説明

リニア駆動装置

【課題】リニア駆動装置の小型化を実現しながら、磁束密度の飽和を抑制して磁気エネルギーを効率良く使用することができるリニア駆動装置に関する技術を提供すること。
【解決手段】リニア駆動装置100の固定子コア11は、コイル13及び14がそれぞれ装着された固定子ティース部材114と、これら固定子ティース部材114を連結するヨーク部材113とを有する。ヨーク部材113は、凸部113bを有する。凸部113bがそれら固定子ティース部材114の間に配置されるように、凸部113bにより、所望の磁路断面積を確保することができる。その結果、リニア駆動装置の小型化を実現しながら、磁束密度の飽和を抑制して磁気エネルギーを効率良く使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁気的な作用によりリニア駆動を行うリニア駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のリニアモータでは、正8角形の有底の固定子収納ケース内に、1次側となる固定子が収納されている。固定子が、外周ヨーク、内周ヨーク、底ヨーク及び前ヨークに分割されており、これらがケース内に収容されている。そして固定子の外周ヨークと内周ヨークとの間に固定子コイルが配置され、この固定子コイルと内周ヨークとの間に、永久磁石及び可動軸を保持する可動保持体が配置されている(例えば、特許文献1の明細書段落[0014]、図1参照)。
【0003】
このように固定子が、外周ヨーク、内周ヨーク、底ヨーク及び前ヨークに分割されていることにより、様々な形状のヨークをケース内に効率良く収容することができる。
【0004】
一方、特許文献2に記載のリニアアクチュエータは、円周方向に複数に分割され永久磁石がそれぞれ取り付けられたT字状の固定子構成部材と、それらの固定子構成部材が配列されることにより形成される中央部の空間内に配置された円筒状の可動子とを備える(例えば、特許文献2の段落[0019]、図1参照)。
【0005】
特許文献1及び2の装置、また、その他一般的なリニア駆動を行う装置では、このように可動子の軸を中心としてその可動子のコアの周囲全体に固定子のコアが配置されている。かかる構造では、可動子の周囲全体にコイル(特許文献2では多数のコイル)が配置されるため、可動子の推力を高めることはできる。しかし、その1次側機構(ここではコイルを有する側の機構)に使用されるコアの体積が大きくなり、装置が大型化するという問題がある。したがって、それほど高い推力が必要とされない環境では、装置全体を小型化するために、例えばその1次側機構のコアの体積を減らすことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−236653号公報
【特許文献2】特開2001−28871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、単純にコアの体積を減らしたのでは、そのコアを通る磁束密度が高くなりすぎ、すぐに飽和してしまうおそれがある。つまりこれでは、磁気エネルギーを効率的に利用できない。したがって、小型のリニア駆動装置を設計するにあたり、発生する磁束に見合った磁路断面積の設計が必要であり、磁気エネルギーを無駄なく有効に利用することが望まれる。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、リニア駆動装置の小型化を実現しながら、磁束密度の飽和を抑制して磁気エネルギーを効率良く使用することができるリニア駆動装置に関する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るリニア駆動装置は、
可動子コアと、前記可動子コアに設けられた永久磁石とを有する可動子と、
前記可動子コアに所定のギャップを保って対向する面を有し、複数のコイルがそれぞれ装着可能であり、前記可動子の移動方向に所定の間隔をもって配列された複数のティース部材と、
凸部を有し、前記複数のティース部材同士を連結するヨーク部材とを具備し、
前記複数のティース部材のうち、前記可動子コアに対向する前記面とは反対側の面と、前記ヨーク部材の面とが対面し、かつ、前記凸部が前記複数のティース部材の間に配置されていることを特徴とする。
【0010】
