説明

リアプロジェクションシステムとリアプロジェクションスクリーン

リアプロジェクションシステムを提供するため、透明性が高く透過効率が高いプロジェクションシステムを提供するため、リアプロジェクションシステムは、プロジェクタ(18)と、透明モードと回折モードの間でスイッチ可能なプロジェクションスクリーン(16)と、を有し、前記プロジェクタ(18)は、前記プロジェクタ(18)からの光が前記プロジェクションスクリーン(16)の前記リアサイドに傾いた角度で入射するように、前記プロジェクションスクリーン(16)に対して配置され、前記プロジェクションスクリーン(16)は、回折モードのとき、前記入射光を、前記スクリーン(16)の前記前表面法線に対して限定された角度範囲に屈折するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアプロジェクションシステムとリアプロジェクションスクリーンとに関し、特に、ショッピングウィンドウ用のリアプロジェクションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
透明プロジェクションスクリーンには、広い応用分野がある。そのひとつは、インターラクティブショップウィンドウ用のスクリーンなどの使用である。現在、背後にあるオブジェクトが見えるようにしつつ、スクリーンに情報を投影するには、いわゆる「ホロスクリーン」が使われている。このスクリーンの主な問題は、実際には透明でなく、ショップウィンドウの背後にあるオブジェクトを見る妨げになってしまうことである。
【0003】
かかる表示システムのホログラフィックスクリーンは特許文献1に記載されている。ここで、ディスプレイユニットは、透明サポートと、透明サポートに取り付けたホログラムスクリーンと、画像情報をホログラムスクリーンに投影するプロジェクタと、ホログラムスクリーンの視野角内のあるエリアに人がいるか判断するセンサとを含む。この表示システムは好ましくはショッピングウィンドウに利用される。また、コントローラが設けられ、センサからの信号に応答してプロジェクタを制御する。センサがホログラムスクリーンの視野角内のエリア内に、特にショッピングウィンドウの前に、人を検知すると、コントローラはプロジェクタを起動してショッピングウィンドウのホログラムスクリーンに画像情報を投影する。
【0004】
電気的再構成可能ホログラフィック光学エレメントによる光拡散制御に関する別のプロジェクションシステムが特許文献2により開示されている。ここで、各再構成可能ホログラフィックエレメントは、2つの電極レイヤにはさまれたホログラムを含む。このホログラムは、液晶で結合され、印加する電場に応じて光学特性が変化するホログラフィックポリマーフィルムである。プロジェクションスクリーンの拡散特性は、1つ以上の再構成可能ホログラフィック光学エレメントを選択的に設定することにより、回折状態に変更できる。ここで、一アプリケーションでは、光強度に関して、投影された画像を、スクリーンを利用して光学的に拡散し、見る領域が異なる複数のオブザーバに対して、投影画像が一様に明るくなるようにする。他のアプリケーションでは、スクリーンを利用して投影画像を立体的に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,522,311B1号
【特許文献2】米国特許第6,191,876B1
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
それゆえ、本発明の目的は、高い透明性と高い投射効率とを提供するリアプロジェクションシステム及びリアプロジェクションスクリーンを提供する。
【0007】
この目的は独立項に記載した特徴により達成される。
【0008】
