マスクブランクス及びハーフトーンマスク
【課題】遮光層のサイドエッチングを抑制することでパターニング精度の高いハーフトーンマスクを作成することが可能なマスクブランクス及び当該マスクブランクスから形成されるパターニング精度の高いハーフトーンマスクを提供すること
【解決手段】本発明に係るマスクブランクスは、この順に積層された透明基板と、半透光層と、エッチングストッパ層と、遮光層とを具備する。半透光層は第1の光学濃度を有し、エッチングストッパ層は第2の光学濃度を有する。遮光層は20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、第1の光学濃度及び第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する。遮光層の厚さを当該範囲内とすることにより、半透光層がエッチングされる際の遮光層のサイドエッチング量を低減し、かつ、製造されたハーフトーンマスクの遮光部において、入射光を十分に遮蔽することが可能となる。
【解決手段】本発明に係るマスクブランクスは、この順に積層された透明基板と、半透光層と、エッチングストッパ層と、遮光層とを具備する。半透光層は第1の光学濃度を有し、エッチングストッパ層は第2の光学濃度を有する。遮光層は20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、第1の光学濃度及び第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する。遮光層の厚さを当該範囲内とすることにより、半透光層がエッチングされる際の遮光層のサイドエッチング量を低減し、かつ、製造されたハーフトーンマスクの遮光部において、入射光を十分に遮蔽することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランクス及び当該マスクブランクスをパターニングすることにより形成されるハーフトーンマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ、フラットパネルディスプレイ等の素子、配線等のパターニング等に利用されるフォトリソグラフィにおいて、フォトマスクとしてハーフトーンマスクの使用が進んでいる。ハーフトーンマスクとは、露光を遮る遮光領域と露光を透過させる透光領域に加え、露光を減衰させる半透光領域を備えるマスクである。ハーフトーンマスクを用いてパターニングを行うことにより、被処理物上に塗布されたフォトレジストを多段階の照射強度で露光させることが可能となる。
【0003】
ハーフトーンマスクには、透光層上にパターニングされた半透光層及び遮光層が積層されて形成されているものがある。このハーフトーンマスクは、透光層からなる透光領域、透光層上に半透光層が積層されてなる半透光領域、透光層上に半透光層及び遮光層が積層されてなる遮光領域を有する。透光領域に入射した光は透光層を透過し、減衰されない。半透光領域に入射した光は、半透光層及び透光層を透過し、半透光層によって減衰される。遮光領域に入射した光は、遮光層により(又は、他の層にもより)遮蔽される。半透光領域を透過した光と透過光領域を透過した光は強度が異なり、即ちハーフトーンマスクが得られる。
【0004】
このようなハーフトーンマスクは、透光層、半透光層及び遮光層が積層されたマスクブランクス(原版)をフォトリソグラフィを用いてパターニングすることで製造することが可能である。この場合、マスクブランクス上に塗布されたフォトレジストを所定のパターンに露光し、露光されたフォトレジストをエッチングマスクとしてエッチングすることで、半透光層及び遮光層が所定のパターンにパターニングされる。ここで、半透光層と遮光層がエッチング選択性の低い材料で形成されている場合、遮光層がエッチングされる際に半透光層もエッチングされてしまうため、半透光層と遮光層の間に。これらの材料に対してエッチング選択性が高い材料からなるエッチングストッパ層が積層される。
【0005】
例えば、特許文献1には、透明基板上に、半透光膜、エッチングストッパー膜、遮光膜が積層されたグレートーンマスク(ハーフトーンマスク)及びその製造方法が開示されている。遮光膜をエッチングする際に、エッチングストッパー膜によって半透光膜の減膜が回避され、膜厚の均一性が高いグレートーンマスクを製造することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−189281号公報(段落[0014]、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のグレートーンマスクの製造方法では、半透光膜をエッチングする際、その上層に位置する遮光膜がサイドエッチングされてしまうおそれがある。サイドエッチングにより遮光膜が除去された領域は、透光層、半透光層及びエッチングストッパ層のみが積層されることになる。このため、当該領域に入射した光は、遮光膜により遮蔽されず、エッチングストッパ層及び半透光層により減衰されるものの透過してしまう。即ち、入射光が、本来遮蔽されるべき領域を透過してしまうため、当該グレートーンマスクを用いてフォトリソグラフィのフォトマスクとする場合、パターニング精度が低下するおそれがある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、遮光層のサイドエッチングを抑制することでパターニング精度の高いハーフトーンマスクを作成することが可能なマスクブランクス及び当該マスクブランクスから形成されるパターニング精度の高いハーフトーンマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るマスクブランクスは、透明基板と、半透光層と、エッチングストッパ層と、遮光層とを具備する。
上記半透光層は、上記透光層上に積層され、第1の光学濃度を有する。
上記エッチングストッパ層は、上記半透光層上に積層され、第2の光学濃度を有する。
上記遮光層は、上記エッチングストッパ層上に積層され、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、上記第1の光学濃度及び上記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るハーフトーンマスクは、透明基板と、半透光層と、エッチングストッパ層と、遮光層とを具備する。
上記半透光層は、上記透明基板上に第1のパターンで形成され、第1の光学濃度を有する。
上記エッチングストッパ層は、上記半透光層上に第2のパターンで形成され、第2の光学濃度を有する。
上記遮光層は、上記エッチングストッパ層上に上記第2のパターンに形成され、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、上記第1の光学濃度及び上記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るハーフトーンマスクを示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るマスクブランクスを示す模式図である。
【図3】ハーフトーンマスクの製造プロセスを説明する図である。
【図4】ハーフトーンマスクの製造プロセスを説明する図である。
【図5】ハーフトーンマスクの製造プロセスを説明する図である。
【図6】ハーフトーンマスクの別の製造プロセスを説明する図である。
【図7】ハーフトーンマスクの別の製造プロセスを説明する図である。
【図8】ハーフトーンマスクの各層の膜厚と光学濃度を示す表である。
【図9】ハーフトーンマスクの各層の膜厚と光学濃度を示す表である。
【図10】ハーフトーンマスクの各層の膜厚と光学濃度を示す表である。
【図11】ハーフトーンマスクの各層の膜厚と光学濃度を示す表である。
【図12】本発明の実施例の条件及び測定結果を示す表である。
【図13】比較例の条件及び測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るマスクブランクスは、透明基板と、半透光層と、エッチングストッパ層と、遮光層とを具備する。
上記半透光層は、上記透光層上に積層され、第1の光学濃度を有する。
上記エッチングストッパ層は、上記半透光層上に積層され、第2の光学濃度を有する。
上記遮光層は、上記エッチングストッパ層上に積層され、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、上記第1の光学濃度及び上記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する。
【0013】
このマスクブランクスは、その半透光層、エッチングストッパ層及び遮光層がパターニングされることにより、透光領域、半透光領域及び遮光領域を有するハーフトーンマスクとなる。遮光層、エッチングストッパ層(以下、ES層)及び半透光層が除去されると透光領域が形成され、遮光層及びES層が除去されると半透光領域が形成される。いずれの層も除去されない領域が遮光領域となる。半透光層がエッチングにより除去される際、遮光層のエッチングマスクに被覆されていない部分がサイドエッチングを受け得る。
【0014】
ここで、本発明者らは、遮光層の厚さが薄い場合、サイドエッチングの速度(エッチングレート)が、厚い場合に比較して小さいことを見出した。一方、遮光層の厚さが薄い場合、遮光層の光学濃度(透過率の逆数の常用対数)が入射光を遮蔽するのに十分ではないおそれがある。そこで、遮光層は、半透光層の光学濃度である第1の光学濃度と、ES層の光学濃度である第2の光学濃度との和が3.0(透過率0.001)以上となる第3の光学濃度を有するものとすることができる。
【0015】
半透光層の光学濃度(第2の光学濃度)は半透光領域の光学濃度となるため、半透光層は所望の光学濃度を得るために必要な厚さとされる。一方、ES層は、単層の光学濃度がいずれの領域の光学濃度にもならないため、その厚さは任意に設定することが可能であるが、厚さが大きすぎる場合はES層のエッチングに時間を要する。半透光層の第1の光学濃度とES層の第2の光学濃度に応じて、遮光層の第3の光学濃度を求めることができ、その光学濃度を達成するために必要な厚さを遮光層の最低限の厚さとする。これにより、遮光領域に入射した光を、遮光層、ES層及び半透光層により遮蔽することが可能となる。
【0016】
遮光層の厚さは20nm以上95.2nm以下とすることができる。半透光層の第1の光学濃度とES層の第2の光学濃度が十分に大きい場合、遮光層の厚さは、均一に成膜することが可能な最低限の厚さである20nmとすることができる。一方、遮光層が最も大きい厚さを要する場合、即ち、半透光層の第1の光学濃度が0であり、ES層の厚さが、均一に成膜することが可能な最低限の厚さである10nmである場合に、遮光層の厚さは、95.2nmとすることができる。
【0017】
サイドエッチングの大きさ(サイドエッチング量)は、サイドエッチングレートと、半透光層のエッチングに要する時間の積で決定される。このため、半透光層のエッチングに要する時間が同一である場合であっても、サイドエッチングレートを低減することによって、サイドエッチング量を低減することが可能である。
【0018】
上記マスクブランクスは、上記第2の光学濃度が0.58であるときを基準として、
上記第1の光学濃度は0.10以上1.0以下であり、上記遮光層は、46.6nm以上76.1nm以下の厚さを有していてもよい。
【0019】
ES層の厚さが10nmであり、第2の光学濃度が0.58である場合について、半透光層の透過率を80%、即ち第1の光学濃度を0.10とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.32となる。この光学濃度を満たすために必要な遮光層の厚さは76.1nmとなる。また、半透光層の透過率を10%、即ち第1の光学濃度を1.0とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は1.42となる。この光学濃度を満たすために必要な遮光層の厚さは46.6nmとなる。即ち、第1の光学濃度が0.10以上1.0以下である場合に、遮光層の厚さを、第1の光学濃度に応じて46.6nm以上76.1nm以下とすることにより、半透光層、ES層及び遮光層の3層の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0020】
上記第1の光学濃度が0.10以上0.22未満のときは、上記遮光層は72.2nmより大きく76.1nm以下の厚さを有していてもよい。
【0021】
ES層の厚さが10nmであり、第2の光学濃度が0.58である場合について、半透光層の透過率を80%、即ち第1の光学濃度を0.10とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.32となり、必要な遮光層の厚さは76.1nmとなる。また、半透光層の透過率を60%、即ち第1の光学濃度を0.22とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.20となり、必要な遮光層の厚さは72.2nmとなる。即ち、第1の光学の濃度を0.1以上0.22未満とし、遮光層の厚さを、第1の光学濃度に応じて72.2nmより大きく76.1nm以下とすることにより、半透光層、ES層及び遮光層の3層の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0022】
上記第1の光学濃度が0.22以上0.40未満のときは、上記遮光層は66.3nmより大きく72.2nm以下の厚さを有していてもよい。
【0023】
ES層の厚さが10nmであり、第2の光学濃度が0.58である場合について、半透光層の透過率を60%、即ち第1の光学濃度を0.22とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.20となり、必要な遮光層の厚さは72.2nmとなる。また、半透光層の透過率を40%、即ち第1の光学濃度を0.40とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.02となり、必要な遮光層の厚さは66.3nmとなる。即ち、第1の光学の濃度が0.22以上0.40未満とし、遮光層の厚さを、第1の光学濃度に応じて66.3nmより大きく72.2nm以下とすることにより、半透光層、ES層及び遮光層の3層の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0024】
上記遮光層は0.40以上1.0以下のときは、上記遮光層は46.6nm以上66.3nm以下の厚さを有していてもよい。
【0025】
ES層の厚さが10nmであり、第2の光学濃度が0.58である場合について、半透光層の透過率を40%、即ち第1の光学濃度を0.40とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.02となり、必要な遮光層の厚さは66.3nmとなる。また、半透光層の透過率を10%、即ち第1の光学濃度を1.0とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は1.42となり、必要な遮光層の厚さは46.6nmとなる。即ち、第1の光学の濃度が0.40以上1.0以下とし、遮光層の厚さを、第1の光学濃度に応じて46.6nmより大きく66.3nm以下とすることにより、半透光層、ES層及び遮光層の3層の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0026】
上記半透光層と上記遮光層は、Cr系材料からなるものであってもよい。
【0027】
Cr系材料(Cr、CrO、CrN、CrC、CrON、CrOC、CrNC、CrONC等)は、成膜性(膜均一性、密着性等)、エッチング特性(耐酸性、溶解速度等)に優れるため、半透光層及び遮光層をCr系材料で形成することにより、パターニング精度の高いハーフトーンマスクを製造することが可能となる。
【0028】
上記エッチングストッパ層は、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料からなるものであってもよい。
【0029】
Ni、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料は、半透光層及び遮光層の材料であるCr系材料に対して、ウェットエッチングにおいてもエッチング選択性を有する。即ち、ES層を、当該材料で形成することにより、半透光層、ES層及び遮光層のエッチングを、ドライエッチングよりコストの低いウェットエッチングにより行うことが可能となる。ウェットエッチングは、ドライエッチングよりエッチングの等方性が大きくサイドエッチングが進行し易いが、上述のように、サイドエッチングを抑制することが可能であり、高いパターニング精度を得ることが可能である。
【0030】
本発明の一実施形態に係るハーフトーンマスクは、透明基板と、半透光層と、エッチングストッパ層と、遮光層とを具備する。
上記半透光層は、上記透明基板上に第1のパターンで形成され、第1の光学濃度を有する。
上記エッチングストッパ層は、上記半透光層上に第2のパターンで形成され、第2の光学濃度を有する。
