説明

ミネラル含有加水素水およびその製造方法

【課題】生体内への吸収効率がよく、薬理効果が相加・相乗的に高められたミネラル含有加水素水およびその製造方法を提供する。
【解決手段】原料水に対して、銀イオンを主体とした所定のミネラル成分を添加し、微細気泡状の水素ガスを大量に含み、酸化還元電位が−400mV〜−680mVの範囲に調製される。前記所定のミネラル成分は、主として、マグネシウム、アルミニウムからなるA群と、ナトリウム、カリウム、カルシウム、チタン、マンガン、銀からなるB群と、リチウム、珪素、硫黄、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウムからなるC群と、及び/又はA群からC群までの元素を含む化合物より選ばれる複数のミネラルからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミネラル含有加水素水およびその製造方法の技術に関し、より詳細には、原料水に対して、銀イオンを主体とした所定のミネラル成分を添加した加水素水およびその製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、水の改質方法として原料水に水素ガスを混入させて加水素水を得る方法が公知となっている。このようにして得られる加水素水は、pHが9.0以下と中性に近いながらも、−100mV以下という非常に低い酸化還元電位を有しており、還元性の水としてその活用方法が各種方面で注目されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
ところで、ヒトを含む哺乳動物(以下「生体」という)の体内には種々の酸化還元系が存在し、またその中の多くは相互に共役して生体内酸化還元反応に関与している。生体内酸化還元系の酸化還元電位は、反応の自由エネルギー変化および平衡定数と直接に関係しており、これらの反応の方向を予言するのに役立つものである。通常、ヒトの生体内反応の酸化還元反応は、通常−100mV〜−400mVの範囲であり、体液の酸化還元電位が高くなると活性酸素が滞留し易いと言われている。
【0004】
我が国の水道水(13.0℃)は、酸化還元電位は+400〜+800mV、pHが7.0〜7.5、溶存酸素量が約10.0ppmの範囲であり、溶存酸素量が多く、さらに酸化還元電位がプラスなので酸化力はあっても還元力がない。そのため、かかる水道水を摂取等することで、ヒトの生体内の酸化還元反応とバランスがとれず、生体に対して「活性酸素」が生成され易い状態になることが指摘されている。
【0005】
ところで、近年では、癌、糖尿病、動脈硬化症、胃炎、アトピー性皮膚炎、脳機能障害などの多くの疾患の原因に、上述した「活性酸素」の影響が示唆されている。この活性酸素は、生体内の代謝過程で発生して細胞を阻害する要素であって、活性酸素の増加が多くの疾患や老化等のメカニズムに関与していることが明らかとなってきている。中でも、癌細胞では、活性酸素が高頻度に産生され、SOD(スーパーオキシドジムスターゼ)という活性酸素消去酵素の阻害に感受性を示すことが分かっている。
【0006】
すなわち、酸素は、好気性生物にとって必要不可欠なものである反面、生体の酸化傷害を引き起こす原因となる。生体は、進化の過程で極めて巧みな防御機構を備えるようになり、生理条件下では問題になるような酸化傷害は起こらないが、生体の酸化反応と抗酸化のバランスが崩れ、前者に傾いた状態になると生体に傷害が起こり、疾患の発症につながるとされている。そして、このような状態を酸化ストレスといい、この酸化ストレスが癌、生活習慣病、炎症など多くの病態や老化に関与することが知られている。
【0007】
かかる観点から、加水素水をはじめ、酸化還元電位が低い還元性の水が注目されており、加水素水を摂取等することでその還元性により上述した活性酸素が除去される効果が期待できることから、近年では、加水素水の薬理効果に着目した癌抑制剤等に関する技術なども提案されてきている。
【0008】
例えば、特許文献2及び特許文献3には、癌治療に用いられる高濃度水素溶存水(加水素水)に関する技術が開示されている。これらの特許文献では、癌抑制剤としての薬理効能を有する加水素水を安定的に得ることを目的として、NaOHを含む水を電気分解して得られる水素ラジカルを含む水溶液に関する技術が開示されている。
また、非特許文献1には、水素分子が活性酸素種を選択的に細胞内で還元し、酸化ストレスによって生じる疾患の治療と生活習慣病などの病気の予防に水素が応用できる可能性が示唆されている。
【0009】
他方、活性酸素の働きを抑制するという観点から、活性酸素に対するミネラル成分の影響についての研究が進められており、例えば、特許文献4に開示されるように、微量ミネラルを構成する微量元素自体の薬理効果として、微量ミネラル自体が経口的に投与されることで、肝炎、高血圧、腫瘍(癌等)、及びアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎等のアレルギー治療剤として有効であることが分かっている。そして、このミネラル成分の薬理効果を高めた飲料水、特定保健用食品又は医薬組成物については、更なる応用研究が期待されているところである。
また、過去より、非特許文献3及び非特許文献4には、銀イオンにおける抗腫瘍効果が報告されている。
【0010】
上述したように、加水素水には、生体の生物活性を高める効果に加えて、癌などの抗腫瘍効果を利用した多様な応用が期待されるところであり、日常的若しくは定常的に経口摂取(投与)する飲料又は医薬組成物として用いるためには、生体内への吸収率が向上されるのが好ましい。しかしながら、上述した特許文献2及び特許文献3等に開示されるように、電気分解により生成された水素ラジカルを含有させた状態とした加水素水では、かかる吸収効率の向上は特に期待できない。
そして、所定のミネラル成分の中でも、特に銀イオンと他のミネラル成分や、銀イオンと加水素水との相加・相乗的な効果が期待されるが、このような効果についてはこれまでに何ら報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−237161号公報
