説明

メタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンハイドレートからのメタンガス生産装置

【課題】温度と圧力の相平衡状態を変化させることなくメタンハイドレートを分解してメタンガスを生産することが可能なメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置を提供する。
【解決手段】海底あるいは湖底に存在するメタンハイドレート2からメタンガスMを生産する際に、開口部3aを備えて形成した解離チャンバー3を、開口部3aを通じて解離チャンバー3の内部にメタンハイドレート2が臨むように設置し、解離チャンバー3の内部にメタン濃度が低い水Wを供給してメタンハイドレート2からメタンを解離させ、メタンが溶解した解離チャンバー3の内部の水W’を揚水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底あるいは湖底に存在するメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石油資源に替わる新資源としてメタンハイドレートが注目を集めており、我が国近海は、世界最大のメタンハイドレート埋蔵量を誇ると言われている。このメタンハイドレートは、水素結合による水分子の籠状構造の中にメタンが入り込んだ氷状の固体結晶であり、低温且つ高圧下で安定的に存在する。そして、永久凍土の地下数百m〜千mの堆積物中や海底、湖底でこの低温、高圧条件が満たされるため、メタンハイドレートは、永久凍土や海底、湖底の地盤内に存在している。
【0003】
また、海底(湖底)のメタンハイドレートは、水深数百m以深の海底(湖底)地盤の地下数百mの深層部に存在する深層型メタンハイドレートと、海底面(湖底面)に露出するなどして浅層部に存在する表層型メタンハイドレートとがある。そして、現在、我が国でも検討が進められている南海トラフなどの深層型メタンハイドレートに対し、表層型メタンハイドレートの研究例は世界的にもまだ限られており、我が国では、オホーツク海及び日本海直江津沖の表層型メタンハイドレートに関する調査研究が開始されたばかりである。しかしながら、資源開発の観点からは、表層型メタンハイドレートの方が経済的な生産が可能であるため、その資源量の評価と併せて諸物性の解明が急務とされている。
【0004】
また、メタンハイドレートは、僅かに温度、圧力条件を変化させるだけで相平衡状態が崩れ、分解(解離)させることができる。このため、深層型メタンハイドレートにおいては、メタンガスを生産する手法として、熱刺激法、減圧法、インヒビター注入法など温度や圧力の条件を変化させ相平衡状態を変化させることによってメタンハイドレートをメタンガスと水に分解し、メタンガスを回収する手法が検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
ここで、図8は、メタンハイドレートの温度と圧力の相平衡条件を示したものである。この図において、実線は、メタンハイドレートが生成される境界を示しており、図中左上側(低温、高圧側)がメタンハイドレートの安定領域である。そして、水域(海、湖)では、水深約400m以深でこの温度、圧力条件に達するが、海底(湖底)の地盤温度が地下深度とともに増加するため、メタンハイドレートの生成条件が満たされる下限の地盤深度が存在し、この地盤深度は概ね地下100m〜300m程度である。深層型メタンハイドレートは、この下限地盤深度の直上に存在し、言い換えれば温度と圧力の相平衡条件に極めて近い状態で存在している。
【0006】
また、図8に、深層型メタンハイドレートとして南海トラフの代表的なメタンハイドレート、表層型メタンハイドレートとしてバイカル湖とオホーツク海のそれぞれの代表的なメタンハイドレートの温度、圧力条件を示している。この図示から、深層型メタンハイドレートに比べ、表層型メタンハイドレートは、温度と圧力の相平衡条件から離れた過冷却度の高い領域にあることが分かる。
【特許文献1】特開2004−321952号公報
【特許文献2】特開2004−204562号公報
【特許文献3】特開平9−158662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そして、このように表層型メタンハイドレートは、温度と圧力の相平衡条件から離れた過冷却度の高い領域で安定しているため、熱刺激法、減圧法、インヒビター注入法等の温度や圧力の条件を変化させてメタンガスを生産する手法を用いた場合、温度と圧力の相平衡状態を変化させるために大きなエネルギーが必要になる。
【0008】
また、表層型メタンハイドレートは、深層型メタンハイドレートと異なり、バッファとなる地盤が存在しないため、熱刺激法、減圧法、インヒビター注入法等によるメタンガスの生産中に予期せぬメタンガスの漏洩が発生すると、直接水中にメタンガスが放出されるおそれがある。このため、熱刺激法、減圧法、インヒビター注入法等の温度や圧力の条件を変化させてメタンガスを生産する場合には、海底、湖底の生態系や地球環境への影響が懸念される。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、温度と圧力の相平衡状態を変化させることなくメタンハイドレートを分解してメタンガスを生産することが可能なメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0011】
本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産方法は、海底あるいは湖底に存在するメタンハイドレートからメタンガスを生産する方法であって、開口部を備えて形成した解離チャンバーを、前記開口部を通じて前記解離チャンバーの内部に前記メタンハイドレートが臨むように設置し、前記解離チャンバーの内部にメタン濃度が低い水を供給して前記メタンハイドレートからメタンを解離させ、メタンが溶解した前記解離チャンバーの内部の水を揚水することを特徴とする。