上記遮光層は、上記エッチングストッパ層上に上記第3のパターンに形成され、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、上記第1の光学濃度及び上記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する。
【0031】
当該ハーフトーンマスクは、上層の半透光層、ES層及び遮光層が除去され、透明基板を有する透光領域と、上層のES層及び遮光層が除去され、透明基板及び半透光層を有する半透光領域と、いずれの層も除去されていない遮光領域とに区分される。透光領域に入射した光は、透明基板を減衰されることなく透過する。半透光領域に入射した光は、透明基板と第1の光学濃度を有する半透光層を透過し、半透光層によって減衰される。遮光領域に入射した光は、透明基板、第1の光学濃度を有する半透光層、第2の光学濃度を有するES層及び第3の光学濃度を有する遮光層を透過し、半透光層、ES層及び遮光層により遮蔽される。第1、第2及び第3の光学濃度の和が3.0以上であるので、遮光領域に入射した光を十分に遮蔽することが可能である。当該ハーフトーンマスクは、上述のように、遮光層の厚さが20nm以上95.2nm以下とされているため、パターニングの際に遮光層のサイドエッチングが抑制され、高いパターニング性を有するものとすることが可能である。
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るハーフトーンマスク1を示す模式図である。
【0033】
図1に示すように、ハーフトーンマスク1は、透光部1A、半透光部1B及び遮光部1Cを有する。これらの大きさ、配置は所望の露光パターンにより異なる。ハーフトーンマスク1は、透明基板2、半透光層3、エッチングストッパ層(ES層)4及び遮光層5がこの順に積層されて形成されている。
【0034】
透光部1Aは、半透光層3、ES層4及び遮光層5が除去され、透明基板2が露出している部分である。ハーフトーンマスク1に照射された光のうち、透光部1Aに到達した光は、透光部1Aを減衰されることなく透過する。
【0035】
半透光部1Bは、ES層4及び遮光層5が除去され、透明基板2上に半透光層3が積層されている部分である。ハーフトーンマスク1に照射された光のうち、半透光部1Bに到達した光は、半透光部1Bを減衰されて透過する。
【0036】
遮光部1Cは、いずれの層も除去されず、透明基板2上に、半透光層3、ES層4及び遮光層5が積層されている部分である。ハーフトーンマスク1に照射された光のうち、遮光部1Cに到達した光は、遮光部1Cを透過することなく遮蔽される。
【0037】
このように、ハーフトーンマスク1は、照射された光を、透光部1A、半透光部1B及び遮光部1Cのパターンに応じて造影する。このようなハーフトーンマスク1を用いてフォトリソグラフィを実施することにより、被処理物上に塗布されたフォトレジストを多段階の照射強度で露光させることが可能となる。
【0038】
図2は、ハーフトーンマスク1の原版であるマスクブランクス1’を示す模式図である。
マスクブランクス1’は、透明基板2上に、半透光層3、ES層4及び遮光層5が積層されて形成されている。後述する製造方法により、遮光層5、ES層4及び半透光層3をパターニングすることでハーフトーンマスク1が製造される。マスクブランクス1’は、例えば被処理物(Flat Panel Display等)と同等の大きさを有する。
【0039】
マスクブランクス1’は、例えば、透明基板2上に、半透光層3、ES層4及び遮光層5
となる材料をそれぞれ成膜することによって形成することができる。これらの材料の成膜には、電子ビーム蒸着法、イオンアシストスパッタ法等の種々の成膜方法を用いることができる。
【0040】
ハーフトーンマスク1を構成する、透明基板2、半透光層3、ES層4及び遮光層5の各層について説明する。
【0041】
透明基板2は、入射した光を、(ほぼ)減衰させることなく透過させる。透明基板2は相当の強度を有し、その上に積層される各層を支持する。透明基板2は、ガラス、石英等の光透過率の高い材料からなる基板とすることができる。
【0042】
半透光層3は、入射した光を所定(例えば50%)の光量に減衰させる。半透光層3は、光透過率が低く、その膜厚に応じて所定の光透過率となることが可能な材料、例えばCr系材料(Cr、CrO、CrN、CrC、CrON、CrOC、CrNC、CrONC等)からなるものとすることができる。Cr系材料は、成膜性(膜均一性、密着性等)、エッチング特性(耐酸性、溶解速度等)に優れるため、半透光層3のパターニング精度を良好なものとすることが可能である。半透光層3の膜厚と光透過率の関係については後述する。
【0043】
ES(エッチングストッパ)層4は、遮光層5がエッチングされる際に下層の半透光層3がエッチングされることを防止し、かつ、入射した光を減衰し、あるいは遮蔽する。ES層4は半透光層3及び遮光層5に対してエッチング選択性を有する材料、例えばNi、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料からなるものとすることができる。この材料は、上記のCr系材料に対してウェットエッチングにおいてもエッチング選択性を有するため、各層のエッチングをウェットプロセスにより行うことが可能となる。ES層4の膜厚と光透過率の関係については後述する。
【0044】
遮光層5は、入射した光を減衰し、あるいは遮蔽する。遮光層5は、光透過率が低く、その膜厚に応じて所定の光透過率となることが可能な材料、例えばCr系材料からなるものとすることができる。ここで、ES層4が存在するため、遮光層5と半透光層3はエッチング選択性のない材料の組み合わせとすることができる。Cr系材料は、成膜性、エッチング特性に優れるため、遮光層5のパターニング精度を良好なものとすることが可能である。後述するが、遮光層5は、単独で入射光を遮蔽するものでなくてもよく、ES層4及び半透光層3と協働して入射光を遮蔽するものとすることができる。遮光層5の膜厚と光透過率の関係については後述する。
【0045】
次に、ハーフトーンマスク1の製造方法について説明する。
図3、図4及び図5は、ハーフトーンマスク1の製造プロセスを説明する図である。
【0046】
図3(a)に示すように、マスクブランクス1’の遮光層5側に、フォトレジストR1を塗布する。フォトレジストには露光することで現像液に対する溶解性が上昇するポジティブ型のものと、露光することで現像液に対する溶解性が低下するネガティブ型のものがあり、いずれも使用することが可能である。しかし、ポジティブ型のフォトレジストの方が現像による膨潤が小さく、パターンの精度を高いものとすることが可能である。以下、本実施形態に係るフォトレジストR1及びフォトレジストR2(後述)はポジティブ型のものとして説明する。フォトレジストR1の塗布は、レジストコーター等を用いてすることができる。フォトレジストR1は例えばAZ1500(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)、厚さ1μmとすることができる。
【0047】
次に、フォトレジストR1を露光する。この際、ハーフトーンマスク1の透光部1Aに相当する、フォトレジストR1の領域上に光が当たるように露光する。露光は、このようなパターンを有する別のフォトマスクを用いてもよく、電子ビームの走査等の方法によってもすることができる。
【0048】
次に、図3(b)に示すように、フォトレジストR1を現像する。現像は、フォトレジストR1を現像液に浸漬させることによってすることができる。現像により、フォトレジストR1の、半透光部1Bに相当する領域が除去される。現像液は、例えばAZデベロッパー(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いることができる。
【0049】
次に、図3(c)に示すように、上記フォトレジストR1をエッチングマスクとして遮光層5をエッチングする。エッチングは、遮光層5をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングであってもよく、エッチングガスのプラズマ等の暴露によるドライエッチングであってもよい。ただし、本実施形態に係るハーフトーンマスク1の製造方法では他の製造工程もウェットプロセスとすることが可能であるため、当該エッチングをウェットエッチングとすることにより、製造工程の全てをウェットプロセスとすることが可能である。エッチング液は、遮光層5を溶解させ、かつ、下層であるES層4を溶解させないエッチング液を用いることができる。遮光層5がCr系材料からなる場合、エッチング液は硝酸セリウム第二アンモニウムと過塩素酸の混合溶液を用いることが可能である。
【0050】
次に、図3(d)に示すように、上記フォトレジストR1をエッチングマスクとしてES層4をエッチングする。エッチングは、ES層4をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。エッチング液は、ES層4を溶解させ、遮光層5及び半透光層3を溶解させないエッチング液を用いることができる。ES層4が、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料からなる場合、エッチング液は、硝酸を含む溶液を用いることが可能である。
【0051】
次に、図4(a)に示すように、上記フォトレジストR1をエッチングマスクとして半透光層3をエッチングする。エッチングは、半透光層3をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。エッチング液は、半透光層3を溶解させるエッチング液を用いることができる。半透光層3がCr系材料からなる場合、エッチング液は硝酸セリウム第二アンモニウムと過塩素酸の混合溶液を用いることが可能である。
【0052】
この際、遮光層5の端面(遮光層5がエッチングされた際に新たに形成された面)に、半透光層3をエッチングするためのエッチング液が付着して、当該端面がエッチング(サイドエッチング)される。この、サイドエッチングを受けて後退した、遮光層5の端面をサイドエッチング面5aとして図に示す。ここで、遮光層5の厚さが薄い方が、サイドエッチングの速度(エッチングレート)が小さいことが判明している。これは、遮光層5の厚さが小さい方が、エッチング液に含まれるエッチング種(遮光層5の材料と化学反応して溶解させる化学種)が遮光層5の端面に供給される速度が小さいためと考えられる。
【0053】
次に、図4(b)に示すように、フォトレジストR1を剥離させる。フォトレジストR1の剥離は、レジスト剥離液(AZリムーバー:AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いてすることができる。
【0054】
次に、図4(c)に示すように、上記マスクブランクス1’の遮光層5側にフォトレジストR2を塗布する。フォトレジストR2は、フォトレジストR1と同一の組成を有する物質からなるものとすることができる。フォトレジストR2の塗布は、レジストコーター等を用いてすることができる。フォトレジストR2は例えばAZ1500(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)、厚さ1μmとすることができる。
【0055】
次に、フォトレジストR2を露光する。この際、ハーフトーンマスク1の透光部1A及び半透光部1Bに相当する、フォトレジストR2の領域上に光が当たるように露光する。露光は、このようなパターンを有する別のフォトマスクを用いてもよく、電子ビームの走査等の方法によってもすることができる。
【0056】
次に、図4(d)に示すように、フォトレジストR2を現像する。現像は、フォトレジストR2を現像液に浸漬させることによってすることができる。現像により、フォトレジストR2の、透光部1A及び半透光部1Bに相当する領域が除去される。現像液は、例えばAZデベロッパー(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いることができる。
【0057】
次に、図5(a)に示すように、上記フォトレジストR2をエッチングマスクとして遮光層5をエッチングする。エッチングは、遮光層5をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。エッチング液は、エッチング液は硝酸セリウム第二アンモニウムと過塩素酸の混合溶液を用いることが可能である。
【0058】
次に、図5(b)に示すように、上記フォトレジストR2をエッチングマスクとしてES層4をエッチングする。エッチングは、ES層4をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。エッチング液は、硝酸を含む容器を用いることが可能である。
【0059】
次に、フォトレジストR2を剥離させる。フォトレジストR2の剥離は、レジスト剥離液(AZリムーバー:AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いてすることができる。
【0060】
以上のようにして図1に示すハーフトーンマスク1が製造される。
なお、ハーフトーンマスク1は、以下のようにしても製造することが可能である。
【0061】
図6及び図7は、ハーフトーンマスク1の他の製造プロセスを説明する図である。
図6(a)に示すように、マスクブランクス1’の遮光層5側に、フォトレジストRを塗布する。フォトレジストRはポジティブ型のものとして説明する。フォトレジストRの塗布は、レジストコーター等を用いてすることができる。フォトレジストRは例えばAZ1500(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)、厚さ1μmとすることができる。
【0062】
次に、フォトレジストRを露光する。この際、ハーフトーンマスク1の透光部1Aに相当するフォトレジストRの領域上に高強度の露光量で、半透光部1Bに相当する領域に低強度の露光量で光が当たるように露光する。露光は、このようなパターンを有する別のフォトマスクを用いてもよく、電子ビームの走査等の方法によってもすることができる。
【0063】
次に、図6(b)に示すように、フォトレジストRを現像する。現像は、フォトレジストRを現像液に浸漬させることによってすることができる。現像時間を調節することで、高強度の露光量で露光された、透光部1Aに相当するフォトレジストRの領域を完全に除去し、低強度の露光量で露光された、半透光部1Bに相当するフォトレジストRの領域を部分的に除去しつつ残存させる。
【0064】
次に、図6(c)に示すように、上記フォトレジストRをエッチングマスクとして遮光層5をエッチングする。エッチングは、遮光層5をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることができる。エッチング液は、遮光層5を溶解させ、かつ、下層であるES層4を溶解させないエッチング液を用いることができる。遮光層5がCr系材料からなる場合、エッチング液は硝酸セリウム第二アンモニウムを用いることが可能である。
【0065】
次に、図6(d)に示すように、上記フォトレジストRをエッチングマスクとしてES層4をエッチングする。エッチングは、ES層4をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。エッチング液は、ES層4を溶解させ、遮光層5及び半透光層3を溶解させないエッチング液を用いることができる。ES層4が、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料からなる場合、エッチング液は、硝酸を含む溶液を用いることが可能である。
【0066】
次に、図7(a)に示すように、フォトレジストRを再度現像する。この現像により、低強度の露光量で露光されたフォトレジストRの領域を完全に除去する。現像液は、前回の現像液と同一のものを用いることができる。
【0067】
次に、図7(b)に示すように、上記フォトレジストRをエッチングマスクとして、半透光層3及び遮光層5をエッチングする。エッチングは、半透光層3及び遮光層5をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。遮光層5及び半透光層3がCr系材料からなる場合、エッチング液は硝酸セリウム第二アンモニウムを用いることが可能である。
【0068】
この製造方法によっても、半透光層3及び遮光層5をエッチングする際に、既にエッチングされて形成されていた、遮光層5の端面に、エッチング液が付着して、当該端面がエッチング(サイドエッチング)される。この、サイドエッチングを受けて後退した、遮光層5の端面をサイドエッチング面5aとして図に示す。同様に、遮光層5の厚さが薄い方が、サイドエッチングの速度(エッチングレート)が小さいことが判明している。
【0069】
次に、図7(c)に示すように、上記フォトレジストRをエッチングマスクとして、ES層4をエッチングする。エッチングは、硝酸を含む溶液をエッチング液とするウェットエッチングとすることが可能である。
【0070】