特に、本発明は、透明モードと回折モードとの間でスイッチできる、ショッピングウィンドウなどの用途に使うプロジェクションスクリーンを提供するとの考えに基づく。ここで、回折モードとは、スクリーンが拡散ホログラムのように機能する、スクリーンの状態と理解すべきである。このように、スクリーンの後表面にある角度で入射する光は、屈折され、スクリーンの前にいる観察者に直接伝達される。回折モードでは、表示される、すなわち屈折される光の強度は、プロジェクタへの入射ビームの強度の10%以上となる。透明モードでは、スクリーンは通常のガラスやその他の同等の基板などの透明基板として機能する。このように、好ましくはショッピングウィンドウとして利用される、またはショッピングウィンドウに取り付けられるプロジェクションスクリーンの後のオブジェクトは、スクリーンが透明モードの時には容易に見える。一方、回折モードの時には、関心オブジェクトに関する情報を含む画像が、プロジェクタからスクリーンのリアサイドに向けて投影でき、観察者に高い照度で届く。
【0009】
ここで、プロジェクタとプロジェクションスクリーンとは、プロジェクタからの光ビームがプロジェクションスクリーンのリアサイドに傾いた角度で入射するように、互いに配置され、回折モードでは、主にプロジェクションスクリーンの表面法線に平行な方向に屈折される。
【0010】
まとめると、本発明のリアプロジェクションシステムは、プロジェクタと、透明モードと回折モードの間でスイッチ可能なプロジェクションスクリーンと、を有し、前記プロジェクタは、前記プロジェクタからの光が前記プロジェクションスクリーンの前記後側に傾いた角度で入射するように、前記プロジェクションスクリーンに対して配置され、前記プロジェクションスクリーンは、回折モードのとき、前記入射光を、前記プロジェクションスクリーンの前記前表面法線に対して限定された角度範囲に屈折するように構成される。
【0011】
本発明のリアプロジェクションシステムは、好ましくはショッピングウィンドウで利用される。スクリーンは、ショッピングウィンドウとして使用され、または単にショッピングウィンドウに取り付けられる。透明モードでは、ショッピングウィンドウの後のオブジェクトは容易に見ることができる。スクリーンの回折モードでは、オブジェクトに関する情報、または顧客が関心を有する情報をフェードインする。
【0012】
プロジェクタの入射光と、スクリーンの後表面法線との間の入射角は30°より大きいことが好ましい。この好ましい幾何学的配置では、プロジェクタショッピングウィンドウの後でオブジェクトを見ている人の視野外にプロジェクタを配置できるからである。
【0013】
回折モードでは、屈折光の拡散部分は非常に低いので、スクリーンからフロントサイドへの放射光のスクリーンの前表面法線に対する角度範囲は限定されている、好ましくは垂直方向では−10°から10°に広がり、水平方向では少なくとも−30°から30°に広がる。
【0014】
液晶材料を有するスクリーンのアプリケーションの場合、プロジェクタには偏光した光を用いることが好ましい。
【0015】
本発明によるリアプロジェクションシステムの好ましい実施形態では、プロジェクションスクリーンは、第1の透明電極を有する第1の透明基板と、液晶材料と複合材料との組成と、第2の電極を有する第2の透明基板とを有する。ここで、液晶材料の屈折率は、第1と第2の基板の間に配置されており、第1と第2の電極により発生される電場によりスイッチ可能である。ここで、液晶材料と複合材料の屈折率は、電場があるときには、液晶材料のプロジェクタからの偏光した光に対する屈折率が複合材料の屈折率と等しく、電場がないときには、異なるように選択する。しかし、屈折率と配向を、電場があるときには、液晶材料のプロジェクタからの偏光した光に対する屈折率が複合材料の屈折率と異なり、電場がないときには、等しいように選択することも可能である。
【0016】
好ましくは、複合材料はポリマーであり、液晶材料により囲まれており、体積ブラッグ格子を形成するように重合されている。ブラッグ格子は、液晶材料と複合材料の屈折率が異なる場合に、光学的に現れ、スイッチ可能である。このように、本発明の利点は、プロジェクションスクリーンが、スイッチ可能ブラッグ格子を形成する液晶材料と複合材料の組成を、単なる電場の印加により、回折モードと透明モードに容易に切り替えることができる点にある。
【0017】
