説明

ポールトレーラ

【課題】トレーラとトラクタとの位置関係と無関係に、常時、プロテクタによる積荷の飛び出しを防ぐことを可能とし、前方への積荷の飛び出しをより確実に回避する。
【解決手段】積荷12の前方を塞ぐ衝立状のプロテクタ22がトラクタ側ターンテーブル24に設けられていることから、プロテクタ22は常にトラクタ側ターンテーブル24と一体的に、トラクタ14に対して旋回する。従って、トラクタ14とトレーラ10とが直線状に並ぶ直線走行時のみならず、(b)に示されるように両者が折れ曲がる旋回時においても、積荷12は常時プロテクタ22によりその前方を塞がれる状態に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポールトレーラの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7(a)に示されるポールトレーラ10は、長尺の積荷12の運搬に使われるものであり、トラクタ14に連結される伸縮自在のドローバー16と、トレーラ10側に設置されるターンテーブル18と、トラクタ14側に設置されるターンテーブル20とを含むものである。図7に示されるセミトレーラの場合には、トラクタ14のカプラに対し、ターンテーブル20のキングピン(図1の符号30参照)を係合させることで、ターンテーブル20はトラクタに対し旋回自在に固定される。そして、伸縮可能なドローバー16の全長を、運搬する積荷12の寸法に合わせ、ターンテーブル18、20の双方に跨るように積荷12を載置し、積荷12自体をフレームとしても機能させる。一方、回送時にはドローバー16を短縮させることで、ポールトレーラ10単体の重量の軽量化と構造の簡素化とを実現しつつ、積荷12の長さに応じた柔軟な運用が可能な形式のトレーラである。
ところで、従来は、積荷12の搬送中に、積荷12が前方に飛び出すような非常事態を想定して、トラクタ14のキャブに積荷12が衝突することを防ぐための衝立状のプロテクタ22が、トラクタ14のキャブ後方に設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭52−141715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図7(b)に示されるような、トラクタ14とトレーラ10とが折れ曲がる旋回時には、トラクタ14に設けられたプロテクタ22は、相対的に積荷12の飛び出し方向(前方)Aから外れた位置へと移動してしまうため、プロテクタ22により積荷12の飛び出しを阻止することはできない。従って、従来は、積荷12の飛び出しを確実に防ぐために、トラクタ14側のターンテーブル20に対して幾重にも固縛を行うことで、積荷12の前方への飛び出しを未然に防止している。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、トレーラとトラクタとの位置関係と無関係に、常時、積荷の飛び出しをプロテクタにより防ぐことを可能とし、ターンテーブルに対して積荷を確実に固縛することと合わせて、前方への積荷の飛び出しをより確実に回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。又、各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。よって、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)トラクタに連結される伸縮自在のドローバーと、トレーラ側及びトラクタ側の双方に設置されるターンテーブルとを含むポールトレーラであって、トラクタ側ターンテーブルの積荷を載置する基台部分に、積荷の前方を塞ぐ衝立状のプロテクタが設けられているポールトレーラ(請求項1)。
本項に記載のポールトレーラは、積荷の前方を塞ぐ衝立状のプロテクタが、トラクタ側ターンテーブルの積荷を載置する基台部分に設けられていることから、プロテクタは、トラクタに対して常にトラクタ側ターンテーブルと一体的に旋回する。従って、トラクタとトレーラとが直線状に並ぶ直線走行時のみならず、両者が折れ曲がるような旋回時においても、積荷は常時プロテクタによりその前方を塞がれる状態に維持される。
【0007】
(2)上記(1)項において、前記トラクタ側ターンテーブルの旋回軸に対する前記プロテクタの位置調整手段を備えるポールトレーラ(請求項2)。
本項に記載のポールトレーラは、積荷の全長に応じて、トラクタ側ターンテーブル上の積荷の前方オーバーハングが異なる場合があることに対応し、位置調整手段によってトラクタ側ターンテーブルの旋回軸に対するプロテクタの位置を適宜変更することにより、積荷とプロテクタとの緩衝を防ぐものである。
【0008】
(3)上記(2)項において、前記プロテクタの位置調整手段が、前記トラクタ側ターンテーブルの基台部分に設けられた複数の差込穴と、該差込穴に対し着脱自在な前記プロテクタの脚部とで構成されているポールトレーラ(請求項3)。