【0012】
この発明においては、メタン濃度が低い水を解離チャンバーの内部に供給してメタンハイドレートと接触させることにより、温度や圧力の相平衡状態を変化させることなく、メタンハイドレートからメタンを効率的に解離させることが可能になる。すなわち、表層型メタンハイドレートの周辺の海水あるいは湖水はメタン濃度が非常に高い状態であり、このように周辺の海水あるいは湖水のメタン濃度が高いことによって安定的に表層型メタンハイドレートが存在している。このため、メタン濃度が低い水をメタンハイドレートに接触させることにより、メタンハイドレートからメタンを解離させることが可能になる。
【0013】
また、このとき、メタンが海底あるいは湖底における高圧環境下でメタンハイドレートから解離するため、メタンハイドレートから解離するとともに解離チャンバーの内部の水に溶解する。そして、この解離チャンバーの内部の水を揚水し、ある深度まで上昇するとともに、溶解したメタンがガス化して水から自動的に自噴することになり、容易に水とメタンガスとを分離してメタンガスを生産(回収)することが可能になる。
【0014】
また、本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産方法においては、浅水域の海水あるいは湖水を前記解離チャンバーの内部に供給することが望ましい。
【0015】
この発明においては、浅水域の海水あるいは湖水を解離チャンバーの内部に供給することで、海水あるいは湖水を利用してメタン濃度が低い水を解離チャンバーの内部に供給することが可能になる。これにより、効率的にメタンハイドレートからメタンを解離させることが可能になるとともに、効率的にメタンガスを生産することが可能になる。
【0016】
さらに、本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産方法においては、前記解離チャンバーにウォータージェット機構が設けられ、前記ウォータージェット機構によって、前記解離チャンバーに送られた前記メタン濃度が低い水を、前記解離チャンバーの前記開口部を形成する先端部側から前記開口部を通じて略軸線方向外側に向けて、及び/又は前記解離チャンバーの内面側から略軸線直交方向内側に向けて噴射させることがより望ましい。
【0017】
この発明においては、ウォータージェット機構で、解離チャンバーに送られたメタン濃度が低い水を解離チャンバーの前記開口部を形成する先端部側から前記開口部を通じて略軸線方向外側に向けて噴射させることにより、例えばメタンハイドレート上の地盤を噴射した水によって切削除去することができ、先端部をメタンハイドレートに貫入させて解離チャンバーを好適に設置することが可能になる。
【0018】
また、ウォータージェット機構で、解離チャンバーに送られたメタン濃度が低い水を解離チャンバーの内面側から略軸線直交方向内側に向けて噴射させることにより、例えば解離チャンバーの内部に配されたメタンハイドレート上の地盤を切削除去するとともに、解離チャンバーの内部で撹拌することが可能になる。そして、解離チャンバーの内部の泥水を揚水することで、メタンハイドレートを解離チャンバーの内部を臨むように露出させることが可能になる。さらに、メタンハイドレートを露出させた状態で、内側に向けて水を噴射させて解離チャンバーの内部を撹拌することにより、メタンハイドレートをより効率的に解離させることが可能になる。
【0019】
本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置は、海底あるいは湖底に存在するメタンハイドレートからメタンガスを生産するための装置であって、開口部を備えて形成され、前記開口部を通じて前記メタンハイドレートが内部を臨むように設置される解離チャンバーと、該解離チャンバーに一端が繋げられ、前記解離チャンバーの内部にメタン濃度が低い水を供給するための注水管と、前記解離チャンバーに一端が繋げられ、前記解離チャンバーの内部の水を揚水するための揚水管とを備えていることを特徴とする。
【0020】
この発明においては、注水管を通じてメタン濃度が低い水を解離チャンバーの内部に供給してメタンハイドレートと接触させることが可能になる。これにより、温度や圧力の相平衡状態を変化させることなく、このメタンハイドレートからメタンを効率的に解離させることが可能になる。また、解離したメタンが解離チャンバーの内部の水に溶解するため、揚水管を通じてこの水を揚水した際には、ある深度まで上昇するとともに、溶解したメタンがガス化して水から自動的に解離し自噴することになる。このため、容易に水とメタンガスとを分離してメタンガスを生産(回収)することが可能になる。
【0021】
また、本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置においては、前記開口部を通じて前記メタンハイドレートが内部を臨むように前記解離チャンバーを設置した状態で、前記注水管の他端から浅水域の海水あるいは湖水を吸入し、該浅水域のメタン濃度が低い海水あるいは湖水を前記解離チャンバーの内部に供給するように構成されていることが望ましい。
【0022】
この発明においては、注水管の他端から浅水域の海水あるいは湖水を吸入し、この吸入した浅水域の海水あるいは湖水を、注水管を通じて解離チャンバーの内部に供給する。これにより、海水あるいは湖水を利用してメタン濃度が低い水を解離チャンバーの内部に供給することが可能になる。また、揚水管を通じて解離チャンバーの内部の海水あるいは湖水を揚水してメタンガスを生産するとともに、自動的に注水管の他端から浅水域の海水あるいは湖水を吸入させ、解離チャンバーの内部にこのメタン濃度が低い浅水域の海水あるいは湖水を供給することが可能になる。これにより、揚水管を通じて解離チャンバーの内部の海水あるいは湖水を揚水することより、効率的にメタンガスの生産(回収)を行うことが可能になる。
【0023】
