説明

リトロレフレクタを使用して輝度を向上したフォイルディスプレイ

フォイルディスプレイ装置は、受光プレート(4)、光ガイド(2)、およびこれら受光プレートと光ガイドとの間に配置した可撓性のフォイル(3)を有する。フォイル(3)は、選択的に光ガイド(2)に接触させて光ガイド(2)から光を減結合させることができる。反射手段(6)を、光ガイド(2)における可撓性のフォイル(3)に面する側の側面とは反対の側面側に配置する。反射手段(6)は、光が散乱した位置に再帰反射させ、したがって、ディスプレイの輝度を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光カラーディスプレイ、例えば、ダイナミックフォイルディスプレイ、とくに、輝度特性を向上させたディスプレイに関するものである。
【0002】
光ディスプレイは、各ピクセルが、それぞれ独立して、例えば、ブラックライト、フロントライト、照明ライトもしくは光ガイドのような光源からの光を変調し、映像を構成するディスプレイである。
【背景技術】
【0003】
ダイナミックフォイルディスプレイ(Dynamic Foil Display/DFD)は、典型的には、能動プレートとして作用する光ガイドプレートと、受動プレートと、これら光ガイドプレートと受動プレートとの間に挟まれた可撓性の散乱フォイル作用手段と、並びに可撓性フォイルに関連する透明電極、受動プレートに関連する水平走査電極、能動プレートに関連する垂直アドレス電極よりなる作用手段とを有するディスプレイパネルにより構成し、このディスプレイパネルは以下に説明するように動作する。可撓性フォイルは、透明電極に設け、この透明電極にフォイル電圧を加えることができる。ピクセルは、典型的には、マトリックス形態にして配列し、各ピクセルは、受動プレートに配列した水平走査電極と、能動プレート配列した垂直アドレス電極との交点に配置する。
【0004】
水平走査電極、垂直アドレス電極およびフォイル電極間に加わる電圧に基づいて、静電気の力が発生し、局部的にフォイルを能動プレートもしくは受動プレートに接触させ、ピクセルを活性化もしくは非活性化することができる。このようにして、各ピクセルは、光を減結合する活性状態、もしくは光を遮蔽する非活性状態となり、これら2つの状態以外には状態を持たない。
【0005】
ピクセルが活性化した場合、可撓性フォイルは、局部的に光ガイドプレートに接触し、この結果、光が光ガイドプレートから減結合されて散乱フォイルに入射し、この散乱フォイルであらゆる方向に散乱させられる。光の若干が、ディスプレイから受動プレートを経て出射するよう散乱し、このピクセルは明るいピクセルとなる。
【0006】
一般的なタイプのDFDは、国際公開第99/28890号に記載されている。
【0007】
カラーフォイルディスプレイにおいて、各ピクセルは3個のサブピクセルに分割する。各サブピクセルの色は、カラーフィルタの緑部分、赤部分、青部分によってそれぞれ設定される。カラーフィルタは、通常は、吸収性カラーフィルタであり、カラーフィルタの赤部分は、緑および青のフォトンを吸収し、単に赤のみを透過する。このようなディスプレイを図1に示す。
【0008】
しかし、光が散乱フォイルであらゆる方向に散乱するとき、光の約半分は、見る人とは反対側の方向に光ガイドから方向に散乱する。このことは、光の約半分は、ディスプレイが発揮することができる輝度の半分しか得られない点で、光の約半分が「喪失」することを意味する。したがって、太陽光の下で使用するには、明るい画像を生ずることが困難である。このため、この問題を軽減する改良した光カラーディスプレイ装置に対する要求がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
後方散乱に関連する問題は、特許請求の範囲の請求項1に記載の光ディスプレイ装置によってほとんど解決される。請求項1に従属する他の請求項は、本発明の好適な実施例を提供する。
【0010】
本発明の基本的な概念は、各ピクセルから後方に散乱した光を、反射手段を使用して同一ピクセルに逆反射させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、光ガイドと、可撓性素子と、可撓性素子における1個またはそれ以上の部分を前記光ガイドの第1側面に接触させる作用手段とを具える光電情報ディスプレイ装置において、前記光ガイドの前記第1側面とは反対側の第2側面に隣接させて設けた反射手段であって、光ガイドの第1側面側から入射した光をほぼ入射方向に逆反射する該反射手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、後方散乱の反射光はディスプレイの輝度を改善するという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
