説明

モータ

【課題】製造コストの増加を抑えながら放熱性を確保できるモータを提供すること。
【解決手段】モータ1は、駆動コイル33を搭載する環状のステータコア32と、内側にステータコア32を保持する筒状ケース11と、ロータ40を回転可能に支持するための第2軸受ホルダ13を有する。ステータコア32は、筒状ケース11の開口から突出する円環状突出部分34を備えており、第2軸受ホルダ13は、ステータコア32の円環状突出部分34の先端部分34aに取り付けられて円環状突出部分34を外側から被っている。筒状ケース11を鉄系金属材料から形成し、第2軸受ホルダ13をアルミニウム系金属から形成しているので、これらの双方をアルミニウム系金属材料から形成した場合と比較して、モータ1の製造コストを抑えることができる。また、第2軸受ホルダ13はステータコア32の全長の1/4を被っているので、モータ1の放熱性を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動コイルを搭載する環状のステータコアをモータハウジングの内側に保持する構成のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動コイルを搭載する環状のステータコアを備えるステータを有しており、ロータがステータの内側に回転可能に配置されている構成のモータは特許文献1に記載されている。同文献のモータは、モータハウジングとして、内側にステータコアを保持する筒状ケースと、ロータを回転可能に支持するための軸受を保持するフランジを備えている。ステータコアは筒状ケースからモータ軸線方向に僅かに突出する突出部分を備えており、フランジは、ステータコアの突出部分に取り付けられている。同文献では、駆動コイルで発生してモータハウジング内に篭る熱を外部に逃がすために、筒状ケースおよびフランジを熱導電性の高いアルミニウム系金属材料から形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−290915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、アルミニウム系金属材料は、モータハウジングに一般的に用いられる鉄系金属材料と比較して高価なので、筒状ケースおよびフランジのいずれもアルミニウム系金属材料から形成した場合には、モータの製造コストが嵩むという問題がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、製造コストの増加を抑えながら放熱性を確保することができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、駆動コイルを搭載する環状のステータコアと、前記ステータコアの内側に配置されたロータと、内側に前記ステータコアを保持している筒状ケースと、前記ロータを回転可能に支持するための軸受を備える軸受ホルダとを有するモータにおいて、前記ステータコアは、前記筒状ケースの開口から突出する突出部分を備えており、前記軸受ホルダは、前記筒状ケースよりも熱伝導率の高い材料から形成されており、前記ステータコアの前記突出部分の先端部分に取り付けられて当該突出部分を外側から被っていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、モータハウジングとして機能する筒状ケースと軸受ホルダのうち、軸受ホルダを筒状ケースよりも熱伝導率の高い材料から形成している。従って、筒状ケースと軸受ホルダの双方を熱伝導率の高い材料を用いて形成する場合と比較して、モータの製造コストを抑えることができる。例えば、筒状ケースを鉄系金属材料から形成し、軸受ホルダをアルミニウム系金属材料から形成すれば、筒状ケースと軸受ホルダの双方をアルミニウム系金属材料から形成した場合と比較して、モータの製造コストを抑えることができる。また、軸受ホルダは、ステータコアにおいて、筒状ケースの開口から突出する突出部分の先端部分に取り付けられて、この突出部分を外側から被うものとなっているので、筒状ケースから突出しているステータコアの突出部分の突出寸法を長くすることによって、軸受ホルダがステータコアを被う面積を広くすることができる。従って、モータの放熱性を向上させることができる。
