説明

リール

【課題】 人体に有害な物質を使用することなく、防錆が図れるリールの提供を課題とする。
【解決手段】 樹脂材で成形され、記録テープTが巻回される有底円筒状のハブ22と、ハブ22の端部に設けられ、記録テープTの幅方向端部を保持するフランジ24、26と、を備えたリール20において、ハブ22の底部に露出状態で設けられ、ドライブ装置側のマグネットに吸着されるリールプレート46を、防錆メッキされていない、磁性を有するステンレス鋼とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピューター等のデータ保存用として使用される磁気テープ等の記録テープが巻回されるリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピューター等の外部記録媒体として使用される記録テープカートリッジには、磁気テープ等の記録テープが巻回された単一のリールが回転可能に収容されている。このリールの底部外面には、ケースのギア開口から露出し、ドライブ装置側の回転シャフトに形成された駆動ギアが噛合するリールギアが形成されている。
【0003】
また、そのリールギアの内側には、ドライブ装置側の回転シャフトに設けられたマグネットに吸着される金属製のリールプレートが、インサート成形等により、外部に露出した状態で設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このリールプレートは、マグネットで吸着可能なように、磁性を有する鉄が主成分とされている。しかしながら、鉄は経時により錆が発生するため、このリールプレートには、通常、防錆メッキが施されている。これにより、リールプレートにおいて錆の発生が防止されるが、この防錆メッキをする工程で使用される六価クロムは人体に有害であるという問題がある。
【特許文献1】特開2000−48526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、人体に有害な物質を使用することなく、防錆が図れるリールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のリールは、樹脂材で成形され、記録テープが巻回される有底円筒状のハブと、前記ハブの端部に設けられ、前記記録テープの幅方向端部を保持するフランジと、を備えたリールであって、前記ハブに、防錆メッキされていないステンレス製の環状部材を設けたことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ハブに設ける環状部材が防錆メッキされていないステンレス製なので、人体に有害な物質を使用することなく、リール(環状部材)の防錆を図ることができる。
【0008】
また、請求項2に記載のリールは、請求項1に記載のリールにおいて、前記環状部材が、前記ハブの底部に露出状態で設けられ、ドライブ装置側のマグネットに吸着されるリールプレートであり、該リールプレートが、磁性を有するステンレス鋼であることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、ハブの底部に露出状態で設けられるリールプレートが、磁性を有するステンレス鋼であるため、ドライブ装置側のマグネットで吸着できる。
【0010】
また、本発明に係る請求項3に記載のリールは、樹脂材で成形され、記録テープが巻回される有底円筒状のハブと、前記ハブの端部に設けられ、前記記録テープの幅方向端部を保持するフランジと、を備えたリールであって、ドライブ装置側のマグネットに吸着される、防錆メッキされていないリールプレートを、前記ハブの底部に略非露出状態で設けたことを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ドライブ装置側のマグネットに吸着されるリールプレートが、ハブの底部に略非露出状態で設けられるので、防錆メッキされていなくても、錆が発生し難くなる。したがって、人体に有害な物質を使用することなく、リールの防錆を図ることができる。
【0012】