このリニア駆動装置が、駆動力を得るための装置として用いられる場合、リニア駆動装置は次のように動作する。各コイルに電流が印加されることにより、固定子を構成するティース部材及びヨーク部材に磁束が発生する。可動子コアに設けられた永久磁石の磁極が発生する磁束と、上記固定子に発生する磁束との相互作用により、可動子が移動する。
【0011】
このリニア駆動装置が発電機として用いられる場合、外部から可動子が駆動され、可動子が移動することにより、固定子を構成するティース部材及びヨーク部材に磁束が発生し、これによりコイルに起電力が発生する。
【0012】
本発明では、複数のティース部材のうち、可動子コアに対向する面とは反対側に設けられた面に、凸部を有するヨーク部材が接続されることにより、それらティース部材同士が連結される。このように凸部がヨーク部材に設けられることにより、ヨーク部材における磁路断面積を大きくすることができる。例えば設計者は、小型のリニア駆動装置を設計するにあたり、固定子のコアの、可動子コアが配置される側とは反対側、つまり、このリニア駆動装置の外周側の体積を減らし、その減らした分の体積のコアである凸部が、配列されたティース部材の間に嵌り込むように設計する。これにより、所望の磁路断面積を確保しながら、その固定子のサイズを小さくすることができる。すなわち、リニア駆動装置の小型化を実現しながら、磁束密度の飽和を抑制して磁気エネルギーを効率良く使用することができる。
【0013】
前記ヨーク部材は、前記複数のティース部材に接続される面を有し、
前記凸部は、前記ヨーク部材の前記面から突起するように設けられ、前記面上で前記複数のティース部材に接し、前記面から離れた位置では前記複数のティース部材との間に隙間が設けられるように形成されてもよい。
【0014】
本発明では、凸部が複数のティース部材にヨーク部材の面上で接する。また、凸部は面から離れた位置では、凸部とそれらのティース部材との間には隙間が形成されているため、ティース部材から発生する磁束が直接その凸部に磁束が通らず、凸部における渦電流の発生を抑えることができる。
【0015】
前記リニア駆動装置は、開口と、前記開口を形成するために前記開口の周囲に設けられた開口端面と、前記開口端面から突出した位置決め突起とを有するハウジングをさらに具備してもよい。そして、前記複数のティース部材は、当接突起部を有し、前記当接突起部が前記ハウジングの前記開口端面及び前記位置決め突起に当接して、前記開口を介して前記ハウジング内に挿入されることで、前記複数のコイルが前記ハウジング内で配列されるように、前記複数のティース部材が前記ハウジングに支持されてもよい。
【0016】
このように、ハウジングに位置決め突起が設けられ、ティース部材に設けられた当接突起部がその位置決め突起に当接して、前記ハウジング内に挿入されることで、ティース部材がハウジングに位置決めされて支持される。つまり、リニア駆動装置の組み立て時において、作業者は、位置決め突起及び当接突起部があることにより、簡単な構成で容易に複数のティース部材をハウジングに対して位置決めすることができる。
【0017】
本発明の別の形態に係るリニア駆動装置は、
前記固定子は、
固定子コアと、
前記固定子コアに設けられた永久磁石とを有し、
前記可動子は、
前記固定子コアに所定のギャップを保って対向する面を有し、複数のコイルがそれぞれ装着可能であり、前記可動子の移動方向に所定の間隔をもって配列された複数のティース部材と、
凸部を有し、前記複数のティース部材同士を連結するヨーク部材とを具備し、
前記複数のティース部材のうち、前記固定子コアに対向する面とは反対側の面と、前記ヨーク部材の面とが対面し、かつ、前記凸部が前記複数のティース部材の間に配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明では、複数のティース部材の、固定子コアに対向する対向面とは反対側に設けられた面に、凸部を有するヨーク部材が接続されることにより、それらティース部材同士が連結される。このように凸部がヨーク部材に設けられることにより、ヨーク部材における磁路断面積を大きくすることができる。例えば設計者は、小型のリニア駆動装置を設計するにあたり、可動子コアの、固定子コアが配置される側とは反対側、つまり、このリニア駆動装置の外周側の体積を減らし、その減らした分の体積のコアである凸部が、配列されたティース部材の間に嵌り込むように設計する。これにより、所望の磁路断面積を確保しながら、その固定子のサイズを小さくすることができる。すなわち、リニア駆動装置の小型化を実現しながら、磁束密度の飽和を抑制して磁気エネルギーを効率良く使用することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上、本発明によれば、リニア駆動装置の小型化を実現しながら、磁束密度の飽和を抑制して磁気エネルギーを効率良く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るリニア駆動装置を示す正面図である。
