説明

リクレーマ

【課題】様々な積付山の状況に対応してスムーズかつ効率的な払い出しを実現できるようにする。
【解決手段】軌条50上を往復走行可能な機体11と、機体11上に水平旋回可能に設けられた旋回台12と、旋回台12から延設され内部にブームコンベヤ13c,13dを有し先端側に回転駆動可能なバケットホイル15を有して旋回・俯仰動作を行うブーム13とを備えており、バケットホイル15で積付山を取り崩しながら払い出しを行うリクレーマ1Aにおいて、そのブーム13を、基端側部13aと先端側部13bの少なくとも2つの部材で構成して伸縮駆動手段130を有したものとし、基端側部13a内に挿入された先端側部13bを伸縮駆動手段130でテレスコープ式に突出・没入させることにより、全長を所定範囲で自在に変更可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭や鉱石等のバラ物を積み上げた積付山を取崩しながら払い出すためのリクレーマに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄所に搬入される鉄鉱石、火力発電所に搬入される石炭、或いは貨物船に積に込まれる鉱石などのバラ物は、広大な面積を有する貯鉱場のヤード(置き場)にスタッカ等の搬入手段で積み上げられて貯蔵され、その後、先端側にバケットホイルを有して水平旋回・俯仰動作可能なブームを備えたリクレーマで取り崩されて搬出されるのが一般的である。
【0003】
このような搬出手段としてのリクレーマには、特開2002−347945号公報や特開2001−58725号公報に記載されているように、搬出機能に加え搬入機能を有してスタッカを兼ねるもの(スタッカリクレーマ)も普及しており、図5はこのような従来例としてのリクレーマ1Bの概略図を示している。
【0004】
このリクレーマ1Bは、ヤードにおいて搬入コンベヤ・搬出コンベヤに隣接して敷設された軌条50上に往復走行可能に配置された機体21と、この機体21上に旋回駆動可能に設けられた旋回台22と、この旋回台22から延設され内部に正逆反転動作可能なブームコンベヤ24を備えるとともに先端側に回転しながら積付山を取り崩すバケットホイル25を備えたブーム23とからなるものである。
【0005】
ところで、斯かる構成のリクレーマ1Bはバケットホイル25とブームコンベヤ24を用いて払い出し機能を発揮するものであるが、そのブーム23の長さは一定であるため、図6(A)の平面図に示すように、軌条50に対し平行に連なるように積み上げられた複数の積付山からバラ物を払いだす作業は、基本的にはブーム23を旋回させながら先端側のバケットホイル25を平面視扇状に動かす方式の所謂旋回払い出しにより行われる。
【0006】
この場合、払い出し効率と大きな積付け面積に対応するため、ブーム23の全長をある程度確保する必要があるが、ブーム23の先端側を水平方向に旋回させながら積付山にバケットホイル25を側方から押圧して取り崩す方式であることから、ブーム23の全長が長くなるとこれに加わる加重も過大となりやすく、また、図6(B)の平面図に示すように、狭い擁壁の間にある積付山を払い出す場合には、擁壁や手前側の積付山にブーム23が干渉するために、作業効率が低下したり残鉱部分が大きくなったりするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−347945号公報
【特許文献2】特開2001−58725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、様々な積付山の状況に対応してスムーズかつ効率的な払い出しを実現できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、所定の軌条上を往復走行可能な機体と、この機体上に水平旋回可能に設けられた旋回台と、この旋回台から延設され内部にブームコンベヤを有し先端側に回転駆動可能なバケットホイルを有して旋回・俯仰動作を行うブームとを備えており、そのバケットホイルで積付山を取り崩しながら払い出しを行うリクレーマにおいて、そのブームは、基端側部と先端側部の少なくとも2つの部材で構成されて所定の伸縮駆動手段を有しており、基端側部内に挿入された先端側部を伸縮駆動手段でテレスコープ式に突出・没入させることにより、その全長を所定範囲で自在に変更可能とした。
【0010】
このように、リクレーマのブームをテレスコープ式に伸縮動作可能としたことで、ブームの旋回動作と機体の走行動作の組み合わせでのみで払い出しを行う従来例と比べ、払い出しのための動作の組み合わせが格段に増加し、殊に、擁壁で囲まれている積付山の取り崩しに有利なものとなるため、様々な状況に対応可能としてスムーズかつ効率的な払い出しを実現しやすいものとなる。
【0011】
また、このリクレーマにおいて、そのブームには長手方向所定範囲で位置変更可能にウエイトが配置されてなるバランス調整機構が設けられており、ブームの伸縮動作に対し逆方向にウエイトを移動させながら、ブームにおける旋回バランスの変動を所定の許容範囲内に納めることを特徴としたものとすれば、ブームを伸縮させても旋回動作のスムーズさが維持されやすい。
【0012】
