メタルハライドランプ
【課題】 セラミック発光管に封入する始動用希ガスの圧力を低下させることなく、高ワットなメタルハライドランプにあっても、その始動電圧を低下させることが可能なメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】 メタルハライドランプは、一対の電極をもち、金属ハロゲン化物を封入したセラミック発光管１と、セラミック発光管１を始動するための始動器１０と、セラミック発光管１に接触して配置した近接導体１１と、セラミック発光管１、始動器１０および近接導体１１を収容する外管バルブ２とを備える。近接導体１１は、前記一対の電極とは電気的に絶縁されており、かつ、セラミック発光管１に沿って前記一対の電極間に渡り複数の線条を有するように構成される。
【解決手段】 メタルハライドランプは、一対の電極をもち、金属ハロゲン化物を封入したセラミック発光管１と、セラミック発光管１を始動するための始動器１０と、セラミック発光管１に接触して配置した近接導体１１と、セラミック発光管１、始動器１０および近接導体１１を収容する外管バルブ２とを備える。近接導体１１は、前記一対の電極とは電気的に絶縁されており、かつ、セラミック発光管１に沿って前記一対の電極間に渡り複数の線条を有するように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明はメタルハライドランプに係り、特に低電圧始動形のセラミックメタルハライドランプに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
メタルハライドランプは、発光管内に水銀、希ガスのほかに発光金属をハロゲン化合物の形で封入し、これにより効率、演色性等を改善したランプである。このメタルハライドランプは、ハロゲン化合物が封入されていることから、始動性が悪く、始動のために高いパルス電圧を印加する方法が用いられてきている。この始動性を向上させ、低い始動電圧で確実に、かつ、短時間に始動させることが電極の消耗を防ぎ、また、光束維持率を高める上で重要である。
【０００３】
このため、石英ガラスからなる発光管を用いたメタルハライドランプでは、従来、始動補助極が多く用いられてきている。しかし近年、ランプの効率を高めるために、耐熱性の高いセラミックスを用いたセラミックメタルハライドランプが用いられるようになると、石英ガラスに比べてアルミナ等のセラミックスは熱伝導率が高いために電極封止部近傍の形状を小さく設計することとなり、そのために、始動補助極を設けることが困難となっている。そこで、ランプの始動性を高めるために、始動補助極に代わる手段として、近接導体を設けることが検討されている。例えば、非特許文献１には、一般照明用１５０Ｗセラミック発光管メタルハライドランプの発光管に近接導体を取り付けた例が示されている。また、特許文献１には、メタルハライドランプの発光管に近接または接触して近接導体を配置した例が示されている。
【非特許文献１】平成１０年度照明学会第３１回全国大会、Ｎｏ．３２、「一般照明用１５０Ｗセラミック発光管メタルハライドランプの検討」
【特許文献１】特開平１０−２９４０８５号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
ところで、メタルハライドランプは、高ワットになるにつれて電極間距離が長くなり、ますます始動性が悪くなる。そこで、始動性を改善するために、ランプ始動時に高電圧を印加することが考えられる。しかし、低電圧始動形のセラミックメタルハライドランプを始動するために高電圧を利用することは、ランプに悪影響を与えるのみならず、本来、高いパルス電圧を必要としない水銀ランプ用に開発された安定器にも大きなリスクを負わせることとなり、好ましくない。したがって、高ワットのセラミックメタルハライドランプでは、低いパルス電圧で始動することができる近接導体が特に重要となる。また、一方で、発光管内に封入する始動用希ガスの圧力を低くすることが、電極間距離の長いランプの始動電圧を低くすることは良く知られているが、始動用希ガスの圧力を低くすることは同時に電極の消耗を高めることも良く知られている。
【０００５】