【0008】
本発明において、前記軸受ホルダは、前記突出部分の前記先端部分が内側に嵌め込まれている環状固定部と、前記環状固定部と前記筒状ケースの前記開口との間に位置する前記突出部分の環状外周面を当該環状外周面との間に隙間を形成した状態で外周側から被う環状カバー部とを備えていることが望ましい。このようにすれば、ステータコアの突出部分の先端部分を軸受ホルダの環状固定部に嵌め込む際に、環状カバー部の内側を通過する突出部分の先端部分が環状カバー部の内周面に接触して当該内周面を削ってしまうことを防止或いは抑制できる。よって、軸受ホルダをステータコアに取り付ける作業が容易になる。
【0009】
本発明において、前記筒状ケースは、前記ステータコアを内側に押圧した状態で保持しており、前記ステータコアの前記先端部分は、前記軸受ホルダの前記環状固定部によって内側に押圧された状態となっていることが望ましい。例えば、ステータコアが筒状ケースの内側に焼き嵌めによって固定される場合、或いは、ステータコアが筒状ケースに圧入されて内側に保持されている場合などには、筒状ケースはステータコアを内側に押圧した状態で保持するので、筒状ケースから突出しているステータコアの突出部分は、その先端側が半径方向外側に広がった状態に反ることがある。従って、軸受ホルダがステータコアに取り付けられたときに、軸受ホルダの環状固定部がステータコアの突出部分の先端部分を内側に押圧すれば、ステータコアの突出部分の反りを抑制することができる。また、ステータコアの突出部分の先端部分が軸受ホルダの環状固定部の内側に嵌め込まれることによって突出部分の反りが抑制されると、ステータコアの円筒度が高まるので、モータのコギングトルクが増加することを抑制できる。
【0010】
この場合において、筒状ケースがステータコアを内側に押圧した状態で保持するためには、前記筒状ケースは、鉄系金属製であり、前記ステータコアは、焼き嵌めによって前記筒状ケースに保持されている構成を採用することができる。
【0011】
また、この場合において、前記ステータコアは、周方向に並べた複数のステータコア片から構成されている構成を採用することができる。
【0012】
本発明において、モータハウジングの放熱性を向上させるためには、前記ステータコアの軸線方向における突出部分の長さ寸法は、当該ステータコアの長さ寸法の1/4以上であることが望ましい。このようにすれば、軸受ホルダがステータコアを被う面積を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、モータハウジングとして機能する筒状ケースと軸受ホルダのうち、軸受ホルダを筒状ケースよりも熱伝導率の高い材料から形成している。従って、筒状ケースと軸受ホルダの双方を熱伝導率の高い材料を用いて形成する場合と比較して、モータの製造コストを抑えることができる。また、軸受ホルダは、ステータコアにおいて、筒状ケースの開口から突出する突出部分の先端に取り付けられて、この突出部分を外側から被うものとなっているので、突出部分の突出寸法を長くすることによって、軸受ホルダがステータコアを被う面積を広くすることができ、これにより、モータの放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るモータの外観を示す説明図である。
【図2】図1のモータの縦断面図である。
【図3】モータハウジングの縦断面図である。
【図4】モータハウジングとステータを組み立てる組み立て動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態に係るモータを、図面を参照しながら説明する。以下の説明では、モータ軸線方向の一方側を「反出力側(回転軸が突出している側とは反対側)」として説明し、モータ軸線方向の他方側を「出力側(回転軸が突出している側)」として説明する。また、参照する図面において、モータ軸線については「L」で示し、モータ軸線方向の一方側(反出力側)を「L1」で示し、モータ軸線方向の他方側(出力側)を「L2」で示してある。
【0016】
(全体構成)