本項に記載のポールトレーラは、プロテクタの位置調整手段が、トラクタ側ターンテーブルの基台部分に設けられた複数の差込穴と、差込穴に対し着脱自在なプロテクタの脚部とで構成され、プロテクタの脚部が適宜複数の差込穴のいずれかに差し込まれた状態で固定されることにより、トラクタ側ターンテーブルの旋回軸に対するプロテクタの位置調整を、適宜行うものである。
【0009】
(4)上記(2)項において、前記プロテクタの位置調整手段として、前記プロテクタの支持フレームが、前記トラクタ側ターンテーブルの基台部分に対し水平方向にスライド可能に構成されているポールトレーラ(請求項4)。
本項に記載のポールトレーラにおいて、プロテクタの位置調整手段は、プロテクタの支持フレームが、トラクタ側ターンテーブルの基台部分に対し水平方向にスライド可能に構成されてなることから、トラクタ側ターンテーブルの基台部分に対しプロテクタの支持フレームを水平方向にスライドさせて、適切な位置に固定することで、トラクタ側ターンテーブルの旋回軸に対するプロテクタの位置調整を、適宜行うものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明はこのように構成したので、トレーラとトラクタとの位置関係と無関係に、常時、プロテクタによる積荷の飛び出しを防止し、ターンテーブルに対して積荷を確実に固縛することと合わせて、前方への積荷の飛び出しをより確実に回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るポールトレーラの、トラクタ側ターンテーブルを示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るポールトレーラの、トラクタ側ターンテーブルの応用例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)はトラクタ側ターンテーブルに対し着脱自在なプロテクタの正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るポールトレーラの、トラクタ側ターンテーブルの更に別の応用例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】図3に示されたトラクタ側ターンテーブルの更に別の応用例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は(a)のA−A断面図である。
【図5】(a)は図4に示されたトラクタ側ターンテーブルの正面図、(b)は図4(c)のB部拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るポールトレーラがトラクタに連結された状態を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は旋回時の平面図である。
【図7】従来のポールトレーラがトラクタに連結された状態を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は旋回時の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係るポールトレーラは、図1に示されるトラクタ側ターンテーブル24の、積荷12を載置する基台部分26に、積荷12の前方を塞ぐようにして、衝立状のプロテクタ22が設けられている。図1の例では、鋼材をはしご状に組み合わせて構成された支持フレーム28が、基台部分26に前方へと伸びるようにして固定され、更に、支持フレーム28の先端部にプロテクタ22が固定されている。なお、符号30は、基台部分26に固定されたキングピン(旋回軸)であり、トラクタのカプラに係合することで、トラクタ側ターンテーブル24はトラクタに対し旋回自在に固定されるものである。
【0013】
一方、図2に示される応用例では、トラクタ側ターンテーブル24は、キングピン30に対するプロテクタ22の位置調整手段を備えている。図2の例では、プロテクタ28には脚部22aが設けられ、トラクタ側ターンテーブル24の荷台部分26の支持フレーム28に、脚部22aが係合する複数の差込穴28aが形成されている。又、差込穴28aに係合した脚部22aの固定手段として、支持フレーム28の差込穴28aが設けられた位置には、差込穴28aと直交する抜け止め穴28bが形成され、ここにボルト、ピンなどの係止部材32を差込むことで、プロテクタ22を支持フレーム28に固定することができる。
【0014】
更に、図3に示される応用例では、トラクタ側ターンテーブル24の基台部分26に対し、プロテクタ22の支持フレーム28が、水平方向(前後方向)にスライド可能に構成されている。図3の例では、基台部分26と支持フレーム28とは別体に構成され、互いにスライド可能となっており、支持フレーム28に形成された位置決め穴28cと、基台部分26に形成された位置決め穴26aとを一致させて、位置決め穴26a、28cに係止部材32を挿通することで、基台部分26に支持フレーム28を固定することが可能である。
