リニアモータ及び部品移載装置
【課題】樹脂製の磁石カバーで保護した永久磁石で発生する磁束と、電機子で発生する磁束との相互作用により可動部を駆動するリニアモータにおいて、長期間安定して可動部を駆動する。
【解決手段】永久磁石6の内部で発生する熱や電機子3で発生して可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)に与えられる輻射熱は可動ベース4の一方端部側面を介して放熱部4dに伝達される。そして、こうして放熱部4dに伝達してきた熱は可動ベース4の移動中に効率的に放熱される。その結果、磁石カバーとして機能する樹脂層10への蓄熱が抑制されて樹脂層10の劣化が効果的に防止される。
【解決手段】永久磁石6の内部で発生する熱や電機子3で発生して可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)に与えられる輻射熱は可動ベース4の一方端部側面を介して放熱部4dに伝達される。そして、こうして放熱部4dに伝達してきた熱は可動ベース4の移動中に効率的に放熱される。その結果、磁石カバーとして機能する樹脂層10への蓄熱が抑制されて樹脂層10の劣化が効果的に防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースプレートに対して可動部を直線的に移動させるリニアモータおよび該リニアモータを用いた部品移載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品などの部品をハンドリングする部品移載装置、半導体装置や液晶表示装置などを製造するための製造装置などを中心として、リニアモータの用途が年々拡大している。リニアモータは、複数のコイルが磁極鉄心に列設された1次側要素と、強磁性材料より形成されたヨークに複数の永久磁石が列設された2次側要素とを有しており、永久磁石がコイルに対向しながら離間配置されている。そして、コイルに印加する駆動電流を制御することによって磁極鉄心の磁界を移動させることによって、1次側要素(または2次側要素)が2次側要素(または1次側要素)に対して相対移動する。
【0003】
このように構成されたリニアモータでは、磁極側表面と磁石側表面の間隔、いわゆるエアギャップを可能な限り小さく設定するのが望ましいが、リニアモータの駆動中に両者が接すると、永久磁石が損傷してしまうことがある。そこで、これを防止するために、永久磁石を樹脂製のマグネットケースや磁石カバーで覆って保護する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−119039号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁石カバーを設置する主目的は、単に永久磁石の表面を保護する点のみならず、エアギャップに異物が進入した際に樹脂内に埋没されて電機子の磁極側表面を保護する点にもある。しかしながら、リニアモータの駆動中に発生する熱により次のような問題が発生することがあった。すなわち、リニアモータでは、電機子のコイルに駆動電流を印加することにより電機子側で熱が発生し、磁極側表面からの輻射熱が永久磁石側に放射される。このように永久磁石を保護する磁石カバーに対して種々の熱が与えられており、リニアモータの長期使用中に磁石カバーを構成する樹脂が劣化して硬化することがあった。その結果、エアギャップに異物が進入してきた際に、当該異物に応じて磁石カバーが柔軟に変形することができず、異物を埋没させることが困難となってしまうことがあった。また、樹脂材料の劣化によって磁石カバーの一部あるいは全部が脱落してしまい永久磁石が露出してしまうことがあった。その結果、リニアモータを長期に渡って安定して使用することが難しかった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、樹脂製の磁石カバーで保護した永久磁石で発生する磁束と、電機子で発生する磁束との相互作用により可動部を駆動するリニアモータにおいて、長期間安定して可動部を駆動することを第1の目的とする。
【0007】
また、この発明は上記リニアモータを用いた部品移載装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかるリニアモータは、上記第1の目的を達成するため、ベースプレートと、ベースプレートに対して所定の移動方向に移動自在となっている可動部と、移動方向と直交する幅方向の可動部の一方端部側面に対して移動方向に延設されたヨークと、移動方向に配列された状態でヨークに固定された複数の永久磁石と、複数の永久磁石を覆うように設けられた樹脂製の磁石カバーとを有する可動子と、幅方向に可動子から離間して対向するようにベースプレートに対して移動方向に延設された電機子とを備え、可動部は可動子から一方端部側面を介して伝達されてくる熱を一方端部側面から離間した位置で放熱する放熱部を有することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、可動部に対し、その一方端部側面に可動子が設けられるとともに、その一方端部側面から離間した位置に放熱部が設けられている。このため、電機子で発生して可動子に与えられる輻射熱は可動部の一方端部側面を介して放熱部に伝達される。この放熱部は可動部に設けられており、可動部の移動中に一方端部側面を介して放熱部に伝達してきた熱が効率的に放熱される。このため、磁石カバーへの蓄熱が抑制されて磁石カバーの劣化が効果的に防止される。また、可動部の一方端部側面に永久磁石を保持するヨークを設けているので、ヨークは変形し難く、当該ヨークに永久磁石を保持することで電機子の磁極側表面と可動子の磁石側表面の間隔、いわゆるエアギャップの変動が抑制される。したがって、長期間安定した推進力で可動部を駆動することができる。
【0010】
ここで、放熱部を次のように構成することで移動中での放熱効率を高めることができる。例えば、可動部の表面領域のうち一方端部側面と異なる表面領域に設けられた複数のリブにより放熱部を構成してもよい。この放熱部によれば、放熱面積が増大して放熱効率を高めることができる。
【0011】
また、可動部の表面領域のうち一方端部側面と異なる表面領域に貫通孔を放熱部として設けてもよい。このように貫通孔を設けた場合、可動部の移動により貫通孔の開口付近で空気が撹拌され、貫通孔付近の表面領域での放熱効率が高まる。また、このように構成された貫通孔に連通する内部空間を可動部に形成し、可動部の駆動中に放熱部から放熱された熱により暖められた空気を貫通孔および内部空間を介して可動部の外部に廃棄可能に構成してもよい。このような構成を採用したことにより、暖められた放熱部周囲の空気が廃棄されるのと入れ替わりに、比較的冷たい空気が放熱部周囲に流れ込んで放熱効率をさらに高めることができる。なお、貫通孔に複数のリブを設けて放熱効率のさらなる向上を図ってもよい。
【0012】
また、この発明にかかる部品移載装置は、部品収容部から部品搭載領域に部品を移載するものであって、上記第2の目的を達成するため、ベース部材と、ベース部材に対して上下方向に移動自在に支持され、先端部に吸着ノズルが取り付けられるとともに、後端部に接続された負圧配管を介して供給される負圧を吸着ノズルに与えるノズルシャフトと、ノズルシャフトを上下方向に駆動する上下駆動機構とを有する、ヘッドユニットと、部品収容部の上方位置と部品搭載領域の上方位置との間でヘッドユニットを移動させるヘッド駆動手段とを備え、上下駆動機構が請求項1ないし5のいずれかに記載のリニアモータであり、リニアモータは移動方向が上下方向と平行となるようにベース部材に取り付けられ、リニアモータの可動部がノズルシャフトに連結されていることを特徴としている。
【0013】
このように構成された部品移載装置では、上記リニアモータの可動部がノズルシャフトに連結されて可動部を駆動することでノズルシャフトが上下方向に駆動される。このように長期間安定して可動部を駆動することができるリニアモータを用いてノズルシャフトを駆動するように構成しているため、ノズルシャフトの先端部に取り付けられた吸着ノズルによる部品移送を安定して行うことができ、装置の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ベースプレートに対して可動部を直線的に移動させるリニアモータおよび当該リニアモータを用いた部品移載装置に関するものであり、以下においては、本発明にかかるリニアモータと、同リニアモータを用いた部品移載装置の一実施形態である表面実装機に分けて詳述する。
【0015】
<リニアモータ>
図1は本発明にかかるリニアモータの第1実施形態を示す斜視図である。また、図2は図1のリニアモータのA−A線断面図である。さらに、図3は図1のリニアモータの分解組立斜視図である。なお、これらの図面及び後で説明する図面では、各図の方向関係を明確にするために、XYZ直角座標軸が示されている。これら3つの方向X、Y、ZのうちZ方向が本発明の「移動方向」に相当し、Y方向が本発明の「幅方向」に相当し、X方向が「移動方向」および「幅方向」の両方向に直交する「厚み方向」に相当している。
【0016】
この単軸リニアモータLMは所定の移動方向Zに伸びる薄型トレイー状のベースプレート1を有している。このベースプレート1では、図3に示すように、その内底面がベース面1aとなっており、ベースプレート1の(+Y)方向側端部、(−Y)方向側端部および(+Z)方向側端部に立壁1b〜1dが厚み方向(+X)にそれぞれ立設され、これらの立壁1b〜1dとベース面1aにより上方向(+X)に開口する凹部1eが形成されている。そして、当該凹部1eにリニアモータLMの構成部品が後述するように収容される。なお、この実施形態では、アルミニウム合金等によりベース面1aと立壁1b〜1dを一体的に成形して非磁性のベースプレート1を構成しているが、ベース面1aと立壁1b〜1dを個別に形成した上、これらの構成要素を組み付けてベースプレート1を構成してもよい。このようにベースプレート1を非磁性体材料で構成しているが、ベースプレート1を樹脂材料で構成してもよいことは言うまでもない。なお、図1および図2中の符号1hはリターンスプリングを取り付けるためのスプリング係合部である。
【0017】
このように、本実施形態では、(+X)方向がベース面1aの法線方向に相当しており、この法線方向(+X)に延びる立壁1b〜1dとベース面1aに囲まれた空間、つまり凹部1eの内部空間がリニアモータの各構成要素を収納する収納空間となっている。また、本実施形態では、移動方向Zのベースプレート1の両端部のうち(−Z)側端部には立壁は形成されておらず、(−Z)側端部が開放部1jとなって凹部1eの内部空間(収納空間)と当該空間の外部とを連通している。このように開放部1jを設けることによって、本実施形態では後述する可動ベースの(−Z)側端部およびブロック部材の一部が移動方向Zへの可動ベースの駆動に応じて凹部1eの内部空間に対して出入移動されるように構成している。
【0018】
このベース面1a上には、1本のリニアガイド2がZ方向に延設されている。すなわち、ベースプレート1に対して移動方向Zに延びる直線状のレール2aが固定されるとともに該レール2aに沿って2つのスライダ2b1、2b2が移動方向Zにスライド自在に(Y方向及びX方向に規制されて)取り付けられている。また、レール2aからのスライダ2b1、2b2の抜け落ちを防止するために、2つのリニアガイドストッパ2c1、2c2がベースプレート1のベース面1aに取り付け可能となっている。
【0019】
また、これらのスライダ2b1、2b2に対して逆凹状またはH字状の断面を有する可動ベース4が取り付けられ、Z方向に移動自在となっている。より詳しくは、可動ベース4はXY断面にて逆凹形状を有する内部空間4c(図3、図4)を有しており、この内部空間の天井面がスライダ2b1、2b2の上面上に位置した状態で、可動ベース4がスライダ2b1、2b2に固定されている。また、可動ベース4の軽量化を図るために、本実施形態では、複数個の貫通孔4aが可動ベース4の天井面に形成されている。このように本実施形態では、可動ベース4およびスライダ2b1、2b2が一体的に移動方向Zに移動自在となっており、本発明の「可動部」に相当している。そして、次に説明するように可動ベース4の(−Y)側端部側面に可動子が取り付けられる一方、(+Y)側端部側面にリニアスケール7bが取り付けられている。