【特許文献2】特開2001−137852号公報
【特許文献3】特開2004−330146号公報
【特許文献4】特許第3247620号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Ohsawa I et al.,Nature Med.,(2007),vol.13,P.688−694
【非特許文献2】Becker RO.,The Body Electric;Electromagnetism and the Foundation of Life,(1987)
【非特許文献3】Becker RO.,Cross Currents,(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、ミネラル含有加水素水およびその製造方法に関し、上述した従来の課題を解決するものであって、生体内への吸収効率がよく、薬理効果が相加・相乗的に高められたミネラル含有加水素水およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは、加水素水に関する多様な研究を進めるうちに、加水素水及び銀イオンを主体としたミネラル成分の薬理効果に着目して鋭意検討を行った結果、加水素水に銀イオンを主体とした所定のミネラル成分を添加させることで薬理効果が相加・相乗的に高められ、所定の酸化ストレス疾患に対する治療及び/又はその予防(飲料又は医薬組成物)に用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明のミネラル含有加水素水は、加水素水及び銀イオンを主体としたミネラル成分の薬理効果が相加・相乗的に向上される結果、腫瘍治療用途に留まらず、様々な治療及び/又はその予防(飲料、特定保健用食品又は医薬組成物)への応用が期待できる。
【0015】
本発明によれば、請求項1においては、原料水に対して、銀イオンを主体とした所定のミネラル成分を添加し、微細気泡状の水素ガスを大量に含み、酸化還元電位が−400mV〜−680mVの範囲に調製されたものである。
【0016】
請求項2においては、前記所定のミネラル成分は、主として、マグネシウム、アルミニウムからなるA群と、ナトリウム、カリウム、カルシウム、チタン、マンガン、銀からなるB群と、リチウム、珪素、硫黄、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウムからなるC群と、及び/又はA群からC群までの元素を含む化合物より選ばれる複数のミネラルからなるものである。
【0017】
請求項3においては、前記所定のミネラル成分は、前記原料水の総量を基準として、銀及び/又は銀を含む化合物の含有量が0.2〜5.0ppmとなるように添加されるものである。
【0018】
請求項4においては、前記所定のミネラル成分は、前記原料水の総量を基準として、銀及び/又は銀を含む化合物の含有量が0.4〜1.5ppmとなるように添加されるものである。
【0019】
請求項5においては、所定の酸化ストレス疾患に対して血清中の8−OHdGを抑制する治療及び/又は予防に用いるものである。
【0020】
請求項6においては、抗腫瘍効果を有するものである。
【0021】
請求項7においては、高血圧改善効果を有するものである。
【0022】
請求項8においては、高脂血症改善効果を有するものである。
【0023】
請求項9においては、脳機能障害改善効果を有するものである。
【0024】
請求項10においては、生活改善効果を有するものである。
【0025】
請求項11においては、原料水に対して、銀イオンを主体とした所定のミネラル成分を添加して、所定のミネラル水を調整する調製工程と、前記調製工程により調製された所定のミネラル水に水素ガスを混合させる製造工程とを有し、微細気泡状の水素ガスを大量に含み、酸化還元電位が−400mV〜−680mVの範囲に調整されたミネラル含有加水素水を製造するものである。
【0026】
請求項12においては、前記所定のミネラル成分は、主として、マグネシウム、アルミニウムからなるA群と、ナトリウム、カリウム、カルシウム、チタン、マンガン、銀からなるB群と、リチウム、珪素、硫黄、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウムからなるC群と、及び/又はA群からC群までの元素を含む化合物より選ばれる複数のミネラルからなるものである。
【0027】
請求項13においては、前記所定のミネラル成分は、前記原料水の総量を基準として、銀及び/又は銀を含む化合物の含有量が0.2〜5.0ppmとなるように添加されるものである。
【0028】
請求項14においては、前記所定のミネラル成分は、前記原料水の総量を基準として、銀及び/又は銀を含む化合物の含有量が0.4〜1.5ppmとなるように添加されるものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の効果として、微細気泡状の水素ガスを大量に含む加水素水に銀イオンを主体とした所定のミネラル成分を含有させることで、生体内への吸収効率がよく、薬理効果が相加・相乗的に高められる結果、各種の治療及び/又は予防(飲料又は医薬組成物)に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例4の症例1におけるミネラル含有加水素水服用前後の肝転移腫瘍(セグメント5)のCTスキャン画像。
【図2】同じく実施例4の症例1におけるミネラル含有加水素水服用前後の肝転移腫瘍(セグメント6)のCTスキャン画像。
【図3】実施例4の症例2におけるミネラル含有加水素水服用前後の肺転移腫瘍(セグメント10)のCTスキャン画像。
【図4】実施例4の症例3におけるミネラル含有加水素水服用前後の肝転移腫瘍(セグメント5、6)のCTスキャン画像。
【図5】実施例4の症例4におけるミネラル含有加水素水服用前後の肝転移腫瘍のCTスキャン画像。
【図6】実施例4の症例5におけるミネラル含有加水素水服用前後の肺転移腫瘍のCTスキャン画像。
【図7】実施例5におけるミネラル含有加水素水服用前後の収縮期血圧値及び拡張期血圧値を示した図。
【図8】実施例5におけるミネラル含有加水素水服用前後の中性脂肪の値を示した図。
