説明

マルチ型空気調和機

【課題】1台の室外機に対して複数台の室内機を分岐ユニットを介して接続するマルチ型空気調和機において、配管と配線の組み合わせの判定を短時間で行えるようにする。
【解決手段】冷房運転時においては、各分岐ユニット310,320,330に含まれているすべての膨張弁を開いて冷房運転を行っている状態において、分岐ユニットの各々について、各膨張弁のうち特定の1個の膨張弁を除いて他の膨張弁を閉とし、他の膨張弁を閉とした時点から所定時間経過後に、各室内機から電気配線を介して室内温度センサによる室内温度Taと、室内熱交換器センサによる室内熱交換器温度Tbとを取得するステップを、分岐ユニットに接続されている室内機の台数分繰り返し、室内温度Taと室内熱交換器温度Tbとの温度差がもっとも大きい値を示す室内機が特定の1個の膨張弁に接続された室内機であるとき、その室内機の上記中継配線端子に対する配線が正しく、それ以外のときは誤配線であるとの判定を各分岐ユニット単位で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1台の室外機に対して複数台の室内機を分岐ユニットを介して接続するマルチ型空気調和機に関し、さらに詳しく言えば、各室内機を分岐ユニットに接続する際の配管と配線の接続状態を判定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マルチ型空気調和機では、室外機の液側配管とガス側配管との間に複数台の室内機を並列的に接続するにあたって分岐ユニットが用いられる。通常、分岐ユニットには、室内機の熱交換器に配管を介して接続される膨張弁と、室内機に備えられている各温度センサを電気配線を介して室外機に接続するための中継配線端子とが室内機の所定台数分設けられている。
【0003】
分岐ユニットに複数台の室内機を接続する場合、例えば第1台目の室内機の電気配線を間違って第2台目の室内機用の中継配線端子に接続してしまうことがあるため、接続後に配管と配線の組み合わせが正しいかどうかを調べる必要がある。
【0004】
配管と配線の組み合わせが正しいかどうかの判定は、特許文献1に記載されているように、判定対象の特定された1台の室内機を他の室内機とは異なる状態にして、室外機を運転して行っている。
【0005】
分岐ユニットに設けられている膨張弁は、各室内機の液側配管に設けられるため、冷房運転においては、判定対象の室内機に接続された膨張弁のみを開き、他の室内機の膨張弁を閉じて、判定対象の室内機の熱交換器の温度変化を観察することにより、その室内機の配管と配線の組み合わせの正誤を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−4798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、1台の室外機に対して例えば10台の室内機が接続されている場合、特定の1台のみを他の室外機と異なる状態、すなわち、上記したように特定の1個の膨張弁を開とし、他の膨張弁を閉とした状態で配管と配線の組み合わせをチェックするには、1台目から10台目まで繰り返して行う必要があり、時間がかかるという問題がある。
【0008】
また、特定の1個の膨張弁を開とし、他の膨張弁を閉とする方法は、暖房運転には適用することができない。
【0009】
すなわち、暖房運転時には、冷房運転とは冷媒の流れ方向が逆で、膨張弁の位置が室内熱交換器の冷媒出口側となることから、判定対象の1台の室内機の膨張弁のみを開いて冷媒を流そうとしても、他の室内機にも冷媒が供給されてしまい、各室内機の熱交換器の時間的な温度変化に差が生じ難くなり、配管と配線の組み合わせの正誤を正確に判定することができない。また、この場合には、冷媒に含まれている冷凍機油が他の室内機内に溜まり込むため、圧縮機側で冷凍機油不足になるおそれがある。
【0010】
そこで、本出願人は、特願2010−154505として、暖房運転においても、室内機の配管と配線の組み合わせの正誤を判定することを可能とした発明を提案している。
【0011】
