説明

マンゴー通年栽培方法

【課題】一年間を通して収穫が可能なマンゴー通年栽培方法を提供する。
【解決手段】温室ハウスを第1ハウスから第6ハウスまで6つの栽培領域に分け、6つの栽培領域ごとに、それぞれ栽培環境を2ヶ月ずれた季節環境に維持し、それぞれ2ヶ月ずらしてマンゴーの種植えをし、それぞれマンゴーの発芽期から施肥、開花、施肥、生理落下、摘果、施肥を経て、成熟の収穫期までマンゴーを育成する。それぞれマンゴーの収穫後にも栽培領域ごとに設定された季節環境に応じた温度に制御しながら、枝払い、施肥、花芽分化、被覆、施肥を行って次の発芽を待つことを6つの栽培領域ごとに繰り返して、毎年、1棟のハウスから2ヶ月ごとに成熟マンゴーを収穫する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一年間を通して収穫が可能なマンゴー通年栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所望の作物を所望の時期に収穫するために、所望の作物に最適な環境をハウス内に出現させるための加温機とヒートポンプとを連動させたハイブリッド環境制御が実用化されている。
【0003】
また、このようなハウス栽培では、一般に、ヒートポンプ、加温機、除湿装置、埋設冷却パイプ、埋設温水パイプ、自動散水機などを駆使して、季節にかかわりなく所望の環境をハウス内に出現させることができる。
【0004】
例えば、栽培に必要なエネルギーを供給するシステムとして、ガス燃料を使用して運転され、熱及び電力を生産するコージェネレーション設備を用い、植物栽培ハウス単体で扱うような比較的小規模な農業施設形体において、ハウス内で栽培される植物に適した培地の管理と植物の育成を効率的に行うことが提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
また、ハウスみかんでは、みかん樹根部周囲の地中を任意温度に冷却するための地中冷却設備と、換気装置、散水装置及び加温装置を備えた、内部気温を制御するための気温制御設備と、土壌に潅水をするための潅水設備とを備えたハウスを利用して、みかんを栽培し、通常よりも早い春先早期にみかんを市場に出荷することが提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
また、野菜類の通年栽培では、アスパラガスを通年栽培する方法が提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【特許文献1】特開2007−020524号公報(要約、図1)
【特許文献2】特開2002−369397号公報(要約、図2)
【特許文献3】特開2006−246829号公報(要約、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、二毛作とか三毛作など、一年間に同一の耕地を用いて多作する方法が実用化されている。しかし、これらはいずれも異なる作物を時期をたがえて交互に植えつけて栽培するものであって、同一の耕地に同一の作物を多作するものではない。
【0006】
また、上述したアスパラガスを通年栽培する方法は、同一の野菜が一年を通じて手に入る方法であるが、このアスパラガスの通年栽培は、アスパラガスに限られる方法であって、他の植物にそのまま適用できる方法ではない。
【0007】
また、春先早期に出荷できるハウスみかんの栽培は、促成栽培の技術が発達したからであるといえるが、次の出荷は翌年の同じく春先であって、通年でみかんが栽培できるわけではない。
【0008】
ハウスみかんやハウス葡萄あるいはハウス苺がほぼ年間を通じて市場に出回っているのは、それぞれの地域で、抑制栽培や、通常栽培、促成栽培というように他の地域の栽培と重ならないようにハウス栽培しているからあって、同一地域で通年栽培しているわけではない。
【0009】
このような、抑制栽培や、通常栽培、促成栽培などのハウス環境は、上述したハイブリッド環境制御やコージェネレーション設備の使用によって実現されているが、もし、ハウス環境を制御して、同一地域の耕地で通年で同じ作物あるいは同じ果物が栽培できれば、年間を通して同じ作物や果物を食することができ、熟期を支配して高収益時期に熟期を合わせること、或いは熟期を分散して暴落の危険を防止することが可能となるので収益の確保が担保できる。
