説明

ユニット化工法

【課題】建設物の建設に対して容易に採用できるユニット化工法を提供する。
【解決手段】ユニット化工法は、床ユニット10を準備する床ユニット準備工程S1と、資材ストック領域21を有する揚重ユニット20を準備する揚重ユニット準備工程S2と、連結部材23を用いて、連結ユニット30を作製する連結ユニット作製工程S3と、複数の連結ユニット30を高さ方向に互いに離間させて建物躯体50に配置する連結ユニット配置工程S4と、連結ユニット30の床ユニット10上に床部15を形成する床部形成工程S5と、連結ユニット30の床ユニット10から揚重ユニット20を分離する連結ユニット分離工程S6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設物の建設に用いられるユニット化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場では、鉄骨ユニット化工法が広く用いられている。この鉄骨ユニット化工法は、梁部材と床部材とを組み合わせた床ユニットを作製した後に、鉄骨構造を組み立てる工程である鉄骨建方を行う工法である。梁部材と床部材とを組み合わせてユニット化することにより、建設の全体工程に要する時間及び費用が削減される。さらに、高所において梁部材に床部材を組み合わせるための作業量が低減されるので安全性が向上する。
【0003】
また、鉄骨ユニット化工法を改良した鉄骨−設備ユニット化工法が近年採用されている。この鉄骨−設備ユニット化工法は、床ユニットを作製した後に、さらにこの床ユニットに設備部材を取り付けてから鉄骨建方を行う工法である。鉄骨−設備ユニット化工法は、鉄骨ユニット化工法の利点に加え、鉄骨建方に先行して設備部材を床ユニットに取り付けるために、設備部材の揚重量が削減される。また、高所において設備部材の施工に要する作業量が低減されるので安全性及び作業効率が向上する。
【0004】
鉄骨−設備ユニット化工法に関する技術として、例えば、特許文献1には、床ユニットに設備部材を設置した先組み床ユニットを作製する方法が記載されている。この方法では、上面に設備部材を搭載した床ユニットを層状に配置する。次に、層状に配置された床ユニットを足場として、床ユニットの下面に別の設備部材を搭載することにより、先組み床ユニットを作製する。そして、建物躯体に先組み床ユニットが配置され、鉄骨建方が実施される。
【0005】
また、特許文献2には、層状に支持された複数の床ユニットのうち、上段の床ユニットを鉛直方向に沿って良好に上方に揚重させることができるユニット部材の揚重装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開3009−91874号公報
【特許文献2】特開3009−349920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された鉄骨−設備ユニット化工法では、先組み床ユニットを作製した後に、鉄骨建方が実施される。そのため、鉄骨建方を行う前に、床ユニットに設置される設備部材が決まっている必要がある。しかし、通常の建設工程において鉄骨建方の実施前に設備部材が決まっていることは諸般の理由により稀である。このように、特許文献1に記載された鉄骨−設備ユニット化工法は、鉄骨建方の実施前に設備部材が決まっていないときには採用できないため、汎用性に問題があった。
【0008】
上記問題点に鑑みて、本発明は、鉄骨建方の実施前に設備部材が決まっていない場合であっても採用することができる、汎用性の高いユニット工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のユニット化工法は、互いに離間して配置された複数の梁部材、及び梁部材に固定された床部材を有する床ユニットを準備する床ユニット準備工程と、資材ストック領域を形成する枠部材、及び高さ方向に延在すると共に資材ストック領域よりも上側に配置されるように枠部材に固定された連結部材を有する揚重ユニットを準備する揚重ユニット準備工程と、連結部材を用いて、床ユニットの下側に揚重ユニットが連結された連結ユニットを作製する連結ユニット作製工程と、複数の連結ユニットを高さ方向に互いに離間させて建物躯体に配置する連結ユニット配置工程と、N階(Nは2以上の自然数)に配置された連結ユニットの床ユニット上に床部を形成する床部形成工程と、(N+1)階に配置された連結ユニットの床ユニットから揚重ユニットを分離する連結ユニット分離工程とを備える。
【0010】
