説明

リクレーマ

【課題】リクレーマについて、様々な払い出し対象・運転条件に対応して、払い出し効率の低下を最小限に抑えながらバケットホイルの過負荷に伴うトラブルを回避可能とする。
【解決手段】所定方向に走行可能な本体部から旋回・俯仰可能に延設されたブームの先端側にホイル駆動機構で回転駆動するバケットホイルを備えてなるリクレーマにおいて、そのホイル駆動機構はモータからバケットホイルに繋がる動力伝達経路中にクラッチ手段を有しており、バケットホイル過負荷時にそのクラッチ手段が作動することにより、バケットホイル手前で回転駆動力が遮断されるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭や鉱石などのバラ物を貯蔵する貯鉱場で積付山から貯蔵物を払い出すためのリクレーマに関し、殊に、バケットホイル過負荷時の緩衝機能を備えたリクレーマに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭や鉱石などのバラ物を大量に貯蔵する貯鉱場においては、図4に示すようにスタッカ等の積付手段を使用して貯蔵対象物を積み上げた積付山100,100,・・・を並列的に複数設け、その積付山100の列に平行して設けた道床50上を走行するリクレーマ1Cにより、時間当たり所定量の貯蔵物を連続的に払い出すようにしている。
【0003】
このリクレーマ1Cは、道床50を走行する本体からブーム2旋回および上下に俯仰可能に延設され、その先端に回転しながら貯蔵物を掬い取るバケットホイル3を有しており、掬い取った貯蔵物をブーム2中に配設したブームコンベアで道床50まで移送し、道床50に併設した運搬コンベアを経由し目的位置まで払い出すようになっている。
【0004】
また、貯蔵物を掬い取るバケットホイル3は、モータ及び減速機を備えたホイル駆動機構10Cで転駆動するが、その過負荷対策としてホイル駆動機構10Cを構成するモータと減速機の間に流体継手を設けてあるのが通常であり、この流体継手は払い出し対象の種類・払い出し量に応じたトルク・回転数に予め設定される。
【0005】
しかし、寒冷地における場合など、通常切削のために設定したトルク・回転数とは異なり、凍結したパイルに対し切削力を強くしながらホイル回転数を下げた状態で作業を実施することがある。また、これ以外にも貯蔵物の種類や払い出し量が異なるなど、切削力・回転数を多様に変動させた運転条件で実施する場合もある。ところが、前述の流体継手では予め設定された通常時用の条件以外では回転数を下げて切削力を上げることはできなかった。
【0006】
斯かる問題に対し、バケットホイルを回転駆動するモータの電流値を制御手段で常時把握しておき、この電流値が予め定めた設定値を超えたときにブームの旋回を逆転させて装置の破損を回避しようとする技術が、実公昭61−11144号公報等に提案されている。
【0007】
このようにバケットホイルの過負荷状態をモータの電流値で検知しながら過負荷が生じる前にブームを逆転するようにしたことで、ホイル駆動機構にかかる負荷を大きく軽減することができる。しかしながら、ブームの旋回を逆転させることは払い出し量を大きく減少させることに繋がるため、想定した払い出し効率の実現が困難となりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭61−11144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、リクレーマについて、様々な払い出し対象・運転条件に対応して、払い出し効率の低下を最小限に抑えながらバケットホイルの過負荷に伴うトラブルを回避可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、所定方向に走行可能な本体部から旋回・俯仰可能に延設されたブームの先端側にホイル駆動機構で回転駆動するバケットホイルを備えてなるリクレーマにおいて、そのホイル駆動機構はモータからバケットホイルに繋がる動力伝達経路中にクラッチ手段を有しており、バケットホイル過負荷時にそのクラッチ手段が作動することにより、バケットホイル手前で回転駆動力が遮断されるものとした。
【0011】
このように、バケットホイル過負荷時に対応するために、ホイル駆動機構中に従来配設されていた流体継手の代わりにクラッチ手段を配設したことにより、より多様な運転状態に対応して払い出し動作の停止を最小限としながら、バケットホイル過負荷時に優れた緩衝機能を発揮することができる。
