説明

リール及び記録テープカートリッジ

【課題】 フランジの強度を低下させることなく、部品点数、または作業工数を低減させることができるリール及び記録テープカートリッジを得る。
【解決手段】 ハブ40と下フランジ46と上フランジ48とを一体成形することで、リール10を組み立てる手間が省け、作業工数を削減することができると共に、部品点数も少なくなるため、コストダウンを図ることができる。また、上フランジ48及び下フランジ46を一枚の板材で形成しているため、剛性も十分に確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ等の記録テープを巻き回すリール及び記録テープカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の外部記録媒体として、例えば、磁気テープを巻装したリールをケース内に収容した記録テープカートリッジが知られている。リールは、その軸心部を構成し外周に磁気テープが巻き回されるハブと、ハブの軸線方向両端からそれぞれ径方向外側に張り出した一対のフランジを備えている。
【0003】
このような記録テープカートリッジのリールにおいて、従来では一般的に、下フランジとハブが一体に構成され、該ハブの他端側に上フランジを接着や溶着あるいは嵌着する構成が採用されていたが、このようにリールが組み立て構造であると、部品点数、作業工数のいずれも増加するため、コストアップにつながる。
【0004】
このため、例えば、特許文献1では、ハブと下フランジ及び上フランジを一体成形させるために、平面視にて上フランジと下フランジが互いに重ならないように、所定角度毎に上下交互に配置されるようにしている。
【0005】
しかしながら、上フランジ及び下フランジの強度は従来と比較して大幅に低下し、また、面振れの調整も困難である。
【特許文献1】実開平6−68179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、フランジの強度を低下させることなく、部品点数、または作業工数を低減させることができるリール及び記録テープカートリッジを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、リールにおいて、記録テープが巻回される略円筒状のハブと、前記ハブの一端側に設けられた環状の下フランジと、前記ハブの他端側に設けられ、前記ハブに巻き回された記録テープの幅方向端部を前記下フランジと共に保持する環状の上フランジと、を備え、前記ハブと前記下フランジと前記上フランジとを一体成形したことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明では、ハブと下フランジと上フランジとを一体成形することで、リールを組み立てる手間が省け、作業工数を削減することができると共に、部品点数も少なくなるため、コストダウンを図ることができる。また、上フランジ及び下フランジを一枚の板材で形成しているため、剛性も十分に確保することができる。
【0009】
さらに、上フランジをハブに溶着させる場合、上フランジとハブとの接合部は、溶着しろが溶融した部分のみであるが、上フランジとハブとを一体成形させることで、上フランジとハブとの接合部(連接部)の面積を大幅に増やすことができる。
【0010】
これにより、ハブの強度が増大し、記録テープの巻き締りによるハブの変形及び該ハブの変形に追従して変形するフランジの変形を抑制することが可能となる。また、ハブと上フランジ、ハブと下フランジの接合状態(連接状態)が同じであるため、上フランジ側と下フランジ側とで記録テープへ与える力を均等化することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、リールにおいて、前記ハブの軸方向に対して直交する方向に沿ってスライドし、ハブの外周面と前記上フランジ及び前記下フランジの内面を形成するスライド金型と、前記ハブの内周面及び前記上フランジの外面を形成する可動金型と、前記ハブの底面及び前記下フランジの外面を形成する固定金型と、で構成された金型で成形されることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明では、リールを成形する金型において、ハブの内周面及び上フランジの外面を可動金型で成形し、下フランジの外面を固定金型で成形する。そして、ハブの軸方向に対して直交する方向に沿ってスライドするスライドコアを設け、ハブの外周面と上フランジ及び下フランジの内面を成形する。
【0013】