【図2】図2は、図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図3は、このリニア駆動装置の平面図(図2においてY軸方向で見た図)である。
【図4】図4は、リニア駆動装置の一部の分解斜視図である。
【図5】図5は、固定子コアを実線で示す側面図である。
【図6】図6A及びBは、リニア駆動装置の動作を順に示す図である。
【図7】図7は、図6Aで示した固定子コアを示しており、磁路を説明するための図である。
【図8】図8は、ヨーク部材の他の実施形態を説明するための図である。
【図9】図9は、ヨーク部材のさらに別の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
[リニア駆動装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るリニア駆動装置を示す正面図である。図2は、図1におけるA−A線断面図である。図3は、このリニア駆動装置の平面図(図2においてY軸方向で見た図)である。
【0023】
リニア駆動装置100は、固定子1及び概略円柱状の可動子3を備える。固定子1及び可動子3は、互いに位置決めされてハウジング2に支持されている。図1は、可動子3の移動方向(Z軸方向)で見た図である。固定子1は、固定子コア11及び12を有する。
【0024】
図4は、リニア駆動装置100の一部の分解斜視図である。ここでは、固定子コア11及び12のうち、固定子コア11を示し、これと実質的に同様の構成を備えた固定子コア12の図示を省略している。固定子コア11は、複数の固定子ティース部材114と、これら固定子ティース部材114を連結するヨーク部材113とを有する。
【0025】
図1及び2に示すように、固定子ティース部材114は、例えばZ軸方向に沿って2つ配列され、また、Y軸方向に沿って2つ配列されており、合計4つ設けられている。
【0026】
図5は、固定子コア11及び12を実線で示す側面図である。図5において、固定子ティース部材114及びヨーク部材113以外の部材を鎖線で図示している。図1、2、4及び5に示すように、固定子ティース部材114は、可動子3の後述する可動子コア31に所定のギャップを保って対向する対向面114aと、対向面114aとはY軸方向で反対側に設けられた、ヨーク部材113と磁気的に接続される接続面114bとを有する。固定子ティース部材114の外側表面の一部が接続面114bとなり、この接続面114bを、図4では斜線(ハッチング)で示している。本実施形態では、ヨーク部材113及び固定子ティース部材114は強磁性体でなり、これらが機械的(物理的)に接続されることにより磁気的に接続されることになる。
上記所定のギャップは、例えば0.1〜1mmである。しかし、この範囲は、可動子及び固定子のサイズや、望まれる推力特性等に応じて、適宜設計の変更が可能である。
ヨーク部材113と、固定子ティース部材の接続面114bとは、直接接続されていなくても、それらの間に他の磁性体等を挟む等、磁気的に接続されていればよい。
【0027】
対向面114aは、湾曲した形状を有している。典型的には、対向面114aの形状は、可動子コア31の側面に応じた形状であって、円柱の側面の一部の形状に形成されている。
【0028】
また、固定子ティース部材114は、X軸に沿って両方向にそれぞれ突出するように設けられた、ハウジング2に当接する当接突起部112を有する。これらの当接突起部112の上面は、上述の接続面114bと実質的に同一面とされている。
【0029】
固定子ティース部材114には、図示しないコイルボビン等の電気絶縁体を介してコイル13(14〜16)が装着されている。具体的には、コイル13(14〜16)(が巻回されたその電気絶縁体)は、上記当接突起部112に当接するようにして、固定子ティース部材114に装着されている。
【0030】