上記先願発明の概略を説明すると、各室内機に接続されているすべての膨張弁を開いて暖房運転を行い、運転が安定したところで特定の1個の膨張弁を閉じ、その時点から所定時間経過後にまでに生じた各室内機の温度変化を観察し、温度変化のうちもっとも大きな温度変化を示す室内機が上記特定の1個の膨張弁に接続された室内機であるとき、その室内機の中継配線端子に対する配線が正しく、それ以外のときは誤配線であるとの判定を行う。
【0012】
しかしながら、上記先願発明においても、上記従来技術と同じく、1台目の室内機からN台目の室内機まで、膨張弁を一つずつ閉にしていくようにしているため、すべての室内機について配管と配線との関係を調べるには、やはり時間がかかり、暖房運転で判定を行っている途中で除霜運転(冷房運転)に切り替わる可能性があり、除霜運転に入ってしまった場合には判定を一旦中断し、除霜運転終了後、暖房運転が復活し冷凍サイクルが安定するのを待って再度判定を継続することになり、さらに時間がかかる。
【0013】
したがって、本発明の課題は、1台の室外機に対して複数台の室内機を分岐ユニットを介して接続するマルチ型空気調和機において、冷房運転のみならず、暖房運転においても、配管と配線の組み合わせの正誤判定を短時間で行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本願の第1の発明は、請求項1に記載されているように、1台の室外機と、室内熱交換器温度センサおよび室内温度センサを有するN台(Nは2以上の整数)の室内機と、上記各室内機を上記室外機の液側配管とガス側配管との間に並列的に接続するためのM台(Mは2以上の整数)の分岐ユニットとを含み、上記各分岐ユニットは、上記各室内機の室内熱交換器に接続されるL個(Lは2以上の整数)の膨張弁と、上記各温度センサを上記室外機に電気配線を介して接続する中継配線端子とを有し、上記N台の室内機が所定台数ごとに上記M台の分岐ユニットを介して上記室外機に接続されており、上記室外機に上記各室内機の配管と配線の組み合わせ状態を判定する制御手段が設けられているマルチ型空気調和機において、上記制御手段は、上記各分岐ユニットに含まれているすべての膨張弁を開いて冷房運転を行っている状態において、上記1〜M台の各分岐ユニットに対して同時に、1〜L個の膨張弁のうち特定の1個の膨張弁のみを開とし、他の膨張弁を閉とする第1制御信号を出力し、上記他の膨張弁を閉とした時点から所定時間経過後に、上記各室内機から上記電気配線を介して上記室内温度センサによる室内温度Taと、上記室内熱交換器センサによる室内熱交換器温度Tbとを取得し、上記室内温度Taと上記室内熱交換器温度Tbとの温度差がもっとも大きい値を示す室内機が上記特定の1個の膨張弁に接続された室内機であるとき、その室内機の上記中継配線端子に対する配線が正常であり、それ以外のときは誤配線であるとの判定を行い、誤配線判定の場合には、その時点で上記判定を中止し、正常配線判定の場合には、引き続き上記各分岐ユニット内で上記特定の1個の膨張弁を順次交代的に選択しながら、上記判定を上記分岐ユニットに接続されている室内機の台数分繰り返して、上記判定を上記各分岐ユニット単位で並行して行うことを特徴としている。
【0015】
本願の第2の発明は、請求項2に記載されているように、1台の室外機と、N台(Nは2以上の整数)の室内機と、上記各室内機を上記室外機の液側配管とガス側配管との間に並列的に接続するためのM台(Mは2以上の整数)の分岐ユニットとを含み、上記各分岐ユニットは、上記各室内機の室内熱交換器に接続されるL個(Lは2以上の整数)の膨張弁と、上記各室内機を上記室外機に電気配線を介して接続する中継配線端子とを有し、上記N台の室内機が所定台数ごとに上記M台の分岐ユニットを介して上記室外機に接続されており、上記室外機に上記各室内機の配管と配線の組み合わせ状態を判定する制御手段が設けられているマルチ型空気調和機において、上記制御手段は、上記各分岐ユニットに含まれているすべての膨張弁を開いて暖房運転を行っている状態において、上記1〜M台の各分岐ユニットに対して同時に、1〜L個の膨張弁のうち特定の1個の膨張弁のみを閉とし、他の膨張弁を開とする第2制御信号を出力し、上記特定の1個の膨張弁を閉とした時点から所定時間経過後にまでに生じた温度変化を上記各室内機に設けられている温度センサより上記電気配線を介して取得し、上記温度変化のうちもっとも大きな温度変化を示す室内機が上記特定の1個の膨張弁に接続された室内機であるとき、その室内機の上記中継配線端子に対する配線が正常であり、それ以外のときは誤配線であるとの判定を行い、誤配線判定の場合には、その時点で上記判定を中止し、正常配線判定の場合には、引き続き上記各分岐ユニット内で上記特定の1個の膨張弁を順次交代的に選択しながら、上記判定を上記分岐ユニットに接続されている室内機の台数分繰り返して、上記判定を上記各分岐ユニット単位で並行して行うことを特徴としている。
