説明

リニアモータ

【課題】 リニアモータにおける可動部材の移動面を清掃することができるリニアモータを得る。
【解決手段】 機械の固定部材1に永久磁石を取り付けた界磁ヨーク2が固定されている。直線移動ガイド5でガイドされて移動するテーブル4の界磁ヨーク2に対向する面には、コイルで構成された電機子3が取り付けられている。この界磁ヨーク2と電機子3でリニアモータを形成している。テーブル4には圧縮空気送出手段6が取り付けられている。テーブル4の前後には、圧縮空気送出手段6の圧縮空気噴射口6cが配設されている。テーブルの移動と共に移動面上に圧縮空気を移動面上に噴射させて異物10を除去する。リニアモータの移動部材(テーブル4)の移動面が清掃されて異物が除去されるので、移動がスムーズで、リニアモータを傷つけることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータに関し、特に、工作機械等において、リニアモータの相対移動面に異物が侵入しやすい環境での使用に適したリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータは、永久磁石を取り付けた界磁ヨークと該界磁ヨークに対向するコイルで構成される電機子を備え、界磁ヨーク又は電機子の一方を固定部材に固定し、他方を可動部材に取り付け、可動部材を直線移動させるものである。
このリニアモータは、可動部材が直線移動するものであるから、工作機械のテーブルやその他の機械において、X,Y,Z軸方向に直線移動させる軸を駆動するのに適している。回転モータで直線移動軸を駆動する場合、回転運動を直線運動に変換する機構を必要とするが、リニアモータであれば、直線移動軸を直接駆動でき、運動変換手段を必要としないことから効率的である。
このようにリニアモータはすでに周知であるが、本発明に関係して、可動部材の移動面を清掃するような先行技術文献は、発見できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
リニアモータは、界磁ヨーク又は電機子の一方が設けられた可動部材に対して、該可動部材の移動面に対して界磁ヨーク又は電機子の他方を配置するものであり、該移動面は、可動部材と対面していないときは露出状態にある。そのため、工作機械のテーブル等の可動部材を駆動する駆動源としてリニアモータを使用した場合、該工作機械が行う被加工物の加工によって生じる切り屑や切削油等が、移動面に落下し散在する場合が生じる。移動面に切り屑等が散在すると、テーブル等の可動部材が移動するときの障害となり、円滑な移動部材の移動制御ができなくなる恐れがある。又、界磁ヨーク又は電機子を傷つける恐れもある。
【0004】
又、工作機械以外の機械、装置等の駆動源としてリニアモータを使用した場合においても、塵芥、異物が可動部材の移動面に落下し散在する恐れのある機械においては、上述した工作機械と同様な問題がある。
そこで、本発明の目的は、可動部材の移動面を清掃することができるリニアモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、永久磁石を取り付けた界磁ヨークと、前記界磁ヨークに対向する電機子のどちらか一方を固定部材に固定し、他方を可動部材に取り付けて構成されたリニアモータであって、前記可動部材に、該可動部材が移動する移動面上に圧縮空気を噴射させて異物を除去する圧縮空気送出手段を設けたことを特徴とするものである。この圧縮空気送出手段は、前記可動部材の移動に連動して圧縮空気の送出をオン/オフさせる手段を備える。また、前記圧縮空気の送出をオン/オフさせる指令は、前記リニアモータを駆動制御する制御装置から行われるものとした。更に、前記圧縮空気の送出をオン/オフさせる指令は、前記制御装置に入力される加工プログラムに記載されるものとした。
【発明の効果】
【0006】
リニアモータの可動部材が移動する移動面に対して圧縮空気を吹き付けて、該移動面を掃除するから、可動部材はスムーズに支障なく移動することができる。又、リニアモータの界磁ヨークや電機子を移動面における異物で傷つけられることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明の一実施形態のリニアモータの斜視図である。工作機械のベース等の固定部材1にリニアモータを構成する永久磁石が取り付けられた磁石板からなる界磁ヨーク2が固定されている。この磁石板からなる界磁ヨーク2の両側には、可動部材のテーブル4をガイドする直線移動ガイド5のガイドレール5aが配設されている。テーブル4の下面には、界磁ヨーク2に対向するようにコイルで構成される電機子3が配設されている。又、テーブル4には直線移動ガイド5を構成するガイドレールと係合して、テーブル4の直線移動をガイドするガイド部材5bが設けられている。
【0008】
上述したリニアモータの構成は、従来から公知のリニアモータの構成と差異はない。本発明においては、更に、可動部材であるテーブル4の移動面である磁石板(界磁ヨーク2)面を清掃する清掃手段を備えている点において、従来のリニアモータと相違するものである。
【0009】
本実施形態では、この清掃手段として、圧縮空気を界磁ヨーク(磁石板)2面に吹き付ける圧縮空気送出手段6を設け、この圧縮空気の吹き付けにより、該界磁ヨーク(磁石板)2に散在する切り屑や切削液等の異物を除去するようにしたものである。
【0010】