好ましい実施形態では、液晶材料と複合材料の組成は、ホログラフィック分散液晶(HPDLC)材料である。本発明の別の好ましい実施形態では、前記液晶材料と前記複合材料の前記組成はポリマー液晶ポリマースライス(POLICRIPS)材料、または電気的制御可能ポリマー液晶ポリマーホログラム(POLIPHEM)材料である。ブラッグ格子を形成する、これら別の組成の利点は、液晶材料のドロップレットが組成中に構成されず、散乱損失が大幅に低減され、スイッチング電圧が非常に低くなり、マイクロ秒範囲の時間応答を達成できることである。また、高い屈折率変調を達成でき、格子の解像度がシャープになる。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明によるリアプロジェクションシステムのプロジェクションスクリーンは、モノアクリレート、ジアクリレート、及び非反応的液晶材料の光重合混合物の組成であって、第1と第2の基板の間に配置された液晶ゲルを形成するものを有する。
【0019】
また、代替的に、本発明の目的は、透明モードと回折モードとの間でスイッチ可能なリアプロジェクションスクリーンであって、第1の透明基板と、第1の透明基板上に配置された液晶材料と、第2の透明基板とを有するプロジェクションスクリーンにより、解決される。第1の透明基板は、第1の透明電極と、表面レリーフ格子を有するレリーフ部分とを有する。液晶材料は、第1の透明基板のレリーフ部分に隣接しており、表面レリーフ格子を満たしている。ここで、液晶材料の屈折率は、第1と第2の透明基板にそれぞれ配置された第1と第2の電極の電場により変化し、第1の透明基板のレリーフ部分の屈折率と、実質的に等しいか、等しくない。このように、第1の透明基板のレリーフ部分への液晶材料の移行部分にある表面レリーフ格子は、印加する電場に応じて可視になったり不可視になったりし、第1の透明基板の液晶材料とレリーフ部分との間の移行面において、スイッチ可能2次元のブラッグ格子を形成する。
【0020】
例えば、第1の透明基板は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)のサポートレイヤと、液晶レイヤに面した、レリーフ部分を形成する、ポリカーボネートのレリーフレイヤとを有する。
【0021】
また、第2の基板は、好ましくは、ガラスまたは透明ポリマーのサポートレイヤと、液晶レイヤに面し、液晶レイヤにおいて、液晶に所定の配向を与える、ラビングしたポリイミドレイヤとを有する。
【0022】
可視光の範囲における、本発明によるリアプロジェクションスクリーンの有利なアプリケーションの場合、格子周期が約1000nmであり、変調深度が約100−300nmである表面レリーフ格子を生産することが好ましい。
【0023】
また、エンボスプロセスで表面レリーフ格子を生産することが好ましい。ここで、好ましくは、エンボスマスターを用いる。ここで、第1の格子を、干渉パターンを生成する図2を参照して説明したセットアップを用いて形成し、この干渉パターンを、ニッケルへの電鋳法によりエンボスマスターに転写する。これを、射出成形、熱エンボス加工、または連続薄膜複製などの精密マイクロ複製プロセス用のエンボス加工ツールとして用いることもできる。
【0024】
本発明の目的は、画像投影方法によっても解決することができる。該方法は、透明モードと回折モードの間でスイッチ可能なプロジェクタまたはプロジェクションスクリーンを設ける段階と、プロジェクタからの光がプロジェクションスクリーンのリアサイドに傾いた角度で入射するように、プロジェクションスクリーンに対してプロジェクタを配置する段階と、画像を表示するとき、透明モードから回折モードにプロジェクションスクリーンをスイッチする段階とを有し、プロジェクタの入射光は、プロジェクションスクリーンの前表面法線に対して、限定された角度範囲に回折される。
【0025】
この画像投影方法は、好ましくは、ショッピングウィンドウにおける画像投影に用いる。
【0026】
また、本発明の上記実施形態のうちの一つによるスイッチ可能プロジェクションスクリーンを、本画像投影方法において利用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の上記その他の目的、特徴、効果は、添付した図面を参照して以下の詳細な説明を読めば、明らかとなるであろう。本発明を、図面に示した実施形態を参照して、非限定的な例により詳しく説明する。