【0016】
上記第2の発明には、請求項3に記載されているように、上記各室内機に設けられている温度センサで検出される温度変化は、上記所定時間経過時点の上記室内機の熱交換器温度センサで検出された温度Tcと、上記特定の膨張弁を閉じる前に上記熱交換器温度センサで検出された温度Tdとの差分であることを特徴とする態様が含まれる。
【0017】
また、上記第2の発明には、請求項4に記載されているように、上記各室内機に設けられている温度センサで検出される温度変化は、上記所定時間経過時点の上記室内機の熱交換器温度センサで検出された温度Tcと、上記特定の膨張弁を閉じる前に室内温度センサで検出された温度Teとの差分であることを特徴とする態様も含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷房運転時、暖房運転時のいずれにおいても、各分岐ユニット単位で配管と配線の組み合わせの正誤判定を並行して行うようにしたことにより、室外機に対して並列的に接続されている複数台の室内機を従来のように総なめ的にチェックする場合に比べて、上記の正誤判定を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のマルチ型空気調和機の実施形態の全体的な構成を示す模式図。
【図2】上記マルチ型空気調和機が備える冷凍サイクル図。
【図3】(a)〜(c)冷房運転時における各分岐ユニット単位で配管と配線の組み合わせの正誤判定を並行して行う状態を示す模式図。
【図4】(a)〜(c)暖房運転時における各分岐ユニット単位で配管と配線の組み合わせの正誤判定を並行して行う状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図1ないし図4により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
図1および図2を参照して、この空気調和機はマルチ型で、1台の室外機100と、複数台、この実施形態では9台の室内機210A,210B,210C;220A,220B,220C;230A,230B,230Cとを備えている。なお、各室内機は同一構成であるため、これらを区別する必要がない場合には、その総称として「室内機200」とする。
【0022】
各室内機200は、室外機100の液側配管410とガス側配管420との間に分岐ユニットを介して並列的に接続されるが、この実施形態では、それぞれ3つの分岐ポートA,B,Cを有する3台の分岐ユニット310,320,330が用いられ、室内機210A,210B,210Cが分岐ユニット310を介して、室内機220A,220B,220Cが分岐ユニット320を介して、室内機230A,230B,230Cが分岐ユニット330を介してそれぞれ室外機100に接続されている。なお、各分岐ユニットは同一構成であるため、これらを区別する必要がない場合には、その総称として「分岐ユニット300」とする。
【0023】
室外機100は、圧縮機101と、冷房運転と暖房運転とで冷媒の流れ方向を切り替える四方弁102と、室外熱交換器103と、室外機ファン104と、外気温度センサS1とを備えている。圧縮機101は、ロータリー式もしくはスクロール式のいずれであってもよいが、インバータ制御による可変圧縮機であることが好ましい。また、室外機100には、CPUやメモリ等を有するコンピュータシステムを備え、空気調和機の全体を制御する制御手段110が搭載されている。
【0024】
室内機200は、室内熱交換器201,室内機ファン202,室内熱交換器センサS2および室内温度センサS3を備えている。
【0025】