【0020】
各貫通孔4aは、可動ベース4の軽量化以外に、本発明の「放熱部」としても機能しており、後述するように可動ベース4を駆動している際に発生する熱を放熱する。また、各貫通孔4aは内部空間4cと連通されており、上記のように放熱部から放熱されて暖められた放熱部周囲の空気を内部空間4cを介して可動ベース4の外部に廃棄可能となっている。これらの放熱構造および作用効果については後で詳述する。
【0021】
図4は可動部材と可動子の取付構造を示す斜視図であり、また図5は可動部材と可動子の取付構造を示す図である。これらの図に示すように、可動ベース4の(−Y)側端部側面に強磁性材料より形成されたヨーク5が取り付けられ、さらに当該ヨーク5の表面には、N極側が該表面に対向する永久磁石6と、S極側が該表面に対向する永久磁石とが、交互にZ方向に沿って複数(この実施形態では14個)配列されて取り付けられており、これら永久磁石6とヨーク5によりリニアモータLMの可動子が構成されている。また、この実施形態では、永久磁石6は樹脂層10によりモールドされて表面保護されており、永久磁石6の破損などを効果的に防止することができる。このように本実施形態では、樹脂層10が本発明の「磁石カバー」に相当している。さらに、可動ベース4の(−Y)側端部側面では、可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)の(−Z)側に雌ネジ部4bが2箇所形成されている。これらの雌ネジ部4bは可動ベース4の(−Y)側端部に被駆動物を直接または連結部を介して取り付けるためのものである。例えば後で説明する表面実装機では、雌ネジ部4bを用いて可動ベース4に連結部を連結し、さらに当該連結部にノズルシャフトを被駆動物として接続している。つまり、雌ネジ部4bを用いて可動ベース4の端部に連結される、連結部を介して被駆動物を可動ベース4に取付可能となっている。なお、それについては後の「表面実装機」の項で詳述する。
【0022】
このように構成された可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)の幅方向(−Y)側に電機子3が配置され、ベースプレート1のベース面1aに固定されている。この電機子3は、コア3aと、複数の中空形状のボビン3bと、各ボビン3bの外周部に電線を巻きつけてなるコイル3cとで構成されている。このコア3aはZ方向に延びる矩形プレート部から一定間隔で(+Y)方向に設けられた歯部を有する櫛型形状の珪素鋼板を複数枚X方向に積層したものである。このように構成されたコア3aでは、複数の歯部がZ方向に一定間隔で並設されて歯部列を形成している。そして、各歯部に対し、予めコイル3cが巻き付けられたボビン3bが装着されている。こうして、複数(この実施形態では9個)のコア3aの歯部とこの歯部の周りに巻かれたコイル3cがZ方向に同一間隔で設けられて電機子3を構成しており、可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)に対向配置されている。なお、本実施形態では、図2(b)に示すようにコイル3cが巻かれたコア3aの歯部の先端面8と、その先端面8の対向面となる可動子の永久磁石6の対向面8’との共通の法線8aが移動方向Zおよび幅方向Yを含むYZ平面に対して平行となるように、電機子3は構成されている。そして、図示を省略するモータコントローラから各コイル3cに所定の順番で通電が行われると、上記のように先端面8の磁極と対向面8’の磁極の相互作用により可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)にZ方向の推力が生じて可動ベース4をZ方向に駆動する。
【0023】
また、本実施形態では、可動子に永久磁石を用い、固定子に磁性体で構成されるコア3aを用いているため、コア3aの歯部と可動子の永久磁石との間にコギング力が発生する。「コギング力の発生」とは、従来周知のようにコア3aの歯部位置により永久磁石6の磁束密度が変化し、これによって磁気エネルギーが変化するため、電機子3に作用する電磁気力の脈動が生じる現象である。そこで、コギング力を低減するために、電機子3の歯部列の両端に磁性体からなるサブティース9a、9bが設けられている。すなわち、歯部列の(+Z)側において歯列ピッチと一致あるいは異なる所望の位置にサブティース9aが、また(−Z)側において同歯列ピッチと一致あるいは異なる所望の位置にサブティース9bが、永久磁石6からの離間距離がそれぞれ所望の距離となるように、それぞれベースプレート1のベース面1aに対して着脱自在に設けられている。
【0024】
ところで、上記のように構成したリニアモータLMでは、コア3aに繋がるプレート部位がサブティース9a、9bの近傍まで延ており、電機子のコアとサブティースとが磁気的結合を生じ、磁束密度分布の偏在を生じてしまう。このため、サブティース9a、9bを所定の位置に配置しただけでは、安定したコギング力低減機能を発揮できない場合がある。特に、加速・減速時等において、あるいは作動条件(加速後の一定移動速度)そのものが変化する場合においては、コイル3cに流れる電流量が想定値より変化し、サブティース9a、9bにおける永久磁石との対向面の磁極あるいはその強さが所望のものとはならず、サブティース9a、9bによるコギング力低減の効果が必ずしも得られない場合がある。そこで、本実施形態では、サブティース9a、9bによるコギング力の低減効果を補うために、サブティース9a、9bとベースプレート1の間に磁性体プレート11が設けられている。より詳しくは、次のように構成されている。
【0025】
図6はサブティースと磁性体プレートの配置関係を示す平面図である。同図においては、サブティース9a、9bに対する磁性体プレート11の相対位置と、磁性体プレート11の平面形状を明確にするため、磁性体プレート11にハッチングを付している。ベースプレート1のベース面1aには、磁性体プレート11の平面形状とほぼ同一形状のプレート嵌合部1gが(−X)方向に形成されている(図2(a)参照)。そして、当該プレート嵌合部1gに磁性体プレート11が嵌合されて磁性体プレート11の表面がベース面1aと面一状態となっている。この磁性体プレート11の配設によって、Y−Z面上においてコア3a,サブティース9a、永久磁石6、ヨーク5、隣の永久磁石6、そして隣の歯部を通ってコア3aに到る磁束だけでなく、サブティース9a、永久磁石6、ヨーク5、磁性体プレート11を通じてサブティース9aに到るX−Y面上の磁束が発生し、コギング力の効果的な低減を図っている。
【0026】
上記のように可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)と電機子3で発生する磁束の相互作用により可動ベース4が移動方向Zに駆動されるが、可動ベース4が所定の移動範囲を超えてしまうのを防止するために、ベースプレート1のベース面1aに2つの移動規制ストッパ12a、12bが取付可能となっている。
【0027】
また、可動ベース4の位置を正確に検出するため、可動ベース4の反電機子側、つまり(+Y)側にセンサ7aとリニアスケール7bを有する検出ユニット7が設けられている。このリニアスケール7bは可動ベース4の(+Y)側端部側面に対してZ方向に延設されている。また、リニアスケール7bの(−Y)側でセンサ7aがベースプレート1に固定配置されている。このため、可動ベース4のZ方向移動に応じてリニアスケール7bのうちセンサ7aと対向する領域が変位し、その変位に基づき移動方向Zにおける可動ベース4の位置を正確に検出することが可能となっている。
【0028】
このセンサ7aはセンサ制御ユニット7cと一体的に構成されており、この構造体(センサ7a+センサ制御ユニット7c)は図3に示すように立壁1bに形成された切欠部1fを介して凹部1eに対して挿脱自在となっている。すなわち、構造体は切欠部1fを介してベースプレート1内に挿入され、図2に示すように幅方向Yにおいてセンサ7aがリニアスケール7bに対向して配置されるとともにセンサ制御ユニット7cがセンサ7aの反リニアスケール側、つまり(+Y)側に配置された状態で、ベースプレート1に固定される。特に、この実施形態では、図2(c)に示すように、リニアスケール7bの表面7eと、当該表面7eと対向するセンサ7aのセンシング面7e’との共通の法線7fが移動方向Zおよび幅方向Yを含むYZ平面に対して平行となるように、センサ7aおよびリニアスケール7bの取付位置が設定されている。なお、センサ制御ユニット7cに埃やゴミなどの異物が進入を防止するため、上記構造体を取り付けた後にセンサカバー7dがセンサ制御ユニット7cを覆うようにベースプレート1の立壁1bに取り付けられている。
【0029】
なお、この実施形態では、可動ベース4にリニアスケール7bを取り付ける一方、ベースプレート1にセンサ7aを配置しているが、センサ7aとリニアスケール7bを逆転配置してもよい。また、検出ユニット7の構成要素(センサ7a、リニアスケール7b)の一方を可動ベース4に取り付ける代わりに、スライダ2b1、2b2に取り付けるように構成してもよい。また、検出ユニット7の検出方式としては、磁気を用いた磁気方式であっても、光学方式であってもよい。
【0030】
次に、可動ベース4に設けた放熱構造および作用効果について図1〜図4を参照しつつ説明する。第1実施形態では、可動ベース4の一方端部側面に可動子(永久磁石6+ヨーク5)を取り付けているが、その一方端部側面から離間した位置に放熱部4dが設けられている。より詳しくは、可動ベース4の天井面に貫通孔4aが形成されており、可動ベース4の表面領域のうち一方端部側面から離間した貫通孔形成領域が放熱部4dとして機能する。つまり、このように貫通孔4aを設けることで、可動ベース4の移動により貫通孔4aの開口付近に存在している空気が撹拌され、貫通孔4a付近の表面領域(貫通孔形成領域)で単位時間当りに放熱される熱量が増加して放熱効率が高まる。
【0031】
また、これらの貫通孔4aは可動ベース4の内部空間4cに連通されている。このため、可動ベース4の駆動中に放熱部4dから放熱された熱により暖められた貫通孔4aの周囲(放熱部周囲)の空気が貫通孔4aおよび内部空間4cを介して可動ベース4の外部に廃棄される。特に、第1実施形態では、移動方向Zのベースプレート1の両端部のうち(−Z)側端部が開放部1jとなっており、貫通孔4aを介して内部空間4cに導かれた暖かい空気はさらに可動ベース4の移動に伴って開放部1jを介してリニアモータLMの外部に廃棄される。このような空気の流れが発生するため、放熱部4dの周囲では暖められた空気と入れ替わりに比較的冷たい空気が流れ込んで放熱効率をさらに高めることができる。
【0032】
以上のように、第1実施形態によれば、永久磁石6の内部で発生する熱や電機子3で発生して可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)に与えられる輻射熱は可動ベース4の一方端部側面を介して放熱部4dに伝達される。そして、こうして放熱部4dに伝達してきた熱は可動ベース4の移動中に効率的に放熱される。その結果、磁石カバーとして機能する樹脂層10への蓄熱が抑制されて樹脂層10の劣化を効果的に防止することができる。また、可動ベース4の一方端部側面に永久磁石6を保持するヨーク5を取り付けているので、ヨーク5は変形し難くなっている。そして、当該ヨーク5に永久磁石6が保持されているため、電機子3の磁極側表面と可動子の磁石側表面の間隔、いわゆるエアギャップの変動が抑制される。したがって、長期間安定した推進力で可動ベース4を駆動することができる。
【0033】