そして、請求項4に記載のリールは、請求項3に記載のリールにおいて、前記リールプレートが、磁性を有するステンレス鋼であることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、ハブの底部に略非露出状態で設けられるリールプレートが、磁性を有するステンレス鋼であるため、ドライブ装置側のマグネットで吸着できる。また、リールプレートの一部が露出していても、リールプレートに錆が発生することはない。したがって、リールの防錆を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、人体に有害な物質を使用することなく、防錆が図れるリールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良な実施の形態を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明に係るリールは、単一でケース内に収容される1リールタイプでも、一対でケース内に収容される2リールタイプでも適用できるが、ここでは、1リールタイプの記録テープカートリッジを例に採って説明をする。また、その説明の便宜上、図1において、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を矢印Aで示し、それを記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とする。そして、矢印Aと直交する矢印B方向を右方向(右側)とする。
【0016】
まず、最初に、記録テープカートリッジ10の全体構成について簡単に説明する。図1乃至図3で示すように、記録テープカートリッジ10は、略矩形箱状のケース12を有している。このケース12は、ポリカーボネート(PC)等の樹脂製の上ケース14と下ケース16とが、それぞれ天板14Aの周縁に立設された周壁14Bと、底板16Aの周縁に立設された周壁16Bとを互いに当接させた状態で、ビス70等によって接合されて構成されている。なお、上ケース14と下ケース16を接合する手段は、これに限定されるものではなく、例えば超音波溶着により接合しても構わない。
【0017】
ケース12の内部には、リール20が1つだけ回転可能に収容されている。リール20は、合成樹脂製の有底円筒状のリールハブ22と、リールハブ22の両端部に設けられた上フランジ24及び下フランジ26とで構成されており、情報記録再生媒体としての磁気テープ等の記録テープTはリールハブ22の外周面に巻回される。そして、その記録テープTの幅方向の端部を上フランジ24及び下フランジ26で保持するようになっている。なお、リール20の詳細については後述する。
【0018】
また、ケース12の右壁12Bには、リール20に巻装された記録テープTを引き出すための開口18が形成されており、この開口18から引き出される記録テープTの自由端部には、ドライブ装置の引出部材(図示省略)によって係止(係合)されつつ引き出し操作されるリーダーピン30が固着されている。
【0019】
リーダーピン30の記録テープTの幅方向端部より突出した両端部には、環状溝32が形成されており、この環状溝32が引出部材のフック等に係止される。これにより、記録テープTを引き出す際に、フック等が記録テープTに接触して傷付けることがない構成である。
【0020】
また、ケース12の開口18の内側、即ち上ケース14の天板14A内面及び下ケース16の底板16A内面には、ケース12内においてリーダーピン30を位置決めして保持する上下一対のピン保持部36が設けられている。このピン保持部36は、記録テープTの引き出し側が開放された略半円形状をしており、直立状態のリーダーピン30の両端部34は、その開放側からピン保持部36内に出入可能とされている。
【0021】
また、ピン保持部36の近傍には、板ばね38が固定配置されるようになっており、この板ばね38の二股状の先端部がリーダーピン30の上下両端部34にそれぞれ係合してリーダーピン30をピン保持部36に保持するようになっている。なお、リーダーピン30がピン保持部36に出入する際には、板ばね38の先端部は適宜弾性変形してリーダーピン30の移動を許容する構成である。
【0022】
また、下ケース16の中央部には、リール20のリールギア44(後述)を外部に露出するためのギア開口40が設けられており、リール20はリールギア44がドライブ装置の駆動ギア(図示省略)に噛合されて、ケース12内で回転駆動されるようになっている。そして、リール20は、上ケース14及び下ケース16の内面にそれぞれ部分的に突設されて、ギア開口40と同軸的な円形の軌跡上にある内壁としての遊動規制壁42によってガタつかないように保持されている。
【0023】
また、開口18は、ドア50によって開閉されるようになっている。このドア50は、開口18を閉塞可能な大きさの矩形板状に形成され、ケース12の右壁12Bに沿って移動できるように、開口18内側の天板14A及び底板16Aには、ドア50の上下端部を摺動可能に嵌入させる溝部64が形成されている。
【0024】
また、ドア50の後端部中央には、シャフト52が突設されており、そのシャフト52には、コイルばね58が嵌挿されている。そして、シャフト52の後端には、そのコイルばね58を脱落防止とする拡開部54が形成されている。また、下ケース16には、そのシャフト52に嵌挿されたコイルばね58の後端を係止する係止突起62を有する支持台60が突設されている。