次に、フォトレジストRを剥離させる。フォトレジストRの剥離は、レジスト剥離液(AZリムーバー:AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いてすることができる。
【0071】
以上のようにしてハーフトーンマスク1が製造される。
【0072】
いずれの製造方法によっても、遮光層5をエッチングした後、半透光層3がエッチングされる際に、遮光層5の端面がサイドエッチングされる。このサイドエッチングされた部分に入射した光は、遮光層5により遮蔽あるいは減衰されず、ES層4(ES層4の光透過率が低い場合を除く)及び半透光層3を透過して被処理物に到達してしまう。このため、遮光層5のサイドエッチング量が大きい場合、パターニング精度が低下するおそれがある。
【0073】
上述のように、遮光層5の厚さを薄くすることで、サイドエッチングレートを小さくすることが可能である。一方、遮光層5の厚さが薄い場合、遮光層5単独では、入射光を完全に遮蔽できないおそれがある。そこで、以下のようにして、遮光層5の厚さを薄くし、かつ、ハーフトーンマスク1の遮光部1Cにおいて入射光が遮蔽されるように検討した。
【0074】
以下、各層の厚さと光学濃度について説明する。
【0075】
半透光層3は、ハーフトーンマスク1の半透光部1Bにおいて、入射光を所定の透過率で減衰させる。なお、光学濃度は、透過率の逆数の常用対数である。このため、半透光層3の厚さは、その材料が半透光部1Bの所定の光学濃度となるために必要な厚さで規定される。半透光層3は、透光部1Aにおいては除去されるが、その他の部分、即ち、半透光部1B及び遮光部1Cにおいては存在する。このため、遮光層5の下層には必ず半透光層3が存在するため、半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)を遮光部1Cに必要な光学濃度の一部として利用することが可能である。また、半透光層3のエッチングの間、遮光層5のサイドエッチングが進行することから、半透光層3の厚さが薄く、エッチングに要する時間が短い方が遮光層5のサイドエッチング量が小さい
【0076】
ES層4は、本来的には遮光層5がエッチングされる際に、下層に位置し、遮光層5に対してエッチング選択性がない半透光層3がエッチングされるのを防止するための層である。しかし、ES層4もその材料及び厚さに応じた光学濃度(第2の光学濃度)を有し、ES層4は遮光層5と同一の領域(遮光部1C)に存在するため、ES層4の光学濃度を遮光部1Cに必要な光学濃度の一部として利用することが可能である。ここで、ES層4の厚さは、10nm以上80nm以下の内から選択することができる。ES層4の厚さが10nm以下であると、膜の均一性、密着性が低下するおそれがある。一方、ES層4の厚さが800nm以上であると、ES層4のエッチングに多大な時間を要し、ハーフトーンマスク1の製造効率が低下する。
【0077】
遮光層5は、ハーフトーンマスク1の遮光部1Cにおいて、入射光を減衰させ、あるいは遮蔽する。一般的なハーフトーンマスクの場合、入射光は遮光層5によって遮蔽されるが、本実施形態に係る遮光層5は半透光層3及び遮光層5と協働して入射光を遮蔽する。このようにすることで、遮光層単独で入射光を遮蔽する場合に比べ、膜厚を薄くすることが可能である。具体的には、入射光を遮蔽するのに必要な光学濃度(透過率の逆数の常用対数)が3.0以上(透過率0.001以下)であるとすると、遮光層5の膜厚は、遮光層5の光学濃度(第3の光学濃度)と第1の光学濃度及び第2の光学濃度との和が3.0以上となる厚さとすることが可能である。ここで、遮光層5の厚さは、20nm以上95.2nm以下の内から選択することができる。遮光層5の厚さが20nm以下であると、膜の均一性、密着性が低下するおそれがある。一方、遮光層5が95.2nm以上の厚さである場合、遮光層5単層で3.0以上の光学濃度を有するため、これ以上の膜厚は必要ではない。
【0078】
以下、より具体的に検討する。
半透光層3の材料がCr系材料であって、波長436nm以下365nm以上の光に対する透過率の差が5%以上10%以下の材料である場合について説明する。
【0079】
上述のように、ES層4の厚さは10nm以上80nm以下とすることができる。まず、ES層4の厚さが10nmであり、光学濃度が0.58であるとする。図8は、この条件における各層の厚さ及び光学濃度と、サイドエッチング量の関係を示す表である。サイドエッチング量は、半透過層3のエッチングジャストタイム+20秒を浸漬させた時の値である。
【0080】
図8に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を80%以下、60%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.10以上0.22未満とする場合(表の右欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は17nm以上8nm以下である。
【0081】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.68以上0.80未満が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。半透光層3、ES層4及び遮光層5の3層の光学濃度は3.0以上である必要があるので、遮光層5が有するべき光学濃度は2.20より大きく2.32未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は72.2nmより大きく76.1nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、72.2nmより大きく76.1nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0082】
このときの遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は4.25より大きく9.51以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.22(μm/10sec)より大きく0.23(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.48μmより大きく、0.62μm以下となる。
【0083】
図8に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を60%以下、40%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.22以上0.40未満とする場合(表の中欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は17nm以上30nm以下である。
【0084】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.80以上0.98未満が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。よって、遮光層5が有するべき光学濃度は2.02より大きく2.20未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は63.3nmより大きく72.2nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、63.3nmより大きく72.2nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0085】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は2.21より大きく4.25以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.18(μm/10sec)より大きく0.22(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.49μmより大きく、0.81μm以下となる。
【0086】
図8に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を40%以下、10%以上の範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.40以上1.00以下とする場合(表の左欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は30nm以上76nm以下である。
【0087】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.98以上1.58以下が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。よって、遮光層5が有するべき光学濃度は1.42以上2.02未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は46.6nm以上66.3nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、46.6nm以上66.3nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0088】
このときの遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は0.61以上2.21以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.12(μm/10sec)以上0.18(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.44μm以上0.86μm以下となる。
【0089】
次に、ES層4の厚さが60nmであり、光学濃度が3.0以上である場合について説明する。図9は、この条件における各層の厚さ及び光学濃度と、サイドエッチング量の関係を示す表である。サイドエッチング量は、半透過層3のエッチングジャストタイム+20秒を浸漬させた時の値である。
【0090】
図9に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を80%以下、60%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.10以上0.22未満とする場合(表の右欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は17nmより大きく8nm以下である。
【0091】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0092】
このときの遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は1.18より大きく2.50以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.22μmより大きく、0.27μm以下となる。
【0093】
図9に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を60%以下、40%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.22以上0.40未満とする場合(表の中欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は17nmより大きく30nm以下である。
【0094】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0095】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は0.67より大きく1.18以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.27μmより大きく、0.18μm以下となる。
【0096】
図9に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を40%以下、10%以上の範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.40以上1.00以下とする場合(表の左欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は30nm以上76nm以下である。
【0097】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0098】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は0.26以上0.67以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.37μm以上0.48μm以下となる。
【0099】
次に、半透光層3の材料がCr系材料であって、波長436nm以下365nm以上の光に対する透過率の差が1%未満の材料である場合について説明する。
【0100】
ES層4の厚さが10nmであり、光学濃度が0.58であるとする。図10は、この条件における各層の厚さ及び光学濃度と、サイドエッチング量の関係を示す表である。サイドエッチング量は、半透過層のエッチングジャストタイム+20秒を浸漬させた時の値である。
【0101】
図10に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を80%以下、60%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.10以上0.22未満とする場合(表の右欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は2nm以上6nm以下である。
【0102】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.68以上0.80未満が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。半透光層3、ES層4及び遮光層5の3層の光学濃度は3.0以上である必要があるので、遮光層5が有するべき光学濃度は2.20より大きく2.32未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は72.2nmより大きく76.1nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、72.2nmより大きく76.1nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0103】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は12.03より大きく38.05以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.22(μm/10sec)より大きく0.23(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.46μmより大きく、0.51μm以下となる。
【0104】
図10に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を60%以下、40%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.22以上0.40未満とする場合(表の中欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は6nm以上10nm以下である。
【0105】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.80以上0.98未満が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。よって、遮光層5が有するべき光学濃度は2.02より大きく2.20未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は63.3nmより大きく72.2nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、63.3nmより大きく72.2nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0106】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は6.63より大きく12.03以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.18(μm/10sec)より大きく0.22(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.40μmより大きく、0.53μm以下となる。
【0107】
