説明

リクレーマ

【課題】ブームの起伏手段に電動シリンダを用いても機械装置の損傷を回避可能としながら、ブームのスムーズな起伏動作を実現できるようにする。
【解決手段】走行手段を有する機体11と、機体11上に水平旋回可能に設けられた旋回台12と、旋回台12から延設され先端側にバケットホイル15を有して起伏手段20により起伏動作を行うブーム13とを備えており、バケットホイル15で積山を取り崩しながら払い出しを行うリクレーマ1Aであって、その起伏手段20は電動モータ21cの駆動によりシリンダ部21aから突出したロッド部21bを進退動作させて作動する電動シリンダ21を有しており、インバータユニットを有した制御手段でその電動モータ21cを駆動制御することにより起動時及び制動時のショックを軽減する、ことを特徴とするものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平旋回・起伏動作を行うブームを備えて石炭や鉱石等の積山を取り崩しながら払い出しを行うリクレーマに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄所に搬入される鉄鉱石、火力発電所に搬入される石炭、或いは貨物船に積に込まれる鉱石などのバラ物は、広大な面積を有する貯鉱場のヤード(置き場)にスタッカ等の搬入手段で積み上げられて貯蔵され、その後、先端に例えばバケットホイルのような採集手段を有して水平旋回・起伏動作可能なブームを備えたリクレーマで取り崩されて搬出されるのが一般的である。
【0003】
このようなリクレーマには、特開2002−347945号公報に記載されているように、搬出機能に加え搬入機能を有してスタッカを兼ねたもの(スタッカリクレーマ)もある。また、そのブーム先端側を上下動作させるための起伏手段としては、図4に示すもののように油圧ユニット30で作動油を圧送されて作動する油圧シリンダ22のシリンダ部22aから突出したロッド部22b先端側をブーム13の基端側に接続したものが周知である。
【0004】
このようにブーム13の起伏手段に油圧を用いる理由としては、比較的小さな装置で大きな駆動力が得られること、起動・制動をショックレスに行えること、及び過大な荷重が作用した場合でも安全弁を作動させることで機械装置の損傷を比較的容易に回避できること、2本シリンダの場合に両シリンダの圧力同調が容易であること等が挙げられる。
【0005】
しかし、油圧式の起伏手段は電動式のものと比較して、エネルギー効率が低いこと、駆動時の騒音が大きいこと、作動油の管理や廃油処理が必要になること等の難点があるため、近年の環境意識の高まりも相俟って起伏手段の駆動方式に従来の油圧に代わるものの開発が望まれている。
【0006】
そこで、ブームの起伏手段として油圧シリンダの代わりにボールネジを使用した電動モータ作動式の電動シリンダを用いることが考えられる。しかし、この電動シリンダは搬入機能のみを有したスタッカにおいて採用例があるものの、ブーム先端に例えばバケットホイル等の採集手段を備えたリクレーマ(スタッカリクレーマを含む)においては、掘削衝撃や積山崩落による大きな衝撃荷重が先端に備えた採集手段にかかることがあり、安全弁が機能する油圧方式とは異なり機械装置の損傷を招きやすいものとなる。
【0007】
また、電動シリンダを用いた場合には油圧シリンダを用いる場合と比べて、起動・制動時のショックが大きいこと、過荷重の検出が困難であること、シリンダ2本式の場合にシリンダ動作の同調が困難であることも問題となりやすい。そのため、リクレーマにおける油圧シリンダの採用例は見られないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−347945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、ブームの起伏手段に電動シリンダを用いても、機械装置の損傷を回避可能としながらブームのスムーズな起伏動作を実現できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、走行手段を有する機体と、この機体上に水平旋回可能に設けられた旋回台と、この旋回台から延設され先端側に例えばバケットホイルのような採集手段を有して所定の起伏手段により起伏動作を行うブームとを備えて、採集手段で積山を取り崩しながら払い出しを行うリクレーマにおいて、その起伏手段は電動モータの駆動によりシリンダ部から突出したロッド部を進退動作させて作動する電動シリンダを有しており、インバータユニットを有した制御手段でその電動モータを駆動制御することにより起動時及び制動時のショックを軽減する、ことを特徴とするものとした。
