説明

マイクロ機械的リング振動子用温度補償機構

【課題】温度補償機構を備えたマイクロ機械的リング振動子を提供する。
【解決手段】振動子は、基板上に支持されて回転軸を中心として、基板に略垂直に振動するように構成された一体形マイクロ機械的リング振動子であって、リング振動子は、回転軸に沿って基板から延びる中央支柱と、中央支柱に連結されるとともに、回転軸と同軸の外リング60を備え、複数のばね素子によって中央支柱に連結された自立振動構造体と、外リング60の周囲に配設され、集積電子回路に接続された電極構造体とを備える。自立振動構造体はさらに、リング振動子の共振振動数に対する温度の影響を補償するために、自立振動構造体の質量慣性モーメントを温度の関数として変更するように構成された複数の熱補償部材65を外リング60の周囲に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間基準部、すなわち、振動子と、振動子を駆動して振動させると共に、この振動に応答して所定振動数を有する信号を発生する集積電子回路とを含む装置およびそのような時間基準部を使用する振動子に関する。本発明は、特に、振動子の共振振動数に対する温度の影響を補償するための補償機構に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計および他の時計から複雑な通信装置までのさまざまな電子装置に時間基準部、すなわち振動数標準部が必要である。そのような時間基準部は一般的に、水晶振動子と、振動子を駆動して振動させる電子回路とを含む発振器によって形成されている。低振動数が得られるように、発振器が発生した信号の振動数を分周するために、追加の分周チェーンを使用してもよい。回路の他の部分が、たとえば、分周チェーンの分周比を調整することによって振動数を調整する働きをすることができる。電子回路の構成部材は、CMOS技術で単一の半導体基板上に集積されている。振動数処理には直接的には関係ない他の機構を同じ基板上に集積してもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水晶振動子の利点は、それらの高いQ値にあり、それによって振動数安定性が良好になり、電力消費量が低下すると共に、温度安定性が良好になる。しかし、水晶振動子を使用した一般的な時間基準部の欠点として、高精度振動数とするためには、水晶振動子と集積電子回路の2部材が必要である。個別の水晶振動子はボード空間を必要とする。ボード空間は多くの場合に不足している。たとえば、腕時計に使用される標準的な水晶振動子は、2×2×6mm3 程度の空間を必要とする。さらに、2つの構成部材の組み立ておよび接続によって、追加コストが発生する。しかし、特に成長分野の携帯式電子装置では、空間および組み立てコストが大きな問題である。
【0004】
上記問題に対する解決策は、一体に組み込んだ振動子を有する時間基準部を提供することである。
【0005】
より詳細には、一つの解決策としては、基板上に支持された一体形マイクロ機械的リング振動子であり、回転軸を中心として基板に略垂直に振動するように構成された振動子と、振動子を駆動して振動させ、振動に呼応して所定の振動数を有する信号を生成するための集積回路を備えた時間基準部を提供することであって、リング振動子は、
回転軸に沿って基板から延びる中央支柱と、
中央支柱に連結され、回転軸と同軸の外リングを備え、複数のばね素子によって中央支柱に連結された自立振動構造体と、
外リングの周囲に配設され、集積電子回路に接続された電極構造体とを備えている。
【0006】
この解決策の利点は、単一基板上に完全に一体化することができ、大量生産に適し、CMOS技術に適合する時間基準部を提供できることである。さらに、そのような時間基準部は低価格であると共に、半導体チップ上の非常に小さい表面積しか必要としないという利点を有する。
【0007】
時間基準部の利点はマイクロ機械的リング振動子が高いQ値を示すことにある。2×105もの高い品質係数が計測された。それと比較して、音叉水晶振動子は、通常、音叉の枝のレーザートリミング後に5×104〜1×105の値を示す。高いQ値を助長する異なる構造特徴が提案されている。
【0008】
さらに、ある共振振動数に対して、リング振動子を形成するために基板上に必要とされる表面積が、他の振動子と比較して小さい。
【0009】
電子回路が、マイクロ機械的リング振動子とともに基板上に好都合に一体化されており、それにより低価格の時間基準部が得られる。また、ウェハボンディング技術を使用して振動子をウェハレベルパッケージすることによっても、低価格化が得られる。
【0010】
同様の特徴を有するリング振動子が、角速度センサ、加速度計またはジャイロスコープなどの感知装置から周知であることを指摘する必要がある。たとえば、パティ(Putty)他の米国特許第5,450,751号およびスパークス(Sparks)の米国特許第5,547,093号は共に、シリコン基板の上方に支持されたメッキ金属リングおよびばねシステムを有する振動ジャイロスコープ用のマイクロ機械的リング振動子を開示している。ザラバディ(Zarabadi)他の米国特許第5,872,313号は、温度変化に対して最低限度の敏感性を示すように構成された上記センサの変更例を開示している。米国特許第5,025,346号も、ジャイロスコープまたは角速度センサ内のマイクロセンサとして使用するリング振動子を開示している。
【0011】