従って本発明の目的は、セラミック発光管に封入する始動用希ガスの圧力を低下させることなく、高ワットなメタルハライドランプにあっても、その始動電圧を低下させることが可能なメタルハライドランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記目的は、一対の電極をもち、金属ハロゲン化物を封入したセラミック発光管と、前記セラミック発光管を始動するための始動器と、前記セラミック発光管に接触して配置した近接導体と、前記セラミック発光管、前記始動器および前記近接導体を収容する外管バルブとを備えたメタルハライドランプであって、前記近接導体が前記一対の電極とは電気的に絶縁されており、かつ、前記発光管に沿って前記一対の電極間に渡り複数の線条を有するように構成されたメタルハライドランプにより、達成される。ここで、本発明では、近接導体を電極と電気的に絶縁することにより、発光管内部にナトリウムハロゲン化物を封入した場合においても、ホトエレクトロンに起因するナトリム金属の漏出を防止することが出来る。また、発光管に沿って電極間に渡り近接導体を設けることにより、電位勾配の急峻な一端の電極近傍で生じる微放電を効率的に他端の電極まで誘導することが出来、従って、低い始動用パルス電圧で始動させることが可能となる。さらに、近接導体が複数の線条を有することにより、確率的に発生し、また、確率的に消滅する微放電とその進展をより確実に電極間の放電へと伸張させることが可能となり、結果的に、より低い始動用パルス電圧で始動させることが可能となる。
【０００７】
また、前記近接導体は、１本の線条を途中で折り返すことにより前記複数の線条を形成することができる。前記１本の線条を途中で折り返すことにより形成される折返し部は、前記発光管端部の細管部に通して固定することができる。前記近接導体の複数の線条は、少なくとも１つの止め金具により固定することができる。これにより、前記近接導体の１つの線条近傍で発生した微放電が、電極間の放電に進展しないで確率的に消滅したとしても、その微放電で生じたイオンや電子が近傍の他の線条によって形成される電位勾配により、再度微放電を形成し、結局は電極間の放電へと進展することとなる。このとき、前記近接導体の複数の線条間の距離が離れると、微放電の継続性が悪くなり、その効果が大きく減じられることとなるので、複数の線条間の距離が離れないように止め金具で固定するのが好ましい。
【発明の効果】
【０００８】
本発明によれば、セラミック発光管に封入する始動用希ガスの圧力を低下させることなく、高ワットなメタルハライドランプにあっても、その始動電圧を低下させることが可能なメタルハライドランプを得ることができる。すなわち、本発明では、複数の線条で構成した近接導体の作用によりその効果を大きく発揮させることが可能となり、高ワットのメタルハライドランプにあっても始動用希ガスの圧力を減じることなく低いパルス電圧でランプを始動させることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
以下、本発明の実施例について、添付図面を参照しながら説明する。
図１は、本発明に係るメタルハライドランプの一実施例を示す図である。本図は始動器内蔵式の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの構成を示すものであり、同図では、その内部構造が分かるように、その一部を切り欠いて示している。
【００１０】
セラミック発光管１は、図１に示すように、一例として、硬質ガラスからなる外管バルブ２の内部にステム５を介して気密に封止されており、そして、支持棒を兼ねたリード線４ａ、４ｂによって保持されている。リード線４ａ、４ｂは、発光管１の両端に設けられた細管部１３ａ、１３ｂを介して、発光管１の図示しない一対の電極にそれぞれ接続される。外管バルブ２の球状部２ａの内面には蛍光膜３が塗布されている。また、口金６は、上記外管バルブ２のネック部２ｂに、機械的にかしめ固定されており、これによってリード線との間が電気的に接続されている。
【００１１】
一方、グロー管７、電流制限用抵抗８、バイメタル（図示せず）からなる始動器１０は、リード線４ａ、４ｂに電気的に接続され、固定されている。反射板９は、例えば白色セラミック板からなり、上記外管バルブの球状部２ａとネック部２ｂと間の境界部分に配置されており、反射板９に設けた穴を貫通するリード線４ａ、４ｂによって固定されている。電流制限用抵抗８の一部は、反射板９に設けた穴を通じて、ランプ中心部に伸びている。図示のように、外管バルブの球状部２ａと反射板９とで概略球状を形成する。
【００１２】
外管バルブ２の内部には、窒素ガスが約二分の一気圧に減圧されて封入されている。一方、セラミック発光管１の内部には、始動ガスとして約１５ｋＰａのアルゴンガスと、バッファガスとして水銀７０ｍｇ、発光金属としてナトリウム、タリウム、並びに、ディスプロシウム等の希土類ヨウ化物が適量封入されている。電極間距離は６０ｍｍである。
