説明

ラミネート装置

【課題】巻芯を確実に保持し、あらかじめ調整したブレーキトルクによってラミネートフィルムはテンションのかかった状態で解反される安価な巻芯支持部材を有するラミネート装置を提供する。
【解決手段】軸に対して取り付けられたベースに回転自在に巻芯支持部材を設け、この巻芯支持部材の円周面に平面部を形成し、上記平面部に弾性変形可能な弾性体を円弧状に曲げた状態で、円周面に対する平面部の境界線付近に弾性体の上記円弧の一部が位置するように固定して巻芯支持構造を具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポスターや広告などの印刷物、コンピュータの出力メディアなど(以下、メディアという)の表面に、片面に粘着剤を塗布した透明または半透明なラミネートフィルムを貼り付けて、印刷物の表面を保護することにより、メディアの耐水性、耐候性を向上させる積層体の形成に使用するラミネート装置の巻芯支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラミネートフィルム原反は、ポリエステルや塩化ビニルなどの透明または半透明なフィルムの一面に粘着剤を塗布し、この粘着面の表面に剥離紙を貼り合わせられた長尺の積層体を巻芯(紙管)に巻いたものである。
このようなラミネートフィルムをメディアの表面に密着させて被覆する従来のラミネート装置は、下記特許文献1の図5に示されている。そして、このようなラミネート装置においては、ラミネートフィルムにテンションがかかった状態で引き出すために、ラミネートフィルムの原反にブレーキトルクがかけられる構造を有しており、このブレーキトルクは任意に調整できるようになっているものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−254518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような巻芯支持部材は、巻芯を確実に保持し、あらかじめ調整したブレーキトルクによってラミネートフィルムはテンションのかかった状態で解反されるものの、軸に対して窪みを形成する加工や、可撓性を有するチューブのコストが高いために高価な構造となってしまっていた。そのため、より安価な巻芯支持部材の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の請求項1は、ポスターや広告などの印刷物、コンピュータの出力メディアなどの表面に、ラミネートフィルムを貼り付けて積層体を形成するラミネート装置において、フィルム類の原反の巻芯を支持する複数の円筒状の巻芯支持部材を軸に対して設け、上記巻芯支持部材は円周面に平面部を形成し、この平面部に弾性変形可能な弾性体を円弧状に曲げた状態で、円周面に対する平面部の境界線付近に弾性体の上記円弧の一部が位置するように固定して巻芯支持構造を具備したことを特徴とするラミネート装置としている。
【0006】
本発明により、軸に対して複数設けた巻芯支持部材という構成にすることができ、その巻芯支持部材の円周面に平面部を形成し、弾性体を円弧状に曲げた状態で、円周面に対する平面部の境界線付近に弾性体の上記円弧の一部が位置するように固定するという簡易な構造で巻芯の保持が可能となり、安価な巻芯支持部材の提供ができる。
【0007】
本発明の請求項2は、平面部の中央付近に弾性体を固定する固定部材を取り付けて、円周面に対する平面部の2つの境界線のうち少なくとも片方の境界線付近へ円弧状の弾性体を固定したことを特徴とする請求項1記載のラミネート装置としている。
【0008】
本発明により、平面部の中央付近に設置した固定部材の両側へ円周面に対する平面部の境界線の一方、あるいは両方へ弾性体を固定することができ、簡易な構造で巻芯支持構造を提供できる。境界線の一方への弾性体の固定の場合は、ラミネートフィルムの巻芯の解反方向に気をつけて巻芯をセットすればよく、境界線の両方へ弾性体をセットした場合には上記の解反方向に特に注意を払うことなく巻芯をセットすることが可能となる。
【0009】
本発明の請求項3は、巻芯支持部材が軸に対して回転自在に設けられ、巻芯支持部材の回転に対してブレーキトルクをかける手段が軸に固定されて設けられていることを特徴とする請求項1、請求項2記載のラミネート装置としている。
【0010】