分岐ユニット300は、各分岐ポートA,B,Cごとに、膨張弁311(311A〜311C;321A〜321C;331A〜331C)と、液管温度センサS41(S41A〜S41C;S42A〜S42C;S43A〜S43C)とを備えている。
【0026】
膨張弁311は、液側配管410と室内熱交換器201との間に介装される。膨張弁311には、制御手段110からの制御信号により開度が制御される電子膨張弁が用いられる。液管温度センサS41は、膨張弁311と室内熱交換器201との接続配管部分に設けられている。
【0027】
また、分岐ユニット300は、各分岐ポートA,B,Cごとに、中継配線端子T1a〜T1c,T2a〜T2c,T3a〜T3cを備えている。
【0028】
各中継配線端子は、各膨張弁と対応して設けられており、第1台目の室内機210Aの室内熱交換器201が分岐ユニット310の膨張弁311Aに接続されるとすれば、室内機210Aの各センサS2,S3および分岐ユニット310の液管温度センサS41,膨張弁311Aの制御端子は、配線500を介して膨張弁311Aと対応する中継配線端子T1aにそれぞれ接続されることになるが、この中継配線端子への配線時に往々にして接続先の間違えが発生しやすい。
【0029】
また、この実施形態において、分岐ユニット300のうちの分岐ユニット310が親ユニットであり、分岐ユニット310が室外機100と配線500を介して接続され、分岐ユニット310に対して分岐ユニット320,330が配線500を介して並列に接続される。図示しないが、配線500には、ペアの電源線とペアのシリアル通信用の信号線とが含まれている。
【0030】
次に、本発明による配管および配線の接続の組み合わせ判定(チェック)について説明するが、本発明では、そのチェック運転は、冷房運転もしくは暖房運転のいずれでも可能であるので、まず、冷房運転での配管接続の判定について説明する。
【0031】
〔冷房運転での配管接続の判定〕
冷房運転の場合、圧縮機101により圧縮された高温高圧のガス冷媒が室外熱交換103側に供給され、室外熱交換器103が凝縮器、室内熱交換器201が蒸発器として作用するが、制御手段110は、冷房運転に先だって、各分岐ユニット310,320,330の室内機が接続された各分岐ポートA,B,Cの各液管温度センサS41A〜S41C;S42A〜S42C;S43A〜S43Cにより検出されたそれぞれの液管温度T0を初期の液管温度としてメモリに記憶する。
【0032】
そして、冷房運転を開始し、すべての膨張弁311A〜311C;321A〜321C;331A〜331Cを開き、所定時間(例えば、室内機200側での膨張弁切替に要する3分+室外機100側での四方弁等の操作に要する7〜8分、合計10〜11分程度で冷凍サイクルが安定するまでの時間)が経過した後に、各液管温度センサS41A〜S41C;S42A〜S42C;S43A〜S43Cにより検出されたそれぞれの液管温度T1を取得する。
【0033】
膨張弁が開いていれば、対応する液管に冷媒が流れるので、上記所定時間経過後に液管温度センサにより検出される液管の温度は低下する。
【0034】
そこで、制御手段は、各室内機について、順次、液管温度差分(T1−T0)を演算し、例えば、5℃以上低下しているときは、膨張弁と室内機との間の「配管接続あり」と判定し、そうでないときは、「配管接続なし」と判定する。このようにして、各分岐ポートA,B,Cの膨張弁と室内機との配管接続状態の判定が行われる。次に、冷房運転での配管と配線の組み合わせ判定について説明する。
【0035】
〔冷房運転での配管と配線の組み合わせ判定〕
この判定において、制御手段110は、1個の膨張弁、例えば分岐ユニット310の分岐ポートAの膨張弁311Aのみを開くとともに、他の膨張弁をすべて閉じて、冷房運転を継続し、他の膨張弁を閉じた時点から第1の所定時間(冷房運転において、温度差が明確になる例えば5〜6分程度)経過後に、各室内機の室内温度センサS3で検出された温度Taと、熱交換器温度センサS2で検出された温度Tbとを取得し、その温度差分(Ta−Tb)を求める。
【0036】
膨張弁を開いた室内機の熱交換器温度センサS2で検出される温度Tbは冷房運転の継続により漸次低くなるが、その室内機の室内温度センサS3で検出される温度Taは温度Tbよりも高い値を示す。そこで、その温度差分(Ta−Tb)がもっとも大きい室内機と、開かれた膨張弁との関係を判定する。