図10に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を40%以下、10%以上の範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.40以上1.00以下とする場合(表の左欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は10nm以上30nm以下である。
【0108】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.98以上1.58以下が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。よって、遮光層5が有するべき光学濃度は1.42以上2.02未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は46.6nm以上66.3nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、46.6nm以上66.3nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0109】
このときの遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は1.55以上6.63以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.12(μm/10sec)以上0.18(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.29μm以上0.56μm以下となる。
【0110】
次に、ES層4の厚さが60nmであり、光学濃度が3.0以上である場合について説明する。図11は、この条件における各層の厚さ及び光学濃度と、サイドエッチング量の関係を示す表である。サイドエッチング量は、半透過層3のエッチングジャストタイム+20秒を浸漬させた時の値である。
【0111】
図11に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を80%以下、60%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.10以上0.22未満とする場合(表の右欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は2nm以上6nm以下である。
【0112】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0113】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は10.00より大きく3.33以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.21μmより大きく、0.22μm以下となる。
【0114】
図11に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を60%以下、40%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.22以上0.40未満とする場合(表の中欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は6nmより大きく10nm以下である。
【0115】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0116】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は2.00より大きく3.33以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.22μmより大きく、0.24μm以下となる。
【0117】
図11に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を40%以下、10%以上の範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.40以上1.00以下とする場合(表の左欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は10nm以上30nm以下である。
【0118】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0119】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は0.67以上2.00以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.24μm以上0.31μm以下となる。
【0120】
以上のように、本実施形態に係るハーフトーンマスク1及びマスクブランクス1’は、半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)及びES層の光学濃度(第2の光学濃度)との和が3.0以上となる第3の光学濃度を有する遮光層5を備える。即ち、半透光層3、ES層4及び遮光層5が積層された部分である遮光部1Cの光学濃度が3.0以上であるため、入射光を遮光部1Cにおいて十分に遮蔽することが可能である。また、遮光層5の厚さは、半透光層3及びES層4の光学濃度に応じて規定されるため、サイドエッチングレートを低減することが可能であり、半透光層3の膜厚によって決まるサイドエッチング量を低減することが可能である。加えて、上述のように、ハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率及びES層4の光学濃度に応じて、遮光層3の最低限必要な膜厚を求めることが可能であるため、マスクブランクス1’の設計を容易になすことができる。
【実施例】
【0121】
以下、実施例及び比較例について説明する。
図12は実施例の条件及び測定結果を示す表であり、図13は比較例の条件及び測定結果を示す表である。
【0122】
各実施例及び比較例に共通する点は以下の通りである。
各層は、DC(Direct Current)スパッタ法により成膜した。
半透光層3の光透過率は、波長436nmの入射光に対する透過率である。
半透光層3の材料として、上述した、Cr系材料であって波長436nm以下365nm以上の光に対する透過率の差が5%以上10%以下の材料を材料(1)とする。また、Cr系材料であって波長436nm以下365nm以上の光に対する透過率の差が1%未満の材料を材料(2)とする。
サイドエッチングレートは、間隔が20μmのL&S(line and space)状に形成された遮光層5を10秒間エッチングした場合の、サイドエッチング量とした。
【0123】
(実施例1)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(1)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が52%となる21.8nmとした。半透光層3上にNi−Tiを成膜して膜厚31.1nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚62.4nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は2.86である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.17μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.53μmであった。
【0124】
(実施例2)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(1)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が71%となる11.6nmとした。半透光層3上にNi−Mo−Cu−Tiを成膜して膜厚15.0nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚95.2nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は8.21である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.25μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.63μmであった。
【0125】
(実施例3)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(2)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が71%となる5.0nmとした。半透光層3上にNi−Nb−Ta−Tiを成膜して膜厚15.0nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚74.8nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は14.96である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.22μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.48μmであった。
【0126】
(実施例4)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(1)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が37%となる36.9nmとした。半透光層3上にNi−Co−W−Tiを成膜して膜厚68.0nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚23.0nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は0.62である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.10μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.40μmであった。
【0127】
(実施例5)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(2)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が37%となる12.1nmとした。半透光層3上にNi−Zr−V−Tiを成膜して膜厚55.0nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚32.8nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は2.71である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.11μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.26μmであった。
【0128】
(実施例6)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(1)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が71%となる11.6nmとした。半透光層3上にNi−Ta−Fe−Tiを成膜して膜厚51.0nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚49.2nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は4.24である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.14μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.35μmであった。
【0129】
(比較例1)
ガラス基板上に材料(1)を成膜して半透光層を形成した。半透光層の膜厚は、光透過率が51%となる11.6nmとした。半透光層上にNi−Tiを成膜して膜厚12.1nmのES層を形成した。ES層上にCr系材料を成膜して膜厚105.0nmの遮光層を形成した。遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は9.05である。このようにして形成されたマスクブランクスを上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスクを製造した。製造されたハーフトーンマスクについてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.32μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.80μmであった。
【0130】
(比較例2)
ガラス基板上に材料(2)を成膜して半透光層を形成した。半透光層の膜厚は、光透過率が51%となる8.4nmとした。半透光層上にNi−Nb−Al−Tiを成膜して膜厚28.0nmのES層を形成した。ES層上にCr系材料を成膜して膜厚98.5nmの遮光層を形成した。遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は11.73である。このようにして形成されたマスクブランクスを上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスクを製造した。製造されたハーフトーンマスクについてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.30μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.69μmであった。
【0131】
実施例と比較例を比較すると、遮光層5の膜厚が95.2nmより大きい場合、サイドエッチングレートが大きいことがわかる。即ち、遮光層5の膜厚を95.2nmより小さくすることでサイドエッチングレートを低減させ、半透光層3の材料及び膜厚が同じ場合、遮光層5のサイドエッチング量を低減することが可能である。
【0132】
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更され得る。
【符号の説明】
【0133】
1 ハーフトーンマスク
1’ マスクブランクス
2 透明基板
3 半透光層
4 エッチングストッパ層
5 遮光層
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランクス及び当該マスクブランクスをパターニングすることにより形成されるハーフトーンマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ、フラットパネルディスプレイ等の素子、配線等のパターニング等に利用されるフォトリソグラフィにおいて、フォトマスクとしてハーフトーンマスクの使用が進んでいる。ハーフトーンマスクとは、露光を遮る遮光領域と露光を透過させる透光領域に加え、露光を減衰させる半透光領域を備えるマスクである。ハーフトーンマスクを用いてパターニングを行うことにより、被処理物上に塗布されたフォトレジストを多段階の照射強度で露光させることが可能となる。
【0003】
ハーフトーンマスクには、透光層上にパターニングされた半透光層及び遮光層が積層されて形成されているものがある。このハーフトーンマスクは、透光層からなる透光領域、透光層上に半透光層が積層されてなる半透光領域、透光層上に半透光層及び遮光層が積層されてなる遮光領域を有する。透光領域に入射した光は透光層を透過し、減衰されない。半透光領域に入射した光は、半透光層及び透光層を透過し、半透光層によって減衰される。遮光領域に入射した光は、遮光層により(又は、他の層にもより)遮蔽される。半透光領域を透過した光と透過光領域を透過した光は強度が異なり、即ちハーフトーンマスクが得られる。
【0004】
このようなハーフトーンマスクは、透光層、半透光層及び遮光層が積層されたマスクブランクス(原版)をフォトリソグラフィを用いてパターニングすることで製造することが可能である。この場合、マスクブランクス上に塗布されたフォトレジストを所定のパターンに露光し、露光されたフォトレジストをエッチングマスクとしてエッチングすることで、半透光層及び遮光層が所定のパターンにパターニングされる。ここで、半透光層と遮光層がエッチング選択性の低い材料で形成されている場合、遮光層がエッチングされる際に半透光層もエッチングされてしまうため、半透光層と遮光層の間に。これらの材料に対してエッチング選択性が高い材料からなるエッチングストッパ層が積層される。
【0005】
