説明

マシニングセンタ

【課題】たて型のマシニングセンタの第1の主軸ユニットにラム軸を持つ第2の主軸ユニットを装備したマシニングセンタを提供する。
【解決手段】マシニングセンタ1はベッド10上にX軸方向に移動する回転テーブル20を有し、コラム30に支持されてZ軸方向に移動するクロスレール40を備える。クロスレールに支持されてY軸方向に移動するサドル50には第1の主軸ユニット60がとりつけられる。第1の主軸ユニット60はB軸まわりに旋回する第1の主軸70を備える。第1の主軸ユニット60とサドル50の間に配設される第2の主軸ユニット100はW軸方向に移動するラム軸110を備え、ラム軸先端に交換自在にとりつけられる旋削加工ヘッドとミル加工ヘッドを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1主軸に加えて、ワークの内径部等に対して旋削及びミル加工を施すために突出し量の長い第2主軸を備えたマシニングセンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1は、複合5軸加工機の構成を示し、特許文献2は主軸ヘッドとは別体に旋削ヘッドを備えたマシニングセンタを開示している。
また、特許文献3は、工具シャンクの回転力を直角方向に変換して工具に伝達する、いわゆるアングルヘッドを開示している。
また、特許文献4は、2段階の送り駆動系を備え、ラムの先端に工具を交換自在に装着する主軸ヘッドを備えた工作機械を開示し、特許文献5は、同種の工作機械を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−66430号公報
【特許文献2】特開2001−150256号公報
【特許文献3】特開2004−130423号公報
【特許文献4】特開平11−114759号公報
【特許文献5】特開2007−966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、第1主軸の他に、特にロングボーリング加工を可能とする第2主軸を備えたマシニングセンタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のマシニングセンタは、基本的な手段として、水平方向に配設されるテーブルと、垂直方向に配設される加工ユニットとを備える立形のマシニングセンタであって、加工ユニットは、第1の主軸ユニットと、第1の主軸ユニットの移動軸に対して平行な移動軸を有する第2の主軸ユニットを備える。
【0006】
そして、立形のマシニングセンタは、ベッド上に配設された回転テーブルと、回転テーブルをX軸方向に移動制御する手段と、ベッドの両側に立設される1対のコラムと、コラムに支持されるクロスレールと、クロスレールをZ軸方向に移動制御する手段と、クロスレールに支持され加工ユニットを有するサドルと、サドルをY軸方向に移動制御する手段とを備えた門型のマシニングセンタやベッド上に配設された回転テーブルと、テーブル上をX軸方向に移動制御されるサドルと、サドル上をY軸方向に移動制御されるコラムと、コラムの前面をZ軸方向に移動制御される加工ユニットを備えたコラム型のマシニングセンタである。
【0007】
また、第1の主軸ユニットは、Z軸に直交するB軸まわりに旋回動自在に設けられる第1の加工ヘッドと、第1の加工ヘッドをB軸まわりに旋回駆動する旋回動機構を備え、第2の主軸ユニットは、第1の加工ヘッドの旋回駆動機構とサドルの間の空間に装備され、第2の主軸ユニットは、Z軸と平行なW軸方向に移動制御されるラム軸と、ラム軸の下端部に装備されるラムヘッドを備え、ラムヘッドに交換自在に装着される旋削加工ヘッドとミル加工ヘッドを備えるものである。
【0008】
さらに、ラムヘッドは、旋削加工ヘッド又はミル加工ヘッドを交換自在に保持する油圧クランプユニットを備え、第2の主軸ユニットは、ラム軸の上部に配設されるモータと、モータの駆動力を伝達する駆動軸と、駆動軸の回転力を歯車機構を介してラム軸の下端に設けられる出力軸に伝達する手段と、出力軸先端に設けられるクラッチと、を備える。
また、ミル加工ヘッドは、ラム軸のクラッチに連結される入力軸と、入力軸の駆動力を直交方向に交換してスピンドルに伝達する動力伝達機構と、スピンドルに装着されるミル工具と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマシニングセンタは以上のように、B軸まわりに旋回する第1の主軸ユニットとラム軸を有する第2の主軸ユニットを共通のサドル上に配置したものである。そこで、ワークの深い場所に内径加工を施す際に、サドルをZ軸でワークの直上まで降下させ、ラム軸の突き出し量を最短にして加工できるので、加工効果が向上する。
また、ラム軸をB軸駆動機構とサドルの間に配置することができ、スペースの有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を実施するマシニングセンタの斜視図。
【図2】本発明を実施するマシニングセンタの正面図。
【図3】第2の主軸ユニットの配置を示す説明図。