【0037】
この判定で、温度差分(Ta−Tb)がもっとも大きい室内機が室内機210Aであれば、分岐ユニット310の分岐ポートAの膨張弁311Aと室内機210Aとの間の配管と、中継接続端子T1aに接続されている配線の組み合わせが「正しい」と判定され、それ以外の場合には「誤り」であると判定される。
【0038】
以後、残りの各分岐ユニット310,320,330の各分岐ポートA,B,Cの室内機が接続された膨張弁について、繰り返して同様の判定を行うのであるが、この方法では時間がかかる。
【0039】
そこで、本発明では、時間短縮をはかるため、上記した冷房運転での配管と配線の組み合わせ判定を分岐ユニット単位で並行して行う。これについて、図3(a)〜(c)により説明する。
【0040】
〔本発明による冷房運転での配管と配線の組み合わせ判定〕
図1に示すように、分岐ユニット310に3台の室内機210A〜210Cが、分岐ユニット320に3台の室内機220A〜220Cが、また、分岐ユニット330に3台の室内機230A〜230Cがそれぞれ接続されているものとする。なお、図3において、太線矢印が膨張弁が開かれ室内機に冷媒が流れている状態を示し、鎖線矢印が室内機からの送信信号を示している。
【0041】
冷房運転が行われている状態で、この実施形態では、制御手段110から出力される制御信号(第1制御信号)により、まず、図3(a)に示すように、分岐ユニット310では、膨張弁311Aのみを開き、膨張弁311B,膨張弁311Cをともに閉じる。
【0042】
そして、膨張弁311B,311Cを閉じた時点から第1の所定時間(冷房運転において、温度差が明確になる例えば5〜6分程度)経過後に、分岐ポート310に接続されている室内機210A,210B,210Cから、室内温度センサS3で検出された温度Taと、熱交換器温度センサS2で検出された温度Tbとを取得し、その温度差分(Ta−Tb)を求めた後、温度差分(Ta−Tb)がもっとも大きい室内機と、開かれた膨張弁との関係を判定する。
【0043】
この判定で、温度差分(Ta−Tb)がもっとも大きい室内機が室内機210Aであれば、分岐ユニット310の分岐ポートAの膨張弁311Aと室内機210Aとの間の配管と、中継接続端子T1aに接続されている配線の組み合わせが「正しい」と判定され、それ以外の場合には「誤り」であると判定される。
【0044】
これと並行して、分岐ユニット320でも、上記第1制御信号により、膨張弁321Aのみを開き、膨張弁321B,膨張弁321Cをともに閉じ、また、分岐ユニット330でも、上記第1制御信号により、膨張弁331Aのみを開き、膨張弁331B,膨張弁331Cをともに閉じて、上記と同様な判定を行う。
【0045】
次に、図3(b)に示すように、分岐ユニット310では、膨張弁311Bのみを開き、膨張弁311A,膨張弁311Cをともに閉じ、分岐ユニット320では、膨張弁321Bのみを開き、膨張弁321A,膨張弁321Cをともに閉じ、分岐ユニット330では、膨張弁331Bのみを開き、膨張弁331A,膨張弁331Cをともに閉じて、上記と同様な判定を行う。
【0046】
次に、図3(c)に示すように、分岐ユニット310では、膨張弁311Cのみを開き、膨張弁311A,膨張弁311Bをともに閉じ、分岐ユニット320では、膨張弁321Cのみを開き、膨張弁321A,膨張弁321Bをともに閉じ、分岐ユニット330では、膨張弁331Cのみを開き、膨張弁331A,膨張弁331Bをともに閉じて、上記と同様な判定を行う。
【0047】
このように、配管と配線の組み合わせ判定を分岐ユニット310,320,330単位で並行して行うことにより、9個の膨張弁を総なめ的に順次切り替える方法よりも、判定に要する時間をほぼ1/3に短縮することができる。
【0048】
なお、各分岐ユニット310,320,330内での膨張弁の切り替え順序は、任意であってよい。一例として、分岐ユニット310では、膨張弁の開き順序を311A→311B→311Cとし、これに対して、分岐ユニット320では、膨張弁の開き順序を321C→321B→321Aとし、分岐ユニット330では、膨張弁の開き順序を321A→321C→321Bとしてもよい。
【0049】