さらに、本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置においては、前記注水管を外管とし、前記揚水管を内管として、前記注水管と前記揚水管が二重管構造で構成されており、前記注水管の他端側に、前記浅水域の海水あるいは湖水を吸入して前記解離チャンバーの内部に供給するためのストレーナーが設けられていてもよい。
【0024】
この発明においては、揚水管を通じて解離チャンバーの内部の海水あるいは湖水を揚水するとともに、自動的に注水管の他端側に設けたストレーナーからメタン濃度が低い浅水域の海水あるいは湖水を注水管に吸入させて解離チャンバーの内部に供給することが可能になる。これにより、揚水管を通じて解離チャンバーの内部の海水あるいは湖水を揚水することより、効率的にメタンガスの生産(回収)を行うことが可能になる。
【0025】
また、本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置において、前記解離チャンバーには、前記注水管から送られた前記メタン濃度が低い水を噴射させるウォータージェット機構が設けられ、該ウォータージェット機構は、前記解離チャンバーの前記開口部を形成する先端部側から前記開口部を通じて略軸線方向外側に向けて前記メタン濃度が低い水を噴射させる第1噴射管、及び/又は前記解離チャンバーの内面側から略軸線直交方向内側に向けて前記メタン濃度が低い水を噴射させる第2噴射管を備えて構成されていることがより望ましい。
【0026】
この発明においては、ウォータージェット機構で、解離チャンバーに送られたメタン濃度が低い水を解離チャンバーの前記開口部を形成する先端部側から前記開口部を通じて略軸線方向外側に向けて噴射させることにより、例えばメタンハイドレート上の地盤を噴射した水によって切削除去することができ、先端部をメタンハイドレートに貫入させて解離チャンバーを好適に設置することが可能になる。
【0027】
また、ウォータージェット機構で、解離チャンバーに送られたメタン濃度が低い水を解離チャンバーの内面側から略軸線直交方向内側に向けて噴射させることにより、例えば解離チャンバーの内部に配されたメタンハイドレート上の地盤を切削除去するとともに、解離チャンバーの内部で撹拌することが可能になる。そして、解離チャンバーの内部の泥水を揚水することで、メタンハイドレートを解離チャンバーの内部を臨むように露出させることが可能になる。さらに、メタンハイドレートを露出させた状態で、内側に向けて水を噴射させて解離チャンバーの内部を撹拌することにより、メタンハイドレートをより効率的に解離させることが可能になる。
【0028】
さらに、本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置において、前記ウォータージェット機構は、前記第1噴射管と前記第2噴射管とをそれぞれ複数備え、前記解離チャンバーの周方向に、前記第1噴射管と前記第2噴射管を交互に配置して構成されていることがさらに望ましい。
【0029】
この発明においては、複数の第1噴射管と第2噴射管が解離チャンバーの周方向に交互に配置されているため、複数の第1噴射管から噴射した水によって、例えば解離チャンバーの先端部周辺の地盤全体を切削除去して、この解離チャンバーの先端部全体を均等にメタンハイドレートに貫入させることが可能になる。また、複数の第2噴射管から噴射した水によって、例えば解離チャンバーの内部に配された地盤を確実に切削除去するとともに、解離チャンバーの内部で撹拌することが可能になり、メタンハイドレートを確実に解離チャンバーの内部に露出させることが可能になる。これにより、メタンハイドレートをさらに効率的に解離させることが可能になる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置によれば、メタン濃度が低い水を解離チャンバーの内部に供給してメタンハイドレートと接触させることにより、温度や圧力の相平衡状態を変化させることなく、メタンハイドレートからメタンを効率的に解離させることが可能になる。また、解離チャンバーの内部の水を揚水することで、この水に溶解したメタンがガス化して自動的に解離し自噴するため、容易に水とメタンガスとを分離してメタンガスを生産(回収)することが可能になる。
【0031】
そして、このように、メタン濃度が低い水を解離チャンバー内でのみメタンハイドレートに接触させて揚水するだけで、メタンをメタンハイドレートから解離させ、メタンガスを生産(回収)できる。このため、従来のように加熱してメタンハイドレートからメタンガスを生産する方法と比較し、海底、湖底の生態系や地球環境に与える影響を少なくすることが可能になる。
【0032】
また、メタンハイドレートからのメタンの解離が解離チャンバーの内部でのみ限定的に生じるため、解離量の制御を容易に行えるとともに、予期せぬメタンガスの漏洩が発生することを防止しながらメタンガスを生産することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置について説明する。本実施形態は、海底(あるいは湖底)に存在するメタンハイドレートからメタンガスを生産する方法及びこれに用いるメタンガス生産装置に関し、特に表層型メタンハイドレートからメタンガスを好適に生産可能なメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置に関するものである。
【0034】
本実施形態のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置Aは、図1に示すように、メタンガス回収船1と、メタンハイドレート2からメタンを解離させるための解離チャンバー3と、解離チャンバー3を着脱可能に支持してメタンガス回収船1によって浮遊状態で曳航するためのフロート4と、解離チャンバー3の内部にメタン濃度が低い水(浅水域の海水W)を供給するための注水管5と、解離チャンバー3の内部の水W’を揚水するための揚水管6と、ガスセパレーター7と、図示せぬ揚水ポンプとを備えて構成されている。