例えば、特許文献1には、透明基板上に、半透光膜、エッチングストッパー膜、遮光膜が積層されたグレートーンマスク(ハーフトーンマスク)及びその製造方法が開示されている。遮光膜をエッチングする際に、エッチングストッパー膜によって半透光膜の減膜が回避され、膜厚の均一性が高いグレートーンマスクを製造することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−189281号公報(段落[0014]、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のグレートーンマスクの製造方法では、半透光膜をエッチングする際、その上層に位置する遮光膜がサイドエッチングされてしまうおそれがある。サイドエッチングにより遮光膜が除去された領域は、透光層、半透光層及びエッチングストッパ層のみが積層されることになる。このため、当該領域に入射した光は、遮光膜により遮蔽されず、エッチングストッパ層及び半透光層により減衰されるものの透過してしまう。即ち、入射光が、本来遮蔽されるべき領域を透過してしまうため、当該グレートーンマスクを用いてフォトリソグラフィのフォトマスクとする場合、パターニング精度が低下するおそれがある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、遮光層のサイドエッチングを抑制することでパターニング精度の高いハーフトーンマスクを作成することが可能なマスクブランクス及び当該マスクブランクスから形成されるパターニング精度の高いハーフトーンマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るマスクブランクスは、透明基板と、半透光層と、エッチングストッパ層と、遮光層とを具備する。
上記半透光層は、上記透光層上に積層され、第1の光学濃度を有する。
上記エッチングストッパ層は、上記半透光層上に積層され、第2の光学濃度を有する。
上記遮光層は、上記エッチングストッパ層上に積層され、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、上記第1の光学濃度及び上記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るハーフトーンマスクは、透明基板と、半透光層と、エッチングストッパ層と、遮光層とを具備する。
上記半透光層は、上記透明基板上に第1のパターンで形成され、第1の光学濃度を有する。
上記エッチングストッパ層は、上記半透光層上に第2のパターンで形成され、第2の光学濃度を有する。
上記遮光層は、上記エッチングストッパ層上に上記第2のパターンに形成され、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、上記第1の光学濃度及び上記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るハーフトーンマスクを示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るマスクブランクスを示す模式図である。
【図3】ハーフトーンマスクの製造プロセスを説明する図である。
【図4】ハーフトーンマスクの製造プロセスを説明する図である。
【図5】ハーフトーンマスクの製造プロセスを説明する図である。
【図6】ハーフトーンマスクの別の製造プロセスを説明する図である。
【図7】ハーフトーンマスクの別の製造プロセスを説明する図である。
【図8】ハーフトーンマスクの各層の膜厚と光学濃度を示す表である。
【図9】ハーフトーンマスクの各層の膜厚と光学濃度を示す表である。
【図10】ハーフトーンマスクの各層の膜厚と光学濃度を示す表である。
【図11】ハーフトーンマスクの各層の膜厚と光学濃度を示す表である。
【図12】本発明の実施例の条件及び測定結果を示す表である。
【図13】比較例の条件及び測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るマスクブランクスは、透明基板と、半透光層と、エッチングストッパ層と、遮光層とを具備する。
上記半透光層は、上記透光層上に積層され、第1の光学濃度を有する。
上記エッチングストッパ層は、上記半透光層上に積層され、第2の光学濃度を有する。
上記遮光層は、上記エッチングストッパ層上に積層され、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、上記第1の光学濃度及び上記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する。
【0013】
このマスクブランクスは、その半透光層、エッチングストッパ層及び遮光層がパターニングされることにより、透光領域、半透光領域及び遮光領域を有するハーフトーンマスクとなる。遮光層、エッチングストッパ層(以下、ES層)及び半透光層が除去されると透光領域が形成され、遮光層及びES層が除去されると半透光領域が形成される。いずれの層も除去されない領域が遮光領域となる。半透光層がエッチングにより除去される際、遮光層のエッチングマスクに被覆されていない部分がサイドエッチングを受け得る。
【0014】
ここで、本発明者らは、遮光層の厚さが薄い場合、サイドエッチングの速度(エッチングレート)が、厚い場合に比較して小さいことを見出した。一方、遮光層の厚さが薄い場合、遮光層の光学濃度(透過率の逆数の常用対数)が入射光を遮蔽するのに十分ではないおそれがある。そこで、遮光層は、半透光層の光学濃度である第1の光学濃度と、ES層の光学濃度である第2の光学濃度との和が3.0(透過率0.001)以上となる第3の光学濃度を有するものとすることができる。
【0015】
半透光層の光学濃度(第2の光学濃度)は半透光領域の光学濃度となるため、半透光層は所望の光学濃度を得るために必要な厚さとされる。一方、ES層は、単層の光学濃度がいずれの領域の光学濃度にもならないため、その厚さは任意に設定することが可能であるが、厚さが大きすぎる場合はES層のエッチングに時間を要する。半透光層の第1の光学濃度とES層の第2の光学濃度に応じて、遮光層の第3の光学濃度を求めることができ、その光学濃度を達成するために必要な厚さを遮光層の最低限の厚さとする。これにより、遮光領域に入射した光を、遮光層、ES層及び半透光層により遮蔽することが可能となる。
【0016】
遮光層の厚さは20nm以上95.2nm以下とすることができる。半透光層の第1の光学濃度とES層の第2の光学濃度が十分に大きい場合、遮光層の厚さは、均一に成膜することが可能な最低限の厚さである20nmとすることができる。一方、遮光層が最も大きい厚さを要する場合、即ち、半透光層の第1の光学濃度が0であり、ES層の厚さが、均一に成膜することが可能な最低限の厚さである10nmである場合に、遮光層の厚さは、95.2nmとすることができる。
【0017】
サイドエッチングの大きさ(サイドエッチング量)は、サイドエッチングレートと、半透光層のエッチングに要する時間の積で決定される。このため、半透光層のエッチングに要する時間が同一である場合であっても、サイドエッチングレートを低減することによって、サイドエッチング量を低減することが可能である。
【0018】
上記マスクブランクスは、上記第2の光学濃度が0.58であるときを基準として、
上記第1の光学濃度は0.10以上1.0以下であり、上記遮光層は、46.6nm以上76.1nm以下の厚さを有していてもよい。
【0019】
ES層の厚さが10nmであり、第2の光学濃度が0.58である場合について、半透光層の透過率を80%、即ち第1の光学濃度を0.10とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.32となる。この光学濃度を満たすために必要な遮光層の厚さは76.1nmとなる。また、半透光層の透過率を10%、即ち第1の光学濃度を1.0とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は1.42となる。この光学濃度を満たすために必要な遮光層の厚さは46.6nmとなる。即ち、第1の光学濃度が0.10以上1.0以下である場合に、遮光層の厚さを、第1の光学濃度に応じて46.6nm以上76.1nm以下とすることにより、半透光層、ES層及び遮光層の3層の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0020】
上記第1の光学濃度が0.10以上0.22未満のときは、上記遮光層は72.2nmより大きく76.1nm以下の厚さを有していてもよい。
【0021】
ES層の厚さが10nmであり、第2の光学濃度が0.58である場合について、半透光層の透過率を80%、即ち第1の光学濃度を0.10とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.32となり、必要な遮光層の厚さは76.1nmとなる。また、半透光層の透過率を60%、即ち第1の光学濃度を0.22とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.20となり、必要な遮光層の厚さは72.2nmとなる。即ち、第1の光学の濃度を0.1以上0.22未満とし、遮光層の厚さを、第1の光学濃度に応じて72.2nmより大きく76.1nm以下とすることにより、半透光層、ES層及び遮光層の3層の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0022】
上記第1の光学濃度が0.22以上0.40未満のときは、上記遮光層は66.3nmより大きく72.2nm以下の厚さを有していてもよい。
【0023】
ES層の厚さが10nmであり、第2の光学濃度が0.58である場合について、半透光層の透過率を60%、即ち第1の光学濃度を0.22とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.20となり、必要な遮光層の厚さは72.2nmとなる。また、半透光層の透過率を40%、即ち第1の光学濃度を0.40とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.02となり、必要な遮光層の厚さは66.3nmとなる。即ち、第1の光学の濃度が0.22以上0.40未満とし、遮光層の厚さを、第1の光学濃度に応じて66.3nmより大きく72.2nm以下とすることにより、半透光層、ES層及び遮光層の3層の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0024】
上記遮光層は0.40以上1.0以下のときは、上記遮光層は46.6nm以上66.3nm以下の厚さを有していてもよい。
【0025】
ES層の厚さが10nmであり、第2の光学濃度が0.58である場合について、半透光層の透過率を40%、即ち第1の光学濃度を0.40とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は2.02となり、必要な遮光層の厚さは66.3nmとなる。また、半透光層の透過率を10%、即ち第1の光学濃度を1.0とすると、遮光層に必要な第3の光学濃度は1.42となり、必要な遮光層の厚さは46.6nmとなる。即ち、第1の光学の濃度が0.40以上1.0以下とし、遮光層の厚さを、第1の光学濃度に応じて46.6nmより大きく66.3nm以下とすることにより、半透光層、ES層及び遮光層の3層の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0026】
上記半透光層と上記遮光層は、Cr系材料からなるものであってもよい。
【0027】
Cr系材料(Cr、CrO、CrN、CrC、CrON、CrOC、CrNC、CrONC等)は、成膜性(膜均一性、密着性等)、エッチング特性(耐酸性、溶解速度等)に優れるため、半透光層及び遮光層をCr系材料で形成することにより、パターニング精度の高いハーフトーンマスクを製造することが可能となる。
【0028】
上記エッチングストッパ層は、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料からなるものであってもよい。
【0029】
Ni、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料は、半透光層及び遮光層の材料であるCr系材料に対して、ウェットエッチングにおいてもエッチング選択性を有する。即ち、ES層を、当該材料で形成することにより、半透光層、ES層及び遮光層のエッチングを、ドライエッチングよりコストの低いウェットエッチングにより行うことが可能となる。ウェットエッチングは、ドライエッチングよりエッチングの等方性が大きくサイドエッチングが進行し易いが、上述のように、サイドエッチングを抑制することが可能であり、高いパターニング精度を得ることが可能である。
【0030】
本発明の一実施形態に係るハーフトーンマスクは、透明基板と、半透光層と、エッチングストッパ層と、遮光層とを具備する。
上記半透光層は、上記透明基板上に第1のパターンで形成され、第1の光学濃度を有する。
上記エッチングストッパ層は、上記半透光層上に第2のパターンで形成され、第2の光学濃度を有する。
上記遮光層は、上記エッチングストッパ層上に上記第3のパターンに形成され、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、上記第1の光学濃度及び上記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する。
【0031】
当該ハーフトーンマスクは、上層の半透光層、ES層及び遮光層が除去され、透明基板を有する透光領域と、上層のES層及び遮光層が除去され、透明基板及び半透光層を有する半透光領域と、いずれの層も除去されていない遮光領域とに区分される。透光領域に入射した光は、透明基板を減衰されることなく透過する。半透光領域に入射した光は、透明基板と第1の光学濃度を有する半透光層を透過し、半透光層によって減衰される。遮光領域に入射した光は、透明基板、第1の光学濃度を有する半透光層、第2の光学濃度を有するES層及び第3の光学濃度を有する遮光層を透過し、半透光層、ES層及び遮光層により遮蔽される。第1、第2及び第3の光学濃度の和が3.0以上であるので、遮光領域に入射した光を十分に遮蔽することが可能である。当該ハーフトーンマスクは、上述のように、遮光層の厚さが20nm以上95.2nm以下とされているため、パターニングの際に遮光層のサイドエッチングが抑制され、高いパターニング性を有するものとすることが可能である。
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るハーフトーンマスク1を示す模式図である。
【0033】
図1に示すように、ハーフトーンマスク1は、透光部1A、半透光部1B及び遮光部1Cを有する。これらの大きさ、配置は所望の露光パターンにより異なる。ハーフトーンマスク1は、透明基板2、半透光層3、エッチングストッパ層(ES層)4及び遮光層5がこの順に積層されて形成されている。
【0034】
透光部1Aは、半透光層3、ES層4及び遮光層5が除去され、透明基板2が露出している部分である。ハーフトーンマスク1に照射された光のうち、透光部1Aに到達した光は、透光部1Aを減衰されることなく透過する。
【0035】
半透光部1Bは、ES層4及び遮光層5が除去され、透明基板2上に半透光層3が積層されている部分である。ハーフトーンマスク1に照射された光のうち、半透光部1Bに到達した光は、半透光部1Bを減衰されて透過する。
【0036】
遮光部1Cは、いずれの層も除去されず、透明基板2上に、半透光層3、ES層4及び遮光層5が積層されている部分である。ハーフトーンマスク1に照射された光のうち、遮光部1Cに到達した光は、遮光部1Cを透過することなく遮蔽される。
【0037】
このように、ハーフトーンマスク1は、照射された光を、透光部1A、半透光部1B及び遮光部1Cのパターンに応じて造影する。このようなハーフトーンマスク1を用いてフォトリソグラフィを実施することにより、被処理物上に塗布されたフォトレジストを多段階の照射強度で露光させることが可能となる。
【0038】
図2は、ハーフトーンマスク1の原版であるマスクブランクス1’を示す模式図である。
マスクブランクス1’は、透明基板2上に、半透光層3、ES層4及び遮光層5が積層されて形成されている。後述する製造方法により、遮光層5、ES層4及び半透光層3をパターニングすることでハーフトーンマスク1が製造される。マスクブランクス1’は、例えば被処理物(Flat Panel Display等)と同等の大きさを有する。
【0039】
マスクブランクス1’は、例えば、透明基板2上に、半透光層3、ES層4及び遮光層5
となる材料をそれぞれ成膜することによって形成することができる。これらの材料の成膜には、電子ビーム蒸着法、イオンアシストスパッタ法等の種々の成膜方法を用いることができる。
【0040】
ハーフトーンマスク1を構成する、透明基板2、半透光層3、ES層4及び遮光層5の各層について説明する。
【0041】
透明基板2は、入射した光を、(ほぼ)減衰させることなく透過させる。透明基板2は相当の強度を有し、その上に積層される各層を支持する。透明基板2は、ガラス、石英等の光透過率の高い材料からなる基板とすることができる。
