説明

マンガン酸化物−導電性金属酸化物の複合層を備えたスーパーキャパシタ用電極及びその製造方法、並びにこれを用いたスーパーキャパシタ

【課題】比容量及び電気伝導度に優れ、機械的、熱的及び電気的に安定性の高いスーパーキャパシタ用電極を提供する。
【解決手段】スーパーキャパシタ用電極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一面上に形成された多孔性複合金属酸化物層とを備えている。前記多孔性複合金属酸化物層は、電界が印加された状態における紡糸及びその後の熱処理によって形成された超極細繊維がもつれ合ったウェブ状態であり、マンガン酸化物及びマンガン酸化物よりも高い電気伝導性を有する導電性金属酸化物のナノ粒子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比容量及び電気伝導度に優れ、機械的安定性、熱的安定性及び電気的安定性の高いスーパーキャパシタ用電極及びその製造方法、並びにこれを用いたスーパーキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染問題や石油資源の枯渇等の問題を克服するために、環境にやさしいハイブリッド自動車(hybrid electric vehicle:HEV)に対する需要が高まっている。ハイブリッド自動車の動力系の効率を改善するために、エネルギー貯蔵装置として既に利用されているバッテリーシステムと比べて、更に短い時間内に大電流を供給することのできる電気化学的キャパシタに対する要望が高まっている。
【0003】
このような電気化学キャパシタは、大きく二つのタイプに分類される。一つは、炭素系の電極と電解質との間に発生する電気二重層(electrical double layer )の原理を利用した電気二重層キャパシタである。他の一つは、電極と電解質との界面における可逆性のファラデー酸化還元反応(reversible faradaic surface redox reaction)による擬似容量(pseudocapacitance )を利用して電荷を貯蔵するスーパーキャパシタである。ここで、電気二重層キャパシタには、容量が小さいという欠点があるため、高容量、高出力特性が要求される分野への応用が可能なスーパーキャパシタが最近ますます注目されている。
【0004】
このようなスーパーキャパシタ用の電極素材としては、ポリアニリン(polyaniline )、ポリピロール(polypyrrole )のような導電性ポリマー又は金属酸化物が主に使われている。導電性ポリマーを用いる場合、800F/g程度までの比容量値(specific capacitance)を得ることができるが、この場合、長寿命安定性とサイクル特性の点でスーパーキャパシタの商用化が制約されてしまう。これに比べて、遷移金属酸化物系のスーパーキャパシタは、比容量が高く、動作時間が長く、且つ高出力であることから、多くの研究がなされている。特に、優れた電気伝導特性と高い比容量値を持つRuO2 電極の応用に関する研究が多く進められている。しかし、RuO2 は優れたスーパーキャパシタ特性を有するにもかかわらず値段が高いため、商業的に製造するには制約がある。
【0005】
このRuO2 に代わる電極材料として活発に研究が行われている電極材料には、MnO2 、NiOx 、CoOx 、V2 O5 及びMoO3 等がある。特に、マンガン酸化物(MnO2 )は環境にやさしく値段が安いので、キャパシタ用電極の材料に適用するための多くの研究が行われている。しかし、マンガン酸化物は、RuO2 に比べて電気伝導度が相対的に劣るため、高速特性を備えたスーパーキャパシタを製造するためには、電気伝導度を改善することが重要である。最近、マンガン酸化物系スーパーキャパシタの電気伝導度を改善するために、例えば、炭素素材(カーボンブラック、カーボンナノチューブ、蒸気成長炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber 等)の表面にマンガン酸化物を薄くコーティングすることにより、コーティングされたマンガン酸化物層にスーパーキャパシタ特性を具現すると共に炭素素材の優れた電気伝導度に基づいて高速特性を得るための研究が進められている。
【0006】
このような例として、特許文献1には、マンガン溶液にカーボンブラック、カーボンナノチューブ、蒸気成長炭素繊維のような炭素素材を添加すると共に炭素素材の表面にマンガン酸化物の薄い層が形成されるように炭素素材の酸化還元反応を調節することによって、スーパーキャパシタ用電極を製造する例が開示されている。
【0007】
また、マンガン酸化物のナノ粒子に導電剤とバインダーを一緒に混ぜてペーストにし、当該ペーストを集電体にコーティングする方法も知られている。しかし、この方法には、導電剤とバインダーを加えた量に応じてスーパーキャパシタ特性(例えば比容量値)が減少するという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国登録特許番号第10−0622737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、比容量及び電気伝導度に優れ、機械的、熱的及び電気的に安定性の高いスーパーキャパシタ用電極を提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、また、前記のような電極を含むスーパーキャパシタを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記のような電極を容易に且つ安価に大量生産することのできる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明に係るスーパーキャパシタ用電極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一面上に形成された多孔性複合金属酸化物層とを備え、前記多孔性複合金属酸化物層は、電界が印加された状態における紡糸及びその後の熱処理によって形成された超極細繊維がもつれ合ったウェブ状態であり、マンガン酸化物及びマンガン酸化物よりも高い電気伝導性を有する導電性金属酸化物のナノ粒子を含む。