本発明のユニット化工法では、床ユニットの下側には揚重ユニットが連結されている。この揚重ユニットは資材ストック領域を有する。この資材ストック領域には、所望の設備部材及び仮設部材を搭載することが可能である。このため、鉄骨建方を実施する前に設備部材への採用が具体的に決定されていなくても、資材ストック領域には、必ず使用されると考えられる汎用部品や、配置作業に用いる仮設部材等を搭載すればよい。よって、床ユニットと同時に揚重する部材の種類及び数量等の選択に対して柔軟に対応することができる。したがって、鉄骨建方の実施前に設備部材が決まっていない場合であっても採用することが可能であり、汎用性を高めることができる。
【0011】
ここで、揚重ユニットは、床部に当接される脚部材を有し、連結ユニット分離工程では、脚部材を延長させて床部に当接させた後に、床ユニットから揚重ユニットを分離することが好ましい。この工程によれば、脚部材を床部に当接させてN階の床部により揚重ユニットを支持する。床部により揚重ユニットを支持した後に床ユニットから揚重ユニットを分離するため、床部への揚重ユニットの落下を防止することが可能である。したがって、床部への落下による衝撃荷重が揚重ユニットに印加されることを防止することができる。
【0012】
ここで、N階の床部を形成する床部形成工程の前に、N階に配置された連結ユニットの床ユニットから揚重ユニットを分離する工程を更に備えることが好ましい。床ユニットに揚重ユニットが連結されているとき、床ユニットは揚重ユニットの荷重により変形しているおそれがある。そのため、N階の床部を形成する前に、床ユニットから揚重ユニットを分離する。この分離により、荷重から床ユニットを開放して床ユニットが変形した状態を解消する。したがって、揚重ユニットの荷重から開放された床ユニット上に床部が形成されるので、この形成された床部に生じるひび割れの発生を抑制することができる。
【0013】
ここで、揚重ユニットは、床部の床面上において揚重ユニットを移動させる移動手段を有することが好ましい。この移動手段によれば、床部に載置された揚重ユニットを所定の位置まで容易に移動させることができる。したがって、設備部材を床ユニットに設置する工程の時間を短縮することができる。
【0014】
ここで、連結ユニット分離工程の後、N階の床部の床面上に載置された揚重ユニットを工事用足場として用いてもよい。揚重ユニットを工事用足場として用いれば、工事用足場を床部上において組み立てる必要がない。このため、揚重ユニットを床部の上に載置した後に、直ちに設備部材を床ユニットに設置する工程を実施することができる。したがって、設備部材を床ユニットに設置する工程の時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鉄骨建方の実施前に設備部材が決まっていない場合であっても採用することができる、汎用性の高いユニット化工法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るユニット化工法の主な工程を示すフロー図である。
【図2】本実施形態のユニット化工法の主要な工程を説明するための図である。
【図3】床ユニット準備工程における一工程を示す図である。
【図4】床ユニット準備工程における一工程を示す図である。
【図5】床ユニット準備工程における一工程を示す図である。
【図6】揚重ユニット準備工程における一工程を示す図である。
【図7】連結ユニット作製工程における一工程を示す図である。
【図8】連結ユニット作製工程における一工程を示す図である。
【図9】連結ユニット配置工程における一工程を示す図である。
【図10】連結ユニット配置工程における一工程を示す図である。
【図11】連結ユニット配置工程における一工程を示す図である。
【図12】床部形成工程における一工程を示す図である。
【図13】連結ユニット分離工程における一工程を示す図である。
【図14】連結ユニット分離工程における一工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明によるユニット化工法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
まず、本実施形態のユニット化工法の主要な工程を図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施形態のユニット化工法の主要な工程を示すフロー図である。図2は、本実施形態のユニット化工法の主要な工程を説明するための図である。
【0019】
本実施形態のユニット化工法は、床ユニット準備工程S1、揚重ユニット準備工程S2、連結ユニット作製工程S3、連結ユニット配置工程S4、床部形成工程S5、及び連結ユニット分離工程S6を備えている。
【0020】