本発明により、所定のブレーキトルクをかけた状態で、巻芯支持部材とともに巻芯が軸に対して回転する巻芯支持構造の提供が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、巻芯支持部材の平面部に設けた弾性体により巻芯を安価で保持することができ、この巻芯支持部材が軸に対して回転可能となることで巻芯とともに回転し、かつ所望のブレーキトルクをかけた状態で解反できる巻芯支持構造を有するラミネート装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図1に示す。ラミネートフィルムAのロール原反の巻芯Bは軸3に取り付けられた第1巻芯支持部1と2つの第2巻芯支持部により保持されている。そしてラミネートフィルムAのロールを保持した軸3はラミネート装置(図示せず)のフレーム5(図2参照)に設けられた2つの軸受ベアリング4にそれぞれの端部を乗せてラミネート装置にセットされる。
【0013】
図2に第1巻芯支持部1の構成を示す。ラミネート装置のフレーム5に設けられた軸受ベアリング4に支持された軸3に対してベース10が固定ネジ11で固定されている。このベース10の右側端部は、巻芯支持部材12が軸方向へのズレを防ぐストッパー10aを構成している。巻芯支持部材12はベース10に対して回転自在に取り付けられており、軸端側はラミネートフィルムのロール端部を保持できるつば12aが設けられている。巻芯支持部材12の円筒周面の一部に平面部を設け、そこに弾性変形体13を設けている。この巻芯支持部材12の構造については後で詳述する。
【0014】
図2に示すようにつば12aと圧力調整部材15には窪みを設けここにプレート14をそれぞれ配置し、このプレート14、14間に圧縮バネ16を適宜複数個配置させている。圧力調整部材15は、ベース10に設けられたネジ部10bにかみ合う雌ねじ部15aを有し圧力調整部材15を回転させることによりベース10に対する位置を調整することにより圧縮バネ16を圧縮し、巻芯支持部材12に対する押付け力を調整できる構成としている。
【0015】
そして、固定ネジ11より軸端側にはストッパー17が設けられており、このストッパー17がラミネート装置のフレーム5に設けられたピン6に係止されてラミネートフィルムAが解反される際には軸3が回転しないように固定される。
【0016】
第2巻芯支持部2は、図2および図3に示すように、軸3に対してネジ26で位置決めできるベース24に巻芯支持部材23が回転自在な状態で設けられている。ベース24の一端には巻芯支持部材23のストッパー24aが形成され、もう一端にはナット25を取り付けるネジ部24bが形成されている。巻芯支持部材23は、ストッパー24aとナット25により軸方向への移動が規制されるのである。
【0017】
巻芯支持部材23は、円筒状の周面の一部に平面部20が設けられ、この平面部20に固定部材21で弾性変形体22を固定している。この弾性変形体22は素材としては、繰り返しの変形に対する耐久性が強く、破断等のしにくい弾性体で硬度がHs80〜Hs95程度の断面が円形の紐状体であるものが耐久性や変形の際の硬さの点から好適である。
【0018】
図3においては、平面部20の端付近に弾性変形体22の円弧状の頂点が到達する程度の円弧となるように固定部材21の左上側と右下側にそれぞれ配置している。もちろんこの弾性変形体22は左上側と右下側のいずれか一方のみとする実施形態も採用可能である。第1巻芯支持部の巻芯支持部材12はつば12aを除けば形状的には巻芯支持部材23と同様である。
【0019】
弾性変形体22は図4に示すように所定の直径となる円形状のものを使用したり、図5に示すように1本の紐状の弾性変形体22の端部を巻芯支持部材23の中へ入れ込むことができるような穴23aを設けて、弾性変形体22の形状を平面部20の大きさに合うように調整して固定部材21で固定するようにしてもよい。固定部材21には弾性変形体22の断面形状よりも若干小さな溝部を設けており、その溝部において強固に固定されるようにしている。
【0020】
次に、巻芯支持部材12および巻芯支持部材23で巻芯を保持する状態について説明するが、同様の保持の仕方となるため、巻芯支持部材23にて説明する。図6(a)から図6(d)に巻芯支持部材23の平面部20を上から見た状態の図と、側面から見た状態の図をそれぞれ示す。図6(a)はまだ巻芯Bがセットされていない状態であり、弾性変形体22の円弧状の頂点が平面部20の端部付近に位置している。図6(b)は巻芯支持部材23が巻芯B内へ挿入されている状態を示している。巻芯Bの内側面に弾性変形体22の円弧状の頂点が接触してはいるが、巻芯Bの内側面に押されて弾性変形体22の円弧がたわんで巻芯Bをスムーズにスライドさせることができる。巻芯Bは図1における軸3の右端側からセットされ、第1巻芯支持部1の巻芯支持部材12のつば12aに当接する位置までスライドさせておく。
【0021】