【0013】
また、本発明に係るスーパーキャパシタは、前記スーパーキャパシタ用電極を含むスーパーキャパシタである。
【0014】
また、本発明に係るスーパーキャパシタ用電極の製造方法は、マンガン酸化物の前駆体、マンガン酸化物よりも高い電気伝導度を有する導電性金属酸化物の前駆体、ポリマー、及び溶媒を混合して紡糸溶液を調製する工程と、集電体上に、前記紡糸溶液を用いて電界下で紡糸を行うことにより、前記マンガン酸化物の前駆体、前記導電性金属酸化物の前駆体及びポリマーを含む超極細繊維がもつれ合ったウェブを形成する工程と、前記超極細繊維のウェブに対して、熱圧着、熱加圧及びアニールの中から選ばれた第1の熱処理を行うことにより、前記超極細繊維のウェブ内のポリマーを部分的又は全体的に溶融させる工程と、前記超極細繊維のウェブに対して第2の熱処理を行うことにより、前記超極細繊維のウェブから前記ポリマーを除去し、それによって、多孔性複合金属酸化物層を形成する工程とを備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、比容量及び電気伝導度に優れ、機械的、熱的及び電気的に安定性の高いスーパーキャパシタ用電極及び当該電極を含むスーパーキャパシタを提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、前記のような電極を容易に且つ安価に大量生産することのできる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1におけるマンガン酸化物前駆体−ルテニウム酸化物前駆体/ポリマーの超極細繊維ウェブの走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、実施例1により製造された電極における多孔性複合金属酸化物層の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、図2の走査型電子顕微鏡写真の拡大写真である。
【図4】図4は、実施例2におけるマンガン酸化物前駆体−ルテニウム酸化物前駆体/ポリマーの超極細繊維ウェブの熱圧着工程後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例2により製造された電極における多孔性複合金属酸化物層の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、図5の走査型電子顕微鏡写真の拡大写真である。
【図7】図7は、実施例2により製造された電極における多孔性複合金属酸化物層のX線回折結果を示す図である。
【図8】図8は、実施例2により製造された多孔性複合金属酸化物層におけるマンガン酸化物−ルテニウム酸化物のナノ粒子のネットワークと、結晶質マンガン酸化物のナノ粒子のネットワークとを比較した透過型電子顕微鏡写真である。
【図9】図9は、実施例1により製造された電極のスーパーキャパシタ特性を評価した結果を示す図である。
【図10】図10は、実施例1により製造された電極のスーパーキャパシタ特性を掃引速度を変化させて評価した結果を示す図である。
【図11】図11は、実施例2により製造された電極のスーパーキャパシタ特性を評価した結果を示す図である。
【図12】図12は、実施例2により製造された電極のスーパーキャパシタ特性を掃引速度を変化させて評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
本発明に係るスーパーキャパシタ用電極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一面上に形成された多孔性複合金属酸化物層とを備えている。
【0020】
前記多孔性複合金属酸化物層は、電界が印加された状態における紡糸及びその後の熱処理によって形成された超極細繊維がもつれ合ったウェブを堆積することにより形成されている。また、前記多孔性複合金属酸化物層はナノ粒子を含んでおり、これらのナノ粒子は、マンガン酸化物及びマンガン酸化物よりも高い電気伝導性を有する導電性金属酸化物からなる。
【0021】
具体的には、前記ナノ粒子は、前記導電性金属酸化物が前記マンガン酸化物と共に固溶体を形成している状態、前記導電性金属酸化物中に前記マンガン酸化物が溶解している状態、又は前記マンガン酸化物と前記導電性金属酸化物とが相分離されて混合相として存在する状態等で存在している。ここで、前記三つの状態のうち、少なくとも二つ以上の状態が混在している場合もあり得る。
【0022】
また、比容量値を改善するためには、前記マンガン酸化物の成分がリッチなナノ粒子は、非晶質構造を有するか、又は非晶質構造内にナノ結晶領域が部分的に形成された構造を有することが望ましい。また、電気伝導度を高めるためには、前記導電性金属酸化物の成分がリッチなナノ粒子は、結晶構造を有することが望ましい。これらの構造は、マンガン酸化物の前駆体と導電性金属酸化物の前駆体との含有量を調節することによって、また、熱処理の温度を調節することによって得ることができる。
【0023】
また、前記多孔性複合金属酸化物層における前記ナノ粒子からなるナノ繊維がもつれ合ったウェブは、紡糸を行いながら繊維形態を保持することによって得ることができる。ここで、前記ナノ粒子は、ナノ繊維がもつれ合ったウェブ構造を持つ前記多孔性複合金属酸化物層内に実質的に均一に分布されている。また、前記紡糸と前記熱処理との間に熱圧着又は熱加圧が行われる場合、前記ナノ繊維は、フラットなベルトの形態を持つこともできる。
【0024】
また、前記ナノ粒子の平均径は2nm以上で且つ30nm以下であり、前記ナノ繊維の平均径は50nm以上で且つ3000nm以下であることが好ましい。前記ナノ繊維及び前記ナノ繊維のサイズは、添加された前駆体の含有量と熱処理温度とによって調節可能である。また、熱圧着又は熱加圧の程度によって、前記ナノ繊維のウェブ構造は、ナノ粒子のネットワーク構造に変わる。
【0025】
