説明

モータの含油軸受構造

【目的】 含油軸受の寿命を向上させると共に製造コストの増加を抑制し得る「モータの含油軸受構造」を提供する。
【構成】 含油軸受(3)の端面(3a)に接するスラスト調整用ワッシャ(4a)は、複数の突起部(41)が設けられ、前記含油軸受(3)は、前記突起部(41)に対応する嵌込み部(31)および放射状に延長しフェルト材(6)に到達する複数の溝部(32)が設けられ、前記突起部(41)を前記嵌込み部(31)に嵌挿することにより、前記ワッシャ(4a)を前記含油軸受(3)に固定し、滲漏する油を前記溝部(32)を経由し前記フェルト材(6)に導くことにより循環使用する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、モ―タのシャフトを回転自在に支持する軸受の構造に関し、特に含油軸受の寿命を向上させ得る構造に関する。
【0002】
【従来の技術】一般のモ―タは、コイル、電流を供給するコンミテ―タ、回転力を伝達するシャフト、磁界を発生するマグネットおよびマグネットを内周面に保持するケ―シングとを有している。
【0003】シャフト2は、図4に示すように、ケ―シング1のエンドブラケットに保持された軸受3により回転自在に保持されている。この軸受3は、焼結金属等の多孔質金属から構成され、エンドブラケットに設けられた押えバネ5aにより、フェルト材6と共にエンドブラケットに保持されている。フェルト材6は、軸受3と接触しており、フェルト材6に浸潤している油が軸受3に供給され、シャフト2の回転の際の摩擦を小さくするようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなモ―タの軸受構造では、軸受3から浸み出た油が、シャフト2の回転により、ワッシャ4を伝わり、最終的に遠心力により周方向に飛散し、軸受3に含まれる含油量がしだいに減少することになる。このことは、シャフト2と軸受3との潤滑性を悪化させ、軸受の寿命を低下させる原因となっている。また、飛散した油がコンミテ―タに付着すると、性能、騒音に悪影響を及ぼす原因となる虞れがある。
【0005】一方、実開昭63−167,358号公報には、含油軸受の端面にワッシャを収納する凹部を穿設し、ワッシャの外周側が凹部の内壁面に臨むようにしたことを特徴とするモータの軸受構造が開示されている。
【0006】この軸受構造では、シャフトと含油軸受との間に滲漏した油が、シャフトの回転力によりシャフトおよびワッシャから飛散した場合、凹部の内壁面に付着吸収され、含油軸受内に循環されることになる。したがって、含油軸受の油ぎれが極力防止されると共に、含油軸受の外方に油が漏出することが極力防止される。
【0007】しかし、構造が従来のものとは大きく異なり、含油軸受の製造工程やモータへの取付工程の大幅な変更を必要とするため、製造コストが大きく増加してしまう。
【0008】本発明はこのような従来の問題点を解消するためになされたものであり、含油軸受の寿命を向上させると共に製造コストの増加を抑制し得るモータの含油軸受構造を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明は、シャフトの少なくとも片側を、弾性部材およびフェルト材を介しケ―シングに保持された含油軸受により回転自在に支持し、当該含油軸受の端面には、複数のスラスト調整用ワッシャが配設されてなるモ―タの含油軸受構造において、前記端面に接する前記ワッシャは、前記端面に向かい突起部が設けられ、前記含油軸受は、前記突起部に対応する嵌込み部および放射状に延長し前記フェルト材に到達する溝部が設けられ、前記突起部を前記嵌込み部に嵌挿することにより、前記ワッシャを前記含油軸受に固定し、前記シャフトが回転するに伴い前記シャフトと前記含油軸受との間に滲漏する油を、前記溝部を経由し前記フェルト材に導くことにより循環使用することを特徴とする。
【0010】
【作用】このように構成した本発明にあっては、含油軸受とワッシャとの回転磨耗および油の飛散を防止することが可能であるため、含油軸受の寿命を向上させることができる。
【0011】さらに、従来のモータの含油軸受構造との相違点が軽微であるため、含油軸受の製造工程やモータへの取付工程の大幅な変更を必要とせず、したがって、製造コストの増加を抑制ることができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】図1は、本発明に係るモータの含油軸受構造を示している要部断面図、図2は、図1の含油軸受構造を説明するための立体分解図、図3は、図1に係るモータの全体構造を示している概略断面図である。
【0014】なお、図4に示す部材と同一部材には同一符号を付してある。
【0015】本発明に係るモータは、図3に示すように、例えば自動車用空気調和装置のファンF等を駆動するために用いられている。
