説明

ユニット建物の構築方法

【課題】蓄電池を設置するために生ずる工期の長期化がないユニット建物の構築方法を提供する。
【解決手段】ユニット建物1Aを構成する建物ユニット11,11,11,12,21,21,21,21のうち、屋外と連通する内部空間としてのインナーガレージ10に面した室外壁12aを有する屋外連通建物ユニットとしてのインナーガレージ構成用建物ユニット12を備えたユニット建物の構築方法であって、インナーガレージ構成用建物ユニット12の室外壁12aに蓄電池5を工場で予め取り付けておく構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を備えたユニット建物の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、国家・自治体レベルや企業レベルにとどまらず、家庭レベルにおいても省エネルギーの意識が高まりつつある。
【0003】
また、地震などによる被災後の非常時に、なるべく快適な生活を送れるようにしようとする非常時に対応するための意識も高まりつつある。
【0004】
こうしたことから、省エネルギー用又は非常時用の蓄電池を建物に備えることがなされるようになってきた。
【0005】
ここで、建物内における蓄電池の設置場所が重要となる。
【0006】
例えば、特許文献1に開示された従来技術では、蓄電池を、建物におけるインナーガレージをはじめとした様々な箇所に分散して設置している。
【0007】
また、特許文献2に開示された従来技術では、蓄電池を、建物におけるベランダの天井あるいは屋根の軒下に設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−17203号公報
【特許文献2】特開2000−58021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
確かに、特許文献1,2に開示された従来技術では、雨風が凌げるうえに、直射日光を避けることができるため、蓄電池のおかれる設置箇所としては優れているといえる。
【0010】
しかしながら、蓄電池の取り付けを現地で行うため、その分工数がかかり、建物構築の工期が長くなってしまう。
【0011】
特に、工期が短くて済むという特長を有するユニット建物にとっては、工期が長くなってしまうというのは無視できない問題である。
【0012】
そこで、本発明は、蓄電池を設置するために生ずる工期の長期化がないユニット建物の構築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明のユニット建物の構築方法は、ユニット建物を構成する建物ユニットのうち、屋外と連通する内部空間に面した室外壁を有する屋外連通建物ユニットを備えたユニット建物の構築方法であって、前記屋外連通建物ユニットの前記室外壁に蓄電池を工場で予め取り付けておくことを特徴とする。
【0014】
ここで、前記屋外連通建物ユニットは、インナーガレージ構成用建物ユニットであってもよい。
【0015】
また、前記インナーガレージ構成用建物ユニットは、少なくとも1箇所の床梁の一部乃至全体が省略されたものであるとよい。
【0016】
また、前記屋外連通建物ユニットは、インナーバルコニー構成用建物ユニットであってもよい。
【0017】
さらに、前記屋外連通建物ユニットの前記室外壁の内部に、前記蓄電池の配線を工場で予め配設しておくとよい。
【0018】
また、前記配線の端部に、コネクタを工場で予め設けておくとよい。
【発明の効果】
【0019】
このような本発明のユニット建物の構築方法は、ユニット建物を構成する建物ユニットのうち、屋外と連通する内部空間に面した室外壁を有する屋外連通建物ユニットを備えたユニット建物の構築方法である。
【0020】
そして、屋外連通建物ユニットの室外壁に蓄電池を工場で予め取り付けておく構成とされている。
【0021】
こうした構成なので、蓄電池の取り付けを工場で予め行うため、蓄電池を設置するために生ずる工期の長期化がない。
【0022】
また、屋外連通建物ユニットは、蓄電池を室外壁に取り付けるため、蓄電池は屋外連通建物ユニットの内部に収まり、輸送制限にひっかからずに、トラックなどの通常の輸送手段で輸送することができる。
【0023】
ここで、屋外連通建物ユニットが、インナーガレージ構成用建物ユニットである場合は、インナーガレージは、蓄電池の設置箇所としては、雨風が凌げるうえに、直射日光を避けることができ、温熱による性能低下や耐久性劣化を抑制することができるので、優れた設置箇所である。
【0024】
また、インナーガレージ構成用建物ユニットが、少なくとも1箇所の床梁の一部乃至全体が省略されたものである場合は、この省略された部分に車両の出入口を設けることで、車両の出入が容易なインナーガレージとすることができる。
【0025】
