説明

リフタ機構付き車両用シート

【課題】シートを昇降させるリフタ機構において、荷重を一部の部材に集中さずに負担することにより、後方衝突時のシート後方の落ち込みを効果的に防止することができ、かつ広い可動範囲を有する車両用シートを提供する。
【解決手段】車両床面とシートクッションの間を、略L字型に屈曲した屈曲リフタリンク部材で連結し、該屈曲リフタリンク部材の両端部を長手方向に並進運動可能かつ前後方向面内で回転可能に車両床面側に取り付ける構成を有するリフタ機構を設置する。屈曲リフタリンク部材の後側の端部を車両床面に取り付けるためのガイド部材にはリフタリンク部材の長手方向の並進運動を規制するロック手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、さらに詳しくは車両内で乗員が着座するシートクッションの高さを車両床面に対して調節することができるリフタ機構を有する車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいてシート本体の高さを調節するための高さ調節装置として、図7に示すような高さ調節装置190が特許文献1に開示される。高さ調節装置190は、車両用シート101のシートクッション102を構成するサイドフレーム(ロアアーム)104の後部に軸回転可能に取り付けられたピニオンギア192と、サイドフレーム104に回転可能に取り付けられ、ピニオンギア192に噛み合うセクタギア193とを有する。高さ調節装置190はさらにリフタリンク191を有し、リフタリンク191の第一端部191aはセクタギア193に連結され、かつ第二端部191bが車両床面側に回転可能に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−173496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような高さ調節装置によれば、車両が後方から追突されて衝撃を受け、着座者がシート後方に押し付けられたときに、セクタギア193の歯とピニオンギア192の歯の間に大きな荷重が集中する。これにより、セクタギア193及び/又はピニオンギア192の歯が破損し、シートクッション102が後方に落ち込んでしまう。
【0005】
また、セクタギア193は扇形の形状を有し、横方向に位置するピニオンギア102と噛合しているため、リフタリンク191は、該扇型の中心角の範囲でしか傾動することができず、可動範囲が狭い。リフタリンク191は床面に対して垂直に立ち上がる状態まで傾動することができない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、アンダーフレームにシートクッションがリフタ機構を介して上下移動可能に支持される車両用シートにおいて、リフタ機構を構成するリフタリンクに与えられる荷重をギア等の一部の部品に集中させずにリフタリンク全体で負担することができ、かつリフタリンクの可動範囲が広い、リフタ機構付き車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるリフタ機構付き車両用シートは、アンダーフレームにシートクッションがリフタ機構を介して上下移動可能に支持される車両用シートにおいて、前記リフタ機構は、途中部位が屈曲形成され、前記屈曲部が前後方向に回動可能に前記シートクッションに連結された屈曲リフタリンク部材を有し、前記屈曲リフタリンク部材の両端部は、前記アンダーフレームの前後方向に相互に離れた位置に設けられる二つのガイド部材を介してそれぞれ前後方向面内に回転可能かつ長手方向に並進運動可能に取り付けられ、前記二つのガイド部材のうち一方には、前記屈曲リフタリンク部材が回動されない状態において前記屈曲リフタリンク部材の端部の運動を阻止するロック手段が設けられていることを要旨とする。
【0008】
ここで、前記車両用シートは、上端部が前記シートクッション前部に回転可能に連結され、下端部が前記アンダーフレーム前部に回転可能に連結された別のリフタリンク部材をさらに有し、前記屈曲リフタリンク部材は、前記別のリフタリンク部材よりも後方に設けられ、前記ロック手段は、前記二つのガイド部材のうち後方のガイド部材に設けられるとよい。