また、前記導電性金属酸化物は、マンガン酸化物よりも電気伝導特性に優れており、高速特性を含むスーパーキャパシタ特性を具現するために使用される。高い電気伝導度を得るためには、前記導電性金属酸化物として、低温(例えば300℃ )の熱処理を行うことによって直ちに結晶化する金属酸化物が好ましい。従って、前記導電性金属酸化物は、ルテニウム酸化物(例えばRuO2 )、イリジウム酸化物(例えばIrO2 )、ニッケル酸化物(例えば NiO)、錫酸化物(例えばSnO2 )、インジウム酸化物(例えばIn2 O3 )、バナジウム酸化物(例えばV2 O5 )、タングステン酸化物(例えばWO3 )、コバルト酸化物(例えばCoO、Co2 O3 、 Co3 O4 )、モリブデン酸化物(例えばMoO3 )及びこららの酸化物のうちの任意の2つ以上からなる混合物の中から選ばれることが好ましい。
【0026】
また、前記多孔性複合金属酸化物層における前記マンガン酸化物と前記導電性金属酸化物との組成比は、(マンガン酸化物)1-x (導電性金属酸化物)x (0.1≦x≦0.5)と表されることが好ましい。
【0027】
また、前記集電体に含まれる材料は、特に限定されないが、例えば、プラチナ(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd),イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ステンレス鋼(STS)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ITO(In-doped SnO2 )及びFTO(F-doped SnO2 )から構成された群から少なくとも1つ選ばれた材料を用いることができる。
【0028】
また、本発明は、前記スーパーキャパシタ用電極を含むスーパーキャパシタを提供する。
【0029】
一般的に、スーパーキャパシタは、電極(集電体と金属酸化物層とを含む)、電解質、セパレータ、ケース及び端子等で構成される。本発明のスーパーキャパシタにおいては、前記電極以外の他の構成は一般的なスーパーキャパシタの構成と同じであってもよい。
【0030】
本発明において使用される電解質としては、前記多孔性複合金属酸化物層と電気化学反応することのできるものであれば、特に制限されない。電解質の具体例としては、Na2 SO4 、(NH4 )2 SO4 、KOH、LiOH、LiClO4 、KCl、Li2 SO4 、NaCl等があるが、これらに限られない。
【0031】
本発明は、また、前記スーパーキャパシタ用電極の製造方法を提供するものである。
【0032】
具体的には、本発明に係るスーパーキャパシタ用電極の製造方法は、
(1)紡糸溶液の調製
(2)紡糸による超極細繊維ウェブの形成
(3)超極細繊維ウェブに対する第1の熱処理
(4)第2の熱処理による多孔性複合金属酸化物層の形成
からなる。
【0033】
以下、本発明に係るスーパーキャパシタ用電極の製造方法の各工程(ステップ)について詳細に説明する。
【0034】
<ステップ1>
ステップ1は、マンガン酸化物の前駆体、マンガン酸化物よりも高い電気伝導度を持つ導電性金属酸化物の前駆体、及びポリマーを溶媒と一緒に混合して紡糸溶液を調製するステップである。
【0035】
前記マンガン酸化物の前駆体は、熱処理を行うことによってマンガン酸化物を形成することのできる物質である。このようなマンガン酸化物の前駆体となりうる物質は、特に限定されるものではないが、例えば、マンガン(III)アセチルアセトネート(Manganese(III)Acetylacetonate:Mn(C5 H7 O2 )3 )、マンガン(II)アセチルアセトネート(Manganese(II)Acetylacetonate:Mn(CH3 COCHCOCH3 )2 、マンガン(III)アセテートハイドレート(Manganese(III)acetate hydrate:Mn(CH3 COO)3 ・xH2 O)、マンガン(III)アセテートジハイドレート(Manganese(III)acetate dihydrate:Mn(CH3 COO)3 ・2H2 O)、マンガン(III)アセテートテトラハイドレート(Manganese(III)acetate tetrahydrate:Mn(CH3 COO)2 ・4H2 O)、マンガン(II)ナイトレートハイドレート(Manganese(II)nitrate hydrate:Mn(NO3 )2 ・xH2 O)、マンガン(II)クロライド(Manganese(II)chloride:MnCl2 )、マンガン(II)クロライドハイドレート(Manganese(II)chloride hydrate:MnCl2 ・xH2 O)、マンガン(III)クロライドテトラハイドレート(Manganese(III) chloride tetrahydrate:MnCl2 ・4H2 O)、マンガン(II)硫酸ハイドレート(Manganese(II)sulfate hydrate:MnSO4 ・xH2 O)及びマンガン(II)硫酸モノハイドレート(Manganese(II)sulfate monohydrate:MnSO4 ・H2 O)から構成される群の中から少なくとも1つ選ばれた物質であってもよい。
【0036】
また、前記導電性金属酸化物の前駆体は、熱処理を行うことによって、電気伝導度に優れた金属酸化物を形成することのできる物質であればよく、必ずしも導電体である必要はない。また、熱処理を行うことによってマンガン酸化物よりも高い電気伝導度を持つ金属酸化物に変わる前駆体であれば、特に種類は限定されない。このような前記導電性金属酸化物の前駆体に含まれる金属は、例えば、Ru, Ir, Sn, In, Ni, Co, W, V及びMoから構成される群の中から選ばれた金属であってもよい。このようにすると、前記導電性金属酸化物の前駆体をポリマーと混合して紡糸を行った後に熱処理を行うことによって、前記導電性金属酸化物の前駆体を、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物、ニッケル酸化物、錫酸化物、インジウム酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物、コバルト酸化物又はモリブデン酸化物に変えることができる。また、このような前記導電性金属酸化物の前駆体の例には、マンガン酸化物よりも高い電気伝導度を持つRuO2 、IrO2 、NiOなどの前駆体が含まれる。また、V2 O5 、WO3 、CoO、Co2 O3 、Co3 O4 、MoO3 等の前駆体は、低温(例えば300〜400℃)での熱処理によってマンガン酸化物よりも高い電気伝導度を持つので、マンガン酸化物と共に使用することができる。