【００１３】
近接導体１１は、例えば太さ０．２ｍｍのモリブデン線からなる。近接導体１１は、１本の線条を途中で折り返して２本の線条とすることができ、発光管１の外形に沿って接触し設けられている。２本の線条は互いに離れないように、２つの止め金具１２ａ、１２ｂにより発光管１の上下の管端部近傍でそれぞれ相互に固定され、発光管端部の細管部１３ａ、１３ｂの太さ程度に保たれている。ここでは、近接導体１１は２本の線条としているが、これに限定されず、３本以上の線条とすることもできる。また、本例では、近接導体１１は１本の線条を折り返して複数の線条としているが、これに限定されず、所望の長さの複数の線条を所定間隔をもって発光管に沿って一対の電極間に渡り配置することもできる。また、止め金具１２ａ、１２ｂは、本例のように発光管１の上下の管端部近傍に設けることは好適であるが、必ずしもその必要はなく、複数の線条間の距離が離れないように、少なくとも１つの止め金具により複数の線条を固定することでもよい。本発明では近接導体を複数の線条で構成しているが、代替案として近接導体を幅広の導体とすることも考えられる。しかし、近接導体を幅広の導体とした場合、ランプ点灯時に幅広の近接導体の影が目立つこととなるので実用的ではない。通常、３００Ｗのメタルハライドランプで使用される近接導体の線条の太さは０．２ｍｍ〜０．４ｍｍであるが、それより高電圧の７００Ｗでは０．４ｍｍ〜０．８ｍｍとなる。したがって、複数の線条に代えて幅広の導体とする場合には、上述の影の影響を無視できなくなるのである。次に、本実施例に係る近接導体１１の形状を詳細に説明する。
【００１４】
図２は、本発明による拡散形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの近接導体の一例を示す図である。本図は、上記図１に示した近接導体１１の詳細形状を示すものである。図示のように、２本の線条１１−１ａ、１１−１ｂは、１本の線条を途中の折返し部１１−２で折り返して形成したものである。折返し部１１−２は、発光管１の一方の端部の細管部１３ｂとほぼ同じ曲率に形成され、細管部１３ｂに通して固定される。線条１１−１ａおよび１１−１ｂの折返し部１１−２の反対側の端部はそれぞれ、発光管１の他方の端部の細管部１３ａとほぼ同じ曲率で鉤状部１１−３ａ、１１−３ｂとして形成されており、発光管１の端部の細管部１３ａにその弾性を利用して固定される。このように近接導体を構成することにより、近接導体の発光管への取り付けが容易かつ迅速にできるようになる。
【００１５】
本発明に係る近接導体１１により得られる性能を、従来例の近接導体で得られる性能と比較して、以下に説明する。ここで、従来例の近接導体とは、図２に示す近接導体１１のうち線条１１−１ｂおよび鉤状部１１−３ｂを欠いた近接導体を意味する。
【００１６】
まず、本実施例のランプ３本を、例えば、定格電力７００Ｗの高力率形水銀灯安定器で２００Ｖ入力電圧で始動試験したところ、電源投入後３秒以内に始動、点灯した。
【００１７】
これに対し、上記従来例のランプ３本を、同様に、始動試験したところ、電源投入後５〜１４秒以内に始動、点灯し、始動に要した時間の平均は９秒であった。すなわち、本実施例によれば、従来例と比べて、始動に要する時間を１／３程度に縮小することが出来る。従って、始動に伴う電極の消耗を１／３程度に縮小することが可能となった。なお、始動試験はＪＩＳ−Ｃ７６２３に則り実施した。
【００１８】
また更に比較の為に低ワットメタルハライドランプを試作し始動試験を行った。セラミック発光管１の内部には、始動ガスとして約１５ｋＰａのアルゴンガスと、バッファガスとして水銀５０ｍｇ、発光金属としてナトリウム、タリウム、並びに、ディスプロシウム等の希土類ヨウ化物が適量封入されている。電極間距離は２０ｍｍであり、定格入力２７０Ｗである。この発光管に本発明の近接導体を設けたランプ、並びに、従来例の近接導体を設けたランプを試作し、３００Ｗ用高力率水銀灯安定器を用いて始動試験を行った。この場合は、本発明の近接導体を用いた場合も、従来例の近接導体を用いた場合も、どちらの場合も電源投入後３秒以内に始動、点灯した。
【００１９】
これらの事実は、電極間距離の短い低ワットメタルハライドランプの場合には、局所的な電位勾配の大きな場所、すなわち、電極近傍で生じた微放電は比較的容易に電極間の放電に進展することを意味している。一方、電極間距離の長い高ワットメタルハライドランプの場合には、電極近傍で生じた微放電が電極間の放電に進展するには、その進展を促進する工夫が必要であることを示している。上述のように、複数の線条を有する近接導体を備えた本発明によれば、高ワットなメタルハライドランプにあっても始動用希ガスの圧力を減じることなく低いパルス電圧でランプを始動させることができるのである。
