説明

リーク検査装置

【課題】検査対象の筐体の内部の圧力が急激に変動することを防止できるとともに、煩雑な手順が不要なリーク検査を可能とすること。
【解決手段】本発明のリーク検査装置は、検査対象の筐体と圧力測定手段とが接続されるワーク側減圧配管と、減圧配管を介して前記ワーク側減圧配管に接続された前記筐体の内部を減圧可能な減圧手段と、前記減圧配管に設けられた分岐接続部を介して分岐接続されて前記減圧手段により減圧可能なチャンバーとを備えているので、減圧手段で減圧しても、減圧配管内が急激に圧力低下することは防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機等の筐体の防水機能等を検査するリーク検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信機等の筐体の防水機能を検査する場合には、以下の手順で行うことができる。
(1)筐体内部を減圧するために減圧ポンプを作動させて、目標の圧力まで減圧したら、減圧ポンプを停止させる。
(2)減圧ポンプを停止させた後も、しばらく筐体内部からの気体の流出が続くので筐体内の圧力が目標圧力よりも低くなる。
(3)筐体内に空気を流し込み、加圧することで筐体内部の圧力を目標圧力に到達させる。
(4)目標圧力に到達後、筐体内を閉鎖して一定時間の圧力の変化量を測定する。
(5)一定時間、圧力に変化がなければリークはないものと判断され、圧力が上昇すればリークしていると判断される。
このようなリーク検査方法の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
従来のリーク検査方法では、
ポンプ停止後、目標圧力に到達させる工程での圧力の変化量が、検査しようとする容器の容量により大きく異なる。例えば、容量の小さい筐体は、前記工程(2)では、ポンプを停止しても、圧力が大きく下がるので、筐体内のパーツに影響を与えるという課題がある。(課題1)
前記工程(3)では、筐体内に空気を流し込み加圧する際、短時間で圧力が急激に上昇し、目標圧力を越えてしまうという課題がある。(課題2)
【0004】
前記課題1を解決するためには、例えば筐体の容量により減圧量を変更するようにポンプを制御することや、目標圧力に到達する前にポンプを停止するということが考えられる。
また、前記課題2を解決するためには、スピコンにより筐体内に流し込む空気量を制御することが考えられる。
上述した何れの方法も、筐体の容量により設定を変更するものであるから、操作が煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−19431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、煩雑な操作を必要とすることなく、上述したような課題1、2を解決することができるリーク検査装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るリーク検査装置は、
検査対象の筐体と圧力測定手段とが接続されるワーク側減圧配管と、
減圧配管を介して前記ワーク側減圧配管に接続された前記筐体の内部を減圧可能な減圧手段と、
前記減圧配管に設けられた分岐接続部を介して分岐接続されて前記減圧手段により減圧可能なチャンバーと
を備えていることを特徴としている。
請求項2では、前記チャンバーは異なる容量のものと交換可能に構成されている。
請求項3では、前記分岐接続部と前記ワーク側減圧配管との間に開閉可能なバルブを設けてある。
請求項4では、前記分岐接続部と前記チャンバーとの間に開閉可能なバルブを設けてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係るリーク検査装置によれば、
検査対象の筐体が接続されるワーク側減圧配管に分岐接続部を介してチャンバーが分岐接続されているので、減圧配管を減圧手段で減圧したときに、前記筐体の内部の圧力が急激に減少することを防止することができ、筐体内部の構成部品などを損傷することを防止できる。また、前記ワーク側減圧配管に外気を導入する場合でも筐体内部の圧力が急激に上昇しないので目標圧力の維持が容易である。
