説明

モータシステムおよびモータ制御装置

【課題】複数機種のモータが接続可能なモータ制御装置を有するモータシステムにおいて、モータ側の記憶容量を低減させるとともに、電源投入時等の初期動作の時間を短くすることが可能なモータシステムを提供する。
【解決手段】モータシステム1において、複数機種のモータ2が接続可能なモータ制御装置3は、モータ2の機種ごとに設定される複数の制御パラメータ群14a〜14eが記憶される記憶部11と、モータ2を駆動制御するモータ制御部10を備え、モータ2は、モータ2の機種コードが記憶されるモータ側記憶部7を備えている。モータ制御装置3は、モータ側記憶部7に記憶されている機種コードを読み出して、読み出された機種コードに対応する制御パラメータ群14a〜14eを記憶部11の中から選択するとともに、選択された制御パラメータ群14a〜14eの各制御パラメータをモータ制御部10に設定してモータ2を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数機種のモータが接続可能なモータ制御装置と、このモータ制御装置に接続されるモータとを備えるモータシステムに関する。また、本発明は、複数機種のモータが接続可能なモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンコーダ付きのモータと、このモータを制御するモータ制御装置とを備えるモータ制御システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のモータ制御システムでは、モータのエンコーダは、EEROMを備えており、このEEROMには、モータの識別コードやモータ特有のパラメータ等が記憶されている。
【0003】
また、このモータ制御システムでは、モータ制御装置の電源投入時に、モータ制御装置がエンコーダにモータの識別コードの問合せを行う。この問合せに対する応答と、モータ制御装置に元々記憶されている識別コードとが合致する場合、モータ制御装置は、モータ制御装置のEEROMに記憶されているパラメータをそのまま用いてモータを制御する。一方、問合せに対する応答と、モータ制御装置に元々記憶されている識別コードとが合致しない場合、モータ制御装置は、エンコーダのEEROMに記憶されたパラメータを読み出してモータ制御装置のEEROMに記憶し、この記憶された新たなパラメータを用いてモータを制御する。
【0004】
このように、特許文献1に記載のモータ制御システムでは、モータ制御装置の電源投入時に、モータの識別コードの問合せに対するエンコーダの応答と、モータ制御装置に元々記憶されている識別コードとが合致しない場合に、モータ制御装置は、エンコーダのEEROMに記憶されたパラメータを読み出してモータ制御装置のEEROMに記憶し、この記憶された新たなパラメータを用いてモータを制御する。そのため、このモータ制御システムでは、モータ制御装置に接続されるモータが交換されても、モータ制御装置のEEROMに記憶されるパラメータを、モータ制御装置に接続されるモータの機種に応じて自動的に変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3582856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のモータ制御システムでは、モータ側のEEROMにモータのパラメータが記憶されているため、モータ側の記憶容量が大きくなる。また、このモータ制御システムでは、モータ側のEEROMにモータのパラメータが記憶されているため、モータの識別コードの問合せに対するエンコーダの応答と、モータ制御装置に元々記憶されている識別コードとが合致しないと、モータ制御装置の電源投入時に、モータ側のEEROMに記憶されているパラメータをモータ制御装置のEEROMへ転送しなければならない。したがって、このモータ制御システムでは、モータ制御装置の電源投入時の初期動作に時間がかかるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、複数機種のモータが接続可能なモータ制御装置と、このモータ制御装置に接続されるモータとを備えるモータシステムにおいて、モータ制御装置に接続されるモータが交換されても、モータ制御装置に接続されるモータの機種に応じて、制御パラメータを自動的に変更することが可能になるとともに、モータ側の記憶容量を低減させること、および、電源投入時等の初期動作の時間を短くすることが可能なモータシステムを提供することにある。