【産業上の利用可能性】
【００２０】
本発明は、低電圧始動形セラミックメタルハライドランプにおいてランプ始動性の改善を図ると共に、その寿命性能を改善するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【００２１】
【図１】本発明に係る始動器内蔵式の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの一実施例を示す構成図である。
【図２】本発明で用いられる近接導体の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【００２２】
１…セラミック発光管、２…外管バルブ、２ａ…球状部、２ｂ…ネック部、３…蛍光膜、４ａ、４ｂ…リード線、５…ステム、６…口金、７…グロー管、８…電流制限用抵抗、９…反射板、１０…始動器、１１…近接導体、１２ａ、１２ｂ…止め金具、１３ａ、１３ｂ…発光管端部の細管部
【技術分野】
【０００１】
本発明はメタルハライドランプに係り、特に低電圧始動形のセラミックメタルハライドランプに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
メタルハライドランプは、発光管内に水銀、希ガスのほかに発光金属をハロゲン化合物の形で封入し、これにより効率、演色性等を改善したランプである。このメタルハライドランプは、ハロゲン化合物が封入されていることから、始動性が悪く、始動のために高いパルス電圧を印加する方法が用いられてきている。この始動性を向上させ、低い始動電圧で確実に、かつ、短時間に始動させることが電極の消耗を防ぎ、また、光束維持率を高める上で重要である。
【０００３】
このため、石英ガラスからなる発光管を用いたメタルハライドランプでは、従来、始動補助極が多く用いられてきている。しかし近年、ランプの効率を高めるために、耐熱性の高いセラミックスを用いたセラミックメタルハライドランプが用いられるようになると、石英ガラスに比べてアルミナ等のセラミックスは熱伝導率が高いために電極封止部近傍の形状を小さく設計することとなり、そのために、始動補助極を設けることが困難となっている。そこで、ランプの始動性を高めるために、始動補助極に代わる手段として、近接導体を設けることが検討されている。例えば、非特許文献１には、一般照明用１５０Ｗセラミック発光管メタルハライドランプの発光管に近接導体を取り付けた例が示されている。また、特許文献１には、メタルハライドランプの発光管に近接または接触して近接導体を配置した例が示されている。
【非特許文献１】平成１０年度照明学会第３１回全国大会、Ｎｏ．３２、「一般照明用１５０Ｗセラミック発光管メタルハライドランプの検討」
【特許文献１】特開平１０−２９４０８５号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
ところで、メタルハライドランプは、高ワットになるにつれて電極間距離が長くなり、ますます始動性が悪くなる。そこで、始動性を改善するために、ランプ始動時に高電圧を印加することが考えられる。しかし、低電圧始動形のセラミックメタルハライドランプを始動するために高電圧を利用することは、ランプに悪影響を与えるのみならず、本来、高いパルス電圧を必要としない水銀ランプ用に開発された安定器にも大きなリスクを負わせることとなり、好ましくない。したがって、高ワットのセラミックメタルハライドランプでは、低いパルス電圧で始動することができる近接導体が特に重要となる。また、一方で、発光管内に封入する始動用希ガスの圧力を低くすることが、電極間距離の長いランプの始動電圧を低くすることは良く知られているが、始動用希ガスの圧力を低くすることは同時に電極の消耗を高めることも良く知られている。
【０００５】
