説明

ミルク加温装置

【課題】 細菌等の感染管理上の問題を生じないミルク加温装置を提供する。
【解決手段】 ミルク加温装置1は多数の哺乳瓶50を縦姿勢で並列保持する篭体20を収納し、温風循環路12,14を備えた筐体10と、送風装置30と、温風の温度を制御する制御装置40とを備え、送風装置30は発熱体31によって加熱した温風をシロッコファン32によって筐体10内に循環させる。筐体10は透明ガラス15を備えた密閉構造の開閉自在な扉16を備え、哺乳瓶50はガラス15を通して識別できる識別表示部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の乳児を預かる産院、病院等において使用する、ミルク加温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、少子化の社会間題に係る乳幼児の環境整備の重要性が認識され、その一環として、出産から育児の過程における安全、衛生について非常に関心が深まっている。特に乳幼児のミルク授乳は産院、病院等多数の乳児を預かる現場では細心の注意を要し、負担の掛かる仕事である。
【0003】
従来、一般に、多くの現場では授乳ミルクを加温するとか保温する場合、衛生面における実態は、育児担当者の個人的な勘や経験とか、院内のマニュアルに委ねられている。これらは必ずしも安定性や信頼性が十分でなく、バラツキが多いものである。
【0004】
多数の乳児を保育する現場では、基本的作業として使用する哺乳瓶、乳首等の用具は、洗浄消毒保管し、調乳時にミルクを温湯で適温に調合して直ちに授乳する場合と、調乳後一時冷蔵庫等で5℃〜10℃に冷却保存し、授乳時に湯せん器等で適温例えば人肌の温度に温めて授乳する場合とがある。多くの哺乳瓶を同時に湯せんで加熱することは、時としてミルクが洩れたりして汚れ、不衛生になることもあり、また哺乳瓶に水が付着するので、取扱い上適切でない。
このような問題に対して、医師や衛生関係者による新生児医療フォーラム等が開催されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
このようなフォーラム等では、例えば、
(a)院内感染対策をすすめる一環として細菌環境培養を採ったところ、よく問題になっている温乳器からA.baumannii,緑膿菌、K.pneumoniaeが同定された。
【0006】
(b)以前の温乳器は、感染管理の目的で使用を中止した。現在は、ホットプレートの上にステンレスのバットを載せて、これで湯せんして母乳、ミルクを温めている。使用後のバットはその都度洗って乾かしている。また、経口が始まった児などで、臨時に母乳を解凍したり、ミルクを温めたりする際には専用の流しのシンク内に容器を入れて流水(湯)で加温している。しかし、加温する際の温度管理が曖昧であることに加えて、衛生的とは言えない。
【0007】
(c)水+温度環境から言って、「緑膿菌・レジオネラなどが好みやすいミルク加温器」は連日使用することで、哺乳瓶が汚染された水の中で加温される。どうしてもミルク加温器を使用したい場合には数台準備して、1台の連続使用を24〜48時間程度に制限し、消毒乾燥時間として2〜3日以上あけて使用する必要がある。
【0008】
(d)ミルクウォーマーから取り出した哺乳瓶を授乳前にオゾン水で消毒したら菌の検出率が下がった。
【0009】
(e)温乳器の下側(金網の下側)だけにお湯を張って温めるようにするのは蒸気がミルクの瓶に付着するのでどこまで効果があるのかは不確かである。
などの問題が指摘されている。
【非特許文献1】株式会社メディカ出版発行:Neonatal Care:2006年4月 Vol.19 No.4,p61〜63
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は多数の乳児を預かる産院、病院等において使用する、ミルク加温装置について、温度管理、衛生面、取扱上の問題点を解決し、感染管理上の問題を全く生じないミルク加温装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、次の技術手段を講じたことを特徴とするミルク加温装置である。すなわち、本発明は、多数の哺乳瓶を縦姿勢で並列保持する仕切り篭を内蔵し哺乳瓶を加温する温風の循環路を備えた筐体と、該筐体内に温風を循環させる送風装置と、該温風の温度を制御する制御装置とを備え、前記筐体は外気を遮断する密閉構造の開閉自在な透明蓋を上面に備えたことを特徴とする。
【0012】
上記本発明において、前記哺乳瓶は前記透明蓋を通して識別できる識別表示部を上面に備えることによって、加温装置内で加温されている個々の哺乳瓶を外部から簡単に識別することができ、哺乳瓶の取出し等の取扱いにおいて錯誤や取り違え等を生ずるおそれがなく、好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のミルク加温装置は以上のように構成されているので、院内感染管理、衛生管理、温度管理、あるいは誤認の防止等に対して極めて有用であり、また、取扱者の労力の削減、注意力の向上に資するなどの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明は、産院、病院等、集団的に出産から育児に係る業務の環境の下で、効果的に使用されるものである。
【0016】
図1は本発明の1実施例のミルク加温装置1を示す平面図、図2はその側面図、図3はその正面図、図4はその内部構造及び送風装置部30を示す詳細図である。
【0017】