図2を参照すると、まず、床ユニット10を床ユニット製作架台16を用いて準備する(床ユニット準備工程S1)。次に、床ユニット10を準備した場所とは別の場所において、揚重ユニット20を準備する(揚重ユニット準備工程S2)。揚重ユニット20には所望の設備部材26や仮設部材27が搭載されている。続いて、床ユニット10の下側に揚重ユニット20を連結して吊り下げて連結ユニット30を作製する(連結ユニット作製工程S3)。さらに、連結ユニット30を建物躯体50に配置する(連結ユニット配置工程S4)。それから、N階の床部15を形成する(床部形成工程S5)。N階に形成された床部15の強度が発現した後に、(N+1)階に配置された床ユニット10から揚重ユニット20を分離する(連結ユニット分離工程S6)。以上の工程を実施することにより、床ユニット10と揚重ユニット20とが同時に揚重され、所望の設備部材26及び仮設部材27を搭載した揚重ユニット20が床部15の上に載置される。以下、それぞれの工程について詳細に説明する。
【0021】
床ユニット準備工程S1について説明する。図3は、床ユニットを準備する一工程を説明するための図である。床ユニット10(図5参照)を作製する場所に、床ユニット製作架台16を準備する。床ユニット製作架台16は、互いに平行になるように配置された複数の縦鉄骨17を有する。縦鉄骨17の一の端部付近には、横鉄骨18Aが複数の縦鉄骨17と交差するように配置されている。また、縦鉄骨17の他の端部付近には、横鉄骨18Bが複数の縦鉄骨17と交差するように配置されている。
【0022】
まず、複数の縦鉄骨17を、互いに平行になるように離間させて配置する。縦鉄骨17には、例えばH鋼を用いることができる。また縦鉄骨17には、横鉄骨18A及び横鉄骨18Bを配置するときの目標となる目印が設けられている。次に、縦鉄骨17の上に、縦鉄骨17と交差するように、横鉄骨18A及び横鉄骨18Bを配置する。縦鉄骨17の上に配置された横鉄骨18A及び横鉄骨18Bは、それぞれの縦鉄骨17に固定される。この配置において、複数の縦鉄骨17、横鉄骨18A及び横鉄骨18Bは、いずれも略水平に配置されている。
【0023】
次に、床ユニット製作架台16を用いて、床ユニット10を作製する(床ユニット準備工程S1)。図4は床ユニット10を作製する一工程を説明するための図である。まず、床ユニット製作架台16の横鉄骨18A及び横鉄骨18Bの上に複数の小梁(梁部材)11を配置する。この小梁11の配置には、鉄骨の移動専用の揚重機(図示せず)を用いる。本実施形態では小梁11の数は5つであるが、小梁11の数はこれに限定されることはない。複数の小梁11は、互いに平行になるように離間させ、等間隔に配置されている。すなわち、小梁11は、横鉄骨18A及び横鉄骨18Bと互いに交差するように配置されている。また、小梁11は、複数の縦鉄骨17と互いに平行になるように配置される。横鉄骨18A及び横鉄骨18Bの上に配置された複数の小梁11は、分離可能な固定具である、例えばシャコ万力12等を用いて横鉄骨18A及び横鉄骨18Bに固定されている。小梁11が横鉄骨18A及び横鉄骨18Bに固定されることにより、この床ユニット準備工程S1以降の作業中に小梁11の位置のずれが発生することを抑制できる。また、小梁11が倒れることを防止することができる。
【0024】
図5は床ユニット10を作製する一工程を説明するための図である。床ユニット製作架台16の上に複数の小梁11を配置した後に、単管13を小梁11に固定する。小梁11には、予め単管13が固定される位置に目印が設けられている。単管13は、複数の小梁11と互いに交差するように、小梁11の下側に固定される。この単管13により小梁11同士が連結されている。単管13は、小梁11から分離可能に固定されている。また、単管13は、床ユニット10の揚重時に床ユニット10のねじれを抑制する。さらに、本実施形態では単管13に後述する揚重ユニット20(図6参照)が連結される。
【0025】
小梁11に単管13を固定した後に、デッキ(床部材)14を小梁11に固定する。なお、図5では、単管13を示すためデッキ14の一部を破断している。デッキ14は小梁11の上側に配置され、小梁11に例えば溶接により固定される。デッキ14が小梁11に固定された後には、例えば、スタッドの打設作業、設備部材を設置するための墨だし作業、及び設備部材を設置するための穴あけ作業等が行われる。以上の手順を実施することにより、床ユニット10が準備される。
【0026】
続いて、揚重ユニット準備工程S2について説明する。揚重ユニット準備工程S2は、床ユニット準備工程S1の後に実施される。図6は、揚重ユニット20A,20Bを準備する一工程を説明するための図である。まず、揚重ユニット20A,20Bの構成について説明する。揚重ユニット20A,20Bは、枠部材22及び連結部材23により構成されている。枠部材22は、市場において容易に入手可能な汎用部材等を用いることができる。このため、揚重ユニット20に要する費用が低減される。