ヨーク部材113は、平板部113aと、この平板部113aから可動子コア31側に向かって突出するように形成された凸部113bを有する。図2及び4に示すように、凸部113bは、Z軸方向に配列された固定子ティース部材114の間の領域に配置される。本実施形態では、凸部113bの、Z軸方向で対向する前面及び後面が、各固定子ティース部材114に磁気的(機械的)に接触しており、凸部113bにおいても磁路が形成可能とされている。
【0031】
固定子ティース部材114及びヨーク部材113は、それぞれ強磁性体でなる。これらの部材は、例えば磁性材板が積層されて構成されていてもよい。また、固定子ティース部材114及びヨーク部材113は、溶接や接着剤等により接続される。
【0032】
ハウジング2は、例えばステンレス、アルミニウム等の非磁性体でなる。図4に示すように、ハウジング2は、Y軸方向で対向する開口23を有し、筒状であって直方体形状のモノコック型の形状を備えている。ハウジング2は、開口23を形成するために開口23の周囲に設けられた開口端面25と、この開口端面25からY軸方向へ突出した位置決め突起26とを有する。位置決め突起26は、固定子コア11及び12を位置決めするための突起であり、壁部262とこの壁部262のほぼ中央位置に設けられた突出部261とを有する。位置決め突起26は、X軸方向で対向するように2つ設けられている。上記のように、開口23はY軸方向で2つ対向して設けられているので、これらの開口23ごとに、位置決め突起26が設けられている。
【0033】
図3及び図4に示すように、固定子ティース部材114のX軸方向に突出した当接突起部112が、ハウジング2の開口端面25に当接している。それら当接突起部112が開口端面25に当接した状態で、図1及び2に示すように、固定子ティース部材114が開口23を介してその対向面114a側からハウジング2内に挿入されることで、各コイル13(14〜16)がハウジング2内で配列される。また、図3及び4に示すように、それら当接突起部112が開口端面25に当接した状態で、ハウジング2の位置決め突起26に位置決めされる。より詳細には、位置決め突起26の壁部262及び突出部261により形成された直角の部分に、当接突起部112の直角の部分が当接して位置決めされる。
【0034】
このように、ハウジング2に予め位置決め突起26が固定子ティース部材114の位置決めのために形成されているので、簡易な構成で固定子コア11(及び12)をハウジング2に位置決めすることができる。
【0035】
図1及び4に示すように、固定子ティース部材114の当接突起部112には、Z軸方向に形成されたスクリュー穴114dが形成され、また、位置決め突起26の突出部261にもスクリュー穴261aが形成されている。固定子ティース部材114が上述のように位置決めされた状態で、ボルトB(図3参照)がそのスクリュー穴114d及び261aに螺着されて固定子ティース部材114及び位置決め突起26を締結することで、固定子コア11がハウジング2に支持されて固定される。このように固定子コア11及び12がハウジング2に支持されることにより、隣接する固定子ティース部材114同士がZ軸方向で所定の間隔を保って配置され、Y軸方向では、固定子コア11及び12が可動子3を挟んで対向するように配置される。
【0036】
このようにボルトBの長手方向が、可動子3の移動方向に沿うように設けられているので、可動子3の移動方向におけるハウジング2及び固定子1の剛性を高めることができる。したがって、所期の可動子3の動きを確保でき、推力特性を向上させることができる。
【0037】
ハウジング2の、Z軸方向である可動子3の移動方向で対向する一対の側壁21には、後述する可動子3のシャフト33が出没する円形の穴21aがそれぞれ形成されている。また、この穴21aは、このリニア駆動装置100の組み立て時に、可動子3の可動子コア31が挿入される穴である。
【0038】
図1〜3に示すように、可動子3は、可動子コア31と、図2に示すように可動子コア31に埋め込まれた永久磁石321、322、323、341、342及び343とを有する。上記のように、可動子コア31は、固定子ティース部材114の対向面114aに対向して配置される。可動子コア31は、渦電流の抑制のため、可動子3の移動方向(Z軸方向)に積層された複数の磁性材板(例えば積層鋼板)で構成されていてもよい。
【0039】
図2に示すように、可動子3の中央には、Z軸方向に沿って貫通した、シャフト33の挿通穴31cが形成されている。シャフト33は、図示しない軸受やバネ等の支持部材によってシャフト33がZ軸方向に沿って移動可能となるように支持される。