また、本発明の課題は、複数機種のモータが接続可能なモータ制御装置において、モータ制御装置に接続されるモータが交換されても、モータ制御装置に接続されるモータの機種に応じて、制御パラメータを自動的に変更することが可能になるとともに、モータ側の記憶容量を低減させること、および、電源投入時等の初期動作の時間を短くすることが可能なモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のモータシステムは、複数機種のモータが接続可能なモータ制御装置と、モータ制御装置に接続されるモータとを備え、モータ制御装置は、モータの機種ごとに設定される複数の制御パラメータ群が記憶される記憶部と、モータを駆動制御するモータ制御部とを備え、モータは、モータの機種に対応する機種コードが記憶されるモータ側記憶部を備え、モータ制御装置は、モータ側記憶部に記憶されている機種コードを読み出して、記憶部に記憶されている複数の制御パラメータ群の中から、読み出された機種コードに対応する制御パラメータ群を選択するとともに、選択された制御パラメータ群の各制御パラメータをモータ制御部に設定してモータを制御することを特徴とする。
【0009】
本発明のモータシステムでは、モータ制御装置は、モータ側記憶部に記憶されている機種コードを読み出して、モータ制御装置の記憶部に記憶されている複数の制御パラメータ群の中から、読み出された機種コードに対応する制御パラメータ群を選択するとともに、選択された制御パラメータ群の各制御パラメータをモータ制御部に設定している。そのため、本発明では、モータ制御装置に接続されるモータが交換されても、モータ制御部に設定される制御パラメータを、モータ制御装置に接続されるモータの機種に応じて自動的に変更することが可能になる。
【0010】
また、本発明のモータシステムでは、モータ制御装置の記憶部にモータの機種ごとに設定される複数の制御パラメータ群が記憶されており、モータ側記憶部には、機種コードは記憶されているが、制御パラメータ群は記憶されていない。そのため、本発明では、モータ側の記憶容量を低減させることが可能になる。また、本発明では、モータ制御装置の記憶部に制御パラメータ群が記憶されているため、電源投入時等の初期動作時に、モータ側記憶部からモータ制御装置の記憶部へ制御パラメータ群を転送する必要がない。そのため、本発明では、電源投入時等の初期動作の時間を短くすることが可能になる。
【0011】
本発明において、モータ制御装置は、電源投入の度に、モータ側記憶部に記憶されている機種コードを読み出して、記憶部に記憶されている複数の制御パラメータ群の中から、読み出された機種コードに対応する制御パラメータ群を選択するとともに、選択された制御パラメータ群の各制御パラメータをモータ制御部に設定することが好ましい。このように構成すると、接続されているモータの機種コードをモータ制御装置に記憶させなくても、モータ制御部には、モータ制御装置に接続されているモータの機種に応じた制御パラメータが自動的に設定される。すなわち、このように構成すると、接続されているモータの機種コードをモータ制御装置に記憶させる必要がなくなる。したがって、モータ制御装置側の記憶容量を低減させることが可能になる。
【0012】
本発明において、モータ制御装置は、選択された制御パラメータ群の全ての制御パラメータをモータ制御部に新たに設定することが好ましい。このように構成すると、選択された制御パラメータ群の制御パラメータのうち、モータ制御部にそれまで設定されていた制御パラメータから変更になる制御パラメータのみを新たに設定する場合と比較して、制御パラメータの設定制御が容易になる。したがって、制御パラメータの設定制御用のプログラムを簡素化して、モータ制御装置のコストを低減することが可能になる。
【0013】
本発明において、制御パラメータ群の中には、書換え可能な書換可能パラメータが含まれ、モータ制御装置には、書換可能パラメータを書き換えるための外部入力装置が接続可能となっており、モータ制御装置は、書換え後の書換可能パラメータが記憶される第2の記憶部を備えることが好ましい。このように構成すると、たとえば、モータが取り付けられる上位装置の仕様に依存する制御パラメータを、上位装置の仕様に応じて書き換えて、第2の記憶部に記憶することが可能になる。また、このように構成すると、書換え後の書換可能パラメータは、第2の記憶部に記憶されるため、書換可能パラメータの初期値を記憶部に記憶しておくことが可能になる。
【0014】