【0027】
複数の枠部材22により画成された領域には、資材ストック領域21が設定されている。本実施形態の資材ストック領域21は、下段領域21a及び上段領域21bからなる。上段領域21bは、下段領域21aの直上に形成されている。この資材ストック領域21には、所望の設備部材26、及び作業に必要な仮設部材27が搭載されている。例えば、下段領域21aには、例えば足場材やロープの仮設部材27などが搭載されている。また、上段領域21bには、例えば、板材、パイプ等の設備部材26が搭載されている。仮設部材27として、揚重ユニット20を床ユニット10から分離するために必要な部材は最低限必要な部材として搭載されている。資材ストック領域21に搭載された設備部材26等は、ベルト25等により枠部材22に固定されている。さらに、固定された設備部材26等は、シート28等により覆われている。
【0028】
高さ方向に延在する縦枠部材22aの上端には、資材ストック領域21よりも上側に配置されるように連結部材23が固定されている。連結部材23は、高さ方向に延在する単管であり、例えば、連結部材23の長さは900mmである。連結部材23は枠部材22に着脱可能に固定されている。また、連結部材23は、設備部材26等が搭載された揚重ユニット20の重量を吊持可能な強度を有する。そして、連結部材23は、揚重ユニット20の重量を吊持可能な強度を有するように枠部材22に固定されている。本実施形態では、この連結部材23を介して揚重ユニット20が床ユニット10に連結される。
【0029】
揚重ユニット20の縦枠部材22aは、その下端に脚部材24を備えている。脚部材24は、揚重ユニット20の高さを高くすることができる構成を有している。本実施形態では、例えば揚重ユニット20Bに例示するように、脚部材24に延長部材29を連結することにより、揚重ユニット20の高さが高くされる。また、脚部材24は、ローリングキャスタ(移動手段)24aを備えている。ローリングキャスタ24aにより、揚重ユニット20が容易に走行され移動される。ローリングキャスタ24aは、揚重ユニット20の重量を支持可能な強度を有する。このローリングキャスタ24aは、脚部材24と分離可能に取り付けられている。本実施形態では、脚部材24からローリングキャスタ24aを取り外して、延長部材29を脚部材24に連結した後に、ローリングキャスタ24aを延長部材29の下端に固定することにより、揚重ユニット20の高さが高くされる。
【0030】
揚重ユニット20A,20Bを準備する手順について説明する。まず、複数の枠部材22を組み合わせて、資材ストック領域21を形成する。このとき、高さ方向に沿って配置される縦枠部材22aには、上端に連結部材23が予め固定され、下端にローリングキャスタ24aが予め固定されている。続いて、資材ストック領域21に所望の設備部材26及び仮設部材27を搭載する。そして、搭載された設備部材26及び仮設部材27をベルト25等を用いて固定する。さらに、風雨から設備部材26及び仮設部材27を保護するために、必要に応じてシート28等を用いて養生を実施する。この養生は、鉄骨建方を実施するときに設備部材26及び仮設部材27が荷崩れをすることがないように、十分な強度を確保するように実施されている。以上の手順を実施することにより、揚重ユニット20が準備される。
【0031】
続いて、連結ユニット作製工程S3について説明する。図7を参照すると、連結ユニット作製工程S3は、揚重ユニット準備工程S2の後に実施される。図7及び図8は、連結ユニット30を作製する工程を説明するための図である。連結ユニット30の作製は、合体架台40を用いて実施される。ここで、合体架台40について説明する。合体架台40は、複数の鉄骨により構成されている。この合体架台40には、揚重ユニット20を配置する配置領域41が設定されている。また、合体架台40は、配置領域41の高さH1が、揚重ユニット20の高さH2よりも高くなるように構成されている。なお、揚重ユニット20の高さH2は、揚重ユニット20の連結部材23の先端部からローリングキャスタ24aまでの高さである。そして、配置領域41の床面41pには、揚重ユニット20を配置するための目標となる目印42が設けられている。さらに、合体架台40には、床ユニット10を載置するための載置領域43が設定されている。この載置領域43には、別の場所において準備された床ユニット10が載置される。
【0032】