【図1】本発明によるプロジェクションシステムのプロジェクタとプロジェクションスクリーンの構成を示す図である。
【図2】本発明によるプロジェクションスクリーンの製造セットアップを示す図である。
【図3】本発明によるプロジェクションスクリーンの一実施形態を示す図である。
【図3a】図3のプロジェクションスクリーンにおけるスイッチ可能ブラッグ格子への入来光の回折を示す図である。
【図4】本発明によるプロジェクションスクリーンの他の一実施形態を示す図である。
【図4a】図4のプロジェクションスクリーンにおける表面レリーフ格子への入来光の回折を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明によるプロジェクションスクリーンの一実施形態を示す図である。ここで、ショッピングウィンドウ10は、人12と、ショッピングウィンドウ10の背後のショールームに配置された関心オブジェクト14との間にある。プロジェクションスクリーン16はショッピングウィンドウ10の中に配置されている。プロジェクションスクリーン16はショッピングウィンドウ10に組み込まれていても、ショッピングウィンドウ10の内側か外側に取り付けられていてもよい。また、プロジェクションスクリーン16は、ショッピングウィンドウ10の背後に配置された別のスクリーンであってもよく、ショールームの天井からつり下げられていても、フロアスタンドに取り付けられていてもよい。
【0029】
プロジェクションスクリーン16は、関心オブジェクト14に関する情報や顧客一般の関心をひく情報を人12に提供する、人12に面したフロントサイドを有する。さらに、プロジェクションスクリーン16は、プロジェクタ18の画像が投影され、人12に向けて屈折されるリアサイドを有する。プロジェクタ18は、プロジェクションスクリーン16上、ショッピングウィンドウ10の後のショールームの上部に配置され、プロジェクションスクリーン16に、傾いた角度で画像を投影する。ここで、入射角αは、プロジェクタ18を隠して配置できるように30°以上であることが好ましい。あるいは、プロジェクタ18は、ショールームの底部に配置してもよい。その場合、入来する光を水平方向反対に屈折するように、プロジェクションスクリーン16を修正しなければならない。
【0030】
プロジェクションスクリーン16の放射光の方向は、プロジェクションスクリーン16の表面法線とほぼ平行であり、好ましくは−10°から10°までの限定された角度範囲にある。
【0031】
本発明のプロジェクションスクリーン16は、透明モードと屈折モードとの間で切り替え可能である。このプロジェクションスクリーン16の詳細構造とその生産方法を以下に詳しく説明する。
【0032】
図2は、本発明によるプロジェクションスクリーン16を生産するセットアップを示す。ここで、透明または拡散性の基板にホログラフィックフィルムを取り付けたスタティックホログラフィックプロジェクションスクリーンにも適用できる構成を使える。
【0033】
プロジェクションスクリーンの生産セットアップは、レーザビーム22を放射するレーザ源20を有する。レーザビーム22は、ビームスプリッタ24により2つの部分に分岐される。分岐したレーザビーム22の第1のブランチ26は、参照ビームとして、ミラー28により第1のレンズ30に反射され、第1のレンズ30で広げられて、プロジェクションスクリーン16に照射される。分岐したレーザビーム22のうち第2の分岐32は、第2のレンズ34により発散され、ミラー38により拡散器36に反射される。拡散器36により散乱された光はプロジェクションスクリーン16に当たる。参照ビームと相まって、拡散器36のホログラムを表す干渉パターンが形成される。プロジェクションスクリーン16の表面に垂直なラインをシステムの光軸とみなす。このセットアップでは、プロジェクションスクリーン16上に記録される干渉パターンは、光軸がプロジェクションスクリーン16の表面に交わる点に入射する同心リングの形態となっている。そのため、プロジェクションスクリーン16をプロジェクタ18で照射すると、プロジェクタ18の光の波長がどうあっても、プロジェクションスクリーン16からの反射ビームが軸に収束する。拡散器36の使用は、ホログラフィにおいてホログラムの視認性を向上する一般的な方法である。この場合、拡散器36はスクリーン16の投影特性を望ましいものにするので、その使用は本質的である。