可撓性素子は、散乱フォイルにより構成する。
本発明の実施例によれば、ディスプレイ装置をピクセルに分割し、光線を前記ピクセルから反射手段の方向に散乱させ、反射手段は、入射光線を散乱されたのと同一のピクセルに逆反射するよう構成する。この構成は、カラーフィルタを、受動プレートと可撓性素子との間に配置するときに利用できて有利である。反射手段はリトロレフレクタにより構成すると好適である。
【0014】
リトロレフレクタは、多数の傾斜面を有するものとして構成する。この構成によれば、光を適正方向に反射させやすいという利点がある。
【0015】
本発明の実施例によれば、傾斜面は、約90゜の頂角を有するテント状構造となるように配置する。この構成によれば、光線を効率よく反射させることができるという利点がある。
【0016】
リトロレフレクタは、前記傾斜面に直交する平面上に存在する少なくとも1個の垂直面を有するものとして構成する。この構成によれば、反射した光線のずれを制限し、したがって、入射した位置から離れすぎないよう反射光を逆反射することができるという利点がある。
【0017】
本発明の他の実施例によれば、傾斜面は、4個単位のグループに配列し、各グループがコーナー形状を有するものとする。この構成によれば、効率的な反射が得られるという利点がある。
【0018】
反射手段は、反射性金属によって形成することができる。このことは、反射手段に良好な反射特性を付与するのが簡単かつ効率的である。
【0019】
ディスプレイ装置は、ダイナミックフォイルディスプレイとすることができる。
【0020】
本発明のこれらおよび他の特徴は以下に説明する実施例から明らかになるであろう。
【実施例1】
【0021】
図1に示す既知の光電ディスプレイ装置1は、光ガイド2と、散乱フォイル3の形式の可撓性素子と、受動プレート4と、スペーサ5とを有する。光ガイド2は、能動プレートとして機能する。カラーフィルタ12を、受動プレート4の散乱フォイルに面する側に配置する。
【0022】
光ガイド2の内面10に入射する入射光線9は、散乱フォイル3が光ガイド2に接触しないピクセルで、全体的に内部反射を受ける。従来技術について上述したように作用手段によって図1に示すように散乱フォイル3が光ガイド2に接触させられる位置では、入射光線9は、光ガイド2から減結合され、散乱フォイル3によってあらゆる方向に散乱する。ある場合では、参照符号11で示すように、光の大部分が光ガイド2の内部で後方に散乱し、受動プレート4の方向には僅かな量しか散乱してディスプレイから出射されない。この後方散乱は、ディスプレイの輝度損失を招く。
【0023】
この従来技術の欠点を少なくとも軽減するため、本発明による光電情報ディスプレイ装置には、リトロレフレクタ(再帰反射器)を設ける。リトロレフレクタは、入射光ビームを入射した方向に平行に反射させるレフレクタ(反射器)である。図2に示すように、リトロレフレクタ6は、多数の傾斜面7と多数の垂直面8とを有する。本発明による装置におけるリトロレフレクタの配置を図3に示し、この図3には、図1に示すコンポーネントの幾つかも同一参照を付して示す。図示のように、リトロレフレクタを光ガイド2のフォイル3側とは反対の側面側に配置する。図3に示すように、リトロレフレクタは、サブピクセル(フォイル3と光ガイド2が相互接触する表面)から後方に散乱した光をこのサブピクセル(フォイル3と光ガイド2が相互接触する表面)に向けて反射する。光は、光ガイドから減結合されて同一方向に向かい、あたかも後方には全く散乱しなかったようにほぼ同一位置から出射される。このようにして、ディスプレイの輝度は向上する。これは、光の大部分が減結合されて光ガイドからディスプレイを見る人の方向に出て行くためである。光は、同一サブピクセルに再帰反射するするため、視差現象は少なくなる。
【0024】
図2に示すように、入射光は、例えば、2個の傾斜面7(図2では左側に示す)に対して反射するか、もしくは2個の傾斜面7および1個の垂直面8に対して反射する。光線は、僅かにずれて入射方向に平行な方向に沿って通過し、このことは、後方に散乱された同一位置にほぼ再帰指向されることを意味する。
【0025】
図2に示すリトロレフレクタは、頂角が90゜のテント状構造を有する。好適には、反射金属材料で形成する。各ピクセルが200μmの幅を有すると仮定すると、リトロレフレクタにおける各テント状構造の幅を200μmとなる。このことは、テント状構造または反射プリズムの深さが200μmであるということを意味する。垂直面8は、入射光線を二次元的に反射する。
【0026】
入射光線の大部分は3回の反射、即ち、垂直面8に対して1回、傾斜面に対して2回の反射を受ける。このことを図2の右側に示す。