【図9】実施例6におけるミネラル含有加水素水服用前後のLDLコレステロールの値を示した図。
【図10】実施例6におけるミネラル含有加水素水服用前後のHDLコレステロールの値を示した図。
【図11】実施例8におけるミネラル含有加水素水服用前後のADLに関するVASの平均値を示した図。
【図12】実施例8におけるミネラル含有加水素水服用前後のQOLに関するVASの平均値を示した図。
【図13】実施例9における8−OHdGの測定結果を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明において、抽出物(ミネラル成分)を得るために用いられる天然鉱石の種類は特に限定されず、例えば、火成岩、推積岩(水成岩)、変成岩などを用いることができ、好ましくは火成岩の一種である花崗岩が用いられる。花崗岩は、通常、石英、カリ長石、斜長石、雲母などを主成分とする完全晶質粒状の鉱物として知られており、石英は無水ケイ酸、正長石はカリウム・アルミニウムのケイ酸塩、斜長石はナトリウム・カルシウム・アルミニウムなどに富むケイ酸塩をそれぞれ主成分とするものが用いられる。
【0032】
所定のミネラル成分は、上述した天然鉱石から微量ミネラルを溶出させることで得られる。溶出方法としては特に限定されず、公知の鉱物溶解法を用いることができる。溶出方法の一例としては、所定粒径まで粉砕した天然岩石に、硫酸ナトリウム(NaSO・10HO)、無水亜硫酸ナトリウム(NaSO)、及びチオ硫酸ナトリウム(Na・5HO)などの飽和水溶液を加えて加熱抽出し、かかる抽出液の上澄み液を傾斜法又はろ過にて分離することで目的とする抽出物が得られる。
【0033】
一般的には、花崗岩より抽出されるミネラル成分の抽出原料には、数十種類の微量ミネラル(超微量ミネラルを含む)が含有されており、具体的には、リチウム、ベリリウム、フッ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、硫黄、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ルビジウム、ストロンチウム、モリブデン、銀、セシウム、バリウム、タングステン、ビスマス、トリウムなどが含有されている。
【0034】
特に、本発明で用いられる所定のミネラル成分としては、表1に示すように、主として、マグネシウム、アルミニウムからなるA群と、ナトリウム、カリウム、カルシウム、チタン、マンガン、銀からなるB群と、リチウム、珪素、硫黄、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウムからなるC群と、及び/又はA群からC群までの元素を含む化合物より選ばれる複数のミネラル元素からなるものである。
【0035】
【表1】

【0036】
なお、表1に示した所定のミネラル成分の一覧は、花崗岩より抽出されるミネラル成分の抽出原料に対して、後述するように銀及び鉄の含有量を調製することによって得られた試料に基づいて元素分析を行った結果、そのミネラル成分中に含まれる主なミネラルの有効成分をppm単位で表した数値を基準としてランク分けしたものである。
【0037】
本発明のミネラル含有加水素水では、上述した鉱物の抽出物であるミネラル成分の抽出原料が所定の倍率で希釈して添加されている。希釈倍数としては抽出原料に対して通常は8,000〜160,000倍に希釈して使用されるが、好ましくは25,000〜80,000倍に希釈され、より好ましくは50,000〜55,000倍に希釈される。
【0038】
ミネラル含有加水素水に添加される所定のミネラル成分の含有量は、各群(表1参照)に属するそれぞれのミネラルの元素分析値が、原料水の総量を基準として、A群のミネラルにあっては1.0〜70ppm、B群のミネラルにあっては0.05〜7.0ppm、C群のミネラルにあっては0.5ppm以下でかつ検知可能範囲内となるように調製される。好ましくは、A群のミネラルにあっては2.0〜21ppm、B群のミネラルにあっては0.1〜2.5ppm、C群のミネラルにあっては0.2ppm以下でかつ検知可能範囲内となるように調製される。より好ましくは、A群のミネラルにあっては3.0〜15ppm、B群のミネラルにあっては0.1〜1.5ppm、C群のミネラルにあっては0.1ppm以下でかつ検知可能範囲内となるように調製される。
【0039】
特に、ミネラル含有加水素水に添加されるミネラル成分として、所定のミネラル成分のうち、原料水の総量を基準として、銀及び/又は銀を含む化合物の含有量が0.2〜5.0ppmとなるように増量されている。つまり、天然鉱石より抽出されたミネラル成分の抽出原料には、通常、銀及び/又は銀を含む化合物の含有量が他のミネラル元素と比べて少ないが、本発明で使用されるミネラル成分には、かかる銀元素の含有量が抽出原料の含有比率に比べて増大されているのである。この銀及び/又は銀を含む化合物の含有量としては、好ましくは、0.4〜1.5ppmとなるように調製され、より好ましくは0.5〜1.0ppmとなるように調製される。
【0040】
このように、本発明のミネラル含有加水素水は、原料水に対して、銀イオンを主体とした天然鉱石より抽出された所定のミネラル成分、すなわち、銀及び/又は銀を含む化合物(銀イオン)が多く含有されるミネラル成分が添加されるため、ミネラル含有加水素水には水道水や天然ミネラル水などの通常の原料水にはおよそ含有されない銀イオンが所定量含有されることになり、かかる銀イオンによって、後述するような抗腫瘍効果などの薬理効果が相加・相乗的に高められることが期待される。
【0041】
なお、ミネラル含有加水素水に添加されるミネラル成分には、天然鉱石より抽出されたミネラル成分のうち、鉄及び/又は鉄を含む化合物の含有が0.001ppm以下となるように減量されている。つまり、天然鉱石より抽出されたミネラル成分の抽出原料には、通常、鉄及び/又は鉄を含む化合物がマグネシウムやアルミニウムなどA群のミネラル元素が所定量含有されるが、本発明で使用されるミネラル成分には、かかる鉄元素の含有量が抽出原料の含有比率に比べて減量されているのである。なお、鉄元素は、天然鉱石からミネラル成分を溶出させる際に同時に取り除かれる。