図1(a)は本発明の実施の形態に係るモータの側面図であり、図1(b)はモータを反出力側L1からみた背面図である。図2はモータ1の縦断面図である。本例のモータ1は比較的出力トルクの大きい永久磁石型同期電動機である。図1、図2に示すように、モータ1は、モータハウジング10と、モータハウジング10の内側に構成された筒状のステータ30と、ステータ30の内側に配置されたロータ40と、ロータ40の回転数や角度位置を検出するためのエンコーダ60と、モータハウジング10の反出力側L1に取り付けられたエンコーダカバー70を備えている。
【0017】
モータハウジング10は、モータ軸線L方向に開口を向けている筒状ケース11と、筒状ケース11の反出力側L1に配置された第1軸受ホルダ12と、筒状ケース11の出力側L2に配置された第2軸受ホルダ13を備えている。第1軸受ホルダ12はロータ40を回転可能に支持するための第1軸受14を保持しており、第2軸受ホルダ13はロータ40を回転可能に支持するための第2軸受15を保持している。
【0018】
第1軸受ホルダ12は、モータ軸線L回りの所定の角度位置に配線支持片16を備えている。配線支持片16は第1軸受ホルダ12から半径方向外側に突出した突出板部16aと、突出板部16aの先端から出力側L2に折れ曲がり、筒状ケース11の外周面に沿って延びている固定板部16bを備えている。固定板部16bには、モータハウジング10の内側から外側に引き出された給電線17とエンコーダカバー70の内側から外側に引き出されたセンサ出力線18が接着剤と結束帯19によって固定されている。また、給電線17とセンサ出力線18において結束帯19によって固定板部16bに締め付けられている部分は、固定板部16bを含めて外周側からチューブ20により被われている。チューブ20は熱収縮チューブを加熱して収縮硬化させたものである。給電線17およびセンサ出力線18の先端部にはそれぞれコネクタ21、22が取り付けられている。
【0019】
ステータ30は、半径方向内側に突出する複数の突極31を等角度間隔に備える環状のステータコア32と、各突極31に絶縁部材30aを介して巻回された駆動コイル33を備えている。ステータコア32はそれぞれが突極31を備える複数の分割コア(ステータコア片)を環状に配列することにより構成されている。分割コアは薄板状の磁性鋼板を型抜きして形成した板材を積層して、ダボかしめ等により接合することにより形成されている。或いは、分割コアは金型を用いて磁性材料を成形してなる。分割コアは、出力側L2の先端部分から外側(環状に配列されたときに半径方向外側となる側)に向かってバリが発生しないように成形される。
【0020】
ステータコア32は一部分を筒状ケース11の開口から出力側L2に突出させた状態で筒状ケース11の内側に保持されている。本例において、筒状ケース11から突出しているステータコア32の円環状突出部分34の軸線方向の長さ寸法は、ステータコア32の軸線方向における長さ寸法の1/4を超えている。なお、本例において、ステータコア32の外周面形状(モータ軸線L方向から見たときの輪郭形状)は円形ではなく、周方向に沿って直線部分と円弧部分とを交互に備える形状をしている。このため、ステータコア32が筒状ケース11に保持された状態では、ステータコア32の外周面形状において、周方向に沿って直線部分となっている部分と筒状ケース11の間には周方向に一定間隔で隙間が形成されている。なお、外周面形状が円形のステータコア32を用いる場合には、ステータコア32が筒状ケース11に保持された状態では、ステータコア32と筒状ケース11は密着することになる。
【0021】
ここで、円環状突出部分34の先端部分34aには第2軸受ホルダ13が固定されており、円環状突出部分34は第2軸受ホルダ13によって被われている。
【0022】
ステータ30の反出力側L1には駆動コイル33の巻線端末が接続された配線基板35が配置されており、配線基板35には給電線17が接続されている。この給電線17は、筒状ケース11に形成された切欠き部11aに挿入されたブッシュ36を介してモータハウジング10の外側に引き出され、配線支持片16に固定されている。
【0023】
ロータ40は、回転軸41と、この回転軸41の外周側に固着された筒状の駆動用マグネット42を備えている。また、ロータ40は、駆動用マグネット42がステータコア32の突極31との間に僅かな隙間を空けた状態で配置されている。
【0024】