次に、連結ユニット30を作製する手順について説明する。まず、揚重ユニット20A,20Bを、別の場所から配置領域41にローリングキャスタ24aを走行させて移動させる。揚重ユニット20A,20Bは、ローリングキャスタ24aを備えているので人力によりローリングキャスタ24aを走行させて移動させられる。続いて、床ユニット10を準備した場所から床ユニット10を載置領域43に移動させる。床ユニット10は、専用の揚重機60を用いて移動させる。このとき、図8に示すように、床ユニット10における小梁11の両端部に固定された突出部材11aに、揚重機60のワイヤ61がシャックル等を用いて連結されている。
【0033】
配置領域41に揚重ユニット20A,20Bが配置され、載置領域43に床ユニット10が載置された後に、揚重ユニット20A,20Bを床ユニット10に連結する。はじめに、床ユニット10の小梁11又は単管13にチェーンブロックを設置する。続いて、チェーンを揚重ユニット20A,20Bの例えば水平方向に設置された横枠部材22b(図6参照)に連結する。それから、チェーンブロックを操作して、揚重ユニット20の連結部材23を床ユニット10の単管13と連結可能な位置まで揚重ユニット20A,20Bを揚重する。そして、連結部材23を床ユニット10の単管13に固定具23aを用いて固定する。すなわち、揚重ユニット20A,20Bはチェーンブロックのチェーン及び連結部材23によって床ユニット10に連結されている。この構成により、容易且つ確実に揚重ユニット20A,20Bが床ユニット10に連結される。なお、揚重ユニット20A,20Bを揚重したとき、ローリングキャスタ24aを脚部材24から取り外し、床面41pに残してもよい。図8では、取り外したローリングキャスタ24aの図示は省略している。以上の手順を実施することにより、連結ユニット30が作製される。この連結ユニット作製工程S3に要する時間は、20〜30分程度である。そのため、鉄骨建方の工程の合間に実施できるため、鉄骨建方の工程の進捗に与える影響は小さい。
【0034】
続いて、連結ユニット配置工程S4について説明する。連結ユニット配置工程S4は、連結ユニット作製工程S3の後に実施される。図9〜図11は、連結ユニット30を建物躯体50に配置する工程を説明するための図である。まず、図9を参照すると、合体架台40において作製された連結ユニット30を揚重機60を用いて揚重する。次に、図10に示すように、揚重された連結ユニット30を建物躯体50に配置する。建物躯体50は、高さ方向に沿って配置された複数の柱51、及び柱51と交差する方向に配置された複数の大梁52により構成されている。床ユニット10は、小梁11の突出部材11aが大梁52上に載置するように、建物躯体50に配置されている。すなわち、連結ユニット30は、小梁11の突出部材11aを介して大梁52により支持されている。連結ユニット30が建物躯体50に配置された後に、小梁11を柱51及び大梁52にボルト等を用いて固定する。それから、揚重機60のワイヤ61を突出部材11aから取り外す。
【0035】
図11を参照すると、揚重機60のワイヤ61を突出部材11aから取り外した後に、デッキ14aを小梁11上に配置して、溶接により固定する。続いて、大梁52と小梁11とにスタッドを打設する。さらに、設備部材26を設置するための墨だし作業及び穴あけ作業を実施する。これらの作業は、床ユニット10に揚重ユニット20が連結された状態において実施される。以上の工程を繰り返すことにより、複数の連結ユニット30が建物躯体50に配置される。複数の連結ユニット30は、高さ方向に互いに離間して配置されている。
【0036】
続いて、床部形成工程S5について説明する。床部形成工程S5は、連結ユニット配置工程S4の後に実施される。図12は床部15を形成する工程を説明するための図である。この床部形成工程S5では、N階(Nは2以上の自然数)に配置された床ユニット10上に床部15を形成する。図12では、下段がN階であり、上段が(N+1)階である。N階の床ユニット10のデッキ14上に鉄筋等を設置した後に、コンクリートを打設して床部15を形成し、養生する。この床部15の形成作業及び養生作業中は、(N+1)階に配置された揚重ユニット20は床ユニット10に吊るされた状態で待機する。このとき、(N+1)階に配置された床ユニット10に連結された揚重ユニット20は、N階の床ユニット10から、例えば作業者が通行可能な高さだけ離間している。よって、N階の床ユニット10上において、スラブを配置する配筋作業といった床部15を形成する作業を容易に実施することができる。以上の手順を実施することにより、N階の床ユニット10の上に床部15が形成される。なお、N階の床部15を形成するときには、N階に配置された床ユニット10には揚重ユニット20は連結されていない。すなわち、床部形成工程S5は、N階の床ユニット10から揚重ユニット20が分離された後に実施される。
【0037】