しかし、上記特許のいずれも、発振器回路においてそのような形式のリング振動子を振動数標準部または時間基準部として機能するように使用することを表示または暗示していない。さらに、これらの特許に開示されているリング振動子の多くの構造特徴(たとえば、ばね素子の形状および数)は、振動数安定性および低電力消費量が必須である時計用途に適さないようなものである。たとえば、米国特許第5,025,346号に開示されている共振構造体では、Q値が20〜140であって、これは時計用途の高精度時間基準部に使用するには低すぎるのに対して、時計に使用される水晶振動子は、1×104 ×105 程度のQ値を示す。
【0012】
上記の解決策の範囲において、高いQ値、駆動電圧の振幅の変動に対する高い振動数安定性、さらに組み立て処理のばらつきの許容誤差を与えるさまざまな構造特徴が提案されている。実際に、発振器としての用途での主要目的の1つは、高いQ値である。高いQ値であることによって、時計用途に必要な低位相雑音および低電力消費量の安定した振動が得られる。
【0013】
しかし、上記の解決策の問題の一つは、振動子の共振振動数に対する温度の影響が残っているという点である。リング振動子の共振振動数は、0から60℃の温度範囲内において、近似値によると、温度の線形関数である。45kHzの共振振動数では、共振振動数の熱係数は−25ppm/℃程度であることが観測されている。
【0014】
二つの主要な要素は、リング振動子の温度特性を決定する。まず、振動構造体を実現するために使用する材料のヤングのモジュールEは、温度の上昇とともに低下し、ばね素子の剛度が低下し、共振振動数が低くなる。第2に、熱膨張により、リングの直径は温度の上昇とともに増加し、構造体の質量慣性モーメントが増加し、今度は共振振動数も低下する。
【0015】
上記の問題点の一つの解決策は、基板上に温度測定回路を集積して時間基準部によって生成された信号の振動数上の温度の影響を補償することにある。このような振動子の温度依存性の補償は、上記のリング振動子が略線形温度特性を示すという利点を有するため、容易に実現できる。
【0016】
上記の問題のもう一つの解決策は、基板上に第2のマイクロ機械的リング振動子を形成して温度補償を可能とすることにある。
【0017】
本発明の目的は、追加の温度測定回路または追加の振動子を必要としないリング振動子の共振振動数に関する温度の効果を実質的に補償するための機構を提供することである。
【0018】
したがって、振動子とともに、振動子の自立振動構造体が、リング振動子の共振振動数に対する温度の影響を補償するように、温度の関数として自立振動構造体の質量慣性モーメントを変更するように構成された複数の熱補償部材をさらに備えた上記のタイプの時間基準部を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の他の態様、特徴および利点は、添付の図面を参照した非制限的な例および実施形態の以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【0020】
図1は、時間基準部の第1実施形態の上面図を概略的に示す。全体的に参照番号1で表された一体形時間基準部が示されており、これは、振動子4と、振動子を駆動して振動させると共に、この振動に応答して所定振動数を有する信号を発生する集積電子回路3とを含む。図4は、図1に示されたA−A’線に沿ったリング振動子4の断面図である。
【0021】
集積電子回路3は、当該技術分野の専門家であれば容易に設計することができるので、この回路は詳細には示されていない。好ましくは、図1に示されているように、集積電子回路3および振動子4の両方が、同一基板2上に実現されて一体化されている。好適な基板材料はシリコンであるが、本発明の時間基準部を実現するのに等しく適することが当該技術分野の専門家にわかっている他の同様な材料も使用することができる。
【0022】
振動子4は、モノリシックマイクロ機械的共振リング、以下にマイクロ機械的リング振動子と呼ぶものの形として実現されている。これは、実質的に基板2に支持されて、基板2にほぼ垂直な回転軸線Oを中心にして振動することができる。リング振動子4は実質的に、基板2から回転軸線Oに沿って延びる中央支柱5と、全体的に参照番号6で表されて中央支柱5に連結された自立振動構造体とを含む。
【0023】
自立振動構造体6は、回転軸線Oと同軸の外リング60と、中央支柱5を中心にして対称配置されて外リング60を中央支柱5に連結する複数のばね素子62とを含む。ばね素子62は実質的に、湾曲ロッド形ばね素子として形成されている。中央支柱5が、リング振動子4と基板2との間の唯一の機械的連結部を構成しており、振動子の振動が基板2の表面にほぼ平行な平面上で起きることが理解されるであろう。
【0024】
リング振動子4はさらに、図1に参照番号9で表されて外リング60を取り囲む、直径方向で向き合っている対の電極構造体を含む。この第1実施形態によれば、自立振動構造体6の外リング60上に櫛形部材8が設けられている。これらの櫛形部材8は、リングの電極構造体の一部を形成しており、それぞれが外リング60から半径方向に延びるベース部材80と、ベース部材80の両側からほぼ垂直方向に延びる、それぞれ参照番号82および84で表された第1および第2横部材とを含む。
【0025】
電極構造体9は、自立振動構造体の櫛形部材8と噛み合うようにして外リング60を取り囲む第1および第2櫛形電極構造体91および93を含む。さらに具体的に言うと、本実施形態によれば、第1櫛形電極構造体91は、第1電極92を含み、第1電極92が第1横部材82に隣接するようにして、櫛形部材8と噛み合っている。同様に、(第1櫛形電極構造体91と向き合わせて配置された)第2櫛形電極構造体93は、第2電極94を含み、第2電極94が第2横部材84に隣接するようにして、櫛形部材8と噛み合っている。図1に示されているように、横部材82、84と第1および第2電極構造体91、93の電極92、94とは好ましくは、外リング60と同心状の円弧の形を有するように構成されている。