以上のような構成により、ハブと下フランジと上フランジとを一体成形することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、記録テープカートリッジにおいて、請求項1又は2に記載のリールを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明の効果と略同一の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記構成としたので、リールを組み立てる手間が省け、作業工数を削減することができると共に、部品点数も少なくなるため、コストダウンを図ることができる。また、上フランジ及び下フランジを一枚の板材で形成しているため、剛性も十分に確保することができる。さらに、上フランジをハブに溶着させる場合、上フランジとハブとの接合部は、溶着しろが溶融した部分のみであるが、上フランジとハブとを一体成形させることで、上フランジとハブとの接合部(連接部)の面積を大幅に増やすことができる。これにより、ハブの強度が増大し、記録テープの巻き締りによるハブの変形及び該ハブの変形に追従して変形するフランジの変形を抑制することが可能となる。また、ハブと上フランジ、ハブと下フランジの接合状態(連接状態)が同じであるため、上フランジ側と下フランジ側とで記録テープへ与える力を均等化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るリール10について図1又は図2に基づいて説明する。先ず、リール10が適用された記録テープカートリッジ12の該略全体構成を説明し、次いでリール10を詳細に説明することとする。なお、説明の便宜上、矢印Aで示す記録テープカートリッジ12のドライブ装置への装填方向を前方向(前側)とし、矢印Aと直交する矢印B、矢印C方向をそれぞれ右方向、上方向とする。
【0018】
(記録テープカートリッジの構成)
図1には記録テープカートリッジ12の分解斜視図が示されている。記録テープカートリッジ12は、平面視で略矩形状のケース14内に、情報記録再生媒体である記録テープとしての磁気テープTを巻装した単一のリール10を回転可能に収容して構成されている。
【0019】
ケース14の右側壁の前端部には、磁気テープTをケース14外に引き出すための開口16が設けられている。この開口16は、記録テープカートリッジ12(磁気テープT)の不使用時にはドア18によって閉塞され、記録テープカートリッジ12の使用時にはドライブ装置内で開放されるようになっている。
【0020】
また、磁気テープTの先端には、リーダ部材であるリーダピン20が取り付けられている。このリーダピン20は、小円柱状に形成されており、磁気テープTの幅方向端部よりも上下に突出する長手方向両端にそれぞれ設けられたフランジ部20Aが、ドライブ装置の引出部材に引掛けられて磁気テープTをケース14から引き出させるようになっている。
【0021】
ケース14は、上ケース22と下ケース24とを接合して構成されている。上ケース22は、平面視略矩形状の天板22Aの外縁に沿って略枠状の周壁22Bが立設されて構成されており、下ケース24は、天板22Aに略対応した形状の底板24Aの外縁に沿って周壁24Bが立設されて構成されている。そして、ケース14は、周壁22Bの開口端と周壁24Bの開口端とを突き当てた状態で、超音波溶着やビス止め等によって上ケース22と下ケース24とが接合されて、略箱状に形成されている。
【0022】
開口16は、側面視で略矩形状に形成され、ケース14における矢印A方向に沿う右側壁14A(周壁22Bと周壁24Bとで構成されるケース14の右向き壁)における前端で右向きに開口している。天板22A及び底板24Aには、それぞれ直立したリーダピン20のフランジ部20Aを収容するピン受け凹部26が設けられている。各ピン受け凹部26は、開口16の前端近傍で右向きにも開口しており、開口16を経由したリーダピン20のケース14に対する出入りを可能としている。
【0023】
また、ケース14の前端近傍には、板ばね28が取り付けられており、板ばね28には上下一対のアーム28Aが設けられている。板ばね28は、各アーム28Aの先端をリーダピン20のフランジ部20Aに係合させてリーダピン20をケース14に対し保持するようになっている。この保持状態は、リーダピン20を所定値以上の力で右方に引張ることで解除される構成である。
【0024】
この開口16を開閉するドア18は、単独で開口16を閉塞可能な略矩形平板状に形成されている。ドア18の上下の端部は、開口16の開放面及び右側壁14Aに沿って天板22A及び底板24Aに設けられたガイド溝30に摺動可能に入り込んでいる。
【0025】