続いて、連結ユニット分離工程S6について説明する。連結ユニット分離工程S6は床部形成工程S5の後に実施される。図13及び図14は連結ユニット分離工程S6を説明するための図である。連結ユニット分離工程S6では、(N+1)階に配置された床ユニット10から揚重ユニット20を分離する。なお、この連結ユニット分離工程S6は、床部形成工程S5において形成されたN階の床部15の強度が発現したことを確認した後に実施される。
【0038】
この連結ユニット分離工程S6では、延長部材29を用いる。延長部材29は、脚部材24の長さを延長するものである。この延長部材29は、例えば揚重ユニット20の資材ストック領域21に搭載されている。延長部材29の端部には、ローリングキャスタ24aが設置されている。さらに、延長部材29には、高さ調整用アジャスタが設けられている。
【0039】
床ユニット10から揚重ユニット20を分離する工程について説明する。まず、揚重ユニット20の脚部材24に延長部材29を連結する。延長部材29の下端にはローリングキャスタ24aが予め固定されている。延長部材29を連結したとき、ローリングキャスタ24aは、N階の床部15には当接しておらず、ローリングキャスタ24aと床部15との間には、例えば400mm程度の間隔が形成されている。続いて、延長部材29の高さ調整用アジャスタを操作して、ローリングキャスタ24aを床部15に当接させる。
【0040】
床部15にローリングキャスタ24aを当接させた後、連結部材23を単管13に固定している固定具23aを取り外して、連結部材23と単管13との連結を解除する。そして、チェーンボックスのチェーンを揚重ユニット20の横枠部材22bから取り外した後に、チェーンボックスを床ユニット10から取り外す。そして、単管13を小梁11から取り外す。以上の工程により、床ユニット10から揚重ユニット20が分離され、所望の設備部材26及び仮設部材27等が搭載した揚重ユニット20が建物躯体50のN階の床部15に載置される。
【0041】
揚重ユニット20がN階の床部15に載置された後、揚重ユニット20に搭載された設備部材26を(N+1)階の床ユニット10に設置する作業が実施される。まず、設備部材26を設置する位置まで揚重ユニット20を移動させる。揚重ユニット20は、ローリングキャスタ24aを備えているので容易に移動される。そして、設備部材26を設置する位置まで移動させた後に、この揚重ユニット20を工事用足場として用いて、設備部材26を(N+1)階の床ユニット10に設置する。
【0042】
本実施形態のユニット化工法では、床ユニット10の下側に揚重ユニット20が連結されている。この揚重ユニット20は資材ストック領域21を有する。この資材ストック領域21には、所望の設備部材26及び仮設部材27を搭載することが可能である。このため、鉄骨建方を実施する前に設備部材26への採用が具体的に決定されていなくても、資材ストック領域21には、必ず使用されると考えられる汎用部品や、設置作業に用いる仮設部材27等を搭載すればよい。よって、床ユニット10と同時に揚重する部材の種類及び数量等の選択に対して柔軟に対応することができる。したがって、鉄骨建方の実施前に設備部材が決まっていない場合であっても採用することが可能であり、汎用性を高めることができる。
【0043】
また、従来の鉄骨―設備ユニット化工法では、床ユニットの作製工程において設備部材の設置まで行っていた。このため、設備部材が設置された床ユニットを1つ作製するために、1〜1.5日の時間を要していた。これに対して、本実施形態のユニット化工法では、1つの連結ユニット30を1.5〜2時間程度の時間で作製することができる。すなわち、1日に4台〜5台の連結ユニット30を作製することができる。したがって、鉄骨建方の工程進捗に影響を与えることなく、容易に採用することができる。
【0044】
その上、従来の鉄骨―設備ユニット化工法では、鉄骨建方の工程の延長を許容することにより、設備部材を設置する工程を短縮して、全体の工期を短縮することを目的としている。これに対して、本実施形態のユニット化工法では、鉄骨建方の工程に時間的な影響を与えることがない。さらに、設備部材26及び仮設部材27の揚重を鉄骨建方の工程と同時に実施することにより、次工程の揚重が前倒しとなる。このため、設備部材26の設置作業及び内装工事を早期に着手することができる。したがって、従来の鉄骨―設備ユニット化工法よりも、さらに全体工期の短縮することができる。
【0045】
また、本実施形態のユニット化工法では、脚部材24のローリングキャスタ24aを床部15に当接させて、揚重ユニット20をN階の床部15により支持する。揚重ユニット20が支持された状態において、床ユニット10から揚重ユニット20を分離する。このため、床ユニット10から揚重ユニット20を分離したときに揚重ユニット20が床部15へ落下することがない。したがって、床部15への落下による衝撃荷重が揚重ユニット20に印加されることを防止することにより、設備部材26及び仮設部材27の損傷を防止することができる。
