説明

マスクホルダーおよびホルダー

【目的】 フォトマスクの裏面を数箇所で支持し、真空吸着で固定する方式のマスクホルダーでは、マスクの自重によるたわみや、マスク自体の持つ凹凸により、マスク上に形成されたパターンの位置はマスク上方からみたとき変化する。このため、パターン位置座標や長寸法の測定誤差が生じる。本発明は、このマスクのたわみや凹凸をなくすことのできるマスクホルダーを提供する。
【構成】 マスク3の裏面全体が密着される大きさの基準平面をもち、この平面内にマスク3を真空吸着するための吸着孔2を支持台1に複数個設けて、この基準平面にマスク3の裏面全体を密着させる構造を有するマスクホルダーである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体の製造に用いられるフォトマスクを固定するためのマスクホルダーおよびウエハー等の他の試料を固定するためのホルダーに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、マスク検査装置等ではフォトマスクの裏面を数箇所で支持し、真空吸着で固定する方式のマスクホルダーが広く用いられている。図3に従来から使用されているマスクホルダーの主要部の構造の一例を示す。図3(a)は斜視図であり、図3(b)は図3R>3(a)のA−B線およびC−D線で切断したときの断面図である。同図において、7は支持台、8はマスク支持部、9は吸着孔、10は同ホルダー上に固定されたマスクを示す(以下、ステッパーで使用されるレチクルも含め、フォトマスクを総称してマスクと称する。)。この例ではマスクは4箇所で支持されている。マスク裏面はマスク支持部8の部品の上面でのみ接触し、他の部分は接触していない。マスク支持部8は3箇所以下の場合もある。同図では真空吸引の経路等、本発明に関係のない部分は省略している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の構成では、マスクの自重によりマスクがたわむという問題が生じる。図3でマスク10は自重によりたわんでいる様子を示している。マスクのたわみにより、マスク上に形成されたパターンの位置はマスク上方より見たとき変化する。
【0004】パターンの微細化が進むにつれ、パターン形成の原版として用いられるマスクに必要な精度が厳しくなり、最近では、最先端デバイス用のマスクではパターン位置精度として、0.1μm以下が必要となっている。このため、マスク製作時および検査時のマスクの自重によるパターン位置の変化(マスク上方より見たときの水平方向の位置の変化)が無視できなくなってきた。
【0005】図4は自重によるマスクのたわみの様子を示すマスクの断面図である。図4(a)はたわみのない場合、図4(b)はマスクを両端で支えたとき、自重によりたわんでいる場合である。lはマスクの外形寸法(辺長)、aは厚さ、bは自重によるマスク中央部のたわみ量である。たわみにより水平方向に測った長さが短くなり、図4(b)ではl′=l−Δlとなる。計算ではΔlとbは、例えば次のようになる。石英基板の場合、l=125mm、a=2.3mmのとき、b=2.26μm、Δl=0.17μmであり、l=150mm、a=3.1mmのとき、b=2.58μm、Δl=0.21μmである。
【0006】このような、たわみによる長さの変化は、マスクのパターン位置精度や長寸法(数mm以上離れたパターン間の距離)測定時の誤差となる。この誤差を補正するために、パターンのフォーカス位置を求めてマスク表面の高さを測定し、パターン位置座標を補正する方法が開発されているが、測定時間が長くなるうえ、補正の精度が十分でないという欠点がある。さらに、マスク基板自体はもともと、数μmの凹凸があり、高さ測定による補正ではこれらの凹凸に対応した精度の高い補正をすることは不可能である。
【0007】本発明は、これらの課題を解決するものであり、マスクのたわみによるパターン位置座標や長寸法の測定誤差をなくしてマスクホルダーを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明のマスクホルダーにはマスク裏面全体が未着される大きさの基準平面があり、この平面内にマスクを真空吸着するための吸着孔を複数個設けている。
【0009】
【作用】このマスクホルダーにマスクを真空吸着により固定すると、マスクは裏面全体がホルダーの基準平面に密着されるので自重によるたわみは生じない。しかも、もともとマスクにある凹凸を強制的に平坦にする作用がある。
【0010】
【実施例】以下、本発明実施例について図面を参照しながら説明する。
【0011】図1は本発明の一実施例におけるマスクホルダーの主要部の構造を示すものである。図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)のA−B線およびC−D線で切断したときの断面図である。1は支持台、2は吸着孔であり、3はマスクで、このマスクホルダーに固定されたマスク3がたわむことなく支持台1の上面の基準平面に密着されている様子を示している。基準平面は凹凸が1μm以下になるよう高精度に仕上げておく。吸着孔2の数に制限はないが、マスク3の裏面全体が基準面に密着され、マスク3自体の凹凸も矯正されるようにする。
【0012】このように、マスク3の裏面全体がマスクホルダーの基準平面に密着されることにより、マスク3の自重によるたわみがなくなり、かつマスク3自体の凹凸も矯正されるため、自重によるたわみや、凹凸が原因で生じるパターン位置座標や長寸法の測定誤差をなくすことができる。
【0013】図2は本発明の他の実施例におけるマスクホルダーの主要部の構造を示すものである。図2(a)は斜視図、図2(b)は図2(a)のA−B線およびC−D線で切断したときの断面図である。4は支持台、5は吸着溝であり、6はこのマスクホルダーに固定されたマスクである。図1の吸着孔2とは異なり、吸着溝5を設けたもので、他は同様であり、同様の効果を有する。
【0014】図では示していないが、真空吸着する範囲を可変にすることにより、同一ホルダーで異なる大きさのマスクに対応することが可能である。
【0015】なお、ここで説明した構造のホルダーはマスクのみならず、ウエハー等の他の試料でも同様に用いることができる。
【0016】
【発明の効果】本発明は、マスクの裏面全体が密着される大きさの基準平面をもち、この平面内にマスクを真空吸着するための吸着孔を複数個設けて、この基準平面にマスクの裏面全体を密着させることにより、マスクの自重によるたわみとマスク自体のもつ凹凸をなくし、これらが原因で生じるパターン位置座標や長寸法の測定誤差をなくすことができるマスクホルダーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施例におけるマスクホルダーの主要部の構造を示す斜視図
(b)は(a)のマスクホルダーの断面図
【図2】(a)は本発明の他の実施例におけるマスクホルダーの主要部の構造を示す斜視図
(b)は(a)のマスクホルダーの断面図
【図3】(a)は従来のマスクホルダーの主要部の構造の一例を示す斜視図
(b)は(a)のマスクホルダーの断面図
【図4】(a)(b)は従来のマスクホルダーを用いた場合の自重によるマスクのたわみの様子を示すマスクの断面図
【符号の説明】
1、4 支持台
2 吸着孔
3、6 マスク
5 吸着溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】複数個の吸着孔または吸着溝が形成され、かつフォトマスクの裏面全体が密着される大きさの滑らかで平坦な基準平面を有することを特徴とするマスクホルダー。
【請求項2】複数個の吸着孔または吸着溝が形成され、かつ滑らかで平坦な基準平面を有することを特徴とするホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−100416
【公開日】平成5年(1993)4月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−257565
【出願日】平成3年(1991)10月4日
【出願人】(000005843)松下電子工業株式会社 (43)