【0042】
本発明のミネラル含有加水素水は、原料水に対して、上述した銀イオンを主体とした所定のミネラル成分が添加され、微細気泡状の水素ガスを大量に含み、酸化還元電位が−400mV〜−680mVの範囲に調製される。このように水素ガスの微細気泡が含有された加水素水としては、所定の方法により製造することができるが、例えば、原料水に対して、銀イオンを主体とした所定のミネラル成分を添加したミネラル水に、水素ガスをエジェクタにより混合させることでかかるミネラル水と水素ガスを気液混合させることで製造される。
【0043】
本発明の「原料水」としては、水道水、浄水、これらを蒸留した蒸留水若しくは脱塩水(純水)などが用いられる。また、原料水として、天然のミネラル成分を含有した天然ミネラル水を適宜用いてもよい。
【0044】
また、本発明の「ミネラル水」とは、原料水に対して、上述した銀イオンを主体とした所定のミネラル成分が添加された状態の水のことをいう。したがって、例えば、原料水に水道水を用いた場合には、このミネラル水としては、通常水道水に含有されるミネラル成分に加えて、本発明の銀イオンを主体とした所定のミネラル成分がさらに含有されていることになる。
【0045】
本発明の「ミネラル含有加水素水」とは、上述したミネラル水に対して、微細気泡状の水素ガスを含有させて、水素を大量に含み、酸化還元電位が−400mV〜−680mVであって、略中性(pHが7より僅かに高く)に維持されたものをいう。特に、本発明のミネラル含有加水素水は、ミリバブル、マイクロバブル、およびマイクロナノバブルまで広範な直径の水素ガスの微細気泡が大量に含まれている。なお、「加水素水」とは、ミネラル含有加水素水において上述した銀イオンを主体とした所定のミネラル成分が添加されていない状態の水のことである。
【0046】
ミネラル含有加水素水の製造方法の一例について説明すると、まず、予め原料水に銀イオンを主体とした天然鉱石より抽出された所定のミネラル成分が添加され、所定のミネラル水が調整される(調整工程)。このとき、原料水に対して添加されるミネラル成分の量は、原料水の総量を基準として調整される。
【0047】
そして、上述した工程により調製されたミネラル水に水素ガスを混合させ、次いで、ミネラル水と水素との混合流体を所定の孔径を有する多孔質要素に通過させて、水素ガスの微細気泡を含有させる(製造工程)。このようにして製造されたミネラル含有加水素水には、水素ガスが気泡状態で含有される。つまり、製造されるミネラル含有加水素水は、水素ガスを気泡状態でミネラル水に混合されるのではなく、一度ミネラル水と水素との混合流体を形成した後に、これを多孔質要素に通過させることで水素ガスの気泡を含有されるのである。このようにミネラル水と水素との混合流体を多孔質要素に通過させることで、水素ガスの微細気泡を含有したミネラル含有加水素水を容易に製造することができる。
【0048】
なお、ミネラル含有加水素水の製造方法としては、その他に、例えば、原料水と水素ガスを気液混合させた後に銀イオンを主体とした所定のミネラル成分を添加させてもよい。つまり、かかる場合には、上述した「加水素水」を製造し、この加水素水に銀イオンを主体とした所定のミネラル成分を添加することで「ミネラル含有加水素水」が製造される。
【0049】
本発明のミネラル含有加水素水には、好ましくは、微細気泡として直径が120μm〜2μmのミリバブルからマイクロバブル、及びマイクロナノバブルまで広範な直径の水素ガスの気泡が含まれる。通常、水中で発生或いは形成される気泡の直径は数ミリ程度であるが、ミネラル含有加水素水に含まれる微細気泡はそれより十分に小さいことから、溶液中での均一性と分散性に優れ、特に、液体中への吸収効率がよく、生体の生物活性を高めることが期待される。
【0050】
なお、ミネラル含有加水素水の溶存水素量としては、0.5〜2.0ppmの範囲であって、好ましくは0.75〜1.8ppm、より好ましくは1.2〜1.6ppmの範囲である。
【0051】
以上のようにして調製されるミネラル含有加水素水は、主に、日常的若しくは定常的に経口摂取(服用)するための飲料、特定保健用食品又は医薬組成物などとして、様々な治療及び/又は予防に用いることができる。
【0052】
治療の対象としては、各種の悪性腫瘍、糖尿病、肝臓病(ウイルス性肝炎や肝硬変等)、高血圧、高血糖、高脂血症、アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎等)、認知症、及びADL(Activities of Daily Living、日常生活活動)やQOL(Quality of Life、生活の質)の生活改善の予防・治療において有用である。
【0053】
「抗腫瘍効果」とは、人体の腫瘍の発生・再発・転移を抑制し、又は発生した腫瘍を縮小又は消失させる働きをいう。
【0054】
抗腫瘍効果の対象となる悪性腫瘍としては、乳癌、前立腺癌、膵癌、胃癌、肺癌、大腸癌(結腸癌、直腸癌、肛門癌)、食道癌、十二指腸癌、頭頚部癌(舌癌、咽頭癌)、脳腫瘍、神経鞘腫、非小細胞肺癌、肺小細胞癌、肝臓癌、腎臓癌、胆管癌、子宮癌(子宮体癌、子宮頸癌)、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、血管腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、甲状腺癌、骨腫瘍、血管腫、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎癌、小児固形癌、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、白血病などが挙げられる。
【0055】
また、脳機能障害としては、ADHD(Attention Deficit / Hyperactivity Disorder、注意欠損多動性障害)、パーキンソン病、認知症、脳性マヒ、脳梗塞などが挙げられる。
【0056】
特に、本発明のミネラル含有加水素水は、所定の酸化ストレス疾患に対する治療及び又は予防に好ましく用いられる。「所定の酸化ストレス疾患」としては、酸化ストレスが関与している疾患のことであって、癌、生活習慣病、炎症など多くの病態や老化現象を含む。本発明のミネラル含有加水素水は、具体的には、悪性腫瘍、高血圧、高脂血症、脳機能障害などに対する酸化ストレスの改善に優れている。