本発明において、モータ制御装置は、電源投入の度に、モータ側記憶部に記憶されている機種コードを読み出し、記憶部に記憶されている複数の制御パラメータ群の中から、読み出された機種コードに対応する制御パラメータ群を選択して、選択された制御パラメータ群の各制御パラメータをモータ制御部に設定した後に、第2の記憶部に記憶される書換可能パラメータを読み出して、モータ制御部に設定された、書換可能パラメータに対応する制御パラメータを、読み出された書換可能パラメータに書き換えることが好ましい。
【0015】
このように構成すると、接続されているモータの機種コードをモータ制御装置に記憶させなくても、モータ制御部には、モータ制御装置に接続されているモータの機種に応じた制御パラメータが自動的に設定されるため、モータ制御装置側の記憶容量を低減させることが可能になる。また、このように構成すると、たとえば、モータが取り付けられる上位装置の仕様に依存する制御パラメータ(書換可能パラメータ)が書き換えられている場合に、書換え後の書換可能パラメータを自動的にモータ制御部に設定することが可能になる。
【0016】
また、上記の課題を解決するため、本発明のモータ制御装置は、複数機種のモータが接続可能なモータ制御装置であって、モータの機種ごとに設定される複数の制御パラメータ群が記憶される記憶部と、モータを駆動制御するモータ制御部とを備え、モータに記憶されている機種コードを読み出して、記憶部に記憶されている複数の制御パラメータ群の中から、読み出された機種コードに対応する制御パラメータ群を選択するとともに、選択された制御パラメータ群の各制御パラメータをモータ制御部に設定してモータを制御することを特徴とする。
【0017】
本発明のモータ制御装置は、モータに記憶されている機種コードを読み出して、モータ制御装置の記憶部に記憶されている複数の制御パラメータ群の中から、読み出された機種コードに対応する制御パラメータ群を選択するとともに、選択された制御パラメータ群の各制御パラメータをモータ制御部に設定している。そのため、本発明では、モータ制御装置に接続されるモータが交換されても、モータ制御部に設定される制御パラメータを、モータ制御装置に接続されるモータの機種に応じて自動的に変更することが可能になる。
【0018】
また、本発明のモータ制御装置では、モータの機種ごとに設定される複数の制御パラメータ群が記憶部に記憶されているため、モータに記憶されている機種コードを読み出せば、読み出された機種コードに対応する適切な制御パラメータをモータ制御部に設定することが可能である。したがって、本発明では、モータ側の記憶部に、制御パラメータ群を記憶する必要がなくなり、その結果、モータ側の記憶容量を低減させることが可能になる。また、本発明では、記憶部に制御パラメータ群が記憶されているため、電源投入時等の初期動作時に、モータ側から記憶部へ制御パラメータ群を転送する必要がない。そのため、本発明では、電源投入時等の初期動作の時間を短くすることが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明のモータシステムおよびモータ制御装置では、モータ制御装置に接続されるモータが交換されても、モータ制御装置に接続されるモータの機種に応じて、制御パラメータを自動的に変更することが可能になる。また、本発明のモータシステムおよびモータ制御装置では、モータ側の記憶容量を低減させること、および、電源投入時等の初期動作の時間を短くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態にかかるモータシステムの構成を説明するためのブロック図である。
【図2】図1に示すモータ制御部への制御パラメータの設定方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(モータシステムの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるモータシステム1の構成を説明するためのブロック図である。
【0023】
本形態のモータシステム1は、モータ2を駆動制御するためのシステムであり、図1に示すように、モータ2と、モータ制御装置(モータドライバ)3とを備えている。本形態のモータ2は、産業用のサーボモータであり、工作機械やロボット等の所定の上位装置に取り付けられて使用される。モータ制御装置3には、複数機種のモータ2が接続可能となっている。本形態では、定格の異なる5機種のモータ2がモータ制御装置3に接続可能となっており、1つのモータ制御装置3によって、定格の異なる5機種のモータ2を制御することが可能となっている。なお、モータシステム1は、モータ2に電力を供給する電源ユニット(図示省略)も備えている。