【0034】
図3は、本発明によるプロジェクションスクリーン16の構造を示す。
【0035】
プロジェクションスクリーン16は、第1の透明基板42上の第1の透明電極40と、第2の透明基板46上の第2の透明電極44とを有し、液晶材料50と複合材料52との組成48は、第1の透明基板42と第2の透明基板46との間に挟まれている。留意すべき点として、第1の透明電極40と第2の透明電極44とは、必ずしも第1と第2の透明基板42、46の外側表面に配置しなくてもよい。これらの電極を組成48の隣に配置することも可能である。ここで、電極40、44と組成48との間に追加的に平坦化レイヤを設けてもよい(図3には図示せず)。さらに、ラビングした(rubbed)中間レイヤ(図3には図示せず)を、液晶材料50と複合材料52の組成48に面して設け、基板42、46に対する液晶材料50の配向角を設定してもよい。
【0036】
以下、本発明の第1の実施形態による組成48の生産プロセスを説明する。図2においてプロジェクションスクリーン16の生産セットアップに関してすでに説明したように、生産プロセスにおいて、明暗のある領域を有する干渉パターンを、プロジェクションスクリーン16に、したがって図3の組成48の前駆混合物(precursor mixture)に、投影する。ここで、前駆混合物として、感光性のプリポリマーと非反応的液晶の一様な混合物を、図2のセットアップにより発生した干渉パターンに露光する。このプロセスでは、ポリマー複合材料52の重合は、干渉パターンの明るい領域では暗い領域より急速に進み、非反応的液晶材料50は暗い領域に押しやられる。この反拡散プロセスにより、液晶リッチレイヤとポリマーリッチレイヤとの層状の組成プロファイルができる。これは光重合プロセスにおいて最終的にロックされる。ここで、形成されるポリマー複合材料52の形態は、(単なる例示として図3に示したように)チャンネル状でも、液晶リッチ領域にわたるポリマースキャフォルディング(polymer scaffolding)を有していてもよい。しかし、より一般的には、液晶は完全に液滴状にカプセル化される。
【0037】
このいわゆるホログラフィックポリマー分散液晶(HPDLC)により、スイッチ可能ブラッグ格子53ができる。これは図3aに示した。ここで、ポリマー複合材料52により形成されるブラッグ格子53は、周りの(またはカプセル化された)液晶材料50の屈折率と複合材料52の屈折率との異同を切り替えることにより、覆ったりあらわにしたりできる。
【0038】
このように、図3aに示したように、プロジェクションスクリーン16の表面法線に対して傾いた角度からの光は、組成48のブラッグ格子53に入射し、複合材料52と液晶材料50(図3に示した)により形成されるブラッグ格子構造53による反射によりプロジェクションスクリーン16の表面法線に対して実質的に平行な方向に屈折される。格子構造の好ましい周期は1000nmであり、この格子構造の表面法線に対する傾き角は、(組成レイヤ48により形成されるブラッグ格子構造53のラインにより示したように)プロジェクションスクリーン16の表面法線に対して約10°である。
【0039】
HPDLCフィルムは、すばらしい光学特性を示し、可視及び赤外において散乱と吸収が小さく、回折効率がフォトポリマーホログラフィック媒体のそれと同程度であり、動的応答時間が短い。しかし、HPDLCレイヤは偏光に対する選択性が高い。偏光依存性が強いのは配向がそろった液晶の性質によるものである。液晶は、ほとんどの透過モードのHPDLC材料で、ホログラフィックプレーンに対して平均して直交するようにそろう性質がある。それゆえ、p偏光の光は、s偏光の光よりも有効に回折される。実際、電場が印加されてない液晶材料の屈折率は、s偏光の場合のポリマーの屈折率とほぼ等しく、回折はほとんどまたはまったく起きない。
【0040】