これにより、ドア18は、ガイド溝30に案内されつつ前後方向にスライドすることで、開口16を閉塞する閉塞位置と、開口16を開放する開放位置とを選択的に取り得る構成とされている。そして、ドア18は、ケース14との間に設けられた付勢部材であるコイルばね32によって前方に付勢されており、通常はこの付勢力によって閉塞位置に位置するようになっている。ドア18の前端には、操作部18Aが右方に張り出して設けられており、この操作部18Aを後方に押圧することで、コイルばね32の付勢力に抗してドア18を開放位置に移動することができるようになっている。
【0026】
また、ケース14の底板24Aの中央部には、リール10の後述するリールギヤ50(図2参照)を露出するためのギヤ開口34が設けられている。リール10は、リールギヤに噛み合わされたドライブ装置の駆動ギヤが回転することで、ケース14内で非接触で回転駆動される構成である。
【0027】
さらに、ケース14には、ギヤ開口34と同軸的な円周に沿って天板22A及び底板24Aから部分的に立設されると共に上下端を突き合わせて構成された誘導規制壁36を備えている。誘導規制壁36は、リール10のガタつきを抑えると共に、端部を周壁22B、24Bに連続させてリール10の設置領域に塵芥等が進入することを防止する構成とされている。
【0028】
また、ケース14内における右後角隅部には、各記録テープカートリッジ12毎に、その各種情報を記憶されたメモリボードMが設置されている。メモリボードMは、下面側から通信するドライブ装置、及び背面側から通信するライブラリ装置との各通信を可能とするために、支持面である上縁が所定角度(この実施形態では45°)前傾した一対の支持リブ38によって、底板24Aに対し略45°傾斜して支持されている。
【0029】
(リールの構成)
図2には、リール10の断面図が示されている。このリール10は、軸心部を構成する略円筒状のハブ40を備えている。ハブ40は、外周面に磁気テープTが巻き回される円筒部42と、該円筒部42の下部を閉塞する底部44(ハブ40の他端側)とを有している。
【0030】
ハブ40の底部44の外周からは、下フランジ46が径方向外側へ向かって同軸的かつ一体に張り出している。一方、ハブ40の上端部には、外径が下フランジ46の外径と同径とされた上フランジ48がハブ40と一体に設けられている。
【0031】
これにより、リール10は、下フランジ46と上フランジ48との間で、円筒部42(ハブ40)の外周面に磁気テープTを巻き回す構成とされている。そして、下フランジ46及び上フランジ48は、ハブ40に巻き回された磁気テープTの幅方向(ハブ40の軸線方向)への位置ずれを規制するようになっている。
【0032】
一方、ハブ40の底部44における外面(下面)の外周近傍には、環状に形成されたリールギヤ50が設けられている。このリールギヤ50は、ケース14のギヤ開口34から露出され、ドライブ装置の回転シャフトに対し軸線方向に沿って相対移動することで、該回転シャフトの先端に設けられた駆動ギヤに対する噛み合い及び噛み合いの解除が可能とされている。
【0033】
さらに、ハブ40の内側には、磁気テープTの不使用時にリール10の回転を阻止するための図示しないロック機構が設けられるようになっている。ロック機構は、ケース14に対し回り止めされたロック部材を有し、このロック部材をリール10の底部44に対して接離可能に支持している。
【0034】
また、ロック部材は、底部44に対する接離によって、該底部44の係合部(図示省略)に係合してリール10のケース14に対する回転を阻止する回転ロック位置と、該係合状態を解除してリール10の回転を許容する解除位置とを取り得る構成である。
【0035】
このため、底部44にはロック部材が係合する係合部が設けられると共に、ドライブ装置のロック解除部材が外部からロック部材を操作するための操作孔54が形成されている。この実施形態では、操作孔54がリールギヤ50の形成部位に設けられた構成を例示しているが、例えば、底部44の軸心部に操作孔54を設けても良い。
【0036】
以上説明したように、ハブ40の底部44は、リールギヤ50が形成されてドライブ装置から回転力が伝達される機能、不使用時にケース14のギヤ開口34を閉塞する機能、ロック部材を係合させリール10のケース14に対する回転を阻止する機能等をそれぞれ果たすようになっている。
【0037】
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。
【0038】
図1及び図2に示すリール10は、磁気テープTに情報を記録する際、又は磁気テープTに記録された情報を再生する際に記録テープカートリッジ12がドライブ装置に装填されると、ケース14に対する回転ロックが解除され、そのリールギヤ50に駆動ギヤを噛み合わせた回転シャフトが回転することでケース14内で回転する。
【0039】
