説明

モータ

【課題】接地電位部に接続されるアースピグテールとモータハウジングとの接続構造の簡素化を図り、製造コストの低減を図った直流モータを提供する。
【解決手段】ブラシ保持プレート4に保持されたブラシ7に接続されたアースピグテール8の先端が、ブラシ保持プレート4に設けられたピグテール保持穴405内に挿入されてブラシ保持プレート4に対して固定され、ブラシ保持プレート4がモータハウジング2に圧入された際に、アースピグテール8のブラシ保持プレート4の外周に添う部分がブラシ保持プレート4とモータハウジング2との間に挟み込まれた状態で配置されて、モータハウジング2に電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシを備えたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
比較的小型の直流モータは、特許文献1に示されているように、軸線方向の一端が開口した筒状のモータハウジングと、該モータハウジング内に収容されたステータ及びロータと、ロータに取り付けられたコンミュテータと、モータハウジングに対して固定された絶縁樹脂製のブラシ保持プレートと、ブラシ保持プレートに保持されてコンミュテータに接触させられた複数のブラシとを備えている。各ブラシには編組導体等のフレキシブルな導体からなるピグテールが接続され、各ピグテールが給電回路に接続されることにより、各ブラシに給電される。
【0003】
この種のモータでは、モータハウジングを導電材料により構成して、接地電位部に接続されるピグテールを、モータハウジングに電気的に接続する構成をとることが多い。特許文献1に示されたモータでは、リードプレートと呼ばれる導電性の接続板を用意して、接地電位部に接続されるピグテールをこの接続板に接続し、該接続板をブラシ保持プレートを貫通させたネジでモータハウジングに締結することにより、接地電位部に接続されるピグテールをモータハウジングに電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−107651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されたモータでは、接地されるピグテールを導電性の接続板を介してモータハウジングに接続していたため、部品点数が多くなる上に、ピグテールを接続板に接続する作業と、接続板をモータハウジングに締結する作業とが必要になり、モータの組み立て工数が多くなるのを避けられなかった。また接続板を、ブラシ保持プレートを貫通させたネジでモータハウジングに締結していたため、ネジの締め付けが緩いと、モータを駆動しているときに振動でネジが緩むおそれがあった。またネジが緩むのを防ぐためにネジの締め付けをきつくすると、絶縁材料からなるブラシ保持プレートが割れることがあった。そのため、モータを組み立てる際にネジの締め付けトルクの管理を厳密に行なう必要があり、組み立て工程の管理が面倒で、組み立て作業性が悪く、モータの製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ピグテールをモータハウジングに直接接続することができるようにして部品点数の削減と組み立て工数の削減とを図るとともに、ピグテールをモータハウジングに接続する際にネジの締め付けトルクの管理を行なう必要性をなくして、組み立て作業性を向上させ、コストの低減を図ることができるようにしたモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わるモータは、導電性材料により形成されて軸線方向の一端が開口した筒状のモータハウジングと、モータハウジングの周壁部の内側に設けられたステータと、モータハウジングの開口部の内側に嵌合されてモータハウジングに対して固定された絶縁樹脂製のブラシ保持プレートと、モータハウジング及びブラシ保持プレートに回転自在に支持されたロータ鉄心と該ロータ鉄心に巻かれたコイルと該コイルに接続されたコンミュテータとを有するロータと、ブラシ保持プレートに保持されて先端がコンミュテータに接触させられた複数のブラシと、複数のブラシにそれぞれ一端が接続された複数のピグテールとを備えている。複数のピグテールの内の少なくとも一つは、接地電位部に接続されるアースピグテールであり、アースピグテールは、モータハウジングとブラシ保持プレートとの間に挟み込まれた状態でモータハウジングに直接接触させられて該モータハウジングに電気的に接続される。
【0008】
