設けられている受信光ダイオード17へ送信する。しかし高周波範囲にある従来の無線装置による伝送も排除されない。
【0069】
励磁コイル20により、ポリマ電子装置18へ給電するための電流が、外レース2にある二次コイル19へ誘導で結合可能であり、そこからエネルギ供給導線21を介して電子装置部品へ更に伝送可能である。
【0070】
測定軸受を製造するため印刷技術の使用は、上述した本発明に関して特に著しく重要である。その際使用可能な液体印刷技術、スクリン印刷、「インク噴流印刷」、フレキソ印刷、間接凹版印刷及び面状液相被覆技術のような印刷技術は、例えば直接石版印刷のような次の側方構造化と共に、このために特に有利に適している。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】 ころがり軸受及びそれについて検出可能な物理的量を示す。
【図2】 図1によるころがり軸受の断面図を示す。
【図3】 本発明により構成されて光学的データ伝送装置を持つ測定ころがり軸受を示す。
【符号の説明】
【0072】
1 ころがり軸受
2 外レース
3 内レース
4 ころがり体
5 玉保持器
6 センサ、ポリマ電子装置
7 センサ、ポリマ電子装置
8 センサ、ポリマ電子装置
9 センサ、ポリマ電子装置
10 センサ、ポリマ電子装置
11 センサ、ポリマ電子装置
12 センサ、ポリマ電子装置
13 センサ、ポリマ電子装置
14 センサ、ポリマ電子装置
15 ころがり軸受
16 有機発光ダイオード
17 固定光ダイオード
18 ポリマ電子装置
19 二次コイル
20 励磁コイル、固定部材
21 エネルギ供給導線
22 データ導線
23 照明区間
Fx x方向の軸受力
Fy y方向の軸受力
Fz z方向の軸受力
Mz トルク
Ta 外レース温度
Ti 内レース温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ころがり軸受(1,15)であって、軸受に作用する物理的量を検出するセンサ、及びセンサ出力信号又はそれから誘導される特性値を評価しかつ/又は軸受外にある電気又は電子装置へ伝送する電子部品を有し、センサ、導体条片及び電子部品が、測定データ検出及び/又は測定データ処理システムを形成して少なくとも1つの軸受部材(2)上に設けられているものにおいて、センサ、導体条片及び/又は電子部品(18)が、側方を構造化される少なくとも1つの導体又は半導体有機材料又はその先駆物質から構成されていることを特徴とする、ころがり軸受。
【請求項2】
導体又は半導体有機材料又はその先駆物質が、印刷技術及び/又は被覆技術により、液相又は固相から少なくとも1つの軸受部材上に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のころがり軸受。
【請求項3】
導体条片、電気コイル及び電気抵抗が、ドーピングされたポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン又はポリエチレンジオキシチオフェンのような真性の導体又は半導体有機材料から成っていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のころがり軸受。
【請求項4】
導体条片、電気コイル及び電気抵抗が、黒鉛又は金属を満たされたポリマペーストのような外因性の導体又は半導体有機材料から形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のころがり軸受。
【請求項5】
電界効果トランジスタ及び/又はダイオードが、その半導体構造に関して、ポリ(3−アルキル−チオフェン)、α、ω−ジヘキシルセキシチオフェン、アルキル−ナフタリンビスイミド及びフルオルアルキル−ナフタリンビスイミドから成り、誘電体がポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルフェノール)又はポリイミドから形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のころがり軸受。
【請求項6】
圧電効果形又はピエゾ抵抗効果形センサ又は部品が、ポリビニリデンフルオリド又はビニリデンフルオリドとトリフルオルエチレンとのコポリマから形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のころがり軸受。
【請求項7】
圧電効果形センサ又は同様な電子部品が、ポリマ層にある無機微結晶の組成物から成り、圧電成分として、ポリマにジルコン酸−チタン酸鉛又はBaTiOが含まれていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のころがり軸受。
【請求項8】
コンデンサが真性又は外因性ポリマペースト又はポリマ誘電体から成っていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のころがり軸受。
【請求項9】
センサ、導体条片及び電子部品(18)が、内レース(3)及び/又は外レース(2)に設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項10】
センサ、導体条片及び電子部品(18)が、内レース(3)及び/又は外レース(2)の凹所に設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項11】
センサが、軸受に支持される物体の回転数及び/又は回転方向、軸受に作用する半径方向力及び軸線方向力、力の方向、軸受騒音、軸受温度、及び場合によっては生じる不平衡を検出するように構成されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項12】
電子部品(18)が、軸受部材(2)上に設けられる信号伝送導線を介して他の電子部品及び/又はセンサと接続されている少なくとも1つのマイクロコンピュータを含むか又は形成していることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項13】
複数のマイクロコンピュータが軸受部材(2)上に設けられ、かつ導体又は半導体有機材料から成るデータ導線により互いに接続され、これらのデータ導線を介してアナログ又はディジタルデータ交換が行われることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項14】
センサ又は電子部品(18)の少なくとも1つが接続個所を持ち、この接続個所を介してセンサ及び/又は電子部品が、軸受及び/又は軸受と結合される部材の現在の物理的状態についての生データ及び/又は処理された情報を伝送するため、軸受外にある少なくとも1つの別個の表示装置、データ記憶装置及び/又はデータ処理装置と接続可能であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項15】
センサ、センサ導線、データ導線、電子部品又はマイクロコンピュータが、共通な製造方法で、1つ又は複数の軸受部材上に塗布されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項16】
センサ、センサ導線、データ導線、電子部品又はマイクロコンピュータが、非導電性の可撓覆い材料で被覆されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項17】