【0009】
さらに、前記屈曲リフタリンク部材の屈曲角は90°であると良い。
【0010】
また、前記ロック手段は、前記アンダーフレームに軸回転可能に取り付けられるピニオンギアと該ピニオンギアに噛合する前記屈曲リフタリンク部材の一端に一体に形成されたラックギアとを有することが好ましい。
【0011】
あるいは、前記ロック手段は、軸回転可能に前記アンダーフレームに取り付けられた雌ねじと、該雌ねじに螺合する前記屈曲リフタリンク部材の一端に一体に形成された雄ねじとを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記発明にかかるリフタ機構付き車両用シートによれば、車両が追突された場合のように、シートクッションに荷重が印加されたときに、その荷重を屈曲リフタリンク部材のリンクバーを圧縮する方向に受けて、効率的に負担することができる。これにより、衝突等により大きな衝撃を受けた際にもリフタ機構の構成部材が損傷されにくく、シートクッションの落ち込みが従来のセクタギアとピニオンギアを有するリフタ機構を用いた場合よりも抑制される。
【0013】
このようなリフタ機構がシートの後部に設けられ、そのリフタ機構においてロック手段が後側のガイド部材に設けられていれば、後方からの衝突を受けた時に、シートクッションに与えられる荷重をリフタリンク部材の後側リンクバーにおいて効率的に負担することができるので、荷重によるシート後方の落ち込みが防止される。
【0014】
リフタリンク部材の屈曲角が90°であれば、さらに荷重を効率的に負担することができる。
【0015】
また、ピニオンギアとラックギアを使用したロック手段又は雄ねじと雌ねじを使用したロック手段を使用することで、後側ガイド部材における後側リンクバーの長手方向の並進運動及び回転運動の規制と外力によるそれらの運動の許容を簡便な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかるリフタ機構付き車両用シートの概略斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態にかかるリフタ機構付き車両用シートの概略側面図である。
【図3】図2の屈曲リフタリンク近傍の拡大図であり、(b)ではリフタリンクの回動後の状態が破線で示される。
【図4】ロック手段を備えた後側ガイド部材を示しており、(a)は第一の実施形態にかかる後側ガイド部材の側面図であり、(b)は第二の実施形態にかかる後側ガイド部材の断面図である。
【図5】前側ガイド部材の斜視図である。
【図6】屈曲リフタリンク回動時の屈曲部の軌跡を示す模式図であり、(a)はθ=90°の場合、(b)はθ>90°の場合、(c)はθ<90°の場合をそれぞれ示している。
【図7】従来の車両用シートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第一の実施形態に係るリフタ機構付き車両用シートについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1及び図2に示す車両用シート1は、シートクッション2と、その後方にシートバック3を有する。シートクッション2は左右部において前後方向に延出するロアアーム4等からなるフレームと、フレームに装着されるパッド5を有する。
【0018】
ロアアーム4の下側には、スライド装置6が設けられる。スライド装置6は、車両の床面8に固定されるロアレール62と、ロアレール62の上にスライド可能に取り付けられるアッパーレール61を有する。アッパーレール61の上には、アンダーフレーム7が取り付けられる。アンダーフレーム7とロアアーム4の間には、リフタ機構9が取り付けられる。
【0019】
リフタ機構9は、シートクッション2の前方の左右と後方の左右に一つずつ、計四つのリフタリンクを備える。前方リフタリンク91は、従来用いられてきたものと同様の構成を有する傾動型リフタリンクであり、上端部91aがロアアーム4に回転可能に連結され、下端部91bがアンダーフレーム7に回転可能に連結される。後方リフタリンク92は、略L字形状を有する屈曲リフタリンクである。屈曲リフタリンク92の屈曲部92aはピン部材92dによってロアアーム4の後部に連結され、両端部がそれぞれ前側ガイド部材93及び後側ガイド部材94を介してアンダーフレーム7に取り付けられている。後述するように、二つのガイド部材93、94の協働により、屈曲リフタリンク92が回動し、屈曲部92aが上下方向に移動可能である。