【0057】
癌細胞に対して十分な抗腫瘍効果や高血圧改善効果等を発揮させるための有効量は、治療される病態の重症度、患者の状態および病歴に応じて調整される。なお、各患者においての具体的服用量レベルは、体重、全身の健康状態、食事、時間、併用薬、或いは治療される疾患の重症度等、様々な要因により決定される。
【0058】
本発明のミネラル含有加水素水は、所望により薬理学的、製剤学的に許容され得る添加剤(例えば、着色剤、安定剤、香料、保存剤など)を混合して使用することもできる。
【0059】
本発明のミネラル含有加水素水には、好ましくは、水素吸蔵・吸着金属及び/又はこれらの金属コロイドが混合される。水素吸蔵・吸着金属としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金などの白金族元素や、マグネシウムやバナジウム等が用いられ、主に分散コロイド状態で混合される。なお、水素吸蔵・吸着金属としては、白金やパラジウム等が好ましく用いられる。
【0060】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例により制限されるものではない。
【実施例1】
【0061】
<ミネラル含有加水素水の調製>
公知の加水素水製造装置を用いて、溶存水素量1.5ppm以上のミネラル加水素水を調製した。
まず、広島県福山市水道局の水道水(水温15.3℃、溶存水素量0.01ppm、酸化還元電位410mV)を、活性炭フィルターを介して脱塩素処理したものに、花崗岩より抽出されるミネラル成分の抽出原料に対して銀及び鉄の含有量を調製することによって得られた所定のミネラル成分を添加して所定のミネラル水を調整した。その際、原料水の総量を基準として、各ミネラル元素の含有量を変えて添加した(表2、試料No.1〜試料No.5)。次いで、かかるミネラル水を流量7リットル/分、水圧0.2MPaに調整し、ミネラル水に対して水素ガスを流量5.0リットル/分、ガス圧0.5MPaに調整した状態で供給した。その結果、溶存水素量1.835ppm、酸化還元電位−625mV、pHが7.45のミネラル含有加水素水を連続して得た。
【0062】
【表2】

【実施例2】
【0063】
<加水素水の調製>
公知の加水素水製造装置を用いて、溶存水素量1.5ppm以上の加水素水を調製した。
広島県福山市水道局の水道水(水温15.3℃、溶存水素量0.01ppm、酸化還元電位410mV)を流量7リットル/分、水圧0.2MPaに調整し、水道水に対して水素ガスを流量5.0リットル/分、ガス圧0.5MPaに調整した状態で供給した。その結果、溶存水素量1.835ppm、酸化還元電位−625mV、pHが7.45の加水素水を連続して得た。
【実施例3】
【0064】
<抗腫瘍効果試験1>
実施例1及び実施例2で調製されたミネラル含有加水素水及び加水素水を用いて、ミネラル含有加水素水等を投与することによるヒト舌癌細胞(HSC−4)に対する細胞増殖抑制効果を検討した。
まず、高分化型ヒト扁平上皮細胞株HSC−4細胞を使用し、20%牛胎児血清(FBS)とMEM培地を用いて24穴マイクロプレートに5.0×103/mLの細胞懸濁液を100μL播種した。次いで、この細胞培地に、溶媒としてミネラル含有加水素水(試料No.1〜No.5)を用いた20%FBS+MEM培地液をそれぞれ添加して、37℃の条件で72時間インキュベートした。培養終了後、各穴より培養細胞の上清を回収し、リン酸緩衝液(PBS)で洗浄した後、1コロニーあたり細胞8個以上でディフ・クイック(Diff Quik)染色を行って細胞数をカウントした。
また、加水素水(実施例2参照、試料No.6)、原料水(水道水)に試料1と同量のミネラル成分を含有したミネラル水(実施例1参照、試料No.7)、及び浄水(試料No.8・コントロール)をそれぞれ溶媒として用いた20%FBS+MEM培地液を細胞培地に添加した場合についても同様の試験を行い、その結果を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
表3に示したように、ヒト舌癌細胞の細胞増殖塊(コロニー)の形成は、ミネラル含有加水素水(試料No.1〜No.5)において、コントロール(試料No.8)等に対する形成率が抑制されていることから、かかるミネラル含有加水素水の有為な抗癌活性(抗腫瘍効果)が認められた。
【0067】
また、ミネラル含有加水素水(試料No.1〜No.5)において、加水素水単体の場合(試料No.6)や、ミネラル水単体の場合(試料No.7)と比べても、細胞増殖塊(コロニー)の形成率が抑制されていることから、ミネラル含有加水素水に含まれる水素分子の還元力と所定のミネラル成分(主に銀イオン)とが相加・相乗的に影響して薬理効果が向上されることが示唆される。
【実施例4】
【0068】
<抗腫瘍効果試験2>
実施例1及び実施例2で調製されたミネラル含有加水素水等を用いて、ミネラル含有加水素水を投与することによる進行再発大腸癌に対する抗腫瘍効果を検討した。
具体的には、実施例1及び実施例2で調製されたミネラル含有加水素水(実施例1、試料No.3参照)及び加水素水(実施例2参照)を用いて、以下に示す症例の患者に対して、朝、昼、夕食前の30分又は食間に520mLを服用させた(一日で計1560mLを服用)。そして、ミネラル含有加水素水の服用3ヶ月前後でのCTスキャンによる腫瘍状態、CEAレベル、及びCA19−9レベルをモニタリングした。
【0069】
症例1としては、ステージIIIの大腸癌患者(男性、84歳)に対して、実施例1で調製されたミネラル含有加水素水(試料No.3)を投与して、CTスキャンによる腫瘍状態、CEAレベル、及びCA19−9レベルをモニタリングした。
その結果、図1及び図2に示すように、CTスキャンでは、当該患者において大腸癌の手術後12ヵ月後に肝転移した腫瘍が(図1(a)、図2(a)参照)、服用3ヶ月後にはほぼ消失した(図1(b)、図2(b)参照)。また、CEAが21ng/mLから4ng/mLへと正常化し、CA19−9が41U/mLから15U/mLへと正常化した。