【0026】
本実施形態では、第1櫛形電極構造体91がリング振動子4を靜電的に駆動して振動させる働きをし、ベース部材80の他方側に配置された第2櫛形電極構造体93は振動子の振動を容量的に感知する働きをする。振動子4を取り囲む第1電極構造体91は、基板2上に形成された第1導体11によって互いに接続されており、同様に、第2電極構造体93は、基板2上に形成された第2導体12によって互いに接続されている。これらの導体11、12は、中央支柱5を介してリングに電気接触した第3導体13と共に、電子回路3の適当な端子に接続されている。
【0027】
図4は、図1に示されたA−A’線に沿ったリング振動子4の断面図を示す。厚さおよび他の寸法は一定の比率ではない。基板2と、リング振動子の回転軸線Oに沿った中央支柱5と、外リング60およびばね素子62を含む自立振動構造体6と、櫛形部材8の横部材82と、第1櫛形電極構造体91の電極92と、それぞれ外リング60を取り囲む電極構造体91および93に接続された第1および第2コネクタ11、12とが示されている。図4はさらに、基板2の表面の上方かつリング振動子4の下方に形成された酸化ケイ素層などの第1絶縁層20を示し、これの上に第1および第2導体11、12が形成されている。第1層20の上方かつリング振動子の下方に、別の酸化物層または窒化ケイ素層などの第2絶縁層21が形成されている。
【0028】
好ましくは、共振リング構造体は、当該技術分野の専門家にはよく知られたシリコン表面マイクロ機械加工技術によって製造され、したがってここでは詳細に記載しない。1つのそのような技術は、振動子の自立構造体を形成するために、いわゆる「犠牲層」の上部に付着させた多結晶シリコンを利用する。別の技術は、たとえば、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェハなどに埋め込まれた酸化物層を犠牲層として使用して、単結晶シリコンからなる自立構造体を生じる。しかし、本発明に従ったマイクロ機械的リング振動子を実現するために、他の材料および処理技術を使用することもできる。
【0029】
時間基準部すなわち振動数標準部として用いる場合の主要目的の1つは、振動子の高いQ値である。高いQ値であることによって、時計用途に必要な低位相雑音および低電力消費量の安定した振動が得られる。マイクロ機械的リング振動子のQ値は、後述する多くの構造特徴のために非常に高い。前述したように、これらの構造体では、2×105 もの高いQ値が測定された。それと比較して、音叉水晶振動子は一般的に、音叉の枝のレーザトリミング後に5×104 〜1×105 の値を示す。
【0030】
外リング60を中央支柱5に連結するばね素子62の形状は、高いQ値が得られるように最適化される。直線状のばね素子を使用した時に生じる状態と比較して、この場合の湾曲線に沿った張力は、ばね素子に沿って均一に分布する。湾曲形状は1振動周期当たりのエネルギ損失が最小に保持されるような形状である。
【0031】
また、ばね素子62および中央支柱5間の接合部63は、図2に示されているように、ほぼ垂直である。好ましくは、接合部63に丸形部分すなわちすみ肉63aが設けられている。これらのすみ肉63aは、振動中の切り欠き張力を防止し、それによって、振動中に中央支柱5内でエネルギがほとんどまったく消散しないため、Q値の向上を助長する。さらに、中央支柱5はほぼ張力を受けないため、これも高いQ値を助長する。図3は、ばね素子62と外リング60との接合部64を示す。この場合も、ほぼ垂直の接合部64およびすみ肉64aが好都合な構造である。
【0032】
明確な懸垂に必要な最小の3個ではなく複数のばね素子62を使用することによって、Q値が増加する。材料の不均一性と共に(たとえば、処理中の空間的変動の結果としての)わずかな幾何学的ばらつきが、複数のばね素子全体で平均化されることから、Q値はばね素子の数に伴って増加する。上限は、マイクロ構造処理の設計基準による幾何学的制限によって定められる。したがって、ばね素子の数は、4〜50で、好ましくは20程度である。
【0033】
リング振動子の高いQ値を助長する別の要素は、完全な回転対称構造であって、構造体全体の重心が不動のままであることにある。それによって、ほとんどの他の振動子構造に存在する非線形効果が大幅に除去される。
【0034】
リング振動子の共振振動数は、装置の幾何学的寸法を変化させることによって、広範囲で調整することができる。リング振動子は、外リングのセグメントに連結された複数のばね素子として見なすことができる。ゼロ次概算では、共振振動数のための厳密な代数式を得るために、図5に示されているように、直線状のばね素子22および外リング60のセグメント27の場合を研究することができる。この構造の共振振動数frは:
【0035】
【数1】

【0036】
であり、ここで、J=d・w3/12は構造体の表面慣性モーメントであり、Eは弾性係数であり、d、wおよびlはそれぞれ直線状ばね素子22の厚さ、幅および長さであり、mr、msはそれぞれリングセグメント27およびばね素子22の質量である。上記式から、ばね素子の幅および/または長さの変更によるか、やはり幾何学的寸法を介した外リングの質量(櫛形部材8の質量を含む)の変更によって、共振振動数に影響を与えることができることが容易にわかるであろう。さらに、構造全体の拡大縮小も到達可能な振動数範囲を広くする。
【0037】