【0020】
図3(a)は、屈曲リフタリンク92が前側ガイド部材93及び後側ガイド部材94を介してアンダーフレーム7に取り付けられた状態を示している。屈曲リフタリンク92は、中途部位の屈曲部92aにおいて所定の屈曲角に屈曲され、該屈曲部92aの両側に直線状のリンクバー92b、92cが延出した略L字型の形状をとっている。本実施形態においては、この屈曲角θは90°である。前側リンクバー92b及び後側リンクバー92cの端部は、アンダーフレーム7に取り付けられた前側ガイド部材93及び後側ガイド部材94に保持された状態で、それぞれアンダーフレーム7に取り付けられている。前側ガイド部材93と後側ガイド部材94は、同じ高さでシート前後方向に相互に離れた位置に固定されている。両ガイド部材93、94に保持された状態で、両リンクバー92b、92cはともに車両床面8に対して垂直な面内にある。
【0021】
ガイド部材93、94において、リンクバー92b、92cはそれぞれ長手方向に並進運動可能である。つまり、屈曲部92aと前側ガイド部材93との間の前側リンクバー92bの長さ及び屈曲部92aと後側ガイド部材94との間の後側リンクバー92cの長さを変化させることができる。また、前側ガイド部材93と後側ガイド部材94は、リンクバー92b、92cを保持した状態で、前後方向面内つまり屈曲リフタリンク92を含む平面内で回転可能である。これにより、リンクバー92b、92cの端部がそれぞれガイド部材93、94の位置を中心として回転可能となっている。前側ガイド部材93は、前側リンクバー92bの並進運動および回転運動に対するロック手段を有さないが、後側ガイド部材94は後側リンクバー92cの並進運動および回転運動を規制するロック手段を有し、これらの運動を規制している。両ガイド部材93、94の具体的な構成については後に詳述する。
【0022】
屈曲リフタリンク92の二つのリンクバー92b、92cは、それぞれガイド部材93、94の位置において長手方向に並進運動可能であり、かつそれぞれのガイド部材93、94を中心に回転可能であるが、アンダーフレーム7上におけるガイド部材93、94の位置が規定されており、かつ、二つのリンクバー92b、92cが屈曲部92aにおいてなす角θが変化不能であるため、二つのリンクバー92b、92cがガイド部材93、94の位置において独立して自由に長手方向の並進運動及び回転運動をすることは許容されない。幾何学の要請によると、固定された二点を斜辺とする直角三角形の直角の頂点は、常に該二点の中点を中心とする円弧上に存在する(図6(a)参照)。つまり、屈曲リフタリンク92の屈曲部92aが、二つのガイド部材93、94の位置の中点を中心Cとする仮想的な円弧A上にあるような長手方向の並進運動及び回転運動のみが二つのリンクバー92b、92cに許容される。
【0023】
図3(b)に実線で示した状態において、後側ガイド部材94のロック手段によって、後側ガイド部材94と屈曲部92aとの間の後側リンクバー92cの長さLbが固定されている。このとき、屈曲部92aが円弧A上に存在しなければならないという条件から、両ガイド部材93、94を結ぶ直線と後側リンクバー92cがなす角θb、さらに両ガイド部材93、94を結ぶ直線と前側リンクバー92bがなす角θa及び前側ガイド部材93と屈曲部92aとの間の前側リンクバー92bの長さLaは自動的に決定される。なお、図3(b)においては、見やすいように前側ガイド部材93及び後側ガイド94の図示を省略し、それらの位置を点で示してある。
【0024】