【0024】
モータ2は、エンコーダ5を備えるエンコーダ付きのモータである。エンコーダ5は、MCU(マイクロコントローラ)6を備えている。MCU6は、モータ側記憶部としてのROM7を備えている。ROM7には、モータ2の機種に対応する機種コード(モータ機種コード)が記憶されている。たとえば、図1に示すように、5つの機種コード「機種A」、「機種B」、「機種C」、「機種D」および「機種E」のうちのいずれか1つの機種コードがROM7に記憶されている。MCU6は、図示を省略するROMに記憶されたソフトウエアと協働して、各種の処理を実行する。
【0025】
モータ制御装置3は、モータ2の回転角度等を制御するための装置であり、MCU(マイクロコントローラ)9を備えている。MCU9は、モータ2を駆動制御するモータ制御部10と、記憶部としてのパラメータ格納用ROM11と、第2の記憶部としてのパラメータ格納用ROM12とを備えている。MCU9は、図示を省略するROMに記憶されたソフトウエアと協働して、各種の処理を実行する。なお、モータ制御装置3のハードウエアは、5機種のモータ2のうちの最大の定格出力を有するモータ2に合わせて構成されている。
【0026】
モータ制御部10は、電流制御部、速度制御部および位置制御部等によって構成されている。このモータ制御部10には、後述のように、モータ2を制御するための各制御パラメータが設定される。モータ制御部10は、設定された各制御パラメータに基づいて、モータ2を駆動制御する。
【0027】
パラメータ格納用ROM11(以下、「ROM11」とする。)には、モータ2の機種ごとに設定される複数の制御パラメータ群14a〜14eが記憶されている。上述のように、本形態では、5機種のモータ2がモータ制御装置3に接続可能となっているため、5つの制御パラメータ群14a〜14eがROM11に記憶されている。制御パラメータ群14a〜14eのそれぞれは、ROM7に記憶される5つの機種コードのそれぞれに1対1で対応付けられている。また、制御パラメータ群14a〜14eは、モータ制御装置3の電源が切れても、消去されずにROM11に記憶されている。なお、本形態では、ROM11に記憶されるデータの書換えは禁止されている。
【0028】
制御パラメータ群14a〜14eは、複数の制御パラメータによって構成されている。具体的には、制御パラメータ群14a〜14eは、書換えが禁止された書換禁止パラメータと、書換えが可能な書換可能パラメータとによって構成されている。
【0029】
書換禁止パラメータは、モータ2の設計仕様に関する制御パラメータであり、モータ2の損傷を防止するために、工場からの出荷前に設定された工場設定パラメータである。たとえば、書換禁止パラメータは、モータ制御部10の電流制御部のゲイン、電流指令のリミット値、異常検出のための閾値およびエンコーダの分解能等であり、モータ2の機種に対応した書換禁止パラメータ(制御パラメータ)がモータ制御部10に設定されていないと、モータ制御装置3に接続されたモータ2が損傷するおそれがある。
【0030】
一方、書換可能パラメータは、モータ2が取り付けられる上位装置の仕様に依存する制御パラメータであり、上位装置の仕様に応じた上位装置ごとのパラメータ調整が可能となるように書換え可能となっている。たとえば、書換可能パラメータは、モータ制御部10の速度制御部のゲイン、位置制御部のゲイン、制御モードおよび各フィルタの定数等であり、モータ2の機種に対応する書換可能パラメータ(制御パラメータ)がモータ制御部10に設定されていなくても、モータ制御装置3に接続されたモータ2が損傷するおそれはない。この書換可能パラメータは、モータシステム1のユーザによって書き換えられる。
【0031】
制御パラメータ群14a〜14eを構成する書換可能パラメータは、モータシステム1の工場からの出荷前に設定された書換可能パラメータの初期値であり、一定値となっている。また、モータ制御装置3には、書換可能パラメータを書き換える外部入力装置としてのPC(パーソナルコンピュータ)16が接続可能となっており、PC16からの入力操作によって、書換可能パラメータの書換えが可能となっている。書換え後の書換可能パラメータは、パラメータ格納用ROM12(以下、「ROM12」とする。)に記憶される。ROM12に記憶される書換可能パラメータは、モータ制御装置3の電源が切れても、消去されずにROM12に記憶されている。また、PC16からの入力操作によって、書換可能パラメータが書き換えられると、書換え前の書換可能パラメータに書換え後の書換可能パラメータが上書きされてROM12に記憶される。なお、ROM12は、フラッシュROM等の書換え可能な不揮発性の半導体メモリである。