このとき、すでに開口16から取出されたリーダピン20がドライブ装置の巻取リールに保持されており、この巻取リールがリール10と同期して回転することによって、磁気テープTがケース14から順次引き出される。そして、所定のテープ経路に沿って配設された記録再生ヘッドが磁気テープTに情報を書き込み、又は磁気テープTに記録されている情報を読み取る。磁気テープTの使用後には、リール10は、磁気テープTを巻き取り初期状態に復帰する。
【0040】
ところで、本形態では、ハブ40と上フランジ48と下フランジ46とを一体成形している。具体的には、図3(A)、(B)に示すように、リール10を成形する金型60において、ハブ40の内周面及び上フランジ48の外面を可動金型62で成形し、ハブ40の底部44及び下フランジ46の外面を固定金型64で成形する。そして、ハブ40の軸方向に対して直交する方向に沿ってスライドするスライドコア66を設け、ハブ40の外周面を二分し、ハブ40の外周面と上フランジ48及び下フランジ46の内面を成形する。
【0041】
以上のような構成により、ハブ40と下フランジ46と上フランジ48とを一体成形することが可能となる。
【0042】
このように、ハブ40と下フランジ46と上フランジ48とを一体成形することで、リール10を組み立てる手間が省け、作業工数を削減することができると共に、部品点数も少なくなるため、コストダウンを図ることができる。また、上フランジ48及び下フランジ46を一枚の板材で形成しているため、剛性も十分に確保することができる。
【0043】
さらに、図4(A)に示すように、上フランジ70をハブ72に溶着させる場合、上フランジ70とハブ72との接合部は溶着しろ76が溶融した部分のみであるが、図4(B)に示すように、上フランジ48とハブ40とを一体成形することで、上フランジ48とハブ40との接合部(連接部)78の面積を大幅に増やすことができる。
【0044】
これにより、ハブ40の強度が増大し、図5に示すように、磁気テープTの巻き締りによるハブ40の変形及び、ハブ40に追従して変形する上フランジ48及び下フランジ46の変形を抑制することができる。また、ハブ40と上フランジ48、ハブ40と下フランジ46の連接状態が同じであるため、上フランジ48側と下フランジ46側とで磁気テープTへ与える力を均等化することができる。
【0045】
なお、上記各実施形態では、単一のリールをケース14内に収容して構成される記録テープカートリッジ12にリール10を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、2つのリールをケース内に収容した2リールタイプの記録テープカートリッジにリール10を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの全体構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るリールを示す断面図である。
【図3】(A)、(B)は、本発明の実施の形態に係るリールを成形する金型構造を示す概略断面図である。
【図4】(B)は本発明の実施の形態に係るリールを示す斜視図であり、(A)は(B)との比較例を示す分解斜視図である。
【図5】リールの変形状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10 リール
12 記録テープカートリッジ
40 ハブ
46 下フランジ
48 上フランジ
60 金型
62 可動金型
64 固定金型
66 スライドコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録テープが巻回される略円筒状のハブと、
前記ハブの一端側に設けられた環状の下フランジと、
前記ハブの他端側に設けられ、前記ハブに巻き回された記録テープの幅方向端部を前記下フランジと共に保持する環状の上フランジと、
を備え、
前記ハブと前記下フランジと前記上フランジとを一体成形したことを特徴とするリール。
【請求項2】
前記ハブの軸方向に対して直交する方向に沿ってスライドし、ハブの外周面と前記上フランジ及び前記下フランジの内面を形成するスライド金型と、
前記ハブの内周面及び前記上フランジの外面を形成する可動金型と、
前記下フランジの外面を形成する固定金型と、
で構成された金型で成形されることを特徴とする請求項1に記載のリール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリールを備えたことを特徴とする記録テープカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−66466(P2007−66466A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253622(P2005−253622)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)