説明

リフタブルデッキのバランシング装置

【課題】安価で安全に昇降作業を行うことができる、リフタブルデッキのバランシング装置を提供する。
【解決手段】リフトカー2によって昇降動されるリフタブルデッキ1の水平バランスをとるバランシング装置であって、リフタブルデッキ1の一端部取り付けられたプーリー11、12と、リフタブルデッキ1の他端部に取り付けられたプーリー13,14と、一端がリフタブルデッキ1の下方の船体固定構造物に連結されるとともに他端がリフタブルデッキ1の上方の船体固定構造部物に連結され、且つ、一端部のプーリー11,12の上部と他端部のプーリー13,14の下部とに掛け渡されることによって張設されてリフタブルデッキ1の水平バランスをとるバランシングワイヤー7,8とを、備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフタブルデッキの水平バランスをとるためのバランシング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車専用船は、一般的に、複数段のデッキ(甲板)を備え、各デッキの高さは乗用車を対象として設計されているが、背の高いトラックやバスを積載するために可動式のリフタブルデッキも備えられている。
【0003】
リフタブルデッキを昇降動させるために、リフトカー(図1参照)を使用する。リフトカーは、車両に油圧ジャッキを搭載し、油圧ジャッキを利用してリフタブルデッキを昇降動させる。
【0004】
リフトカーは、一般にはリフタブルデッキの重心位置に配置される。しかしながら、リフトカーが載る固定デッキに艙内ランプ・ウェイの開口部が設けられている場合等には、リフトカーをリフタブルデッキの重心位置に配置できない場合がある。そのような場合には、図6に示すように、リフタブルデッキ1の4隅に連結したワイヤーW1〜W4を、上方の固定デッキ5内に取り付けた滑車P…を通じて油圧シリンダーSのロッドに連結し、該ロッドを進退動させることよってワイヤーW1〜W4の送り出し長さを調節し、リフタブルデッキ1の水平バランスをとるバランシング装置を備えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、油圧シリンダーを使用した従来のバランシング装置は、油圧シリンダーへ作動油を送る配管継手等から漏れた油が積載車両に滴下し、積載車両の品質を著しく損なうおそれがある。また、この種の油圧シリンダーは高価であるし、狭い隙間に大型の油圧シリンダーを据え付ける工事は困難を伴う。
【0006】
本発明は、安価で安全に昇降作業を行うことができる、リフタブルデッキのバランシング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、リフトカーによって昇降動されるリフタブルデッキの水平バランスをとるバランシング装置であって、前記リフタブルデッキの一端部及び他端部にそれぞれ取り付けられたプーリーと、一端が前記リフタブルデッキ下方の船体固定構造物に連結されるとともに他端が前記リフタブルデッキ上方の船体固定構造部物に連結され、且つ、前記一端部のプーリーの上部と前記他端部のプーリーの下部とに掛け渡されることによって張設されて前記リフタブルデッキの水平バランスをとるバランシングワイヤーと、を有することを特徴とする。
【0008】
前記バランシングワイヤーには、ターンバックルが介在されていることが好ましい。
【0009】
また、前記バランシングワイヤーに張力を付与するテンショナーを更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、リフタブルデッキの上下方にそれぞれ端部が固定されたバランシングワイヤーを、リフトカーによって支持されているリフタブルデッキの両端部に設けたプーリーに掛け渡して張設することにより、吊りワイヤーを上下動させる油圧シリンダー等を使用せずに、リフタブルデッキの水平バランスを取ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るバランシング装置の実施形態について、以下に図1〜5を参照して説明する。全図及び全実施形態を通じ、同様の構成部分には同符号を付した。
【0012】
図1は、本発明に係るバランシング装置の第1実施形態を示す概念図であり、図2は縦断面図である。
【0013】
リフタブルデッキ1は、リフトカー2によって支持されるとともに、昇降動される。また、図2に示すように、リフタブルデッキ1の最下降位置では、フレーム3又は他の船体構造物に設けられたブラケット部4に、リフタブルデッキ1が載置され得る。リフタブルデッキ1の上下方には船体固定構造物である固定デッキ5、6が配置されている。
【0014】
リフタブルデッキ1下方の固定デッキ6には、開口部6aが形成され、開口部6aから、更に下段の固定デッキとの車両通路となるランプ・ウェイRが更に下方の固定デッキ(不図示)に向けて延設されている。
【0015】
下方の固定デッキ6に開口部6aが形成されているため、リフトカー2の支持板2aの重心位置をリフタブルデッキ1の重心位置Gに位置合わせできす、リフトカー2は、リフタブルデッキ1をその重心位置Gから偏心した位置で支持している。リフトカー2の支持位置がリフタブルデッキ1の一端部側(図2の右側)に偏っているため、リフタブルデッキ1の他端部側(図2の左側)が下方へ傾こうとする。
【0016】
リフタブルデッキ1の他端部側が下方へ傾くのを防ぎ、リフタブルデッキ1の両端部の水平バランスをとるために、バランシングワイヤー7、8がプーリー13,14を介してリフタブルデッキ1の他端部を吊っている。
【0017】
バランシングワイヤー7、8は、それぞれの一端が下方の固定デッキ6に固定された連結金具であるアイ・プレート9、10にそれぞれ連結され、次いで、リフタブルデッキ1の一端部に取り付けられたプーリー11、12の上部に掛けられ、さらに、リフタブルデッキ1の他端部に取り付けられたプーリー13、14の下部に掛けられて、プーリー11からプーリー13へ,及びプーリー12から14へそれぞれ掛け渡された後、上方の固定デッキ5に固定されたアイ・プレート15、16にそれぞれの他端が連結されて張設されている。