上記のように構成すると、ブラシ保持プレートに接続板を固定することなく、アースピグテールをモータハウジングに直接接続することができるため、部品点数の削減を図ることができる。また上記のように構成すると、接続板をブラシ保持プレート及びモータハウジングに固定する作業を必要としないため、組み立て作業工数の削減を図ることができる。更に上記のように構成すると、アースピグテールをモータハウジングに接続する際にネジの締め付けトルクの管理を行なう必要がないため、モータの製造工程の管理を簡単にすることができる。
【0009】
本発明の好ましい一態様では、ブラシ保持プレートが、その肉厚部内に外周面に開口したピグテール保持穴を有し、アースピグテールが、ピグテール保持穴内に挿入されてブラシ保持プレートに対して固定される。ブラシ保持プレートは、モータハウジングの開口部の内側に圧入され、アースピグテールのピグテール保持孔の開口端から外部に露出している部分が、ブラシ保持プレートの外周とモータハウジングとの間に挟み込まれることにより、モータハウジングに電気的に接続される。
【0010】
本発明の他の態様では、アースピグテールが、ブラシ保持プレートの外周部を経てブラシ保持プレートの外面側に導出されて該ブラシ保持プレートの外面に固定される。ブラシ保持プレートは、モータハウジングの開口部の内側に圧入され、アースピグテールのブラシ保持プレートの外周面に添う部分が、ブラシ保持プレートの外周とモータハウジングとの間に挟み込まれることにより、モータハウジングに電気的に接続される。
【0011】
本発明の他の態様では、アースピグテールが、ブラシ保持プレートの内面側に位置させて該ブラシ保持プレートの外周寄りの部分に形成された凹部内に挿入されて、ブラシ保持プレートに対して固定される。またモータハウジングの周壁部の開口端寄りの部分の内径が拡大されることにより、モータハウジングの開口部に拡大径部が形成されて、該拡大径部と他の部分との間に段部が形成される。ブラシ保持プレートは、モータハウジングの拡大径部の内側に圧入され、アースピグテールの凹部内に挿入された部分が、ブラシ保持プレートとモータハウジングの段部との間に挟み込まれることにより、モータハウジングに電気的に接続される。
【0012】
このように構成すると、アースピグテールを外部に露出させることなく、モータハウジングに電気的に接続することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アースピグテールを接続板を用いることなくモータハウジングに直接接続することができるため、部品点数及び組み立て作業工数の削減を図ることができる。またアースピグテールをモータハウジングに接続する際にネジの締め付けトルクの管理を行なう必要がないため、モータの製造工程の管理を簡単にすることができ、部品点数及び組み立て工数の削減を図ることができることと相俟って、モータの製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係わるモータの一実施形態の全体的な構成を示した縦断面図である。
【図2】図1の実施形態で用いるブラシ保持プレートとブラシ保持プレートに保持されたブラシとを示した平面図である。
【図3】図1の実施形態で用いるブラシ保持プレートのピグテール保持穴が設けられた部分を拡大して示した要部の拡大断面図である。
【図4】図1の実施形態で用いるブラシ保持プレートのピグテール保持穴内にアースピグテールを挿入して固定した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態で用いるブラシ保持プレートと該ブラシ保持プレートに固定されたピグテールとを示した要部の拡大断面図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態で用いるブラシ保持プレートと該ブラシ保持プレートに固定されたピグテールとブラシ保持プレートが嵌合されたモータハウジングとを示した要部の拡大断面図である。
【図7】(A)は図6の実施形態でブラシ保持プレートに設ける凹部と該凹部内に設けられたフックとを示した要部の拡大正面図である。(B)及び(C)はそれぞれ同実施形態で用いるフックの異なる例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1ないし図4を参照すると、本発明に係わるモータの第1の実施形態の構成が示されている。本実施形態のモータ1は、モータハウジング2と、モータハウジングの周壁部の内側に設けられたステータ3と、モータハウジング2の内側に圧入されて保持されたブラシ保持プレート4と、モータハウジング2及びブラシ保持プレート4に回転自在に支持されたロータ5と、ブラシ保持プレート4に取り付けられたブラシホルダ6,6′内にそれぞれ保持されて、ロータ5に設けられたコンミュテータ504に接触させられたブラシ7,7′と、ブラシ7,7′にそれぞれ接続されたピグテール8,8′とを備えている。以下、これらの各部について詳述する。