請求項2によれば、前記チャンバーは異なる容量のものと交換可能であるので、検査対象の筐体の容量に応じて適切な容量のチャンバーを接続して、より適切な検査が可能となる。
請求項3によれば、前記減圧配管と前記ワーク側減圧配管との間に開閉可能なバルブが設けられているので、リーク検査時においては、前記バルブを閉にすることにより、前記チャンバーによる減圧配管内の圧力変化に対する影響を排除して正確なリーク検査が可能となる。
請求項4によれば、前記分岐接続部と前記チャンバーとの間に開閉可能なバルブが設けられているので、比較的容量の小さい筐体を検査する際には前記バルブを開にして筐体内部の急激な圧力変化を防ぐことができ、比較的容量の大きい筐体を検査する際には前記バルブを閉にして、検査に要する時間の長時間化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るリーク検査装置を用いたリーク検査の場合の説明図である。
【図2】前記リーク検査装置を用いたリーク検査における圧力変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るリーク検査装置は、
検査対象の筐体と圧力測定手段とが接続されるワーク側減圧配管と、
減圧配管を介して前記ワーク側減圧配管に接続された前記筐体の内部を減圧可能な減圧手段と、
前記減圧配管に設けられた分岐接続部を介して分岐接続されて前記減圧手段により減圧可能なチャンバーと
を備えていることを特徴としている。
【実施例1】
【0011】
実施例1に係るリーク検査装置を用いて、検査対象の筐体のリーク検査を行う場合の接続図を、図1を参照して説明する。
図1において、
Aはリーク検査装置であり、1は検査対象の筐体である。前記筐体1は、例えば携帯用無線通信機の筐体である。前記筐体1は、リーク検査装置Aに設けられたワーク取付け部11に取り付けられ、このワーク取付け部11には減圧配管接続部12が設けられている。前記筐体1には、リーク検査用孔が設けられており、このリーク検査用孔に減圧配管接続部12を接続することで、筐体1の内部を加圧、減圧することができる。
2はリーク検査装置Aに内蔵された減圧ポンプである。この減圧ポンプ2は減圧配管3と前記ワーク取付け部11の減圧配管接続部12を介して筐体1のリーク検査用孔に接続されている。
【0012】
前記減圧ポンプ2には、減圧制御用スピードコントローラ(以下、ポンプ用スピコンと呼ぶ。)21が設けられているので、減圧ポンプ2の減圧速度を手動で制御することができる。
【0013】
検査対象の筐体1は、ワーク側減圧配管31を介して減圧、加圧が行われ、ワーク側減圧配管31の一方の端部には前記筐体1に取り付けられるワーク取付け部11が設けられた減圧配管接続部12が接続されている。前記ワーク側減圧配管31の他方の端部は2つに分岐されて、一方の分岐ライン311が電磁弁41を介してポンプ側ライン312に接続され、他方の分岐ライン313が電磁弁42を介して開放ライン314に接続されている。
前記電磁弁41は請求項3に記載されたバルブに対応する構成である。
【0014】
前記電磁弁41、42は、リーク検査装置Aに内蔵された制御部5によって制御される。
減圧配管3のワーク側減圧配管31には圧力計43が取り付けられており、電磁弁41、42を閉にすることで、筐体1の内部を閉鎖して筐体1の内部の圧力を測定することができる。
前記圧力計43で測定された圧力は、前記制御部5によって監視されている。
【0015】
減圧ポンプ2が接続された減圧配管3と筐体1が接続されたワーク側減圧配管31とは、電磁弁41と分岐接続部300を介して接続されている。
前記分岐接続部300と減圧ポンプ2との間には逆流防止用にチェックバルブ44が設けられており、空気等の流体が減圧ポンプ2側からワーク側に流れることを防止するように構成されている。
【0016】
前記分岐接続部300には、安定時間制御スピードコントローラ(以下、圧力安定用スピコンと呼ぶ。)45が分岐接続されており、リーク検査工程において筐体1の内部の圧力が目標圧力よりも小さくなった際に、圧力安定用スピコン45から外気を電磁弁41を介して筐体1の内部に注入して、筐体1の内部の圧力を目標圧力に戻すように構成されている。
