説明

モールドコイルの製造方法

【課題】小型且つ生産性に優れ、巻線の端部と外部電極との接合信頼性が高いモールドコイルの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】
プラスチック成形法を用いて、磁性体粉末と熱硬化性樹脂を混練させた磁性体モールド樹脂で空芯コイルを封止する。キャビティを形成する複数の金型を有する成形金型を用いる。扁平面を有する線材を用いた空芯コイルの両端部に折曲部を形成する。折曲部から生ずる弾性によって空芯コイルの両端部における扁平面の少なくとも一部が成形金型内の底面部もしくは側面部を押圧するように空芯コイルをキャビティ内に配置する。成形金型を磁性体モールド樹脂が軟化できる温度以上に予熱し、キャビティ内に磁性体モールド樹脂を充填して空芯コイルを埋設する。磁性体モールド樹脂を熱硬化して成形体とし、空芯コイルの端部と接続するように電極膜を成形体に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモールドコイルの製造方法に関し、特に巻線の端部と外部電極との接合信頼性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイルを磁性体粉末と樹脂とを混練した磁性体モールド樹脂で封止してなるモールドコイルが広く利用されている。従来のモールドコイルの製造方法には、金属フレームを用いる方法がある。この方法は、金属フレームに巻線の端部を溶接などで接続し、固定する。そして、巻線全体を磁性体モールド樹脂で封止して成形体を得て、その成形体から露出する金属フレームを加工して外部電極を形成する。特許文献1において、金属フレームを用いたモールドコイルの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−311115
【特許文献2】特開2005−116708
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年における電子機器の小型化や高機能化の技術革新は著しく、それに伴い、モールドコイルのような電子部品もまた小型化や高性能化、更には低価格化などの要求が高まっている。しかしながら、金属フレームの使用は小型化や低背化の妨げになり、さらにコストの上昇を招く。そして、小型で高いインダクタンスを有するモールドコイルを得ようとするならば、所定のターン数を得るために細い線材を用いてコイルを作成する必要がある。また、小型化するにつれて外部電極も小さくせざるを得ない。そのため、小型化するにつれて巻線の端部と金属フレームの接合できる面積は減少する。巻線の端部と金属フレームの接合できる面積が減少してしまうと、巻線の端部と金属フレームの接合作業が困難になり、接触不良や接触抵抗の増加を招く。従って、小型のモールドコイルの製造において金属フレームの使用は、巻線の端部と金属フレームの間の接合信頼性の低下やコストの上昇を招く原因となっていた。
【0005】
そこで、金属フレームを用いずに導電性樹脂やめっき電極などの電極膜を用いて外部電極を形成する方法が特許文献2などに提案されている。特許文献2の方法では、以下のようにモールドコイルを作製する。まず、導線を一定のピッチごとに巻回して、巻軸方向と略直交する方向に並列する複数のコイル状導体を形成する。次に、複数のコイル状導体を未硬化状態の樹脂で覆った後、樹脂を硬化して樹脂成形体を形成する。そして、樹脂成形体を隣り合うコイル状導体の間で切断してそれぞれ1個のコイル状導体を有する樹脂成形チップを形成する。最後に、樹脂成形チップの両端に下地としての導電性樹脂を塗布した後硬化し、その表面に電気めっきを施すことにより外部電極を形成する。
【0006】
この方法では、巻線の端部の一部が露出する樹脂成形チップの上に導電性樹脂を塗布し、巻線の端部との接合を得て外部電極を形成する。従って、導電性樹脂が巻線の端部と接触できる面積は、巻線の端部の樹脂成形チップから露出する面積と同じかそれ以下となる。巻線の端部と導電性樹脂との接合面積が減少すると、巻線の端部と導電性樹脂との接触抵抗が高くなる。そのため、局部的な発熱や断線、またはモールドコイルの高抵抗化などの不良が生じやすくなる。特許文献2では、導線の樹脂成形チップから露出する部分が導線の径と同程度となる。そのため、小型のモールドコイルを得るために細い線材を用いた場合には導電性樹脂と導線との接合できる面積は非常に小さく、不良が生じやすい。
【0007】