【0016】
モータハウジング2は、鉄等の導電性を有する強磁性材料の板を絞り加工することにより形成された円筒体からなっていて、その周壁部201の軸線方向の一端に開口部2aが形成され、周壁部201の開口端の外側にはフランジ202が形成されている。モータハウジング2の周壁部201の軸線方向の他端を閉じるように底壁部203が設けられ、底壁部203の中央部には、ロータ5のシャフト503を軸受けする球軸受け505を保持するための空所を内側に有する円筒状の軸受け保持部203aが一体に形成されている。本実施形態では、モータハウジング2の周壁部201の開口端寄りの部分の内径が拡大されることにより、開口部2aに拡大径部201aが形成され、周壁部201の拡大径部201aと他の部分201bとの間に、周壁部201の周方向に連続して延びる段部201cが形成されている。本実施形態では、モータハウジング2の周壁部201がステータのヨークを兼ねている。
【0017】
モータハウジング2の周壁部201の内周には、該周壁部の周方向に並べて配置された複数の円弧状の永久磁石301が接着等により固定されている。永久磁石301は、周壁部201の周方向にN極とS極とが交互に並ぶように着磁され、ステータヨークを兼ねる周壁部201と永久磁石301とにより、モータハウジングの内側にステータ3が構成されている。
【0018】
図2に示されたように、ブラシ保持プレート4は、絶縁樹脂により円板状に形成されていて、その中央部にはロータのシャフトを貫通させるための孔401が形成されている。ブラシ保持プレート4の一方の主面(外面)4Aの中央には、孔401を同心的に取り囲む環状の軸受け保持部402が形成されている。孔401の内周には、軸受け保持部402内に圧入された軸受けを軸線方向に位置決めするための内フランジ部403(図3参照)が形成されている。
【0019】
ブラシ保持プレート4の他方の主面(内面)4Bには、2つの中空のブラシホルダ6,6′が取り付けられている。2つのブラシホルダ6,6′は、ブラシ保持プレートの周方向に90°の角度間隔で並ぶように設けられていて、それぞれの両側壁にはスリット601が形成されている。ブラシホルダ6,6′内にそれぞれブラシ7,7′がスライド自在に保持されている。ブラシホルダ6,6′内に保持されたブラシ7,7′は、ブラシ保持プレート4に取り付けられてブラシホルダ6,6′のそれぞれの一方の側壁に設けられたスリット601を通してブラシホルダ6、6′内に挿入されたバネ10,10′により、ブラシ保持プレート4の径方向の内側に付勢されている。
【0020】
ブラシホルダ6,6′内に保持されたブラシ7,7′にはそれぞれピグテール8,8′の後端部が接続されている。ピグテール8,8′は、編組導体などのフレキシブルな導体からなっていて、ブラシホルダ6,6′のそれぞれの他方の側壁に設けられたスリット601を通してブラシホルダ6,6′から外部に引出されている。
【0021】
ブラシ保持プレート4は、そのブラシホルダ6,6′が取り付けられた面をモータハウジング2内に向けた状態で、モータハウジング2の開口部2aの内側に圧入することにより、モータハウジング2の開口部に取り付けられる。
【0022】
本実施形態において、一方のブラシ7は、ピグテール8を通してモータを駆動する直流電源のマイナス端子に接続されるブラシであり、他方のブラシ7′はピグテール8′を通して直流電源のプラス端子に接続されるブラシである。本実施形態では、直流電源のマイナス端子がモータハウジング2と共に接地電位部に接続され、直流電源のマイナス端子に接続される一方のブラシ7がピグテール8を通してモータハウジング2に接続される。
【0023】
本明細書では、複数のブラシ7,7′にそれぞれ接続されたピグテール8,8′のうち、接地電位部に接続されるピグテール8を、アースピグテールと呼ぶ。アースピグテール8は、ブラシ保持プレート4をモータハウジング2に取り付ける際に、ブラシ保持プレート4をモータハウジング2との間に挟み込まれた状態で配置されることにより、モータハウジング2に電気的に接続される。
【0024】