少なくとも1つの軸受部材上に、従来の半導体技術による半導体構造体から成る論理電気回路が設けられ、この回路に属しかつ少なくとも1つの導体又は半導体有機材料から成る別の構造体が、軸受部材上に印刷されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項18】
異なる面に設けられる導体条片及び/又は導体条片の縦範囲に対してほぼ直角に向けられている電子部品の間の導電接続部が、導体又は半導体有機材料により形成されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項19】
少なくとも1つの軸受材料の表面と、導体条片、電子部品及び/又はセンサとの間に、適当な電気絶縁材料なるべく無機材料から成る絶縁層が形成されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項20】
ころがり軸受が光学的に作用する送信装置(15,16)を持ち、この送信装置が導体又は半導体有機材料から形成され、センサ信号及び/又はこれから誘導される量を軸受部材からこの軸受外にある部材へ伝送するために設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項21】
ころがり軸受(15)にある電子部品(18)へのエネルギ供給が、軸受外にある励磁コイル(20)及び軸受に取付けられる二次コイル(19)により、誘導的に行われることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載のころがり軸受。
【請求項22】
軸受に作用する物理的量を検出するセンサ、及びセンサ出力信号又はそれから誘導される特性値を評価しかつ/又は軸受外にある電気又は電子装置へ伝送する電子部品を有する、ころがり軸受の製造方法であって、センサ、導体条片及び電子部品が、測定データ検出及び/又は測定データ処理システムを形成して少なくとも1つの軸受部材上に設けられているものにおいて、少なくとも1つの導体又は半導体有機材料又はその先駆物質から成るセンサ、導体条片及び電子部品が、ころがり軸受の少なくとも1つの部材の表面に構成されることを特徴とする、方法。
【請求項23】
導体又は半導体有機材料又はその先駆物質が、ころがり軸受の少なくとも1つの部材の表面に印刷されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
センサ、導体条片及び/又は電子部品が、スクリン印刷、間接凹版印刷、フレキソ印刷又は液体噴流印刷により、液体及びその中に溶解するか又は分散した導体又は半導体有機材料又はその先駆物質から、少なくとも1つの軸受部材上に構成されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項25】
センサ、導体条片及び/又は電子部品が、導体又は半導体有機材料又はその先駆物質を溶解又は分散した形で軸受部材上へ面状に塗布し、続いて直接石版印刷又はレーザ除去することにより、製造されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項26】
センサ、導体条片及び/又は電子部品が、熱転写印刷方法により、中間担体から電子装置の担体基板又は直接軸受部材へ転写されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項27】
センサ、導体条片及び/又は電子部品が、いわゆる「レーザ誘導熱結像」方法により構成され、有機材料が担体箔上に塗布され、固体状態でこの担体箔から側方を構造化されて軸受部材へ転写されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項28】
センサ、導体条片及び/又は電子部品を少なくとも1つの軸受部材の表面に形成又は塗布する前に、有機又はなるべく無機材料から成る絶縁層が設けられることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの軸受部材上に、半導体構造体から成る論理電子回路が従来の半導体技術で設けられ、この回路に属しかつ導体又は半導体有機材料から成る別の電子構造体が、軸受部材に印刷されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項30】
導体又は半導体有機材料又はその先駆物質から成る電子回路及び/又は個々のセンサが、まず可撓箔上に設けられ、続いて別々にされ、最後に所定の形状で少なくとも1つの軸受部材上に取付けられ、かつ互いに電気接続されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項31】
絶縁体を介して1つより多い面に設けられているセンサ、導体条片及び/又は電子部品が、導体又は半導体有機材料により互いに電気接続され、この導体又は半導体有機材料が、導体条片又は電子部品の縦範囲に対して実質的に直角に方向づけられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの導体又は半導体有機材料からセンサ、導体条片及び/又は電子部品(ポリマ電子装置)をころがり軸受に形成する製造機械において、ポリマ電子装置(18)が設けられる軸受部材(2)を受入れる締付け装置、少なくとも1つの導体又は半導体有機材料又はその先駆物質を供給する少なくとも1つの供給装置、及び有機材料を供給する供給装置と結合される少なくとも1つの印刷装置を持ち、この印刷装置が、少なくとも1つの有機材料又はその先駆物質をころがり軸受部材(2)上に層状に塗布するのを可能にすることを特徴とする、製造機械。
【請求項33】
液体に溶解するか又は分散する導体又は半導体有機材料を使用する場合、この材料用の供給装置が液体導管として構成され、この液体導管により有機材料が印刷装置へ運搬可能であることを特徴とする、請求項32に記載の製造機械。
【請求項34】
液体印刷装置が、スクリン印刷装置、フレキソ印刷装置又は凹版印刷装置として構成されていることを特徴とする、請求項33に記載の製造機械。
【請求項35】
液体印刷装置が液体噴流印刷ヘッドとして構成されていることを特徴とする、請求項33に記載の製造機械。
【請求項36】
液体噴流印刷ヘッドが圧電操作装置を持っていることを特徴とする、請求項35に記載の製造機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−526157(P2006−526157A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515665(P2006−515665)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001099
【国際公開番号】WO2004/106878
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(504410561)フアーク・クーゲルフイツシエル・アクチエンゲゼルシヤフト (14)
【氏名又は名称原語表記】FAG Kugelfischer AG
【出願人】(306025651)エールフエルト・ミクロテヒニク・アクチエンゲゼルシヤフト (1)
【Fターム(参考)】