そのようなリング振動子の大量生産には、各チップ間で共振振動数を狭い許容誤差に保持することが重要である。リングおよびばねを注意深く一定寸法にすることによって、処理パラメータのわずかな変動による共振振動数の許容誤差を大幅に低減することができる。これは、図5の例を使用しても示すことができる。処理後に参照番号26で表されたばね素子22の幅が、過剰エッチングなどによって、所望幅25より小さい場合、共振振動数が計画振動数より低くなるであろう。しかし、同時に、同じ過剰エッチングによってリング60の質量が(ベース部材80および横部材82、84の質量と共に)小さくなることを考慮した場合、共振振動数の減少は質量の低下によって補償されるであろう。リングの開口および構造体の処理に必要と思われるバー(図示せず)はこの効果を助長する。
【0038】
本発明によるマイクロ機械的リング振動子が必要とする表面積は、得られる共振振動数に対して非常に小さい。たとえば、32kHzの比較的低振動数用に設計された本発明によるリング振動子は、1mm2 未満の表面を必要とするだけである。従来形構造では、そのような低い振動数を得るために比較的大きい構造体を必要とする。ある幾何学的レイアウトにおいて、寸法と振動数とは反比例の関係にある、すなわち、幾何学的寸法が大きいほど、振動数が低くなる。それと比較して、ヨーロッパ特許第0,795,953号は、1MHzの高振動数用に約1.9mm2 の表面を必要とするシリコン振動子を記載している。振動子が必要とする基板の表面積が一体形時間基準部の価格と正比例の関係にあることは明白である。
【0039】
リング振動子の共振振動数は、0〜60°Cの温度範囲では、ほぼ温度の一次関数である。45kHzの共振振動数では、共振振動数の温度係数が−25ppm/°C程度であることが観察されている。したがって、時間基準部が発生する信号の振動数を適切に調整することによって振動数変動を補償するために使用できる出力信号を有する温度測定回路を同じ基板2に組み込むことが望ましい。
【0040】
このために、本発明による時間基準部は、一体化された温度測定回路(図示せず)を含むことが好都合であろう。そのような温度測定回路の一例が、「センサおよびアクチュエータ」A21〜A23(1990年)の636〜638頁のクルメナチャー(Krumenacher)およびH.オギュエイ(Oguey)による論文「CMOS技術におけるスマート温度センサ」に記載されている。この場合、たとえば、当該技術分野の専門家には周知の阻害技術を使用して分周チェーンの分周比に作用することによって、温度補償が行われる。
【0041】
あるいは、異なった共振振動数を有する2つのリング振動子を同一チップ上に一体化してもよく、そのような構造では、2つの振動子の振動数の差を測定することによって、チップ温度を正確に決定することができる(両方のリング振動子は、同一材料で形成されていることから同一温度係数を有する)。
【0042】
上述した一体形時間基準部を使用する利点は2つあり、第1として、リング振動子の温度依存性が線形であり、これによって、温度を補償するために必要な電子信号処理が容易になる。第2のもっと重要利点として、リング振動子の小型かつモノリシック一体化によって、チップ寸法をわずかに増加させるだけで第2振動子を設けることができ、さらなる外部接続が必要ない。
【0043】
あるいは、同時に2つの振動モードで作動する単一のリング振動子を使用することが可能である。これらのモードの第1モードは上記の回転モードである。第2振動モードは傾斜振動モードで、自立構造体6が基板平面に対して傾斜振動を行うようにしてもよい。この傾斜振動モードでは、基板上の、リング部分の下側の位置にさらなる電極を使用することによって、靜電的に励起して、容量的に感知することができる。異なった振動数を有するように2つのモードを選択することによって、振動数の差を測定することによって温度補償を行うことができる。上記傾動モードの概略的な説明が、図11aおよび図11bに示されている。これらの図面に示されているように、ほぼ円弧の形状の2組の電極100および120(この場合は4個)が、基板上の、リング60の下側の位置に配置されて、第1組の電極100が構造体6を駆動して傾斜振動させ、第2組の電極120がこの傾斜振動を感知するようになっている。駆動電極組100および感知電極組120は、中央支柱5に対して構造体6の対向側部に(それぞれ図11aの左側および右側に)配置されている。
【0044】
第2振動モードを垂直振動モードにして、自立構造体6が基板平面に垂直な垂直振動を行う、すなわち、自立構造体6が回転軸線Oに平行な方向に振動するようにしてもよい。上記垂直モードの概略的な説明が、図12aおよび図12bに示されている。これらの図面に示されているように、2組の電極130および150が、基板上の、リング60の下側の位置に配置されて、第1組の電極130が構造体6を駆動して基板平面に垂直に振動させ、第2組の電極150がこの振動を感知するようになっている。傾動モードと異なって、駆動および感知電極組130、150は、中央支柱5を中心にして対称配置されている、すなわち、各電極組が直径方向に向き合った電極を有する。
【0045】
前述したように、図1の実施形態に示された櫛形電極構造体91は、リング振動子を靜電的に駆動して振動させる働きをし、反対側の櫛形電極構造体93は、この機械的振動を容量的に感知する働きをする。振動子の作動時に、交流電圧信号を電極構造体91に印加すると、靜電力がリングに作用してそれを振動させ、それによって、他方組の電極構造体93に交流信号が誘発される。電極構造体91および93が相互交換可能であることは理解されるであろう。
【0046】
電極に印加される電圧と、その結果としてリングに作用する力との間に放物線関係が存在するので、ほぼ線形の力−電圧関係を得るために一定の直流電圧を交流電圧に加えることが望ましい。図1の概略図には、それぞれ電極構造体91、電極構造体93および中央支柱5に接続された3本の信号線すなわち導体11〜13が示されている。これらの線は、リング振動子を駆動して振動させ、この振動をそれぞれの電極構造体によって感知する働きをする。