【0027】
入射光線の若干は、傾斜面で2回の反射のみを受ける。これら光線の受光可能角度は、垂直面の必要間隔を決定する。この受光可能角度は、ピクセル長さ、光ガイドの厚さ、反射プリズムの深さによって決定される。標準的なピクセル長さは600μmであり、上述したように、反射プリズムの深さは200μmである。光ガイドの共通厚さは2mmである。
【0028】
光ガイド厚さの2倍の距離即ち、2×2000μm=4000μmにわたる光は、1ピクセルの長さ600μmを越えると仮定すると、以下の関係式が適用される。
すなわち、
n×sin(θglass)=sin(θair
【0029】
n=1.5とし、また、空気中を通過する光線の光路長さは少なくとも200μmであると仮定すると、
1.5×(600/4000)=X/200
ただし、Xは必要とされる垂直間隔とする。
【0030】
上述の実施例では、X=45となる。このようにして、リトロレフレクタから後方に反射するとき光線をピクセルの外側を通過しないようにするには、図示の実施例における垂直面間の間隔は、45μmとすべきである。
【実施例2】
【0031】
リトロレフレクタの他の実施例を図4および図5に示す。図4および図5のリトロレフレクタは、入射光を図面に示すのと同一方向に逆反射する各ピクセルに対してコーナー形状を有する。このリトロレフレクタは、反射性金属材料により形成すると好適である。
【0032】
本発明の保護範囲は、図示の実施例に限定されるものではない。本発明は、各新規で特徴的な要素、およびこれら特徴的要素の組み合わせに存在する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来技術の光電ディスプレイ装置の一部における線図的側面図である。
【図2】リトロレフレクタ(再帰反射器)の一部における(説明上縮尺どおりではない)斜視図である。
【図3】本発明によるリトロレフレクタ(再帰反射器)を有する光電ディスプレイ装置の一部における線図的側面図である。
【図4】リトロレフレクタ(再帰反射器)の他の実施例の側面図である。
【図5】図4に示すリトロレフレクタ(再帰反射器)の頂面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ガイドと、
可撓性素子と、
可撓性素子における1個またはそれ以上の部分を前記光ガイドの第1側面に接触させる作用手段と
を具える光電情報ディスプレイ装置において、
前記光ガイドの前記第1側面とは反対側の第2側面に隣接させて設けた反射手段であって、光ガイドの第1側面側から入射した光をほぼ入射方向に逆反射する該反射手段を設けたことを特徴とする光電情報ディスプレイ装置。
【請求項2】
可撓性素子を、散乱フォイルによって構成した請求項1記載の光電情報ディスプレイ装置。
【請求項3】
ディスプレイ装置をピクセルに分割し、光線を前記ピクセルから反射手段の方向に散乱させ、反射手段は、入射光線を散乱されたのと同一のピクセルに逆反射するよう構成した請求項1記載の光電情報ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記反射手段は、リトロレフレクタを有するものとして構成した請求項1記載の光電情報ディスプレイ装置。
【請求項5】
リトロレフレクタは、多数の傾斜面を有するものとして構成した請求項4記載の光電情報ディスプレイ装置。
【請求項6】
傾斜面は、約90゜の頂角を有するテント状構造となるように配置した請求項5記載の光電情報ディスプレイ装置。
【請求項7】
前記リトロレフレクタは、前記傾斜面に直交する平面上に存在する少なくとも1個の垂直面を有するものとして構成した請求項5記載の光電情報ディスプレイ装置。
【請求項8】
傾斜面は、4個単位のグループに配列し、各グループがコーナー形状を有するものとした請求項5記載の光電情報ディスプレイ装置。
【請求項9】
前記反射手段を、反射性金属によって形成した請求項1記載の光電情報ディスプレイ装置。
【請求項10】
前記ディスプレイ装置をダイナミックフォイルディスプレイとした請求項1記載の光電情報ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−522357(P2006−522357A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506711(P2006−506711)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050252
【国際公開番号】WO2004/083932
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】