【0025】
したがって、ドア50は、シャフト52が支持台60上に摺動自在に支持されるとともに、コイルばね58の後端が係止突起62に係止されることにより、そのコイルばね58の付勢力によって、常時開口18の閉塞方向へ付勢される構成である。なお、開口18の開放時、シャフト52を支持する支持台66を支持台60の後方側に更に突設しておくことが好ましい。
【0026】
また、ドア50の前端部には、開閉操作用の凸部56が外方に向かって突設されている。この凸部56が、記録テープカートリッジ10の前壁12A側からのドライブ装置への装填に伴い、そのドライブ装置の開閉部材(図示省略)と係合するようになっており、これによって、ドア50がコイルばね58の付勢力に抗して開放される構成になっている。
【0027】
また、図3で示すように、下ケース16の底板16Aには、ドライブ装置の位置決め部材(図示省略)が挿入される位置決め用の非貫通穴部48、49が形成されている。右壁12B側の穴部48は、底面視略正方形状に形成され、左壁12C側の穴部49は、左右方向に長い底面視略楕円形状に形成されている。また、底板16Aの後壁12D側には、図示しないライトプロテクトの一部が露出する底面視略楕円形状の開口68が穿設されている。
【0028】
更に、上ケース14には、非貫通穴とされたビスボス74が複数個(図示のものは4個)、所定位置(上ケース14のコーナー部近傍)に形成されており、下ケース16には、貫通孔とされたビスボス76が複数個(図示のものは4個)、上ケース14と下ケース16とを重ね合わせたときに、ビスボス74と当接可能となる所定位置(下ケース16のコーナー部近傍)に形成されている。したがって、上ケース14と下ケース16とを重ね合わせたときに、これらビスボス74、76が当接し、この状態で、底板16Aの下面側からビス70が螺合される。
【0029】
以上のような構成の記録テープカートリッジ10において、次に本発明に係るリール20について詳細に説明する。図4で示すように、リール20は、軸心部を構成する有底円筒状のリールハブ22と、その底壁28側端部に設けられる下フランジ26とが樹脂材で一体成形されており、上フランジ24がリールハブ22の開口27側端部に超音波溶着されて構成される。
【0030】
したがって、リールハブ22と上フランジ24は、互いに相溶性がある樹脂材を用いて成形されており、これによって、リールハブ22と上フランジ24とを容易に超音波溶着できる構成になっている。なお、その樹脂材の種類としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・スチレン(AS)とアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)とポリカーボネート(PC)等の組み合わせが挙げられる。
【0031】
底壁28の下面側には、環状のリールギア44が形成されている。このリールギア44は、下ケース16の中央に設けられた円形のギア開口40から露出し、ドライブ装置の回転シャフト(図示省略)に備えられた駆動ギア(図示省略)と噛合して、リール20に回転力を伝達するようになっている。
【0032】
また、リールギア44の内側には、環状部材としての金属製リールプレート46がインサート成形により一体的に設けられており、底壁28の下面から露出している。このリールプレート46がドライブ装置の回転シャフトに備えられたマグネット(図示省略)に吸着されることにより、軸ずれが防止されるとともに、リールギア44と駆動ギアとの噛合状態を保持可能とされる。
【0033】
ここで、このリールプレート46は、防錆メッキされていない、磁性を有するステンレス鋼とされている。磁性を有するステンレス鋼とは、JIS表記で、SUS410又はSUS430である。したがって、防錆メッキをする際に使用される六価クロム等の人体に有害な物質を使用することなく、そのリールプレート46において、錆の発生を防止することができる。つまり、リール20において、防錆を図ることができる。
【0034】
また、リールプレート46が防錆メッキされていなくても、そのリールプレート46を底壁28に略非露出状態となるように埋設する構成にすれば、防錆を図ることができる。つまり、図7で示すように、金型80内において、複数(少なくとも3個)の円柱状凸部82によりリールプレート46を下方から支持し、この状態でゲート78から樹脂を流し込んでリールハブ22及び下フランジ26を一体成形する。
【0035】