そのため、本実施形態では、図3に示すように、ブラシ保持プレート4の外周寄りの部分の肉厚部内に、ピグテール8が引出されるブラシホルダ6の近傍に位置させて、ブラシ保持プレート9の径方向に延びるピグテール保持穴405が設けられている。ピグテール保持穴405は、ピグテール8を挿入し得る内径を有するように設けられていて、その一端がブラシ保持プレート4の外周に開口させられている。図3に示されているように、ブラシ保持プレート4の他方の主面(内面)4Bには、ピグテール保持穴405の内側に位置させて、凹部406が形成され、ブラシ保持プレート4の外周面には、ピグテール保持穴405の開口部と凹部406との間をつなぐように溝407が形成されている。
【0025】
本実施形態においては、図4に示したように、ブラシ7に一端が接続されたアースピグテール8が、凹部406内と溝407内とを通してピグテール保持穴405内に導入されている。そして、ピグテール保持穴405内にアースピグテール8の先端が挿入された後、適宜の手段により、アースピグテール8がピグテール保持穴405内でブラシ保持プレート4に対して固定される。図示の例では、ブラシ保持プレート4のピグテール保持穴405に臨む部分の一部410が、図4に示したように、ブラシ保持プレート4の一方の主面4A側から、ポンチ20により押圧されて変形されることにより、ピグテール8に食い込まされて、アースピグテール8がブラシ保持プレート4に固定されている。
【0026】
上記のようにして、アースピグテール8の先端がピグテール保持穴405内に固定された後、ブラシ保持プレート4がモータハウジング2の拡大径部201aの内側に圧入されてブラシ保持プレート4がモータハウジング2の開口部に取り付けられる。このようにしてブラシ保持プレート4をモータハウジング2に取り付けた状態にしたときに、アースピグテール8のピグテール保持穴405の開口端から外部に露出してブラシ保持プレートの外周に添っている部分が、ブラシ保持プレート4の外周とモータハウジング2の拡大径部201aとの間に挟み込まれ、これにより、アースピグテール8がモータハウジング2に対して固定されるとともに、モータハウジング2に電気的に接続される。本実施形態のように、アースピグテール8を、ブラシ保持プレート4の外周に設けた溝407内を通してピグテール保持穴405内に導入する構造にすると、アースピグテール8を外部に露出させることなく、モータハウジング2に電気的に接続することができる。
【0027】
他方のブラシ7′に接続されたピグテール8′は、ブラシ保持プレート4を貫通させた状態で設けられた端子金具12(図2参照)に半田付けされ、端子金具12を通して直流電源のプラス側端子に接続される。
【0028】
ロータ5は、ステータ3の磁極にギャップを介して対向する歯部を有するロータ鉄心501と、該ロータ鉄心501のスロットに巻かれた電機子コイル502と、ロータ鉄心501の軸心部を貫通したロータシャフト503と、ロータシャフト503に取り付けられて電機子コイル502に接続されたコンミュテータ504と、ロータシャフト503の後端部及び先端寄りの部分をそれぞれ支持する球軸受け505及び506とを備えている。
【0029】
ロータ5は、ロータ鉄心501をステータ3の内側に位置させた状態でモータハウジング2内に挿入されて、そのシャフト503が、モータハウジング2の底壁部に設けられた軸受け保持部203a内に保持された球軸受け505と、ブラシ保持プレート4に設けられた軸受け保持部402の内側に保持された球軸受け506とにより、モータハウジング2及びブラシ保持プレート4に対して回転自在に支持される。このようにロータ5を取り付けた状態で、ブラシ7,7′がコンミュテータ504に接触させられる。
【0030】
上記のモータ1の組立は例えば次のようにして行う。モータハウジング2を製作した後、該モータハウジング2の周壁部201の内側に永久磁石301を固定してステータ3を組み立てる。またロータ鉄心501に電機子コイル502を巻回した後、ロータシャフト503の後端部に軸受け505を保持させてロータ5を組み立てる。またブラシ保持プレート4にブラシホルダ6を介してブラシ7を保持した後、アースピグテール8をピグテール保持穴405内に挿入し、アースピグテール8の先端をピグテール保持穴内でブラシ保持プレート4に固定する。次いで、ロータ5をステータ3の内側に挿入して、シャフト503の後端部に取り付けられた軸受け505をモータハウジング2の軸受け保持部203aの内側に挿入する。このとき軸受け505と軸受け保持部203aの底部との間に板バネ13を介在させておく。ロータ5をステータ3の内側に挿入した後、ブラシ保持プレート4をモータハウジング2の開口部2aの内側に圧入して、ブラシ保持プレート4の外周に添わされているアースピグテール8の露出部分をブラシ保持プレート4とモータハウジング2との間に挟み込む。またブラシホルダ6,6′に保持されたブラシ7,7′をコンミュテータ504に接触させる。その後、シャフト503に軸受け506の内輪を嵌合させて、軸受け506をブラシ保持プレート4の軸受け保持部402内に圧入する。