【0040】
なお、リニア駆動装置100がリニアクチュエータとして用いられる場合、シャフト33を支持する支持部材としてバネ部材が用いられる。典型的にはバネ部材としては、スパイラル状の板バネが用いられる。このような板バネは、シャフト33とハウジング2とを弾性的に連結する。支持部材の他の例として、8の字形状の板バネ、リニアブッシュ、ボールスプライン、エアベアリング、リニアガイド等が挙げられる。
【0041】
可動子3は図示しない治具によりハウジング2に対して位置決めされた後、支持部材によりシャフト33が支持される。可動子3がハウジング2に対して位置決めされ、支持された後、その治具がハウジング2から取り外される。その後、固定子コア11及び12が上述のように位置決めされ、ハウジング2に固定される。
【0042】
あるいは、固定子コア11及び12がハウジング2に固定された後、可動子3がハウジング2の穴21aから挿入されて位置決めされ支持されてもよい。
【0043】
可動子コア31は、図1に示すように、永久磁石321等を埋め込むためのZ軸方向に長く形成された埋設穴31aが、シャフト33の周りで円周状に複数設けられている。埋設穴31aは、固定子コア11に近い側で4つ設けられ、固定子コア12に近い側で同じく4つ設けられている。図2に示すように、1つの埋設穴31a内に上記3つの永久磁石321、322及び323(以下、永久磁石セット32という。)が配設されている。
【0044】
図2に示すように、永久磁石セット32は、それらの永久磁石の表面側(固定子コア11あるいは12側)に現れる磁極がZ軸方向で交互に異なるように着磁されている。すなわち、各永久磁石321等は、図1で見てZ軸方向を中心として可動子コア31の径方向に着磁されている。
【0045】
なお、図2において、固定子コア11側の永久磁石セット32の磁極(N、S、N)は、固定子コア11側に現れる磁極を示している。また同様に、固定子コア12側の永久磁石セット32の磁極(S、N、S)は、固定子コア12側に現れる磁極を示している。各永久磁石321等のZ軸方向の長さ(及びZ軸方向に沿って並ぶ永久磁石の個数等)や配置は、固定子ティース部材114等のZ軸方向の長さ、個数、配置、あるいは、可動子3のストローク長等によって適宜設定される。
【0046】
可動子コア31の外周面の一部には平面部319が設けられている。平面部34は、固定子ティース部材114と対面しない位置に配置されている。このような平面部34が可動子コア31に形成されることにより、可動子コア31の外形がZ軸方向で見て円形の場合に比べ、平面部34においてその円形が切り欠かれた状態となっているので、可動子3の軽量化を実現することができる。また、この平面部34が設けられることにより、後述するように、リニア駆動装置100の組み立て時において、可動子3の位置決めを高精度に行うことができるようになる。
【0047】
[リニア駆動装置の動作]
次に、以上のように構成されたリニア駆動装置100の動作を説明する。図6A及びBは、その動作を説明するための図である。なお、図6A及びBで表された、可動子3の永久磁石セット32の極性は、固定子コア11及び12側に向く磁極を示している。
【0048】
図6Aに示すように、固定子コア11側の2つのコイル13及び14に互いに逆向きの電流が同じタイミングで加えられ、かつ、固定子コア12側の2つのコイル15及び16に互いに逆向きの電流が同じタイミングで加えられる。Y軸方向で同じ位置に配置されたコイル13(14)及び15(16)にも互いに逆向きの電流が加えられる。そうすると、固定子ティース部材114に磁束が発生し、図示するように磁極が生成される。各固定子ティース部材114に発生した磁束と、可動子3に設けられた永久磁石321等により生成される磁束との相互作用により、可動子3は図6A中、右へ移動する。
【0049】
図6Bに示すように、図6Aで示した各電流の向きとは逆向きの電流がコイル13〜16にそれぞれ同じタイミングで加えられる。そうすると、図6Aで示した磁極とは反対の磁極が、固定子ティース部材114にそれぞれ生成される。これにより、可動子3は図6B中、左へ移動する。
【0050】
図7は図6Aで示した固定子コア11を示しており、磁路を説明するための図である。この図に示すように、磁束は、ヨーク部材113の凸部113bにも形成されている。すなわちこの凸部113bも磁路の一部となっており、このような凸部113bが設けられない場合に比べ、ヨーク部材113における磁路断面積を大きくすることができる。