【0012】
また、この場合、そのクラッチ手段はモータと減速手段との間に配設されていることを特徴としたものとすれば、緩衝機能がより有効に発揮することができる。
【0013】
さらに、上述したリクレーマにおいて、そのクラッチ手段は油圧制御式クラッチまたはスプリング制御式湿式クラッチであって、その設定トルクが操縦者又は自動運転制御手段による油圧制御またはスプリング制御で任意に設定可能とされたものとすれば、作業対象の変化及び作業状況の変化に応じて自在に対応可能なものとして、作業効率の低下を最小限に抑えながら充分な緩衝機能を発揮しやすいものとなる。
【0014】
さらにまた、クラッチ手段は流体継手を介さず前記モータと直接結合されており、前記モータをインバータ制御することにより前記バケットホイルの回転数を変化可能とした場合には、従来の流体継手の場合のように過負荷の停止は可能であるがホイル回転数の減少(減速)での払出し量の制御ができなかったのに対して、作業対象の過負荷をモータ電流で検知した場合、つまり、ホイルの回転数の減少の指令を出して払出し過多の防止を計ることができる。
【0015】
従って、寒冷地および作業終了後にホイル回転数を減少させてホイル洗浄を実施することが可能となり、ホイルを低速で回転させながらのメンテナンスも可能である。
【0016】
或いは、そのクラッチ手段は湿式クラッチであって、その設定トルクが一定であるとともにクラッチの滑りを検出する検出手段を備えており、この検出手段がクラッチの滑り情報を操縦席の表示手段又は自動運転制御手段に出力することを特徴としたものとしても、機械停止の判断を容易にしながら上記同様に優れた緩衝機能を発揮しやすいものとなる。
【発明の効果】
【0017】
バケットホイル過負荷時に対応するためにホイル駆動機構にクラッチ手段を配設した本発明によると、様々な払い出し対象・運転条件に対応して、払い出し効率の低下を最小限に抑えながらバケットホイルの過負荷に伴うトラブルを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における実施の形態であるリクレーマのブーム先端側の構成を示す部分正面図である。
【図2】図1のリクレーマのホイル駆動機構の詳細を示す部分拡大図である。
【図3】図2のホイル駆動機構の応用例を示す部分拡大図である。
【図4】従来例のリクレーマが配置された貯鉱場の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明によるリクレーマのブーム2先端側の構成を示すものであり、図示しない本体部から旋回及び俯仰可能に延設されたブーム2には、その長さ方向にブームコンベア20が併設され、その先端側に円周上にバケット31,31,・・・を有したバケットホイル3がホイル駆動機構10Aにより回転駆動可能に設けられており、バケットホイル3で掬い取った払い出し対象物を本体部に向かって連続的に送るようになっている。
【0021】
そして、従来例においてバケットホイル3の過負荷対策としてモータ11と減速機を内蔵した減速部14の間に流体継手が配設されていたのに対し、本実施の形態においては、この流体継手の代わりにクラッチ12Aが配設されており、バケットホイル3に過剰な負荷が加わった際にこのクラッチ12Aが作動して、バケットホイル3の手前でモータ11による回転駆動力が遮断される。
【0022】
即ち、流体継手が配設された従来例では、予め設定したトルク・回転数とは異なる状況で使用する場合に充分な緩衝機能が発揮されにくかったり、ホイル回転数を任意に選定することができなかったのに対し、本実施の形態では通常時以外の多様な状況においても、払い出し動作の停止時間を最小限に抑えながら、バケットホイル3の過負荷に対し優れた緩衝機能およびホイル回転数制御が可能となり能力制御機能を発揮するものとなっている。
【0023】
図2は、そのホイル駆動手段10Aの詳細を示すものであるが、バケットホイル3の中心軸位置に固定される駆動軸15とモータ11との間には、減速機を内蔵した減速部14が配設されているが、この減速部14とモータ11の間にクラッチ部12Aが配設されている。
【0024】
このクラッチ12Aには、破線で示す油圧制御式のクラッチ120が内蔵されており、図示しない油圧配管を介した油圧制御で、その設定トルクが任意に設定可能とされ、操縦者又は自動運転制御手段により適宜のレベルに設定されるようになっており、様々な状況に応じてバケットホイル3過負荷時の荷重遮断が適切に行える。
【0025】