【0032】
本形態では、モータ制御装置3は、モータ制御装置3の電源投入の度に、エンコーダ5のROM7に記憶されている機種コードを読み出して、モータ制御装置3のROM11に記憶されている5つの制御パラメータ群14a〜14eの中から、読み出された機種コードに対応する1つの制御パラメータ群14a〜14eを選択するとともに、選択された制御パラメータ群14a〜14eの各制御パラメータをモータ制御部10に設定してモータ2を制御する。以下、モータ制御部10への制御パラメータの設定方法を説明する。
【0033】
(制御パラメータの設定方法)
図2は、図1に示すモータ制御部10への制御パラメータの設定方法を説明するためのフローチャートである。
【0034】
モータ制御装置3の電源が投入されると、モータ制御装置3(具体的には、MCU9)は、シリアル通信によってエンコーダ5のROM7から機種コードを読み出して(ステップS1)、読み出した機種コードをチェックする(ステップS2)。
【0035】
読み出された機種コードがモータ制御装置3に接続可能な5機種のモータ2の機種コードのいずれかである場合(ステップS2において“OK”の場合)、モータ制御装置3は、ROM11に記憶されている5つの制御パラメータ群14a〜14eの中から、ステップS1で読み出された機種コードに対応する1つの制御パラメータ群14a〜14eを選択して読み出す(ステップS3)。たとえば、ステップS1で読み出された機種コードが「機種A」であれば、ステップS3において、モータ制御装置3は、この機種コードに対応する制御パラメータ14aを選択し、たとえば、ステップS1で読み出された機種コードが「機種B」であれば、ステップS3において、モータ制御装置3は、この機種コードに対応する制御パラメータ14bを選択する。
【0036】
その後、モータ制御装置3は、選択された制御パラメータ群14a〜14eの各制御パラメータをモータ制御部10に設定して、各制御パラメータによってモータ制御部10を構成する(ステップS4)。具体的には、ステップS4において、モータ制御装置3は、選択された制御パラメータ群14a〜14eの全ての制御パラメータを新たにモータ制御部10に設定する。すなわち、ステップS4において、モータ制御装置3は、選択された制御パラメータ群14a〜14eの全ての制御パラメータに対応するモータ制御部10の制御パラメータを設定し直す。その後、モータ制御装置3は、ROM12に書換可能パラメータが記憶されているか否かを判断する(ステップS5)。
【0037】
前回、モータ制御装置3の電源を切る前の処理で書き換られた書換可能パラメータがROM12に記憶されている場合等、ROM12に書換可能パラメータが記憶されている場合(ステップS5で“Yes”の場合)には、モータ制御装置3は、ROM12に記憶された書換可能パラメータを読み出し、読み出された書換可能パラメータをモータ制御部10に上書き設定して、モータ制御部10を構成する(ステップS6)。すなわち、ステップS6において、モータ制御装置3は、ステップS4でモータ制御部10に設定された制御パラメータのうちの、ROM12に記憶されている書換可能パラメータに対応する制御パラメータを、読み出された書換可能パラメータに書き換える。
【0038】
ステップS6で、ROM12から読み出された書換可能パラメータがモータ制御部10に上書き設定されると、モータ制御装置3は、通常運転に入ってモータ2の制御を開始する。通常運転に入ったモータ制御装置3のモータ制御部10は、設定された各制御パラメータに基づいて、モータ2を駆動制御する。また、ステップS5において、ROM12に書換可能パラメータが記憶されていない場合には、モータ制御装置3は、そのまま、通常運転に入ってモータ2の制御を開始する。
【0039】
また、ステップS2において、読み出された機種コードがモータ制御装置3に接続可能な5機種のモータ2の機種コードのいずれでもない場合(ステップS2において“NG”の場合)、機種選択エラーが発生したとして、モータ制御装置3は、異常停止する。