【0051】
ここで、このリニア駆動装置100は、例えば図示しない円筒形の外部ハウジングに収容される。図5中、リニア駆動装置100の外接円Cは、この外部ハウジングの内径を示している。リニア駆動装置100のサイズが小さいほど、この外接円Cの半径Rが小さくなり、リニア駆動装置100が適用される装置を小型化することができる。
【0052】
本発明者は、この外接円Cの半径Rを小さくして小型のリニア駆動装置を設計するにあたり、固定子コア11(及び12)の外周側の体積を減らし、その減らした分の体積のコアである、ヨーク部材113の凸部113bを、配列された固定子ティース部材114の間に形成された領域に配置することを考えた。これにより、リニア駆動装置100の小型化を実現するにあたり、単に固定子コアの体積を減らすのではなく、所望の磁路断面積を確保しながら、その固定子コア11(及び12)のサイズを小さくすることができる。すなわち、リニア駆動装置100の小型化を実現しながら、磁束密度の飽和を抑制して磁気エネルギーを効率良く使用することができる。
【0053】
[ヨーク部材の他の実施形態]
図8は、ヨーク部材の他の実施形態を説明するための図である。
【0054】
図8に示すように、ヨーク部材53の凸部53bは、平板部53aの裏面531(ヨーク部材53の、固定子ティース部材114の接続面114bに接続される面)から突起するように設けられ、その裏面531上でそれら固定子ティース部材114に接し、その裏面531から離れた位置ではそれら固定子ティース部材114との間に隙間uが設けられるように形成されている。典型的には、凸部53bは、X軸方向で見て台形に形成されている。
【0055】
このような凸部53bが形成されることにより、磁路断面積が広がるので、磁束の飽和を抑制することができる。
【0056】
また、隙間uが設けられることにより、固定子ティース部材114から発生する磁束が直接凸部53bに磁束が通らず、凸部53bにおける渦電流の発生を抑えることができる。固定子ティース部材114がソリッドに形成されているか、または、Z軸方向に積層された磁性体板で形成されている場合に、その渦電流の発生を抑えることができ、非常に有効である。
【0057】
[その他の実施形態]
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が実現される。
【0058】
上記実施形態では、コイルを有する1次側機構が固定子とされ、2次側機構が可動子とされた。しかし、コイルを有する1次側機構が可動子とされ、2次側機構が固定子とされてもよい。その場合、2次側機構である固定子がハウジングに固定され、1次側機構である可動子が、そのハウジングに対して軸受やバネ等により移動可能に設けられる。
【0059】
凸部の形状は、各図のX軸方向で見て、長方形や台形に限られず、円の一部、楕円の一部等の形状であってもよい。
【0060】
ヨーク部材113を固定子ティース部材114に装着する工程は、典型的には、固定子ティース部材114をハウジング2に固定する工程の後である。しかし、固定子ティース部材114をハウジング2に固定する工程の前に、ヨーク部材113が固定子ティース部材114に固定されてもよい。
【0061】
上記実施形態では、ハウジング2は直方体筒形状を有していた。しかし、ハウジングは、固定子コアを位置決めして支持するための、開口、開口端面及び位置決め突起を有していれば、円筒形状、楕円筒形状、または四角形以外の角筒形状であってもよい。
【0062】
固定子ティース部材114、永久磁石321等、永久磁石セット32の数は適宜変更可能である。永久磁石、固定子コア、可動子コアの各形状等も適宜変更可能である。可動子3の移動方向における磁極数あるいは永久磁石の数は、上記実施形態では3つであったが、1つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0063】
例えば図9Aに示すように、ヨーク213の外周部のできるだけ多くの部分が、上記の外接円C(図5も参照)に接するように、当該外周部が階段状に形成されていてもよい。
あるいは、図9Bに示すように、図9Aに示したヨーク213に比べ、X軸方向でのヨーク313の幅を大きくし、同様にヨーク313を階段状に形成してもよい。