なお、本発明にかかるリニアモータは上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記第1実施形態では、貫通孔4aによって放熱部4dを形成しているが、当該放熱部4dに代えて、あるいは当該放熱部4dに加えて別の放熱部を設けてもよい。例えば図7(a)に示す本発明の第2実施形態にかかるリニアモータLMでは、放熱部4dに加えて、可動ベース4の天井面に複数のリブ4eを可動ベース4と一体あるいは別体で立設させてなる放熱部4fが設けられている。このように広い放熱面積を有する放熱部4fを設けることで可動ベース4の一方端部側面を介して伝達されてくる熱が効率的に放熱されて樹脂層10への蓄熱が抑制される。
【0034】
ここで、リブ4eのX方向高さについては、同図(a)に示すように、可動ベース4の天井面を超えないように設定するのが望ましい。つまり、可動ベース4の天井面に凹部4gを形成する(可動ベース4の断面形状を略H字状に仕上げる)とともに、その凹部4gの深さの範囲内でリブ4eを形成するのが望ましい。このように構成することで可動ベース4の天井面から(+X)方向にリブ4eが突出するのを防止することができ、後述するように複数のリニアモータLMをX方向に良好に積層配置することが可能となる。
【0035】
また、リブ4eの配設位置は凹部4gに限定されるものではなく、例えば同図(b)に示すように貫通孔4a内に設けてもよく、この場合、各リブ4eの(−X)側端部を可動ベース4の内部空間4cに延ばして放熱面積を広げることができる。また、貫通孔4aでの空気撹拌も活発となって放熱効率を高めることができる。さらに、各リブ4eが貫通孔4aの周囲で暖められた空気を内部空間4cに効率よく案内して可動ベース4からの廃棄を促進させることができる。
【0036】
また、上記第1実施形態では、図2(c)に示すように、センサ7aおよびリニアスケール7bの対向面7eの法線7fが移動方向Zおよび幅方向Yを含む平面に対して平行となるように、検出ユニット7が設けられているが、検出ユニット7の構成はこれに限定されるものではない。
【0037】
また、上記実施形態では、可動ベース4の(−Y)側にのみ可動子および電機子(固定子)3を配置して可動ベース4を駆動しているが、可動ベース4の(+Y)側にも可動子および電機子(固定子)3を配置してもよい。このように構成することで可動ベース4を駆動するための推進力をさらに高めることができる。
【0038】
また、上記実施形態では、ベースプレート1の(+X)側を開口した状態のままリニアモータLMを作動させるように構成しているが、例えばリニアモータLMの(+X)側にサイドプレートを配置し、凹部1eの内部空間(収納空間)および当該内部空間に挿入配置された可動部(スライダ2b1、2b2)、固定子(電機子3)および可動子(永久磁石6+ヨーク5)を法線方向(+X)側から覆うように、立壁1b〜1dの頂部に取り付けもよい。このサイドプレートの取付によってモータ外部からの異物の侵入を効果的に防止することができるとともに、当該リニアモータと当該モータ以外の構成部品とが干渉するのを防止することができる。
【0039】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態ではスライダ2b1,2b2に固定された可動ベース4の幅方向Yの端部側面にヨーク5を取り付け、さらに当該ヨーク5に永久磁石6を取り付けているが、可動ベース4を強磁性材料で形成し、当該可動ベース4の幅方向Yの端部側面に直接永久磁石6をZ方向に延設し、磁気回路を形成してもよい。この場合、可動ベース4は本発明の「可動部」に相当するのみならず、「ヨーク」としても機能する。
【0040】
また、上記実施形態のいずれも、いわゆる単軸リニアモータであるが、図8に示すように2つの単軸リニアモータLM1、LM2を組み合わせて多軸リニアモータMLMを構成してもよい。
【0041】
図8は本発明にかかる多軸リニアモータの一実施形態を示す斜視図である。この実施形態では、第1実施形態にかかる単軸リニアモータと同一構成を有するものを2個準備し、その一方のリニアモータLM1の立壁1b〜1dの(+X)側端面がもう一方のリニアモータLM2のベースプレート1の裏面に当接してリニアモータLM1、LM2がX方向に積層配置されて多軸リニアモータMLMが形成されている。また、各リニアモータLM1、LM2のベースプレート1には、3個の貫通孔1p〜1rが形成されている。そして、リニアモータLM1、LM2の貫通孔1pを貫くようにボルト13pが挿通されるとともに、ボルト13pの先端部に対してナット14pが螺合される。また、他の貫通孔1q、1rについても、貫通孔1pと同様に、ボルト13q、13rが挿通されるとともにナットが螺合される。また、各単軸リニアモーターLM1、LM2に各々2個づつ取り付けられる位置決めピン20が貫通穴21(図3参照)の(−X)側端部に嵌合して位置決めを果たす。このように3箇所でリニアモータLM1、LM2が相互に締結固定されて一体化されて2軸のリニアモータMLMが形成される。
【0042】
このように構成された2軸のリニアモータMLMでは、第1実施形態にかかる薄型のリニアモータLM1、LM2をX方向に積層配置したものであるため、2軸のX方向ピッチを狭く設定することができる。また、各リニアモータLM1、LM2では、可動子や電機子(固定子)などの全構成部品の厚み(X方向の長さ)はベースプレート1の立壁1b〜1dのそれ以下となっており、しかもリニアモータの主要構成(可動部、電機子3および可動子)はベース面1aと立壁1b〜1dで囲まれた凹部1eの内部空間(収納空間)に収納されている。このため、2軸の相対位置を高精度に保ちながらモータ組立を容易に行うことができる。
【0043】
また、上記したように構成された単軸リニアモータを複数個、ベース面1aの法線方向(+X)と平行な積層方向に積層配置することで多軸リニアモータMLMが構成されているので、2つの可動部を互いに干渉させることなく、それぞれ独立して移動方向に駆動可能となっている。また、この積層構造を採用した結果、積層方向(+X)の上流側に位置する上流側単軸リニアモータLM1の凹部1eの内部空間(収納空間)が上流側単軸リニアモータLM1の下流側で隣接する下流側単軸リニアモータLM2のベースプレート1の裏面、つまり反ベース面1kで覆われる。このため、上流側単軸リニアモータLM1への異物の侵入を効果的に防止することができる。ここで、下流側単軸リニアモータLM2の(+X)側にサイドプレート(図示省略)を配置し、凹部1eの内部空間(収納空間)および当該内部空間に挿入配置された可動部(スライダ2b1、2b2)、固定子(電機子3)および可動子(永久磁石6+ヨーク5)を法線方向(+X)側から覆うように、立壁1b〜1dの頂部に取り付けもよい。このサイドプレートSPの取付によって下流側単軸リニアモータLM2についても異物の侵入を効果的に防止することができる。
【0044】
なお、上記多軸リニアモータMLMでは、第1実施形態にかかる単軸リニアモータLMを2個組み合わせているが、第2実施形態にかかる単軸リニアモータLM(図7(a)、(b))を2個組み合わせてもよい。また、第1実施形態にかかる単軸リニアモータLM(図1)と第2実施形態にかかる単軸リニアモータLM(図7(a)、(b))を積層方向(+X)に積層配置して多軸リニアモータを構成してもよい。
【0045】
また、組み合わせる単軸リニアモータの数は「2」に限定されるものではなく、3以上の単軸リニアモータを組み合わせて多軸リニアモータMLMを構成することができる。例えば、次に説明する表面実装機では、10本の吸着ノズルを用いて部品を移載するために各吸着ノズルを上下方向に駆動する上下駆動機構を装備するが、10個の単軸リニアモータLM1〜LM10を組み合わせた多軸リニアモータMLMを当該上下駆動機構として用いることができる。
【0046】
<表面実装機>
図9は本発明にかかる部品移載装置の一実施形態である表面実装機の概略構成を示す平面図である。また、図10はヘッドユニットの正面図および側面図である。さらに、図11は図9に示す表面実装機の電気的構成を示すブロック図である。なお、これらの図面及び後で説明する図面では、上記したリニアモータの移動方向Z、幅方向Yおよび厚み方向Xに対応した三次元の座標系を採用している。
【0047】
この表面実装機MTでは、基台111上に基板搬送機構102が配置されており、基板103を所定の搬送方向Xに搬送可能となっている。より詳しくは、基板搬送機構102は、基台111上において基板103を図9の右側から左側へ搬送する一対のコンベア121、121を有している。これらのコンベア121、121は表面実装機MT全体を制御する制御ユニット104の駆動制御部141により制御される。すなわち、コンベア121,121は駆動制御部141からの駆動指令に応じて作動し、搬入されてきた基板103を所定の実装作業位置(同図に示す基板103の位置)で停止させる。そして、このように搬送されてきた基板103は図略の保持装置により固定保持される。この基板103に対して部品収納部105から供給される電子部品(図示省略)がヘッドユニット106に搭載された吸着ノズル161により移載される。また、基板103に実装すべき部品の全部について実装処理が完了すると、基板搬送機構102は駆動制御部141からの駆動指令に応じて基板103を搬出する。
【0048】
基板搬送機構102の両側には、上記した部品収納部105が配置されている。これらの部品収納部105は多数のテープフィーダ151を備えている。また、各テープフィーダ151には、電子部品を収納・保持したテープを巻回したリール(図示省略)が配置されており、電子部品を供給可能となっている。すなわち、各テープには、集積回路(IC)、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等の小片状のチップ電子部品が所定間隔おきに収納、保持されている。そして、テープフィーダ151がリールからテープをヘッドユニット106側に送り出すことによって該テープ内の電子部品が間欠的に繰り出され、その結果、ヘッドユニット106の吸着ノズル161による電子部品のピックアップが可能となる。
【0049】
また、この実施形態では、基板搬送機構102の他に、ヘッド駆動機構107が設けられている。このヘッド駆動機構107はヘッドユニット106を基台111の所定範囲にわたりX方向及びY軸方向(X軸及びZ方向と直交する方向)に移動するための機構である。そして、ヘッドユニット106の移動により吸着ノズル161で吸着された電子部品が部品収納部105の上方位置から基板103の上方位置に搬送される。すなわち、ヘッド駆動機構107は、X方向に延びる実装用ヘッド支持部材171を有しており、この実装用ヘッド支持部材171はヘッドユニット106をX軸に沿って移動可能に支持している。また、実装用ヘッド支持部材171は、両端部がY軸方向の固定レール172に支持され、この固定レール172に沿ってY軸方向に移動可能になっている。さらに、ヘッド駆動機構107は、ヘッドユニット106をX方向に駆動する駆動源たるX軸サーボモータ173と、ヘッドユニット106をY軸方向に駆動する駆動源たるY軸サーボモータ174とを有している。モータ173はボールねじ175に連結されており、駆動制御部141からの動作指令に応じてモータ173が作動することでヘッドユニット106がボールねじ175を介してX方向に駆動される。一方、モータ174はボールねじ176に連結されており、駆動制御部141からの動作指令に応じてモータ174が作動することで実装用ヘッド支持部材171がボールねじ176を介してY軸方向へ駆動される。
【0050】