また、屋外連通建物ユニットが、インナーバルコニー構成用建物ユニットである場合は、インナーバルコニーは、蓄電池の設置箇所としては、雨風が凌げるうえに、直射日光を避けることができ、温熱による性能低下や耐久性劣化を抑制することができるので、優れた設置箇所である。
【0026】
さらに、屋外連通建物ユニットの室外壁の内部に、蓄電池の配線を工場で予め配設しておく場合は、配線の配設作業の工数を減らすことができ、その分、工期を短縮することができる。
【0027】
また、配線の端部に、コネクタを工場で予め設けておく場合は、配線作業はコネクタ同士を接続するだけでよいので、その分、工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1のユニット建物の構築方法により構築したユニット建物の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施例1のインナーガレージ構成用建物ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図3】実施例1のインナーガレージ構成用建物ユニットの室外壁の部分の概略構成を示す正面図である。
【図4】実施例1の屋根ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図5】実施例2のユニット建物の構築方法により構築したユニット建物の概略構成を示す斜視図である。
【図6】実施例2のインナーバルコニー構成用建物ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図7】実施例2のインナーバルコニー構成用建物ユニットの室外壁の部分の概略構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す実施例1,2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0030】
先ず、実施例1の構成について説明する。
【0031】
図1は、実施例1のユニット建物の構築方法により構築したユニット建物1Aの概略構成を示している。
【0032】
まず、このユニット建物1Aは、地盤に打設された基礎4上に、3つの1階用の建物ユニット11,11,11と、1階用の屋外連通建物ユニットとしてのインナーガレージ構成用建物ユニット12と、4つの2階用の建物ユニット21,21,21,21と、屋根を構成する4つの屋根ユニット31,31,32,32とを組み付けて構築されている。
【0033】
ここで、内部空間としてのインナーガレージ10を構成するインナーガレージ構成用建物ユニット12は、図2に示したように、その中間部に室外壁12aを有する。
【0034】
そして、この室外壁12aには、裏当材(図示せず)によって補強された部分に、取付治具(図示せず)によって、蓄電池5を工場で予め取り付けておく。
【0035】
また、室外壁12aの内部には、図3に示したように、蓄電池5の配線7を工場で予め配設しておく。
【0036】
さらに、配線7の端部には、他の配線と接続するためのコネクタ7aを工場で予め設けておく。
【0037】
また、インナーガレージ構成用建物ユニット12は、図2に示したように、インナーガレージ10の出入口となる部分の床梁が省略されている。
【0038】
さらに、日当りの良い側の屋根ユニット31,31には、図4に示したように、太陽光発電装置としての太陽光発電パネル6がそれぞれ設けられている。
【0039】
そして、屋根ユニット31,31に設けられた太陽光発電パネル6,6と、蓄電池5とは、パワーコンディショナー(図示せず)を介して、配線(図示せず)で接続されており、太陽光発電パネル6,6で発電された電力が蓄電池5で蓄電可能とされている。
【0040】
ここで、パワーコンディショナー(図示せず)は、外部系統電力とも接続されている。
【0041】
これにより、蓄電池5は、日中は太陽光発電パネル6,6で発電した電力を利用して蓄電を行えるし、夜間には、比較的安価な深夜電力を利用して蓄電を行える。
【0042】
なお、インナーガレージ10の出入口の手前には、排水用の側溝(図示せず)が設けられており、インナーガレージ10内への雨水の浸入を防止している。
【0043】
次に、実施例1の作用効果について説明する。
【0044】
このような実施例1のユニット建物の構築方法は、ユニット建物1Aを構成する建物ユニット11,11,11,12,21,21,21,21のうち、屋外と連通する内部空間としてのインナーガレージ10に面した室外壁12aを有する屋外連通建物ユニットとしてのインナーガレージ構成用建物ユニット12を備えたユニット建物の構築方法である。
【0045】
そして、インナーガレージ構成用建物ユニット12の室外壁12aに蓄電池5を工場で予め取り付けておく構成とされている。
【0046】
こうした構成なので、蓄電池5の取り付けを工場で予め行うため、蓄電池5を設置するために生ずる工期の長期化がない。
【0047】