そこで、本発明は小型且つ生産性に優れ、巻線の端部と外部電極との接合信頼性が高いモールドコイルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係るモールドコイルの製造方法は、プラスチック成形法を用いて、磁性体粉末と熱硬化性樹脂を混練させた磁性体モールド樹脂で空芯コイルを封止する。キャビティを形成する複数の金型を有する成形金型を用いる。扁平面を有する平角線を用いた空芯コイルの両端部に折曲部を形成する。折曲部から生ずる弾性によって空芯コイルの両端部における扁平面の少なくとも一部が成形金型内の底面部もしくは側面部を押圧するように空芯コイルをキャビティ内に配置する。成形金型を磁性体モールド樹脂が軟化できる温度以上に予熱し、キャビティ内に磁性体モールド樹脂を充填して空芯コイルを埋設する。磁性体モールド樹脂を熱硬化して成形体とする。成形体から露出した空芯コイルの両端部のそれぞれと接続するように電極膜を成形体に形成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係るモールドコイルの製造方法は、プラスチック成形法を用いて、磁性体粉末を分散させた磁性体モールド樹脂で空芯コイルを封止する。扁平面を有する平角線を巻回した空芯コイルと、キャビティを形成する複数の金型を有する成形金型を用いる。成形金型内の一つの面と空芯コイルの巻回部との間に空芯コイルの両端部における扁平面の少なくとも一部がその一つの面とが対向するようにキャビティ内に空芯コイルを配置する。成形金型を磁性体モールド樹脂が軟化できる温度以上に予熱し、空芯コイルを基準にその一つの面の反対側から磁性体モールド樹脂を充填して空芯コイルを埋設する。磁性体モールド樹脂を熱硬化して成形体とする。成形体から露出した空芯コイルの両端部のそれぞれと接続するように電極膜を成形体に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に係るモールドコイルの製造方法では、扁平面を有する線材を用いた空芯コイルの両端部に折曲部を形成する。そして、折曲部から生ずる弾性によって空芯コイルの両端部における扁平面の少なくとも一部が成形金型内の底面部もしくは側面部を押圧するように空芯コイルをキャビティ内に配置する。そのため、空芯コイルの端部の扁平面の一部が成形金型の底面部もしくは側面部に押し付けられた状態で、溶融状態の磁性体モールド樹脂で空芯コイルが封止される。これにより、封止で得られる成形体に空芯コイルの端部が露出しやすく、電極膜との接合が得られやすい。また、空芯コイルの端部の扁平面が露出するため電極膜と良好な接合面積を得ることができ、空芯コイルの端部と外部電極との接合信頼性を高めることができる。
【0011】
本発明の請求項3に係るモールドコイルの製造方法では、扁平面を有する線材を巻回した空芯コイルを用いる。そして、成形金型内の一つの面と空芯コイルの巻回部との間に空芯コイルの両端部における扁平面の少なくとも一部がその一つの面とが対向するようにキャビティ内に空芯コイルを配置する。さらに、空芯コイルを基準にその一つの面の反対側から磁性体モールド樹脂を充填して空芯コイルを埋設する。そのため、磁性体モールド樹脂は、空芯コイルの端部の扁平面をその一つの面に押し付けながらキャビティ内に充填される。このとき、磁性体モールド樹脂は溶融状態であるため粉末状とは異なり塊となるため、端部の扁平面とその一つの面との間に磁性体モールド樹脂が侵入しにくい。これにより、封止で得られる成形体に空芯コイルの端部が露出しやすく、電極膜との接合が得られやすい。また、空芯コイルの端部の扁平面が露出するため電極膜と良好な接合面積を得ることができ、空芯コイルの端部と外部電極との接合信頼性を高めることができる。
【0012】
金属フレームを用いず、電極膜を用いて外部電極を形成するため、モールドコイルの小型化や低背化に有利である。また、外部電極と巻線の端部を溶接などで接続する工程が無いため、工程不良や製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施例も用いる空芯コイルの斜視図である。
【図2】本発明の実施例で用いる成形金型を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の空芯コイルの配置を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施例の空芯コイルの端部の露出を説明する図である。
【図6】本発明のモールドコイルの製造方法を説明する図である。
【図7】本発明のモールドコイルの斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施例も用いる空芯コイルの斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施例の空芯コイルの配置を説明する図である。