ヘッド駆動機構107によりヘッドユニット106は電子部品を吸着ノズル161により吸着保持したまま基板103に搬送するとともに、所定位置に移載する(部品移載動作)。より詳しく説明すると、ヘッドユニット106は次のように構成されている。このヘッドユニット106では、鉛直方向Zに延設された実装用ヘッドが10本、X方向(基板搬送機構102による基板103の搬送方向)に等間隔で列状配置されている。実装用ヘッドのそれぞれの先端部には、吸着ノズル161が装着されている。すなわち、図10に示すように、各実装用ヘッドはZ方向に伸びるノズルシャフト163を備えている。ノズルシャフト163の軸心部には、上方(Z方向)に延びる空気通路が形成されている。そして、ノズルシャフト163の下方端部には、吸着ノズル161が接続されて空気通路と連通している。一方、上端部は開口しており、連結部164、接続部材165、空気パイプ166および真空切替バルブ機構167を介して真空吸引源および正圧源に接続される。
【0051】
また、ヘッドユニット106では、ノズルシャフト163を上下方向Zに昇降させる上下駆動機構168が設けられており、駆動制御部141のモータコントローラ142により上下駆動機構168を駆動制御してノズルシャフト163を上下方向Zに昇降させ、これによって吸着ノズル161を上下方向Zに移動し、位置決めする。この実施形態では、10個の単軸リニアモータLM1〜LM10を組み合わせた多軸リニアモータMLMを上下駆動機構168として用いている。なお、この構成の詳細については、後で詳述する。
【0052】
また、吸着ノズル161をR方向に回転させるR軸サーボモータ169が設けられており、制御ユニット104の駆動制御部141からの動作指令に基づきR軸サーボモータ169が作動して吸着ノズル161をR方向に回転させる。したがって、上記のようにヘッド駆動機構107によってヘッドユニット106が部品収納部105に移動されるとともに、上下駆動機構168およびR軸サーボモータ169を駆動することによって、部品収納部105から供給される電子部品に対して吸着ノズル161の先端部が適正な姿勢で当接する。
【0053】
図12は上下駆動機構の構成を示す図である。この実施形態において上下駆動機構168として用いられている多軸リニアモータMLMは図12に示すように10個の単軸リニアモータLM1〜LM10と2枚のサイドプレートSPa、SPbとで構成されている。これらの単軸リニアモータLM1〜LM10はX方向に積層配置されている。また、リニアモータLM1の(−X)側にサイドプレートSPaが配置される一方、リニアモータLM10の(+X)側にサイドプレートSPbが配置されており、これら2枚のサイドプレートSPa、SPbにより単軸リニアモータLM1〜LM10を挟み込んでいる。これらサイドプレートSPa、SPbおよび単軸リニアモータLM1〜LM10のいずれにも予め設定された位置に3つの締結用の貫通孔が形成されており、これらの締結用貫通孔に貫くようにボルト13p〜13qが挿通されるとともに、ナットによって締結されてサイドプレートSPa、単軸リニアモータLM1〜LM10およびサイドプレートSPbが一体化されて多軸リニアモータMLMが形成されている。この多軸リニアモータMLMは図10に示すようにヘッドユニット106のベースプレート160に取り付けられる。なお、サイドプレートSPbは、端部のリニアモータLM10の凹部1e(図3参照)を覆うカバーとしても機能する。
【0054】
また、各リニアモータLM1〜LM10の可動ベース4には、連結部164を介してノズルシャフト163が連結されている。各連結部164は図10に示すようにL字状のブロック部材164aとシャフトホルダ164bを備えている。各ブロック部材164aでは、(+Z)方向に延びる端部により、ネジで可動ベース4に螺合されている。これによって、各リニアモータLM1〜LM10でブロック部材164aが可動ベース4の下端部、つまり(−Z)側端部に連結される。また、各ブロック部材164aの(−Y)方向に延びる端部の下面にシャフトホルダ164bが取り付けられ、シャフトホルダ164bの下面側、つまり(−Z)方向側でノズルシャフト163を保持可能となっている。また、シャフトホルダ164bの(−Y)側端部側面には接続部材165が取り付けられている。この接続部材165には空気パイプ166の一方端が接続されており、当該空気パイプ166を介して真空切替バルブ機構167から送られてくる空気をシャフトホルダ164bに送り込んだり、逆にシャフトホルダ164bから空気を空気パイプ166を介して真空切替バルブ機構167に吸引可能としている。このように空気パイプ166−シャフトホルダ164b内の空気経路(図示省略)−ノズルシャフト163という経路で真空切替バルブ機構167と吸着ノズル161が接続されており、各吸着ノズル161に正圧を供給したり、逆に各吸着ノズル161に負圧を供給可能となっている。
【0055】
なお、この実施形態では、多軸リニアモータMLMは上下駆動機構168として用いられており、各可動ベース4の移動方向は上下方向Zと平行となっている。このため、各可動ベース4には垂直荷重が常時付与されている。そこで、各リニアモータLM1〜LM10では、リターンスプリング15の上端部をベースプレート1のスプリング係合部1hに係合させるとともに、その下端部をブロック部材164aの(−Y)側端部に設けられたスプリング係合部164cに係合させ、このリターンスプリング15により可動ベース4を上方側、つまり(+Z)方向側に付勢している。これによって、各リニアモータLM1〜LM10のコイル3cへの電流供給を停止している間に、可動ベース4はベースプレート1内に収納される。これにより各吸着ノズル161は上方に位置することになり、上下駆動機構168が電流停止により機能しない状態で、例えばX軸サーボモータ173やY軸サーボモータ174が作動したとしても、各吸着ノズル161、あるいは吸着されている電子部品が基板103やコンベア121等と干渉事故を起こすことがない。
【0056】
このように構成された表面実装機では、制御ユニット104のメモリ(図示省略)に予め記憶されたプログラムにしたがって制御ユニット104の主制御部143が装置各部を制御してヘッドユニット106を部品収納部105の上方位置と基板103の上方位置の間を往復移動させる。また、ヘッドユニット106は部品収納部105の上方位置に停止した状態で上下駆動機構168およびR軸サーボモータ169を駆動制御して部品収納部105から供給される電子部品に対して吸着ノズル161の先端部を適正な姿勢で当接させるとともに、負圧吸着力を吸着ノズル161に与えることで、該吸着ノズル161による部品保持を行う。そして、部品を吸着保持したままヘッドユニット106は基板103の上方位置に移動した後、所定位置に移載する。このように部品収納部105から基板103の部品搭載領域に部品を移載する、部品移載動作が繰り返して行われる。
【0057】
以上のように、この実施形態にかかる表面実装機では、図1に示す単軸リニアモータLMと同一構成を有する10個のリニアモータLM1〜LM10をX方向に積層配置してなる多軸リニアモータMLMを用いてノズルシャフト163を上下方向Zに昇降駆動するように構成しているので、次のような作用効果が得られる。すなわち、上記したように優れた放熱構造により長期間安定して可動ベース4を駆動することができるリニアモータLM1〜LM10を用いて上下駆動機構168を構成しているため、ノズルシャフト163の先端部に取り付けられた吸着ノズル161による部品移送を安定して行うことができ、装置の信頼性を高めることができる。
【0058】
なお、上記実施形態では、第1実施形態にかかる単軸リニアモータLMと同一構成のものを用いた多軸リニアモータMLMを上下駆動機構として用いているが、第2実施形態にかかる単軸リニアモータLMと同一構成のものを用いた多軸リニアモータ、第1実施形態および第2実施形態にかかる単軸リニアモータを組み合わせた多軸リニアモータなど、本発明にかかるリニアモータを複数個設けたものを用いることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、部品移載装置として機能する表面実装機MTに対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、ICハンドラー等の部品移載装置に対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明にかかるリニアモータの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のリニアモータのA−A線断面図である。
【図3】図1のリニアモータの分解組立斜視図である。
【図4】可動部材と可動子の取付構造を示す斜視図である。
【図5】可動部材と可動子の取付構造を示す図である。
【図6】サブティースと磁性体プレートの配置関係を示す平面図である。
【図7】本発明にかかるリニアモータの第2実施形態を示す部分拡大図である。
【図8】本発明にかかる多軸リニアモータの一実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明にかかる部品移載装置の一実施形態である表面実装機の概略構成を示す平面図である。
【図10】ヘッドユニットの正面図および側面図である。
【図11】図9に示す表面実装機の電気的構成を示すブロック図である。
【図12】上下駆動機構の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1…ベースプレート
2a…レール
2b1、2b2…スライダ
3…電機子
4…可動ベース(可動部)
4a…貫通孔
4c…内部空間
4d、4f…放熱部
4e…リブ
5…ヨーク
6…永久磁石
10…樹脂層(磁石カバー)
106…ヘッドユニット
107…ヘッド駆動機構
161…吸着ノズル
163…ノズルシャフト
168…上下駆動機構
LM、LM1〜LM10…単軸リニアモータ
MLM…多軸リニアモータ
MT…表面実装機(部品移載装置)
X…厚み方向(ベース面の法線方向)
Y…幅方向
Z…移動方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースプレートに対して可動部を直線的に移動させるリニアモータおよび該リニアモータを用いた部品移載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品などの部品をハンドリングする部品移載装置、半導体装置や液晶表示装置などを製造するための製造装置などを中心として、リニアモータの用途が年々拡大している。リニアモータは、複数のコイルが磁極鉄心に列設された1次側要素と、強磁性材料より形成されたヨークに複数の永久磁石が列設された2次側要素とを有しており、永久磁石がコイルに対向しながら離間配置されている。そして、コイルに印加する駆動電流を制御することによって磁極鉄心の磁界を移動させることによって、1次側要素(または2次側要素)が2次側要素(または1次側要素)に対して相対移動する。
【0003】
このように構成されたリニアモータでは、磁極側表面と磁石側表面の間隔、いわゆるエアギャップを可能な限り小さく設定するのが望ましいが、リニアモータの駆動中に両者が接すると、永久磁石が損傷してしまうことがある。そこで、これを防止するために、永久磁石を樹脂製のマグネットケースや磁石カバーで覆って保護する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−119039号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁石カバーを設置する主目的は、単に永久磁石の表面を保護する点のみならず、エアギャップに異物が進入した際に樹脂内に埋没されて電機子の磁極側表面を保護する点にもある。しかしながら、リニアモータの駆動中に発生する熱により次のような問題が発生することがあった。すなわち、リニアモータでは、電機子のコイルに駆動電流を印加することにより電機子側で熱が発生し、磁極側表面からの輻射熱が永久磁石側に放射される。このように永久磁石を保護する磁石カバーに対して種々の熱が与えられており、リニアモータの長期使用中に磁石カバーを構成する樹脂が劣化して硬化することがあった。その結果、エアギャップに異物が進入してきた際に、当該異物に応じて磁石カバーが柔軟に変形することができず、異物を埋没させることが困難となってしまうことがあった。また、樹脂材料の劣化によって磁石カバーの一部あるいは全部が脱落してしまい永久磁石が露出してしまうことがあった。その結果、リニアモータを長期に渡って安定して使用することが難しかった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、樹脂製の磁石カバーで保護した永久磁石で発生する磁束と、電機子で発生する磁束との相互作用により可動部を駆動するリニアモータにおいて、長期間安定して可動部を駆動することを第1の目的とする。