【0016】このモ―タは、コイルが巻回してあるアマチュア10、ブラシ11が摺接しアマチュア10へ電流を供給するコンミテ―タ12、回転力をファンFに伝達するシャフト2、前記アマチュア10が横切る磁界を発生するマグネット13および該マグネット13を内周面に保持するケ―シング1とを有している。
【0017】シャフト2は、弾性部材であるメタル押さえバネ5およびフェルト材6を介しケ―シング1の両エンドブラケット1aに保持された含油軸受3により回転自在に支持しされており、当該含油軸受3の端面3aに面するシャフト2には、複数のワツシャ4と共に止め輪7が装着されている。なお、含油軸受3は、焼結金属等の多孔質金属から構成され、内部に油が含浸されている。
【0018】次に、図2および図3を使用し、本発明に係るモータの含油軸受構造を詳細に説明する。
【0019】スラスト調整用ワッシャ4の中で含油軸受3の端面3aに直接接触することになるワッシャ4aは、含油軸受3の端面3aに向かい延長する突起部41が、ワッシャ4aの中心軸に関し対象な円周上の2カ所に設けられている。なお、残りのワッシャ4bは、従来と同様の構造を有しており、突起部は設けられていない。一方、含油軸受3は、ワッシャ4aの突起部41に対応する嵌込み部31および放射状に延長しフェルト材6に到達する4カ所の溝部32が等間隔に設けられている。
【0020】したがって、嵌込み部31にワッシャ4aの突起部41を嵌挿し、ワッシャ4aを固定することにより、ワッシャ4aとの回転磨耗を防止することが可能になる。
【0021】さらに、シャフト2と含油軸受3との間に滲漏した油が、4カ所の溝部32に導入され、遠心力により溝部32を経由しフェルト材6に付着吸収され含油軸受3内に循環されることになる。そのため、含油軸受3の油ぎれが極力防止されると共に、含油軸受3の外方に油が漏出することが極力防止される。
【0022】したがって、含油軸受3に含まれる含油量の減少に伴うシャフト2と含油軸受3との潤滑性の悪化を抑制することができる、含油軸受の寿命を向上させることが可能となる。さらに、飛散した油が隙間を伝わり、コンミテ―タ12の外周面に付着し、導電不良等の不都合を生じさせる可能性も低下する。
【0023】また、本発明に係るモータの含油軸受構造と従来のものとの相違点は、従来の含油軸受に突起部および溝部を設けることおよび突起部を有するワッシャを1枚新設することであり、含油軸受の製造工程やモータへの取付工程の大幅な変更を必要とせず、したがって、製造コストの増加を抑制ることができる。
【0024】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、含油軸受とワッシャとの回転磨耗および油の飛散を防止することが可能であるため、含油軸受の寿命を向上させることができる。
【0025】さらに、従来のモータの含油軸受構造との相違点が軽微であるため、含油軸受の製造工程やモータへの取付工程の大幅な変更を必要とせず、したがって、製造コストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るモータの含油軸受構造を示している要部断面図である。
【図2】 図1の含油軸受構造を説明するための立体分解図である。
【図3】 図1に係るモータの全体構造を示している概略断面図である。
【図4】 従来のモータの含油軸受構造をを示している要部断面図である。
【符号の説明】
1…ケ―シング、 2…シャフト、3…含油軸受、 4,4a,4b…ワッシャ、6…フェルト材、 31…嵌込み部、32…溝部、 41…突起部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】シャフト(2)の少なくとも片側を、弾性部材(5)およびフェルト材(6)を介しケ―シング(1)に保持された含油軸受(3)により回転自在に支持し、当該含油軸受(3)の端面(3a)には、複数のスラスト調整用ワッシャ(4a,4b)が配設されてなるモ―タの含油軸受構造において、前記端面(3a)に接する前記ワッシャ(4a)は、前記端面(3a)に向かい突起部(41)が設けられ、前記含油軸受(3)は、前記突起部(41)に対応する嵌込み部(31)および放射状に延長し前記フェルト材(6)に到達する溝部(32)が設けられ、前記突起部(41)を前記嵌込み部(31)に嵌挿することにより、前記ワッシャ(4a)を前記含油軸受(3)に固定し、前記シャフト(2)が回転するに伴い前記シャフト(2)と前記含油軸受(3)との間に滲漏する油を、前記溝部(32)を経由し前記フェルト材(6)に導くことにより循環使用することを特徴とするモータの含油軸受構造。

【図2】
image rotate


【図1】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate