説明

マイクロ反応器における、アルコール、チオール、およびアミンのアセトアセチル化

本発明は、式(I)(式中、X=NR’、OまたはSであり;R、R’、R−Rは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アリールまたはヘテロアリールである。)のβ−ケトカルボン酸誘導体またはこれらの塩の生成方法であって、式(II)のジケテンと、式ROH、NHRR’、またはRSHの活性水素を含む化合物との反応による方法であり、この反応がマイクロ反応器において連続的に実施されることを特徴とする方法に関する。
【化10】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジケテンおよび誘導体化ジケテンを用いてアルコール、チオール、およびアミンをアセトアセチル化するための、環境に優しく、経済的に実現可能な方法であって、リスクの可能性に関して非常に安全な方法に関する。
【0002】
アルコール、アミン、およびチオールのアセトアセチル化の生成物は、数多くの化学反応における重要な中間体である。例えば、アルコールのアセトアセチル化は、アセトアセチルエステルの製品グループを生じる。これらは、活性製薬成分、塗料、および農薬の合成用中間体の調製のための重要な原料となる。アミンのアセトアセチル化は、アセトアセチルアミドの製品グループを生じる。これらは、用途が広い中間体、例えば顔料および反応性染料の調製のための中間体である。工業的には、これらの製品は、従来、バッチプロセスにおいて調製されている。さらには、薄膜蒸発器、タンク、ミキサー、およびループ反応器における連続プロセスも記載されている。
【0003】
これらの製品の純度、品質、および一貫性のある品質のために、プロセスパラメーター、例えば温度、時間、および混合の監視は、すべてのプロセスにおいて不可欠である。実験室規模から、工業生産規模への新製品の拡大において、特にバッチプロセスの場合、非常に大きいさらなる問題がある。特に、先行技術のプロセスは、プロセス条件が非常に注意深く監視され、および反応が厳密に制御されているときでさえ、不純物を生じる。
【背景技術】
【0004】
ドイツ特許第DE−A−2612391号は、水中での5−アミノベンズイミダゾロン−2およびジケテンからの5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロンの連続調製方法に関する。
【0005】
欧州特許第EP−A−0648748号は、水溶性(C−C)−アルコール、または水中のこのアルコールの混合物の存在下、5−アミノベンズイミダゾロン−2およびジケテンからの、5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロン−2の調製方法に関する。実施例1において、各々の場合、50重量%の水とエタノールとの溶媒混合物中に82℃で調製された5−アミノベンズイミダゾール−2−オン10.6重量%を含有する溶液が、攪拌機、温度計、および底部出口を有する反応器において85℃で連続的にジケテンと反応させられる。アミン溶液および過剰ジケテンは、同時に計量供給(meter)される。溶媒混合物および高温の使用は不利であるが、その理由は、ジケテンが、これらの反応条件下、水およびアルコールの両方とともに、望ましくない副生物を形成するからである。これらの副生物は、所望の反応生成物である5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾール−2−オンから除去されなければならず、これらはジケテンのより高い消費を生じる。水と(C−C)−アルコールとの溶媒混合物の高い溶解能力は、これらの生成物に対して特に不利な効果を有し、したがって、15℃に冷却してこれらの生成物を結晶化するためには、多量のエネルギーが加えられなければならない。収率を高めるために、さらには母液が、生産プロセス中に再循環されなければならない。
【0006】
したがって、アルコール、チオール、およびアミンのアセトアセチル化方法であって、プロセスパラメーターを最適に制御することができ、純粋反応生成物が、除去することが難しい副生物および/または未転化出発物質の最小レベルをもって形成され、実験室規模から工業的規模への簡単な拡大を可能にする方法を見出すことが、本発明の1つの目的である。
【0007】
あるいくつかの化学反応を、マイクロ反応器において実施することができることは知られている。マイクロ反応器は、構造化された板の積み重ねから構成されており、例えばドイツ特許第DE−A−3026466号に記載されている。同様に、マイクロ反応器は、マイクロチャネルを遮断することがあるどんな材料も固体も必要とせず、生成もしない反応のために用いられることも知られている。
【発明の開示】
【0008】
今や、マイクロ反応器は驚くべきことに、アルコール、チオール、およびアミンのアセトアセチル化に適していることが、発見されている。これらの製品は、選択的反応条件下、液体生成物、溶融物として、溶解されるか、または結晶化されて得られる。マイクロ反応器の使用によって、ジケテンのアミン、アルコールまたはチオールに対する比を、先行技術と比較して明らかに減少させることができるのみならず、副生物の明らかに減少した濃度も、驚くべきことに生じる。さらには、溶媒混合物の使用をともなわない水中反応も可能であり、これの結果として、最終生成物の単離のためのおそらくは燃焼性の溶媒の除去を、なしで済ませることができる。反応生成物は、さらなる精製および単離工程をともなわずに用いることができる。
【0009】
本発明は、式(I):
【0010】
【化4】