【0035】
解離チャンバー3は、略円筒状に形成されるとともに、上端が閉塞し、下端に開口部3aを備えて形成されている。また、上端側には、注水管5の一端が繋がる注水口3bと、揚水管6の一端が繋がる揚水口3cとが設けられている。さらに、解離チャンバー3は、メタンガス回収船1のワイヤドラムに巻き回されたワイヤ8の一端が上端に接続されている。そして、メタンガス回収船1による曳航時には、上端側がフロート4に着脱可能に繋げられて浮遊した状態で曳航される。また、メタンガス生産時(メタンガス回収時)には、フロート4から切り離され、メタンガス回収船1のワイヤドラムからワイヤ8を繰り出すとともに海底9まで降下させて設置される。このとき、解離チャンバー3は、下端側を海底9の地盤Gに貫入させ、開口部3aを通じて表層型メタンハイドレート2が内部を臨むように設置される。
【0036】
注水管5と揚水管6には、それぞれ硬質ポリエチレン管が用いられており、解離チャンバー3を海底9の所定位置に設置した状態で、注水管5は、その他端が浅水域に位置する長さで形成されている。また、注水管5には、開閉弁が設けられている。一方、揚水管6は、その他端が海水面10よりも上方に位置する長さで形成され、この他端がガスセパレーター7に接続されている。また、揚水管6は、ガスセパレーター7を介して揚水ポンプに接続して設けられるとともに、開閉弁が設けられている。そして、揚水管6の開閉弁を開放して揚水ポンプを駆動することにより、解離チャンバー3の内部の海水(水W’)が、揚水管6内をガスセパレーター7に向けて流通して揚水される。
【0037】
ガスセパレーター7は、揚水管6から揚水した解離チャンバー3の内部の海水W(W’)とメタンガスMとを分離して、海水Wを海に排水するとともに、回収したメタンガスMを図示せぬタンクなどに送るように構成されている。
【0038】
ついで、上記構成からなるメタンガス生産装置Aを用いて海底9の表層型メタンハイドレート2からメタンガスMを生産(回収)する方法について説明するとともに、本実施形態のメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置Aの作用及び効果について説明する。
【0039】
はじめに、フロート4に取り付けて浮遊状態にした解離チャンバー3をメタンガス回収船1で曳航して所定位置に配置する。ついで、解離チャンバー3の注水口3bに注水管5の一端を、揚水口3cに揚水管6の一端をそれぞれ接続するとともに揚水管6の他端をガスセパレーター7に接続し、解離チャンバー3をフロート4から取り外す。
【0040】
そして、メタンガス回収船1のワイヤドラムからワイヤ8を繰り出すとともに解離チャンバー3を降下させ、解離チャンバー3を、下端側を海底9の地盤Gに貫入させて設置する。これにより、解離チャンバー3は、開口部3aを通じてその内部に表層型メタンハイドレート2が臨むように設置される。また、解離チャンバー3を所定位置に設置した段階で、注水管5の他端が浅水域に配置され、揚水管6のガスセパレーター7に接続した他端が海水面10よりも上方に配置される。
【0041】
このように解離チャンバー3を設置した段階で、注水管5と揚水管6のそれぞれの開閉弁を開放する。そして、揚水ポンプを駆動し、解離チャンバー3の内部の海水W’を揚水管6で揚水する。このように揚水を行うと、注水管5の他端から浅水域の海水Wが注水管5内に吸入され、この海水Wが解離チャンバー3の内部に自動的に供給される。
【0042】
ここで、表層型メタンハイドレート2は、メタンが先ず海水に溶解し、この海水のメタン濃度が飽和状態となって生成が始まることが知られている。このため、表層型メタンハイドレート2の周辺の海水(海底9付近の海水)は、メタン濃度が極めて高くなっており、このように周辺の海水のメタン濃度が極めて高い状態であることによって、メタンハイドレート2は安定した状態で存在している。
【0043】
そして、本実施形態においては、メタン濃度が低い浅水域の海水Wを解離チャンバー3の内部に供給して、表層型メタンハイドレート2からメタンを解離させる。すなわち、従来のメタンガス生産方法のように熱を加えたり、減圧するなどして温度と圧力の相平衡状態を変化させるのではなく、メタン濃度が低い海水Wを表層型メタンハイドレート2に接触させることにより、表層型メタンハイドレート2からメタンを解離させる。このとき、浅水域の海水Wを解離チャンバー3の内部に供給するとともに、表層型メタンハイドレート2とこの海水Wが混合、撹拌されることで、表層型メタンハイドレートからのメタンの解離が促進される。そして、解離したメタンは、海底付近が高圧であるが故にメタン濃度が低い解離チャンバー3の内部の海水Wに溶解することになる。
【0044】
このようにメタンが溶解した海水W’が解離チャンバー3内から揚水管6を通じて揚水される。このとき、海水W’がある深度まで上昇すると、この海水W’に溶解したメタンがガス化して自噴し、海水W’から自動的に解離して海水面10上のガスセパレーター7に導かれる。これにより、ガスセパレーター7で容易に海水WとメタンガスMが分離され、海水Wを海に排出し、メタンガスMがタンクなどに回収される。
【0045】
そして、上記のように揚水ポンプの駆動とともに浅水域のメタン濃度が低い海水Wを解離チャンバー3に順次供給し、解離チャンバー3からの海水W’を順次揚水することで、表層型メタンハイドレート2からメタンガスMが順次生産されてゆく。
【0046】
したがって、本実施形態のメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置Aにおいては、メタン濃度が低い浅水域の海水Wを解離チャンバー3の内部に供給して表層型メタンハイドレート2と接触させることにより、温度や圧力の相平衡状態を変化させることなく、表層型メタンハイドレート2からメタンを効率的に解離させることが可能になる。