この場合、そのバランス調整機構のウエイトは、基端側部の所定部分で長手方向に走行可能に設けられたバランス台車であって所定の駆動手段で走行して位置変更を行うものとしたことを特徴としたものすれば、簡易な構成でブームの旋回バランスを維持しやすい。
【0013】
さらに、上述したリクレーマにおいて、そのブームの伸縮駆動手段は、基端側部に設けたモータ駆動のピニオンと先端側部の側面長手方向に設けたラックの組み合わせによるラック&ピニオン式、又は基端側部に設けたモータ駆動のスプロケット及びアイドルスプロケットと先端側部の側面長手方向に架設したチェーンの組み合わせによるチェーンラック式とされて、先端側部を摺動させることを特徴としたものとすれば、簡易な構成でブームの伸縮機能が確保されるとともに所望の長さ位置における固定力も優れたものとなる。
【発明の効果】
【0014】
伸縮自在のブームを用いて払い出しを行うものとした本発明によると、積付山の様々な状況に対応してスムーズかつ効率的な払い出しを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明における実施の形態であるリクレーマのブームを伸長させた状態を示す正面図であり、(B)は(A)のリクレーマのブームを退縮させた状態を示す正面図である。
【図2】(A)は図1(A)のリクレーマにおけるブームの詳細な構成を示す部分拡大図であり、(B)は図1(B)のリクレーマにおけるブームの詳細な構成を示す部分拡大図である。
【図3】(A)は図1(A)のリクレーマにおけるブームの伸縮駆動手段がラック&ピニオン式である場合の模式図であり、(B)は図1(B)のリクレーマにおけるブームの伸縮駆動手段がチェーンラック式である場合の模式図である。
【図4】図1(A)のリクレーマによる払い出し作業時の状況を示す平面図である。
【図5】従来例を示す正面図である。
【図6】(A)及び(B)は図5の従来例による払い出し作業時の状況を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。尚、本発明において、リクレーマには通常の搬出機能に加えて搬入機能を発揮することのできる所謂スタッカリクレーマも含むものとする。
【0017】
図1(A),(B)は、本実施の形態のリクレーマ1Aの構成、及びその特徴部分による作用を説明するための正面図を示している。このリクレーマ1Aは、通常のリクレーマとしての積付山の取り崩し・払い出し機能に加え、スタッカとしての搬入・積付け機能を備えたものであり、貯鉱場などのヤードにおいて搬入コンベヤ・搬出コンベヤに平行して敷設した軌条50上を往復走行可能に配置されている。
【0018】
リクレーマ1Aは、軌条50上に車輪を載せて所定の動力で走行する機体11と、機体11上で所定の動力により水平旋回する旋回台12と、この旋回台12から延設され先端に所定の動力で回転するバケットホイル15を有して旋回・俯仰動作を行うブーム13を備えており、以上の構成は図4に記載した従来例のリクレーマ1Bとも共通した周知の構成である。
【0019】
そして、本発明においては、ブーム13がテレスコープ式に伸縮自在とされて、所定範囲内で所望の長さに調整可能とされている点が特徴となっている。即ち、このブーム13は、旋回台12に軸部材を介し俯仰動作可能に設けられた基端側部13aと、この基端側部13a内に先端側から挿入されブーム13の長手方向に沿って突出・没入可能に設けられた先端側部13bの2つの部材で構成されてなるものである。
【0020】
即ち、基端側部13aに設けたモータ駆動式の伸縮駆動手段130でブーム13bを摺動させてブーム13をテレスコープ式に伸縮させるようになっており、図1(A)に示すように基端側部13a内に先端側部13bを没入して最も全長を短くした状態から、図1(B)に示すように先端側部13bが長手方向に突出して全長を最も長くした状態の間で、ブーム13が伸縮自在かつ所望の全長位置で固定可能とされている。
【0021】
図2(A)は、このブーム13の詳細な構成を説明するための部分拡大図であり、複数の棒状鋼材で四角柱の各辺を構成するように形成された基端側部13aに、これよりも細い四角柱状の先端側部13bがブーム13の長手方向に沿って先端側から最も深い位置まで挿入され、ブーム13の全長が最も短い状態となっている。
【0022】
この基端側部13aには、先端側部13bの側面に当接してその摺動方向を案内する複数のローラ131が配設されており、その先端側部13bを挿入する空間の下方にはブームコンベヤ13dが旋回台12の上方まで延出して配設されており、これら複数のローラ131で図2(B)の最も突出した位置まで先端側部13bの摺動を案内しながら、バケットホイル15の直径と同程度のブーム13の伸縮量を確保している。
【0023】
角柱状の先端側部13bの内部には、もう1つのブームコンベヤ13cが内装されており、バケットホイル15で取り崩した積付山のバラ物を運搬して基端側部13aのブームコンベヤ13dに渡すようになっている。尚、このブームコンベヤ13c及び前述のブームコンベヤ13dは正逆反転動作が可能とされており、払い出し動作に加えて搬入動作を行うことも可能となっている。また、先端側部13bの先端に設けられたバケットホイル15は、図示しない油圧モータ等の駆動手段で回転動作を行うようになっている。
【0024】