【0017】
電磁弁42には、開放ライン314を介して排気用マフラー46が接続されている。
リーク検査終了時に、電磁弁42を開とすることで、排気マフラー46から外気をワーク側減圧配管31を介して筐体1内部に注入して、筐体1内部を大気圧に復帰させるように構成されている。
前記分岐接続部300には、例えば容量が300ccのダミーチャンバー6が分岐接続されており、減圧ポンプ2を作動させているときには、筐体1内部とともに、前記ダミーチャンバー6が減圧され、圧力安定用スピコン45から外気を注入する際には、筐体1内部に電磁弁41を介して外気が導入されるとともに、ダミーチャンバー6にも外気が導入される。
なお、ワーク側減圧配管31は分岐ライン311、313を含み、ワーク側減圧配管31には、ワーク取付け部11、圧力計43、電磁弁42、そして電磁弁41が接続されている。
減圧配管3はポンプ側減圧ライン312を含み、減圧配管3には、減圧ポンプ2、チェックバルブ44、安定時間制御用スピコン45、ダミーチャンバー6、そして電磁弁41が接続されている。前記電磁弁41は、前記減圧配管3と前記ワーク側減圧配管31の境界に配設されているといえる。そして、前記分岐接続部300では減圧配管3が4つに分岐され、それぞれ、チェックバルブ44、安定時間制御用スピコン45、ダミーチャンバー6、そして電磁弁41が分岐接続されている。
【0018】
次に、目標圧力を−10KPaとしてリーク検査を行う場合について説明する。
ワーク取付け部11に設けられた減圧配管接続部12に検査対象の筐体1を取り付けて、制御部5の操作パネルの「スタートスイッチ」を操作してリーク検査を開始させるように指示すると、制御部5は、電磁弁41を開、電磁弁42を閉に制御して、減圧ポンプ2を作動させる。
この際、ワーク取付け部に取り付けた筐体1の内部とともにダミーチャンバー6の内部も減圧される。
したがって、ワーク取付け部11に取り付けた筐体1の内部容量が小さいものであっても、その筐体の内部とダミーチャンバー6の内部とがまとめて減圧されるので、筐体1の内部が急激に減圧されるという不具合は発生せず、筐体1内部の部品等を損傷させることもない。
【0019】
以上のようなリーク検査工程において、圧力計43で監視している筐体1の内部の圧力が目標の−10KPaに到達すると、電磁弁41を開にしたまま制御部5は減圧ポンプ2を停止させる。(図2の「C」参照。)
減圧ポンプ2が停止しても、しばらくは筐体1から気体の流出が続き、圧力は下がり続ける。
このようにして、圧力が下がり過ぎた場合には、圧力安定用スピコン45から電磁弁41を介して外気が導入されるので、筐体1内部の圧力は目標圧力に戻される。(図2の「D」参照。)この際の外気導入は、圧力安定用スピコン45の開放度に依存するものであり、筐体1内部のみならず、ダミーチャンバー6にも外気が導入される。
圧力安定用スピコン45から導入された外気は、筐体1内部のみならず、ダミーチャンバー6にも流入するので、筐体1内部の圧力が急激に上昇して目標圧力を越えることは抑止される。
【0020】
制御部5は、圧力計43を監視することで、目標圧力以下であった筐体1内部の圧力が目標圧力に到達したことを検出すると、電磁弁41を閉じ、筐体1内部を孤立させる。(図2の「D」参照。)
そして、圧力計43を監視して、筐体1内部の圧力が一定の監視時間(図2の「D」〜「E」参照。)の間でどの程度変化するかを監視して検査する。
【0021】
以上のようにして、制御部5は、圧力計43を監視して、一定時間の間における筐体1内部の圧力が例えば図2の太線で示したように、所定のしきい値範以下であれば、監視時間における圧力変化は小さく、筐体1にはリークはないものとして、ブザーを鳴らし、制御部5の操作パネルの「GOOD」ランプを点灯させて、リーク検査合格を報知する。
一定時間の間における筐体内部の圧力変化が例えば図2の一点鎖線で示したように、所定のしきい値範囲を越えて上昇すれば、筐体1にはリークが発生しているものとして、ブザーを鳴らし、制御部5の操作パネルの「NG」ランプを点灯させて、リーク検査不合格を報知する。