これにより、図5で示すように、リールプレート46が埋設された状態のリールハブ22及び下フランジ26が成形される。なお、成形時に、金型80内において、複数(少なくとも3個)の凸部82によってリールプレート46を支持したことにより、図6で示すように、底壁28の下面には、リールプレート46の一部を露出させる小孔72が複数(例えば6個)形成されるが、リールプレート46の大半は底壁28に埋設されている(略非露出状態とされている)。したがって、このリールプレート46に錆は発生し難い。
【0036】
また更に、そのリールプレート46が、上記したような磁性を有するステンレス鋼(SUS410又はSUS430)であると、リールプレート46の一部がリールハブ22の底壁28から露出していても、そのリールプレート46に錆が発生することがない(錆の発生を確実に防止できる)ので好ましい。
【0037】
以上、説明したように、リールプレート46を、防錆メッキされていない、磁性を有するステンレス鋼としたり、リールハブ22の底壁28に略非露出状態となるように埋設する構成とすれば、リールプレート46の経時による錆の発生を防止することができる。つまり、防錆メッキをする際に使用される六価クロム等の人体に有害な物質を使用することなく、リール20(リールプレート46)の防錆を図ることができる。
【0038】
なお、上記実施例では、リールハブ22と下フランジ26を一体成形とし、上フランジ24をリールハブ22に溶着するタイプのリール20で説明をしたが、リールハブ22と上フランジ24が一体成形され、下フランジ26をリールハブ22に溶着するタイプのリールや、リールハブ22に上フランジ24及び下フランジ26の両方を溶着するタイプのリールでも同様である。つまり、本発明に係るリール20は、図示のものに限定されるものではない。
【0039】
また、例えば図8で示すように、リールハブ22の補強用(記録テープTが巻回されることによる倒れ込み防止用)に、そのリールハブ22の内周面に金属製の環状部材84が着設される場合があるが、この環状部材84を防錆メッキされていないステンレス鋼としてもよい。このように、リール20に設ける金属部品を防錆メッキされていないステンレス鋼とすれば、人体に有害な物質を使用することなく、リール20の防錆を図れるので好ましい。なお、環状部材84は、リールハブ22に埋め込まれるようにして設けられる場合もあるが、その場合も防錆メッキされていないステンレス鋼とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るリールを備えた記録テープカートリッジの概略斜視図
【図2】本発明に係るリールを備えた記録テープカートリッジを上から見た場合の概略分解斜視図
【図3】本発明に係るリールを備えた記録テープカートリッジを下から見た場合の概略分解斜視図
【図4】本発明に係るリールの概略断面図
【図5】本発明に係るリールの概略断面図
【図6】本発明に係るリールの概略底面図
【図7】本発明に係るリールを成形する金型を示す概略断面図
【図8】リールハブ補強用の環状部材が設けられたリールの概略断面図
【符号の説明】
【0041】
10 記録テープカートリッジ
12 ケース
20 リール
22 リールハブ
24 上フランジ
26 下フランジ
28 底壁(底部)
30 リーダーピン
46 リールプレート(環状部材)
84 環状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材で成形され、記録テープが巻回される有底円筒状のハブと、
前記ハブの端部に設けられ、前記記録テープの幅方向端部を保持するフランジと、
を備えたリールであって、
前記ハブに、防錆メッキされていないステンレス製の環状部材を設けたことを特徴とするリール。
【請求項2】
前記環状部材が、前記ハブの底部に露出状態で設けられ、ドライブ装置側のマグネットに吸着されるリールプレートであり、該リールプレートが、磁性を有するステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載のリール。
【請求項3】
樹脂材で成形され、記録テープが巻回される有底円筒状のハブと、
前記ハブの端部に設けられ、前記記録テープの幅方向端部を保持するフランジと、
を備えたリールであって、
ドライブ装置側のマグネットに吸着される、防錆メッキされていないリールプレートを、前記ハブの底部に略非露出状態で設けたことを特徴とするリール。
【請求項4】
前記リールプレートは、磁性を有するステンレス鋼であることを特徴とする請求項3に記載のリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−52860(P2007−52860A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237558(P2005−237558)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)