次に、暖房運転での配管と配線の組み合わせ判定について説明する。暖房運転では、圧縮機101により圧縮された高温高圧のガス冷媒が室内熱交換201側に供給され、室内熱交換器201が凝縮器、室外熱交換器103が蒸発器として作用し、膨張弁の位置が室内熱交換器201の冷媒出口側となることから、判定対象となる1台の室内機だけに冷媒を流すことができない。そこで、次のような制御を行う。
【0050】
〔暖房運転での配管と配線の組み合わせ判定〕
圧縮機101を起動して通常の暖房運転を開始し、各分岐ユニット310,320,330の室内機が接続されたすべての膨張弁を開き、冷凍サイクルが安定するのを待ち(一例として、室内機200側での膨張弁切替に要する3分+室外機100側での四方弁等の操作に要する7〜8分、合計10〜11分程度)、その後に配管と配線の組み合わせ判定を行う。
【0051】
この判定において、制御手段110は、最初にすべての室内機の熱交換器温度センサS2により検出された熱交換器201の温度Tdをメモリに記憶しておき、第2の所定時間(例えば、10〜11分程度)経過後に、1個の膨張弁、例えば分岐ユニット310の分岐ポートAにある膨張弁311Aのみを閉じ、他の膨張弁は開いたままとする。
【0052】
暖房運転を続けることにより、膨張弁311Aを閉じた室内機210Aは、冷媒の供給が停止されるため、温度が次第に低下する。そこで、膨張弁311Aを閉じた時点から、第3の所定時間(暖房運転において、温度差が明確になる例えば5〜6分程度)経過後に、各室内機の熱交換器温度センサS2により、各室内機の熱交換器201の温度Tcを検出し、この温度Tcとメモリに記憶されている温度Tdとの温度差分(Tc−Td)を算出する。
【0053】
そして、この温度差分(Tc−Td)がもっとも大きい室内機と、閉じた膨張弁との関係を判定する。この判定で、例えば温度差分(Tc−Td)がもっとも大きい室内機が室内機210Aであれば、分岐ユニット310の分岐ポートAと室内機210Aの間の配管と配線の組み合わせが「正しい」と判定され、それ以外の場合には、その組み合わせが「誤り」であると判定される。
【0054】
以後、残りの各分岐ユニット310,320,330の各分岐ポートA,B,Cの室内機が接続された膨張弁について、繰り返して同様の判定を行うのであるが、この方法では時間がかかる。
【0055】
そこで、本発明では、時間短縮をはかるため、上記した暖房運転での配管と配線の組み合わせ判定を分岐ユニット単位で並行して行う。これについて、図4(a)〜(c)により説明する。
【0056】
〔本発明による暖房運転での配管と配線の組み合わせ判定〕
図1に示すように、分岐ユニット310に3台の室内機210A〜210Cが、分岐ユニット320に3台の室内機220A〜220Cが、また、分岐ユニット330に3台の室内機230A〜230Cがそれぞれ接続されているものとする。なお、図4において、太線矢印が膨張弁が開かれ室内機に冷媒が流れている状態を示し、鎖線矢印が室内機からの送信信号を示している。
【0057】
暖房運転が開始され、冷凍サイクルが安定した時点において、最初にすべての室内機の熱交換器温度センサS2により検出された熱交換器201の温度Tdをメモリに記憶してから、第2の所定時間(例えば、10〜11分程度)経過後に、1個の膨張弁のみを閉じ、他の膨張弁は開いたままとするのであるが、この実施形態では、制御手段110から出力される制御信号(第2制御信号)により、まず、図4(a)に示すように、分岐ユニット310では、膨張弁311Aのみを閉じ、膨張弁311B,膨張弁311Cは開いたままとして暖房運転を続ける。
【0058】
そして、膨張弁311Aを閉じた時点から第3の所定時間(暖房運転において、温度差が明確になる例えば5〜6分程度)経過後に、分岐ユニット310に接続されている室内機210A,210B,210Cの熱交換器温度センサS2により、室内機210A,210B,210Cの熱交換器201の温度Tcを検出し、この温度Tcとメモリに記憶されている温度Tdとの温度差分(Tc−Td)を算出し、次のような判定を行う。
【0059】
すなわち、例えば温度差分(Tc−Td)がもっとも大きい室内機が室内機210Aであれば、分岐ユニット310の分岐ポートAと室内機210Aの間の配管と、中継接続端子T1aに接続されている配線の組み合わせが「正しい」と判定され、それ以外の場合には、その組み合わせが「誤り」であると判定される。