【0010】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、一年間を通して収穫が可能なマンゴー通年栽培方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のマンゴー通年栽培方法は、温室ハウスをn(2≦n≦12)個の栽培領域に分け、該n個の栽培領域ごとに、それぞれ栽培環境を12/nヶ月ずれた季節環境に維持し、それぞれ12/nヶ月ずらしてマンゴーの種植えをし、それぞれマンゴーの発芽期から施肥、開花、施肥、生理落下、摘果、施肥を経て、成熟の収穫期までマンゴーを育成し、それぞれマンゴーの収穫後にも栽培領域ごとに設定された季節環境に応じた温度に制御しながらは、枝払い、施肥、花芽分化、被覆、施肥を行って次の発芽を待つことを6つの栽培領域ごとに繰り返して、上記ハウスから12/nヶ月ごとに成熟マンゴーを収穫するように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、同一ハウス内で通年でマンゴーを収穫することができ、熟期を支配して高収益時期に熟期を合わせること、或いは熟期を分散して暴落の危険を防止することが可能となるので収益の確保が担保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、温室ハウスでマンゴーを通常の環境で栽培するときの育成工程を示す基本作業工程図である。通常の環境で栽培といっても、マンゴーは亜熱帯植物であるので、栽培適温は24℃〜30℃である。また、休眠期の越冬温度は7℃〜8℃、出来得れば10℃〜15℃が理想的な温度といえる。
【0015】
図1の基本作業工程図1は、上に1月から12月まで1年間の時期を示している。また、その下の工程表では最上部と最下部に加温期間を示している。3月〜6月は24℃〜30℃の加温期間、11月〜2月は10℃〜15℃の加温期間である。
【0016】
尚、ハウスの加温制御は、ハウス内の空気の加温だけでなく土壌の加温や、空中及び土壌の湿度の調節が必要である。ただし本例では、それらの環境制御は前述したように例えばハイブリッド環境制御等で確立されているので、説明は省略し、1年12ヶ月に沿った作付け作業の工程についてのみ説明する。
【0017】
図1には示していないが、1月は原産地のインドの雨季に当たる。したがって、1月には潅水を行う。2月は乾季である、このころから24℃〜30℃の温度調節が始まる。
また、図1に示すように、2月は発芽期であり、種植えしたものは種から発芽し、越冬したものは花芽分化したものから発芽する。この発芽を待って、2月の終わりごろが施肥期となる。
【0018】
この施肥期が過ぎると3月に開花する。工程表には示していないが、開花時には適度に潅水する。この開花から3月の終わりごろまでに再び施肥をする。この3月の終わりごろから4月の初めにかかけて、生理落果が始まる。
【0019】
この生理落果を待って、4月初めから中旬にかけて、摘果を行う。この時期の果実はパチンコ球ほどの大きさのものが一枝に多数成るが、二枝に3個くらいの割合で残し、後は全部取り除いて捨てる。
【0020】
この摘果には大変な手数が掛かり、マンゴーが高価な理由も、この摘果の手数に理由があるとされている。そして、4月の終わりから5月の初めごろにかけて施肥をする。
やがて6月に入ると果実が成熟しはじめる。この6月初めから7月にかけて収穫期となり、収穫された果実は梱包されて市場に出荷される。
【0021】
収穫の終わった7月の終わりには夏枝を払って、8月中に施肥をする。そして9月には秋枝を払って再び施肥をする。この剪定は未着果の徒長枝を切り戻す作業である。
その後は、土壌を乾燥させて果樹への養分を絶ち、10月終わりごろの花芽分化を待つ。花芽分化は、前年の主枝の先端の芽吹きが生育してくる状態を指している。
【0022】
この時期は、わが国では外気の温度が低いので、ハウスの加温効果を高めるために、ハウス内に更にハウスを作ってハウスの構成を二重トンネルとし、下のトンネルを断熱膜材で覆う「被覆」を行う。また、これと共に施肥をし、ハウス内を10℃〜15℃に保って越冬させる。
【0023】
このようにマンゴー栽培の基本作業工程では、一年12ヶ月で作業工程が一巡し、毎年6月から7月にかけて収穫期となる。