【0040】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、モータ制御装置3は、モータ2のROM7に記憶されている機種コードを読み出して、モータ制御装置3のROM11に記憶されている複数の制御パラメータ群14a〜14eの中から、読み出された機種コードに対応する制御パラメータ群14a〜14eを選択するとともに、選択された制御パラメータ群14a〜14eの各制御パラメータをモータ制御部10に設定している。そのため、本形態では、モータ制御装置3に接続されるモータ2が交換されても、モータ制御部10に設定される制御パラメータを、モータ制御装置3に接続されるモータ2の機種に応じて自動的に変更することができる。
【0041】
本形態では、モータ制御装置3のROM11にモータ2の機種ごとに設定される複数の制御パラメータ群14a〜14eが記憶されており、モータ2のROM7には、機種コードは記憶されているが、制御パラメータ群14a〜14eは記憶されていない。そのため、本形態では、ROM7の記憶容量を低減させることが可能になる。また、本形態では、モータ制御装置3のROM11に制御パラメータ群14a〜14eが記憶されているため、モータ制御装置3の電源投入時の初期動作の際に、ROM7からROM11へ制御パラメータ群14a〜14eを転送する必要がない。そのため、本形態では、モータ制御装置3の電源投入時の初期動作時間を短くすることが可能になる。
【0042】
本形態では、モータ制御装置3は、電源投入の度に、ROM7に記憶されている機種コードを読み出して、ROM11に記憶されている複数の制御パラメータ群14a〜14eの中から、読み出された機種コードに対応する制御パラメータ群14a〜14eを選択するとともに、選択された制御パラメータ群14a〜14eの各制御パラメータをモータ制御部10に設定している。そのため、接続されているモータ2の機種コードをモータ制御装置3に記憶させなくても、モータ制御装置3に接続されているモータ2の機種に応じた制御パラメータがモータ制御部10に自動的に設定される。すなわち、本形態では、接続されているモータ2の機種コードをモータ制御装置3に記憶させる必要がなくなる。したがって、本形態では、モータ制御装置3(具体的には、MCU9)の記憶容量を低減させることが可能になる。
【0043】
本形態では、モータ制御装置3は、ステップS4において、選択された制御パラメータ群14a〜14eの全ての制御パラメータを新たにモータ制御部10に設定している。そのため、ステップS4において、選択された制御パラメータ群14a〜14eの制御パラメータのうち、モータ制御部10にそれまで設定されていた制御パラメータから変更になる制御パラメータのみを新たに設定する場合と比較して、制御パラメータの設定制御が容易になる。したがって、本形態では、制御パラメータの設定制御用のプログラムを簡素化して、モータ制御装置3のコストを低減することが可能になる。
【0044】
本形態では、書換え後の書換可能パラメータは、ROM12に記憶されている。そのため、本形態では、モータ2が取り付けられる上位装置の仕様に依存する制御パラメータを上位装置の仕様に応じて書き換えて、ROM12に記憶するとともに、書換可能パラメータの初期値をROM11に記憶しておくことができる。
【0045】
本形態では、モータ制御装置3は、ROM7から読み出された機種コードに対応する制御パラメータ群14a〜14eをROM11から選択して、選択された制御パラメータ群14a〜14eの各制御パラメータをモータ制御部10に設定した後に、ROM12に書換可能パラメータが記憶されていれば、ROM12に記憶された書換可能パラメータを読み出して、読み出された書換可能パラメータをモータ制御部10に上書き設定している。そのため、本形態では、モータ2が取り付けられる上位装置の仕様に依存する制御パラメータが書き換えられている場合に、書換え後の書換可能パラメータをモータ制御部10に自動的に設定することができる。
【0046】
本形態では、1つのモータ制御装置3によって、定格の異なる5機種のモータ2を制御することが可能となっており、モータシステム1のユーザは、5機種のモータ2に対応した5種類のモータ制御装置を準備しなくても、5機種のモータ2を制御することができる。したがって、モータシステム1のユーザは、5機種のモータ2を制御するためのモータ制御装置の在庫を削減することが可能になる。
【0047】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0048】