回転軸41は鉄系金属製であり、回転軸41の出力側L2の端部はモータハウジング10から外側に突出している。駆動用マグネット42は、周方向に湾曲した複数のマグネット片を環状に配置して構成されており、複数のマグネット片からなる駆動用マグネット42には飛散防止用のテープ51が巻き回されている。回転軸41において、駆動用マグネット42よりも反出力側L1に位置する軸部分にはボールベアリングからなる第1軸受14の内輪14aが装着されており、駆動用マグネット42よりも出力側L2に位置する軸部分にはボールベアリングからなる第2軸受15の内輪15aが装着されている。
【0025】
エンコーダ60は、回転軸41の反出力側L1の軸端部にマグネットホルダ61を介して取り付けられたセンサ用マグネット62と、モータ軸線L上でセンサ用マグネット62に対向配置されている感磁素子63と、感磁素子63を搭載するセンサ基板64を備えている。センサ基板64は、第2軸受ホルダ13の反出力側L1の端面に取り付けられた基板ホルダ65に固定されている。センサ用マグネット62、感磁素子63およびセンサ基板64はモータ軸線L上に配置されている。
【0026】
センサ用マグネット62は、円盤状であり、反出力側L1を向いている円形端面62aが磁極面となっている。円形端面62aは周方向に2分割されており、N極とS極が1極ずつ設けられている。感磁素子63は、互いに直交する方向に磁気抵抗パターンが形成された磁気抵抗素子であり、センサ基板64の出力側L2の端面において、センサ用マグネット62の中心と対向する位置に実装されている。センサ基板64の反出力側L1の面には、回転検出回路を構成する半導体装置等の電子部品が実装されている。センサ用マグネット62が1回転すると、感磁素子63からはA相およびB相の正弦波信号が2周期分出力される。回転検出回路はこれらA相およびB相の信号に増幅処理や補間処理を施して出力する。
【0027】
エンコーダカバー70は磁性材料からなり、本例では鉄系金属製である。エンコーダカバー70は円形底部71と円形底部71の周縁から出力側L2に延びる円筒部72を備えている。エンコーダカバー70は、円筒部72の出力側L2の端面を第1軸受ホルダ12の反出力側L1に当接させた状態で第1軸受ホルダ12に取り付けられている。エンコーダ60は、エンコーダカバー70の内側に位置している。ここで、センサ基板64には、回転検出回路からの信号出力を外部に取り出すためのセンサ出力線18が接続されている。このセンサ出力線18はエンコーダカバー70の円筒部72に形成された切欠き部70aに挿入されたブッシュ73を介してエンコーダカバー70の外側に引き出され、配線支持片16に固定されている。なお、図2において、センサ出力線18とエンコーダ60の接続部分は省略してある。
【0028】
(モータハウジング)
図2、図3を参照してモータハウジング10を詳細に説明する。図3はモータハウジング10の縦断面図である。筒状ケース11は、鉄系金属製である。筒状ケース11は、円筒部11bと、円筒部11bの反出力側L1の開口端で径方向内側に折れ曲がった環状の第1連結板部11cと、円筒部11bの出力側L2の開口端で径方向外側に折れ曲がった第2連結板部11d(図1(b)参照)を備えている。円筒部11bの反出力側L1の開口縁には周方向の一部分に切欠き部11aが形成されている。筒状ケース11は、図2に示すように、ステータコア32の出力側L2の一部分を出力側L2の開口から突出させた状態でステータコア32を保持している。
【0029】
第1軸受ホルダ12は、鉄系金属製である。第1軸受ホルダ12は、筒状ケース11の第1連結板部11cに反出力側L1で重なってネジにより止められている環状端板部12aと、環状端板部12aの内周縁から出力側L2に向けて突出している円筒部12bと、円筒部12bの先端部分から径方向内側に屈曲している環状底板部12cを備えている。環状端板部12aの外周縁において筒状ケース11の切欠き部11aと対向する部分には配線支持片16が形成されている。円筒部12bの内側において、円筒部12bと環状底板部12cにより形成された環状段部12dには、第1軸受14の外輪14bが保持されている。
【0030】
第2軸受ホルダ13は、アルミニウム系金属製である。第2軸受ホルダ13は、モータ軸線L方向から見た輪郭形状が略四角形の環状端板部80と、この環状端板部80の径方向外側部分から反出力側L1に向けて突出している外側筒部81(図1(b)参照)と、環状端板部80の径方向内側部分から反出力側L1に向けて突出している内側円筒部82を備えている。