【0042】
半透光層3は、入射した光を所定(例えば50%)の光量に減衰させる。半透光層3は、光透過率が低く、その膜厚に応じて所定の光透過率となることが可能な材料、例えばCr系材料(Cr、CrO、CrN、CrC、CrON、CrOC、CrNC、CrONC等)からなるものとすることができる。Cr系材料は、成膜性(膜均一性、密着性等)、エッチング特性(耐酸性、溶解速度等)に優れるため、半透光層3のパターニング精度を良好なものとすることが可能である。半透光層3の膜厚と光透過率の関係については後述する。
【0043】
ES(エッチングストッパ)層4は、遮光層5がエッチングされる際に下層の半透光層3がエッチングされることを防止し、かつ、入射した光を減衰し、あるいは遮蔽する。ES層4は半透光層3及び遮光層5に対してエッチング選択性を有する材料、例えばNi、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料からなるものとすることができる。この材料は、上記のCr系材料に対してウェットエッチングにおいてもエッチング選択性を有するため、各層のエッチングをウェットプロセスにより行うことが可能となる。ES層4の膜厚と光透過率の関係については後述する。
【0044】
遮光層5は、入射した光を減衰し、あるいは遮蔽する。遮光層5は、光透過率が低く、その膜厚に応じて所定の光透過率となることが可能な材料、例えばCr系材料からなるものとすることができる。ここで、ES層4が存在するため、遮光層5と半透光層3はエッチング選択性のない材料の組み合わせとすることができる。Cr系材料は、成膜性、エッチング特性に優れるため、遮光層5のパターニング精度を良好なものとすることが可能である。後述するが、遮光層5は、単独で入射光を遮蔽するものでなくてもよく、ES層4及び半透光層3と協働して入射光を遮蔽するものとすることができる。遮光層5の膜厚と光透過率の関係については後述する。
【0045】
次に、ハーフトーンマスク1の製造方法について説明する。
図3、図4及び図5は、ハーフトーンマスク1の製造プロセスを説明する図である。
【0046】
図3(a)に示すように、マスクブランクス1’の遮光層5側に、フォトレジストR1を塗布する。フォトレジストには露光することで現像液に対する溶解性が上昇するポジティブ型のものと、露光することで現像液に対する溶解性が低下するネガティブ型のものがあり、いずれも使用することが可能である。しかし、ポジティブ型のフォトレジストの方が現像による膨潤が小さく、パターンの精度を高いものとすることが可能である。以下、本実施形態に係るフォトレジストR1及びフォトレジストR2(後述)はポジティブ型のものとして説明する。フォトレジストR1の塗布は、レジストコーター等を用いてすることができる。フォトレジストR1は例えばAZ1500(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)、厚さ1μmとすることができる。
【0047】
次に、フォトレジストR1を露光する。この際、ハーフトーンマスク1の透光部1Aに相当する、フォトレジストR1の領域上に光が当たるように露光する。露光は、このようなパターンを有する別のフォトマスクを用いてもよく、電子ビームの走査等の方法によってもすることができる。
【0048】
次に、図3(b)に示すように、フォトレジストR1を現像する。現像は、フォトレジストR1を現像液に浸漬させることによってすることができる。現像により、フォトレジストR1の、半透光部1Bに相当する領域が除去される。現像液は、例えばAZデベロッパー(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いることができる。
【0049】
次に、図3(c)に示すように、上記フォトレジストR1をエッチングマスクとして遮光層5をエッチングする。エッチングは、遮光層5をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングであってもよく、エッチングガスのプラズマ等の暴露によるドライエッチングであってもよい。ただし、本実施形態に係るハーフトーンマスク1の製造方法では他の製造工程もウェットプロセスとすることが可能であるため、当該エッチングをウェットエッチングとすることにより、製造工程の全てをウェットプロセスとすることが可能である。エッチング液は、遮光層5を溶解させ、かつ、下層であるES層4を溶解させないエッチング液を用いることができる。遮光層5がCr系材料からなる場合、エッチング液は硝酸セリウム第二アンモニウムと過塩素酸の混合溶液を用いることが可能である。
【0050】
次に、図3(d)に示すように、上記フォトレジストR1をエッチングマスクとしてES層4をエッチングする。エッチングは、ES層4をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。エッチング液は、ES層4を溶解させ、遮光層5及び半透光層3を溶解させないエッチング液を用いることができる。ES層4が、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料からなる場合、エッチング液は、硝酸を含む溶液を用いることが可能である。
【0051】
次に、図4(a)に示すように、上記フォトレジストR1をエッチングマスクとして半透光層3をエッチングする。エッチングは、半透光層3をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。エッチング液は、半透光層3を溶解させるエッチング液を用いることができる。半透光層3がCr系材料からなる場合、エッチング液は硝酸セリウム第二アンモニウムと過塩素酸の混合溶液を用いることが可能である。
【0052】
この際、遮光層5の端面(遮光層5がエッチングされた際に新たに形成された面)に、半透光層3をエッチングするためのエッチング液が付着して、当該端面がエッチング(サイドエッチング)される。この、サイドエッチングを受けて後退した、遮光層5の端面をサイドエッチング面5aとして図に示す。ここで、遮光層5の厚さが薄い方が、サイドエッチングの速度(エッチングレート)が小さいことが判明している。これは、遮光層5の厚さが小さい方が、エッチング液に含まれるエッチング種(遮光層5の材料と化学反応して溶解させる化学種)が遮光層5の端面に供給される速度が小さいためと考えられる。
【0053】
次に、図4(b)に示すように、フォトレジストR1を剥離させる。フォトレジストR1の剥離は、レジスト剥離液(AZリムーバー:AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いてすることができる。
【0054】
次に、図4(c)に示すように、上記マスクブランクス1’の遮光層5側にフォトレジストR2を塗布する。フォトレジストR2は、フォトレジストR1と同一の組成を有する物質からなるものとすることができる。フォトレジストR2の塗布は、レジストコーター等を用いてすることができる。フォトレジストR2は例えばAZ1500(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)、厚さ1μmとすることができる。
【0055】
次に、フォトレジストR2を露光する。この際、ハーフトーンマスク1の透光部1A及び半透光部1Bに相当する、フォトレジストR2の領域上に光が当たるように露光する。露光は、このようなパターンを有する別のフォトマスクを用いてもよく、電子ビームの走査等の方法によってもすることができる。
【0056】
次に、図4(d)に示すように、フォトレジストR2を現像する。現像は、フォトレジストR2を現像液に浸漬させることによってすることができる。現像により、フォトレジストR2の、透光部1A及び半透光部1Bに相当する領域が除去される。現像液は、例えばAZデベロッパー(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いることができる。
【0057】
次に、図5(a)に示すように、上記フォトレジストR2をエッチングマスクとして遮光層5をエッチングする。エッチングは、遮光層5をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。エッチング液は、エッチング液は硝酸セリウム第二アンモニウムと過塩素酸の混合溶液を用いることが可能である。
【0058】
次に、図5(b)に示すように、上記フォトレジストR2をエッチングマスクとしてES層4をエッチングする。エッチングは、ES層4をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。エッチング液は、硝酸を含む容器を用いることが可能である。
【0059】
次に、フォトレジストR2を剥離させる。フォトレジストR2の剥離は、レジスト剥離液(AZリムーバー:AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いてすることができる。
【0060】
以上のようにして図1に示すハーフトーンマスク1が製造される。
なお、ハーフトーンマスク1は、以下のようにしても製造することが可能である。
【0061】
図6及び図7は、ハーフトーンマスク1の他の製造プロセスを説明する図である。
図6(a)に示すように、マスクブランクス1’の遮光層5側に、フォトレジストRを塗布する。フォトレジストRはポジティブ型のものとして説明する。フォトレジストRの塗布は、レジストコーター等を用いてすることができる。フォトレジストRは例えばAZ1500(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)、厚さ1μmとすることができる。
【0062】
次に、フォトレジストRを露光する。この際、ハーフトーンマスク1の透光部1Aに相当するフォトレジストRの領域上に高強度の露光量で、半透光部1Bに相当する領域に低強度の露光量で光が当たるように露光する。露光は、このようなパターンを有する別のフォトマスクを用いてもよく、電子ビームの走査等の方法によってもすることができる。
【0063】
次に、図6(b)に示すように、フォトレジストRを現像する。現像は、フォトレジストRを現像液に浸漬させることによってすることができる。現像時間を調節することで、高強度の露光量で露光された、透光部1Aに相当するフォトレジストRの領域を完全に除去し、低強度の露光量で露光された、半透光部1Bに相当するフォトレジストRの領域を部分的に除去しつつ残存させる。
【0064】
次に、図6(c)に示すように、上記フォトレジストRをエッチングマスクとして遮光層5をエッチングする。エッチングは、遮光層5をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることができる。エッチング液は、遮光層5を溶解させ、かつ、下層であるES層4を溶解させないエッチング液を用いることができる。遮光層5がCr系材料からなる場合、エッチング液は硝酸セリウム第二アンモニウムを用いることが可能である。
【0065】
次に、図6(d)に示すように、上記フォトレジストRをエッチングマスクとしてES層4をエッチングする。エッチングは、ES層4をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。エッチング液は、ES層4を溶解させ、遮光層5及び半透光層3を溶解させないエッチング液を用いることができる。ES層4が、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料からなる場合、エッチング液は、硝酸を含む溶液を用いることが可能である。
【0066】
次に、図7(a)に示すように、フォトレジストRを再度現像する。この現像により、低強度の露光量で露光されたフォトレジストRの領域を完全に除去する。現像液は、前回の現像液と同一のものを用いることができる。
【0067】
次に、図7(b)に示すように、上記フォトレジストRをエッチングマスクとして、半透光層3及び遮光層5をエッチングする。エッチングは、半透光層3及び遮光層5をエッチング液に浸漬させるウェットエッチングとすることが可能である。遮光層5及び半透光層3がCr系材料からなる場合、エッチング液は硝酸セリウム第二アンモニウムを用いることが可能である。
【0068】
この製造方法によっても、半透光層3及び遮光層5をエッチングする際に、既にエッチングされて形成されていた、遮光層5の端面に、エッチング液が付着して、当該端面がエッチング(サイドエッチング)される。この、サイドエッチングを受けて後退した、遮光層5の端面をサイドエッチング面5aとして図に示す。同様に、遮光層5の厚さが薄い方が、サイドエッチングの速度(エッチングレート)が小さいことが判明している。
【0069】
次に、図7(c)に示すように、上記フォトレジストRをエッチングマスクとして、ES層4をエッチングする。エッチングは、硝酸を含む溶液をエッチング液とするウェットエッチングとすることが可能である。
【0070】
次に、フォトレジストRを剥離させる。フォトレジストRの剥離は、レジスト剥離液(AZリムーバー:AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いてすることができる。
【0071】
以上のようにしてハーフトーンマスク1が製造される。
【0072】
いずれの製造方法によっても、遮光層5をエッチングした後、半透光層3がエッチングされる際に、遮光層5の端面がサイドエッチングされる。このサイドエッチングされた部分に入射した光は、遮光層5により遮蔽あるいは減衰されず、ES層4(ES層4の光透過率が低い場合を除く)及び半透光層3を透過して被処理物に到達してしまう。このため、遮光層5のサイドエッチング量が大きい場合、パターニング精度が低下するおそれがある。
【0073】
上述のように、遮光層5の厚さを薄くすることで、サイドエッチングレートを小さくすることが可能である。一方、遮光層5の厚さが薄い場合、遮光層5単独では、入射光を完全に遮蔽できないおそれがある。そこで、以下のようにして、遮光層5の厚さを薄くし、かつ、ハーフトーンマスク1の遮光部1Cにおいて入射光が遮蔽されるように検討した。
【0074】
以下、各層の厚さと光学濃度について説明する。
【0075】
半透光層3は、ハーフトーンマスク1の半透光部1Bにおいて、入射光を所定の透過率で減衰させる。なお、光学濃度は、透過率の逆数の常用対数である。このため、半透光層3の厚さは、その材料が半透光部1Bの所定の光学濃度となるために必要な厚さで規定される。半透光層3は、透光部1Aにおいては除去されるが、その他の部分、即ち、半透光部1B及び遮光部1Cにおいては存在する。このため、遮光層5の下層には必ず半透光層3が存在するため、半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)を遮光部1Cに必要な光学濃度の一部として利用することが可能である。また、半透光層3のエッチングの間、遮光層5のサイドエッチングが進行することから、半透光層3の厚さが薄く、エッチングに要する時間が短い方が遮光層5のサイドエッチング量が小さい
【0076】
ES層4は、本来的には遮光層5がエッチングされる際に、下層に位置し、遮光層5に対してエッチング選択性がない半透光層3がエッチングされるのを防止するための層である。しかし、ES層4もその材料及び厚さに応じた光学濃度(第2の光学濃度)を有し、ES層4は遮光層5と同一の領域(遮光部1C)に存在するため、ES層4の光学濃度を遮光部1Cに必要な光学濃度の一部として利用することが可能である。ここで、ES層4の厚さは、10nm以上80nm以下の内から選択することができる。ES層4の厚さが10nm以下であると、膜の均一性、密着性が低下するおそれがある。一方、ES層4の厚さが800nm以上であると、ES層4のエッチングに多大な時間を要し、ハーフトーンマスク1の製造効率が低下する。
【0077】
遮光層5は、ハーフトーンマスク1の遮光部1Cにおいて、入射光を減衰させ、あるいは遮蔽する。一般的なハーフトーンマスクの場合、入射光は遮光層5によって遮蔽されるが、本実施形態に係る遮光層5は半透光層3及び遮光層5と協働して入射光を遮蔽する。このようにすることで、遮光層単独で入射光を遮蔽する場合に比べ、膜厚を薄くすることが可能である。具体的には、入射光を遮蔽するのに必要な光学濃度(透過率の逆数の常用対数)が3.0以上(透過率0.001以下)であるとすると、遮光層5の膜厚は、遮光層5の光学濃度(第3の光学濃度)と第1の光学濃度及び第2の光学濃度との和が3.0以上となる厚さとすることが可能である。ここで、遮光層5の厚さは、20nm以上95.2nm以下の内から選択することができる。遮光層5の厚さが20nm以下であると、膜の均一性、密着性が低下するおそれがある。一方、遮光層5が95.2nm以上の厚さである場合、遮光層5単層で3.0以上の光学濃度を有するため、これ以上の膜厚は必要ではない。
【0078】
以下、より具体的に検討する。
半透光層3の材料がCr系材料であって、波長436nm以下365nm以上の光に対する透過率の差が5%以上10%以下の材料である場合について説明する。
【0079】