【0037】
また、前記ポリマーは、紡糸を行う際の繊維を形成するために、また、前記マンガン酸化物の前駆体及び前記導電性金属酸化物の前駆体との融和性によって紡糸された繊維の構造を制御するために、紡糸溶液の粘度を増加させる。このような前記ポリマーは、特に限定されるものではないが、ポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)又はその共重合体、ポリウレタン(polyurethane)又はその共重合体、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butylate)及びセルロースアセテートプロピオナート(cellulose acetate propionate)等のセルロース誘導体(cellulose derivative)、ポリメチルメタクリレート(poly(methyl methacrylate):PMMA)、ポリメチルアクリレート(poly(methyl acrylate):PMA)、ポリアクリル共重合体(polyacrylic copolymer)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)、ポリフルフリルアルコール(polyfurfuryl alcohol:PFFA)、ポリスチレン(polystyrene:PS)又はその共重合体、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide:PEO)及びポリプロピレンオキシド(polypropylene oxide:PPO)等のポリアルキレンオキシド(polyalkylene oxide)又はその重合体、ポリカーボネート(polycarbonate:PC)、ポリビニルクロライド(polyvinyl chloride:PVC)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone:PVP)、ポリビニルフルオライド(polyvinyl fluoride)、ポリビニリデンフルオライドの共重合体(polyvinylidene fluoride copolymer)、並びにポリアミド(polyamide)から構成された群の中から少なくとも1つ選ばれた物質であってもよい。また、例えば電界紡糸等の好適な紡糸方法によって、紡糸溶液から超極細繊維を形成できるように紡糸溶液の粘度を保持できるポリマーであれば、ポリマーの種類は、特に制限されない。
【0038】
また、前記溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide:DMF)、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン及び水から構成された群の中から少なくとも1つ選ばれた物質であってもよい。
【0039】
また、円滑な紡糸を行うために、少なくとも一つの添加剤を前記紡糸溶液に加えてもよい。このような添加剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸、ステアリン酸、アジピン酸、エトキシ酢酸、安息香酸、硝酸、臭化セチルトリメチルアンモニウム(cetyltrimethyl ammonium bromide:CTAB)、及びこれらのうち2つ以上の混合物を使用してもよい。
【0040】
<ステップ2>
ステップ2では、集電体の少なくとも一面上に、ステップ1で調製された紡糸溶液を用いて電界下で紡糸を行うことによって、前記マンガン酸化物の前駆体、前記導電性金属酸化物の前駆体及びポリマーを含む超極細繊維がもつれ合ったウェブを形成する。
【0041】
前記紡糸溶液を紡糸すると、前記マンガン酸化物の前駆体、前記導電性金属酸化物の前駆体及び前記ポリマーとの間で相分離又は相互混合が起こり、前記各前駆体と前記ポリマーとを含む超極細繊維が形成される。この超極細繊維が前記集電体上にランダムに堆積されて、超極細繊維がもつれ合ったウェブが形成される。
【0042】
前記紡糸工程においては、特に限定されるものではないが、例えば、電界紡糸法(electrospinning)、溶融ブロー法(melt-blowing)、フラッシュ紡糸法(flash spinning)及び溶融静電ブロー法(electrostatic melt-blowing)等を用いてもよい。
【0043】
本実施例では、前記の紡糸法のうち、電界紡糸法を利用した。電界紡糸に適した装置は、紡糸溶液を定量的に投入することができるポンプとつながった紡糸ノズル、高電圧発生機、及び紡糸された繊維の層が形成する電極(つまり集電体)等を含む。ここで、集電体を負極とし、紡糸ノズルを正極とする。例えば、7kVから30kVまでの電圧を印加しながら、溶液の吐出速度を10μl/minから50μl/minまでに調節すると、平均径が50nmから3000nmまでの超極細繊維を製造することができる。その他、チップ(tip)と各電極との間の距離等の電界紡糸条件は通常の範囲内に設定される。前記電界紡糸は、超極細繊維ウェブ層が集電体上に0.5μmから100μmまでの厚さに形成されるまで行われることが好ましい。
【0044】
<ステップ3>
ステップ3では、ステップ2で得た超極細繊維に対して、熱圧着、熱加圧及びアニールの中から選ばれた第1の熱処理を行うことにより、前記超極細繊維のウェブ内のポリマーを部分的又は全体的に溶融させる。
【0045】
また、前記熱圧着又は前記熱加圧は、前記超極細繊維のウェブに対して、前記ポリマーのガラス転移温度以上の温度で圧力を加えることによって行われてもよい。
【0046】
後者の処理(熱加圧)は、熱い圧縮空気を利用して前記超極細繊維のウェブに加圧を行うことにより実施されるので、「熱圧着」と区別して「熱加圧」と呼ばれる。
【0047】