従って本発明の目的は、セラミック発光管に封入する始動用希ガスの圧力を低下させることなく、高ワットなメタルハライドランプにあっても、その始動電圧を低下させることが可能なメタルハライドランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記目的は、一対の電極をもち、金属ハロゲン化物を封入したセラミック発光管と、前記セラミック発光管を始動するための始動器と、前記セラミック発光管に接触して配置した近接導体と、前記セラミック発光管、前記始動器および前記近接導体を収容する外管バルブとを備えたメタルハライドランプであって、前記近接導体が前記一対の電極とは電気的に絶縁されており、かつ、前記発光管に沿って前記一対の電極間に渡り複数の線条を有するように構成されたメタルハライドランプにより、達成される。ここで、本発明では、近接導体を電極と電気的に絶縁することにより、発光管内部にナトリウムハロゲン化物を封入した場合においても、ホトエレクトロンに起因するナトリム金属の漏出を防止することが出来る。また、発光管に沿って電極間に渡り近接導体を設けることにより、電位勾配の急峻な一端の電極近傍で生じる微放電を効率的に他端の電極まで誘導することが出来、従って、低い始動用パルス電圧で始動させることが可能となる。さらに、近接導体が複数の線条を有することにより、確率的に発生し、また、確率的に消滅する微放電とその進展をより確実に電極間の放電へと伸張させることが可能となり、結果的に、より低い始動用パルス電圧で始動させることが可能となる。
【０００７】
また、前記近接導体は、１本の線条を途中で折り返すことにより前記複数の線条を形成することができる。前記１本の線条を途中で折り返すことにより形成される折返し部は、前記発光管端部の細管部に通して固定することができる。前記近接導体の複数の線条は、少なくとも１つの止め金具により固定することができる。これにより、前記近接導体の１つの線条近傍で発生した微放電が、電極間の放電に進展しないで確率的に消滅したとしても、その微放電で生じたイオンや電子が近傍の他の線条によって形成される電位勾配により、再度微放電を形成し、結局は電極間の放電へと進展することとなる。このとき、前記近接導体の複数の線条間の距離が離れると、微放電の継続性が悪くなり、その効果が大きく減じられることとなるので、複数の線条間の距離が離れないように止め金具で固定するのが好ましい。
【発明の効果】
【０００８】
本発明によれば、セラミック発光管に封入する始動用希ガスの圧力を低下させることなく、高ワットなメタルハライドランプにあっても、その始動電圧を低下させることが可能なメタルハライドランプを得ることができる。すなわち、本発明では、複数の線条で構成した近接導体の作用によりその効果を大きく発揮させることが可能となり、高ワットのメタルハライドランプにあっても始動用希ガスの圧力を減じることなく低いパルス電圧でランプを始動させることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
以下、本発明の実施例について、添付図面を参照しながら説明する。
図１は、本発明に係るメタルハライドランプの一実施例を示す図である。本図は始動器内蔵式の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの構成を示すものであり、同図では、その内部構造が分かるように、その一部を切り欠いて示している。
【００１０】
セラミック発光管１は、図１に示すように、一例として、硬質ガラスからなる外管バルブ２の内部にステム５を介して気密に封止されており、そして、支持棒を兼ねたリード線４ａ、４ｂによって保持されている。リード線４ａ、４ｂは、発光管１の両端に設けられた細管部１３ａ、１３ｂを介して、発光管１の図示しない一対の電極にそれぞれ接続される。外管バルブ２の球状部２ａの内面には蛍光膜３が塗布されている。また、口金６は、上記外管バルブ２のネック部２ｂに、機械的にかしめ固定されており、これによってリード線との間が電気的に接続されている。
【００１１】
一方、グロー管７、電流制限用抵抗８、バイメタル（図示せず）からなる始動器１０は、リード線４ａ、４ｂに電気的に接続され、固定されている。反射板９は、例えば白色セラミック板からなり、上記外管バルブの球状部２ａとネック部２ｂと間の境界部分に配置されており、反射板９に設けた穴を貫通するリード線４ａ、４ｂによって固定されている。電流制限用抵抗８の一部は、反射板９に設けた穴を通じて、ランプ中心部に伸びている。図示のように、外管バルブの球状部２ａと反射板９とで概略球状を形成する。
【００１２】
外管バルブ２の内部には、窒素ガスが約二分の一気圧に減圧されて封入されている。一方、セラミック発光管１の内部には、始動ガスとして約１５ｋＰａのアルゴンガスと、バッファガスとして水銀７０ｍｇ、発光金属としてナトリウム、タリウム、並びに、ディスプロシウム等の希土類ヨウ化物が適量封入されている。電極間距離は６０ｍｍである。
【００１３】