上述のように、ES層4の厚さは10nm以上80nm以下とすることができる。まず、ES層4の厚さが10nmであり、光学濃度が0.58であるとする。図8は、この条件における各層の厚さ及び光学濃度と、サイドエッチング量の関係を示す表である。サイドエッチング量は、半透過層3のエッチングジャストタイム+20秒を浸漬させた時の値である。
【0080】
図8に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を80%以下、60%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.10以上0.22未満とする場合(表の右欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は17nm以上8nm以下である。
【0081】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.68以上0.80未満が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。半透光層3、ES層4及び遮光層5の3層の光学濃度は3.0以上である必要があるので、遮光層5が有するべき光学濃度は2.20より大きく2.32未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は72.2nmより大きく76.1nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、72.2nmより大きく76.1nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0082】
このときの遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は4.25より大きく9.51以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.22(μm/10sec)より大きく0.23(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.48μmより大きく、0.62μm以下となる。
【0083】
図8に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を60%以下、40%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.22以上0.40未満とする場合(表の中欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は17nm以上30nm以下である。
【0084】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.80以上0.98未満が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。よって、遮光層5が有するべき光学濃度は2.02より大きく2.20未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は63.3nmより大きく72.2nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、63.3nmより大きく72.2nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0085】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は2.21より大きく4.25以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.18(μm/10sec)より大きく0.22(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.49μmより大きく、0.81μm以下となる。
【0086】
図8に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を40%以下、10%以上の範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.40以上1.00以下とする場合(表の左欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は30nm以上76nm以下である。
【0087】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.98以上1.58以下が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。よって、遮光層5が有するべき光学濃度は1.42以上2.02未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は46.6nm以上66.3nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、46.6nm以上66.3nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0088】
このときの遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は0.61以上2.21以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.12(μm/10sec)以上0.18(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.44μm以上0.86μm以下となる。
【0089】
次に、ES層4の厚さが60nmであり、光学濃度が3.0以上である場合について説明する。図9は、この条件における各層の厚さ及び光学濃度と、サイドエッチング量の関係を示す表である。サイドエッチング量は、半透過層3のエッチングジャストタイム+20秒を浸漬させた時の値である。
【0090】
図9に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を80%以下、60%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.10以上0.22未満とする場合(表の右欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は17nmより大きく8nm以下である。
【0091】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0092】
このときの遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は1.18より大きく2.50以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.22μmより大きく、0.27μm以下となる。
【0093】
図9に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を60%以下、40%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.22以上0.40未満とする場合(表の中欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は17nmより大きく30nm以下である。
【0094】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0095】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は0.67より大きく1.18以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.27μmより大きく、0.18μm以下となる。
【0096】
図9に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を40%以下、10%以上の範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.40以上1.00以下とする場合(表の左欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は30nm以上76nm以下である。
【0097】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0098】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は0.26以上0.67以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.37μm以上0.48μm以下となる。
【0099】
次に、半透光層3の材料がCr系材料であって、波長436nm以下365nm以上の光に対する透過率の差が1%未満の材料である場合について説明する。
【0100】
ES層4の厚さが10nmであり、光学濃度が0.58であるとする。図10は、この条件における各層の厚さ及び光学濃度と、サイドエッチング量の関係を示す表である。サイドエッチング量は、半透過層のエッチングジャストタイム+20秒を浸漬させた時の値である。
【0101】
図10に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を80%以下、60%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.10以上0.22未満とする場合(表の右欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は2nm以上6nm以下である。
【0102】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.68以上0.80未満が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。半透光層3、ES層4及び遮光層5の3層の光学濃度は3.0以上である必要があるので、遮光層5が有するべき光学濃度は2.20より大きく2.32未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は72.2nmより大きく76.1nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、72.2nmより大きく76.1nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0103】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は12.03より大きく38.05以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.22(μm/10sec)より大きく0.23(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.46μmより大きく、0.51μm以下となる。
【0104】
図10に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を60%以下、40%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.22以上0.40未満とする場合(表の中欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は6nm以上10nm以下である。
【0105】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.80以上0.98未満が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。よって、遮光層5が有するべき光学濃度は2.02より大きく2.20未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は63.3nmより大きく72.2nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、63.3nmより大きく72.2nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0106】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は6.63より大きく12.03以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.18(μm/10sec)より大きく0.22(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.40μmより大きく、0.53μm以下となる。
【0107】
図10に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を40%以下、10%以上の範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.40以上1.00以下とする場合(表の左欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は10nm以上30nm以下である。
【0108】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)に、ES層4の光学濃度(第2の光学濃度)(0.58)を足して得られた光学濃度、0.98以上1.58以下が半透光層3及びES層4の2層によって達成される光学濃度である。よって、遮光層5が有するべき光学濃度は1.42以上2.02未満となる。遮光層5がCr系材料である場合、この光学濃度となるために必要な膜厚は46.6nm以上66.3nm以下である。即ち、遮光層5の膜厚を、半透光部1Bの光学濃度に応じて決定される、46.6nm以上66.3nm以下の範囲に含まれる膜厚より大きくすることで、半透光層3、ES層4及び遮光層5の光学濃度の和を3.0以上とすることが可能である。
【0109】
このときの遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は1.55以上6.63以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.12(μm/10sec)以上0.18(μm/10sec)以下である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.29μm以上0.56μm以下となる。
【0110】
次に、ES層4の厚さが60nmであり、光学濃度が3.0以上である場合について説明する。図11は、この条件における各層の厚さ及び光学濃度と、サイドエッチング量の関係を示す表である。サイドエッチング量は、半透過層3のエッチングジャストタイム+20秒を浸漬させた時の値である。
【0111】
図11に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を80%以下、60%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.10以上0.22未満とする場合(表の右欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は2nm以上6nm以下である。
【0112】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0113】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は10.00より大きく3.33以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.21μmより大きく、0.22μm以下となる。
【0114】
図11に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を60%以下、40%より大きい範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.22以上0.40未満とする場合(表の中欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は6nmより大きく10nm以下である。
【0115】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0116】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は2.00より大きく3.33以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.22μmより大きく、0.24μm以下となる。
【0117】