第1と第2の電極40,44の間に電圧を印加しなければ、組成48の2種類のレイヤの屈折率は異なり、入射光の回折に関連するHPDLC材料の周期構造となる。透明モードでは、第1と第2の電極40,44の間の電圧は、液晶材料50と複合材料52の屈折率が等しく、組成48において回折がまったく、またはほとんど起きないように、設定する。このように、プロジェクションスクリーン16は、回折モードと透明モードの間で切り替えられる。
【0041】
以下、液晶材料50と複合材料52の組成48の別の実施形態を説明する。HPDLC材料の第1の代替物はいわゆるポリマー液晶ポリマースライス(POLICRYPS)材料であり、これはHPDLC材料の構造と同様である。しかし、ポリマーと液晶のレイヤが交互になっている格子は、HPDLC材料よりも純粋である。液晶材料のドロップレット形成が回避できるからである。
【0042】
かかる材料を生産するために、光開始剤−モノマー−液晶混合物を、液晶成分のネマティック−等方遷移点より高い温度まで加熱する。このステップにより、硬化プロセス中のネマティック相の出現を防止する。サンプルを加熱後、上記の通り干渉パターンを有する硬化UV放射を照射する。その後、硬化UV放射をオフにして、重合プロセスが終了したら、サンプルを等方−ネマティック遷移点以下にゆっくり冷却する。
【0043】
組成48の他の一実施形態は、POLICRYPS材料に対して同様の形態を有する、いわゆる電気的制御可能ポリマー液晶ポリマーホログラム(POLIPHEM)である。ここで説明した2つの実施形態は、複合材料52のブラッグ格子の特性によい影響を与える非ドロップレット構造を提供する。例えば、非コヒーレント反射が起きないため散乱損失を大幅に低減され、液晶ドメインの大きさがドロップレットサイズではなく格子間隔により決まるので切り替え電圧が非常に低く、高い屈折率変調が達成され、格子周辺におけるシャープな解像度、及びマイクロ秒レンジの時間応答を達成できる。この材料は、HPDLC材料に関して説明したように、偏光した光でないと機能しない。
【0044】
液晶材料50と複合材料52との組成48の別の実施形態は、液晶ゲルを形成したモノアクリレートと、ジアクリレートと、非反応性液晶材料との光重合混合物である。ここで、重合後、非反応的分子によりふくらんだゆるくクロスリンクした異方性ポリマーができ、液晶ポリマーは液晶を間に挟んだ硬い構造を形成する。パターン化した放射を用いて、スイッチング用の閾値電圧が異なる領域を作れる。ここで、クロスリンクしたネットワークは、メモリ機能を有するシステムとなり、スイッチング後に最初の配向状態に戻る。このように、ブラッグ格子状のパターンがジェル中に生成できる。このパターンは電場の印加により可視にも不可視にもなる。このジェルは電圧0では透明である。電圧をかけると、液晶材料は配向し、光を散乱する。
【0045】
図4は、本発明によるリアプロジェクションスクリーン116の他の一実施形態を示す。プロジェクションスクリーン116は、第1の透明基板54を有する。この基板の一面には第1の透明電極56が配置されている。第1の透明基板54aの他の一面には、表面レリーフ格子58を有するレリーフ部分が配置されている。第1の透明基板54は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)でできたサポートレイヤ60と、ポリカーボネートでできたレリーフレイヤ62により構成されている。プロジェクションスクリーン116は、さらに、第2の透明電極66を有する第2の透明基板64と、ガラスまたはPMMAでできたサポートレイヤ68と、ラビングしたポリイミドレイヤ70とを、この順序でスタックしたものを有する。
【0046】
第1と第2の透明基板54と64の間に、液晶レイヤ72があり、第1の透明基板54に隣接する一面で、レリーフ部分またはレリーフレイヤ62に向かい、表面レリーフ格子58を満たしている。第2の透明基板64に隣接する他面で、液晶レイヤ72はラビングしたポリイミドレイヤ70に面する。ラビングしたポリイミドレイヤ70は、第1と第2の透明基板54,64の間に挟まれた液晶材料の配向角を設定するために設けられている。
【0047】