本例では、このマンゴー栽培の基本作業工程を、単に一年間で一巡させて終わらせることなく、同一ハウス内を6箇所の耕地に仕切り、1年12ヶ月の季節環境を2ヶ月ずつずらして、6箇所の耕地に再現し、その6箇所の耕地を用いてマンゴーを通年栽培する。
【0024】
図2は、本発明のマンゴー通年栽培の方法を説明する通年栽培作業工程図である。同図の通年栽培作業工程図2に示すように、本例のハウスは、同一の温室ハウス内が、第1ハウスから第6ハウスまで6つの栽培領域に分けられる。
【0025】
そして、それら6つの栽培領域ごとに、それぞれ栽培環境が2ヶ月ずれた季節環境に維持される。すなわち、同図に示すように、第1ハウスが図1に示したと全く同一に、一年間の季節が1月から始まっているのに対し、第2ハウスの1月は、第1ハウスの11月から始まっている。
【0026】
同様に、第3ハウスの1月は、第1ハウスの9月から始まり、第4ハウスの1月は、第1ハウスの7月から始まり、第5ハウスの1月は、第1ハウスの5月から始まり、第6ハウスの1月は、第1ハウスの3月から始まっている。
【0027】
換言すれば、第1ハウスが1月の季節環境にあるときは、第2ハウスは3月の季節環境にあり、第3ハウスは5月の季節環境にあり、第4ハウスは7月の季節環境にあり、第5ハウスは9月の季節環境にあり、第6ハウスは11月の季節環境にある。
【0028】
これにより、第1ハウスから第6ハウスまで6つの栽培領域において、それぞれ2ヶ月ずらしてマンゴーの種植えをし、それぞれマンゴーの発芽期から施肥、開花、施肥、生理落下、摘果、施肥を経て、成熟の収穫期までマンゴーを育成すると、同図の通年栽培作業工程図2にハッチングで示すように、マンゴーの通年収穫が実現する。
【0029】
すなわち、マンゴーは、第1ハウスからは6・7月に収穫され、第2ハウスからは8・9月に収穫され、第3ハウスからは10・11月に収穫され、第4ハウスからは12・1月に収穫され、第5ハウスからは2・3月に収穫され、第6ハウスからは4・5月に収穫される。
【0030】
そして、それら6つの栽培領域では、それぞれマンゴーの収穫後にも栽培領域ごとに設定された季節環境に応じた温度に制御されながら、枝払い、施肥、花芽分化、被覆、施肥を行って次の発芽を待つことを繰り返す。これにより一年間を通じて、この温室ハウスからは、2ヶ月ごとに成熟マンゴーが収穫される。
【0031】
尚、上記実施の形態では、栽培領域を6つに分割しているが、これに限ることなく、分割数は2つ以上12個以下であれば、いくつに分割してもよい。分割数が多ければマンゴーの収穫月が連続し、分割数が少ないとマンゴーの収穫月に間隔が空くことになるが、少なくとも一年一回の収穫に限定されることはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】温室ハウスでマンゴーを通常栽培するときの育成工程を示す図である。
【図2】本発明のマンゴー通年栽培の方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
1 基本作業工程図
2 通年栽培作業工程図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室ハウスをn(2≦n≦12)個の栽培領域に分け、
該n個の栽培領域ごとに、
それぞれ栽培環境を12/nヶ月ずれた季節環境に維持し、
それぞれ12/nヶ月ずらしてマンゴーの種植えをし、
それぞれマンゴーの発芽期から施肥、開花、施肥、生理落下、摘果、施肥を経て、成熟の収穫期までマンゴーを育成し、
それぞれマンゴーの収穫後にも栽培領域ごとに設定された季節環境に応じた温度に制御しながら、枝払い、施肥、花芽分化、被覆、施肥を行って次の発芽を待つことを前記n個の栽培領域ごとに繰り返して、
前記ハウスから12/nヶ月ごとに成熟マンゴーを収穫する、
ことを特徴とするマンゴー通年栽培方法

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−259458(P2008−259458A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105346(P2007−105346)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000111292)ネポン株式会社 (24)
【Fターム(参考)】