【0011】
このように、リクレーマにおけるブームの起伏動作を油圧シリンダの代わりに電動シリンダで行うようにしたことで、エネルギー効率に優れるとともに廃油の問題も解消可能なものとなるが、これに加えて電動シリンダの動作がインバータユニットを介して制御されて起動時及び制動時のショックが軽減されるものとしたことにより、スムーズなブームの起伏動作が実現されるものとなる。
【0012】
また、このリクレーマにおいて、電動シリンダの基端側にはピン型荷重検出手段が取付けピンとして配設されており、このピン型荷重検出手段による検出信号を基にして制御手段が電動シリンダの過荷重状態を検知可能とされ、所定の過荷重状態を検知することで電動モータの駆動を停止する、ことを特徴としたものとすれば、起伏動作時及び起伏停止時の両方で電動シリンダの過荷重を検知してシリンダの作動を停止することにより機械装置の損傷を回避しやすいものとなる。
【0013】
さらに、上述したリクレーマにおいて、電動シリンダに所定レベル以上の負荷が加わった場合に、電動モータの駆動力をロッド部の進退動作に変換する経路の途中で動力伝達を切断することによりロッド部を退縮させる、機械式ブレーキが配設されていることを特徴としたものとすれば、採取作業中に先端に備えた採集手段に大きな負荷が加わりシリンダに過加重が作用した場合でも、前記機械式ブレーキが動力伝達経路の途中で接続を切断してロッド部の退縮動作を許容することで機械装置の損傷を回避することができる。
【0014】
さらにまた、上述したリクレーマにおいて、その起伏手段は並列配置された2本の電動シリンダを有しており、且つ、両電動シリンダ間に架設されてシリンダ動作を同調させる同調軸を有している、ことを特徴としたものとすれば、スムーズなブームの起伏動作が確保されやすいとともに、一方の電動シリンダが作動不能となっても片肺運転が行えるものとなる。
【発明の効果】
【0015】
インバータ制御の電動シリンダで起動時及び制動時のショックを軽減しながらブームを起伏させるものとした本発明によると、ブームの起伏手段に電動シリンダを用いても、機械装置の損傷を回避可能としながらブームのスムーズな起伏動作を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態のリクレーマの側面図である。
【図2】本発明における実施の形態であるリクレーマのブームの起伏手段の構成を説明するための模式化した部分縦断面図である。
【図3】(A)は図2のリクレーマのブーム基端側を拡大した部分側面図であり、(B)は(A)のX―X線に沿う断面図である。
【図4】従来例によるリクレーマのブームの起伏手段の構成を説明するための模式化した部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。尚、本発明において、リクレーマには通常の搬出機能に加えて搬入機能を発揮することのできる、所謂スタッカリクレーマも含むものとする。
【0018】
図1は、本実施の形態のリクレーマ1Aの側面図を示しており、図2はリクレーマ1Aにおけるブーム13の起伏手段20の構成を説明するための模式化した部分縦断面図を示している。このリクレーマ1Aは、通常のリクレーマとしての積付山の取り崩し・払い出し機能に加え、スタッカとしての搬入・積付け機能を備えたものであり、貯鉱場等のヤードにおいて搬入コンベヤ・搬出コンベヤに平行して敷設した軌条上を往復走行可能に配置されるものである。
【0019】
斯かるリクレーマ1Aは、軌条上に車輪を載せて所定の動力で走行する機体11と、機体11上で所定の動力により水平旋回する旋回台12と、この旋回台12から延設され先端側に所定の動力で回転するバケットホイルからなる採集手段15を有して水平旋回・起伏動作を行うブーム13を備えており、以上の構成は上述した従来例のリクレーマとも共通した周知の構成である。