第1と第2の電極56と66は、図4に示したように、スタックしたレイヤの配置とは異なる部分に配置できる。例えば第1の透明電極56は、第1の透明基板54のサポートレイヤ60とレリーフレイヤ62の間に配置でき、第2の透明電極66は、サポートレイヤ68とラビングしたポリイミドレイヤ70との間に配置できる。
【0048】
液晶材料の屈折率を切り替えて、隣接するポリカーボネートレイヤと等しくまたは等しくなくできる。そのため、レイヤ間の遷移時に表面レリーフ格子液晶材料とレリーフレイヤの屈折率のスイッチ可能な差異により、隠したり表したりできる。
【0049】
2次元の格子の周期は約1000nmであり、この格子の変調深度は約200nmである。再び、格子は好ましくは図2に示したようなセットアップにより生産される。この場合、拡散器の使用により、角度と波長の広がりを望みの量にできる。
【0050】
表面レリーフ格子構造をエンボス加工で生産することもできる。ここで、第1の格子は、干渉パターンを生成する図2のセットアップを用いて形成できる。この干渉パターンは、ニッケルへの電鋳法によりエンボスマスターに転写する。これを、射出成形、熱エンボス加工、または連続薄膜複製などの精密マイクロ複製プロセス用のエンボス加工ツールとして用いることもできる。
【0051】
プロジェクションスクリーン116の回折メカニズムは、プロジェクションスクリーン16の体積ブラッグ格子を考慮して上で説明した回折とは異なる。プロジェクションスクリーン116の回折メカニズムを示すため、周知の回折格子における回折を図4aに示した。
【0052】
表面法線Lに対して角度θinで表面レリーフ格子に入射する光は、格子周期pを有する表面レリーフ格子58において回折される。ここで、格子の式は
【0053】
【数1】

であり、ninは第1の透明基板54のレリーフ部分またはレリーフレイヤ62の回折インデックスであり、noutは液晶レイヤ72の回折インデックス(diffractive index)であり、mは回折次数を表す。本発明の実施形態では、出射角θoutを、m=−1として、入来光の1次回折とすることが好ましい。このように、表面レリーフ格子58により、拡散光の照度も高くすることができる。上記の格子の式から分かるように、スクリーンは、回折インデックスnoutとninとを等しくするか等しくしないことにより、容易にスイッチ可能である。これは、第1と第2の電極56と66により発生される電場を液晶レイヤ72に印加することにより行える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアプロジェクションシステムであって、
プロジェクタと、
透明モードと回折モードの間でスイッチ可能なプロジェクションスクリーンと、
前記プロジェクタは、前記プロジェクタからの光が前記プロジェクションスクリーンの前記リアサイドに傾いた角度で入射するように、前記プロジェクションスクリーンに対して配置され、前記プロジェクションスクリーンは、回折モードのとき、前記入射光を、前記プロジェクションスクリーンの前記前表面法線に対して限定された角度範囲に屈折するように構成された、リアプロジェクションシステム。
【請求項2】
前記プロジェクションスクリーンをショッピングウィンドウとして用いる、
請求項1に記載のリアプロジェクションシステム。
【請求項3】
前記入射光と前記プロジェクションスクリーンの前記後表面法線との間の前記入射角は30°より大きい、
請求項1または2に記載のリアプロジェクションシステム。
【請求項4】
前記限定された角度範囲は前記垂直方向で−10°から10°である、
請求項1ないし3いずれか一項に記載のリアプロジェクションシステム。
【請求項5】
前記プロジェクタからの前記光は偏光している、
請求項1ないし4いずれか一項に記載のリアプロジェクションシステム。
【請求項6】
前記プロジェクションスクリーンは、
第1の透明電極を有する第1の透明基板と、
液晶材料と複合材料との組成と、
第2の透明電極を有する第2の透明基板と、を有し、
前記第1と第2の基板の間に配置された前記液晶材料の前記屈折率は、前記第1と第2の電極が発生する電場によりスイッチ可能であり、前記複合材料の前記屈折率と実質的に等しいか、または異なる、