ここで、ポリマーの急激な揮発を抑えるために、高温で熱加圧を行う前に、超極細繊維に低温(例えば50〜200℃)で段階的に熱処理を行ってもよい。また、エタノールやメタノールのような蒸気の入った密閉容器の中でポリマーを蒸発させて溶解し、前記超極細繊維のウェブと前記集電体との接着性を高めてもよい。
【0048】
前記熱圧着又は前記熱加圧の圧力、温度及び時間は、使用されるポリマーの種類及びガラス転移温度などを考慮して適切に選択される。例えば、前記熱圧着又は前記熱加圧は0.1MPaの圧力で60秒間行われることが好ましい。使用されるポリマーの種類及びガラス転移温度などを考慮し、圧力は0.001MPaから10MPaまでの範囲内から選ぶことができ、熱処理時間は5秒から10分までの範囲内から選ぶことができる。
【0049】
或いは、前記熱圧着又は前記熱加圧の代わりに、前記ポリマーのガラス転移温度よりも若干高い温度でアニール(第1の熱処理)を行うことによって、前記熱圧着又は前記熱加圧と同様の効果を達成することもできる。ここで、前記アニールは、前記ポリマーのガラス転移温度以上で且つ200℃以下の温度で行われてもよい。また、前記第1の熱処理のために、前記集電体の温度を前記ポリマーのガラス転移温度又はそれよりも高い温度に保持しながら、前記紡糸溶液を用いて紡糸を行ってもよい。特に、ガラス転移温度が低いポリマー、例えばポリビニルアセテート(PVAc)のようなポリマーを使用する場合、50〜80℃程度の低温熱処理を行うことによって当該ポリマーを溶かし、集電体との接着特性を高めてもよい。
【0050】
以上に説明した第1の熱処理によって、紡糸時に相分離した前記各前駆体及び前記ポリマーの流動が抑制される。
【0051】
また、この第1の熱処理によって、前記超極細繊維のウェブ内のポリマーが部分的又は全体的に溶融されて、前記集電体に対する前記超極細繊維のウェブの接着性が向上する。さらに、第1の熱処理に加えて、その後の熱処理(第2の熱処理)を行うことによって、比表面積(specific surface area )及び単位体積当りの密度が大きく向上した独特の構造が実現され、これにより、比表面積が大きく向上したマンガン酸化物−導電性金属酸化物のナノ粒子のネットワークを提供することができる。尚、第1の熱処理を行わない超極細繊維は、その後の熱処理において容易に基板から離脱する場合がある。従って、安定したスーパーキャパシタ素子を提供するためには、熱圧着、熱加圧又はアニール等の第1の熱処理を行う必要がある。
【0052】
<ステップ4>
ステップ4では、ステップ3を経た超極細繊維のウェブに対して第2の熱処理を行うことにより、前記超極細繊維のウェブから、溶融した前記ポリマーを除去することによって、多孔性複合金属酸化物層を形成する。
【0053】
前記第2の熱処理の温度及び時間は、ポリマーを除去する温度とマンガン酸化物−導電性金属酸化物の結晶化の程度とを考慮して決定される。非晶質構造のマンガン酸化物の方が、結晶構造のマンガン酸化物よりも優れたスーパーキャパシタ特性を有しているので、第2の熱処理は、300℃から600℃までの比較的低い温度で行われることが好ましい。ここで、多孔性複合金属酸化物層の結晶構造は、第2の熱処理の温度によって決められる。例えば、多孔性複合金属酸化物層が、非晶質構造や、非晶質構造内にナノ結晶領域が部分的に形成された構造を有する場合もある。従って、導電性金属酸化物としては、マンガン酸化物の結晶化温度よりも低い温度でも容易に結晶化する材料を選ぶことが好ましい。例えば、多孔性複合金属酸化物層に優れた電気伝導度を与え、それにより、高速スーパーキャパシタ特性を得るためには、300℃程度の低温熱処理でも十分に結晶化する金属酸化物を用いることが好ましい。
【0054】
以上に述べた、ステップ1〜4からなる製造方法によって製造された多孔性複合金属酸化物層(つまりマンガン酸化物と導電性金属酸化物との複合膜)は、平均径2〜30nmの超微小ナノ粒子から構成されたナノ繊維がもつれ合ったウェブ構造、又はナノ粒子のネットワークを有している。これらの構造により、多孔性複合金属酸化物層の比表面積が飛躍的に増大すると共に、電解質がナノ繊維とナノ粒子との間に容易に浸透するので、スーパーキャパシタ用電極の比容量及び電気伝導度を極大化することができる。
【0055】
また、熱圧着又は熱加圧を行うことによって、前記集電体と前記多孔性複合金属酸化物層との接着性が大きく向上するので、電気的安定性及び機械的安定性の高いスーパーキャパシタ用電極を製造することができる。また、第1の熱処理(例えば、前記ポリマーのガラス転移温度から200℃までの温度での熱処理)と、第2の熱処理(例えば、300℃から600℃までの温度での熱処理)を行うことによって、前記集電体と前記多孔性複合金属酸化物層との接着性が大きく向上するので、安定性の高いスーパーキャパシタ用電極を製造することができる。
【0056】
また、紡糸時間を調節して多孔性複合金属酸化物層の厚さを容易に調節することもできる。すなわち、薄膜から厚膜までの様々な厚さを持つ多孔性複合金属酸化物層を容易に形成することができる。
【0057】
以下、実施例を通して本発明を具体的に述べる。尚、以下の実施例は、本発明をより明確に理解するために提示されるものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明は、後述の特許請求の範囲に記載の通りである。
【0058】
(実施例1:電極の製造)
100mLの底丸型フラスコに、0.84gのマンガン(III)アセチルアセトネート(分子量:352.27、アルドリッチ社製)と0.49gのルテニウムクロライド(分子量:207.43)とを加えた。次に、10gのジメチルホルムアミド(demethylformamide:DMF、J.T.Baker)を加えて完全に溶かした。この時、円滑な電界紡糸のために、0.67mlの酢酸を加えた。これらの混合物を1分程度攪拌した後、1.6gのポリビニルアセテート(polyvinylacetate:PVAc)(分子量:500,000)を加えて溶かし、さらに、2時間攪拌することによって、マンガン酸化物の前駆体とルテニウム酸化物の前駆体とPVAcとを含む紡糸溶液を調製した。この時、後の電界紡糸を円滑に行うために、臭化セチルトリメチルアンモニウムを少量加えた。
【0059】