(式中:
Xは、NR’、O、またはSであり;
R、R’は各々独立して、Hであるか、1から18個の炭素原子を有する直鎖、枝分かれ、または環状アルキルまたはアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであり、ここにおいて、前記アルキル、アルケニル、アリールおよびヘテロアルキル基中の1つまたはそれ以上の水素が、不活性置換基によって置換されていてもよく、
、R、RおよびRは、各々独立してHであるか、1から18個の炭素原子を有する直鎖、枝分かれまたは環状アルキルまたはアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであり、ここにおいて、前記アルキル、アルケニル、アリールおよびヘテロアルキル基中の1つまたはそれ以上の水素が、不活性置換基によって置換されていてもよく、
またはRおよびRおよび/またはRおよびRは、互いに結合し、シクロアルカン環−CH−(CH−CH−(式中、k=0、1、2、3、または4である。)のメチレン単位を形成する。)
のβ−ケトカルボン酸誘導体またはこれらの塩の調製方法であって、
式(II):
【0011】
【化5】

のジケテンと、式ROH、NHRR’、またはRSHの活性水素含有化合物との反応による方法であり(ここにおいて、RおよびR’は各々上に記載されている。)、該反応をマイクロ反応器において連続的に実施する工程を含む、前記方法
を提供する。
【0012】
本発明において、アルケニルは、少なくとも1つのC=C二重結合を有する脂肪族炭素基であると理解される。複数の二重結合が存在してもよく、共役していてもよい。
【0013】
本発明において、不活性置換基とは、ジケテンと、活性水素を含有する化合物との反応のために用いられる反応条件下に実質的に非反応性の置換基であると理解される。不活性置換基の典型例は、アルキル、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、特にF、Cl、およびBr、−CN、−NOであり、この場合、アルキルおよびアルコキシ基は好ましくは、1から6個の炭素原子であり、アラルキルは好ましくは、例えばベンジルを包含するC−C10−アリール−C−C−アルキルである。さらには不活性置換基は、それ自体反応性であるような基、例えば−OHまたは−NHであってもよいが、保護基によって保護されている。
【0014】
本発明において、アリールは、少なくとも1つの芳香族環を含む基であると理解される。このようなアリールの例は、フェニル、スルホフェニル、ナフチル、およびもう1つの多環芳香族、例えばピレンであり、これらは不活性置換基によって置換されていてもよい。ヘテロアリールは、少なくとも1つのヘテロ原子、場合によっては複数のヘテロ原子、例えばN、O、S、または/およびPを、芳香族環構造中に含んでいる。ヘテロアリールの例は、ピリジル、ピリミジル、チアゾリル、キノリニル、インドリルである。
【0015】
本発明の1つの実施態様において、R、R、RおよびRは、各々独立して、Hであるか、1から18個、一般的には1から12個、例えば1から6個の炭素原子を有する直鎖または枝分かれアルキルである。このようなアルキルは、場合により不活性置換基によって置換されている。
【0016】
本発明の特定の実施態様において、Rはアリールまたはヘテロアリールであり、R’はH、アリールまたはヘテロアリールである。好ましい実施態様において、Rは、次の式(III)、(IV)および(V)の基から選択され、R’は、H、または次の式(III)、(IV)および(V):
【0017】
【化6】