【図4】第2の主軸ユニットに旋削加工ヘッドを装備した例を示す説明図。
【図5】第2の主軸ユニットによる旋削加工を示す説明図。
【図6】第2の主軸ユニットにミル加工ヘッドを装備した例を示す説明図。
【図7】第2の主軸ユニットによるミル加工を示す説明図。
【図8】本発明を実施する他のマシニングセンタの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明を適用するマシニングセンタの外観を示す斜視図、図2は正面図である。
全体を符号1で示すマシニングセンタは、いわゆる門型のマシニングセンタであって、ベッド10上に装備される回転テーブル20を有し、テーブルはX軸に沿って移動制御される。ベッド10の両側には、1対のコラム30が立設され、コラム30の間にクロスレール40がリニアガイドによりZ軸に沿って移動自在に装備される。クロスレール40は、サーボモータ42によりボールネジ等を介してZ軸方向に移動制御される。
【0012】
クロスレール40上には、Y軸に沿ってサドル50がリニアガイドにより移動自在に装備される。サドル50は、サーボモータ52とボールネジを介してY軸方向に移動制御される。サドル50には、第1の主軸ユニット60がとりつけられる。第1の主軸ユニット60には、第1の主軸70がB軸まわりに制御自在に装備される。第1の主軸70には、工具Tが装着される。第1の主軸70に装着される工具Tは、旋削工具又はミル工具であって、テーブル20上にチャッキングされた加工物(ワーク)Kに対して、必要な旋削加工やミル加工等を施す。サドル50の第1の主軸ユニット60の背面には、第2の主軸ユニット100が装備される。
【0013】
第2の主軸ユニット100は、ラム軸110を有し、ラム軸110は、サーボモータ120とボールネジによりZ軸に平行なW軸に沿って移動制御される。
【0014】
図3は、第2の主軸ユニット100の詳細を示す説明図である。
第2の主軸ユニット100は、ヘッドユニット105側に固定される複数のリニアガイドブロック106を有し、ラム軸110を摺動自在に支持する。複数のリニアガイドブロック106は、ヘッドユニット105の上下に距離を離して配設され、ラム軸110が突き出された位置にあっても充分な剛性を維持する構造を備えている。
ラム軸110は、サーボモータ120によりボールネジを介してW軸方向に移動制御される。
この第2の主軸ユニット100は、第1の主軸70をB軸まわりに駆動する機構を備えた第1の主軸ユニット60とサドル50の間の空間を利用して、余分のスペースを設けることなく装備することができる。
【0015】
図4は、第2の主軸ユニット100の構成の概要を示す説明図である。
ヘッドユニット105にとりつけられたサーボモータ120は、ボールネジ等の駆動系122を介してラム軸110をW軸方向に移動制御する。
ラム軸110の下端部にはラムヘッド130が装備されている。
ラムヘッド130は、油圧クランプユニット140と、歯車伝達機構160を備える。旋削加工時には、ラムヘッド130に旋削加工ヘッド200が装着される。旋削加工ヘッド200には旋削工具Tがとりつけてあり、ラムヘッド130の油圧クランプユニット140によりラム軸110に固定される。
油圧クランプユニット140は、油圧により操作されるピストン142を有し、テーパーシャンク205を利用して旋削加工ヘッド200を保持する。
【0016】
図5は、第2の主軸ユニット100を用いて、ワークKに対して内径の旋削加工を施す場合を示す。
第2の主軸ユニット100は、ラム軸110を突き出してワークKの深い部分に旋削加工を施すことができる。
本発明のマシニングセンタにあっては、クロスレールとともにサドル50をZ軸に沿ってワークKの上面近傍まで降下させた後にラム軸110をW軸に沿って突き出すことによって、ワークKの深い位置の旋削加工を効率よく達成することができる。
【0017】
図6は、ラム軸先端のラムヘッド130にミル加工ヘッド300を装着した状態を示す。
ミル加工ヘッド300は、シャンク305を利用してラムヘッド130の油圧クランプユニット140により保持される。この保持構造は、旋削加工ヘッド200の保持の場合と同様である。
第2の主軸ユニット100は、ラム軸110の上部にミル駆動モータ150を有し、駆動軸152を介してラムヘッド130側の歯車伝達機構160を駆動する。歯車伝達機構160は、1対の噛み合い歯車162,164を有し、出力軸166を駆動する。
【0018】
駆動軸166の先端にはクラッチ170を備え、ミル加工ヘッド300側の入力軸310に連結される。ミル加工ヘッド300は、1対の噛み合い歯車312,314と傘歯車320を有し、入力軸310に対して直交する方向に配置されたスピンドル330を駆動する。スピンドル330には、ミル工具Tが装着されている。
【0019】
本発明のミル加工ヘッドの駆動機構は以上のように、油圧クランプユニットの軸線からオフセットした位置に駆動系を配置してあるので、ミル加工ヘッドの小型化を達成することができる。
また、ミル工具の駆動用モータをラム軸の上部に配設することができ、構造を簡素化することが出来る。