このようにして得た紡糸溶液を20mLのシリンジに入れて、電圧差を13〜15kV程度に保持しながら集電体の表面に30Gのニードルを使用して10μl/minの速度で吐出し、それにより、超極細繊維のウェブを形成した。集電体には、ステンレス鋼(SUS)基板を使用した。この時、紡糸溶液の吐出量の変化によって、超極細繊維ウェブ層の厚さを調節することができる。
【0060】
図1は、実施例1に従って集電体の上に電界紡糸された、マンガン酸化物前駆体とルテニウム酸化物前駆体とPVAcとを含む超極細繊維ウェブの走査型電子顕微鏡(SEM)写真(×5000倍率)である。
【0061】
図1に示すように、200〜300nm径の超極細繊維ウェブが、接続状態が良好なネットワーク形状に形成されている。
【0062】
ここで、前記超極細繊維ウェブは、電気炉において、5℃/minの速さで180℃まで昇温さらた後、180℃で10分間保持された(第1の熱処理)。次に、前記超極細繊維ウェブは、5℃/minの速さで300℃まで昇温さらた後、300℃で1時間保持された(第2の熱処理)。これにより、電極が製造された。
【0063】
図2は、実施例1により製造された電極における多孔性複合金属酸化物層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(×10,000倍率)であり、図3は、当該多孔性複合金属酸化物層の部分的な拡大図(×50,000倍率)である。
【0064】
図2に示すように、連続的に凝集したナノ繊維が高密度のネットワークを構成している。また、図3に示すように、ナノ繊維が互いにもつれ合って、多孔性ナノ繊維ウェブが形成されており、このナノ繊維ウェブは、2〜10nm径の超微小粒子から構成されている。
【0065】
(実施例2:電極の製造)
実施例1で製造された超極細繊維ウェブに対して、ラミネーターを用いて圧着(温度:60℃、押圧力:0.1MPa、押圧時間:60秒)を行った後、300℃で1時間の熱処理を行うことにより、マンガン酸化物−ルテニウム酸化物のナノ粒子からで構成されたネットワークを含む電極を製造した。
【0066】
この時、集電体に加えられる圧力の程度や時間によって電極の表面構造が変わる。また、使用されるポリマーのガラス転移温度によって、熱圧着又は熱加圧の温度が決定される。特に、熱処理(第2の熱処理)の温度によって、ナノ粒子の大きさを容易に調節することができた。
【0067】
図4は、実施例1の超極細繊維ウェブに対して熱圧着を行った後の走査型電子顕微鏡写真(×5,000倍率)である。
【0068】
図4に示すように、ガラス転移温度の低いPVAcが完全に溶けて、ナノ繊維が全体的に相互接続されている。
【0069】
図5は、実施例2に従って製造された電極における多孔性複合金属酸化物層の走査型電子顕微鏡写真(×10,000倍率)であり、図6は、当該多孔性複合金属酸化物層の部分的な拡大図(×100,000倍率)である。
【0070】
図5に示すように、多孔性複合金属酸化物層は、微小ナノ繊維のウェブ構造を有している。また、熱圧着を行うことなく第1及び第2の熱処理が行われたナノ繊維ウェブよりも、更に高密度にナノ繊維ウェブが形成されている。また、図6は、きわめて微小なマンガン酸化物−ルテニウム酸化物のナノ粒子から構成されたネットワーク構造を明確に示している。
【0071】
本実施例2における熱圧着及び第2の熱処理を行うことによって形成された、マンガン酸化物−ルテニウム酸化物のナノ繊維ウェブは、基板との接着性に優れている。また、この優れた接着性によって、熱的、機械的及び電気的なコンタクト特性に優れたスーパーキャパシタの製作が可能となる。
【0072】
図7は、実施例2により製造された電極における多孔性複合金属酸化物層のX線回折(XRD)の結果を示している。図7には、比較例として、マンガン酸化物だけで構成されたナノ繊維ウェブのX線回折結果も示している。比較例のナノ繊維ウェブは、熱圧着後に300℃で第2の熱処理が行なわれたものである。図7にに示すX線回折の結果から、比較例のナノ繊維ウェブは、非晶質構造に近い構造を有していることが分かる。一方、実施例2におけるマンガン酸化物−ルテニウム酸化物の複合ナノ繊維ウェブにおいては、結晶質ルテニウム酸化物の回折ピークがはっきりと観察される。これは、優れた電気伝導度を持つルテニウム酸化物が低温(300℃)の熱処理においても容易に結晶化すると共にマンガン酸化物が非晶質に近い結晶構造を持つことを示す。すなわち、ルテニウム酸化物の存在によって、多孔性複合金属酸化物層を、掃引速度(sweep rate)特性に優れ且つ大容量のスーパーキャパシタ用電極材料として活用することができることが示されている。
【0073】
図8は、実施例2に従い製造された多孔性複合金属酸化物層における、マンガン酸化物−ルテニウム酸化物のナノ粒子ネットワークの透過型電子顕微鏡写真(図8右側)を、結晶質マンガン酸化物のナノ粒子のネットワークの透過型電子顕微鏡写真(図8左側)と比較して示した図である。図8左側(右上の特定領域)に示すように、比較例であるマンガン酸化物のナノ粒子のネットワーク構造の回折パターンにおいては、弱く広がったリング状のパターンが観察されると共に、粒子内においてさえも結晶格子は見られない。これは、比較例のネットワーク構造が、非晶質に近い構造であることを示している。これらの結果は、図7に示した、MnO2 から構成されたナノ繊維ウェブのX線回折結果と一致している。これに比べて、図8右側のTEM画像は、非晶質のMnO2 粒子の回折パターンと共に結晶化したRuO2 の回折パターンも示している。これらの回折パターンから、ルテニウム酸化物が十分に結晶化されたことがわかる。
【0074】
(実験例1:電気化学特性の評価)
実施例1で製造された電極をスーパーキャパシタ用電極として用い、電気化学特性の評価を行った。
【0075】