【0046】
また、本実施形態のユニット化工法では、N階の床部15を形成する前に、N階に配置された床ユニット10から揚重ユニット20を分離する。この分離により、揚重ユニット20の荷重から床ユニット10を開放して、床ユニット10が変形した状態を解消する。したがって、揚重ユニット20の荷重から開放された床ユニット10上に床部15が形成されるので、この形成された床部15に生じるひび割れの発生を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態のユニット化工法では、揚重ユニット20がローリングキャスタ24aを備えている。このため、床部15に載置された揚重ユニット20を、所定の位置まで容易に移動させることができる。したがって、設備部材26を床ユニット10に設置する工程の時間を短縮することができる。
【0048】
本実施形態の揚重ユニット20は、床ユニット10から分離された後は、天井内作業及び天井作業のための工事用足場として用いてもよい。このような構成によれば、設備部材26を設置するための工事用足場を床部15上において組み立てる必要がない。このため、揚重ユニット20を床部15の上に載置した後に、直ちに設備部材26を床ユニット10に設置する工程を実施することができる。したがって、設備部材26を床ユニット10に設置する工程の時間を短縮することができる。
【0049】
また、本実施形態の揚重ユニット20は、高所作業車の代替として使用してもよい。高所作業車は、高所で作業を行うための足場を提供する自走式の建設機械である。これによれば、高所作業車のリース代の削減、作業車を稼動させるための電力の削減、及び作業に必要な免許等が不要になる。
【0050】
また、本実施形態の揚重ユニット20は、揚重ユニット20を複数台連結して広い作業場所を確保可能なステージ足場として用いてもよい。また、揚重ユニット20の資材ストック領域21を、設備部材26等の保管場所として用いてもよい。これによれば、必要な仮設部材27のみが揚重される。さらに、揚重された仮設部材27が複数の目的に用いられる。このため、作業効率を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態の揚重ユニット20は、枠部材22により構成されているため、容易に組み立てることができると共に容易に分解することができる。そして分解後に再び揚重ユニット20として組み立てることができる。このような構成によれば、揚重ユニット20を天井内作業及び天井作業のための工事用足場、ステージ又は保管場所として使用しないときは、揚重ユニット20を分解して持ち運び、エレベータシャフト等の他の場所における足場資材として用いることができる。また、揚重ユニット20を複数の枠部材22に分解してから建物躯体50から搬出して、再び組み立てることにより新たな揚重ユニット20として使用することができる。したがって、建設物の建設に必要な仮設部材27の量を削減すると共に、仮設部材27に要する費用を削減することができる。
【0052】
また、本実施形態の揚重ユニット20では、揚重ユニット20を建設資材として用いてもよい。揚重ユニット20が、例えば角パイプやアングルなどにより構成されているときには、床部15上に揚重され足場等として用いられた後に、分解及び加工され建設資材として用いることができる。
【0053】
また、本実施形態の揚重ユニット20は、2段の資材ストック領域21を有している。このような構成により、一度の揚重作業で多くの設備部材26等を揚重することができる。さらに、揚重した設備部材26を整理整頓して床部15上において保管することができる。
【0054】
なお、上述した実施形態は本発明に係るユニット化工法の一例を示すものである。本発明に係るユニット化工法は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲において、上述した実施形態のユニット化工法を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0055】
本実施形態のユニット化工法では、床ユニット製作架台16の上に一の床ユニット10を作製する工程を例に説明した。床ユニット10は、床ユニット製作架台16の上において、複数作製されてもよい。一の床ユニット10を作製した後に、作製された一の床ユニット10の小梁11の上に横鉄骨18A及び横鉄骨18Bと同じ方向に延びた別の鉄骨を載置する。そして、上述した床ユニット準備工程S1と同様の工程を実施して別の床ユニット10を作製する。このような形態によれば、床ユニット10を作製する場所が、床ユニット10を保管する場所を兼ねることができるので、作業に必要な場所を抑制することができる。