【0047】
また、このとき、メタンが海底9における高圧環境下で表層型メタンハイドレート2から解離するため、表層型メタンハイドレート2から解離するとともにこのメタンが解離チャンバー3の内部の海水Wに溶解する。そして、解離チャンバー3の内部の海水W’を揚水し、ある深度まで上昇するとともに、溶解したメタンがガス化して自噴することになるため、海水W’から自動的にメタンガスMを分離することができ、容易に海水WとメタンガスMとを分離しメタンガスMを生産(回収)することが可能になる。
【0048】
そして、このように、メタン濃度が低い海水Wを解離チャンバー3内でのみ表層型メタンハイドレート2に接触させて揚水するだけで、メタンを表層型メタンハイドレート2から解離させ、メタンガスMを生産できる。このため、従来のように加熱してメタンハイドレート2からメタンガスMを生産する方法と比較し、海底9の生態系や地球環境に与える影響を少なくすることが可能になる。
【0049】
また、表層型メタンハイドレート2からのメタンの解離が解離チャンバー3の内部でのみ限定的に生じるため、解離量の制御を容易に行えるとともに、予期せぬメタンガスMの漏洩が発生することを防止しながらメタンガスMを生産することが可能になる。
【0050】
さらに、本実施形態においては、浅水域の海水Wを解離チャンバー3の内部に供給することで、海水Wを利用してメタン濃度が低い水を解離チャンバー3の内部に供給することが可能になる。これにより、効率的に表層型メタンハイドレート2からメタンを解離させることが可能になるとともに、効率的にメタンガスMを生産することが可能になる。
【0051】
以上、本発明に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置の第1実施形態について説明したが、本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、第1実施形態では、解離チャンバー3にそれぞれ個別に注水管5と揚水管6を接続して、注水管5の他端から浅水域のメタン濃度が低い海水Wを解離チャンバー3の内部に供給し、解離チャンバー3内のメタンが溶解した海水W’を揚水管6で揚水するものとした。これに対し、例えば図2に示すように、注水管5と揚水管6を二重管構造で構成し、外管の注水管5及び内管の揚水管6とを解離チャンバー3の内部と連通するように接続するようにしてもよい。また、揚水管6の他端をガスセパレーター7に接続し、解離チャンバー3を海底9の所定位置に設置した状態で浅水域に配置される注水管5の他端にストレーナー11を設け、さらに開閉弁12を設ける。そして、このように構成した場合には、開閉弁12を開放するとともに、ガスセパレーター7を介して揚水管6の他端に繋がる揚水ポンプ13を駆動して、揚水管6を通じて解離チャンバー3内の海水W’を揚水するとともに、ストレーナー12を通じて浅水域のメタン濃度が低い海水Wが外管の注水管5と内管の揚水管6の間を流通して解離チャンバー3内に供給される。これにより、メタン濃度が低い海水Wを解離チャンバー3内に供給するとともに表層型メタンハイドレート2からメタンが解離する。よって、この解離したメタンが解離チャンバー3内の海水Wに溶解し、海水W’を順次揚水管6で揚水することによって、本実施形態と同様に、メタンガスMを生産(回収)することが可能になる。
【0052】
また、第1実施形態では、海底9の表層型メタンハイドレート2からメタンガスMを生産するものとして説明を行ったが、湖底の表層型メタンハイドレート2からメタンガスMを生産する場合においても、本実施形態と同様にしてメタンガスMを効率的に生産することが可能である。さらに、適宜手段によって深層型メタンハイドレートを海水や湖水に露出させることができ、解離チャンバー3内の海水や湖水を深層型メタンハイドレートに接触させることが可能であれば、深層型メタンハイドレートからメタンガスMを生産するために、本発明を適用してもよい。
【0053】
ついで、図3から図7を参照し、本発明の第2実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置について説明する。
【0054】
本実施形態のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置Bは、図3に示すように、メタンガス回収船1と、メタンハイドレート2からメタンを解離させるための解離チャンバー20と、解離チャンバー20を着脱可能に支持してメタンガス回収船1によって浮遊状態で曳航するためのフロート4と、解離チャンバー20の内部にメタン濃度が低い水(浅水域の海水W)を供給するための注水管5と、解離チャンバー20の内部の水W’を揚水するための揚水管6と、ガスセパレーター7と、送水ポンプ21と、揚水ポンプ22とを備えて構成されている。
【0055】
本実施形態の解離チャンバー20は、図4から図6に示すように、上端(後端部23a)が閉塞し、下端(先端部23b)に開口部23cを備えて略円筒状に形成したチャンバー本体部23の内部にウォータージェット機構24を一体に設けて構成されている。また、チャンバー本体部23は、上端側に互いに区画された環状の第1室23dと第2室23eを備えて形成されている。そして、チャンバー本体部23は、一端側が2つに分岐して形成された注水管5の一方の分岐管5aを第1室23dに、他方の分岐管5bを第2室23eにそれぞれ接続して、注水管5と繋げられている。
【0056】
一方、ウォータージェット機構24は、複数の第1噴射管24aと第2噴射管24bを備え、これら第1噴射管24aと第2噴射管24bをチャンバー本体部23(解離チャンバー20)の周方向に所定の間隔をあけて交互に配設して構成されている。
【0057】