【0018】
図示例において、リフタブルデッキ1の4隅にプーリー11、12、13、14が取り付けられているが、斯かる配置構成に限らず、例えば、リフタブルデッキ1の重心位置を通る線上の両端部にプーリーを1つずつ取り付けて1本のバランシングワイヤーによってリフタブルデッキ1のバランスを取ることも出来るし、3本以上のバランシングワイヤーを並列させてリフタブルデッキ1のバランスをとるようにしても良いし、或いは、2本のバランシングワイヤーがリフタブルデッキ1内で対角線状に交差するようにプーリーを配置することもできる。また、プーリーは、ニップローラとしてもよい。
【0019】
また、バランシングワイヤー7,8の両端は、図示例では固定デッキ5、6に連結しているが、移動できないように固定できれば固定デッキ5、6に限らず、例えば、フレーム等の固定された船体構造物に連結して固定してもよい。
【0020】
バランシングワイヤー7,8は、リフタブルデッキ1が水平状態を保つ位置で弛みの無ように、張られている。バランシングワイヤー7,8のこのような緊張状態は、リフタブルデッキ1の上下昇降中においても保たれることが分かる。例えば、リフタブルデッキ1が上昇すれば、バランシングワイヤー7,8の長さは、プーリー13、14とアイ・プレート15、16との間で短くなるが、プーリー11、12とアイ・プレート9、10との間で長くなる。
【0021】
上記構成を有するバランシング装置は、バランシングワイヤー7,8の長さが一定であるから、リフタブルデッキ1の上下昇降中において、リフタブルデッキ1の他端部を常に同じ引張力で支持し、該他端部が下方へ傾くのを常に防止して、リフタブルデッキの両端部の水平バランスをとることができる。
【0022】
バランシングワイヤー7,8に張力を付与するために、図3に示すように、テンショナー17を更に備えておくことが好ましい。テンショナー17は、例えば、バランシングワイヤー7,8に圧縮コイルバネを介在させることによって、構成することができる。テンショナーは、伝動ベルトやチェーンに張力を付与する装置として公知のものを応用することができる。
【0023】
バランシングワイヤー7,8にテンショナー17を介在させておけば、バランシングワイヤー7,8が伸びた場合にその伸びを吸収させることができる。
【0024】
また、バランシングワイヤー7,8には、図4に示すように、リギング・スクリューやランシング・ターンバックル等のターンバックル18を介在させておくことが好ましい。ターンバックル18をバランシングワイヤー7.8に介在しておけば、バランシングワイヤー長の初期調整や、バランシングワイヤー7.8が伸びた場合の長さ調節が容易である。なお、図4において符号19はワイヤークリップを示している。
【0025】
図5は、本発明に係るバランシング装置の第2実施形態を概略的に示す概念図である。第2実施形態のバランシング装置は、4組(合計8個)のプーリー11a〜14a,11b〜14bがリフタブルデッキ1内に配置され、4本のバランシングワイヤー7a、7b、8a、8bが上下の固定デッキ5、6に連結されて、張設されている。下方の固定デッキ6には開口部がなく、図示省略しているリフトカー支持体の重心位置と、リフタブルデッキ1の重心位置とを概ね位置合わせして、リフタブルデッキ1を支持することができる。
【0026】
2本のバランシングワイヤー7a、8aが、リフタブルデッキ1の一端部を吊設し、他の2本のバランシングワイヤー7b、8bが、リフタブルデッキ1の他端部を吊設するように、張設されている。
【0027】
こうして第2実施形態のバランシング装置は、リフタブルデッキ1の両端部を吊設するので、船舶の横揺れ等によってもリフタブルデッキ1がバランスを崩すことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るバランシング装置の第1実施形態を示す概念図である。
【図2】本発明に係るバランシング装置の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係るバランシング装置の一部を拡大して示す側面図である。
【図4】本発明に係るバランシング装置の他の一部を拡大して示す側面図である。
【図5】本発明に係るバランシング装置の第2実施形態を示す概念図である。
【図6】従来のバランシング装置を示す概念図である。
【符号の説明】
【0029】
1 リフタブルデッキ
2 リフトカー
5 固定デッキ
6 固定デッキ
7,8 バランシングワイヤー
11,12,13,14 プーリー
17 テンショナー
18 ターンバックル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフトカーによって昇降動されるリフタブルデッキの水平バランスをとるバランシング装置であって、
前記リフタブルデッキの一端部及び他端部にそれぞれ取り付けられたプーリーと、
一端が前記リフタブルデッキ下方の船体固定構造物に連結されるとともに他端が前記リフタブルデッキ上方の船体固定構造部物に連結され、且つ、前記一端部のプーリーの上部と前記他端部のプーリーの下部とに掛け渡されることによって張設されて前記リフタブルデッキの水平バランスをとるバランシングワイヤーと、
を有することを特徴とする前記バランシング装置。
【請求項2】
前記バランシングワイヤーにターンバックルが介在されていることを特徴とする請求項1記載のバランシング装置。
【請求項3】
前記バランシングワイヤーに張力を付与するテンショナーを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のバランシング装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−237869(P2007−237869A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61760(P2006−61760)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(593172223)今治造船株式会社 (15)