即ち、例えばパイルが凍結していたり払い出し量を変更したりする場合など、作業対象の変化や作業状況の変化に応じてクラッチ120のトルクを自在に設定できるようにしたことで、通常時以外の状況においても作業効率の低下を最小限に抑えながら駆動力遮断による緩衝機能およびホイル回転数を最適に調整可能としたのである。
【0026】
また、この場合、流体継手と異なりモータ11からの直結構造となることから、エネルギーロスが少なくエネルギー効率に優れたものとなる。さらに、油圧制御式クラッチの場合にはモータ起動後のクラッチ接続も可能であり、モータの回転速度が低い起動時に大きな負荷が瞬間的にかかる事態を回避することで、バケットホイル3をスムースに回転始動させやすいものとなる。
【0027】
図3は、図2のホイル駆動機構10Aの応用例としてのホイル駆動機構10Bを示すものであり、前述の油圧制御式のクラッチ120を内蔵したクラッチ部12Aの代わりに、湿式のクラッチ121を内蔵したクラッチ部12Bが配設されており、設定トルクが一定であるとともにクラッチの滑りを検出する回転角検出手段であるセンサ122,123が配設されており、クラッチの滑り情報を操縦席の表示手段又は自動運転制御手段に出力するようになっている。
【0028】
この応用例でも、クラッチ手段を配設することによりトルクの設定が任意に行えない点を除いて上記同様の効果を発揮するものであるが、これに加え、回転角検出機能を有するセンサ122,123が、クラッチ121における動力入力側と出力側に各々配設されてクラッチの滑り状況を検出するようになっており、その滑り情報を操縦席の表示手段又は自動運転制御手段に出力することで、機械停止指令の判断を容易なものとしている。
【0029】
以上、述べたように、バラ物を連続的に払い出すリクレーマについて、本発明により様々な払い出し対象・運転条件に対応して、払い出し効率の低下を抑えながらバケットホイルの過負荷に伴うトラブルを有効に回避できるものとなった。
【符号の説明】
【0030】
2 ブーム、3 バケットホイル、10A,10B ホイル駆動機構、11 モータ、12A,12B クラッチ部、14 減速部、15 駆動軸、20 ブームコンベア、31 バケット、100 積付山、120,121 クラッチ、122,123 センサ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に走行可能な本体部から旋回・俯仰可能に延設されたブームの先端側にホイル駆動機構で回転駆動するバケットホイルを備えてなるリクレーマにおいて、前記ホイル駆動機構はモータから前記バケットホイルに繋がる動力伝達経路中にクラッチ手段を有しており、前記バケットホイル過負荷時に前記クラッチ手段が作動することにより、前記バケットホイル手前で回転駆動力が遮断されることを特徴とするリクレーマ。
【請求項2】
前記クラッチ手段は前記モータと減速手段の間に配設されている、ことを特徴とする請求項1に記載したリクレーマ。
【請求項3】
前記クラッチ手段は油圧制御式クラッチであって、その設定トルクが操縦者又は自動運転制御手段による油圧制御で任意に設定可能とされていることを特徴とする請求項1または2に記載したリクレーマ。
【請求項4】
前記クラッチ手段はスプリング制御式湿式クラッチであって、その設定トルクが操縦者又は自動運転制御手段によるスプリング制御で任意に設定可能とされていることを特徴とする請求項1または2に記載したリクレーマ。
【請求項5】
前記クラッチ手段は湿式クラッチであって、その設定トルクが一定であるとともにクラッチの滑りを検出する検出手段を備えており、該検出手段が前記クラッチの滑り情報を操縦席の表示手段又は自動運転制御手段に出力することを特徴とする請求項1または2に記載したリクレーマ。
【請求項6】
前記クラッチ手段は流体継手を介さず前記モータと直接結合されており、前記モータをインバータ制御することにより前記バケットホイルの回転数を変化可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載したリクレーマ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−20819(P2011−20819A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168856(P2009−168856)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)