【0047】
第1例によれば、直流電圧成分を中央支柱5経由でリング振動子に印加するために導体13を使用する一方、導体11によって交流電圧成分を電極構造体91に印加し、それによって生じた信号を感知するために導体12を使用することができる。第2例では、交流駆動電圧および直流電圧成分を合わせて導体11によって電極構造体91に加える一方、リング振動子を導体13によって固定電位、たとえばアースに結合することができる。この場合、導体12は信号を感知するために使用される。電極構造体91および93が相互交換可能であり、変更形として電極構造体93を駆動用に使用し、電極構造体91を感知用に使用してもよいことは理解されるであろう。
【0048】
あるいは、共振のインピーダンスの変化を検出することによって、感知を行ってもよい。図6に示されているように、そのような方法は、2本の導体11および13と、導体11に接続された単一組の櫛形電極構造体91を含む電極構造体9*とを必要とするだけである(それに合わせて櫛形部材8*も変更されて、第1横部材82を有するだけである)。第1例によれば、導体11によって交流駆動電圧が単一組の電極構造体91に印加され、導体13によって直流電圧成分がリングに印加される。別の例によれば、交流および直流の合計駆動電圧を導体11によって電極構造体91に印加することができ、この場合、リングは導体13によってアースなどの固定電位に結合される。
【0049】
2本導体式には2つの利点があり、すなわち、(i)第2導体およびリングを取り囲む第2電極構造体組が不必要になるため、構造体全体の直径が減少し、(ii)外リング60の外周に沿った櫛形電極構造体91の数を増加させることが可能になり、それによって信号が向上する。
【0050】
リング振動子のさまざまな作動モードを以下の表にまとめる。上記例のいずれにおいても、駆動電極およびリングに印加される信号、すなわち、交流駆動電圧および直列電圧成分が完全に相互交換可能であることは理解されるであろう。
【表1】

【0051】
横部材82、84および電極92、94が湾曲形状で、外リング60と同心状であることによって、電気機械的結合における非線形性が減少し、その結果、高いQ値が得られる一方、リング振動子の共振振動数が、交流および直流駆動電圧の振幅からほぼ独立する。さらに、本発明によるマイクロ機械的リング振動子は、低い1.5Vの電圧で駆動することができ、このことは携帯式電子器具には大きな利点である。
【0052】
さらに、靜電的駆動および容量的感知のため、また、構造によって決定される高いQ値のため、リング振動子の電力消費量が水晶の場合の10〜100分の1であり、このことは携帯式電子器具には特に重要である。
【0053】
図7a〜図7cは、衝撃の際にリング振動子が固着することを防止するための3種類の好適な構造特徴を示す。図7aに示された第1例によれば、基板2上に配置されたストッパ構造体28が、ベース部材80の外端部80aに設けられている。これらのストッパ構造体28は、たとえば、機械的衝撃によって過剰角移動が発生した時、リング構造体6の角移動を制限し、それによって自立振動構造体60が電極構造体9上に固着することを防止するように構成されている。
【0054】
あるいは、図7bに示されているように、横部材82、84の先端82a、84aおよび/または電極92、94の先端92a、94aを、固着を防止するように尖った形状か、少なくとも適当に小さい表面積を有するように構成してもよい。
【0055】
最後になるが、図7cの例に示されているように、横部材82、84の1つ82*、84*を他のものより長く形成し、それによって、櫛形部材8および櫛形電極構造体91、93が互いに機械的に接触した時の付着力を減少させることができる。電極92、94の1つを他のものより長くした時も、同じ効果を得ることができることは明白である。
【0056】
図8および図9は、図1に示されたマイクロ機械的リング振動子4の改良を示す。図9は、図8のA−A’線に沿った断面図である。導体パターン31が、自立振動構造体6の少なくとも一部、すなわち、ばね素子62、外リング60および櫛形部材8の下側で基板2の表面上(または下方)に設けられており、この導体パターン31の形状は実質的に、自立振動構造体6を基板2の表面上に投影した形状である。この導体パターン31を自立振動構造体6と同一の電位に接続することによって、リング振動子4および基板2の表面間の基板2に垂直な力が抑制され、直流電圧成分から独立した共振振動数が得られる。
【0057】
図10aと図10bは、本発明に従ったマイクロ機械的リング振動子4のさらなる改良を示し、これは、共振振動数の温度係数をゼロに近い値まで減少させることができる。2つの主要素がリング振動子の温度特性を決定する。第1に、振動構造体を実現するために使用された材料のヤング係数Eが温度上昇に伴って低下し、その結果、ばね素子62の剛度が低下し、従って共振振動数が減少する。第2に、熱膨張によって、リングの直径が温度の上昇に伴って増加する結果、構造体の質量慣性モーメントが増加し、それによっても共振振動数が減少する。
【0058】