さらに、基端側部13aの上面側には、ブーム13の伸縮に伴う旋回バランスの変動を調整するためのバランス調整機構を構成するウエイトとして、バランス台車17が基端側部13aの基端から先端までの範囲で走行可能に設けられている。このバランス台車17は内部に錘が詰まっており、ブーム13が図2(A)のように退縮する場合にはこれとは逆方向の先端側に移動し、ブーム13が図2(B)のように伸長する場合にはこれとは逆方向の基端側に移動するようになっている。
【0025】
このように基端側部13aに設けられたバランス台車17が、ブーム13の伸縮動作と同調しながら移動することにより、ブーム13の旋回バランスの変動を許容範囲内に納めることを可能としており、その旋回動作のスムーズさを確保できるようになっている。尚、バランス台車17の移動は、例えばワイヤー式、ピンラック式、チェーンラック式等の駆動方式で行われるようにすればよい。
【0026】
図3(A),(B)は、ブーム13に設けられて基端側部13aに挿入された先端側部13bを突出・没入動作を行うための伸縮駆動手段130の方式の例を示す模式図である。図3(A)はラック&ピニオン式の場合を示しており、基端側部13aに設けたモータ駆動のピニオン130aが、先端側部13bの側面長手方向に設けたラック130bに噛み合いながら先端側部13bを摺動させるものである。
【0027】
一方、図3(B)はチェーンラック式の場合を示しており、基端側部13aに設けたモータ駆動のスプロケット130c及びアイドルスプロケット130d,130eに、先端側部13bの側面長手方向に架設したチェーン130fがΩ状に掛けられており、スプロケット130の回動で先端側部13bを摺動させるものである。尚、ピニオン130aやスプロケット130cを回動させるための図示しない駆動用のモータとして、停止時に所定レベルの固定力を発揮するタイプのものを用いることにより、ブーム13が所望の全長位置でしっかりと固定されやすくなる。
【0028】
本実施の形態において、上述のような簡易な構成でブーム13を所定範囲で伸縮自在かつ所望の全長で固定できるようにしたことにより、バケットホイル15をブーム13の長手方向に沿って往復移動させながら積付山を取り崩せるものとなった。したがって、図4の平面図に示すように、走行・旋回動作にブーム13の伸縮動作が加わった本発明のリクレーマ1Aでは、狭い擁壁間に積付山がある場合など、従来払い出し作業が困難であった状況でも比較的容易に取り崩すことができ、効率的な払い出しを行えるものとなった。
【0029】
以上、述べたように、本発明により、積付山の様々な状況に対応してスムーズかつ効率的な払い出しが実現可能となった。
【符号の説明】
【0030】
1A リクレーマ、11 機体、12 旋回台、13 ブーム、13a 基端側部、13b 先端側部、13c,13d ブームコンベヤ、15 バケットホイル、17 バランス台車、50 軌条、130 伸縮駆動手段、131 ローラ、130a ピニオン、130b ラック、130c スプロケット、130d,130e アイドルスプロケット、130f チェーン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軌道上を往復走行可能な機体と、該機体上に水平旋回可能に設けられた旋回台と、該旋回台から延設され内部にブームコンベヤを有し先端側に回転駆動可能なバケットホイルを有して旋回・俯仰動作を行うブームとを備えており、前記バケットホイルで積付山を取り崩しながら払い出しを行うリクレーマにおいて、前記ブームは、基端側部と先端側部の少なくとも2つの部材で構成されて所定の伸縮駆動手段を有しており、前記基端側部に挿入された前記先端側部を前記伸長駆動手段でテレスコープ式に突出・没入させることにより、全長を所定範囲で自在に変更可能としたことを特徴とするリクレーマ。
【請求項2】
前記ブームには、長手方向所定範囲で位置変更可能にウエイトが配置されてなるバランス調整機構が設けられており、前記ブームの伸縮動作に対し逆方向に前記ウエイトを移動させながら、前記ブームにおける旋回バランスの変動を所定の許容範囲内に納めることを特徴とした請求項1に記載したリクレーマ。
【請求項3】
前記ウエイトは、前記基端側部の所定部分で長手方向に走行可能に設けられたバランス台車であって所定の駆動手段で走行して位置変更を行うことを特徴とする請求項2に記載したリクレーマ。
【請求項4】
前記伸縮駆動手段は、前記基端側部に設けたモータ駆動のピニオンと先端側部の側面長手方向に設けたラックの組み合わせによるラック&ピニオン式、又は前記基端側部に設けたモータ駆動のスプロケット及びアイドルスプロケットと前記先端側部の側面長手方向に架設したチェーンの組み合わせによるチェーンラック式であって、前記先端側部を摺動させることを特徴とする請求項1,2または3に記載したリクレーマ。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−57358(P2011−57358A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207992(P2009−207992)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)