【0020】
図7は、アングルヘッドであるミル加工ヘッド300を装備したラム軸110を伸長して、ワークKに対してワークの深い部分にミル工具Tによりミル加工を施す場合を示す。
【0021】
上述した実施例は、本発明を門型のマシニングセンタに適用した例を説明したが、本発明は、他の型式のマシニングセンタにも当然に適用することができる。
図8は、本発明をコラム型のマシニングセンタに適用した例を示す。
【0022】
全体を符号500で示すマシニングセンタは、ベッド510上に配設される回転テーブル520を有する。ベッド510上にはサドル530がX軸方向に移動制御自在に装備される。サドル530上にはコラム540がY軸方向に摺動自在に配設され、サーボモータ532により移動制御される。
コラム540の前面には、ヘッドユニット550が垂直方向であるZ軸方向に摺動自在に配設され、サーボモータ542により移動制御される。ヘッドユニット550には、第1の主軸ユニット600が装備される。第1の主軸ユニット600は、第1の主軸610を有し、テーブル520のワークに対して必要な加工を施す。
【0023】
このヘッドユニット550には、第1の主軸ユニット600に加えて第2の主軸ユニット700が装備される。第2の主軸ユニット700は、ラム軸710を有し、ラム軸710は、Z軸に平行なW軸に沿ってサーボモータ720により移動制御される。
第1の主軸ユニット600と第2の主軸ユニット700の機能は、先に説明した実施例のものと同様である。
【符号の説明】
【0024】
1 マシニングセンタ
10 ベッド
20 回転テーブル
30 コラム
40 クロスレール
50 サドル
60 第1の主軸ユニット
70 第1の主軸
100 第2の主軸ユニット
110 ラム軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に配設されるテーブルと、垂直方向に配設される加工ユニットとを備える立形のマシニングセンタであって、
加工ユニットは、第1の主軸ユニットと、第1の主軸ユニットの移動軸に対して平行な移動軸を有する第2の主軸ユニットを備えたマシニングセンタ。
【請求項2】
立形のマシニングセンタは、
ベッド上に配設された回転テーブルと、回転テーブルをX軸方向に移動制御する手段と、ベッドの両側に立設される1対のコラムと、コラムに支持されるクロスレールと、クロスレールをZ軸方向に移動制御する手段と、クロスレールに支持され加工ユニットを有するサドルと、サドルをY軸方向に移動制御する手段とを備えた門型のマシニングセンタである請求項1記載のマシニングセンタ。
【請求項3】
立形のマシニングセンタは、
ベッド上に配設された回転テーブルと、テーブル上をX軸方向に移動制御されるサドルと、サドル上をY軸方向に移動制御されるコラムと、コラムの前面をZ軸方向に移動制御される加工ユニットを備えたコラム型のマシニングセンタである請求項1記載のマシニングセンタ。
【請求項4】
第1の主軸ユニットは、
Z軸に直交するB軸まわりに旋回動自在に設けられる第1の加工ヘッドと、第1の加工ヘッドをB軸まわりに旋回駆動する旋回動機構を備え、
第2の主軸ユニットは、第1の加工ヘッドの旋回駆動機構とサドルの間の空間に装備される請求項1乃至3のいずれかに記載のマシニングセンタ。
【請求項5】
第2の主軸ユニットは、Z軸と平行なW軸方向に移動制御されるラム軸と、ラム軸の下端部に装備されるラムヘッドを備え、ラムヘッドに交換自在に装着される旋削加工ヘッドとミル加工ヘッドを備える請求項1乃至3のいずれかに記載のマシニングセンタ。
【請求項6】
ラムヘッドは、旋削加工ヘッド又はミル加工ヘッドを交換自在に保持する油圧クランプユニットを備える請求項5記載のマシニングセンタ。
【請求項7】
第2の主軸ユニットは、ラム軸の上部に配設されるモータと、モータの駆動力を伝達する駆動軸と、駆動軸の回転力を歯車機構を介してラム軸の下端に設けられる出力軸に伝達する手段と、出力軸先端に設けられるクラッチと、
を備える請求項5記載のマシニングセンタ。
【請求項8】
ミル加工ヘッドは、ラム軸のクラッチに連結される入力軸と、入力軸の駆動力を直交方向に交換してスピンドルに伝達する動力伝達機構と、スピンドルに装着されるミル工具と、
を備える請求項7記載のマシニングセンタ。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−152894(P2012−152894A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−78618(P2012−78618)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2007−19639(P2007−19639)の分割
【原出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000114787)ヤマザキマザック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】