図11に示すように、上記条件においてハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率を40%以下、10%以上の範囲とする場合、即ち、半透光層3の光学濃度を0.40以上1.00以下とする場合(表の左欄)について説明する。この場合、当該光学濃度となるために必要な、上記材料からなる半透光層3の膜厚は10nm以上30nm以下である。
【0118】
半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)は3.0以上であるので、遮光層5が有するべき光学濃度の下限はない。しかし、遮光層5を形成しない場合、入射光に対する反射率が大きくなり、入射光が反射されてしまうため、遮光層5は形成する必要がある。遮光層5の厚さは、膜の均一性、密着性を維持するために必要な20nmとすることができる。
【0119】
このときの遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は0.67以上2.00以下となる。この場合、遮光層5のサイドエッチングレートは、0.10(μm/10sec)である。半透光層3の膜厚に応じて半透光層3をエッチングするのに要する時間が決まるので、このサイドエッチングレートにおいて、半透光層3の膜厚に応じて、遮光層5のサイドエッチング量が0.24μm以上0.31μm以下となる。
【0120】
以上のように、本実施形態に係るハーフトーンマスク1及びマスクブランクス1’は、半透光層3の光学濃度(第1の光学濃度)及びES層の光学濃度(第2の光学濃度)との和が3.0以上となる第3の光学濃度を有する遮光層5を備える。即ち、半透光層3、ES層4及び遮光層5が積層された部分である遮光部1Cの光学濃度が3.0以上であるため、入射光を遮光部1Cにおいて十分に遮蔽することが可能である。また、遮光層5の厚さは、半透光層3及びES層4の光学濃度に応じて規定されるため、サイドエッチングレートを低減することが可能であり、半透光層3の膜厚によって決まるサイドエッチング量を低減することが可能である。加えて、上述のように、ハーフトーンマスク1の半透光部1Bの光透過率及びES層4の光学濃度に応じて、遮光層3の最低限必要な膜厚を求めることが可能であるため、マスクブランクス1’の設計を容易になすことができる。
【実施例】
【0121】
以下、実施例及び比較例について説明する。
図12は実施例の条件及び測定結果を示す表であり、図13は比較例の条件及び測定結果を示す表である。
【0122】
各実施例及び比較例に共通する点は以下の通りである。
各層は、DC(Direct Current)スパッタ法により成膜した。
半透光層3の光透過率は、波長436nmの入射光に対する透過率である。
半透光層3の材料として、上述した、Cr系材料であって波長436nm以下365nm以上の光に対する透過率の差が5%以上10%以下の材料を材料(1)とする。また、Cr系材料であって波長436nm以下365nm以上の光に対する透過率の差が1%未満の材料を材料(2)とする。
サイドエッチングレートは、間隔が20μmのL&S(line and space)状に形成された遮光層5を10秒間エッチングした場合の、サイドエッチング量とした。
【0123】
(実施例1)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(1)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が52%となる21.8nmとした。半透光層3上にNi−Tiを成膜して膜厚31.1nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚62.4nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は2.86である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.17μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.53μmであった。
【0124】
(実施例2)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(1)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が71%となる11.6nmとした。半透光層3上にNi−Mo−Cu−Tiを成膜して膜厚15.0nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚95.2nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は8.21である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.25μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.63μmであった。
【0125】
(実施例3)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(2)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が71%となる5.0nmとした。半透光層3上にNi−Nb−Ta−Tiを成膜して膜厚15.0nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚74.8nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は14.96である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.22μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.48μmであった。
【0126】
(実施例4)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(1)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が37%となる36.9nmとした。半透光層3上にNi−Co−W−Tiを成膜して膜厚68.0nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚23.0nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は0.62である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.10μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.40μmであった。
【0127】
(実施例5)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(2)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が37%となる12.1nmとした。半透光層3上にNi−Zr−V−Tiを成膜して膜厚55.0nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚32.8nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は2.71である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.11μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.26μmであった。
【0128】
(実施例6)
ガラス基板(透明基板2)上に材料(1)を成膜して半透光層3を形成した。半透光層3の膜厚は、光透過率が71%となる11.6nmとした。半透光層3上にNi−Ta−Fe−Tiを成膜して膜厚51.0nmのES層4を形成した。ES層4上にCr系材料を成膜して膜厚49.2nmの遮光層5を形成した。遮光層5と半透光層3の膜厚比(遮光層/半透光層)は4.24である。このようにして形成されたマスクブランクス1’を上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスク1を製造した。製造されたハーフトーンマスク1についてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.14μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.35μmであった。
【0129】
(比較例1)
ガラス基板上に材料(1)を成膜して半透光層を形成した。半透光層の膜厚は、光透過率が51%となる11.6nmとした。半透光層上にNi−Tiを成膜して膜厚12.1nmのES層を形成した。ES層上にCr系材料を成膜して膜厚105.0nmの遮光層を形成した。遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は9.05である。このようにして形成されたマスクブランクスを上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスクを製造した。製造されたハーフトーンマスクについてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.32μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.80μmであった。
【0130】
(比較例2)
ガラス基板上に材料(2)を成膜して半透光層を形成した。半透光層の膜厚は、光透過率が51%となる8.4nmとした。半透光層上にNi−Nb−Al−Tiを成膜して膜厚28.0nmのES層を形成した。ES層上にCr系材料を成膜して膜厚98.5nmの遮光層を形成した。遮光層と半透光層の膜厚比(遮光層/半透光層)は11.73である。このようにして形成されたマスクブランクスを上述の製造方法によりパターニングし、ハーフトーンマスクを製造した。製造されたハーフトーンマスクについてサイドエッチングレート及びサイドエッチング量を測定したところ、サイドエッチングレート(SEレート)は0.30μm/10sec、サイドエッチング量(SE量)は0.69μmであった。
【0131】
実施例と比較例を比較すると、遮光層5の膜厚が95.2nmより大きい場合、サイドエッチングレートが大きいことがわかる。即ち、遮光層5の膜厚を95.2nmより小さくすることでサイドエッチングレートを低減させ、半透光層3の材料及び膜厚が同じ場合、遮光層5のサイドエッチング量を低減することが可能である。
【0132】
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更され得る。
【符号の説明】
【0133】
1 ハーフトーンマスク
1’ マスクブランクス
2 透明基板
3 半透光層
4 エッチングストッパ層
5 遮光層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板上に積層された、第1の光学濃度を有する半透光層と、
前記半透光層上に積層された、第2の光学濃度を有するエッチングストッパ層と、
前記エッチングストッパ層上に積層された、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、前記第1の光学濃度及び前記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する遮光層と
を具備するマスクブランクス。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクブランクスであって、
前記第2の光学濃度が0.58であるときを基準として、
前記第1の光学濃度は0.10以上1.0以下であり、
前記遮光層は、46.6nm以上76.1nm以下の厚さを有する
マスクブランクス。
【請求項3】
請求項2に記載のマスクブランクスであって、
前記第1の光学濃度が0.10以上0.22未満のときは、
前記遮光層は72.2nmより大きく76.1nm以下の厚さを有する
マスクブランクス。
【請求項4】
請求項2に記載のマスクブランクスであって、
前記第1の光学濃度が0.22以上0.40未満のときは、
前記遮光層は66.3nmより大きく72.2nm以下の厚さを有する
マスクブランクス。
【請求項5】
請求項2に記載のマスクブランクスであって、
前記遮光層は0.40以上1.0以下のときは、
前記遮光層は46.6nm以上66.3nm以下の厚さを有する
マスクブランクス。
【請求項6】
請求項3、4又は5に記載のマスクブランクスであって、
前記半透光層と前記遮光層は、Cr系材料からなる
マスクブランクス。
【請求項7】
請求項6に記載のマスクブランクスであって、
前記エッチングストッパ層は、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料からなる
マスクブランクス。
【請求項8】
透明基板と、
前記透明基板上に第1のパターンに形成された、第1の光学濃度を有する半透光層と、
前記半透光層上に第2のパターンに形成された、第2の光学濃度を有するエッチングストッパ層と、
前記エッチングストッパ層上に前記第2のパターンに形成された、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、前記第1の光学濃度及び前記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する遮光層と
を具備するハーフトーンマスク。
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板上に積層された、第1の光学濃度を有する半透光層と、
前記半透光層上に積層された、第2の光学濃度を有するエッチングストッパ層と、
前記エッチングストッパ層上に積層された、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、前記第1の光学濃度及び前記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する遮光層と
を具備するマスクブランクス。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクブランクスであって、
前記第2の光学濃度が0.58であるときを基準として、
前記第1の光学濃度は0.10以上1.0以下であり、
前記遮光層は、46.6nm以上76.1nm以下の厚さを有する
マスクブランクス。
【請求項3】
請求項2に記載のマスクブランクスであって、
前記第1の光学濃度が0.10以上0.22未満のときは、
前記遮光層は72.2nmより大きく76.1nm以下の厚さを有する
マスクブランクス。
【請求項4】
請求項2に記載のマスクブランクスであって、
前記第1の光学濃度が0.22以上0.40未満のときは、
前記遮光層は66.3nmより大きく72.2nm以下の厚さを有する
マスクブランクス。
【請求項5】
請求項2に記載のマスクブランクスであって、
前記遮光層は0.40以上1.0以下のときは、
前記遮光層は46.6nm以上66.3nm以下の厚さを有する
マスクブランクス。
【請求項6】
請求項3、4又は5に記載のマスクブランクスであって、
前記半透光層と前記遮光層は、Cr系材料からなる
マスクブランクス。
【請求項7】
請求項6に記載のマスクブランクスであって、
前記エッチングストッパ層は、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、W、V、Ti、Al、Nb、Ta、Zr及びHfのうち少なくともいずれか一つを含有する材料からなる
マスクブランクス。
【請求項8】
透明基板と、
前記透明基板上に第1のパターンに形成された、第1の光学濃度を有する半透光層と、
前記半透光層上に第2のパターンに形成された、第2の光学濃度を有するエッチングストッパ層と、
前記エッチングストッパ層上に前記第2のパターンに形成された、20nm以上95.2nm以下の厚さを有し、前記第1の光学濃度及び前記第2の光学濃度との和が3.0以上である第3の光学濃度を有する遮光層と
を具備するハーフトーンマスク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−164200(P2011−164200A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24371(P2010−24371)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000101710)アルバック成膜株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000101710)アルバック成膜株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
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