第1噴射管24aと第2噴射管24bはそれぞれ、チャンバー本体部23(解離チャンバー20)の内面に固設されたアダプター25によって支持されており、先端をチャンバー本体部23の開口部23cを形成する下端(先端部23b)付近に配し、解離チャンバー20の軸線O1方向に沿って上端(後端部23a)側に向けて延設されている。また、第1噴射管24aはその後端をチャンバー本体部23の第1室23dに接続して設けられ、第2噴射管24bはその後端を第2室23eに接続して設けられている。
【0058】
また、第1噴射管24aと第2噴射管24bはそれぞれ、図4及び図7に示すように、先端に噴射ノズル26を備えて形成されている。そして、第1噴射管24aは、注水管5から第1室23dに浅水域の海水Wが送られるとともにこの第1室23dの浅水域の海水Wが流通して、その先端の噴射ノズル26から浅水域の海水Wを噴射させる。また、第2噴射管24bは、注水管5から第2室23eに浅水域の海水Wが送られるとともにこの第2室23eの浅水域の海水Wが流通して、その先端の噴射ノズル26から浅水域の海水Wを噴射させる。
【0059】
このとき、図3、図4及び図7に示すように、第1噴射管24aは、チャンバー本体部23(解離チャンバー20)の開口部23cを形成する先端部23b側から開口部23cを通じて略軸線O1方向外側に向けて浅水域の海水Wを噴射させるように、噴射ノズル26が形成されている。これに対し、第2噴射管24aは、チャンバー本体部23(解離チャンバー20)の内面側から略軸線O1直交方向内側に向けて浅水域の海水Wを噴射させるように、噴射ノズル26が形成されている。
【0060】
ついで、上記構成からなるメタンガス生産装置Bを用いて海底の表層型メタンハイドレートからメタンガスを生産(回収)する方法について説明するとともに、本実施形態のメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置Bの作用及び効果について説明する。
【0061】
本実施形態のメタンガス生産装置Bを用いて海底の表層型メタンハイドレートからメタンガスMを生産する際には、図3に示すように、フロート4に取り付けて浮遊状態にした解離チャンバー20をメタンガス回収船1で曳航して所定位置に配置する。そして、解離チャンバー20に注水管5と揚水管6をそれぞれ接続し、メタンガス回収船1のワイヤドラムからワイヤ8を繰り出すとともに解離チャンバー20を降下させて、解離チャンバー20を海底9の地盤G上に設置する。このとき、メタンガス回収船1に設けたGPS34、方位計35、トランスデューサー36、注入管5に設けたトランスポンダー37を用いて、解離チャンバー20を海底9の所定位置に設置する。
【0062】
ついで、一方向開閉弁29と双方向開閉弁30を適宜開閉操作するとともに送水ポンプ21を駆動させる。このように送水ポンプ21の駆動を開始すると、浅水域の海水Wが取水され、注水管5を通じて解離チャンバー20の第1室23dと第2室23eに浅水域の海水Wが供給される。さらに、第1室23dと第2室23eにそれぞれ送られた浅水域の海水Wがウォータージェット機構24の第1噴射管24aと第2噴射管24bを流通し、これら第1噴射管24aと第2噴射管24bの噴射ノズル26からそれぞれ噴射される。このとき、例えば第1噴射管24aと第2噴射管24bの噴射ノズル26から浅水域の海水Wをその流速が10m/s以上となるように噴射させる。
【0063】
また、このように送水ポンプ21を駆動して、浅水域の海水Wを第1噴射管24aと第2噴射管24bから噴射させるとともに、一方向開閉弁31と双方向開閉弁32を適宜開閉操作した上で揚水ポンプ22の駆動を開始する。これにより、解離チャンバー20(チャンバー本体部23)の内部の海水W’の揚水を開始する。
【0064】
そして、第1噴射管24aによって、浅水域の海水Wがチャンバー本体部23の先端部23b側から軸線O1方向外側に向けて噴射されるため、この噴射した海水Wによってメタンハイドレート2上の地盤G1(G)が切削除去される。これにより、解離チャンバー20は、その先端部23bがメタンハイドレート2に徐々に貫入されてゆき、先端部23dをメタンハイドレート2に貫入させた好適な状態で設置される。
【0065】
また、これとともに、第2噴射管24bによって、浅水域の海水Wが解離チャンバー20(チャンバー本体部23)の内面側から略軸線O1直交方向内側に向けて噴射させるため、この噴射した海水Wによって解離チャンバー20の内部に配されたメタンハイドレート2上の地盤G1が切削除去される。さらに、第2噴射管24bから噴射した海水Wによって、地盤G1を切削除去するとともに解離チャンバー20の内部の海水W’が撹拌される。これにより、揚水ポンプ22によって泥水W’’が汲み上げられて確実に地盤G1が除去され、メタンハイドレート2が解離チャンバー20の内部を臨むように露出される。
【0066】
また、このように地盤G1を切削除去してメタンハイドレート2を露出させた状態で、さらに第2噴射管24bから海水Wを噴射させ、メタンハイドレート2を切削するとともに解離チャンバー20の内部の海水W’を撹拌することによって、メタンハイドレート2が効率的に解離し、解離チャンバー20内の海水W’にメタンが溶解する。
【0067】
そして、このようにメタンが溶解した海水W’が解離チャンバー3内から揚水管6を通じて揚水される際に、第1実施形態と同様、海水W’がある深度まで上昇すると、この海水W’に溶解したメタンがガス化して自噴し、海水W’から自動的に解離して海水面10上のガスセパレーター7に導かれる。これにより、ガスセパレーター7のセパレータータンク7a内で容易に海水WとメタンガスMが分離され、メタンガスMが回収される。
【0068】
また、本実施形態においては、第1噴射管24aと第2噴射管24bがチャンバー本体部23の周方向に交互に配置されているため、複数の第1噴射管24aから噴射した海水Wによって、解離チャンバー20の先端部23b周辺の地盤G1全体が確実に切削除去され、この解離チャンバー20の先端部23b全体が確実に均等にメタンハイドレート2に貫入される。さらに、複数の第2噴射管24bから噴射した海水Wによって、解離チャンバー20の内部に配された地盤G1が確実に切削除去されるとともに解離チャンバー20の内部で撹拌され、メタンハイドレート2が確実に解離チャンバーの内部に露出される。これにより、メタンハイドレート2がより効率的に解離するため、メタンガスMが効率的に回収される。
