説明

マイクロマニピュレータ用操作装置

【目的】 マイクロマニピュレータの操作性を向上する。
【構成】 マイクロマニピュレータ3用の操作装置は、マウス23と制御部30とを有している。マウス23のクリックボタン26で3軸のうちの2軸を選択する。制御部30は、マウス23の操作に応じて、選択された2軸上でマニピュレータ3を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、操作装置、特に、空間内の3軸方向に移動可能な移動手段を有するマイクロマニピュレータの操作装置に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば細胞にDNA溶液の注入処理を施す場合、一方に微小針をまた他方に捕捉針を配置したマイクロマニピュレータが用いられる。一般的なマイクロマニピュレータでは、顕微鏡視野内で微小針や捕捉針等の微小器具を操作して、シャーレ等の容器内に入れられた細胞等の微小な処理物に所定の処理を施すようになっている。
【0003】この種のマイクロマニピュレータでは、たとえば上下に傾動可能なZ軸用のスティックと、前後左右に傾動可能なXY軸用のスティックとを用い、それらを両手で操作して空間内の3軸方向(上下前後左右方向)に駆動している。また、片手で操作するマイクロマニピュレータでは、前後左右に傾動するスティックの先端にZ軸用のダイヤルを設けたり、固定スティック上に3軸方向用の3つのダイヤルを設けたりして、片手で上下前後左右方向に駆動できるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】両手で操作する前記従来の構成では、マイクロマニピュレータが対向配置されている場合に2つのマイクロマニピュレータを同時に操作することができない。また片手で操作する前記従来の構成では、平面上での曲線的又は直線的な動きが必要な場合に、操作が困難である。特に、Z軸上とX軸またはY軸上とでマニピュレータを同時に動かす場合には、Z軸用のダイヤルを回してスティックを前後または左右に動かしたり、Z軸用のダイヤルを回しながらX軸またはY軸のダイヤルを回さなければならず、高度な指先の熟練性が要求される。たとえば、細胞へ斜め上方から針を刺してそれを斜め上方に持ち上げる場合に、その動作を片手で行うのが困難である。
【0005】本発明の目的は、マイクロマニピュレータの操作性を向上することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る操作装置は、空間内の3軸方向に移動可能な移動手段を有するマイクロマニピュレータに用いる装置である。この装置は、操作手段と軸選択手段と指令出力手段とを有している。操作手段は、2軸に関する移動指令を入力するためのものである。軸選択手段は、空間内の3軸のうちの2軸を選択するためのものである。指令出力手段は、操作手段の操作に応じて、選択手段で選択された2軸上で移動する指令を移動手段に出力するものである。
【0007】
【作用】本発明に係るマイクロマニピュレータ用操作装置では、軸選択手段により空間内の3軸のうちの2軸が選択される。指令出力手段は、選択された2軸上で移動する指令を操作手段の操作に応じて移動手段に対して出力する。ここでは、選択する2軸を変更しながら操作を行えるので、複雑なマニピュレータの動きを容易に制御できるようになる。この結果、マニピュレータの操作性が向上する。
【0008】
【実施例】図1は、本発明の一実施例を採用したマイクロマニピュレータシステムを示している。図において、マイクロマニピュレータシステムは、ベース1に載置された顕微鏡2と、顕微鏡2の両側方に配置された1対のマイクロマニピュレータ3,4と、顕微鏡2及びマイクロマニピュレータ3,4を制御するための制御装置5とを有している。
【0009】顕微鏡2は、その中央部に操作台6を有しており、操作台6には細胞等の被処理物が載置される試料台7が配置されている。操作台6の下方には対物レンズ8が配置されており、対物レンズ8の下端部にはテレビカメラ9が接続されている。操作台6は、図示しない駆動機構によって水平面方向及び上下方向に駆動され得る。
【0010】マイクロマニピュレータ3,4は、ベース1上に載置されており、台10,11と、台10,11上に別々に取り付けられた駆動部12,13と主に有している。駆動部12,13は、それぞれステッピングモータ40,41,42(図2)により、台10,11に対して1μm又は数十μm単位の動き(微動又は粗動)を垂直方向及び水平方向に行い得る。駆動部12,13の顕微鏡2側端部には、微小器具であるガラスキャピラリ14,15が取り付けられている。これらのキャピラリ14,15は、その先端部が試料台7側に延びている。
【0011】制御装置5は、図1に示すように、CRT20と、操作パネル21と、制御ユニット22と、マウス23,24とを主に有している。マウス23,24は、2つのクリックボタン(CB1)25,27と、クリックボタン(CB2)26,28をそれぞれ有している。クリックボタン(CB1)25,27は、駆動部12,13の粗動,微動を切り換えるためのものである。クリックボタン(CB2)26,28は、前後左右及び上下(XYZ軸)の3軸のうちの2軸を選択するために用いられる。ここでは、クリックボタン25,27を操作する都度粗動と微動とが切り換わり、クリックボタン26,28を操作する都度XY→YZ→ZX→XY軸の順に選択軸が切り換わる。
【0012】マウス23は、図2に示すように、平面内の2方向の動きを検出するための2つのエンコーダ(EN1,EN2)31,32を有している。エンコーダ31,32の出力はそれぞれカウンタ33,34に与えられる。エンコーダ31,32は、それぞれ図4に示すように、基準パルスと、回転方向に応じた回転パルスとを出力する。カウンタ33,34は、回転パルスの数をカウントする。カウンタ33,34には位相検出回路35,36が接続されている。位相検出回路35,36は、回転パルスと基準パルスとの位相Dを検出する。
【0013】カウンタ33,34のカウント出力及び位相検出結果は制御部30に与えられる。制御ユニット22を構成する制御部30は、マイクロコンピュータからなっている。制御部30には、マウス23のクリックボタン25,26の出力も与えられる。なお図2では、一方のマウス23のみ図示しているが、他方のマウス24も同様な構成となっている。