【0020】
そして、本発明においては、図2に示すようにブーム13の起伏動作を行うための起伏手段20が、油圧シリンダの代わりに並列配置した2本の電動シリンダ21,21を備えている点を特徴としている。この電動シリンダ21,21は、各電動モータ21cの駆動によりボールネジを回動させることでシリンダ部21aからロッド部21bを進退動作させて作動するようになっている。
【0021】
しかし、上述したように、電動シリンダをブームの起伏手段に用いる場合には、緩衝作用のある油圧シリンダとは異なり、起動時及び制動時にショックを伴うことが問題とされていた。そこで、本発明においては、その電動シリンダ21,21を作動させる各電動モータ21cの駆動を、図示しないインバータユニットを有した制御手段で制御する構成として起動時及び制動時のショックを軽減するものとしており、ブーム13のスムーズな起伏動作を実現可能としている。
【0022】
また、電動シリンダ21,21の基端部を各々旋回台12側に連結するための取付けピンが、ピン型荷重検出手段としてのロードセル21dとなっており、電動シリンダ21にかかっている荷重の検出信号を出力することにより、電動シリンダ21の過荷重状態を検知可能とされ、所定レベル以上の荷重を検知した電動シリンダ21,21の制御手段が各電動モータ21cの駆動を停止するようになっており、ブーム13先端側に下向きの過大な荷重がかかった場合でも、機械装置の損傷を回避しやすいものとなっている。
【0023】
さらに、電動シリンダ21,21には所定レベル以上の負荷が加わった場合に、電動モータ21cの駆動力をロッド部21bの進退動作に変換する動力伝達経路の途中で接続を切断してロッド部21bを退縮させる機能を有した機械式のブレーキ21eが各々配設されている。即ち、ロッド部21b基端側のボールネジに対し直角に設けられて所定のギヤを介しこれを回動させる入力軸(図示せず)と電動モータ21cの駆動軸(図示せず)との間に設けたブレーキ21eが、所定レベル以上の加重が加わることによりスリップして前記入力軸と電動モータ21cの駆動軸との回動方向の接続を切断し、ロッド部21bの退縮動作を許容するようになっている。これにより、採取作業中に積山の崩落等でブーム13の先端に備えた採集手段15に大きな負荷が加わって電動シリンダ21に過加重が作用した場合でも、油圧シリンダにおける安全弁と同様の機能を発揮して機械装置の損傷を回避しやすいものとなっている。
【0024】
本実施の形態のリクレーマ1Aでは、そのブーム13の起伏手段20として2本の電動シリンダ21,21が並列配置された場合を説明したが、シリンダ1本式のものでも同様である。尚、電動シリンダ21が2本並列配置されている関係で、電動シリンダ21,21間にこれらの動作を同調させる自在接手等の同調軸23が架設されており、ブーム13のスムーズな起伏動作を確保しやすいものとしている。また、このような構成としたことで、一方の電動シリンダ21が作動不能となっても片肺運転が実施できるようになっている。
【0025】
以下に、図2及び図3を参照しながら本実施の形態による具体的な作動例を詳細に説明する。例えば、通常荷重をPとして過荷重のPOLを1.5Pとし、ブレーキ21eの設定を1.5Pとした場合は、制御手段がロードセル21dでPを超えたことを検知することにより電動モータ21cの駆動を停止する。そして、POL(1.5P)となったことで機械式のブレーキ21eがスリップし始め、ロッド部21bが縮む(荷重方向が反転した場合も同様)。
【0026】
バケットホイル15で採集中に過負荷になった場合(起伏動作なし)は、Pを超過してPOLになるとブレーキ21eがスリップをし始め、ロッド部21bが縮む。尚、採集部の掘削衝撃や積山の崩落は瞬間的又は短時間であるため、機械装置の保護としてはこれで充分対応できる。
【0027】
そして、大型のスタッカリクレーマの場合や、起伏手段の電動シリンダが故障しても臨時的に片肺運転を行えるようにする場合、電動シリンダを2本並列配置する方式が採用されるのが通常である。このケースでは、図2,図3(B)に示すように、各々電動モータ21c、ブレーキ21eを有した2本の電動シリンダ21,21をブーム13基端部の両側に並列的に取付け、左右の電動シリンダ21を自在接手等の同調軸23で連結することにより、電動シリンダ21,21は互いに同調(同期)しながら作動するようになっている。