【0007】
また、この発明は上記リニアモータを用いた部品移載装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかるリニアモータは、上記第1の目的を達成するため、ベースプレートと、ベースプレートに対して所定の移動方向に移動自在となっている可動部と、移動方向と直交する幅方向の可動部の一方端部側面に対して移動方向に延設されたヨークと、移動方向に配列された状態でヨークに固定された複数の永久磁石と、複数の永久磁石を覆うように設けられた樹脂製の磁石カバーとを有する可動子と、幅方向に可動子から離間して対向するようにベースプレートに対して移動方向に延設された電機子とを備え、可動部は可動子から一方端部側面を介して伝達されてくる熱を一方端部側面から離間した位置で放熱する放熱部を有することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、可動部に対し、その一方端部側面に可動子が設けられるとともに、その一方端部側面から離間した位置に放熱部が設けられている。このため、電機子で発生して可動子に与えられる輻射熱は可動部の一方端部側面を介して放熱部に伝達される。この放熱部は可動部に設けられており、可動部の移動中に一方端部側面を介して放熱部に伝達してきた熱が効率的に放熱される。このため、磁石カバーへの蓄熱が抑制されて磁石カバーの劣化が効果的に防止される。また、可動部の一方端部側面に永久磁石を保持するヨークを設けているので、ヨークは変形し難く、当該ヨークに永久磁石を保持することで電機子の磁極側表面と可動子の磁石側表面の間隔、いわゆるエアギャップの変動が抑制される。したがって、長期間安定した推進力で可動部を駆動することができる。
【0010】
ここで、放熱部を次のように構成することで移動中での放熱効率を高めることができる。例えば、可動部の表面領域のうち一方端部側面と異なる表面領域に設けられた複数のリブにより放熱部を構成してもよい。この放熱部によれば、放熱面積が増大して放熱効率を高めることができる。
【0011】
また、可動部の表面領域のうち一方端部側面と異なる表面領域に貫通孔を放熱部として設けてもよい。このように貫通孔を設けた場合、可動部の移動により貫通孔の開口付近で空気が撹拌され、貫通孔付近の表面領域での放熱効率が高まる。また、このように構成された貫通孔に連通する内部空間を可動部に形成し、可動部の駆動中に放熱部から放熱された熱により暖められた空気を貫通孔および内部空間を介して可動部の外部に廃棄可能に構成してもよい。このような構成を採用したことにより、暖められた放熱部周囲の空気が廃棄されるのと入れ替わりに、比較的冷たい空気が放熱部周囲に流れ込んで放熱効率をさらに高めることができる。なお、貫通孔に複数のリブを設けて放熱効率のさらなる向上を図ってもよい。
【0012】
また、この発明にかかる部品移載装置は、部品収容部から部品搭載領域に部品を移載するものであって、上記第2の目的を達成するため、ベース部材と、ベース部材に対して上下方向に移動自在に支持され、先端部に吸着ノズルが取り付けられるとともに、後端部に接続された負圧配管を介して供給される負圧を吸着ノズルに与えるノズルシャフトと、ノズルシャフトを上下方向に駆動する上下駆動機構とを有する、ヘッドユニットと、部品収容部の上方位置と部品搭載領域の上方位置との間でヘッドユニットを移動させるヘッド駆動手段とを備え、上下駆動機構が請求項1ないし5のいずれかに記載のリニアモータであり、リニアモータは移動方向が上下方向と平行となるようにベース部材に取り付けられ、リニアモータの可動部がノズルシャフトに連結されていることを特徴としている。
【0013】
このように構成された部品移載装置では、上記リニアモータの可動部がノズルシャフトに連結されて可動部を駆動することでノズルシャフトが上下方向に駆動される。このように長期間安定して可動部を駆動することができるリニアモータを用いてノズルシャフトを駆動するように構成しているため、ノズルシャフトの先端部に取り付けられた吸着ノズルによる部品移送を安定して行うことができ、装置の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ベースプレートに対して可動部を直線的に移動させるリニアモータおよび当該リニアモータを用いた部品移載装置に関するものであり、以下においては、本発明にかかるリニアモータと、同リニアモータを用いた部品移載装置の一実施形態である表面実装機に分けて詳述する。
【0015】
<リニアモータ>
図1は本発明にかかるリニアモータの第1実施形態を示す斜視図である。また、図2は図1のリニアモータのA−A線断面図である。さらに、図3は図1のリニアモータの分解組立斜視図である。なお、これらの図面及び後で説明する図面では、各図の方向関係を明確にするために、XYZ直角座標軸が示されている。これら3つの方向X、Y、ZのうちZ方向が本発明の「移動方向」に相当し、Y方向が本発明の「幅方向」に相当し、X方向が「移動方向」および「幅方向」の両方向に直交する「厚み方向」に相当している。
【0016】
この単軸リニアモータLMは所定の移動方向Zに伸びる薄型トレイー状のベースプレート1を有している。このベースプレート1では、図3に示すように、その内底面がベース面1aとなっており、ベースプレート1の(+Y)方向側端部、(−Y)方向側端部および(+Z)方向側端部に立壁1b〜1dが厚み方向(+X)にそれぞれ立設され、これらの立壁1b〜1dとベース面1aにより上方向(+X)に開口する凹部1eが形成されている。そして、当該凹部1eにリニアモータLMの構成部品が後述するように収容される。なお、この実施形態では、アルミニウム合金等によりベース面1aと立壁1b〜1dを一体的に成形して非磁性のベースプレート1を構成しているが、ベース面1aと立壁1b〜1dを個別に形成した上、これらの構成要素を組み付けてベースプレート1を構成してもよい。このようにベースプレート1を非磁性体材料で構成しているが、ベースプレート1を樹脂材料で構成してもよいことは言うまでもない。なお、図1および図2中の符号1hはリターンスプリングを取り付けるためのスプリング係合部である。
【0017】
このように、本実施形態では、(+X)方向がベース面1aの法線方向に相当しており、この法線方向(+X)に延びる立壁1b〜1dとベース面1aに囲まれた空間、つまり凹部1eの内部空間がリニアモータの各構成要素を収納する収納空間となっている。また、本実施形態では、移動方向Zのベースプレート1の両端部のうち(−Z)側端部には立壁は形成されておらず、(−Z)側端部が開放部1jとなって凹部1eの内部空間(収納空間)と当該空間の外部とを連通している。このように開放部1jを設けることによって、本実施形態では後述する可動ベースの(−Z)側端部およびブロック部材の一部が移動方向Zへの可動ベースの駆動に応じて凹部1eの内部空間に対して出入移動されるように構成している。
【0018】
このベース面1a上には、1本のリニアガイド2がZ方向に延設されている。すなわち、ベースプレート1に対して移動方向Zに延びる直線状のレール2aが固定されるとともに該レール2aに沿って2つのスライダ2b1、2b2が移動方向Zにスライド自在に(Y方向及びX方向に規制されて)取り付けられている。また、レール2aからのスライダ2b1、2b2の抜け落ちを防止するために、2つのリニアガイドストッパ2c1、2c2がベースプレート1のベース面1aに取り付け可能となっている。
【0019】
また、これらのスライダ2b1、2b2に対して逆凹状またはH字状の断面を有する可動ベース4が取り付けられ、Z方向に移動自在となっている。より詳しくは、可動ベース4はXY断面にて逆凹形状を有する内部空間4c(図3、図4)を有しており、この内部空間の天井面がスライダ2b1、2b2の上面上に位置した状態で、可動ベース4がスライダ2b1、2b2に固定されている。また、可動ベース4の軽量化を図るために、本実施形態では、複数個の貫通孔4aが可動ベース4の天井面に形成されている。このように本実施形態では、可動ベース4およびスライダ2b1、2b2が一体的に移動方向Zに移動自在となっており、本発明の「可動部」に相当している。そして、次に説明するように可動ベース4の(−Y)側端部側面に可動子が取り付けられる一方、(+Y)側端部側面にリニアスケール7bが取り付けられている。
【0020】
各貫通孔4aは、可動ベース4の軽量化以外に、本発明の「放熱部」としても機能しており、後述するように可動ベース4を駆動している際に発生する熱を放熱する。また、各貫通孔4aは内部空間4cと連通されており、上記のように放熱部から放熱されて暖められた放熱部周囲の空気を内部空間4cを介して可動ベース4の外部に廃棄可能となっている。これらの放熱構造および作用効果については後で詳述する。
【0021】
図4は可動部材と可動子の取付構造を示す斜視図であり、また図5は可動部材と可動子の取付構造を示す図である。これらの図に示すように、可動ベース4の(−Y)側端部側面に強磁性材料より形成されたヨーク5が取り付けられ、さらに当該ヨーク5の表面には、N極側が該表面に対向する永久磁石6と、S極側が該表面に対向する永久磁石とが、交互にZ方向に沿って複数(この実施形態では14個)配列されて取り付けられており、これら永久磁石6とヨーク5によりリニアモータLMの可動子が構成されている。また、この実施形態では、永久磁石6は樹脂層10によりモールドされて表面保護されており、永久磁石6の破損などを効果的に防止することができる。このように本実施形態では、樹脂層10が本発明の「磁石カバー」に相当している。さらに、可動ベース4の(−Y)側端部側面では、可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)の(−Z)側に雌ネジ部4bが2箇所形成されている。これらの雌ネジ部4bは可動ベース4の(−Y)側端部に被駆動物を直接または連結部を介して取り付けるためのものである。例えば後で説明する表面実装機では、雌ネジ部4bを用いて可動ベース4に連結部を連結し、さらに当該連結部にノズルシャフトを被駆動物として接続している。つまり、雌ネジ部4bを用いて可動ベース4の端部に連結される、連結部を介して被駆動物を可動ベース4に取付可能となっている。なお、それについては後の「表面実装機」の項で詳述する。
【0022】
このように構成された可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)の幅方向(−Y)側に電機子3が配置され、ベースプレート1のベース面1aに固定されている。この電機子3は、コア3aと、複数の中空形状のボビン3bと、各ボビン3bの外周部に電線を巻きつけてなるコイル3cとで構成されている。このコア3aはZ方向に延びる矩形プレート部から一定間隔で(+Y)方向に設けられた歯部を有する櫛型形状の珪素鋼板を複数枚X方向に積層したものである。このように構成されたコア3aでは、複数の歯部がZ方向に一定間隔で並設されて歯部列を形成している。そして、各歯部に対し、予めコイル3cが巻き付けられたボビン3bが装着されている。こうして、複数(この実施形態では9個)のコア3aの歯部とこの歯部の周りに巻かれたコイル3cがZ方向に同一間隔で設けられて電機子3を構成しており、可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)に対向配置されている。なお、本実施形態では、図2(b)に示すようにコイル3cが巻かれたコア3aの歯部の先端面8と、その先端面8の対向面となる可動子の永久磁石6の対向面8’との共通の法線8aが移動方向Zおよび幅方向Yを含むYZ平面に対して平行となるように、電機子3は構成されている。そして、図示を省略するモータコントローラから各コイル3cに所定の順番で通電が行われると、上記のように先端面8の磁極と対向面8’の磁極の相互作用により可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)にZ方向の推力が生じて可動ベース4をZ方向に駆動する。