図10aまたは図10bに概略的に示されたような補償機構65を導入するために、異なった材料の異なった熱膨張率を利用することができる。図10aおよび図10bに示されているように、複数の温度補償部材65(1つだけが図示されている)が外リング60に取り付けられている。これらの温度補償部材65は、自立振動構造体6の質量慣性モーメントを温度の関数として変更して、振動子4の共振振動数に対する温度の影響をほぼ補償できるように構成されている。このために、部材65は、それぞれ異なった温度係数を有する第1および第2材料で形成された第1および第2層68、69を有する連結部材67によって外リング60に連結されたおもり部材66を含む。材料は、第1層68の熱膨張率αth1が第2層69の熱膨張率αth2より小さくなるように選択される。好適な実施形態では、第1材料がシリコンであり、第2材料が金属、好ましくはアルミニウムである。
【0059】
図10aに従った機構65の構造は、温度の上昇に伴って、第1および第2層68、69の熱膨張が異なることによって連結部材67がまっすくになるような構造である。その結果、おもり部材66がリングの中心に向かって移動する、すなわち、振動構造体6の回転軸線Oに接近し、それによってリング振動子の質量慣性モーメントが減少する結果、共振振動数が増加して、共振振動数に対するリングのヤング係数および熱膨張の影響をほぼ相殺する。そのような温度補償機構は、図10bに示されているように、リング60の外側や、自立振動機構6の他の部分に取り付けて、その質量慣性モーメントが温度の関数として変化するようにすることができる。部材65のレイアウトおよび構成は、温度の上昇時におもり部材66がリング振動子の回転軸線Oに向かって移動するように実現しなければならない。
【0060】
本出願の内容には、下記のように番号を付した条項が含まれる。
1.振動子(4)と、前記振動子(4)を駆動して振動させ、前記振動に呼応して所定の振動数を有する信号を生成する集積電子回路(3)とを備えた時間基準部であって、前記振動子は、基板(2)上に支持され、第1の振動モードに従って前記基板(2)と実質的に垂直な回転軸(O)の回りで振動するように構成された一体形マイクロ機械的リング振動子(4)であり、前記リング振動子(4)は、
前記回転軸(O)に沿って前記基板(2)から延びる中央支柱(5)と、
前記中央支柱(5)に連結される自立振動構造体(6)と、
前記外リング(60)の周囲に配設され、前記集積電子回路(3)に接続された少なくとも一対の直径方向に向き合って配設された電極構造体(9;9*)とを備え、
前記自立振動構造体(6)が
前記回転軸(O)と同軸の外リング(60)と、
前記中央支柱(5)を中心として対称に配設され、前記外リング(60)を前記中央支柱(5)に連結する複数のばね素子(62)とを備えることを特徴とする時間基準部。
【0061】
2.前記電子回路(3)は前記マイクロ機械的リング振動子(4)とともに前記基板(2)上に一体化されていることを特徴とする条項1に記載の時間基準部。
【0062】
3.前記ばね素子(62)は湾曲形状を有し、第1の接合部(63)によって前記中央支柱(5)に略垂直に連結されていることを特徴とする条項1に記載の時間基準部。
【0063】
4.前記ばね素子(62)は第2の接合部(64)によって前記外リング(60)に略垂直に連結されていることを特徴とする条項3に記載の時間基準部。
【0064】
5.前記接合部(63,64)は、丸みすみ肉(63a,64a)を備えたことを特徴とする条項3または4に記載の時間基準部。
【0065】
6.ばね素子(62)の数は4から50の間であり、20程度が好ましいことを特徴とする条項1に記載の時間基準部。
【0066】
7.前記自立振動構造体(6)はさらに、前記外リング(60)の周囲に配設された、少なくとも一対の直径方向に向き合って配設された櫛形部材(8)を備え、さらに
前記外リング(60)から半径方向に伸びるベース部材(80)と、
前記ベース部材(80)の第1側部から略垂直に延びる少なくとも1つの第1横部材(82)と、
前記第1側部と反対の前記ベース部材(80)の第2側部から略垂直に延びる少なくとも1つの第2横部材(84)とを備え、
前記電極構造体(9)の各々が、
前記櫛形部材(8)と噛み合い、前記第1横部材(82)に隣接した第1電極(92)を有する第1の櫛形電極構造体(91)と、
前記櫛形部材(8)と噛み合い、前記第2横部材(84)に隣接した第2電極(94)を有する第2のくし型電極構造体(93)を備えることを特徴とする、条項1に記載の時間基準部。
【0067】
8.前記第1の櫛形電極構造体(91)は、前記リング振動子(4)を駆動して振動させるために使用され、
前記自立振動構造体(6)は、前記中央支柱(5)を介して固定した固定電位に結合され、
前記第2の櫛形電極構造体(93)は、前記リング振動子(4)の振動によって生成する信号を感知するために使用され、
一定の直流電圧成分が前記第1の櫛形電極構造体(91)または自立振動構造体(6)の一方もしくは両方に追加されることを特徴とする条項7に記載の時間基準部。
【0068】
9.前記自立振動構造体(6)は、さらに前記外リング(60)の周囲に配設された少なくとも一対の直径方向に向き合った櫛形部材(8*)を備え、前記櫛形部材(8*)は、
前記外リング(60)から半径方向に延びるベース部材(80)と、
前記ベース部材(80)の第1側部から略垂直に延びる少なくとも第1横部材(82)を備え、
前記電極構造体(9*)の各々は、
前記櫛形部材(8)と噛み合い、前記第1横部材(82)に隣接した第1電極(92)を備えた櫛形電極構造体(91)を備えたことを特徴とする条項1に記載の時間基準部。
【0069】
10.前記櫛形電極構造体(91)は、前記リング振動子(4)を駆動して振動させるために使用し、
前記自立振動構造体(6)は、前記中央支柱(5)を介して固定電位と結合され、
一定の直流電圧成分が前記櫛形電極構造体(91)または自立振動構造体(6)の一方または両方に追加され、共振のインピーダンスの変化を検出することによって感知が行われることを特徴とする条項9に記載の時間基準部。
【0070】