【0031】
外側筒部81のモータ軸線L方向から見た輪郭形状は、略四角形をしており(図1(b)参照)、外側筒部81の内周形状は円形をしている。これにより、外側筒部81は肉厚に形成されている。外側筒部81には、ステータコア32において筒状ケース11の開口から出力側L2に露出している円環状突出部分34の先端部分34aが内側に嵌め込まれる円環状固定部81aと、円環状固定部81aと筒状ケース11の開口との間に位置しているステータコア32の円環状突出部分34の環状外周面34bを外周側から被う円環状カバー部81bが設けられている。円環状固定部81aおよび円環状カバー部81bのそれぞれは、モータ軸線L方向において一定幅を備えている。ここで、円環状カバー部81bの内径寸法は円環状固定部81aの内径寸法よりも大きく、更に、ステータコア32の外径寸法よりも大きい。従って、円環状カバー部81bは、ステータコア32の円環状突出部分34の環状外周面34bとの間に隙間Gを形成した状態で、円環状突出部分34を外側から被っている。円環状カバー部81bの反出力側L1の端面81cは筒状ケース11の第2連結板部11dと重なってネジにより止められている。
【0032】
内側円筒部82は、環状端板部80の側で内側に突出する円環状板部82aを備えている。内側円筒部82における円環状板部82aよりも反出力側L1の内側には、第2軸受15の外輪15bが保持されている。円環状板部82aの中心の円形開口はモータハウジング10から回転軸41を出力側L2に向けて突出させる開口部82bとなっている。
【0033】
(モータの組み立て)
図4(a)はモータハウジング10とステータ30を組み立てる組み立て動作の説明図であり、図4(b)はステータコア32の先端部分34aにおける第2軸受ホルダ13の固定構造の説明図である。モータ1を組み立てる際には、ステータコア32は、分割コアの状態で駆動コイル33を巻回した後に環状に配列され、加熱した筒状ケース11の内側に装着する焼き嵌めなどの方法によって筒状ケース11の内周面に固定される。その際に、ステータ30は、出力側L2から筒状ケース11の内側に挿入され、ステータコア32の出力側L2の一部分(円環状突出部分34)が筒状ケース11から露出した状態とされる。
【0034】
次に、第2軸受15を装着した状態の第2軸受ホルダ13が、ステータコア32の筒状ケース11から露出している円環状突出部分34に取り付けられる。すなわち、出力側L2からステータコア32に第2軸受ホルダ13を被せ、第2軸受ホルダ13の円環状固定部81aの内側にステータコア32の先端部分34aを嵌め込み、円環状カバー部81bの反出力側L1の端面81cと筒状ケース11の第2連結板部11dを当接させる。ステータコア32の先端部分34aの第2軸受ホルダ13の円環状固定部81a内への嵌め込みは、加熱した第2軸受ホルダ13にステータコア32の先端部分34aを装着する焼き嵌めなどの方法によって行う。この焼き嵌めに際して第2軸受ホルダ13を加熱する温度は、先に行なった焼き嵌めに際して筒状ケース11を加熱する温度よりも低い。
【0035】
ここで、ステータコア32が焼き嵌めによって筒状ケース11の内側に固定されると、筒状ケース11はステータコア32を内側に押圧した状態で保持するので、筒状ケース11から突出しているステータコア32の円環状突出部分34は、その先端側が半径方向外側に広がった状態に反った状態となるが、第2軸受ホルダ13の円環状カバー部81bの内径寸法は円環状突出部分34の外径寸法よりも大きいので、ステータコア32の先端部分34aが円環状カバー部81bの内側を通過する際に、先端部分34aが円環状カバー部81bの内周面に接触して当該内周面を削ってしまうことが防止、或いは、抑制される。従って、第2軸受ホルダ13をステータコア32に取り付ける作業が容易である。
【0036】