あるいは、ヨークは、図9A及びBで示したそれぞれのヨーク213及び313の組み合わせの形状も実現可能である。
さらに、図9Cに示すように、ヨーク413は、その外接円Cの内側の隙間を埋めるような、例えば円柱側面の一部の形状を有していてもよい。
あるいは、これら図9Cに示したヨーク413と、図9Aに示したヨーク213(またはヨーク313)との組み合わせの形状も実現可能である。
これらの形状を有するヨーク213、313、413が設けられることにより、Z軸方向でのヨークの面積、つまり磁路断面積を最大限確保しつつ、磁気飽和を緩和することができる。
本実施形態では、ヨークと固定子ティース部材114とが別個の部材であることにより、このような磁気飽和を抑制した様々なヨークの形状を実現することができる。
【0064】
固定子ティース部材の形状は、可動子コア及びヨーク部材のそれぞれに対向あるいは対面する面を有している限り、どのような形状であってもよい。例えば、それらの面は、平面または曲面に形成されていてもよい。それらが曲面の場合、例えばR形状、楕円弧形状であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
u…隙間
1…固定子
2…ハウジング
3…可動子
11、12…固定子コア
13〜16…コイル
23…開口
25…開口端面
26…突起
31…可動子コア
31c…挿通穴
31a…埋設穴
53、113…ヨーク部材
53b、113b…凸部
53a、113a…平板部
100…リニア駆動装置
112…当接突起部
114…固定子ティース部材(ティース部材に相当)
114a…対向面
114b…接続面
114d…スクリュー穴
321〜323…永久磁石
531…裏面(ヨーク部材の面に相当)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動子コアと、前記可動子コアに設けられた永久磁石とを有する可動子と、
前記可動子コアに所定のギャップを保って対向する面を有し、複数のコイルがそれぞれ装着可能であり、前記可動子の移動方向に所定の間隔をもって配列された複数のティース部材と、
凸部を有し、前記複数のティース部材同士を連結するヨーク部材とを具備し、
前記複数のティース部材のうち、前記可動子コアに対向する前記面とは反対側の面と、前記ヨーク部材の面とが対面し、かつ、前記凸部が前記複数のティース部材の間に配置されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリニア駆動装置であって、
前記ヨーク部材は、前記複数のティース部材と接続される面を有し、
前記凸部は、前記ヨーク部材の前記面から突起するように設けられ、前記面上で前記複数のティース部材に接し、前記面から離れた位置では前記複数のティース部材との間に隙間が設けられるように形成されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリニア駆動装置であって、
開口と、前記開口を形成するために前記開口の周囲に設けられた開口端面と、前記開口端面から突出した位置決め突起とを有するハウジングをさらに具備し、
前記複数のティース部材は、当接突起部を有し、前記当接突起部が前記ハウジングの前記開口端面及び前記位置決め突起に当接して、前記開口を介して前記ハウジング内に挿入されることで、前記複数のコイルが前記ハウジング内で配列されるように、前記複数のティース部材が前記ハウジングに支持される
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項4】
固定子と、前記固定子に対して移動可能な可動子とを備えたリニア駆動装置であって、
前記固定子は、
固定子コアと、
前記固定子コアに設けられた永久磁石とを有し、
前記可動子は、
前記固定子コアに所定のギャップを保って対向する面を有し、複数のコイルがそれぞれ装着可能であり、前記可動子の移動方向に所定の間隔をもって配列された複数のティース部材と、
凸部を有し、前記複数のティース部材同士を連結するヨーク部材とを具備し、
前記複数のティース部材のうち、前記固定子コアに対向する面とは反対側の面と、前記ヨーク部材の面とが対面し、かつ、前記凸部が前記複数のティース部材の間に配置されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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