【0023】
また、本実施形態では、可動子に永久磁石を用い、固定子に磁性体で構成されるコア3aを用いているため、コア3aの歯部と可動子の永久磁石との間にコギング力が発生する。「コギング力の発生」とは、従来周知のようにコア3aの歯部位置により永久磁石6の磁束密度が変化し、これによって磁気エネルギーが変化するため、電機子3に作用する電磁気力の脈動が生じる現象である。そこで、コギング力を低減するために、電機子3の歯部列の両端に磁性体からなるサブティース9a、9bが設けられている。すなわち、歯部列の(+Z)側において歯列ピッチと一致あるいは異なる所望の位置にサブティース9aが、また(−Z)側において同歯列ピッチと一致あるいは異なる所望の位置にサブティース9bが、永久磁石6からの離間距離がそれぞれ所望の距離となるように、それぞれベースプレート1のベース面1aに対して着脱自在に設けられている。
【0024】
ところで、上記のように構成したリニアモータLMでは、コア3aに繋がるプレート部位がサブティース9a、9bの近傍まで延ており、電機子のコアとサブティースとが磁気的結合を生じ、磁束密度分布の偏在を生じてしまう。このため、サブティース9a、9bを所定の位置に配置しただけでは、安定したコギング力低減機能を発揮できない場合がある。特に、加速・減速時等において、あるいは作動条件(加速後の一定移動速度)そのものが変化する場合においては、コイル3cに流れる電流量が想定値より変化し、サブティース9a、9bにおける永久磁石との対向面の磁極あるいはその強さが所望のものとはならず、サブティース9a、9bによるコギング力低減の効果が必ずしも得られない場合がある。そこで、本実施形態では、サブティース9a、9bによるコギング力の低減効果を補うために、サブティース9a、9bとベースプレート1の間に磁性体プレート11が設けられている。より詳しくは、次のように構成されている。
【0025】
図6はサブティースと磁性体プレートの配置関係を示す平面図である。同図においては、サブティース9a、9bに対する磁性体プレート11の相対位置と、磁性体プレート11の平面形状を明確にするため、磁性体プレート11にハッチングを付している。ベースプレート1のベース面1aには、磁性体プレート11の平面形状とほぼ同一形状のプレート嵌合部1gが(−X)方向に形成されている(図2(a)参照)。そして、当該プレート嵌合部1gに磁性体プレート11が嵌合されて磁性体プレート11の表面がベース面1aと面一状態となっている。この磁性体プレート11の配設によって、Y−Z面上においてコア3a,サブティース9a、永久磁石6、ヨーク5、隣の永久磁石6、そして隣の歯部を通ってコア3aに到る磁束だけでなく、サブティース9a、永久磁石6、ヨーク5、磁性体プレート11を通じてサブティース9aに到るX−Y面上の磁束が発生し、コギング力の効果的な低減を図っている。
【0026】
上記のように可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)と電機子3で発生する磁束の相互作用により可動ベース4が移動方向Zに駆動されるが、可動ベース4が所定の移動範囲を超えてしまうのを防止するために、ベースプレート1のベース面1aに2つの移動規制ストッパ12a、12bが取付可能となっている。
【0027】
また、可動ベース4の位置を正確に検出するため、可動ベース4の反電機子側、つまり(+Y)側にセンサ7aとリニアスケール7bを有する検出ユニット7が設けられている。このリニアスケール7bは可動ベース4の(+Y)側端部側面に対してZ方向に延設されている。また、リニアスケール7bの(−Y)側でセンサ7aがベースプレート1に固定配置されている。このため、可動ベース4のZ方向移動に応じてリニアスケール7bのうちセンサ7aと対向する領域が変位し、その変位に基づき移動方向Zにおける可動ベース4の位置を正確に検出することが可能となっている。
【0028】
このセンサ7aはセンサ制御ユニット7cと一体的に構成されており、この構造体(センサ7a+センサ制御ユニット7c)は図3に示すように立壁1bに形成された切欠部1fを介して凹部1eに対して挿脱自在となっている。すなわち、構造体は切欠部1fを介してベースプレート1内に挿入され、図2に示すように幅方向Yにおいてセンサ7aがリニアスケール7bに対向して配置されるとともにセンサ制御ユニット7cがセンサ7aの反リニアスケール側、つまり(+Y)側に配置された状態で、ベースプレート1に固定される。特に、この実施形態では、図2(c)に示すように、リニアスケール7bの表面7eと、当該表面7eと対向するセンサ7aのセンシング面7e’との共通の法線7fが移動方向Zおよび幅方向Yを含むYZ平面に対して平行となるように、センサ7aおよびリニアスケール7bの取付位置が設定されている。なお、センサ制御ユニット7cに埃やゴミなどの異物が進入を防止するため、上記構造体を取り付けた後にセンサカバー7dがセンサ制御ユニット7cを覆うようにベースプレート1の立壁1bに取り付けられている。
【0029】
なお、この実施形態では、可動ベース4にリニアスケール7bを取り付ける一方、ベースプレート1にセンサ7aを配置しているが、センサ7aとリニアスケール7bを逆転配置してもよい。また、検出ユニット7の構成要素(センサ7a、リニアスケール7b)の一方を可動ベース4に取り付ける代わりに、スライダ2b1、2b2に取り付けるように構成してもよい。また、検出ユニット7の検出方式としては、磁気を用いた磁気方式であっても、光学方式であってもよい。
【0030】
次に、可動ベース4に設けた放熱構造および作用効果について図1〜図4を参照しつつ説明する。第1実施形態では、可動ベース4の一方端部側面に可動子(永久磁石6+ヨーク5)を取り付けているが、その一方端部側面から離間した位置に放熱部4dが設けられている。より詳しくは、可動ベース4の天井面に貫通孔4aが形成されており、可動ベース4の表面領域のうち一方端部側面から離間した貫通孔形成領域が放熱部4dとして機能する。つまり、このように貫通孔4aを設けることで、可動ベース4の移動により貫通孔4aの開口付近に存在している空気が撹拌され、貫通孔4a付近の表面領域(貫通孔形成領域)で単位時間当りに放熱される熱量が増加して放熱効率が高まる。
【0031】
また、これらの貫通孔4aは可動ベース4の内部空間4cに連通されている。このため、可動ベース4の駆動中に放熱部4dから放熱された熱により暖められた貫通孔4aの周囲(放熱部周囲)の空気が貫通孔4aおよび内部空間4cを介して可動ベース4の外部に廃棄される。特に、第1実施形態では、移動方向Zのベースプレート1の両端部のうち(−Z)側端部が開放部1jとなっており、貫通孔4aを介して内部空間4cに導かれた暖かい空気はさらに可動ベース4の移動に伴って開放部1jを介してリニアモータLMの外部に廃棄される。このような空気の流れが発生するため、放熱部4dの周囲では暖められた空気と入れ替わりに比較的冷たい空気が流れ込んで放熱効率をさらに高めることができる。
【0032】
以上のように、第1実施形態によれば、永久磁石6の内部で発生する熱や電機子3で発生して可動子(樹脂層10+永久磁石6+ヨーク5)に与えられる輻射熱は可動ベース4の一方端部側面を介して放熱部4dに伝達される。そして、こうして放熱部4dに伝達してきた熱は可動ベース4の移動中に効率的に放熱される。その結果、磁石カバーとして機能する樹脂層10への蓄熱が抑制されて樹脂層10の劣化を効果的に防止することができる。また、可動ベース4の一方端部側面に永久磁石6を保持するヨーク5を取り付けているので、ヨーク5は変形し難くなっている。そして、当該ヨーク5に永久磁石6が保持されているため、電機子3の磁極側表面と可動子の磁石側表面の間隔、いわゆるエアギャップの変動が抑制される。したがって、長期間安定した推進力で可動ベース4を駆動することができる。
【0033】
なお、本発明にかかるリニアモータは上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記第1実施形態では、貫通孔4aによって放熱部4dを形成しているが、当該放熱部4dに代えて、あるいは当該放熱部4dに加えて別の放熱部を設けてもよい。例えば図7(a)に示す本発明の第2実施形態にかかるリニアモータLMでは、放熱部4dに加えて、可動ベース4の天井面に複数のリブ4eを可動ベース4と一体あるいは別体で立設させてなる放熱部4fが設けられている。このように広い放熱面積を有する放熱部4fを設けることで可動ベース4の一方端部側面を介して伝達されてくる熱が効率的に放熱されて樹脂層10への蓄熱が抑制される。
【0034】
ここで、リブ4eのX方向高さについては、同図(a)に示すように、可動ベース4の天井面を超えないように設定するのが望ましい。つまり、可動ベース4の天井面に凹部4gを形成する(可動ベース4の断面形状を略H字状に仕上げる)とともに、その凹部4gの深さの範囲内でリブ4eを形成するのが望ましい。このように構成することで可動ベース4の天井面から(+X)方向にリブ4eが突出するのを防止することができ、後述するように複数のリニアモータLMをX方向に良好に積層配置することが可能となる。
【0035】
また、リブ4eの配設位置は凹部4gに限定されるものではなく、例えば同図(b)に示すように貫通孔4a内に設けてもよく、この場合、各リブ4eの(−X)側端部を可動ベース4の内部空間4cに延ばして放熱面積を広げることができる。また、貫通孔4aでの空気撹拌も活発となって放熱効率を高めることができる。さらに、各リブ4eが貫通孔4aの周囲で暖められた空気を内部空間4cに効率よく案内して可動ベース4からの廃棄を促進させることができる。
【0036】
また、上記第1実施形態では、図2(c)に示すように、センサ7aおよびリニアスケール7bの対向面7eの法線7fが移動方向Zおよび幅方向Yを含む平面に対して平行となるように、検出ユニット7が設けられているが、検出ユニット7の構成はこれに限定されるものではない。
【0037】
また、上記実施形態では、可動ベース4の(−Y)側にのみ可動子および電機子(固定子)3を配置して可動ベース4を駆動しているが、可動ベース4の(+Y)側にも可動子および電機子(固定子)3を配置してもよい。このように構成することで可動ベース4を駆動するための推進力をさらに高めることができる。
【0038】
また、上記実施形態では、ベースプレート1の(+X)側を開口した状態のままリニアモータLMを作動させるように構成しているが、例えばリニアモータLMの(+X)側にサイドプレートを配置し、凹部1eの内部空間(収納空間)および当該内部空間に挿入配置された可動部(スライダ2b1、2b2)、固定子(電機子3)および可動子(永久磁石6+ヨーク5)を法線方向(+X)側から覆うように、立壁1b〜1dの頂部に取り付けもよい。このサイドプレートの取付によってモータ外部からの異物の侵入を効果的に防止することができるとともに、当該リニアモータと当該モータ以外の構成部品とが干渉するのを防止することができる。
【0039】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態ではスライダ2b1,2b2に固定された可動ベース4の幅方向Yの端部側面にヨーク5を取り付け、さらに当該ヨーク5に永久磁石6を取り付けているが、可動ベース4を強磁性材料で形成し、当該可動ベース4の幅方向Yの端部側面に直接永久磁石6をZ方向に延設し、磁気回路を形成してもよい。この場合、可動ベース4は本発明の「可動部」に相当するのみならず、「ヨーク」としても機能する。
