説明

メリヤス針

【課題】糸くずの詰まりが無く、しかもベラの組み付けが簡単で製造工程をより簡素化することができるメリヤス針を提供する。
【解決手段】針本体1にベラ4を回動自在に取り付けられたメリヤス針において、ベラ4をその基端部に切り込み溝6を入れて二股状とするとともに、該二股状とされたベラ基端部7a,7bの対向する内壁面には、ベラを回動自在に支持するための支軸となる突起8a,8bを形成し、一方、針本体1には、二股状とされたベラ基端部を差し込み可能な厚さからなる板状壁部3を形成するとともに、該板状壁部には、ベラ基端部の内壁面に形成された突起8a,8bが回動自在に嵌り込む大きさの軸支穴5を形成し、板状壁部を左右から挟むようにして二股状をしたベラ基端部を差し込み、ベラ基端部7a,7bの内壁面に形成された突起8a,8bを板状壁部3の軸支穴5に嵌合させて回動自在に軸支した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動自在なベラを備えたメリヤス針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に、従来のメリヤス針の構造を示す。図示するように、従来のメリヤス針は、先端をU字状のフック11とされた針本体12と、この針本体12に形成された溝13内にピン(芯金)14等によって回動自在に軸支されたベラ15とを備え、ベラ15が回動することによってループを形成し、編成を行なうものである。
【0003】
上記のように、従来のメリヤス針は、針本体12に溝13を切り、この溝13内にベラ15の基端部を回動自在に軸支していた。このような構造のメリヤス針に特に大きな問題点が有るわけではないが、まれに編成中に発生した糸くずが溝13内に入り込み、ベラ15のスムーズな動きを妨げる場合があった。このような問題を回避するため、溝13は針本体12の上面から下底部までを貫く貫通穴とされ、そこから糸くずが抜けるようになっている。しかし、溝13は微小な空間であり、糸くずは容易に抜けるわけではなかった。このため、長時間にわたって編成を行なっていると、溝内に糸くずが詰まってしまうことによるトラブルが発生することがあった。
【0004】
そこで、上記糸くずの詰まりを回避するため、図5に示すようなメリヤス針が提案されている(特許文献1参照)。このメリヤス針は、ベラ16の基端側に切り込み溝17を入れることにより、ベラ16の基端側を二股状のベラ基端部18a,18bとするとともに、針本体12側には従来の溝13に代えて、前記二股状をしたベラ基端部18a,18bを差し込むことができる厚さからなる板状壁部19を形成し、この板状壁部19を左右から挟むようにして前記二股状をしたベラ基端部18a,18bを差し込み、ピン20によってベラ16を針本体12に回動自在に軸支したものである。このような構造のメリヤス針の場合、針本体部に溝がないので、糸くずが詰まってトラブルを起こすというようなことがなくなる。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3728874号明細書(全文、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記図5の構造からなるメリヤス針は、糸くずの詰まりを無くすという観点からは極めて優れたものである。しかし、この構造のメリヤス針を製造するには、ベラ基端部18a,18bと板状壁部19に形成された軸支穴21,22にピン20を挿し通してその端面をカシメた後、ピン20の部分に熱処理を行なって支軸としての強度を与える必要がある。このため、ベラの組み付け工程においてカシメと熱処理という作業が不可欠であり、製造工程的観点から見るときは針本体とベラとの結合構造に改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、図5のような構造のメリヤス針において、糸くずの詰まりが無く、しかもベラの組み付けが簡単で製造工程をより簡素化することができるメリヤス針を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は次のような手段を採用した。
すなわち、本発明は、針本体にベラを回動自在に取り付けられたメリヤス針において、前記ベラを、その基端部に切り込み溝を入れて二股状とするとともに、該二股状とされたベラ基端部の対向する内壁面の少なくともいずれか一方の面には、ベラを回動自在に支持するための支軸となる突起を形成し、一方、針本体には、前記二股状とされたベラ基端部を差し込み可能な厚さからなる板状壁部を形成するとともに、該板状壁部には、前記二股状とされたベラ基端部の内壁面に形成された突起が回動自在に嵌り込む大きさの軸支穴を形成し、前記板状壁部を左右から挟むようにして前記二股状をしたベラ基端部を差し込み、ベラ基端部の内壁面に形成された前記突起を該板状壁部の軸支穴に嵌合させることにより、ベラを針本体に回動自在に軸支したものである。なお、支軸としての強度と回転の安定性の面から、前記突起は、二股状とされたベラ基端部の対向する内壁面の両面に対向して形成することがより望ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記構成からなる本発明のメリヤス針によれば、前述した図5のメリヤス針と同様に針本体部には溝がないので、糸くずが詰まってトラブルを起こすというようなことがない。また、針本体とベラの組み付けに際しては、針本体の板状壁部を左右から挟むようにして二股状をしたベラ基端部を差し込み、この二股状をしたベラ基端部の内壁面に形成した突起を板状壁部の軸支穴に嵌合させるだけでよく、軸支穴に嵌合した後にカシメなどの処理を施す必要がない。このため、突起部分に予め熱処理を施して支軸としての強度を与えておくことができるので、突起を嵌め合わせるだけで済み、メリヤス針の組み付け作業を簡素化することができる。また、支軸としての強度を増すために突起の径を大きくしても、二股状をしたベラ基端部の強度が低下するというようなことがない。図5のメリヤス針の場合、支軸となるピン20の径を大きくすると、ベラ基端部に形成した軸支穴21の径も同時に大きく広げる必要があり、その分だけ軸支穴まわりの板幅に余裕が無くなってベラの強度が低下してしまう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1および図2に、発明に係るメリヤス針の一実施の形態を示す。図1はメリヤス針全体の構造を示す図であり、図2はベラの詳細構造を示す図である。