【0070】
症例2としては、ステージIIIの大腸癌患者(男性、81歳)に対して、同様に実施例1で調製されたミネラル含有加水素水(試料No.3)を投与して、CTスキャンによる腫瘍状態、CEAレベル、及びCA19−9レベルをモニタリングした。
その結果、図3に示すように、CTスキャンでは、当該患者において大腸癌の手術後18ヵ月後に肺転移した腫瘍が(図3(a)参照)、服用3ヶ月後にはほぼ消失した(図3(b)参照)。また、CEAが108ng/mLから3ng/mLへと正常化し、CA19−9が60U/mLから9U/mLへと正常化した。
【0071】
症例3としては、ステージIIIの大腸癌患者(男性、82歳)に対して、同様に実施例1で調製されたミネラル含有加水素水(試料No.3)を投与して、CTスキャンによる腫瘍状態、CEAレベル、及びCA19−9レベルをモニタリングした。
その結果、図4に示すように、CTスキャンでは、当該患者において大腸癌の手術後19ヵ月後に肝転移した腫瘍が(図4(a)参照)、服用3ヶ月後にはほぼ消失した(図4(b)参照)。また、CEAが96ng/mLから4ng/mLへと正常化し、CA19−9が50U/mLから7U/mLへと正常化した。
【0072】
症例4としては、比較試験として、ステージIIIの大腸癌患者(男性、86歳)に対して、実施例2で調製された加水素水を投与して、CTスキャンによる腫瘍状態、CEAレベル、及びCA19−9レベルをモニタリングした。
その結果、図5に示すように、CTスキャンでは、当該患者において大腸癌の手術後31ヵ月後に肝転移した腫瘍が(図5(a)参照)、服用3ヶ月後にも増大傾向は見られなかったが消失することはなかった(図5(b)参照)。また、CEAが35ng/mLから15ng/mLへと低減傾向が見られたが正常化には至らず、CA19−9は25U/mLから23U/mLへとほぼ横ばいであった。
【0073】
症例5としては、比較試験として、ステージIIIの大腸癌患者(男性、75歳)に対して、実施例2で調製された加水素水を投与して、CTスキャンによる腫瘍状態、CEAレベル、及びCA19−9レベルをモニタリングした。
その結果、図6に示すように、CTスキャンでは、当該患者において大腸癌の手術後21ヵ月後に肺転移した腫瘍が(図6(a)参照)、服用3ヶ月後にも消失することはなく、やや増大傾向が見られた(図6(b)参照)。また、CEAは100ng/mLから28ng/mLへと低減傾向が見られたが正常化には至らず、CA19−9も57U/mLから38U/mLへとやや低減したが正常化には至らなかった。
【0074】
図1〜図6に示したように、高齢者(後期高齢者)であって手術・抗癌剤適用のない進行再発大腸癌患者に対して、ミネラル含有加水素水(試料No.3)を服用させた結果によると、服用前、すなわち通常の水道水を服用していた場合と比較して、ミネラル含有加水素水を服用することで、腫瘍状態、CEAレベル、CA19−9レベルのいずれもが改善する傾向が見られた。
【実施例5】
【0075】
<高血圧改善効果試験>
実施例1で調製されたミネラル含有加水素水を用いて、ミネラル含有加水素水を投与することによる高血圧症例に対する改善効果を検討した。
具体的には、実施例1で調製されたミネラル含有加水素水(試料No.3)を用いて、軽症高血圧症例と診断された患者(8症例、平均収縮期血圧152.5mmHg、平均拡張期血圧89.6mmHg)に対して、朝、昼、夕食前の30分又は食間に520mLを服用させ(一日で計1560mLを服用)、その降圧効果をモニタリングした。
【0076】
図7に示すように、上記症例の患者に対して、ミネラル含有加水素水(試料No.3)の服用前後の後向きコーホート調査を行った結果、服用前、すなわち通常の水道水を服用していた場合と比較して、ミネラル含有加水素水の服用後に収縮期血圧及び拡張期血圧が徐々に降圧し、服用3ヶ月後には収縮期血圧が123.8mmHgへと、拡張期血圧が71.6mmHgへと正常化した。
【0077】
高血圧は、脳血管疾患と心血管疾患の危険因子であり、生命予後をも左右する。高血圧の診断、分類、治療は、血圧値により規定されており、日本では、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の場合と規定されている。本実施例のミネラル含有加水素水を服用することで、収縮期血圧及び拡張期血圧のいずれの値も正常化された。
【実施例6】
【0078】
<高脂血症改善効果試験>
実施例1で調製されたミネラル含有加水素水を用いて、ミネラル含有加水素水を投与することによる高脂血症症例に対する改善効果を検討した。
具体的には、実施例1で調製されたミネラル含有加水素水(試料No.3)を用いて、高脂血症症例と診断された患者(8症例、中性脂肪平均値174.8mg/dL、LDLコレステロール平均値147.1mg/dL、HDLコレステロール平均値35.3mg/dL)に対して、朝、昼、夕食前の30分又は食間に520mLを服用させ(一日で計1560mLを服用)、その血清脂質の改善効果をモニタリングした。
【0079】
図8〜図10に示すように、上記症例の患者に対して、ミネラル含有加水素水(試料No.3)の服用前後の後向きコーホート調査を行った結果、服用前、すなわち通常の水道水を服用していた場合と比較して、ミネラル含有加水素水の服用後に血清脂質値が徐々に改善し、服用3ヶ月後には中性脂肪が107.4mg/dLへと(図8参照)、LDLコレステロールが100.6mg/dLへと(図9参照)、HDLコレステロールが48.8mg/dLへと(図10参照)、それぞれ改善した。
【0080】
高脂血症は、日本では、日本動脈硬化学会の診断基準によると、中性脂肪が150mg/dL以上、LDLコレステロールが160mg/dL以上、HDLコレステロールが40mg/dL以下のいずれかを認める場合と規定されている。本実施例のミネラル含有加水素水を服用することで、血清脂質のいずれの値も改善し、正常化された。
【0081】
特に、上記実施例(実施例5)及び本実施例(実施例6)において、ミネラル含有加水素水により高血圧の背景である高脂血症やラジカル(酸化)が改善されたことが、降圧降下のメカニズムであるとすれば、高血圧の予防的な観点からの摂取も奨励されるであろう。