そして、リーク検査終了後に、電磁弁42を開とすることで排気用マフラー46から外気を筐体1内部に導入し、筐体1内部の圧力を外気と同じ大気圧に復帰させて、検査が終了した筐体をワーク取付け部11から取り外す。
このようにして、検査対象の筐体1のリーク検査を終了するのである。
【0022】
なお、ダミーチャンバー6の容量が300ccの場合には、検査対象の筐体の容量としては、1ccから300ccが適している。そこで、前記ダミーチャンバー6を交換可能に構成し、例えば小容量のダミーチャンバーを装着したり、大容量のダミーチャンバーを装着したできるように構成してもよい。検査対象の筐体の内部容量が小さい場合には、大きすぎる容量のダミーチャンバーを用いると余分な減圧時間を要したりして能率よく検査できないので、小容量のダミーチャンバーを装着してリーク検査を行う。一方、検査対象の筐体の内部容量が大きい場合には、小さな容量のダミーチャンバーを用いると十分なチャンバー効果が得られず急激な圧力変動が発生するので、大容量のダミーチャンバーを装着してリーク検査を行う。
【0023】
前記圧力安定用スピコン45を調整することで、目標圧力より低くなった筐体内部の圧力が目標圧力に到達するまでの時間を調整することができる。
ポンプ側減圧ライン312上の分岐接続部300とダミーチャンバー6との間に、破線で示したようにチャンバー用バルブ47を設けた構成としてもよい。このチャンバー用バルブ47は請求項4に記載されたバルブに対応する構成である。
このような構成によれば、比較的容量の小さい筐体を検査する際には前記チャンバー用バルブ47を開にして筐体内部の急激な圧力変化を防ぐことができ、比較的容量の大きい筐体を検査する際には前記チャンバー用バルブ47を閉にして、検査に要する時間の長時間化を防ぐことができる。
なお、検査対象の筐体1を接続する前に、ワーク取付け部11の減圧配管接続部12を完全に塞いだ状態でリーク検査装置A本体の動作テストを行う。
また、前記リーク検査装置Aにおけるリーク検査の開始/停止をリモート操作するためのリモコンユニットを備えてもよい。
【0024】
以上の実施形態においては、エアリーク検査を目的として気体を減圧して気体のリークを検査する場合を想定して説明したが、気体に限らず液体などの流体のリーク検査を目的とする場合には減圧ポンプに代えて流体吸引ポンプを用いて、配管上の流体の圧力を監視すればよい。
【符号の説明】
【0025】
A リーク検査装置
1 筐体
2 減圧ポンプ
3 減圧配管
31 ワーク側減圧配管
300 分岐接続部
311 分岐ライン
312 ポンプ側減圧ライン
313 分岐ライン
314 開放ライン
42 電磁弁
43 圧力計
44 チェックバルブ
47 チャンバー用バルブ
5 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の筐体と圧力測定手段とが接続されるワーク側減圧配管と、
減圧配管を介して前記ワーク側減圧配管に接続された前記筐体の内部を減圧可能な減圧手段と、
前記減圧配管に設けられた分岐接続部を介して分岐接続されて前記減圧手段により減圧可能なチャンバーと
を備えていることを特徴とするリーク検査装置。
【請求項2】
前記チャンバーは異なる容量のものと交換可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のリーク検査装置。
【請求項3】
前記分岐接続部と前記ワーク側減圧配管との間に開閉可能なバルブを設けてあることを特徴とする請求項1、2の何れか1項に記載のリーク検査装置。
【請求項4】
前記分岐接続部と前記チャンバーとの間に開閉可能なバルブを設けてあることを特徴とする請求項1、2、3の何れか1項に記載のリーク検査装置。

【図1】
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【図2】
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