【図10】本発明の第2の実施例の空芯コイルの端部の露出を説明する図である。
【図11】本発明の第3の実施例も用いる空芯コイルの斜視図である。
【図12】本発明の第3の実施例の空芯コイルの配置を説明する図である。
【図13】本発明の第3の実施例の空芯コイルの端部の露出を説明する図である。
【図14】本発明の第4の実施例も用いる空芯コイルの斜視図である。
【図15】本発明の第4の実施例で用いる成形金型を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図16】本発明の第4の実施例の空芯コイルの配置を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図17】本発明の第4の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図18】本発明の第4の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図19】本発明の第4の実施例のモールドコイルの製造方法を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図20】本発明の第4の実施例の空芯コイルの端部の露出を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施例)
図1〜図7を参照しながら、本発明のモールドコイルの製造方法の第1の実施例について説明する。図中の参照符号はそれぞれ、1は空芯コイル、2は上型、3は下型、4はキャビティ、5は磁性体モールド樹脂、6はパンチ、7は外部電極を示す。
【0015】
まず、第1の実施例で用いる空芯コイル1について説明する。図1に第1の実施例で用いる空芯コイルの斜視図を示す。空芯コイル1は、幅が0.25mm、厚さが0.06mmの扁平面を有する自己融着性の平角線を用い、断面が長円状の芯材を用いて外外巻きで12ターン巻く。そして、各端部1aを厚み方向に3箇所折り曲げ加工して、図1に示す端部1aがコイル1の巻線部の底面側に引き出された構造の空芯コイル1を得た。
【0016】
次に、本実施例で用いる成形金型について説明する。図2は本発明の実施例で用いる成形金型を示し、図2(a)は上面図、図2(b)は図2(a)のA−A断面図を示す。図2に示すように、本実施例で用いる成形金型は上型2と下型3を有し、上型2と下型3を組み合わせることによってキャビティ4が形成される。また、下型3は上型2と組み合わせることでキャビティ4の底面部を形成する。さらに下型3は、キャビティ4の底面部にキャビティ4の開口部方向に突出したキャビティ4の上下方向に昇降可能(垂直方向に移動可能)な位置出しピン3aと支持ピン3bが設けられている。
【0017】
本実施例では、位置出しピン3aは断面が長円状で、空芯コイル1を形成したときの芯材よりも径が30μm小さい柱状の金属棒を用いた。支持ピン3bは直径0.3mmの円柱状の金属棒を用いた。そして、位置出しピン3aはキャビティ4の底面部から突出する高さh1を初期状態として1.00mmに設定し、支持ピン3bはキャビティ4の底面部から突出する高さh2を初期状態として0.35mmに設定した。
【0018】
次に、第1の実施例のモールドコイルの製造方法について説明する。図3は本発明の第1の実施例の空芯コイルの配置を示す上面図である。図4〜図6に第1の実施例のモールドコイルの製造工程を示す。図7に本発明の第1の実施例のモールドコイルの斜視図を示す。なお、図4は、図2(a)のA−A断面図における各段階での断面を示している。
【0019】
図3及び図4(a)に示すように、空芯コイル1をキャビティ4内に配置し、成形金型(上型2、下型3)を180℃で予熱する。このとき、空芯コイル1は、位置出しピン3aが空芯コイル1の内径部分に挿入され、さらに支持ピン3b上に空芯コイル1の底面が載るように配置される。空芯コイル1の端部1aの扁平面の一部は、折り曲げ加工によって形成した折曲部から生ずる弾性(復元力)によってキャビティ4の底面部へと押し付けられて接する。また、予熱温度は磁性体モールド樹脂が軟化できる温度以上(磁性体モールド樹脂中の樹脂の軟化温度以上の温度)に設定すればよく、本実施例では180℃に設定した。
【0020】
図4(b)に示すように、上型2の開口部から空芯コイル1の上に所定量秤量した磁性体モールド樹脂5をキャビティ4内に投入し、成形金型の予熱で磁性体モールド樹脂5を溶融させる。本実施例では磁性体モールド樹脂5として、アモルファス合金粉末とノボラック型エポキシ樹脂とを混練分散し、その混練物を冷却後粉砕したものを用いた。なお、磁性体モールド樹脂中のアモルファス合金粉末の充填率は60Vol%になるように調製した。