【0056】
本実施形態のユニット化工法では、資材ストック領域21に、パイプ、板材等の設備部材26及び足場材やロープ等の仮設部材27を搭載した実施形態を例に説明した。資材ストック領域21に搭載される設備部材26及び仮設部材27はこれに限定されることはない。例えば、耐火被覆材、グラスウール(GW)、珪酸カルシウム板、軽量鉄骨(LGS)、ボード、OAフロア資材、ダクト等を搭載してもよい。
【0057】
本実施形態のユニット化工法では、床ユニット準備工程S1を揚重ユニット準備工程S2の前に実施する例を説明したが、この順に限定されることはない。例えば、揚重ユニット準備工程S2を床ユニット準備工程S1の前に実施してもよいし、床ユニット準備工程S1及び揚重ユニット準備工程S2が並行して実施されてもよい。
【0058】
本実施形態のユニット化工法では、連結ユニット作製工程S3において、揚重ユニット20の連結部材23を、床ユニット10の単管13に連結する実施形態を例に説明したが、この実施形態に限定されることはない。例えば、連結部材23は、クランプ金具等を用いて小梁11に固定されてもよい。
【0059】
本実施形態のユニット化工法では、延長部材29を脚部材24に連結して揚重ユニット20の高さを高くする実施形態を例に説明したが、この実施形態に限定されることはない。例えば、脚部材24には折り畳まれた状態で延長部材が設置されていてもよい。また、脚部材24の長さが伸縮可能に構成されており、延長部材29を連結することなく、揚重ユニット20の高さを高くすることができる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…床ユニット
11…小梁
11a…突出部材
12…シャコ万力
13…単管
14…デッキ
14a…デッキ
15…床部
16…床ユニット製作架台
17…縦鉄骨
18A,18B…横鉄骨
20,20A,20B…揚重ユニット
21…資材ストック領域
21a…下段領域
21b…上段領域
22…枠部材
22a…縦枠部材
22b…横枠部材
23…連結部材
23a…固定具
24…脚部材
24a…ローリングキャスタ
25…ベルト
26…設備部材
27…仮設部材
28…シート
29…延長部材
30…連結ユニット
40…合体架台
41…配置領域
41p…床面
42…目印
43…載置領域
50…建物躯体
51…柱
52…大梁
60…揚重機
61…ワイヤ
S1…床ユニット準備工程
S2…揚重ユニット準備工程
S3…連結ユニット作製工程
S4…連結ユニット配置工程
S5…床部形成工程
S6…連結ユニット分離工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間して配置された複数の梁部材、及び前記梁部材に固定された床部材を有する床ユニットを準備する床ユニット準備工程と、
資材ストック領域を形成する枠部材、及び高さ方向に延在すると共に前記資材ストック領域よりも上側に配置されるように前記枠部材に固定された連結部材を有する揚重ユニットを準備する揚重ユニット準備工程と、
前記連結部材を用いて、前記床ユニットの下側に前記揚重ユニットが連結された連結ユニットを作製する連結ユニット作製工程と、
複数の前記連結ユニットを前記高さ方向に互いに離間させて建物躯体に配置する連結ユニット配置工程と、
N階(Nは2以上の自然数)に配置された前記連結ユニットの前記床ユニット上に床部を形成する床部形成工程と、
(N+1)階に配置された前記連結ユニットの前記床ユニットから前記揚重ユニットを分離する連結ユニット分離工程とを備える、ユニット化工法。
【請求項2】
前記揚重ユニットは、前記床部に当接される脚部材を有し、
前記連結ユニット分離工程では、前記脚部材を延長させて前記床部に当接させた後に、前記床ユニットから前記揚重ユニットを分離する、請求項1記載のユニット化工法。
【請求項3】
前記N階の前記床部を形成する前記床部形成工程の前に、前記N階に配置された前記連結ユニットの前記床ユニットから前記揚重ユニットを分離する工程を更に備える、請求項1又は2記載のユニット化工法。
【請求項4】
前記揚重ユニットは、前記床部の床面上において前記揚重ユニットを移動させる移動手段を有する、請求項1〜3の何れか一項記載のユニット化工法。
【請求項5】
前記連結ユニット分離工程の後、前記N階の前記床部の床面上に載置された前記揚重ユニットを工事用足場として用いる、請求項1〜4の何れか一項記載のユニット化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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