ここで、後側ガイド部材94のロック手段による運動規制を一旦解除し、後側ガイド部材94に保持された後側リンクバー92cを長手方向に並進運動させ、下方に移動させることで後側ガイド部材94と屈曲部92aとの間の後側リンクバー92cの長さLbを短くすると、図3(b)中に点線で示したように、屈曲部92aが円弧A上の別の位置に移動する。このとき、新しい長さLbに応じて、新しい角度θb、角度θa及び長さLaが自動的に定まる。これらの新しい値に合致するように、後側ガイド部材94は後側リンクバー92cを長手方向に並進運動させると同時に、前後方向に回転運動を行う。さらに、前側ガイド部材93は後側ガイド部材94に従動し、後側ガイド部材94と同じ角度だけ回転するとともに、前側リンクバー92bが前側ガイド部材93の中を長手方向に並進運動し、ガイド部材93の下側から繰り出される。
【0025】
この時、屈曲部92aは円弧A上を回動するが、上下方向の位置に注目すると、上方から下方へ移動する。これにより、屈曲部92aに連結されたロアアーム4の位置が下降し、ロアアーム4とベースフレーム7の間の距離が近づく。アンダーフレーム7とロアアーム4との間の距離は、屈曲リフタリンク92の後側ガイド部材94と屈曲部92aとの間の後側リンクバー92cの長さLbを唯一のパラメータとして決定される。前方リフタリンク91はロック手段を有しておらず、後方の屈曲リフタリンク92に従動する。このようにして、リフタ機構9によるシートの昇降動作が実現される。
【0026】
ここで、前側ガイド部材93と後側ガイド部材94の具体的な構成を説明する。前側ガイド部材93の構成が図5に示される。前側ガイド部材93は貫通穴93aを有し、この貫通穴93aに前側リンクバー92bの末端が挿通される。前側ガイド部材93は、前側リフタリンク92bの挿通方向と垂直な断面の形状が略コの字形であるブラケット93bによって、二側面から支持されている。ブラケット93bは、前側ガイド部材93の奥側の面においてピン部材93cによってアンダーフレーム7に回転可能に取り付けられている。これにより、ガイド部材93及び挿通された前側リンクバー92bは前後方向面内で回転可能となっている。前側ガイド部材93がこのような構成を有していると、後側ガイド部材94と屈曲部92aとの間の後側リンクバー92cの長さLbを変化させたとき、それに従動して前側ガイド部材93の回転と前側リンクバー92bの長手方向の並進運動が起こる。
【0027】
一方、ロック手段を有する後側ガイド部材94の構成が図4(a)に示される。後側ガイド部材94は、後側リンクバー92cの末端に一体的に形成されたラックギア94fと、ラックギア94fに噛合し、アンダーフレーム7に軸回転可能に取り付けられたピニオンギア94bとを有する。ラックギア94fとピニオンギア94bとの噛合がロック手段として機能し、後側リンクバー92cの長手方向の並進運動を規制する。それに伴い、前後方向面内の回転運動も規制される。ピニオンギア94bには軸回転駆動用のハンドル94cが連結されており、ハンドル94cを操作してピニオンギア94bを駆動することにより、後側リンクバー92cを長手方向に並進運動させることができる。これにより、長さLbつまりラックギア94fとピニオンギア94bとの噛合部と屈曲部92aの間の後側リンクバー92cの長さが変化する。
【0028】
ラックギア94fは、ピン部材94eによって回転可能にアンダーフレーム7に取り付けられた保持部材94dによって、ラックギア94bに噛合する位置に保持されている。これにより、ラックギア94fを駆動して長さLbを変化させたときに、それに伴って角度θbが変化することが許容される。
【0029】
左右一対の後側リフタリンク92に対応して設けられた一対のピニオンギア94bは、それぞれに独立したハンドル94cによって駆動することも可能であるが、図1に示されるように、それらの軸を相互に連結しておけば、片側のピニオンギア94bのみにハンドル94cを接続し、操作することで、両側の屈曲リフタリンク92を同期させて回動させることができる。このとき、両ピニオンギア94b間の連結部材94gがアンダーフレーム7の高さに位置する。よって、図7のセクタギアとピニオンギアを備える従来の高さ調節装置191をシート後部の左右両方に設けてピニオンギアの軸を連結する場合に、連結箇所がロアアーム197の高さとなるのと比較して、連結部材の位置を低くすることができる。なお、ピニオンギア94bの駆動用に、ハンドル94cの代わりにモータ等が連結されていてもよい。
【0030】