また、インナーガレージ構成用建物ユニット12は、蓄電池5を室外壁12aに取り付けるため、蓄電池5はインナーガレージ構成用建物ユニット12の内部に収まり、輸送制限にひっかからずに、トラックなどの通常の輸送手段で輸送することができる。
【0048】
さらに、インナーガレージ構成用建物ユニット12で構成されるインナーガレージ10は、蓄電池5の設置箇所としては、雨風が凌げるうえに、直射日光を避けることができ、温熱による性能低下や耐久性劣化を抑制することができるので、優れた設置箇所である。
【0049】
また、インナーガレージ構成用建物ユニット12には、インナーガレージ10の出入口となる部分の床梁が省略されたものが用いられている。
【0050】
このため、車両の出入が容易なインナーガレージ10とすることができる。
【0051】
さらに、インナーガレージ構成用建物ユニット12の室外壁12aの内部に、蓄電池5の配線7を工場で予め配設しておく。
【0052】
このため、配線7の配設作業の工数を減らすことができ、その分、工期を短縮することができる。
【0053】
また、配線7の端部に、コネクタ7aを工場で予め設けておく。
【0054】
このため、配線作業はコネクタ7aと他の配線のコネクタとを接続するだけでよいので、その分、工期を短縮することができる。
【実施例2】
【0055】
次に、実施例2について説明する。
【0056】
なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0057】
先ず、実施例2の構成について説明する。
【0058】
図5は、実施例2のユニット建物の構築方法により構築したユニット建物1Bの概略構成を示している。
【0059】
まず、このユニット建物1Bは、地盤に打設された基礎4上に、4つの1階用の建物ユニット11,11,11,11と、3つの2階用の建物ユニット21,21,21と、2階用の屋外連通建物ユニットとしてのインナーバルコニー構成用建物ユニット22と、屋根を構成する4つの屋根ユニット31,31,32,32とを組み付けて構築されている。
【0060】
ここで、内部空間としてのインナーバルコニー20を構成するインナーバルコニー構成用建物ユニット22は、図6に示したように、その室外壁22aには、裏当材(図示せず)によって補強された部分に、取付治具(図示せず)によって、床面22bにも支持されるように、蓄電池5を工場で予め取り付けておく。
【0061】
また、室外壁22aの内部には、図7に示したように、蓄電池5の配線7を工場で予め配設しておく。
【0062】
さらに、配線7の端部には、他の配線と接続するためのコネクタ7aを工場で予め設けておく。
【0063】
また、インナーバルコニー構成用建物ユニット22は、図6に示したように、手摺22cを備えている。
【0064】
さらに、日当りの良い側の屋根ユニット31,31には、図4に示したように、太陽光発電装置としての太陽光発電パネル6がそれぞれ設けられている。
【0065】
そして、屋根ユニット31,31に設けられた太陽光発電パネル6,6と、蓄電池5とは、パワーコンディショナー(図示せず)を介して、配線(図示せず)で接続されており、太陽光発電パネル6,6で発電された電力が蓄電池5で蓄電可能とされている。
【0066】
ここで、パワーコンディショナー(図示せず)は、外部系統電力とも接続されている。
【0067】
これにより、蓄電池5は、日中は太陽光発電パネル6,6で発電した電力を利用して蓄電を行えるし、夜間には、比較的安価な深夜電力を利用して蓄電を行える。
【0068】
次に、実施例2の作用効果について説明する。
【0069】
このような実施例2のユニット建物の構築方法は、ユニット建物1Bを構成する建物ユニット11,11,11,11,21,21,21,22のうち、屋外と連通する内部空間としてのインナーバルコニー20に面した室外壁22aを有する屋外連通建物ユニットとしてのインナーバルコニー構成用建物ユニット22を備えたユニット建物の構築方法である。
【0070】
そして、インナーバルコニー構成用建物ユニット22の室外壁22aに蓄電池5を工場で予め取り付けておく構成とされている。
【0071】
こうした構成なので、蓄電池5の取り付けを工場で予め行うため、蓄電池5を設置するために生ずる工期の長期化がない。
【0072】
また、インナーバルコニー構成用建物ユニット22は、蓄電池5を室外壁22aに取り付けるため、蓄電池5はインナーバルコニー構成用建物ユニット22の内部に収まり、輸送制限にひっかからずに、トラックなどの通常の輸送手段で輸送することができる。
【0073】
さらに、インナーバルコニー構成用建物ユニット22で構成されるインナーバルコニー20は、蓄電池5の設置箇所としては、雨風が凌げるうえに、直射日光を避けることができ、温熱による性能低下や耐久性劣化を抑制することができるので、優れた設置箇所である。
【0074】
また、インナーバルコニー構成用建物ユニット22は、手摺22cを備えている。
【0075】
このため、この手摺22cにより、さらに雨風が凌げるうえに、直射日光を避けることができる。