【0060】
これと並行して、分岐ユニット320でも、上記第2制御信号により、膨張弁321Aのみを閉じ、膨張弁321B,膨張弁321Cは開いたままとし、また、分岐ユニット330でも、上記第2制御信号により、膨張弁331Aのみを閉じ、膨張弁331B,膨張弁331Cは開いたままとして、上記と同様な判定を行う。
【0061】
次に、図4(b)に示すように、分岐ユニット310では、膨張弁311Bのみを閉じ、膨張弁311A,膨張弁311Cは開いたままとし、分岐ユニット320では、膨張弁321Bのみを閉じ、膨張弁321A,膨張弁321Cは開いたままとし、分岐ユニット330では、膨張弁331Bのみを閉じ、膨張弁331A,膨張弁331Cは開いたままとして、上記と同様な判定を行う。
【0062】
次に、図4(c)に示すように、分岐ユニット310では、膨張弁311Cのみを閉じ、膨張弁311A,膨張弁311Bは開いたままとし、分岐ユニット320では、膨張弁321Cのみを閉じ、膨張弁321A,膨張弁321Bは開いたままとし、分岐ユニット330では、膨張弁331Cのみを閉じ、膨張弁331A,膨張弁331Bは開いたままとして、上記と同様な判定を行う。
【0063】
このように、暖房運転時においても、配管と配線の組み合わせ判定を分岐ユニット310,320,330単位で並行して行うことにより、9個の膨張弁を総なめ的に順次切り替える方法よりも、判定に要する時間をほぼ1/3に短縮することができる。
【0064】
なお、各分岐ユニット310,320,330内での膨張弁の切り替え順序は、任意であってよい。一例として、分岐ユニット310では、膨張弁の閉じる順序を311A→311B→311Cとし、これに対して、分岐ユニット320では、膨張弁の閉じる順序を321C→321B→321Aとし、分岐ユニット330では、膨張弁の閉じる順序を321A→321C→321Bとしてもよい。
【0065】
また、上記暖房運転での配管と配線の組み合わせ判定では、室内温度センサS3の検出温度を使用しないで、熱交換器温度センサS2による検出温度Tc,Tdのみを使用しているが、室内温度センサS3が熱交換器201の温度の影響を受けない箇所、例えば室内機の図示しない空気吸入口等に設置されている場合には、膨張弁を閉じる前にメモリに記憶される温度として、室内温度センサS3による検出温度Teが採用されてもよい。
【0066】
また、上記各実施形態では、各分岐ユニットが備える3つの分岐ポートA,B,Cのいずれにも室内機が接続されているが、室内機の台数との関係で、例えば分岐ユニット330については、分岐ポートA,Bに室内機が接続され、分岐ポートCには室内機が接続されていない場合には、室内機が接続されている分岐ポートA,Bについて上記の判定を行えばよい。
【0067】
本発明で、上記のように、冷房運転および暖房運転のいずれにおいても、分岐ユニット単位で配管と配線の組み合わせ判定を行うようにしたのは、配線接続の間違えは、往々にして個々の分岐ユニット内で生じ、分岐ユニットをまたがっての配線接続の間違え、例えば分岐ユニット310の分岐ポートCにある膨張弁311Cに接続される室内機210Cの配線を、分岐ユニット320の分岐ポートAにある中継配線端子T2aに接続するような間違えはほとんど発生しないことによる。
【符号の説明】
【0068】
100 室外機
101 圧縮機
102 四方弁
103 室外熱交換器
104 室外機ファン
210(210A〜210C,220A〜220C,230A〜230C)室内機
201 室内熱交換器
202 室内機ファン
310,320,330 分岐ユニット
311A〜311C,321A〜321C,331A〜331C 膨張弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台の室外機と、室内熱交換器温度センサおよび室内温度センサを有するN台(Nは2以上の整数)の室内機と、上記各室内機を上記室外機の液側配管とガス側配管との間に並列的に接続するためのM台(Mは2以上の整数)の分岐ユニットとを含み、上記各分岐ユニットは、上記各室内機の室内熱交換器に接続されるL個(Lは2以上の整数)の膨張弁と、上記各温度センサを上記室外機に電気配線を介して接続する中継配線端子とを有し、上記N台の室内機が所定台数ごとに上記M台の分岐ユニットを介して上記室外機に接続されており、上記室外機に上記各室内機の配管と配線の組み合わせ状態を判定する制御手段が設けられているマルチ型空気調和機において、