図1〜図3に示すように、本発明のミルク加温装置1は、多数の哺乳瓶50を収納する筐体10から成っている。哺乳瓶50は仕切り篭20内に縦姿勢で整列収納される。筐体10は金属又は樹脂成型品の箱形容器である。筐体10は外気を遮断する密閉構造となっており、内部には仕切板11によって形成した温風循環路12,14を備えている。そしてこの温風循環路12,14に温風を循環させる送風装置30を備えている。送風装置30は、この実施例では筐体10の内部に設けたコンパクトな例を示しているが、筐体10と別体であってもよい。
【0018】
筐体10の上面に扉16を備え、この扉16は把手18によって図3に示す16aのように開閉することができる。扉16は筐体10内の各哺乳瓶50を上方から識別することができるように透明なガラス15を設けている。扉16は周縁の内面側に密封用ガスケット17を備え、扉16を閉めたとき、筐体10は密封空間を形成する。
【0019】
図4は本実施例のミルク加温装置1の筐体10の内部構造及び送風装置30を示す説明図である。この例では、送風装置30は筐体10内に設けられており、発熱体31とシロッコファン32と電動機33とを組み合わせたユニットである。電源コード45によって給電される。
【0020】
シロッコファン32は筐体10内の温風循環流35を吸引し、温風吹出孔13から温風循環路12に温風流34を吹出す。温風流34は筐体10の底部の温風循環路12から、多数の孔を通って上昇し、多数の哺乳瓶50を加温した後、上部の温風循環路14を通って循環流35となってシロッコファン32に還流する。
【0021】
温風循環路12と筐体10の外皮との間には保温材36が詰められ温風は外気と断熱されている。
【0022】
ミルク加温装置1には温度制御装置40が設けられており、この例では筐体10の上面に設けられている。温度制御装置40は制御基板ユニット41を備え、温度設定つまみや、デジタル表示ディスプレイ43を備えている。
【0023】
温度センサ42は筐体10内の温風の温度を測定し、その測定値を温度制御装置40に伝達する。温度制御装置40は、温風の温度を設定値に従って適温に自動制御する。庫内の温度測定値はデジタル表示ディスプレー42によって確認することができる。
【0024】
温度過昇防止器44は温度の過上昇を防止する安全装置である。その構造、作用は公知の技術を使用している。
【0025】
図5に哺乳瓶50の斜視図を示した。各哺乳瓶50は上蓋51によって密封されている。この上蓋51には授乳乳児の名前52がシール53等を用いるか又は印字等によって書き込み表示してある。ミルク加温装置1の筐体10の上面のガラス15を設けた扉16を通してこの表示を透視することが出来る。このことによって、授乳児を間違えるミスを防止できるよう配慮されている。
【0026】
本発明装置のミルク加温装置1の動作性能は、次のとおりである。
【0027】
事前に調乳したミルク乳をそれぞれ哺乳瓶に入れ、冷蔵庫にて温度5℃〜10℃で冷却保存しておく。哺乳瓶の上蓋には乳児の名前が表示されている。授乳予定時間の40〜60分前にこの哺乳瓶をミルク加温装置1の筐体10内に移して、加温を開始する。
【0028】
加温は例えば、図6に加温特性(特性線60)を示すように、マイコンのプログラム設定により、立上り時に、加温を加速させるため、約10分間最高55℃まで加温し、その後、目標温度になるように、加温特性を設定して加温する。目標温度は最適温度とし、例えば、36℃〜40℃とすればよい。図6は横軸に加温時間をとり、縦軸に温度をとって加温特性を示したものである。加温が完了すると、アラーム等により告知される。
【0029】
加温工程は水分を含まない乾燥温風によって自動的に行われる。従って、衛生的に乳幼育児の安全を確保できると共に、保育に係わる人の作業の効率化を図ることができ、水分によるトラブルを生ずることが全くない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例の平面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の正面図である。
【図4】実施例の筐体の内部構造及び送風装置を示す詳細図である。
【図5】哺乳瓶の斜視図である。
【図6】加温特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0031】
1 ミルク加温装置
10 筐体
11 仕切板
12 温風循環路(底部)
13 温風吹出孔
14 温風循環路(上部)
15 ガラス
16 扉
17 ガスケット
18 把手
20 仕切り篭
30 送風装置
31 発熱体
32 シロッコファン
33 電動機
34 温風流
35 循環流
36 保温材
40 温度制御装置
41 制御基板ユニット
42 温度センサ
43 デジタル表示ディスプレイ
44 温度過昇防止器
45 電源コード
50 哺乳瓶
51 上蓋
52 名前
53 シール
60 特性線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の哺乳瓶を縦姿勢で並列保持する仕切り篭を内蔵し哺乳瓶を加温する温風の循環路を備えた筐体と、該筐体内に温風を循環させる送風装置と、該温風の温度を制御する制御装置とを備え、前記筐体は外気を遮断する密閉構造の開閉自在な透明蓋を上面に備えたことを特徴とするミルク加温装置。
【請求項2】
前記哺乳瓶は前記透明蓋を通して識別できる識別表示部を上面に備えたことを特徴とする請求項1記載のミルク加温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−136649(P2008−136649A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325743(P2006−325743)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000102360)エイシン電機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】