【実施例7】
【0082】
<認知症改善効果試験>
実施例1で調製されたミネラル含有加水素水を用いて、ミネラル含有加水素水を投与することによる脳機能障害の一つである認知症症例に対する改善効果を検討した。
具体的には、HDS−R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)法による知能評価スケールで痴呆レベルにある認知症症例と診断された患者(8症例)に対して、朝、昼、夕食前の30分又は食間に520mLを服用させ(一日で計1560mLを服用)、その知能評価スケール(の平均値)の改善効果をモニタリングした。
【0083】
上記症例の患者に対して、ミネラル含有加水素水(試料No.3)の服用前後の後向きコーホート調査を行った結果、服用前、すなわち通常の水道水を服用していた場合と比較して、ミネラル含有加水素水の服用3ヶ月後には、知能評価スケールが16点から26点へと改善した。
【0084】
HDS−Rでは、20点以下が認知症の疑いが高いとされているが、本実施例のミネラル含有加水素水を服用することで、知能評価スケールが改善した。
【実施例8】
【0085】
<生活改善効果試験>
実施例1で調製されたミネラル含有加水素水を用いて、ミネラル含有加水素水を投与することによるADL(日常生活活動)及び生活の質(QOL)に対する改善効果を検討した。
具体的には、高齢者の進行再発大腸癌患者(男性4症例、女性1症例、平均年齢82歳)に対して、朝、昼、夕食前の30分又は食間に520mLを服用させ(一日で計1560mLを服用)、VAS(Visual analog scale)による主観的健康感の調査を行った。
【0086】
図11及び図12に示すように、上記症例の患者に対して、ミネラル含有加水素水(試料No.3)の服用前後の後向きコーホート調査を行った結果、服用前、すなわち通常の水道水を服用していた場合と比較して、ミネラル含有加水素水の服用3ヶ月後にはADL及びQOLがいずれも改善した。これは、ミネラル含有加水素水によるラジカル抑制(抗酸化)が体調によい影響を与えることを示唆している。
【実施例9】
【0087】
<8−OHdG改善試験>
実施例1及び実施例2で調製されたミネラル含有加水素水及び加水素水を用いて、ミネラル含有加水素水を投与することによる血清中の8−OHdGの抑制効果(8−OHdG改善)を検討した。
【0088】
通常、活性酸素種などのフリーラジカルの暴露を受けた生体細胞や組織の損傷状態やその変化を把握する方法として、所定の酸化ストレスマーカーを指標とすることで、フリーラジカルによる細胞障害の程度を細胞や組織を侵襲することなく血液や尿などの成分解析から把握することができる。中でも、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(以下、8−OHdG)は、このような酸化ストレスマーカーの一つとして知られており、細胞中のDNAの構成成分であるデオキシグアノシン(dG)が酸化ストレスにより生じたヒドロキシラジカルにて酸化されることによって生成されることから、生体におけるDNAの酸化的損傷の程度、ひいては酸化ストレスの高低を反映する指標として有用され、この8−OHdGの変化を測定することで、生体内での酸化ストレスの変化を推定できる。
【0089】
具体的には、実施例1で調製されたミネラル含有加水素水(試料No.3、試料No.4)及び実施例2で調整された加水素水を用いて、以下のように診断された患者グループに対して、朝、昼、夕食前の30分又は食間に320mL又は520mLを服用させ(一日で計960mL又は計1560mLを服用)、当該患者の血清中8−OHdGの変化をモニタリングした。なお、血清中の8−OHdGは、8−OHdG測定用ELISAキットを用いて測定した。
【0090】
(1)第1グループ:再発大腸癌と診断された患者(男性2症例、女性4症例、平均81歳)に、加水素水(実施例2参照)を、朝、昼、夕食前の30分又は食間に320mLを服用させた(一日で計960mL)。
(2)第二グループ:再発大腸癌と診断された患者(男性4症例、女性1症例、平均79歳)に、ミネラル含有加水素水(実施例1参照、試料No.4)を、朝、昼、夕食前の30分又は食間に320mLを服用させた(一日で計960mL)。
(3)第三グループ:再発大腸癌と診断された患者(男性4症例、女性1症例、平均80.8歳)に、ミネラル含有加水素水(実施例1参照、試料No.3)を、朝、昼、夕食前の30分又は食間に320mLを服用させた(一日で計960mL)。
(4)第四グループ:再発大腸癌と診断された患者(男性4症例、女性1症例、平均82,2歳)に、加水素水(実施例2参照)を、朝、昼、夕食前の30分又は食間に520mLを服用させた(一日で計1560mL)。
(5)第五グループ:再発大腸癌と診断された患者(男性4症例、女性1症例、平均82歳)に、ミネラル含有加水素水(実施例1参照、試料No.3)を、朝、昼、夕食前の30分又は食間に520mLを服用させた(一日で計1560mL)。
【0091】
図13に示すように、上記症例の患者グループに対して、ミネラル含有加水素水又は加水素水の服用前後の後向きコーホート調査を行った結果、患者グループ3(図13(c)参照)、患者グループ4(図13(d)参照)、及び患者グループ5(図13(e)参照)において8−OHdGの低下傾向が認められる一方、患者グループ1(図13(a)参照)及び患者グループ2(図13(b)参照)において8−OHdGの増加傾向が見られた。
【0092】
このように、患者グループ3〜5に対して8−OHdGの低下傾向が見られたことから、所定容量のミネラル成分を添加したミネラル含有加水素水(又は加水素水)には、酸化ストレスの改善、つまり、酸化ストレスマーカーとしての8−OHdGの上昇を抑制する効果が認められた。特に、患者グループ1と3を比較して、加水素水に対して添加される所定のミネラル成分の容量を対比すると、所定のミネラル成分の容量が増加することで8−OHdGの改善効果を発現することから(患者グループ3参照)、ミネラル含有加水素水に含まれる水素分子の還元力と所定のミネラル成分(主に銀イオン)とが相加・相乗的に影響していることが示唆される。