【0040】
また、上記実施形態のいずれも、いわゆる単軸リニアモータであるが、図8に示すように2つの単軸リニアモータLM1、LM2を組み合わせて多軸リニアモータMLMを構成してもよい。
【0041】
図8は本発明にかかる多軸リニアモータの一実施形態を示す斜視図である。この実施形態では、第1実施形態にかかる単軸リニアモータと同一構成を有するものを2個準備し、その一方のリニアモータLM1の立壁1b〜1dの(+X)側端面がもう一方のリニアモータLM2のベースプレート1の裏面に当接してリニアモータLM1、LM2がX方向に積層配置されて多軸リニアモータMLMが形成されている。また、各リニアモータLM1、LM2のベースプレート1には、3個の貫通孔1p〜1rが形成されている。そして、リニアモータLM1、LM2の貫通孔1pを貫くようにボルト13pが挿通されるとともに、ボルト13pの先端部に対してナット14pが螺合される。また、他の貫通孔1q、1rについても、貫通孔1pと同様に、ボルト13q、13rが挿通されるとともにナットが螺合される。また、各単軸リニアモーターLM1、LM2に各々2個づつ取り付けられる位置決めピン20が貫通穴21(図3参照)の(−X)側端部に嵌合して位置決めを果たす。このように3箇所でリニアモータLM1、LM2が相互に締結固定されて一体化されて2軸のリニアモータMLMが形成される。
【0042】
このように構成された2軸のリニアモータMLMでは、第1実施形態にかかる薄型のリニアモータLM1、LM2をX方向に積層配置したものであるため、2軸のX方向ピッチを狭く設定することができる。また、各リニアモータLM1、LM2では、可動子や電機子(固定子)などの全構成部品の厚み(X方向の長さ)はベースプレート1の立壁1b〜1dのそれ以下となっており、しかもリニアモータの主要構成(可動部、電機子3および可動子)はベース面1aと立壁1b〜1dで囲まれた凹部1eの内部空間(収納空間)に収納されている。このため、2軸の相対位置を高精度に保ちながらモータ組立を容易に行うことができる。
【0043】
また、上記したように構成された単軸リニアモータを複数個、ベース面1aの法線方向(+X)と平行な積層方向に積層配置することで多軸リニアモータMLMが構成されているので、2つの可動部を互いに干渉させることなく、それぞれ独立して移動方向に駆動可能となっている。また、この積層構造を採用した結果、積層方向(+X)の上流側に位置する上流側単軸リニアモータLM1の凹部1eの内部空間(収納空間)が上流側単軸リニアモータLM1の下流側で隣接する下流側単軸リニアモータLM2のベースプレート1の裏面、つまり反ベース面1kで覆われる。このため、上流側単軸リニアモータLM1への異物の侵入を効果的に防止することができる。ここで、下流側単軸リニアモータLM2の(+X)側にサイドプレート(図示省略)を配置し、凹部1eの内部空間(収納空間)および当該内部空間に挿入配置された可動部(スライダ2b1、2b2)、固定子(電機子3)および可動子(永久磁石6+ヨーク5)を法線方向(+X)側から覆うように、立壁1b〜1dの頂部に取り付けもよい。このサイドプレートSPの取付によって下流側単軸リニアモータLM2についても異物の侵入を効果的に防止することができる。
【0044】
なお、上記多軸リニアモータMLMでは、第1実施形態にかかる単軸リニアモータLMを2個組み合わせているが、第2実施形態にかかる単軸リニアモータLM(図7(a)、(b))を2個組み合わせてもよい。また、第1実施形態にかかる単軸リニアモータLM(図1)と第2実施形態にかかる単軸リニアモータLM(図7(a)、(b))を積層方向(+X)に積層配置して多軸リニアモータを構成してもよい。
【0045】
また、組み合わせる単軸リニアモータの数は「2」に限定されるものではなく、3以上の単軸リニアモータを組み合わせて多軸リニアモータMLMを構成することができる。例えば、次に説明する表面実装機では、10本の吸着ノズルを用いて部品を移載するために各吸着ノズルを上下方向に駆動する上下駆動機構を装備するが、10個の単軸リニアモータLM1〜LM10を組み合わせた多軸リニアモータMLMを当該上下駆動機構として用いることができる。
【0046】
<表面実装機>
図9は本発明にかかる部品移載装置の一実施形態である表面実装機の概略構成を示す平面図である。また、図10はヘッドユニットの正面図および側面図である。さらに、図11は図9に示す表面実装機の電気的構成を示すブロック図である。なお、これらの図面及び後で説明する図面では、上記したリニアモータの移動方向Z、幅方向Yおよび厚み方向Xに対応した三次元の座標系を採用している。
【0047】
この表面実装機MTでは、基台111上に基板搬送機構102が配置されており、基板103を所定の搬送方向Xに搬送可能となっている。より詳しくは、基板搬送機構102は、基台111上において基板103を図9の右側から左側へ搬送する一対のコンベア121、121を有している。これらのコンベア121、121は表面実装機MT全体を制御する制御ユニット104の駆動制御部141により制御される。すなわち、コンベア121,121は駆動制御部141からの駆動指令に応じて作動し、搬入されてきた基板103を所定の実装作業位置(同図に示す基板103の位置)で停止させる。そして、このように搬送されてきた基板103は図略の保持装置により固定保持される。この基板103に対して部品収納部105から供給される電子部品(図示省略)がヘッドユニット106に搭載された吸着ノズル161により移載される。また、基板103に実装すべき部品の全部について実装処理が完了すると、基板搬送機構102は駆動制御部141からの駆動指令に応じて基板103を搬出する。
【0048】
基板搬送機構102の両側には、上記した部品収納部105が配置されている。これらの部品収納部105は多数のテープフィーダ151を備えている。また、各テープフィーダ151には、電子部品を収納・保持したテープを巻回したリール(図示省略)が配置されており、電子部品を供給可能となっている。すなわち、各テープには、集積回路(IC)、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等の小片状のチップ電子部品が所定間隔おきに収納、保持されている。そして、テープフィーダ151がリールからテープをヘッドユニット106側に送り出すことによって該テープ内の電子部品が間欠的に繰り出され、その結果、ヘッドユニット106の吸着ノズル161による電子部品のピックアップが可能となる。
【0049】
また、この実施形態では、基板搬送機構102の他に、ヘッド駆動機構107が設けられている。このヘッド駆動機構107はヘッドユニット106を基台111の所定範囲にわたりX方向及びY軸方向(X軸及びZ方向と直交する方向)に移動するための機構である。そして、ヘッドユニット106の移動により吸着ノズル161で吸着された電子部品が部品収納部105の上方位置から基板103の上方位置に搬送される。すなわち、ヘッド駆動機構107は、X方向に延びる実装用ヘッド支持部材171を有しており、この実装用ヘッド支持部材171はヘッドユニット106をX軸に沿って移動可能に支持している。また、実装用ヘッド支持部材171は、両端部がY軸方向の固定レール172に支持され、この固定レール172に沿ってY軸方向に移動可能になっている。さらに、ヘッド駆動機構107は、ヘッドユニット106をX方向に駆動する駆動源たるX軸サーボモータ173と、ヘッドユニット106をY軸方向に駆動する駆動源たるY軸サーボモータ174とを有している。モータ173はボールねじ175に連結されており、駆動制御部141からの動作指令に応じてモータ173が作動することでヘッドユニット106がボールねじ175を介してX方向に駆動される。一方、モータ174はボールねじ176に連結されており、駆動制御部141からの動作指令に応じてモータ174が作動することで実装用ヘッド支持部材171がボールねじ176を介してY軸方向へ駆動される。
【0050】
ヘッド駆動機構107によりヘッドユニット106は電子部品を吸着ノズル161により吸着保持したまま基板103に搬送するとともに、所定位置に移載する(部品移載動作)。より詳しく説明すると、ヘッドユニット106は次のように構成されている。このヘッドユニット106では、鉛直方向Zに延設された実装用ヘッドが10本、X方向(基板搬送機構102による基板103の搬送方向)に等間隔で列状配置されている。実装用ヘッドのそれぞれの先端部には、吸着ノズル161が装着されている。すなわち、図10に示すように、各実装用ヘッドはZ方向に伸びるノズルシャフト163を備えている。ノズルシャフト163の軸心部には、上方(Z方向)に延びる空気通路が形成されている。そして、ノズルシャフト163の下方端部には、吸着ノズル161が接続されて空気通路と連通している。一方、上端部は開口しており、連結部164、接続部材165、空気パイプ166および真空切替バルブ機構167を介して真空吸引源および正圧源に接続される。
【0051】
また、ヘッドユニット106では、ノズルシャフト163を上下方向Zに昇降させる上下駆動機構168が設けられており、駆動制御部141のモータコントローラ142により上下駆動機構168を駆動制御してノズルシャフト163を上下方向Zに昇降させ、これによって吸着ノズル161を上下方向Zに移動し、位置決めする。この実施形態では、10個の単軸リニアモータLM1〜LM10を組み合わせた多軸リニアモータMLMを上下駆動機構168として用いている。なお、この構成の詳細については、後で詳述する。
【0052】
また、吸着ノズル161をR方向に回転させるR軸サーボモータ169が設けられており、制御ユニット104の駆動制御部141からの動作指令に基づきR軸サーボモータ169が作動して吸着ノズル161をR方向に回転させる。したがって、上記のようにヘッド駆動機構107によってヘッドユニット106が部品収納部105に移動されるとともに、上下駆動機構168およびR軸サーボモータ169を駆動することによって、部品収納部105から供給される電子部品に対して吸着ノズル161の先端部が適正な姿勢で当接する。
【0053】
図12は上下駆動機構の構成を示す図である。この実施形態において上下駆動機構168として用いられている多軸リニアモータMLMは図12に示すように10個の単軸リニアモータLM1〜LM10と2枚のサイドプレートSPa、SPbとで構成されている。これらの単軸リニアモータLM1〜LM10はX方向に積層配置されている。また、リニアモータLM1の(−X)側にサイドプレートSPaが配置される一方、リニアモータLM10の(+X)側にサイドプレートSPbが配置されており、これら2枚のサイドプレートSPa、SPbにより単軸リニアモータLM1〜LM10を挟み込んでいる。これらサイドプレートSPa、SPbおよび単軸リニアモータLM1〜LM10のいずれにも予め設定された位置に3つの締結用の貫通孔が形成されており、これらの締結用貫通孔に貫くようにボルト13p〜13qが挿通されるとともに、ナットによって締結されてサイドプレートSPa、単軸リニアモータLM1〜LM10およびサイドプレートSPbが一体化されて多軸リニアモータMLMが形成されている。この多軸リニアモータMLMは図10に示すようにヘッドユニット106のベースプレート160に取り付けられる。なお、サイドプレートSPbは、端部のリニアモータLM10の凹部1e(図3参照)を覆うカバーとしても機能する。
【0054】