ここで、二つのリンクバー92b及び92cの長さと両ガイド部材93、94の下側の空間に十分な余裕があれば、後側リンクバー92cはアンダーフレーム7に対してほぼ横になった状態から起立した状態まで回動することができる。屈曲部92aは円弧A上を移動するので厳密には前後方向の成分を有するが、角度θaが小さい領域でしか屈曲リフタリンク92を回動させない場合には、屈曲部92aの動きは上下方向に近似でき、前後方向のロアアーム4の移動は無視できる。角度θaが比較的大きくなる領域にまで屈曲リフタリンク92を回動させる必要がある場合は、ロアアーム4の前後移動を無視することができず、前後方向位置を保持することを望むならばスライド機構6を併用するなどの措置が必要となる。
【0031】
屈曲リフタリンク92が直線状の剛体が中途部で屈曲された形状を有することで、着座者からの荷重は、二つのリンクバー92b、92cの長手方向に作用する。これにより、シートクッション2が二つのリンクバー92b、92cで安定に保持される。特に後方から衝突を受けて着座者がシート後方に押し付けられたとき、屈曲リフタリンク92は屈曲部92aに後方下向きの大きな荷重を受けるので、後側リンクバー92cは、長手方向に圧縮される方向に力を加えられ、圧縮応力を生じる。これにより、荷重が後側リンクバー92c全体で支持される。後側ガイド部材94のロック手段のギア部分など一部の部材に荷重が集中されず、これらの部材の損傷が防止される。その結果、シート後方に位置する屈曲リフタリンク92の後側ガイド部材94に備えられたロック手段によって、シートクッション2後方の上下位置が保持され、シートクッション2後方の落ち込みが防止される。ここで、上方からの荷重の大部分を後側リンクバー92cの圧縮により負担するためには、後側リンクバー92cがなるべく起立した状態にある方が良く、角度θaが小さい領域で必要なリフト量がカバーされるように、屈曲リフタリンク92の寸法等、シートの設計を行うことが望ましい。
【0032】
本実施形態においては、屈曲リフタリンク92の二つのリンクバー92b、92cのなす角θが90°であるが、0°超180°未満の任意の角度としても、同様のリフタ動作が実現される。ただし、角度θが90°より大きい場合は、図6(b)のように、屈曲部92aは二つのガイド部材93、94の中点よりも下方の点を中心Cとする円弧上を回転することとなり、屈曲部92aの回動範囲は小さくなる。一方、角度θが90°未満の場合は、図6(c)のように、屈曲部92aは二つのガイド部材93、94の中点よりも上方の点を中心Cとする円弧上を回転することとなり、屈曲部92aの回動範囲は大きくなる。シートクッション2とアンダーフレーム7との間の距離や、必要とされるのシートクッション2の最大昇降距離などに応じて、適宜θを選択すればよい。ただし、角度θが大き過ぎると、屈曲部92aに上から力が加えられたときに、リンクバー92b、92cの長手方向のベクトル成分が小さくなり、上方からの荷重を効率的にリンクバー92b、92cが圧縮される方向に受けることができない。一方、角度θが小さすぎると、シートクッション2を一本の直線状の部材で支持している状態に近くなり、シートクッション2の支持の安定性が悪くなる。よって、荷重を効率よく受け、シートクッション2を安定に支持できるという点においては、上記実施例のようにθを90°とするのが最も好適である。
【0033】
ロック手段を備えた後側ガイド部材としては、上記のようにラック‐ピニオン構造を有するものに限定されない。図4(b)に第二の実施形態にかかるリフタ機構付き車両用シートの後側ガイド部材95の構成を示す。後側ガイド部材95以外の箇所の構成は、上記第一の実施形態にかかるものと同様である。
【0034】
第二の実施形態においては、図4(b)に示されるように、後側ガイド部材95は雌ねじ溝95bを有する貫通孔を備える。後側リンクバー92cの末端の外周面に雄ねじ溝96が形成され、雄ねじ溝96が雌ねじ溝95bに螺合した状態で、後側リンクバー92cの末端が後側ガイド部材95に挿通されている。後側ガイド部材95は、螺合軸の周りに回転可能にアンダーフレーム7上に保持されている。雄ねじ溝96と雌ねじ溝95bの螺合構造がロック手段として働き、後側リンクバー92cの長手方向の並進運動が阻止されており、それに伴い後側リンクバー92cの前後面内回転運動も阻止されている。ハンドルやモータ等を後側ガイド部材95に連結して雌ねじ溝95bを軸回転させることにより、雄ねじ溝95bを備えた後側リンクバー92cが長手方向に並進運動し、後側ガイド部材95と屈曲部92aとの間の後側リンクバー92cの長さLbを変化させることができる。