(式中、Mは、水素またはアルカリ金属、特にNaまたはKであり;
Yはハロゲン、特にClであり、
およびRは、各々独立して、水素であるか、1から6個の炭素原子を有する直鎖または枝分かれアルキル、特にメチルまたは/およびエチルであり、
およびRは、各々独立して、1から18個の炭素原子を有する直鎖、枝分かれまたは環状アルキルまたはアルケニルであり、ここにおいて、1つまたはそれ以上の水素はまた、不活性置換基によって置換されていてもよく、
l、m、およびnは、各々0から5の整数であり、l+m+n≦5である。)
の基から選択される。
【0018】
本発明による方法の特定の実施態様において、対応アミン、すなわち式HNRR’(式中、Rは、式(III)、(IV)および(V)の化合物であり、R’は、Hであるか、または式(III)、(IV)および(V)の化合物であり、R’は、より好ましくはHである)の化合物が用いられる。
【0019】
特定の実施態様において、Rは、式(IV)の化合物であり、RおよびRは、各々Hであり、R’はHである。すなわち、活性水素を含有する化合物は、5−アミノベンズイミダゾロン−2である。
【0020】
本発明のさらにもう1つの実施態様において、活性水素を含有する化合物は、脂肪族アルコールである。すなわちXはOであり、Rは、場合により不活性置換基によって置換されている直鎖または枝分かれアルキルである。一般に、1から12個、特に1から6個の炭素原子を有する脂肪族アルコールが用いられる。特に、活性水素を含有する化合物は、メタノール、エタノール、(イソ)プロパノールまたは第三ブタノールであってもよい。
【0021】
本発明による方法によって調製される特に好ましい生成物は、メチル3−オキソブタノエート、エチル3−オキソブタノエート、イソプロピル3−オキソブタノエート、イソブチル3−オキソブタノエート、第三ブチル3−オキソブタノエート、4−アセトアセチルアミノベンゼンスルホン酸、5−アセトアセチルアミノ−2−ベンズイミダゾロン、アセトアセチルアミノベンゼン、4−アセトアセトアミノ−1,3−ジメチルベンゼン、2−アセトアセチルメトキシベンゼン、2−クロロアセトアセトアミノベンゼン、3−アセトアセトアミノ−4−メトキシトルエン−スルホン酸、またはこれらの塩である。
【0022】
β−ケトカルボン酸誘導体の特に好ましい例は、メチル3−オキソブタノエート、イソプロピル3−オキソブタノエート、5−アセトアセチルアミノ−2−ベンズイミダゾロン、4−アセトアセチルアミノベンゼンスルホン酸、またはこれらの塩である。
【0023】
連続的にとは、本明細書において、反応体が、バッチ式プロセスとは対照的に、マイクロ反応器に連続的に供給されることを意味すると理解される。
【0024】
従来方法と比較して、マイクロ反応器における本発明の反応は、より高い純度と組み合わされた、所望の反応生成物のより良い収率を生じることが発見されている。このことは、未反応出発化合物のより低い含量、および望まれない副生物のより低い含量による結果であるとすることができる。出発化合物、特にジケテンの比較的高い転化率も、反応混合物中のジケテンの高い含量または蓄積の回避に寄与する。このことは実際、かなり大きい安全性の側面を構成する。
【0025】
驚くべきことに、この反応が、比較しうる反応条件下にマイクロ反応器において実施されるとき、従来の反応器、例えば管状反応器における反応の場合とは異なる溶媒系を用いることが可能であることも発見されている。例えば、5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロン−2の調製のための5−アミノベンズイミダゾロン−2とジケテンとの反応において、アミンが、有機溶媒の不存在下に水溶液として用いることができることが発見された(実施例2参照)。これに反して、公知の先行技術は、水溶性(C−C)−アルコール、または水中のこのアルコールの混合物の存在下のこの反応の実施を教示している(欧州特許第EP−A−0648748号参照)。有機溶媒の存在は、特に生成物の単離、環境的側面、およびコストにおける潜在的問題の観点から不利であることが公知である。
【0026】
本発明による方法は、出発化合物の1つが、水溶液中への比較的低い溶解性を有するときでさえ、用いることができる。
【0027】
この反応は、適切であれば、触媒、特に塩基性触媒の存在下に実施される。適切な触媒は当業者に知られており、したがって本明細書において詳細には例証されない。例えばこの触媒は、アミン、特に第三アミン、またはこれらのアンモニウム塩であってもよい。例えば立体障害第三アミンが、触媒として適切である。適切な触媒の例は、ジメチルステアリルアミン、トリブチルメチルアンモニム塩化物、NHアセテート、および1,4−ジアゾビシクロ[2,2,2]−オクタン(=DABCO)である。
【0028】
このような触媒は一般的に、活性水素を含有する化合物1モルあたり0.01から3ミリモル、好ましくは0.10から1.5ミリモル、特に0.25から1.0ミリモルの量で存在する。
【0029】
活性水素を含有する化合物がアミンであるとき、触媒の存在は一般的には必要とされず、したがって好ましくない。しかしながら触媒は、活性水素を含有する化合物がアルコールまたはチオールであるときに、有利に用いられる。
【0030】
反応が、本発明にしたがってマイクロ反応器において実施されるとき、高いジケテン過剰は必要とされず、にもかかわらず、この方法が、同時に中温範囲で実施されるときに良好な収率が得られることが発見されている。
【0031】