【0076】
さらに、インナーバルコニー構成用建物ユニット22の室外壁22aの内部に、蓄電池5の配線7を工場で予め配設しておく。
【0077】
このため、配線7の配設作業の工数を減らすことができ、その分、工期を短縮することができる。
【0078】
また、配線7の端部に、コネクタ7aを工場で予め設けておく。
【0079】
このため、配線作業はコネクタ7aと他の配線のコネクタとを接続するだけでよいので、その分、工期を短縮することができる。
【0080】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を実施例1,2に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、これら実施例1,2に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0081】
例えば、上記した実施例1,2では、蓄電池5を一箇所のみに設置したが、これに限定されず、複数の箇所に設置して実施してもよい。
【0082】
また、上記した実施例1,2では、太陽光発電装置として、太陽光発電パネル6,6を用いて実施したが、これに限定されず、他の種類の太陽光発電装置を用いて実施してもよいし、太陽光発電装置自体を用いずに実施してもよい。
【0083】
さらに、上記した実施例1,2では、屋根を構成する屋根ユニット31,32を用いて実施したが、これに限定されず、建築現場で屋根を組んで実施してもよい。
【0084】
また、上記した実施例1,2では、インナーガレージ10の出入口やインナーバルコニーの開口部に何も設けずに実施したが、これに限定されず、シャッターや雨戸などを設けて実施してもよい。
【0085】
さらに、上記した実施例1,2では、室外壁12aや室外壁22aに蓄電池5のみを工場で予め取り付けて実施したが、これに限定されず、パワーコンディショナーやその他のものも工場で予め取り付けて実施してもよい。
【0086】
また、上記した実施例1では、インナーガレージ10内に1台の車両のみ駐車できればよいように、床梁の一部のみ省略して実施したが、これに限定されず、インナーガレージ10内に複数台駐車できるように、床梁の全体を省略して実施してもよい。
【0087】
さらに、上記した実施例2では、インナーバルコニー構成用建物ユニット22全体でインナーバルコニー20を構成したが、これに限定されず、中間部に室外壁を設けることで、より小さなインナーバルコニー20を構成して実施してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1A ユニット建物
1B ユニット建物
11 1階用の建物ユニット
12 インナーガレージ構成用建物ユニット(屋外連通建物ユニット)
12a 室外壁
10 インナーガレージ(内部空間)
21 2階用の建物ユニット
22 インナーバルコニー構成用建物ユニット(屋外連通建物ユニット)
22a 室外壁
22b 床面
22c 手摺
20 インナーバルコニー(内部空間)
31 屋根ユニット
32 屋根ユニット
4 基礎
5 蓄電池
6 太陽光発電パネル(太陽光発電装置)
7 配線
7a コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニット建物を構成する建物ユニットのうち、屋外と連通する内部空間に面した室外壁を有する屋外連通建物ユニットを備えたユニット建物の構築方法であって、
前記屋外連通建物ユニットの前記室外壁に蓄電池を工場で予め取り付けておくことを特徴とするユニット建物の構築方法。
【請求項2】
前記屋外連通建物ユニットは、インナーガレージ構成用建物ユニットであることを特徴とする請求項1に記載のユニット建物の構築方法。
【請求項3】
前記インナーガレージ構成用建物ユニットは、少なくとも1箇所の床梁の一部乃至全体が省略されたものであることを特徴とする請求項2に記載のユニット建物の構築方法。
【請求項4】
前記屋外連通建物ユニットは、インナーバルコニー構成用建物ユニットであることを特徴とする請求項1に記載のユニット建物の構築方法。
【請求項5】
前記屋外連通建物ユニットの前記室外壁の内部に、前記蓄電池の配線を工場で予め配設しておくことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のユニット建物の構築方法。
【請求項6】
前記配線の端部に、コネクタを工場で予め設けておくことを特徴とする請求項5に記載のユニット建物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96141(P2013−96141A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239937(P2011−239937)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)