【0014】制御部30には、テレビカメラ9、CRT20、3軸のモータ40,41,42を制御するためのモータドライバ37、メモリ38、操作部21及び他の入出力部が接続されている。メモリ38には、制御プログラムやクリックボタン25,26で選択された選択結果が記憶される。モータドライバ37には、駆動部12を3軸方向に移動させるためのステッピングモータ(Mx ,My ,Mz )40,41,42が接続されている。
【0015】次に上述の実施例の動作について説明する。制御部30では、図3に示すように、まずステップS1で、初期設定を行う。ここでは、たとえば、粗動の選択結果をメモリ38に記憶するとともに、XYZ軸のうちのXY軸の選択結果をメモリ38に記憶する。ステップS2では、CRT20に、テレビカメラ9で撮像した情報を表示させる。ステップS3では、クリックボタン25のクリックにより粗動が指定されたか否かを判断する。ここでクリックボタン25をクリックするごとに粗動と微動とが繰り返されるので、現在粗動である場合にクリックボタン25が押されると、微動になり、現在微動である場合にクリックボタン25が押されると粗動になる。この微動及び粗動の選択結果については、CRT20に表示される。
【0016】粗動であると判断するとステップS4に移行する。ステップS4では、モータドライバ37から各モータ40,41,42に出力するパルス速度をP1 にセットする。このパルス速度P1 は粗動用の速い速度である。また、クリックボタン25により微動が指定されたと判断するとステップS5に移行する。ステップS5では出力パルス速度をP2 にセットする。このパルス速度P2 は、パルス速度P1 より遅い、微動用の速度である。
【0017】ステップS4またはステップS5でパルス速度が設定されるとステップS6に移行する。ステップS6では、クリックボタン26の操作によりXY軸が選択されたか否かを判断する。ステップS7では、YZ軸が選択されたか否かを判断する。ステップS8ではZX軸が選択されたか否かを判断する。ステップS9では、マウス23,24が操作され、カウンタ33,34及び位相検出回路35,36から制御部に入力があったか否かを判断する。ステップS10では、他の処理を行う。他の処理が終了するとステップS2に戻る。
【0018】ステップS6でクリックボタン26によりXY軸が選択されたと判断するとステップS11に移行する。ステップS11では、ステッピングモータ40,41だけを制御するように選択結果をメモリ38に記憶する。同様に、ステップS7またはステップS8でYZ軸またはZX軸が選択されたと判断すると、ステップS12またはステップS13に移行して選択結果をメモリ38に記憶する。
【0019】ステップS9でパルス入力があったと判断するとステップS14に移行する。ステップS14では、カウンタ33及びカウンタ34のカウント結果により、選択された2軸の移動距離を演算する。ここで操作者はCRT20の画面を見ながらマウス23を操作し、処理物に対する処理を行う。ここではマウス23の2軸方向の動きをエンコーダ31,32で捕らえ、その距離を算出する。ステップS16では、位相検出回路35,36の出力により、選択された2軸の正負の方向を検出する。ここでは位相差が正であれば正方向に、負であれば負方向に移動したと判断する。ステップS16では、ステップS14で演算された距離及びステップS15で検出された方向に、選択された2軸用のモータを駆動する。これにより、駆動部12,13がマウス23,24で指示された方向及び距離に移動する。
【0020】ここでは、マウス23,24はそれぞれ片手で操作可能であり、粗動,微動の選択及び2軸の選択をマウス上のクリックボタン25,26、27,28で選択可能である。また、片手でマウスを動かすだけで、選択された2軸の動作を簡単に行える。たとえば、図5(A)に実線で示すZY軸上の動作は、マウス23,24を実線で示す曲線のように動かせば簡単に実現できる。また、この状態からZY軸上で操作する場合には、クリックボタン26,28を操作してZY軸を選択すれば(ステップS13)、図5(B)に示すような、ZY軸上の操作に容易に移行できる。
【0021】〔他の実施例〕
(a) 操作手段としては、マウスに代えて、前後及び左右に傾動可能なジョイスティックやトラックボール等の2軸を同時操作可能な他の手段を採用してもよい。
(b) 前記実施例では、微動及び粗動を双方ともマウスで操作するようにしたが、微動または粗動だけをマウスで操作するようにしてもよい。
【0022】
【発明の効果】本発明に係るマイクロマニピュレータ用操作装置では、3軸のうちの2軸を軸選択手段により選択し、選択された2軸に関する移動指令を操作手段により入力し、操作手段の操作に応じて、選択手段で選択された2軸上で移動手段を移動させるので、マイクロマニピュレータの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を採用したマイクロマニピュレータシステムの概略図。
【図2】その制御ユニットのブロック構成図。
【図3】制御ユニットの制御フローチャート。
【図4】エンコーダのタイミングチャート。
【図5】操作内容を説明する図。
【符号の説明】
3,4 マイクロマニピュレータ
12,13 駆動部
23,24 マウス
26,28 クリックボタン
30 制御部
37 モータドライバ
40,41,42 ステッピングモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】空間内の3軸方向に移動可能な移動手段を有するマイクロマニピュレータの操作装置であって、2軸に関する移動指令を入力するための操作手段と、前記3軸のうちの2軸を選択するための軸選択手段と、前記操作手段の操作に応じて、前記軸選択手段で選択された2軸上で移動させる指令を前記移動手段に出力する指令出力手段と、を備えたマイクロマニピュレータ用操作装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−8171
【公開日】平成6年(1994)1月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−170816
【出願日】平成4年(1992)6月29日
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)