本発明の好ましい実施態様において、ジケテン(II)の活性水素を含有する化合物に対するモル比は、したがって1:1から1.25:1である。用いられるジケテンの量におけるさらなる減少、例えば1:1から1.1:1以下、特に1:1から1.05:1への減少が多くの場合可能であることが発見されている。
【0032】
この反応の温度は適切には、反応が所望の反応速度および/または選択率で進行し、好ましくは反応生成物または/および出発原料の熱分解が発生せず、または/および副反応が許容しうる程度に保持される温度である。過度に高い温度において、反応体または所望の生成物の熱分解が発生することがあり、望まれない副反応が促進されることがある。あまりにも低い温度において、この反応は、不十分に進行する場合があり、その結果生じた反応混合物は、除去するのが難しいことがある未反応出発原料の高い含量で汚染されていることがある。比較しうる溶媒系を用いておよび同等のかまたはより良好な収率をともなう、マイクロ反応器における本発明の反応において、公知の先行技術にしたがう方法よりも低い温度を用いることができ、このことは一般に、副生物のより低い含量という結果を有することが発見されている。
【0033】
一般的に本発明によれば、反応は、40から150℃、好ましくは50から100℃、特に60から80℃の温度で実施される。
【0034】
本発明の反応が実施される圧力は、特に決定的ではなく、温度に関連して上に記載されたパラメーターの関数として当業者によって選択される。コストの理由から、反応器出口を基準にした大気圧において反応を実施することが好ましい。
【0035】
マイクロ反応器における成分の遅延時間は一般に、1秒から30分である。ただし、より長いかまたはより短い遅延時間も可能である。一般的には遅延時間は、0.5から10分、例えば0.75から5分、特に1から3分である。
【0036】
本発明による方法における流量は一般に、0.05ml/分から5.0l/分、より好ましくは0.05ml/分から250ml/分、特に0.1ml/分から100ml/分である。
【0037】
ジケテンおよび/または活性水素を含有する化合物が、反応温度において液体または気体形態にあるとき、これらは実質的に、または溶液の形態でマイクロ反応器に供給されてもよい。これらが反応温度において固体であるとき、これらは適切には、縣濁液または溶液の形態でマイクロ反応器へ供給される。適切な希釈剤および溶媒は、当業者に知られており、したがって詳細には例示されない。好ましい実施態様において、ジケテンまたは/および活性水素を含有する化合物は、水溶液または水性縣濁液の形態で、マイクロ反応器中に供給される。
【0038】
用いられるマイクロ反応器は、例えば第WO01/59013A1号に開示されているものであってもよい。
【0039】
例えば、ここに引用されている文献から、またはドイツ国のインスティトゥート・ヒュア・ミクロテヒニーック・マインツ社(Institut fur Mikrotechnik Mainz GmbH)の出版物から知られているようなマイクロ反応器、または市販されているマイクロ反応器、例えばフランクフルト・アム・マインのセリュラー・プロセス・ケミストリー社(Cellular Process Chemistry GmbH)からのサイトス(Cytos)(商標)をベースとするセレクト(Selecto)(商標)が用いられてもよい。
【0040】
マイクロ反応器はまた、下記のような微小規模でのチャネルを含んでいる静的マイクロミキサーと、これに接着された加熱可能な遅延帯域、例えば長さ0.5から5mおよび内径1から5mmの毛管との組合わせであるとも理解される。
【0041】
本発明において用いられているマイクロ反応器の反応チャネルは、あらゆる横断面、好ましくは丸い横断面を有し、一般に最長寸法200から1,000μm、好ましくは400から800μm、特に500から700μmの直径を有する毛管である。
【0042】
本発明の利点は特に、安全性の観点から、および環境的理由から有利である効率的な方法の提供、および同時に、良好な収率での非常に純粋な生成物の調製が可能なことにある。例えば、5−アセトアセチルアミノ−2−ベンズイミダゾロンの調製を基準にした場合、本発明による方法における未転化5−アミノベンズイミダゾロン−2による汚染物の含量は、一般的に150ppm未満であるが、一方、従来方法におけるこの含量は、500ppmまでの規模の程度にある。副生物、例えばアセチルアセトンによる汚染物の含量も同時に、マイクロ反応器技術が用いられるとき、一般的には500ppm未満であるが、一方、従来方法には20,000ppmまでが存在する。
【実施例1】
【0043】
イソプロピル3−オキソブタノエート
イソプロパノールと、触媒としての1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンとを混合した(1ミリモル/イソプロパノールモル)。この溶液およびジケテンを、2つのポンプを用いて室温で静的マイクロミキサー中へ計量供給した。マイクロミキサーの出口において、ステンレス鋼毛管を、遅延帯域として接着させた。毛管の長さは、1.453から2.0mの様々なものであり、内径は0.19から0.3cmであった。
【0044】
反応成分の正確な計量供給は、重量測定的に制御した。これら2つの反応体は、1.0:1.03(イソプロパノール/ジケテン)の比として計量供給した。流量は、1.0から12.5モルの生成物/時または2.6から31.9cm/分であり、これは、16から3.2分の遅延時間に相当する。遅延帯域は、50℃から70℃に加熱した。
【0045】
反応の経過は、ガスクロマトグラフィーによって監視した。イソプロピル3−オキソブタノエートのGCにおける95から98面積(area)%の含量を有する反応混合物が得られる。
【0046】
【化7】