上述した形態では、モータ制御装置3は、ステップS4において、選択された制御パラメータ群14a〜14eの全ての制御パラメータを新たにモータ制御部10に設定している。この他にもたとえば、モータ制御装置3は、ステップS4において、選択された制御パラメータ群14a〜14eの制御パラメータのうち、モータ制御部10にそれまで設定されていた制御パラメータから変更になる制御パラメータのみをモータ制御部10に新たに設定しても良い。
【0049】
上述した形態では、5機種のモータ2がモータ制御装置3に接続可能となっているが、6機種以上のモータ2がモータ制御装置3に接続可能となっていても良いし、2〜4機種のモータ2がモータ制御装置3に接続可能となっていても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 モータシステム
2 モータ
3 モータ制御装置
7 ROM(モータ側記憶部)
10 モータ制御部
11 ROM(パラメータ格納用ROM、記憶部)
12 ROM(パラメータ格納用ROM、第2の記憶部)
14a〜14e 制御パラメータ群
16 PC(パーソナルコンピュータ、外部入力装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数機種のモータが接続可能なモータ制御装置と、前記モータ制御装置に接続される前記モータとを備え、
前記モータ制御装置は、前記モータの機種ごとに設定される複数の制御パラメータ群が記憶される記憶部と、前記モータを駆動制御するモータ制御部とを備え、
前記モータは、前記モータの機種に対応する機種コードが記憶されるモータ側記憶部を備え、
前記モータ制御装置は、前記モータ側記憶部に記憶されている前記機種コードを読み出して、前記記憶部に記憶されている複数の前記制御パラメータ群の中から、読み出された前記機種コードに対応する前記制御パラメータ群を選択するとともに、選択された前記制御パラメータ群の各制御パラメータを前記モータ制御部に設定して前記モータを制御することを特徴とするモータシステム。
【請求項2】
前記モータ制御装置は、電源投入の度に、前記モータ側記憶部に記憶されている前記機種コードを読み出して、前記記憶部に記憶されている複数の前記制御パラメータ群の中から、読み出された前記機種コードに対応する前記制御パラメータ群を選択するとともに、選択された前記制御パラメータ群の前記各制御パラメータを前記モータ制御部に設定することを特徴とする請求項1記載のモータシステム。
【請求項3】
前記モータ制御装置は、選択された前記制御パラメータ群の全ての前記制御パラメータを前記モータ制御部に新たに設定することを特徴とする請求項1または2記載のモータシステム。
【請求項4】
前記制御パラメータ群の中には、書換え可能な書換可能パラメータが含まれ、
前記モータ制御装置には、前記書換可能パラメータを書き換えるための外部入力装置が接続可能となっており、
前記モータ制御装置は、書換え後の前記書換可能パラメータが記憶される第2の記憶部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のモータシステム。
【請求項5】
前記モータ制御装置は、電源投入の度に、前記モータ側記憶部に記憶されている前記機種コードを読み出し、前記記憶部に記憶されている複数の前記制御パラメータ群の中から、読み出された前記機種コードに対応する前記制御パラメータ群を選択して、選択された前記制御パラメータ群の前記各制御パラメータを前記モータ制御部に設定した後に、前記第2の記憶部に記憶される前記書換可能パラメータを読み出して、前記モータ制御部に設定された、前記書換可能パラメータに対応する前記制御パラメータを、読み出された前記書換可能パラメータに書き換えることを特徴とする請求項4記載のモータシステム。
【請求項6】
複数機種のモータが接続可能なモータ制御装置であって、
前記モータの機種ごとに設定される複数の制御パラメータ群が記憶される記憶部と、前記モータを駆動制御するモータ制御部とを備え、
前記モータに記憶されている機種コードを読み出して、前記記憶部に記憶されている複数の前記制御パラメータ群の中から、読み出された前記機種コードに対応する前記制御パラメータ群を選択するとともに、選択された前記制御パラメータ群の各制御パラメータを前記モータ制御部に設定して前記モータを制御することを特徴とするモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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