また、本例では、第2軸受ホルダ13がステータコア32の先端部分34aに取り付けられると、第2軸受ホルダ13の円環状固定部81aがステータコア32の先端部分34aを内側に押圧した状態となり、円環状突出部分34の反りを抑制する。ここで、円環状固定部81aによってステータコア32の円環状突出部分34の反りが抑制されると、ステータコア32の円筒度が高まるので、モータ1のコギングトルクが増加することを抑制できる。なお、第2軸受ホルダ13の外側筒部81は肉厚に形成されているので、円環状固定部81aの剛性が確保されている。よって、第2軸受ホルダ13の円環状固定部81aはステータコア32の円環状突出部分34の先端部分34aを内側に押圧することができる。
【0037】
第2軸受ホルダ13をステータコア32の先端部分34aに固定した後には、ステータコア32の内側に反出力側L1からロータ40を挿入し、第2軸受15を介して第2軸受ホルダ13にロータ40を支持させる。また、筒状ケース11の反出力側L1に第1軸受ホルダ12を固定して、第1軸受14を介して第1軸受ホルダ13にロータ40を支持させる。これによりステータ30はモータハウジング10の内側に配置された状態となり、ロータ40はステータ30の内側で回転可能な状態となる。
【0038】
その後、第1軸受ホルダ12の反出力側L1にエンコーダ60を構成する。しかる後に、エンコーダ60に反出力側L1からエンコーダカバー70を被せて、このエンコーダカバー70を第1軸受ホルダ12に固定する。
【0039】
なお、第2軸受ホルダ13をステータコア32の円環状突出部分34に取り付ける際に、第2軸受ホルダ13に第2軸受15を装着した状態としておくのに代えて、第2軸受15が装着されたロータ40を出力側L2からステータ30の内側に挿入しておき、第2軸受ホルダ13をステータコア32に固定する際に、第2軸受15を第2軸受ホルダ13に保持させてもよい。
【0040】
(作用効果)
以上、本例によれば、モータハウジング10を構成している筒状ケース11、第1軸受ホルダ12および第2軸受ホルダ13のうち、筒状ケース11と第1軸受ホルダ12を鉄系金属材料から形成し、第2軸受ホルダ13を熱伝導率の高いアルミニウム系金属材料から形成している。従って、筒状ケース11、第1軸受ホルダ12および第2軸受ホルダ13の全てをアルミニウム系金属材料から形成した場合と比較して、モータ1の製造コストを抑えることができる。また、第2軸受ホルダ13は、ステータコア32において、筒状ケース11の開口から突出する円環状突出部分34の先端部分34aに取り付けられて、この円環状突出部分34を外側から被うものとなっているので、筒状ケース11から突出しているステータコア32の円環状突出部分34の突出寸法を長くすることによって、第2軸受ホルダ13がステータコア32を被う面積を広くすることができる。例えば、本例のようにステータコア32の全長の1/4以上を円環状突出部分34とすれば、第2軸受ホルダ13がステータコア32を被う面積を確保できる。従って、モータ1の放熱性を向上させることができる。
【0041】
(その他の実施の形態)
なお、第2軸受ホルダ13は筒状ケース11より熱伝導率が高い金属材料から形成されていればよく、例えば、第2軸受ホルダ13をマグネシウム系金属製とすることもできる。
【0042】
また、第2軸受ホルダ13の円環状固定部81aの内周面と円環状カバー部81bの内周面を、出力側L2に向かって半径方向内側に傾斜するテーパー面として連続させてもよい。
【0043】
さらに、上記の例では、ステータコア32において筒状ケース11から突出した円環状突出部分34の寸法がステータコア32の全長の1/4程度とされているが、ステータコア32の全長の1/2を筒状ケース11から突出させることもできる。
【0044】
また、上記の例では、ステータコア32として分割コアから構成されるものを用いたが、全周で一体のステータコア32を用いたモータ1に本発明を適用してもよい。
【0045】
さらに、上記の例では、ステータコア32の円環状突出部分34を筒状ケース11の出力側L2に設け、第2軸受ホルダ13によって円環状突出部分34を外側から被っているが、筒状ケース11の反出力側L1からもステータコア32を突出させて、反出力側L1に突出させた第2の円環状突出部分をアルミニウム系金属材料から形成した第1軸受ホルダ12によって外側から被うように構成してもよい。
【0046】