近接導体１１は、例えば太さ０．２ｍｍのモリブデン線からなる。近接導体１１は、１本の線条を途中で折り返して２本の線条とすることができ、発光管１の外形に沿って接触し設けられている。２本の線条は互いに離れないように、２つの止め金具１２ａ、１２ｂにより発光管１の上下の管端部近傍でそれぞれ相互に固定され、発光管端部の細管部１３ａ、１３ｂの太さ程度に保たれている。ここでは、近接導体１１は２本の線条としているが、これに限定されず、３本以上の線条とすることもできる。また、本例では、近接導体１１は１本の線条を折り返して複数の線条としているが、これに限定されず、所望の長さの複数の線条を所定間隔をもって発光管に沿って一対の電極間に渡り配置することもできる。また、止め金具１２ａ、１２ｂは、本例のように発光管１の上下の管端部近傍に設けることは好適であるが、必ずしもその必要はなく、複数の線条間の距離が離れないように、少なくとも１つの止め金具により複数の線条を固定することでもよい。本発明では近接導体を複数の線条で構成しているが、代替案として近接導体を幅広の導体とすることも考えられる。しかし、近接導体を幅広の導体とした場合、ランプ点灯時に幅広の近接導体の影が目立つこととなるので実用的ではない。通常、３００Ｗのメタルハライドランプで使用される近接導体の線条の太さは０．２ｍｍ〜０．４ｍｍであるが、それより高電圧の７００Ｗでは０．４ｍｍ〜０．８ｍｍとなる。したがって、複数の線条に代えて幅広の導体とする場合には、上述の影の影響を無視できなくなるのである。次に、本実施例に係る近接導体１１の形状を詳細に説明する。
【００１４】
図２は、本発明による拡散形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの近接導体の一例を示す図である。本図は、上記図１に示した近接導体１１の詳細形状を示すものである。図示のように、２本の線条１１−１ａ、１１−１ｂは、１本の線条を途中の折返し部１１−２で折り返して形成したものである。折返し部１１−２は、発光管１の一方の端部の細管部１３ｂとほぼ同じ曲率に形成され、細管部１３ｂに通して固定される。線条１１−１ａおよび１１−１ｂの折返し部１１−２の反対側の端部はそれぞれ、発光管１の他方の端部の細管部１３ａとほぼ同じ曲率で鉤状部１１−３ａ、１１−３ｂとして形成されており、発光管１の端部の細管部１３ａにその弾性を利用して固定される。このように近接導体を構成することにより、近接導体の発光管への取り付けが容易かつ迅速にできるようになる。
【００１５】
本発明に係る近接導体１１により得られる性能を、従来例の近接導体で得られる性能と比較して、以下に説明する。ここで、従来例の近接導体とは、図２に示す近接導体１１のうち線条１１−１ｂおよび鉤状部１１−３ｂを欠いた近接導体を意味する。
【００１６】
まず、本実施例のランプ３本を、例えば、定格電力７００Ｗの高力率形水銀灯安定器で２００Ｖ入力電圧で始動試験したところ、電源投入後３秒以内に始動、点灯した。
【００１７】
これに対し、上記従来例のランプ３本を、同様に、始動試験したところ、電源投入後５〜１４秒以内に始動、点灯し、始動に要した時間の平均は９秒であった。すなわち、本実施例によれば、従来例と比べて、始動に要する時間を１／３程度に縮小することが出来る。従って、始動に伴う電極の消耗を１／３程度に縮小することが可能となった。なお、始動試験はＪＩＳ−Ｃ７６２３に則り実施した。
【００１８】
また更に比較の為に低ワットメタルハライドランプを試作し始動試験を行った。セラミック発光管１の内部には、始動ガスとして約１５ｋＰａのアルゴンガスと、バッファガスとして水銀５０ｍｇ、発光金属としてナトリウム、タリウム、並びに、ディスプロシウム等の希土類ヨウ化物が適量封入されている。電極間距離は２０ｍｍであり、定格入力２７０Ｗである。この発光管に本発明の近接導体を設けたランプ、並びに、従来例の近接導体を設けたランプを試作し、３００Ｗ用高力率水銀灯安定器を用いて始動試験を行った。この場合は、本発明の近接導体を用いた場合も、従来例の近接導体を用いた場合も、どちらの場合も電源投入後３秒以内に始動、点灯した。
【００１９】
これらの事実は、電極間距離の短い低ワットメタルハライドランプの場合には、局所的な電位勾配の大きな場所、すなわち、電極近傍で生じた微放電は比較的容易に電極間の放電に進展することを意味している。一方、電極間距離の長い高ワットメタルハライドランプの場合には、電極近傍で生じた微放電が電極間の放電に進展するには、その進展を促進する工夫が必要であることを示している。上述のように、複数の線条を有する近接導体を備えた本発明によれば、高ワットなメタルハライドランプにあっても始動用希ガスの圧力を減じることなく低いパルス電圧でランプを始動させることができるのである。
【産業上の利用可能性】