【0021】
図4(c)に示すように、上型2の開口部にパンチ6をセットする。次に、図4(d)に示すように、パンチ6を用いて3kgfで5秒間加圧する。このとき、溶融状態の磁性体モールド樹脂5は、空芯コイル1を基準に底面部の反対側から充填されていく。つまり、溶融状態の磁性体モールド樹脂5は空芯コイル1の端部1aの扁平面を底面部に押し付ける方向に充填される。そのため、端部1aの扁平面と底面部との間に磁性体モールド樹脂5が侵入しにくい。次に、図4(e)に示すように、位置出しピン3aをキャビティ4の底面部の位置まで下降させた後、パンチ6を用いて5kgfで20秒間加圧する。このようにすると、位置出しピン3aのあった部分に磁性体モールド樹脂5が充填される。次に、パンチ6からの加圧をやめてパンチ6をフリー状態とした上で、図4(f)に示すように支持ピン3bをキャビティ4の底面部の位置まで下降させる。続いて再びパンチ6を用いて10kgfで20秒間加圧する。このようにすると、支持ピン3bのあった部分に磁性体モールド樹脂5が充填される。その後、180℃で10分間加熱放置して磁性体モールド樹脂5を硬化させる。
【0022】
磁性体モールド樹脂5を硬化させて得た成形体を成形金型から取り出して、サンドブラストでバリ取りを行う。図5に示すように、成形体の底面に空芯コイル1の端部1aの扁平面が露出しており、露出した端部1aの融着性の被覆を研磨除去する。図6に示すように、端部1aと接続するように、導電性樹脂7を塗布する。図7に示すように、めっき処理を行い外部電極8を形成してモールドコイルを得る。また、めっき処理によって形成される電極は、Ni、Sn、Cu、Au、Pdなどから1つもしくは複数を適宜選択して形成すればよい。
【0023】
(第2の実施例)
図8〜図10を参照しながら、本発明のモールドコイルの製造方法の第2の実施例について説明する。第2の実施例では、第1の実施例とは異なる形状の空芯コイルを用いて、第1の実施例と同様の方法で外形状が同じモールドコイルを作成する。また、第1の実施例で用いた成形金型を用い、磁性体モールド樹脂は同一組成のものを用いた。なお、第1の実施例と共通する部分の説明は割愛する。
【0024】
図8に第2の実施例で用いる空芯コイルの斜視図を示す。空芯コイル9は、第1の実施例で用いた平角線を用い、第1の実施例で用いた断面が長円状の芯材を用いて外外巻きで12ターン巻く。そして、各端部9aを幅方向に1箇所折り曲げ、さらに厚み方向に1箇所折り曲げ加工して、図8に示す端部9aがコイル9の巻線部の底面側に引き出された構造の空芯コイル9を得た。
【0025】
図9は本発明の第2の実施例の空芯コイルの配置を示す上面図である。図9に示すように空芯コイル9をキャビティ4内に配置する。このとき第1の実施例と同様に、空芯コイル9は、位置出しピン3aが空芯コイル9の内径部分に挿入され、さらに支持ピン3b上に空芯コイル9の底面が載るように配置される。また、空芯コイル9の端部9aの扁平面の一部は、第1の実施例と同様に、折り曲げ加工によって形成した折曲部から生ずる弾性(復元力)によってキャビティ4の底面部へと押し付けられて接する。
【0026】
その後、第1の実施例に示した方法で空芯コイル9を磁性体モールド樹脂5で埋設し、磁性体モールド樹脂5を硬化させる。磁性体モールド樹脂5を硬化させて得た成形体を成形金型から取り出して、サンドブラストでバリ取りを行う。図10に示すように、成形体の底面に空芯コイル9の端部9aの扁平面が露出しており、露出した端部9aの融着性の被覆を研磨除去する。第1の実施例と同様に、端部9aと接続するように導電性樹脂7を塗布し、めっき処理を行い外部電極8を形成してモールドコイルを得る。
【0027】
(第3の実施例)
図11〜図13を参照しながら、本発明のモールドコイルの製造方法の第3の実施例について説明する。第3の実施例では、上記実施例とは異なる形状の空芯コイルを用いて、第1の実施例と同様の方法で外形状が同じモールドコイルを作成する。また、第1の実施例で用いた成形金型を用い、磁性体モールド樹脂は同一組成のものを用いた。なお上記実施例と共通する部分の説明は割愛する。
【0028】
図11に第3の実施例で用いる空芯コイルの斜視図を示す。空芯コイル9は、第1の実施例で用いた平角線を用い、第1の実施例で用いた断面が長円状の芯材を用いて外外巻きで12ターン巻く。そして、各端部10aを厚み方向に2箇所折り曲げ加工し、図11に示す端部10aがコイル10の巻線部の両側面側に引き出された構造の空芯コイル10を得た。