請求項1ないし5いずれか一項に記載のリアプロジェクションシステム。
【請求項7】
前記複合材料はポリマーである、
請求項6に記載のリアプロジェクションシステム。
【請求項8】
前記液晶材料と前記複合材料との前記組成は、スイッチ可能ブラッグ格子を形成するように構成された、
請求項6または7に記載のリアプロジェクションシステム。
【請求項9】
前記液晶材料と前記複合材料との前記組成はホログラフィックポリマー分散液晶(HPDLC)材料である、
請求項8に記載のリアプロジェクションシステム。
【請求項10】
前記液晶材料と前記複合材料の前記組成はポリマー液晶ポリマースライス(POLICRIPS)材料、または電気的制御可能ポリマー液晶ポリマーホログラム(POLIPHEM)材料である、
請求項8に記載のリアプロジェクションシステム。
【請求項11】
前記液晶材料と前記複合材料との前記組成は、液晶ゲルを形成したモノアクリレートと、ジアクリレートと、不活性液晶材料との光重合混合物である、
請求項8に記載のリアプロジェクションシステム。
【請求項12】
透明モードと回折モードとの間をスイッチ可能なリアプロジェクションスクリーンであって、
第1の透明電極と、表面レリーフ格子を有するレリーフ部分とを有する第1の透明基板と、
前記第1の透明基板の前記レリーフ部分の隣に配置され、前記表面レリーフ格子を満たしている液晶材料と、
第2の透明電極を有する第2の透明基板と、を有し、
前記液晶材料の前記屈折率は前記第1の透明基板の前記レリーフ部分の前記屈折率と実質的に等しく、または異なるように前記第1と第2の電極の電場により変更できる、リアプロジェクションスクリーン。
【請求項13】
前記第1の透明基板は、PMMAでできたサポートレイヤと、前記液晶レイヤに面した、ポリカーボネートでできたレリーフレイヤとを有する、
請求項12に記載のリアプロジェクションスクリーン。
【請求項14】
前記第2の基板は、ガラスでできたサポートレイヤと、前記液晶レイヤに面した、ラビングしたポリイミドレイヤとを有する、
請求項12または13に記載のリアプロジェクションスクリーン。
【請求項15】
前記表面レリーフ格子は、格子周期が約1000nmであり、変調深度が約100−300nmの範囲である、
請求項12ないし14いずれか一項に記載のリアプロジェクションスクリーン。
【請求項16】
請求項12乃至15いずれか一項に記載のリアプロジェクションスクリーンの生産方法であって、
第1の透明電極と、エンボスプロセス用に用意した透明表明部分とを有する第1の透明基板を設ける段階と、
前記透明表面部分をエンボス加工して、表面レリーフ格子を有するレリーフ部分を前記第1の透明基板に形成する段階と、
前記第1の透明基板の前記レリーフ部分に液晶材料をデポジションして、前記表面レリーフ格子を満たす段階と、
第2の透明電極を有する第2の透明基板を設ける段階と、
前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とをアセンブルする段階と、を有する方法。
【請求項17】
前記エンボス加工は、射出成形、熱エンボス加工、または連続薄膜複製により行う、
請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3a】
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【図4】
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【図4a】
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【公表番号】特表2011−524997(P2011−524997A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513088(P2011−513088)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052358
【国際公開番号】WO2009/150579
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】