スーパーキャパシタ用電極の容量挙動(capacitive behavior)を測定するため、サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)を用いた。CV(cyclic voltammogram)において、高い電流密度を示し、且つ、陽極及び陰極を掃引する際に矩形状の左右対称な形状を示すことが、優れたスーパーキャパシタ用電極となる条件である。電極の電気化学特性は、3極電気化学測定法(three-electrode electrochemical measurement)によって測定した。飽和カロメル電極(saturated calomel electrode)の電位の範囲は0Vから1.0Vまでであり、走査速度は10mV/sから2000mV/sまでである。電解質には0.1〜1M(モル)のNa2 SO4 溶液を使用し、作用電極として、マンガン酸化物−ルテニウム酸化物のナノ繊維ウェブを使用した。基準電極としてはAg/AgCl電極を使用し、相対電極としてプラチナ(Pt)電極を使用した。本実験例1においては、ステンレス鋼の集電体を用いて、マンガン酸化物−ルテニウム酸化物のナノ繊維ウェブのスーパーキャパシタ特性を評価した。
【0076】
図9は、実施例1で製造された電極のスーパーキャパシタ特性を示すものである。ここで、ナノ粒子から構成された、マンガン酸化物−ルテニウム酸化物の薄いナノ繊維ウェブ層は、電界紡糸、180℃での第1の熱処理及び300℃での第2の熱処理によって形成されたものであり、大きい比表面積を有している。また、ナノ繊維ウェブ構造によって、電解質の早い浸透及び高反応が期待される。また、図9に示すように、掃引速度を10mV/Sから2000mV/Sまで変化させると、矩形状のCV特性が観察された。
【0077】
図10は、走査速度を10mV/sから2000mV/sまで変化させながら測定した比容量(specific capacitance:Csp)特性を示す。図10に示すように、10mV/sの掃引速度においては260F/gの高い初期容量を、2000mV/sの高い掃引速度においても150F/gの高い比容量を電極は有している。これらの結果は、マンガン酸化物のみからなるナノ繊維ウェブにより得られた比容量よりも高い。また、これらの結果は、ルテニウム酸化物の高い電気伝導度に起因する電子の速い移動によって得られたものである。さらに、実施例1で製造された電極は、優れた長寿命特性を示した。
【0078】
(実験例2:電気化学特性の評価)
実施例2で製造された電極をスーパーキャパシタ用電極として用い、実験例1と同様に、電気化学特性の評価を行った。
【0079】
図11は、実施例2により製造された電極のスーパーキャパシタの特性を評価した結果を示している。ここで、ナノ粒子から構成された、マンガン酸化物−ルテニウム酸化物の薄いナノ繊維ウェブ層は、電界紡糸、熱圧着、及び300℃での熱処理によって形成されたものであり、大きい比表面積を有している。また、熱圧着を行うことによって、ナノ繊維の充填密度や、熱処理後の粒子同士のコンタクト特性を改善することができ、それによって、電極の掃引速度特性を高めることができる。図11に示すように、ナノ繊維ウェブ構造によって、電解質の早い浸透及び高反応が期待される。また、図11に示すように、掃引速度を10mV/Sから2000mV/Sまで変化させた場合に、熱圧着を行うことなく製造された電極と比較して、よりはっきりとした矩形状のCV特性が観察された。
【0080】
図12は、掃引速度を10mV/sから2000mV/sまで変化させながら、実施例2の電極の比容量特性を測定した結果を示している。図12に示すように、10mV/sの掃引速度において130F/gの初期容量を電極は有している。これは、180℃での第1の熱処理と300℃での第2の熱処理を行った、マンガン酸化物−ルテニウム酸化物を用いた電極の容量よりも若干小さい。しかし、製造条件を最適化することによって、この初期容量の値を十分に高めることができる。また、2000mV/sの速い走査速度においても85F/gの高い比容量を電極は有している。これは、初期容量の65%に相当する。
【0081】
尚、以上に述べた各実施例及び各実験例では、導電性金属酸化物の一例としてルテニウム酸化物を用いたが、導電性金属酸化物の種類が特に限定されないことは言うまでもない。また、マンガン酸化物と導電性金属酸化物との組成比は、所望のスーパーキャパシタの性能に合わせて任意に調整される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上に説明したように、本発明は、比容量及び電気伝導度に優れ、機械的、熱的及び電気的に安定性の高いスーパーキャパシタ用電極、及び前記電極を含むスーパーキャパシタとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
前記集電体の少なくとも一面上に形成された多孔性複合金属酸化物層とを備え、
前記多孔性複合金属酸化物層は、電界が印加された状態における紡糸及びその後の熱処理によって形成された超極細繊維がもつれ合ったウェブ状態であり、マンガン酸化物及びマンガン酸化物よりも高い電気伝導性を有する導電性金属酸化物のナノ粒子を含むことを特徴とするスーパーキャパシタ用電極。
【請求項2】
請求項1のスーパーキャパシタ用電極において、
前記ナノ粒子は、ナノ繊維がもつれ合ったウェブ構造を持つ前記多孔性複合金属酸化物層内に均一に分布されているか、又はネットワーク構造を構成していることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極。
【請求項3】
請求項2に記載のスーパーキャパシタ用電極において、
前記ナノ繊維は、熱圧着又は熱加圧によって生じた平坦なベルトを構成していることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極。
【請求項4】
請求項1に記載のスーパーキャパシタ用電極において、
前記マンガン酸化物リッチな前記ナノ粒子は、非晶質構造、又は非晶質構造内にナノ結晶領域が部分的に形成された構造を有し、
前記導電性金属酸化物リッチな前記ナノ粒子は、結晶構造を有することを特徴とするスーパーキャパシタ用電極。
【請求項5】
請求項1に記載のスーパーキャパシタ用電極において、
前記ナノ粒子は、2nm以上で且つ30nm以下の平均粒子径を有することを特徴とするスーパーキャパシタ用電極。
【請求項6】
請求項1に記載のスーパーキャパシタ用電極において、