そして、つば12aに当接する位置までスライドさせて、軸3をラミネート装置にセットし、図6(c)に示すようにラミネートフィルムAを引き出すと、巻芯支持部材23に対して巻芯Bがスリップして回転するのであるが、このときに、弾性変形体22の円弧状の先端が巻芯Bと巻芯支持部材23の隙間に変形しながら噛み込まれる。固定部材21の上側の弾性変形体22は巻芯Bの回転に合わせて固定部材21側へ円弧が少したわむ状態となる。この噛み込みによって巻芯Bが巻芯支持部材23に回転方向に対して自由に回転しないように一体的に保持されることとなる。 図6(c)では実線で示したラミネートフィルムAの引き出しにより、固定部材21の下側の弾性変形体22が噛み込まれるが、一点鎖線で示したような巻きとなっているラミネートフィルムもある。一点鎖線のような巻きである場合は、固定部材21の上側に位置する弾性変形体22が噛み込まれることとなるのである。すなわち、固定部材21の両側に弾性変形体22を配置しておくとラミネートフィルムAの巻きに関係なく巻芯Bの保持ができることとなるのである。
【0022】
図6(d)は巻芯Bを外すために保持を解除する状態を示している。図6(c)で弾性変形体22を噛み込ませる際と逆方向に巻芯Bを少し回転させると、噛み込まれていた弾性変形体22の噛み込みが解除される。解除されれば、巻芯Bをスライドして軸3から外すのである。
【0023】
巻芯Bは第1巻芯支持部1の巻芯支持部材12と2つの第2巻芯支持部2の巻芯支持部材23、23で支持されることになる。そしてそれら巻芯支持部材12および巻芯支持部材23、23はベース10およびベース24、24を介して軸3に対して回転する状態となっている。ラミネートフィルムAが巻芯から解反されるときは軸3に対して巻芯支持部材12、23、23と巻芯Bとが一体となって回転して解反されるが、このとき圧力調整部材15によって調整された圧縮バネ16の力を受けて所望のブレーキトルクがかかった状態で解反されることとなる。
【0024】
上記では巻芯支持部材23に対して弾性変形体22を設ける平面部20は1つの形態を開示したが、図7に示すように弾性変形体22を設ける平面部20を2つ設けてもよい。また、巻芯支持部材12に対しても同様である。弾性変形体22を増加させると解反に力を有するラミネートフィルムAであっても確実に保持することができるようになる。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の巻芯支持構造を説明する斜視図。
【図2】図1における構造を説明する断面図。
【図3】巻芯支持部材を説明する斜視図。
【図4】弾性変形体の取付状態を説明する図。
【図5】弾性変形体の取付状態を説明する図。
【図6】巻芯を保持する状態を説明する図。
【図7】弾性変形体の取付する平面部を2カ所設けたことを説明する図。
【符号の説明】
【0026】
1 第1巻芯支持部
2 第2巻芯支持部
3 軸
4 軸受ベアリング
5 フレーム
6 ピン
10 ベース
10a ストッパー
11 固定ネジ
12 巻芯支持部材
12a つば
13 弾性変形体
14 プレート
15 圧力調整部材
16 圧縮バネ
17 ストッパー
20 平面部
21 固定部材
22 弾性変形体
23 巻芯支持部材
23a 穴
24 ベース
24a ストッパー
24b ネジ部
25 ナット
26 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポスターや広告などの印刷物、コンピュータの出力メディアなどの表面に、ラミネートフィルムを貼り付けて積層体を形成するラミネート装置において、フィルム類の原反の巻芯を支持する複数の円筒状の巻芯支持部材を軸に対して設け、上記巻芯支持部材は円周面に平面部を形成し、この平面部に弾性変形可能な弾性体を円弧状に曲げた状態で、円周面に対する平面部の境界線付近に弾性体の上記円弧の一部が位置するように固定して巻芯支持構造を具備したことを特徴とするラミネート装置。
【請求項2】
平面部の中央付近に弾性体を固定する固定部材を取り付けて、円周面に対する平面部の2つの境界線のうち少なくとも片方の境界線付近へ円弧状の弾性体を固定したことを特徴とする請求項1記載のラミネート装置。
【請求項3】
巻芯支持部材が軸に対して回転自在に設けられ、巻芯支持部材の回転に対してブレーキトルクをかける手段が軸に固定されて設けられていることを特徴とする請求項1、請求項2記載のラミネート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−88548(P2006−88548A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277620(P2004−277620)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000163121)極東産機株式会社 (68)
【Fターム(参考)】