図1において、符号6aは、圧縮空気の通路を形成する管であり、該管6aはテーブル4に取り付けられている。6bは、圧縮空気の通路の分岐部で、供給された圧縮空気を左右に分岐するものである。又、管6aの先端には、ノズル等の圧縮空気噴射口6cが設けられている。この実施形態では、テーブル4の移動方向に対してテーブル4の前と後に圧縮空気噴射口6cが設けられ、該圧縮空気噴射口6cより界磁ヨーク(磁石板)2上に圧縮空気を吹き付け、該界磁ヨーク(磁石板)2上に散在する切り屑や切削液等の異物10を除去する。しかも、テーブル4の移動と共に圧縮空気送出手段6も移動し、界磁ヨーク(磁石板)2上を清掃することになるから、該リニアモータを使用する機械を停止させることなく、テーブル移動面上の異物除去が可能となるものである。なお、圧縮空気送出手段6から圧縮空気を噴射させる方向も機械の配置や環境等によって、最適な向きに噴射するように調整すればよい。
【0011】
ただし、圧縮空気送出手段6より常時圧縮空気を噴射させることは、圧縮空気の消費量が増え、ランニングコストを押し上げることになることから、必要なときに圧縮空気の送出をする。そのために、図2に示すように、管6aで形成された圧縮空気の通路の途中に電磁バルブ7を設けて、このリニアモータを制御する制御装置8によって、この電磁バルブ7を制御して圧縮空気送出のオン/オフを制御するようにする。
【0012】
そのために、電磁バルブ7を開/閉させる制御コードを設けて、加工プログラムやユーザが作成するマクロプログラムに挿入して、該制御コードに基づいて制御装置8が電磁バルブ7を制御する。例えば、加工プログラム中に挿入する場合は、下記に示す加工プログラム例のように、軸移動(リニアモータの駆動)がある前に電磁バルブ7を開とし(制御コードM300が電磁バルブ7の開指令)、テーブルの移動と共に圧縮空気を磁石板(界磁ヨーク2)上に吹き付け、該界磁ヨーク(磁石板)2上の切り屑や切削油等の異物10を除去する。そして、軸移動が終われば(リニアモータの駆動が終了すると)、電磁バルブ7を閉として圧縮空気の供給を停止する(制御コードM301が電磁バルブ7の閉指令)。
【0013】
加工プログラムの例
・・・・・・・・・
M300 (圧縮空気送出)
X600.Y400.Z−100. (軸移動)
X0.Y0.Z0. (軸移動)
X600.Y400.Z−100. (軸移動)
X0.Y0.Z0. (軸移動)
M301 (圧縮空気停止)
又、リニアモータの全ストロークを清掃する清掃プログラムを作成し、制御装置8に格納しておき、加工開始前や加工プログラム実行中に手動でこの清掃プログラムを実行する指令を入力するようにしてもよい。又、決められた動作と制御コードを含むマクロプログラムを読み出すことによって、この制御コードにより、清掃プログラムを実行させるようにしてもよい。
【0014】
なお、上述した実施形態では、界磁ヨーク2の磁石板を固定部材1に取り付け、コイルで形成される電機子3を移動するテーブル4に取り付けた例を示したが、逆に、電機子3を固定部材1に取り付け、テーブル4に界磁ヨーク(磁石)2を取り付けたリニアモータに対しても本発明は適用できるものである。
【0015】
又、上述した実施形態では、工作機械のテーブル等を駆動する送り軸の駆動源としてリニアモータを使用した例を説明したが、工作機械以外にも、リニアモータの可動部材の移動面に異物が落下するような環境の基で使用される機械や装置に適用したリニアモータに対しても本発明は適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態のリニアモータの斜視図である。
【図2】同実施形態における圧縮空気の供給制御の説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 固定部材
2 界磁ヨーク
3 電機子
4 テーブル
5 直線移動ガイド
5a ガイドレール
5b ガイド部材
6 圧縮空気送出手段
6a 管
6b 分岐部
6c 圧縮空気噴射口
7 電磁バルブ
8 制御装置
10 異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を取り付けた界磁ヨークと、前記界磁ヨークに対向する電機子のどちらか一方を固定部材に固定し、他方を可動部材に取り付けて構成されたリニアモータであって、
前記可動部材に、該可動部材が移動する移動面上に圧縮空気を噴射させて異物を除去する圧縮空気送出手段を設けたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記圧縮空気送出手段は、前記可動部材の移動に連動して圧縮空気の送出をオン/オフさせる手段を有することを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記圧縮空気の送出をオン/オフさせる指令は、前記リニアモータを駆動制御する制御装置から行われることを特徴とする請求項2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記圧縮空気の送出をオン/オフさせる指令は、前記制御装置に入力される加工プログラムに記載されることを特徴とする請求項3に記載のリニアモータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−6086(P2006−6086A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182743(P2004−182743)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】