【0029】
図12は本発明の第3の実施例の空芯コイルの配置を示す上面図である。図12に示すように空芯コイル10をキャビティ4内に配置する。このとき第1の実施例と同様に、空芯コイル10は、位置出しピン3aが空芯コイル10の内径部分に挿入され、さらに支持ピン3b上に空芯コイル10の底面が載るように配置される。また、空芯コイル10の端部10aの扁平面の一部は、折り曲げ加工によって形成した折曲部から生ずる弾性(復元力)によってキャビティ4の側面部へと押し付けられて接する。
【0030】
その後、第1の実施例に示した方法で空芯コイル10を磁性体モールド樹脂5で埋設する。このとき、空芯コイル10の端部10aはキャビティ4の側面部に押し付けられた状態である。さらに、磁性体モールド樹脂5はキャビティ4内に充填されるときに溶融状態であるため、粉末状とは異なり塊となって充填される。そのため、端部10aと上型3との間に磁性体モールド樹脂5は侵入しにくく、適正にキャビティ4内に磁性体モールド樹脂5が充填される。
【0031】
磁性体モールド樹脂5を硬化させる。磁性体モールド樹脂5を硬化させて得た成形体を成形金型から取り出して、サンドブラストでバリ取りを行う。図13に示すように、成形体の両側面には空芯コイル10の端部10aの扁平面が露出しており、露出した端部10aの融着性の被覆を研磨除去する。第1の実施例と同様に、端部10aと接続するように導電性樹脂7を塗布し、めっき処理を行い外部電極8を形成してモールドコイルを得る。
【0032】
(第4の実施例)
図14〜図20を参照しながら、本発明のモールドコイルの製造方法の第4の実施例について説明する。第4の実施例では、上記実施例とは異なる形状の空芯コイルを用いて、第1の実施例と外形状が同じモールドコイルを作成する。また、磁性体モールド樹脂は同一組成のものを用いた。なお上記実施例と共通する部分の説明は割愛する。
【0033】
まず、第4の実施例で用いる空芯コイル1について説明する。図14に第4の実施例で用いる空芯コイルの斜視図を示す。空芯コイル11は、第1の実施例で用いた平角線を用い、第1の実施例で用いた断面が長円状の芯材を用いて外外巻きで12ターン巻く。そして、図14に示すように両端部11aをコイル11の巻線部の一側面側に引き出した空芯コイル11を得た。
【0034】
次に、本実施例で用いる成形金型について説明する。図15に本発明の第3の実施例で用いる成形金型を示し、(a)は上面図、(b)は正面図を示す。図15に示すように、第4の実施例で用いる成形金型は上型12と下型13を有し、上型12と下型13を組み合わせることによってキャビティ14が形成される。上型12の側面部の一つに、キャビティ14内に突出する位置出しピン12aを設ける。このとき、位置出しピン12aは、位置出しピン12aが設けられる側面部に対して対向する側面部方向にキャビティ14内に突出し、その突出する方向の前後方向(キャビティ14の水平方向)に移動できるようにする。位置出しピン14aは第1の実施例と同様の断面が長円状の金属棒を用いた。
【0035】
次に、第4の実施例のモールドコイルの製造方法について説明する。図16〜図20に第3の実施例のモールドコイルの製造工程の主要部分を示す。なお、図16〜図19は、各工程における上面図と正面図を示し、(a)が上面図、(b)が正面図である。
【0036】
図16に示すように、空芯コイル11をキャビティ14内に配置し、成形金型を180℃で予熱する。このとき、位置出しピン12aを空芯コイル11の内径部分に挿入し、両端部11aの扁平面がキャビティ14の底面部と対向するように配置する。図17に示すように、上型13の開口部から空芯コイル11の上に所定量秤量した磁性体モールド樹脂5をキャビティ14内に投入し、成形金型の予熱で磁性体モールド樹脂5を溶融させる。
【0037】
図18に示すように、上型12の開口部にパンチ15をセットし、パンチ15を用いて5kgfで5秒間加圧する。空芯コイル11は位置出しピン12aのある部分を除いて、磁性体モールド樹脂5に封止される。このとき、溶融状態の磁性体モールド樹脂5は、空芯コイル11を基準に底面部の反対側から充填されていく。つまり、磁性体モールド樹脂5は、空芯コイル11の端部11aの扁平面を底面部に押し付けながらキャビティ14内に充填される。さらに、磁性体モールド樹脂5はキャビティ14内に充填されるときに溶融状態であるため、粉末状とは異なり塊となって充填される。そのため、端部11aの扁平面と底面部との間に磁性体モールド樹脂5が侵入せずに充填される。
【0038】