前記導電性金属酸化物は、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物、ニッケル酸化物、錫酸化物、インジウム酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物、コバルト酸化物、及びモリブデン酸化物から構成される群の中から選ばれた少なくとも1つの酸化物であることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極。
【請求項7】
請求項1に記載のスーパーキャパシタ用電極において、
前記多孔性複合金属酸化物層における前記マンガン酸化物と前記導電性金属酸化物との組成比は、(マンガン酸化物)1-x (導電性金属酸化物)x (0.1≦x≦0.5)と表されることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ用電極を備えていることを特徴とするスーパーキャパシタ。
【請求項9】
請求項1に記載のスーパーキャパシタ用電極の製造方法であって、
マンガン酸化物の前駆体、マンガン酸化物よりも高い電気伝導度を有する導電性金属酸化物の前駆体、ポリマー、及び溶媒を混合して紡糸溶液を調製する工程と、
集電体上に、前記紡糸溶液を用いて電界下で紡糸を行うことにより、前記マンガン酸化物の前駆体、前記導電性金属酸化物の前駆体及びポリマーを含む超極細繊維がもつれ合ったウェブを形成する工程と、
前記超極細繊維のウェブに対して、熱圧着、熱加圧及びアニールの中から選ばれた第1の熱処理を行うことにより、前記超極細繊維のウェブ内のポリマーを部分的又は全体的に溶融させる工程と、
前記超極細繊維のウェブに対して第2の熱処理を行うことにより、前記超極細繊維のウェブから前記ポリマーを除去し、それによって、多孔性複合金属酸化物層を形成する工程とを備えていることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のスーパーキャパシタ用電極の製造方法において、
前記マンガン酸化物の前駆体は、マンガン(III)アセチルアセトネート、マンガン(II)アセチルアセトネート、マンガン(III)アセテートハイドレート、マンガン(III)アセテートジハイドレート、マンガン(III)アセテートテトラハイドレート、マンガン(II)ナイトレートハイドレート、マンガン(II)クロライド、マンガン(II)クロライドハイドレート、マンガン(III)クロライドテトラハイドレート、マンガン(II)硫酸ハイドレート及びマンガン(II)硫酸モノハイドレートから構成される群の中から少なくとも1つ選ばれた物質であることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載のスーパーキャパシタ用電極の製造方法において、
前記導電性金属酸化物の前駆体は、Ru, Ir, Sn, In, Ni, Co, W, V及びMoから構成される群の中から選ばれた金属を含み、
前記導電性金属酸化物の前駆体を前記ポリマーと混合して紡糸を行った後に熱処理を行うことによって、前記導電性金属酸化物の前駆体を、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物、ニッケル酸化物、錫酸化物、インジウム酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物、コバルト酸化物又はモリブデン酸化物に変えることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載のスーパーキャパシタ用電極の製造方法において、
前記ポリマーは、ポリビニルアセテート又はその共重合体、ポリウレタン又はその共重合体、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリアクリル共重合体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフルフリルアルコール(PFFA)、ポリスチレン(PS)又はその共重合体、ポリアルキレンオキシド又はその共重合体、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルフルオライド、ポリビニルフルオライドの共重合体、及びポリアミドから構成された群の中から少なくとも1つ選ばれた物質であることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項13】
請求項9に記載のスーパーキャパシタ用電極の製造方法において、
前記溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン及び水から構成された群の中から少なくとも1つ選ばれた物質であることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項14】
請求項9に記載のスーパーキャパシタ用電極の製造方法において、
前記熱圧着又は前記熱加圧は、前記超極細繊維のウェブに対して、前記ポリマーのガラス転移温度以上の温度で圧力を加えることによって行われることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項15】
請求項9に記載のスーパーキャパシタ用電極の製造方法において、
前記アニールは、前記ポリマーのガラス転移温度以上で且つ200℃以下の温度で行われることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項16】
請求項9に記載のスーパーキャパシタ用電極の製造方法において、
前記第2の熱処理は、300℃以上で且つ600℃以下の温度で行われることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項17】
請求項9に記載のスーパーキャパシタ用電極の製造方法において、
前記紡糸は、電界紡糸法、溶融ブロー法、フラッシュ紡糸法又は溶融静電ブロー法によって行われることを特徴とするスーパーキャパシタ用電極の製造方法。

【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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