11.前記横部材(82,84)と前記電極(92,94)は、前記外リング(60)と同心円の円弧形状を有することを特徴とする条項7または9に記載の時間基準部。
【0071】
12.衝撃の際に角および/また傾斜移動を制限して前記自立振動構造体(6)の固着を防止するために、前記基板(2)上で少なくとも1つのベース部材(80)の外短部(80a)に隣接した位置に少なくとも1つのストッパ構造体(28)が設けられていることを特徴とする条項7または9に記載の時間基準部。
【0072】
13.衝撃の際に前記自立振動構造体(6)の固着を防止するために、前記横部材(82,84)の先端(82a,84a)および/または前記電極(92,93)の先端(92a,94a)が尖っているか、適度に小さい表面積を有することを特徴とする条項7または9に記載の時間基準部。
【0073】
14.衝撃の際に前記自立振動構造体(6)の固着を防止するために、少なくとも前記横部材(82、84)の1つおよび/または前記電極(92,94)の1つが、その他のものより長いことを特徴とする条項7または9に記載の時間基準部。
【0074】
15.ほぼ前記自立振動構造体(6)の形状を有する導体パターン(31)が、前記基板(2)の表面上且つ前記自立振動構造体(6)の少なくとも一部の下側に設けられており、前記自立振動構造体(6)と前記導体パターンは、同一電位に置かれていることを特徴とする条項1に記載の時間基準部。
【0075】
16.前記自立振動構造体(6)は、さらに前記外リング(60)の周囲に配設された少なくとも第1の対の直径方向に向き合った温度補償部材(65)を備え、前記温度補償部材(65)は、リング振動子(4)の共振振動数に対する温度の影響を補償するために、前記自立振動構造体(6)の質量慣性モーメントを温度の関数として変更するように構成されていることを特徴とする条項1に記載の時間基準部。
【0076】
17.前記温度補償部材(65)の各々は、それぞれ異なった熱係数を有する第1および第2の材料でそれぞれ形成された第1および第2層(68,69)を有する連結部材(67)によって前記外リング(60)に連結されたおもり部材(66)を備え、温度が上昇した際、前記連結部材(67)は、前記おもり部材(66)を前記回転の回転軸(O)に徐々に接近させることにより、前記自立振動構造体(6)の質量慣性モーメントを減少させるように構成されていることを特徴とする条項16に記載の時間基準部。
【0077】
18.さらに、前記時間基準部によって発生する信号の振動数に対する温度の影響を補償できるようにする、集積温度測定回路を備えたことを特徴とする条項1に記載の時間基準部。
【0078】
19.さらに、前記基板(2)上に支持されて、他の振動子の共振振動数と異なった共振振動数で振動するように構成された第2のマイクロ機械的リング振動子を備え、前記時間基準部によって発生する信号の振動数に対する温度の影響を補償するために両共振振動数の振動数差を利用することを特徴とする条項1に記載の時間基準部。
【0079】
20.電極(100,120;130,150)を前記自立振動構造体(6)の下側に配置して、前記第1の振動モードの共振振動数と異なった共振振動数を有する第2の振動モードの駆動および感知を行うように構成されるとともに、前記時間基準部が発生する信号の振動数に対する温度の影響を補償するために、両振動モードの共振振動数間の振動数差を利用することを特徴とする条項1に記載の時間基準部。
【0080】
21.前記第2の振動モードは、傾斜振動モードであることを特徴とする条項20に記載の時間基準部。
【0081】
22.前記第2の振動モードは、前記回転軸(O)に平行な垂直振動モードであることを特徴とする条項20に記載の時間基準部。
【0082】
23.前記基板(2)と前記リング振動子(4)は、シリコン材料から形成されたことを特徴とする条項1に記載の時間基準部。
【0083】
本発明を一定の具体的な実施形態に関して説明してきたが、これらの実施形態は本発明を制限するものではないことを理解されたい。実際に、添付の請求項の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および/または応用が当該技術分野の専門家には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】マイクロ機械的リング振動子および集積電子回路を含む時間基準部の第1実施形態を概略的に示す上面図である。
【図2】マイクロ機械的リング振動子の中央支柱、およびそれとばね素子との接合部を示す詳細図である。
【図3】外リングの一部、およびそれとばね素子との接合部を示す詳細図である。
【図4】図1のマイクロ機械的リング振動子のA−A’線に沿った断面図である。
【図5】理想化された直線状ばね素子と外リングの一部とを示す。
【図6】本発明による時間基準部の第2実施形態を概略的に示す上面図である。
【図7】リング振動子が電極構造体に固着することを防止できるようにする3種類の構造の詳細上面図である。
【図8】図1に示された第1実施形態の改良を示す上面図である。
【図9】図8の実施形態のA−A’線に沿った断面図である。
【図10】リング振動子の共振振動数に対する温度の影響をほぼ補償するために、リング振動子の質量慣性モーメントを温度の関数として変更する本発明による機構の2例を示す2つの上面図である。
【図11】振動子が傾斜振動を行う第2振動モードを説明する、それぞれ上面図および断面図である。
【図12】振動子が基板平面に垂直な垂直振動を行う別の第2振動モードを説明する、それぞれ上面図および断面図である。
【符号の説明】
【0085】