【0031】
上記の実施形態のように構成すると、接続板を用いることなくアースピグテール8をモータハウジング2に直接接続することができるため、部品点数の削減を図ることができる。またアースピグテールを接続するための接続板をブラシ保持プレート4及びモータハウジング2に固定する作業を必要としないため、組み立て作業工数の削減を図ることができる。更に上記のように構成すると、アースピグテール8をモータハウジング2に接続する際にネジの締め付けトルクの管理を行なう必要がないため、モータの製造工程の管理を簡単にすることができる。
【0032】
上記のように、本発明においては、アースピグテール8を、モータハウジング2とブラシ保持プレート4との間に挟み込むことにより、アースピグテールをモータハウジング2に直接接触させて、アースピグテールとモータハウジングとの間の電気的な接続を図る。アースピグテール8をモータハウジング2とブラシ保持プレート4との間に確実に挟み込むためには、ブラシ保持プレート4をモータハウジングに圧入する際にアースピグテール8の位置がずれないように、アースピグテール8をブラシ保持プレート4の所定位置に位置決めして、固定しておくことが好ましい。上記の実施形態では、アースピグテール8の先端をピグテール保持穴405内に挿入して、該ピグテール保持穴内でアースピグテールの先端をブラシ保持プレート4に対して固定することにより、アースピグテールの位置ずれを防いでいるが、ブラシ保持プレート4をモータハウジング2に圧入する際にアースピグテールの位置ずれを防ぐための構造は上記の実施形態に示したものに限定されない。
【0033】
図5は、本発明の他の実施形態の要部を示したものである。この実施形態では、ブラシ保持プレート4の一方の主面(ブラシ保持プレートの外面)4Aの外周寄りの部分に、アースピグテール8の先端を圧入して固定するフック412が設けられている。アースピグテール8は、ブラシ保持プレート4の外周部を経てブラシ保持プレート4の外面に導出されて、その先端がフック412内に押し込まれることによりブラシ保持プレート4の外面に固定される。この例では、ブラシ保持プレート4がモータハウジング2の開口部に圧入された際に、アースピグテール8のブラシ保持プレート4の外周面に添う部分が、ブラシ保持プレート4の外周とモータハウジング2の開口部の内周との間に挟み込まれることにより、アースピグテール8がブラシ保持プレート及びモータハウジングの双方に固定されるとともに、モータハウジングに電気的に接続される。
【0034】
図6及び図7は、本発明の他の実施形態の要部を示したものである。この実施形態では、ブラシ保持プレート4の内面(主面4B)の外周寄りの部分に形成された凹部406内に位置させて、アースピグテールを固定するフック415が、ブラシ保持プレート4と一体に形成されている。フック415はアースピグテールの断面形状に応じて適宜の形状に構成することができる。アースピグテール8の断面形状がほぼ円形である場合には、例えば、図7(A)及び(B)に示したように、アースピグテール8が圧入される断面が円形のピグテール保持孔415aと、この保持孔内にアースピグテールを導入するための溝415bとを有するようにフック415を構成することができる。またアースピグテール8が扁平な編組導体からなる場合には、図7(C)に示すように、アースピグテール8が圧入される断面が長円形のピグテール保持孔415a′と、この保持孔内にアースピグテールを導入するためのテーパ付きの溝415b′とを有するようにフック415を構成することができる。
【0035】
本実施形態においては、ブラシホルダ6から導出されたアースピグテール8が凹部406内に挿入されてフック415内に押し込まれることにより、ブラシ保持プレート4に対して固定される。また前記の実施形態と同様に、モータハウジング2の周壁部201の開口端寄りの部分の内径が拡大されることにより、モータハウジングの開口部に拡大径部201aが形成され、この拡大径部と他の部分201bとの間に段部201cが形成されている。ブラシ保持プレート4の凹部406内にアースピグテール8が挿入されて固定された後、該ブラシ保持プレート4が、モータハウジング2の拡大径部201aの内側に圧入される。これにより、アースピグテール8の凹部406内に挿入された部分の先端寄りの部分が、ブラシ保持プレート4とモータハウジング2の段部201cとの間に挟み込まれることにより、アースピグテール8がブラシ保持プレート4及びモータハウジング2の双方に対して固定されるとともに、モータハウジング2に電気的に接続される。このように構成すると、アースピグテール8を外部に露出させることなく、モータハウジング2に電気的に接続することができる。