【0093】
ところで、本実施例の患者グループの症例(患者グループ1〜5)は、要介護度2の背景で統一され、また、比較的認知症がなく、日常生活も自立している高齢患者が多い。また、高齢患者においては、「天寿癌」と呼ばれるように腫瘍が増大しない、あるいは増大しても極めて増大が緩徐である症例が多く報告されているところである。本発明のミネラル含有加水素水は、酸化ストレス疾患の内でも、特に、高齢者(後期高齢者)であって寝たきりや要介護度が高く、手術適用が困難な患者であって、再発癌(大腸癌など)や転移癌(肝転移や肺転移など)などを発症している患者に対しての8−OHdGの改善効果が期待される。
【0094】
また、上記の実施例5〜7により、ミネラル含有加水素水において、高血圧改善効果、高脂血症改善効果、認知症改善効果が認められる結果が得られているが、本実施例により認められた8−OHdGの改善効果は、かかる実施例5〜7の効果をさらに裏付けるものである。すなわち、上記の実施例5〜7の症例は、いずれも酸化ストレスを原因とした疾患(高血圧症例、高脂血症症例、認知症症例)であり、ミネラル含有加水素水による8−OHdGの改善はそのような酸化ストレス疾患を軽快する効果を示唆しているからである。なお、アルツハイマー病や認知症の軽快と8−OHdGの改善効果との関係は、例えば、de la Monte SM et al.,Alzheimers Dis.,(2000),vol.2,P.261−81などでその可能性が示唆されているとおりである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料水に対して、銀イオンを主体とした所定のミネラル成分を添加し、微細気泡状の水素ガスを大量に含み、酸化還元電位が−400mV〜−680mVの範囲に調製されたミネラル含有加水素水。
【請求項2】
前記所定のミネラル成分は、主として、
マグネシウム、アルミニウムからなるA群と、
ナトリウム、カリウム、カルシウム、チタン、マンガン、銀からなるB群と、
リチウム、珪素、硫黄、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウムからなるC群と、
及び/又はA群からC群までの元素を含む化合物より選ばれる複数のミネラルからなることを特徴とする請求項1に記載のミネラル含有加水素水。
【請求項3】
前記所定のミネラル成分は、前記原料水の総量を基準として、銀及び/又は銀を含む化合物の含有量が0.2〜5.0ppmとなるように添加されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のミネラル含有加水素水。
【請求項4】
前記所定のミネラル成分は、前記原料水の総量を基準として、銀及び/又は銀を含む化合物の含有量が0.4〜1.5ppmとなるように添加されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のミネラル含有加水素水。
【請求項5】
所定の酸化ストレス疾患に対して血清中の8−OHdGを抑制する治療及び/又は予防に用いることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のミネラル含有加水素水。
【請求項6】
抗腫瘍効果を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のミネラル含有加水素水。
【請求項7】
高血圧改善効果を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のミネラル含有加水素水。
【請求項8】
高脂血症改善効果を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のミネラル含有加水素水。
【請求項9】
脳機能障害改善効果を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のミネラル含有加水素水。
【請求項10】
生活改善効果を有することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のミネラル含有加水素水。
【請求項11】
原料水に対して、銀イオンを主体とした所定のミネラル成分を添加して、所定のミネラル水を調整する調製工程と、
前記調製工程により調製された所定のミネラル水に水素ガスを混合させる製造工程とを有し、
微細気泡状の水素ガスを大量に含み、酸化還元電位が−400mV〜−680mVの範囲に調整されたミネラル含有加水素水の製造方法。
【請求項12】
前記所定のミネラル成分は、主として、
マグネシウム、アルミニウムからなるA群と、
ナトリウム、カリウム、カルシウム、チタン、マンガン、銀からなるB群と、
リチウム、珪素、硫黄、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウムからなるC群と、
及び/又はA群からC群までの元素を含む化合物より選ばれる複数のミネラルからなることを特徴とする請求項11に記載のミネラル含有加水素水の製造方法。
【請求項13】
前記所定のミネラル成分は、前記原料水の総量を基準として、銀及び/又は銀を含む化合物の含有量が0.2〜5.0ppmとなるように添加されることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のミネラル含有加水素水の製造方法。
【請求項14】
前記所定のミネラル成分は、前記原料水の総量を基準として、銀及び/又は銀を含む化合物の含有量が0.4〜1.5ppmとなるように添加されることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のミネラル含有加水素水の製造方法。

【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−58107(P2010−58107A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55711(P2009−55711)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】