【0035】
ここで、後側ガイド部材95は、前側ガイド部材93と同様にブラケット95aによって保持されている。ブラケット95aは、後側ガイド部材95の奥側で、図示しないピン部材によって前後方向面内で回転可能にアンダーフレーム7に取り付けられている。これにより、長さLbを変化させたときに、それに伴って角度θbが変化することが許容される。ここで、雄ねじ溝96に螺合した雌ねじ溝95bを螺合軸の周りに回転させることが可能なように後側ガイド部材95がブラケット95aに保持されている必要がある。図4(b)に示されるように、後側ガイド部材95を螺合軸に沿った上下方向から挟み込んで保持するようなブラケット95aを採用することでこれが達成される。
【0036】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、前側ガイド部材及び後側ガイド部材の構成は図4及び図5に示したものに限定されない。また、上記実施形態においては、ロック手段を備えた屈曲リフタリンク92は、シート後方に左右一対で設けられているが、片側のみで十分に荷重を支持できる場合はこのようなリフタリンクは片側のみとし、もう片側には前方リフタリンク91と同様のロック機構を備えない傾動型のリフタリンクを設ける構成としてもよい。

【符号の説明】
【0037】
2 シートクッション
4 ロアアーム
7 アンダーフレーム
9 リフタ機構
91 前方リフタリンク
92 後方フタリンク(屈曲リフタリンク)
92a 屈曲部
92b 前側リンクバー
92c 後側リンクバー
93 前側ガイド部材
94、95 後側ガイド部材
94a ラックギア
94b ピニオンギア
95b 雌ねじ溝
96 雄ねじ溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンダーフレームにシートクッションがリフタ機構を介して上下移動可能に支持される車両用シートにおいて、
前記リフタ機構は、途中部位が屈曲形成され、前記屈曲部が前後方向に回動可能に前記シートクッションに連結された屈曲リフタリンク部材を有し、
前記屈曲リフタリンク部材の両端部は、前記アンダーフレームの前後方向に相互に離れた位置に設けられる二つのガイド部材を介してそれぞれ前後方向面内に回転可能かつ長手方向に並進運動可能に取り付けられ、
前記二つのガイド部材のうち一方には、前記屈曲リフタリンク部材が回動されない状態において前記屈曲リフタリンク部材の端部の運動を阻止するロック手段が設けられていることを特徴とするリフタ機構付き車両用シート。
【請求項2】
前記車両用シートは、上端部が前記シートクッション前部に回転可能に連結され、下端部が前記アンダーフレーム前部に回転可能に連結された別のリフタリンク部材をさらに有し、
前記屈曲リフタリンク部材は、前記別のリフタリンク部材よりも後方に設けられ、
前記ロック手段は、前記二つのガイド部材のうち後方のガイド部材に設けられることを特徴とする請求項1に記載のリフタ機構付き車両用シート。
【請求項3】
前記屈曲リフタリンク部材の屈曲角は90°であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリフタ機構付き車両用シート。
【請求項4】
前記ロック手段は、前記アンダーフレームに軸回転可能に取り付けられるピニオンギアと該ピニオンギアに噛合する前記屈曲リフタリンク部材の一端に一体に形成されたラックギアとを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリフタ機構付き車両用シート。
【請求項5】
前記ロック手段は、軸回転可能に前記アンダーフレームに取り付けられた雌ねじと、該雌ねじに螺合する前記屈曲リフタリンク部材の一端に一体に形成された雄ねじとを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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