【実施例2】
【0047】
メチル3−オキソブタノエート
メタノールと、触媒としての1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンとを混合した(1ミリモル/メタノールモル)。この溶液およびジケテンを、2つの歯付き環マイクロポンプを用いて室温で静的マイクロミキサー中へ計量供給した。マイクロミキサーの出口において、遅延帯域としてステンレス鋼毛管を接着させた。毛管の長さは、1.453mであり、内径は0.19cmであった。
【0048】
反応成分の正確な計量供給は、重量測定的に制御した。これら2つの反応体は、1.0:1.03(メタノール/ジケテン)の比として計量供給した。流量は、1.0モルの生成物/時または2.0cm/分であり、これは、20.6分の遅延時間に相当する。遅延帯域を、20℃に加熱した。反応の経過は、ガスクロマトグラフィーによって監視した。メチル3−オキソブタノエートの95.0面積%の含量を有する反応混合物が得られる。
【実施例3】
【0049】
アセトアセチルアミノベンゼンスルホン酸
スルファニル酸カリウム塩溶液を、従来の方法でバッチ式に調製し、1.25MおよびpH7.1の濃度に調節する。ジケテン(13.0M)を、平行して調製する。マイクロ反応器(型:サイトス(登録商標)、セレクト(登録商標)、CPC)の設定された反応パラメーターが得られた後、2つの反応体溶液を、予め目盛りが定められている(precalibrated)ポンプを用いてマイクロ反応器中に運ぶ。マイクロ反応器の出口において、ステンレス鋼毛管を接着させた。毛管の長さは、1.453から2.0mの様々なものであり、内径は0.19から0.3cmであった。
【0050】
ついで、マイクロ反応器および毛管において、規定された反応条件下(反応温度55から75℃、遅延時間約1から5分)、発熱アセトアセチル化反応が発生する。ついで最終生成物溶液を、マイクロ反応器から排出し、受容器に収集する。
【0051】
【化8】