次に、上記の例では、ステータコア32は焼き嵌めによって筒状ケース11の内周面に固定されているが、ステータコア32を筒状ケース11に圧入して固定することもできる。また、ステータコア32を筒状ケース11に挿入した後に、筒状ケース11を外側から内側に押すカシメを行って固定することもできる。さらに、ステータコア32を筒状ケース11に挿入する構成として、接着剤により固定してもよい。ここで、ステータコア32が分割コアから構成されている場合には、分割コアを環状に溶接した後に、筒状ケース11に挿入する構成として、接着剤によって固定することができる。
【0047】
また、上記の例では、第2軸受ホルダ13は焼き嵌めによってステータコア32の先端部分34aに固定されているが、圧入によって第2軸受ホルダ13をステータコア32に固定してもよい。また第2軸受ホルダ13の円環状固定部81aの内側に円環状突出部分34の先端部分34aを挿入した後に、円環状固定部81aを外側から内側に押すカシメを行って、第2軸受ホルダ13をステータコア32に固定することもできる。さらに、第2軸受ホルダ13の円環状固定部81aの内側に円環状突出部分34の先端部分34aを挿入する構成として、接着剤によって、第2軸受ホルダ13とステータコア32を固定してもよい。
【0048】
さらに、上記の例では、本発明を永久磁石同期電動機に適用した例を示したが、例えばステッピングモータや電磁石同期電動機等のその他の同期電動機や、誘導電動機、整流子電動機、その他の電動機に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 モータ
11 筒状ケース
13 第2軸受ホルダ
15 第2軸受
32 ステータコア
33 駆動コイル
34 円環状突出部分
34a 先端部分
40 ロータ
81a 円環状固定部
81b 円環状カバー部
G 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動コイルを搭載する環状のステータコアと、前記ステータコアの内側に配置されたロータと、内側に前記ステータコアを保持している筒状ケースと、前記ロータを回転可能に支持するための軸受を備える軸受ホルダとを有するモータにおいて、
前記ステータコアは、前記筒状ケースの開口から突出する突出部分を備えており、
前記軸受ホルダは、前記筒状ケースよりも熱伝導率の高い材料から形成されており、前記ステータコアの前記突出部分の先端部分に取り付けられて当該突出部分を外側から被っていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記軸受ホルダは、前記突出部分の前記先端部分が内側に嵌め込まれている環状固定部と、前記環状固定部と前記筒状ケースの前記開口との間に位置する前記突出部分の環状外周面を当該環状外周面との間に隙間を形成した状態で外周側から被う環状カバー部とを備えていることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2において、
前記筒状ケースは、前記ステータコアを内側に押圧した状態で保持しており、
前記ステータコアの前記先端部分は、前記軸受ホルダの前記環状固定部によって内側に押圧された状態となっていることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3において、
前記筒状ケースは、鉄系金属製であり、
前記ステータコアは、焼き嵌めによって前記筒状ケースに保持されていることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項4において、
前記ステータコアは、周方向に並べた複数のステータコア片から構成されていることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
前記ステータコアの軸線方向における突出部分の長さ寸法は、当該ステータコアの長さ寸法の1/4以上であることを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−9571(P2013−9571A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142359(P2011−142359)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】