【0069】
ここで、ガスセパレーター7のセパレータータンク7a内には、はじめに、第2噴射管24bによって地盤G1を切削除去することで、泥水W’’が導入される。そして、この泥水W’’に含まれてガス化したメタンガスの濃度を順次計測すると、徐々にメタンガス濃度が上昇してゆく。さらに、メタンハイドレート2上の地盤G1が切削除去されてメタンハイドレート2が露出すると、メタンガスの濃度が高濃度で安定する。このため、順次セパレータータンク7aで分離したメタンガスの濃度を計測することで、地盤G1の切削除去の状態、ひいてはメタンハイドレート2の露出状態が把握できる。
【0070】
なお、セパレータータンク7a内のメタンガス分離後の泥水W’’は、自然環境に配慮して排水ポンプ33で海底9付近に返送する。また、上記のようにメタンガスMを生産する際には、注水管5と揚水管6として、リング剛性が高く、軸方向では柔軟性のあるポリエチレンパイプを用いることが望ましく、このような注水管5と揚水管6を長さに余裕を持たせて用いることで、確実に上記のように地盤G1を切削除去しながらメタンガスMの生産を好適に行うことが可能である。
【0071】
したがって、本実施形態のメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンハイドレートからのメタンガス生産装置Bによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能であるとともに、ウォータージェット機構24の第1噴射管24aで、解離チャンバー20に送られた浅水域の海水W(メタン濃度が低い水)を解離チャンバー20の先端部23b側から略軸線O1方向外側に向けて噴射させることにより、メタンハイドレート2上の地盤G1を噴射した海水Wによって切削除去することができ、先端部23bをメタンハイドレート2に貫入させて解離チャンバー2を好適に設置することが可能になる。
【0072】
また、ウォータージェット機構24の第2噴射管24bで、解離チャンバー20に送られた浅水域の海水Wを解離チャンバー20の内面側から略軸線O1直交方向内側に向けて噴射させることにより、解離チャンバー20の内部に配されたメタンハイドレート2上の地盤G1を切削除去するとともに、解離チャンバー20の内部で撹拌することが可能になる。そして、解離チャンバー20の内部の泥水W’’を揚水することで、メタンハイドレート2を解離チャンバー20の内部を臨むように露出させることが可能になる。さらに、メタンハイドレート2を露出させた状態で、内側に向けて海水Wを噴射させて解離チャンバー20の内部を撹拌することにより、メタンハイドレート2をより効率的に解離させることが可能になる。
【0073】
さらに、複数の第1噴射管24aと第2噴射管24bが解離チャンバー20の周方向に交互に配置されているため、複数の第1噴射管24aから噴射した海水Wによって、解離チャンバー20の先端部23b周辺の地盤G1を切削除去して、この解離チャンバー20の先端部23b全体を均等にメタンハイドレート2に貫入させることが可能になる。また、複数の第2噴射管24bから噴射した海水Wによって、解離チャンバー20の内部に配された地盤G1を確実に切削除去するとともに、解離チャンバー20の内部で撹拌することが可能になり、メタンハイドレート2を確実に解離チャンバー20の内部に露出させることが可能になる。これにより、メタンハイドレート2をさらに効率的に解離させることが可能になる。
【0074】
以上、本発明に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産方法及びメタンガス生産装置の第2実施形態について説明したが、本発明は上記の第2実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態に示した変更例を含み、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明に係るウォータージェット機構は、第1噴射管24aと第2噴射管24bのどちらか一方を備えて構成してもよい。また、ウォータージェット機構24は、必ずしもメタンハイドレート2上の地盤G1を切削除去するためのものとして用いることに限定する必要はなく、既に露出したメタンハイドレート2に対して、解離チャンバー20を貫入させるために、及び/又は解離チャンバー20の内部に露出したメタンハイドレート2の解離を促進させるために用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置及びメタンガス生産方法を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置及びメタンガス生産方法の変形例を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置及びメタンガス生産方法を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置の解離チャンバー(ウォータージェット機構)を示す図である。
【図5】図4のX1−X1線矢視図である。
【図6】図4のX2−X2線矢視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置のウォータージェット機構の噴射ノズルを示す図である。
【図8】メタンハイドレートの温度と圧力の相平衡条件を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 メタンガス回収船
2 メタンハイドレート(表層型メタンハイドレート)
3 解離チャンバー
3a 開口部
3b 注水口
3c 揚水口
4 フロート