【0036】
上記の実施形態では、ブラシが2個設けられているが、本発明は、更に多くのブラシが設けられる場合(例えば4個のブラシが90°間隔で設けられる場合)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 モータ
2 モータハウジング
2a モータハウジングの開口部
201 モータハウジングの周壁部
201a モータハウジングの拡大径部
201c モータハウジングの段部
203 モータハウジングの底壁部
3 ステータ
301 永久磁石
4 ブラシ保持プレート
5 ロータ
501 ロータ鉄心
502 電機子巻線
503 ロータシャフト
6 ブラシホルダ
7 接地側のブラシ
7′非接地側のブラシ
8 アースピグテール
8′非接地側のピグテール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料により形成されて軸線方向の一端が開口した筒状のモータハウジングと、前記モータハウジングの周壁部の内側に設けられたステータと、前記モータハウジングの開口部の内側に嵌合されて前記モータハウジングに対して固定された絶縁樹脂製のブラシ保持プレートと、前記モータハウジング及びブラシ保持プレートに回転自在に支持されたロータ鉄心と該ロータ鉄心に巻かれたコイルと該コイルに接続されたコンミュテータとを有するロータと、前記ブラシ保持プレートに保持されて先端が前記コンミュテータに接触させられた複数のブラシと、前記複数のブラシにそれぞれ一端が接続された複数のピグテールとを具備し、
前記複数のピグテールのうちの少なくとも一つは、接地電位部に接続されるアースピグテールであり、
前記アースピグテールは、前記モータハウジングと前記ブラシ保持プレートとの間に挟み込まれた状態で前記モータハウジングに直接接触させられて該モータハウジングに電気的に接続されているモータ。
【請求項2】
前記ブラシ保持プレートは、その外周面に開口したピグテール保持穴を有し、
前記アースピグテールは、前記ピグテール保持穴内に挿入されて前記ブラシ保持プレートに対して固定され、
前記ブラシ保持プレートは、前記モータハウジングの開口部の内側に圧入され、
前記アースピグテールの前記ピグテール保持穴の開口端から外部に露出している部分が、前記ブラシ保持プレートの外周と前記モータハウジングとの間に挟み込まれることにより、前記モータハウジングに電気的に接続されている請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記アースピグテールは、前記ブラシ保持プレートの外周部を経て前記ブラシ保持プレートの外面側に導出されて該ブラシ保持プレートの外面に固定され、
前記ブラシ保持プレートは、前記モータハウジングの開口部の内側に圧入され、
前記アースピグテールの前記ブラシ保持プレートの外周面に添う部分が、前記ブラシ保持プレートの外周と前記モータハウジングとの間に挟み込まれることにより、前記モータハウジングに電気的に接続されている請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記アースピグテールは、前記ブラシ保持プレートの内面側に位置させて該ブラシ保持プレートの外周寄りの部分に形成された凹部内に挿入されて、前記ブラシ保持プレートに対して固定され、
前記モータハウジングの周壁部の開口端寄りの部分の内径が拡大されることにより、前記モータハウジングの開口部に拡大径部が形成されて、該拡大径部と他の部分との間に段部が形成され、
前記ブラシ保持プレートは、前記モータハウジングの前記拡大径部の内側に圧入され、
前記アースピグテールの前記凹部内に挿入された部分が、前記ブラシ保持プレートと前記モータハウジングの段部との間に挟み込まれることにより、前記モータハウジングに電気的に接続されている請求項1に記載のモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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