【0052】
【表1】

MRTは、100分以内に、例えば1.25Mスルファニル酸カリウム塩溶液10.0ml/分の流量で、アセトアセチルスルファニル酸カリウム塩350gの全体的な収率を達成するために用いることができる。これは、95.0%の収率に相当する。
【実施例4】
【0053】
5−アセトアセチルアミノ−2−ベンズイミダゾロン(アセトロン)
5−アミノベンズイミダゾロンの溶液(アミノロン溶液)を、バッチ式に従来の方法で調製する。5−アミノベンズイミダゾロン(アミノロン)を、94℃に加熱された亜硫酸水素ナトリウム溶液中に導入する。活性炭および(登録商標)ジカライト(Dicalite)(清澄化助剤(clarifying assistant))を添加した後、アミノロン溶液を、濾過によって直ちに清澄化する。アミノロン溶液を、0.5Mの濃度に調節する。アミノロンが、この溶液から結晶化して戻らないように、0.5Mアミノロン溶液を、約90℃に保持する。平行して、ジケテン(13.0M)を調製する。マイクロ反応器(型:サイトス/セレクト(登録商標)、CPC)の設定された反応パラメーターが得られた後、2つの反応体溶液を、予め目盛りが定められているポンプを用いてマイクロ反応器中に運ぶ。マイクロ反応器の出口において、ステンレス鋼毛管を接着させた。毛管の長さは、1.453から2.0mの様々なものであり、内径は0.19から0.3cmである。ついで、マイクロ反応器および毛管において、規定された反応条件下(反応温度55から75℃、遅延時間約1から5分)、発熱アセトアセチル化反応が生じる。反応混合物を、受容器に収集する。20℃に冷却した後、アセトロンが沈殿し、したがってこれはその後濾去することができる。この反応温度および遅延時間に関する一連の実験は、約50℃以上においてのみ、および約60秒の遅延時間においてのみ、完全な反応が達成されうることを示している。
【0054】
【化9】