なお、図3に示された、基台部分26に対する支持フレーム28のスライド機構は、支持フレーム28をI形鋼で構成し、その側面が基台部分26に対するガイドレールとして機能するようにリニアスライドを構成するものである。
【0015】
又、図4、図5にも、図3の例の更なる応用例として、トラクタ側ターンテーブル24の基台部分26に対し、プロテクタ22の支持フレーム28が、水平方向(前後方向)にスライド可能に構成された応用例が示されている。
この応用例では、基台部分26に対する支持フレーム28のスライド機構が、支持フレーム28をチャンネル鋼で構成し、その上面及び下面を挟み込むようにして、基台部分26に固定したL字鋼からなる上下一対の脚部材34を摺動自在に配置してなるものである。又、必要に応じ、支持フレーム28又は脚部材34の少なくとも一方に、摩擦軽減部材36が固定され、基台部分26に対する支持フレーム28のスライド動作の円滑化が図られている。なお、図4(c)に示された係止部材32は、位置決め穴26a、28cに挿入されるピン32aと、ハンドル32bとからなることで、抜差し操作に優れたものとなっている。
【0016】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に記載のポールトレーラは、積荷12の前方を塞ぐ衝立状のプロテクタ22がトラクタ側ターンテーブル24の積荷を載置する基台部分26に設けられていることから、図6(a)、(b)に示されるように、プロテクタ22は常にトラクタ側ターンテーブル24と一体的に、トラクタ14に対して旋回する。従って、トラクタ14とトレーラ10とが直線状に並ぶ直線走行時のみならず、両者が折れ曲がるような旋回時においても、積荷12は常時プロテクタ22によりその前方を塞がれる状態に維持される。
又、積荷12の全長に応じて、トラクタ側ターンテーブル24上の積荷12の前方オーバーハングが異なる場合があることに対応し、位置調整手段によってトラクタ側ターンテーブル24の旋回軸に対するプロテクタの位置を適宜変更することにより、積荷12とプロテクタ22との緩衝を防ぐことができる。
【0017】
具体的には、図2に示されるように、プロテクタの位置調整手段が、トラクタ側ターンテーブル24の基台部分26に設けられた複数の差込穴28aと、差込穴28aに対し着脱自在なプロテクタ22の脚部22aとで構成され、プロテクタの脚部22aが適宜複数の差込穴28aのいずれかに差し込まれた状態で固定されることにより、トラクタ側ターンテーブル24の旋回軸30に対するプロテクタ22の位置調整を、適宜行うことができる。
【0018】
又、図3〜図5の例では、プロテクタの支持フレーム28が、トラクタ側ターンテーブル24の基台部分26に対し水平方向にスライド可能に構成され、トラクタ側ターンテーブル24の基台部分に対しプロテクタ22の支持フレーム28を水平方向にスライドさせて、適切な位置に固定することで、トラクタ側ターンテーブル24の旋回軸30に対するプロテクタ22の位置調整を、適宜行うことができる。
なお、図示の例では、セミトレーラ形式のポールトレーラを例示して説明したが、本発明は、フルトレーラ形式のポールトレーラについても、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
10:ポールトレーラ、12:積荷、14:トラクタ、22:プロテクタ、24:ターンテーブル、26:基台部分、28:支持フレーム、28a:差込穴、28b:抜け止め穴、28c:位置決め穴、30:キングピン、32:係止部材、34:脚部材、36:摩擦軽減部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに連結される伸縮自在のドローバーと、トレーラ側及びトラクタ側の双方に設置されるターンテーブルとを含むポールトレーラであって、トラクタ側ターンテーブルの積荷を載置する基台部分に、積荷の前方を塞ぐ衝立状のプロテクタが設けられていることを特徴とするポールトレーラ。
【請求項2】
前記トラクタ側ターンテーブルの旋回軸に対する前記プロテクタの位置調整手段を備えることを特徴とする請求項1記載のポールトレーラ。
【請求項3】
前記プロテクタの位置調整手段が、前記トラクタ側ターンテーブルの基台部分に設けられた複数の差込穴と、該差込穴に対し着脱自在な前記プロテクタの脚部とで構成されていることを特徴とする請求項2記載のポールトレーラ。
【請求項4】
前記プロテクタの位置調整手段として、前記プロテクタの支持フレームが、前記トラクタ側ターンテーブルの基台部分に対し水平方向にスライド可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載のポールトレーラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−57055(P2011−57055A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208021(P2009−208021)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)