2…基板、3…集積電子回路、4…振動子、5…中央支柱、60…外リング、65…補償機構、66…おもり部材、67…連結部材、68…第1層、69…第2層、O…回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子(4)と、前記振動子(4)を駆動して振動させ、前記振動に呼応して所定の振動数を有する信号を生成する集積電子回路(3)とを備えた時間基準部であって、前記振動子は、基板(2)上に支持され、前記基板(2)と実質的に垂直な回転軸(O)の回りで振動するように構成された一体形マイクロ機械的リング振動子(4)であり、前記リング振動子(4)は、
前記回転軸(O)に沿って前記基板(2)から中央支柱(5)と
前記中央支柱(5)に連結されるとともに、前記回転軸(O)と同軸の外リング(60)を備え、複数のばね素子(62)によって前記中央支柱(5)に連結された自立振動構造体(6)と、
前記外リング(60)の周囲に配設され、前記集積電子回路(3)に接続された電極構造体(9;9*)とを備え、
前記時間基準部は、前記自立振動構造体(6)がさらに複数の熱補償部材(65)を備え、前記熱補償部材(65)f、リング振動子(4)の共振振動数に対する温度の影響を補償するために、前記自立振動構造体(6)の質量慣性モーメントを温度の関数として変更するように構成されていることを特徴とする時間基準部。
【請求項2】
前記熱補償部材(65)は前記外リング(60)の内側または外側に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の時間基準部。
【請求項3】
前記自立振動構造体(6)は、前記外リング(60)に取り付けられた少なくとも第1の対の直径方向に向き合って配設された熱補償部材(65)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の時間基準部。
【請求項4】
前記熱補償部材(65)の各々は、それぞれ熱係数が異なる第1と第2の材料で形成された第1と第2層(68,69)を有する連結部材(67)によって前記自立振動構造体(6)に連結されたおもり部材(66)を備え、温度が上昇した際、前記連結部材(67)は、前記おもり部材(66)を前記回転軸(O)に徐々に接近させることにより、前記自立振動構造体(6)の質量慣性モーメントを減少させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の時間基準部。
【請求項5】
前記第1の材料は、シリコンであり、前記第2の材料は、金属、好ましくはアルミニウムであることを特徴とする請求項4に記載の時間基準部。
【請求項6】
前記基板(2)と前記リング振動子(4)は、シリコン材料から形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の時間基準部。
【請求項7】
基板(2)上に支持されて、回転軸(O)を中心として、前記基板(2)に垂直に振動するように構成された一体形マイクロ機械的リング振動子(4)の形態の振動子であって、前記リング振動子(4)は、
前記回転軸(O)に沿って前記基板(2)から延びる中央支柱(5)と、
前記中央支柱(5)に連結されるとともに、前記回転軸(O)と同軸の外リング(60)を備え、複数のばね素子(62)によって前記中央支柱(5)に連結された自立振動構造体(6)とを備え、
前記自立振動構造体(6)は、さらに、複数の熱補償部材(65)を備え、前記熱補償部材(65)は、リング振動子(4)の共振振動数に対する温度の影響を補償するために、前記自立振動構造体(6)の質量慣性モーメントを温度の関数として変更するように構成されていることを特徴とする振動子。
【請求項8】
前記熱補償部材(65)は、前記外リング(60)の内側または外側に取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の振動子。
【請求項9】
少なくとも2つの直径方向に向き合った熱補償部材(65)が外リング(60)に取り付けられたことを特徴とする請求項8に記載の振動子。
【請求項10】
各々の前記熱補償部材(65)は、それぞれ熱係数が異なる第1と第2の材料で形成された第1と第2層(68,69)を有する連結部材(67)によって前記自立振動構造体(6)に連結されたおもり部材(66)を備え、温度が上昇した際、前記連結部材(67)は、前記おもり部材(66)を前記回転軸(O)に徐々に接近させることにより、前記自立振動構造体(6)の質量慣性モーメントを減少させるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の振動子。
【請求項11】
前記第1の材料は、シリコンであり、前記第2の材料は、金属、好ましくはアルミニウムであることを特徴とする請求項10に記載の振動子。
【請求項12】
前記基板(2)と前記リング振動子(4)は、シリコン材料から形成されていることを特徴とする請求項7から11のいずれか1つに記載の振動子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−24901(P2007−24901A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201886(P2006−201886)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【分割の表示】特願2001−535295(P2001−535295)の分割
【原出願日】平成12年11月1日(2000.11.1)
【出願人】(591048416)ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス (63)
【Fターム(参考)】