【００２０】
本発明は、低電圧始動形セラミックメタルハライドランプにおいてランプ始動性の改善を図ると共に、その寿命性能を改善するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【００２１】
【図１】本発明に係る始動器内蔵式の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの一実施例を示す構成図である。
【図２】本発明で用いられる近接導体の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【００２２】
１…セラミック発光管、２…外管バルブ、２ａ…球状部、２ｂ…ネック部、３…蛍光膜、４ａ、４ｂ…リード線、５…ステム、６…口金、７…グロー管、８…電流制限用抵抗、９…反射板、１０…始動器、１１…近接導体、１２ａ、１２ｂ…止め金具、１３ａ、１３ｂ…発光管端部の細管部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
一対の電極をもち、金属ハロゲン化物を封入したセラミック発光管と、前記セラミック発光管を始動するための始動器と、前記セラミック発光管に接触して配置した近接導体と、前記セラミック発光管、前記始動器および前記近接導体を収容する外管バルブとを備えたメタルハライドランプであって、前記近接導体が前記一対の電極とは電気的に絶縁されており、かつ、前記発光管に沿って前記一対の電極間に渡り複数の線条を有するように構成されたことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項２】
前記近接導体が、１本の線条を途中で折り返すことにより前記複数の線条を形成したものであることを特徴とする請求項１記載のメタルハライドランプ。
【請求項３】
前記１本の線条を途中で折り返すことにより形成される折返し部が、前記発光管端部の細管部に通されて固定されることを特徴とする請求項２記載のメタルハライドランプ。
【請求項４】
前記近接導体の複数の線条が、少なくとも１つの止め金具により固定されることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載のメタルハライドランプ。
【請求項１】
一対の電極をもち、金属ハロゲン化物を封入したセラミック発光管と、前記セラミック発光管を始動するための始動器と、前記セラミック発光管に接触して配置した近接導体と、前記セラミック発光管、前記始動器および前記近接導体を収容する外管バルブとを備えたメタルハライドランプであって、前記近接導体が前記一対の電極とは電気的に絶縁されており、かつ、前記発光管に沿って前記一対の電極間に渡り複数の線条を有するように構成されたことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項２】
前記近接導体が、１本の線条を途中で折り返すことにより前記複数の線条を形成したものであることを特徴とする請求項１記載のメタルハライドランプ。
【請求項３】
前記１本の線条を途中で折り返すことにより形成される折返し部が、前記発光管端部の細管部に通されて固定されることを特徴とする請求項２記載のメタルハライドランプ。
【請求項４】
前記近接導体の複数の線条が、少なくとも１つの止め金具により固定されることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載のメタルハライドランプ。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２００７−４８５３２（Ｐ２００７−４８５３２Ａ）
【公開日】平成１９年２月２２日（２００７．２．２２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−２３０１５５（Ｐ２００５−２３０１５５）
【出願日】平成１７年８月８日（２００５．８．８）
【出願人】（０００００５４７４）日立ライティング株式会社 (130)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年２月２２日（２００７．２．２２）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年８月８日（２００５．８．８）
【出願人】（０００００５４７４）日立ライティング株式会社 (130)
【Ｆターム（参考）】
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