次に、パンチ15からの加圧をやめてパンチ15をフリー状態とした上で、図19(a)に示すように、その端部がキャビティ13の側面部の位置になるように位置出しピン12aを移動させる。さらに、図19(b)に示すように、パンチ15を用いて10kgfで20秒間加圧する。このようにすると、位置出しピン12aのあった部分に磁性体モールド樹脂5が充填される。その後、180℃で10分間加熱放置して磁性体モールド樹脂5を硬化させる。
【0039】
磁性体モールド樹脂5を硬化させて得た成形体を成形金型から取り出して、サンドブラストでバリ取りを行う。図20に示すように、成形体の一側面に空芯コイル11の端部11aの扁平面が露出しており、露出した端部11aの融着性の被覆を研磨除去する。第1の実施例と同様に、端部11aと接続するように導電性樹脂7を塗布し、めっき処理を行い外部電極8を形成してモールドコイルを得る。
【0040】
上記実施例では、外部電極として導電性樹脂とめっき処理を用いて電極膜を形成したが、導電性樹脂を用いずにめっき処理を複数回行って電極膜を形成しても良い。また、上記実施例では、プラスチック成形法として圧縮成形法を用いたが、これに限らずトランスファ成形法やインジェクション成形法などのプラスチック成形法を用いても実施できる。
【符号の説明】
【0041】
1:空芯コイル、1a:端部、2:上型、3:下型、3a:位置出しピン、3b:指示ピン、4:キャビティ、5:磁性体モールド樹脂、6:パンチ、7:導電性樹脂、8:めっき電極、9:空芯コイル、9a:端部、10:空芯コイル、10a:端部、11:空芯コイル、11a:端部、12:上型、13:下型、13a:位置出しピン、14:キャビティ、15:パンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック成形法を用いて、磁性体粉末と熱硬化性樹脂を混練させた磁性体モールド樹脂で空芯コイルを封止したモールドコイルの製造方法において、
キャビティを有する成形金型を用い、
扁平面を有する線材を用いた該空芯コイルの両端部に折曲部を形成し、
該折曲部から生ずる弾性によって該空芯コイルの該両端部における該扁平面の少なくとも一部が該成形金型内の底面部もしくは側面部を押圧するように該空芯コイルを該キャビティ内に配置し、
該成形金型を該磁性体モールド樹脂が軟化できる温度以上に予熱し、
該キャビティ内に該磁性体モールド樹脂を充填して該空芯コイルを埋設し、
該磁性体モールド樹脂を熱硬化して成形体とし、
該成形体から露出した該空芯コイルの両端部のそれぞれと接続するように電極膜を該成形体に形成する
ことを特徴とするモールドコイルの製造方法。
【請求項2】
前記成形金型において、
前記キャビティ内を移動する位置出しピンを有し、
該位置出しピンによって前記空芯コイルを該キャビティ内の所定の位置に位置出しし、
該キャビティ内に前記磁性体モールド樹脂を充填する間に該位置出しピンを所定の位置に移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のモールドコイルの製造方法。
【請求項3】
プラスチック成形法を用いて、磁性体粉末を分散させた磁性体モールド樹脂で空芯コイルを封止したモールドコイルの製造方法において、
扁平面を有する線材を巻回した該空芯コイルと、
キャビティを有する成形金型を用い、
該成形金型内の一つの面と該空芯コイルの巻回部との間に該空芯コイルの両端部における該扁平面の少なくとも一部が該一つの面とが対向するように該キャビティ内に該空芯コイルを配置し、
該成形金型を該磁性体モールド樹脂が軟化できる温度以上に予熱し、
該空芯コイルを基準に該一つの面の反対側から該磁性体モールド樹脂を充填して該空芯コイルを埋設し、
該磁性体モールド樹脂を熱硬化して成形体とし、
該成形体から露出した該空芯コイルの両端部のそれぞれと接続するように電極膜を該成形体に形成する
ことを特徴とするモールドコイルの製造方法。
【請求項4】
前記成形金型において、
前記キャビティ内を移動する位置出しピンを有し、
該位置出しピンによって前記空芯コイルを該キャビティ内の所定の位置に位置出しし、
該キャビティ内に前記磁性体モールド樹脂を充填する間に該位置出しピンを所定の位置に移動させる
ことを特徴とする請求項3に記載のモールドコイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−177492(P2010−177492A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19232(P2009−19232)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】