【0028】
この場合、通常時は2本の電動シリンダ21,21にてブーム13を支持している関係で、各ブレーキ21eの能力PBは通常荷重Pを上回ればよい(一般的にはPの150%:PB=1.5P)。しかしながら、仮に一方の電動シリンダ21が故障し、片肺運転が必要となった場合、残りのシリンダ部21には2本分の荷重がかかることになり、PB=1.5Pではブレーキ力が不足する。
【0029】
そのため、各ブレーキ21eの設定は2P×1.5=3Pとする必要がある。このような設定とした場合、通常運転時のブレーキ力は2Pの荷重に対し6Pとなり、3倍のブレーキ力になってしまう。するとブレーキ力が過大になってしまうため、電動シリンダ21,21に過負荷が作用した場合に、前述のように150%でブレーキがスリップしないことになるため、フレーム強度を過剰に強く設計する必要が生じる。
【0030】
その解決方法として、電動シリンダ21,21のブレーキ21e,21eのうち、いずれか一方を常用ブレーキ、他方を非常ブレーキとして、非常ブレーキを通常は開放状態としておくことが考えられる。そして、非常ブレーキはブーム13の角度が急激に変化した場合等の逸走状態を検出した場合にのみ、作動させるようにすればよい。これにより、過荷重が作用した場合であっても、前述の1本シリンダの場合と同様に、ブレーキ21eはPの150%でスリップすることになり、適切な機械装置の保護が可能なものとなる。
【0031】
以上、述べたように、本発明により、ブームの起伏手段に電動シリンダを用いても、機械装置の損傷を回避しながらブームのスムーズな起伏動作を実現できるようになった。
【符号の説明】
【0032】
1A リクレーマ、11 機体、12 旋回台、13 ブーム、15 採集手段、20 起伏手段、21 電動シリンダ、21a シリンダ部、21b ロッド部、21c 電動モータ、21d ロードセル、21e ブレーキ、23 同調軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行手段を有する機体と、該機体上に水平旋回可能に設けられた旋回台と、該旋回台から延設され先端側に採集手段を有して所定の起伏手段により起伏動作を行うブームとを備えて、前記採集手段で積山を取り崩しながら払い出しを行うリクレーマにおいて、前記起伏手段は電動モータの駆動によりシリンダ部から突出したロッド部を進退動作させて作動する電動シリンダを有しており、インバータユニットを有した制御手段で前記電動モータを駆動制御することにより起動時及び制動時のショックを軽減する、ことを特徴とするリクレーマ。
【請求項2】
前記電動シリンダの基端側には、ピン型荷重検出手段が取付けピンとして配設されており、前記ピン型荷重検出手段による検出信号を基にして前記制御手段が前記電動シリンダの過荷重状態を検知可能とされ、所定の前記過荷重状態を検知することで電動モータの駆動を停止する、ことを特徴とする請求項1に記載したリクレーマ。
【請求項3】
前記電動シリンダに所定レベル以上の負荷が加わった場合に、電動モータの駆動力をロッド部の進退動作に変換する経路の途中で動力の伝達を切断することによりロッド部を退縮させる機械式のブレーキが配設されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載したリクレーマ。
【請求項4】
前記起伏手段は、並列配置された2本の前記電動シリンダを有しており、且つ、前記両電動シリンダ間に架設されてシリンダ動作を同調させる同調軸を有している、ことを特徴とする請求項1,2または3に記載したリクレーマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−84357(P2011−84357A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237327(P2009−237327)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)
【Fターム(参考)】