5 注水管
6 揚水管
7 ガスセパレーター
7a セパレータータンク
8 ワイヤ
9 海底(湖底)
10 海水面(湖水面)
11 ストレーナー
12 開閉弁
13 揚水ポンプ
20 解離チャンバー
21 送水ポンプ
22 揚水ポンプ
23 チャンバー本体部
23a 上端(後端部)
23b 下端(先端部)
23c 開口部
23d 第1室
23e 第2室
24 ウォータージェット機構
24a 第1噴射管
24b 第2噴射管
25 アダプター
26 噴射ノズル
29 一方向開閉弁
30 双方向開閉弁
31 一方向開閉弁
32 双方向開閉弁
33 排水ポンプ
34 GPS
35 方位計
36 トランスデューサー
37 トランスポンダー
A メタンガス生産装置
B メタンガス生産装置
G 地盤
G1 地盤
O1 軸線
W 浅水域の海水(メタン濃度が低い水)
W’ メタンが溶解した海水(メタンが溶解した水)
W’’ 泥水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底あるいは湖底に存在するメタンハイドレートからメタンガスを生産する方法であって、
開口部を備えて形成した解離チャンバーを、前記開口部を通じて前記解離チャンバーの内部に前記メタンハイドレートが臨むように設置し、
前記解離チャンバーの内部にメタン濃度が低い水を供給して前記メタンハイドレートからメタンを解離させ、
メタンが溶解した前記解離チャンバーの内部の水を揚水することを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産方法。
【請求項2】
請求項1記載のメタンハイドレートからのメタンガス生産方法において、
浅水域の海水あるいは湖水を前記解離チャンバーの内部に供給することを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のメタンハイドレートからのメタンガス生産方法において、
前記解離チャンバーにウォータージェット機構が設けられ、
前記ウォータージェット機構によって、前記解離チャンバーに送られた前記メタン濃度が低い水を、前記解離チャンバーの前記開口部を形成する先端部側から前記開口部を通じて略軸線方向外側に向けて、及び/又は前記解離チャンバーの内面側から略軸線直交方向内側に向けて噴射させるようにしたことを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産方法。
【請求項4】
海底あるいは湖底に存在するメタンハイドレートからメタンガスを生産するための装置であって、
開口部を備えて形成され、前記開口部を通じて前記メタンハイドレートが内部を臨むように設置される解離チャンバーと、該解離チャンバーに一端が繋げられ、前記解離チャンバーの内部にメタン濃度が低い水を供給するための注水管と、前記解離チャンバーに一端が繋げられ、前記解離チャンバーの内部の水を揚水するための揚水管とを備えていることを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産装置。
【請求項5】
請求項4記載のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置において、
前記開口部を通じて前記メタンハイドレートが内部を臨むように前記解離チャンバーを設置した状態で、前記注水管の他端から浅水域の海水あるいは湖水を吸入し、該浅水域のメタン濃度が低い海水あるいは湖水を前記解離チャンバーの内部に供給するように構成されていることを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産装置。
【請求項6】
請求項5記載のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置において、
前記注水管を外管とし、前記揚水管を内管として、前記注水管と前記揚水管が二重管構造で構成されており、前記注水管の他端側に、前記浅水域の海水あるいは湖水を吸入して前記解離チャンバーの内部に供給するためのストレーナーが設けられていることを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかに記載のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置において、
前記解離チャンバーには、前記注水管から送られた前記メタン濃度が低い水を噴射させるウォータージェット機構が設けられ、
該ウォータージェット機構は、前記解離チャンバーの前記開口部を形成する先端部側から前記開口部を通じて略軸線方向外側に向けて前記メタン濃度が低い水を噴射させる第1噴射管、及び/又は前記解離チャンバーの内面側から略軸線直交方向内側に向けて前記メタン濃度が低い水を噴射させる第2噴射管を備えて構成されていることを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産装置。
【請求項8】
請求項7記載のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置において、
前記ウォータージェット機構は、前記第1噴射管と前記第2噴射管とをそれぞれ複数備え、
前記解離チャンバーの周方向に、前記第1噴射管と前記第2噴射管を交互に配置して構成されていることを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−37932(P2010−37932A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312714(P2008−312714)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人科学技術振興機構、革新技術開発研究事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)