上記制御手段は、上記各分岐ユニットに含まれているすべての膨張弁を開いて冷房運転を行っている状態において、上記1〜M台の各分岐ユニットに対して同時に、1〜L個の膨張弁のうち特定の1個の膨張弁のみを開とし、他の膨張弁を閉とする第1制御信号を出力し、上記他の膨張弁を閉とした時点から所定時間経過後に、上記各室内機から上記電気配線を介して上記室内温度センサによる室内温度Taと、上記室内熱交換器センサによる室内熱交換器温度Tbとを取得し、上記室内温度Taと上記室内熱交換器温度Tbとの温度差がもっとも大きい値を示す室内機が上記特定の1個の膨張弁に接続された室内機であるとき、その室内機の上記中継配線端子に対する配線が正常であり、それ以外のときは誤配線であるとの判定を行い、誤配線判定の場合には、その時点で上記判定を中止し、
正常配線判定の場合には、引き続き上記各分岐ユニット内で上記特定の1個の膨張弁を順次交代的に選択しながら、上記判定を上記分岐ユニットに接続されている室内機の台数分繰り返して、上記判定を上記各分岐ユニット単位で並行して行うことを特徴とするマルチ型空気調和機。
【請求項2】
1台の室外機と、N台(Nは2以上の整数)の室内機と、上記各室内機を上記室外機の液側配管とガス側配管との間に並列的に接続するためのM台(Mは2以上の整数)の分岐ユニットとを含み、上記各分岐ユニットは、上記各室内機の室内熱交換器に接続されるL個(Lは2以上の整数)の膨張弁と、上記各室内機を上記室外機に電気配線を介して接続する中継配線端子とを有し、上記N台の室内機が所定台数ごとに上記M台の分岐ユニットを介して上記室外機に接続されており、上記室外機に上記各室内機の配管と配線の組み合わせ状態を判定する制御手段が設けられているマルチ型空気調和機において、
上記制御手段は、上記各分岐ユニットに含まれているすべての膨張弁を開いて暖房運転を行っている状態において、上記1〜M台の各分岐ユニットに対して同時に、1〜L個の膨張弁のうち特定の1個の膨張弁のみを閉とし、他の膨張弁を開とする第2制御信号を出力し、上記特定の1個の膨張弁を閉とした時点から所定時間経過後にまでに生じた温度変化を上記各室内機に設けられている温度センサより上記電気配線を介して取得し、上記温度変化のうちもっとも大きな温度変化を示す室内機が上記特定の1個の膨張弁に接続された室内機であるとき、その室内機の上記中継配線端子に対する配線が正常であり、それ以外のときは誤配線であるとの判定を行い、誤配線判定の場合には、その時点で上記判定を中止し、
正常配線判定の場合には、引き続き上記各分岐ユニット内で上記特定の1個の膨張弁を順次交代的に選択しながら、上記判定を上記分岐ユニットに接続されている室内機の台数分繰り返して、上記判定を上記各分岐ユニット単位で並行して行うことを特徴とするマルチ型空気調和機。
【請求項3】
上記各室内機に設けられている温度センサで検出される温度変化は、上記所定時間経過時点の上記室内機の熱交換器温度センサで検出された温度Tcと、上記特定の膨張弁を閉じる前に上記熱交換器温度センサで検出された温度Tdとの差分であることを特徴とする請求項2に記載のマルチ型空気調和機。
【請求項4】
上記各室内機に設けられている温度センサで検出される温度変化は、上記所定時間経過時点の上記室内機の熱交換器温度センサで検出された温度Tcと、上記特定の膨張弁を閉じる前に室内温度センサで検出された温度Teとの差分であることを特徴とする請求項2に記載のマルチ型空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−241957(P2012−241957A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111302(P2011−111302)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】