【0055】
【表2】

【0056】
MRTは、60分以内に、例えば0.15Mアミノロン溶液10.75ml/分の流量で、アセトロン68.0gの全体的な収率を達成するために用いることができる。これは、90.0%の収率に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中:
Xは、NR’、O、またはSであり;
R、R’は各々独立して、Hであるか、1から18個の炭素原子を有する直鎖、枝分かれまたは環状アルキルまたはアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであり、ここにおいて、前記アルキル、アルケニル、アリールおよびヘテロアルキル基中の1つまたはそれ以上の水素が、不活性置換基によって置換されていてもよく、
、R、RおよびRは、各々独立してHであるか、1から18個の炭素原子を有する直鎖、枝分かれまたは環状アルキルまたはアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであり、ここにおいて、前記アルキル、アルケニル、アリールおよびヘテロアルキル基中の1つまたはそれ以上の水素が、不活性置換基によって置換されていてもよく、
またはRおよびRおよび/またはRおよびRは、互いに結合し、シクロアルカン環−CH−(CH−CH−(式中、k=0、1、2、3、または4である。)のメチレン単位を形成する。)
のβ−ケトカルボン酸誘導体またはこれらの塩の調製方法であって、
式(II):
【化2】

のジケテンと、式ROH、NHRR’またはRSHの活性水素含有化合物との反応による方法であり、前記反応をマイクロ反応器において連続的に実施する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
R、R’、R、R、RおよびRが、各々独立して、Hであるか、1から6個の炭素原子を有する直鎖または枝分かれアルキル、フェニル、スルホフェニル、ナフチル、ベンジル、ピリジル、ピリミジル、チアゾリル、キノリニル、またはインドリルであり、これらの各々は場合により、アルキル、アラルキル、アルコキシ、シアノ、ニトロまたはハロゲンによって置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが、次の式(III)、(IV)および(V)の基であり、R’が水素であるか、または次の式(III)、(IV)および(V):
【化3】

(式中、Mは、水素またはアルカリ金属であり;
Yはハロゲンであり、
およびRは、各々独立して、1から6個の炭素原子を有する直鎖または枝分かれアルキルであり、
およびRは、各々独立して、1から18個の炭素原子を有する直鎖、枝分かれまたは環状アルキルまたはアルケニルであり、ここにおいて、1つまたはそれ以上の水素はまた、不活性置換基によって置換されていてもよく、
l、m、およびnは、各々0から5の整数であり、l+m+n≦5である。)
の基である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
メチル−3−オキソブタノエート、エチル3−オキソブタノエート、イソプロピル3−オキソブタノエート、イソブチル3−オキソブタノエート、第三ブチル3−オキソブタノエート、4−アセトアセチルアミノベンゼンスルホン酸、5−アセトアセチルアミノ−2−ベンズイミダゾロン、アセトアセチルアミノベンゼン、4−アセトアセトアミノ−1,3−ジメチルベンゼン、2−アセトアセチルメトキシベンゼン、2−クロロアセトアセトアミノベンゼン、3−アセトアセトアミノ−4−メトキシトルエン−6−スルホン酸、またはこれらの塩の群からの化合物の1つが調製される、請求項1から3の1つまたはそれ以上に記載の方法。
【請求項5】
前記反応が、塩基性触媒の存在下に実施される、請求項1から4の少なくとも1つに記載の方法。
【請求項6】
式(II)のジケテンの活性水素を含有する化合物に対するモル比が、1:1から1.25:1である、請求項1から5の少なくとも1つに記載の方法。
【請求項7】
前記反応が、温度40から150℃で実施される、請求項1から6の少なくとも1つに記載の方法。
【請求項8】
前記反応が、1秒から30分間の、マイクロ反応器における成分の遅延時間をもって実施される、請求項1から7の少なくとも1つに記載の方法。
【請求項9】
活性水素を含有する化合物が、水性縣濁液または水溶液としてマイクロ反応器中に供給される、請求項1から8の少なくとも1つに記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロ反応器が、静的マイクロミキサーおよび加熱可能な遅延帯域からなる、請求項1から9の少なくとも1つに記載の方法。

【公表番号】特表2006−514079(P2006−514079A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567309(P2004−567309)
【出願日】平成15年12月13日(2003.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014200
【国際公開番号】WO2004/067492
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(598109501)クラリアント・ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】