また、各リニアモータLM1〜LM10の可動ベース4には、連結部164を介してノズルシャフト163が連結されている。各連結部164は図10に示すようにL字状のブロック部材164aとシャフトホルダ164bを備えている。各ブロック部材164aでは、(+Z)方向に延びる端部により、ネジで可動ベース4に螺合されている。これによって、各リニアモータLM1〜LM10でブロック部材164aが可動ベース4の下端部、つまり(−Z)側端部に連結される。また、各ブロック部材164aの(−Y)方向に延びる端部の下面にシャフトホルダ164bが取り付けられ、シャフトホルダ164bの下面側、つまり(−Z)方向側でノズルシャフト163を保持可能となっている。また、シャフトホルダ164bの(−Y)側端部側面には接続部材165が取り付けられている。この接続部材165には空気パイプ166の一方端が接続されており、当該空気パイプ166を介して真空切替バルブ機構167から送られてくる空気をシャフトホルダ164bに送り込んだり、逆にシャフトホルダ164bから空気を空気パイプ166を介して真空切替バルブ機構167に吸引可能としている。このように空気パイプ166−シャフトホルダ164b内の空気経路(図示省略)−ノズルシャフト163という経路で真空切替バルブ機構167と吸着ノズル161が接続されており、各吸着ノズル161に正圧を供給したり、逆に各吸着ノズル161に負圧を供給可能となっている。
【0055】
なお、この実施形態では、多軸リニアモータMLMは上下駆動機構168として用いられており、各可動ベース4の移動方向は上下方向Zと平行となっている。このため、各可動ベース4には垂直荷重が常時付与されている。そこで、各リニアモータLM1〜LM10では、リターンスプリング15の上端部をベースプレート1のスプリング係合部1hに係合させるとともに、その下端部をブロック部材164aの(−Y)側端部に設けられたスプリング係合部164cに係合させ、このリターンスプリング15により可動ベース4を上方側、つまり(+Z)方向側に付勢している。これによって、各リニアモータLM1〜LM10のコイル3cへの電流供給を停止している間に、可動ベース4はベースプレート1内に収納される。これにより各吸着ノズル161は上方に位置することになり、上下駆動機構168が電流停止により機能しない状態で、例えばX軸サーボモータ173やY軸サーボモータ174が作動したとしても、各吸着ノズル161、あるいは吸着されている電子部品が基板103やコンベア121等と干渉事故を起こすことがない。
【0056】
このように構成された表面実装機では、制御ユニット104のメモリ(図示省略)に予め記憶されたプログラムにしたがって制御ユニット104の主制御部143が装置各部を制御してヘッドユニット106を部品収納部105の上方位置と基板103の上方位置の間を往復移動させる。また、ヘッドユニット106は部品収納部105の上方位置に停止した状態で上下駆動機構168およびR軸サーボモータ169を駆動制御して部品収納部105から供給される電子部品に対して吸着ノズル161の先端部を適正な姿勢で当接させるとともに、負圧吸着力を吸着ノズル161に与えることで、該吸着ノズル161による部品保持を行う。そして、部品を吸着保持したままヘッドユニット106は基板103の上方位置に移動した後、所定位置に移載する。このように部品収納部105から基板103の部品搭載領域に部品を移載する、部品移載動作が繰り返して行われる。
【0057】
以上のように、この実施形態にかかる表面実装機では、図1に示す単軸リニアモータLMと同一構成を有する10個のリニアモータLM1〜LM10をX方向に積層配置してなる多軸リニアモータMLMを用いてノズルシャフト163を上下方向Zに昇降駆動するように構成しているので、次のような作用効果が得られる。すなわち、上記したように優れた放熱構造により長期間安定して可動ベース4を駆動することができるリニアモータLM1〜LM10を用いて上下駆動機構168を構成しているため、ノズルシャフト163の先端部に取り付けられた吸着ノズル161による部品移送を安定して行うことができ、装置の信頼性を高めることができる。
【0058】
なお、上記実施形態では、第1実施形態にかかる単軸リニアモータLMと同一構成のものを用いた多軸リニアモータMLMを上下駆動機構として用いているが、第2実施形態にかかる単軸リニアモータLMと同一構成のものを用いた多軸リニアモータ、第1実施形態および第2実施形態にかかる単軸リニアモータを組み合わせた多軸リニアモータなど、本発明にかかるリニアモータを複数個設けたものを用いることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、部品移載装置として機能する表面実装機MTに対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、ICハンドラー等の部品移載装置に対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明にかかるリニアモータの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のリニアモータのA−A線断面図である。
【図3】図1のリニアモータの分解組立斜視図である。
【図4】可動部材と可動子の取付構造を示す斜視図である。
【図5】可動部材と可動子の取付構造を示す図である。
【図6】サブティースと磁性体プレートの配置関係を示す平面図である。
【図7】本発明にかかるリニアモータの第2実施形態を示す部分拡大図である。
【図8】本発明にかかる多軸リニアモータの一実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明にかかる部品移載装置の一実施形態である表面実装機の概略構成を示す平面図である。
【図10】ヘッドユニットの正面図および側面図である。
【図11】図9に示す表面実装機の電気的構成を示すブロック図である。
【図12】上下駆動機構の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1…ベースプレート
2a…レール
2b1、2b2…スライダ
3…電機子
4…可動ベース(可動部)
4a…貫通孔
4c…内部空間
4d、4f…放熱部
4e…リブ
5…ヨーク
6…永久磁石
10…樹脂層(磁石カバー)
106…ヘッドユニット
107…ヘッド駆動機構
161…吸着ノズル
163…ノズルシャフト
168…上下駆動機構
LM、LM1〜LM10…単軸リニアモータ
MLM…多軸リニアモータ
MT…表面実装機(部品移載装置)
X…厚み方向(ベース面の法線方向)
Y…幅方向
Z…移動方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに対して所定の移動方向に移動自在となっている可動部と、
前記移動方向と直交する幅方向の前記可動部の一方端部側面に対して前記移動方向に延設されたヨークと、前記移動方向に配列された状態で前記ヨークに固定された複数の永久磁石と、前記複数の永久磁石を覆うように設けられた樹脂製の磁石カバーとを有する可動子と、
前記幅方向に前記可動子から離間して対向するように前記ベースプレートに対して前記移動方向に延設された電機子とを備え、
前記可動部は前記可動子から前記一方端部側面を介して伝達されてくる熱を前記一方端部側面から離間した位置で放熱する放熱部を有する
ことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記放熱部は前記可動部の表面領域のうち前記一方端部側面と異なる表面領域に設けられた複数のリブで構成されている請求項1記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記放熱部は前記可動部の表面領域のうち前記一方端部側面と異なる表面領域に設けられた貫通孔で構成されている請求項1記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記可動部は前記貫通孔に連通された内部空間を有しており、
前記移動方向への前記可動部の駆動中に、前記放熱部から放熱された熱により暖められた空気を前記貫通孔および前記内部空間を介して前記可動部の外部に廃棄可能となっている請求項3記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記放熱部は前記貫通孔に設けられた複数のリブを有している請求項3または4記載のリニアモータ。
【請求項6】
部品収容部から部品搭載領域に部品を移載する部品移載装置において、
ベース部材と、前記ベース部材に対して上下方向に移動自在に支持され、先端部に吸着ノズルが取り付けられるとともに、後端部に接続された負圧配管を介して供給される負圧を前記吸着ノズルに与えるノズルシャフトと、前記ノズルシャフトを前記上下方向に駆動する上下駆動機構とを有する、ヘッドユニットと、
前記部品収容部の上方位置と前記部品搭載領域の上方位置との間で前記ヘッドユニットを移動させるヘッド駆動手段とを備え、
前記上下駆動機構が請求項1ないし5のいずれかに記載のリニアモータであり、
前記リニアモータは前記移動方向が前記上下方向と平行となるように前記ベース部材に取り付けられ、
前記リニアモータの前記可動部が前記ノズルシャフトに連結されている
ことを特徴とする部品移載装置。
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに対して所定の移動方向に移動自在となっている可動部と、
前記移動方向と直交する幅方向の前記可動部の一方端部側面に対して前記移動方向に延設されたヨークと、前記移動方向に配列された状態で前記ヨークに固定された複数の永久磁石と、前記複数の永久磁石を覆うように設けられた樹脂製の磁石カバーとを有する可動子と、
前記幅方向に前記可動子から離間して対向するように前記ベースプレートに対して前記移動方向に延設された電機子とを備え、
前記可動部は前記可動子から前記一方端部側面を介して伝達されてくる熱を前記一方端部側面から離間した位置で放熱する放熱部を有する
ことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記放熱部は前記可動部の表面領域のうち前記一方端部側面と異なる表面領域に設けられた複数のリブで構成されている請求項1記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記放熱部は前記可動部の表面領域のうち前記一方端部側面と異なる表面領域に設けられた貫通孔で構成されている請求項1記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記可動部は前記貫通孔に連通された内部空間を有しており、
前記移動方向への前記可動部の駆動中に、前記放熱部から放熱された熱により暖められた空気を前記貫通孔および前記内部空間を介して前記可動部の外部に廃棄可能となっている請求項3記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記放熱部は前記貫通孔に設けられた複数のリブを有している請求項3または4記載のリニアモータ。
【請求項6】
部品収容部から部品搭載領域に部品を移載する部品移載装置において、
ベース部材と、前記ベース部材に対して上下方向に移動自在に支持され、先端部に吸着ノズルが取り付けられるとともに、後端部に接続された負圧配管を介して供給される負圧を前記吸着ノズルに与えるノズルシャフトと、前記ノズルシャフトを前記上下方向に駆動する上下駆動機構とを有する、ヘッドユニットと、
前記部品収容部の上方位置と前記部品搭載領域の上方位置との間で前記ヘッドユニットを移動させるヘッド駆動手段とを備え、
前記上下駆動機構が請求項1ないし5のいずれかに記載のリニアモータであり、
前記リニアモータは前記移動方向が前記上下方向と平行となるように前記ベース部材に取り付けられ、
前記リニアモータの前記可動部が前記ノズルシャフトに連結されている
ことを特徴とする部品移載装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−171665(P2009−171665A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4085(P2008−4085)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
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