【0011】
図において、1は針本体、4はベラであって、針本体1の先端はU字状に折り返えされてフック2とされている。針本体1のフック2寄りの位置には、所定厚さからなる垂直な板状壁部3が一体に形成されている。この板状壁部3には、適宜位置に軸支穴5が穿たれ、この軸支穴5にベラ4が後述する本発明の新規な結合構造によって回動自在に軸支されている。なお、これら針本体1と板状壁部3の部分の構造は、前述した図5のメリヤス針と同様である。本発明は、以下に述べるベラ4の構造において、図5のメリヤス針と異なるものである。
【0012】
すなわち、本発明のメリヤス針で用いるベラ4は、その基端側に切り込み溝6を形成することによって二股状とされており、この二股状とされたベラ基端部7a,7bの対向する内壁面の両面に、円柱状をした一対の突起8a,8bを対向して形成したものである。この左右一対の突起8a,8bは、ベラ4の回動支軸となるもので、その径は前記板状壁部3に形成された軸支穴5よりも僅かに小さな径とされ、突起8a,8bを軸支穴5に嵌め込むことにより、ベラ4を針本体1に回動自在に軸支したものである。
【0013】
なお、前記ベラ4の板厚t(図2(a)参照)は、運針の邪魔となることがないように、針本体1の幅W(図1(a)参照)と同じか、それよりも僅かに薄く設定されている。そして、前記二股状をしたベラ基端部7a,7bと板状壁部3のそれぞれの板厚は、このベラの板厚tの範囲内で所望の厚さに設定されている。
【0014】
また、突起8a,8bの高さは、切り込み溝6の溝幅の1/2か、それよりも僅かに低く設定されており、突起8a,8bが軸支穴5内に嵌入されたとき、図1(c)に示すようにお互いの突起の先頭面が接するか、僅かにすき間を有する程度に設定されている。
【0015】
メリヤス針を上記構造とした場合、前述した図5のメリヤス針と同様に針本体部には溝がないので、糸くずが詰まってトラブルを起こすというようなことがない。また、針本体1とベラ4の組み付けに際しては、針本体1の板状壁部3を左右から挟むようにして二股状をしたベラ基端部7a,7bを差し込み、ベラ基端部7a,7bの内壁両面に形成した一対の突起8a,8bを板状壁部3の軸支穴5に嵌合させるだけでよい。従って、突起8a,8bの嵌合後にカシメなどを施す必要がないため、突起8b、8bに最初から熱処理を行なって支軸としての硬度を確保しておくことができる。このため、熱処理などの後処理を不要とすることができ、メリヤス針の組み付け工程を簡素化することができる。
【0016】
また、支軸の強度を上げるには、突起8a,8bの径を大きくすればよいが、本発明のメリヤス針の場合、突起8a,8bの径を大きくしても、ベラ4の強度が低下するというようなことがない。これに対し、図5に示した従来のメリヤス針の場合、支軸の強度を上げるためにピン20の径を大きくすると、これに対応してベラ基端部17a,17bに形成した軸支穴21の径もその分だけ大きく広げる必要がある。その結果、軸支穴21のまわりの板幅が狭くなり、その分だけベラ4の強度が低下してしまう。
【0017】
なお、図示例では、二股状とされたベラ基端部7a,7bの対向する内壁面の両面に一対の突起8a,8bを形成したが、必ずしも両面に形成する必要はなく、例えば図3に示すように、いずれか一方の内壁面(図示例ではベラ基端部7a側)に突起8を形成してもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るメリヤス針の一実施の形態を示すもので、(a)は針先部分の略示斜視図、(b)はその分解斜視図、(c)は(a)中のI−I位置における縦断面図である。
【図2】図1中のベラの詳細な構造を示すもので、(a)はベラの平面図、(b)はその左側面図、(c)はその正面図、(d)は一部を切り欠いて示した立位斜視図である。
【図3】本発明で用いるベラの他の構造例を示す平面図である。
【図4】従来のメリヤス針の構造例を示すもので、(a)は針先部分の略示斜視図、(b)はその分解斜視図である。
【図5】特許文献1に記載のメリヤス針の構造を示すもので、(a)は針先部分の略示斜視図、(b)はその分解斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 針本体
2 フック
3 板状壁部
4 ベラ
5 軸支穴
6 切り込み溝
7a,7b 二股状をしたベラ基端部
8,8a,8b 突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
針本体にベラを回動自在に取り付けられたメリヤス針において、
前記ベラは、その基端部に切り込み溝を入れて二股状とされているとともに、該二股状とされたベラ基端部の対向する内壁面の少なくともいずれか一方の面には、ベラを回動自在に支持するための支軸となる突起が形成され、
一方、針本体には、前記二股状とされたベラ基端部を差し込み可能な厚さからなる板状壁部が形成されているとともに、該板状壁部には、前記二股状とされたベラ基端部の内壁面に形成された突起が回動自在に嵌り込む大きさの軸支穴が形成され、
前記板状壁部を左右から挟むようにして前記二股状をしたベラ基端部を差し込み、ベラ基端部の内壁面に形成された突起を該板状壁部の軸支穴に嵌合させることにより、ベラを針本体に回動自在に軸支したことを特徴とするメリヤス針。
【請求項2】
前記支軸となる突起が、二股状とされたベラ基端部の対向する内壁面の両面に対向して形成されていることを特徴とする請求項1記載のメリヤス針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−31588(P2008−31588A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205752(P2006−205752)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000104021)オルガン針株式会社 (8)
【Fターム(参考)】