説明

ルーフパネルの開閉装置

【課題】駆動源の個数を抑えつつ、ルーフ部材が互いに干渉することがないルーフパネルの開閉装置を実現する。
【解決手段】開閉装置2は、前側及び後側リンク機構3,4を駆動する駆動モータ5と、リトラクタブルルーフ20を位置変更させるときに、フロント及びミドルフールパネル21,22の移動量とリアルーフパネル23及びバックウインドウ24の移動量とを異ならせるように駆動モータ5の駆動力を前側及び後側リンク機構3,4に伝達させて、フロント及びミドルフールパネル21,22とリアルーフパネル23及びバックウインドウ24との干渉を回避させるタイミング機構8を備えている。タイミング機構8は、一端部が前側リンク機構3のドライブリンク35に枢支結合される一方、他端部が後側リンク機構4のリアリンク43に枢支結合されたジョイントリンク6を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフパネルの開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車室を覆う全閉位置と該車室を開放し且つトランク内に収納される全開位置との間で開閉自在に設けられたルーフ部材を備えたルーフパネルの開閉装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に係る開閉装置のルーフ部材は、前から順に、フロントルーフ、ミドルルーフ、リアルーフの3分割構造となっている。フロントルーフとミドルルーフとは、第1の駆動モータが連結された第1リンク機構を介して車体に支持されている一方、リアルーフは第2の駆動モータが連結された第2リンク機構を介して車体に支持されている。
【0004】
このように構成されたルーフ部材の開動作について説明すると、まず、トランクリッドを開状態とした後に、第1の駆動モータを作動させてリアルーフをトランク内に収納する。その次に、第2の駆動モータを作動させてフロント及びミドルルーフを同時に移動させてトランク内に収納する。こうして、リアルーフと、フロント及びミドルルーフとをタイミングをずらして移動させることで、ルーフ部材を全閉位置から全開位置に移動させる際に、フロント及ミドルルーフとリアルーフとが干渉することを防止している。一方、ルーフ部材の閉動作については、上述の開動作と逆の手順で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−306266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に係るルーフパネルの開閉装置では、第1リンク機構に連結されたフロント及びミドルフールと第2リンク機構に連結されたリアルーフとの干渉を避けるべく、第1リンク機構と第2リンク機構とを別々の駆動モータでタイミングをずらして駆動しており、かかる構成では、駆動モータが独立したリンク機構の個数だけ必要になる。
【0007】
しかしながら、駆動モータの個数が増えるとコストが増大すると共に、駆動モータの配設スペースも必要になって省スペース化を図ることができない。さらには、ルーフパネルを開閉させる際の制御内容も複雑になる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駆動源の個数を抑えつつ、ルーフ部材が互いに干渉することがないルーフパネルの開閉装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、車室の前部を覆う前側ルーフ部材及び該車室の後部を覆う後側ルーフ部材と、上記前側及び後側ルーフ部材を、上記車室を覆う全閉位置と上記車室を開放する全開位置とに相互に位置変更させるリンク機構とを備えたルーフパネルの開閉装置が対象である。
【0010】
そして、上記リンク機構は、上記前側ルーフ部材を移動させる前側リンク機構と、上記後側ルーフ部材を移動させる後側リンク機構とを有し、上記前側及び後側リンク機構を駆動する駆動源と、上記前側及び後側ルーフ部材を位置変更させるときに、該前側ルーフ部材の移動量と該後側ルーフ部材の移動量とを異ならせるように上記駆動源の駆動力を上記前側及び後側リンク機構に伝達させて、該前側ルーフ部材と該後側ルーフ部材との干渉を回避させるタイミング機構とをさらに備え、上記タイミング機構は、一端部が上記前側リンク機構に含まれる第1リンク部材に枢支結合される一方、他端部が上記後側リンク機構に含まれる第2リンク部材に枢支結合されて、上記駆動源の駆動力を該後側リンク機構から該前側リンク機構へ伝達させるジョイントリンクを有し、上記前側及び後側ルーフ部材を上記全閉位置から位置変更させ始めるときに、該第2リンク部材を該第1リンク部材よりも大きく回動させることによって該後側ルーフ部材が該前側ルーフ部材よりも大きく移動するように、上記駆動源の駆動力を上記前側及び後側リンク機構に伝達させるものとする。
【0011】
上記の構成の場合、上記前側及び後側ルーフ部材は、同じ駆動源で駆動される別々のリンク機構、即ち、上記前側リンク機構と上記後側リンク機構とを介して移動させられる。ここで、上記タイミング機構を設けることによって、該前側ルーフ部材の移動量と該後側ルーフ部材の移動量とを異ならせるように駆動源の駆動力を前側及び後側リンク機構に伝達させることができ、該前側ルーフ部材と後側ルーフ部材とが干渉することを回避させることができる。
【0012】
また、上記タイミング機構により、前側及び後側ルーフ部材が全閉位置から位置変更を開始するときに、後側ルーフ部材が前側ルーフ部材よりも大きく移動するように駆動源の駆動力を上記前側及び後側リンク機構に伝達させることで、前側及び後側ルーフ部材が全閉位置から位置変更を開始するときの前側及び後側ルーフ部材の干渉を回避することができる。
【0013】
また、上記駆動源は、上記後側リンク機構に連結され、上記ジョイントリンクは、上記前側及び後側ルーフ部材を上記全閉位置から位置変更させ始めるときには、前記駆動力のうち該前側リンク機構側の端部を中心として該ジョイントリンクを回転させる成分がしだいに減少し且つ該前側リンク機構側の端部が移動するように該ジョイントリンクを移動させる成分がしだいに増加するように、該後側リンク機構から該前側リンク機構へ該駆動源の駆動力を伝達させるものとする。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記駆動源は、上記後側リンク機構に連結され、上記前側リンク機構は、一端部が車体側に枢支結合され且つ他端部が上記前側ルーフ部材に枢支結合された前側リンク部材を有し、上記第1リンク部材は、一端部が車体側に枢支結合され且つ他端部が該前側リンク部材に枢支結合され、上記第2リンク部材は、一端部が車体側に枢支結合され且つ他端部が上記後側ルーフ部材に結合されているものとする。
【0015】
上記の構成の場合、前側及び後側ルーフ部材が全閉位置から位置変更を開始するときに、上記後側伝達リンク部材が上記前側伝達リンク部材よりも大きく回動するように上記タイミング機構のジョイントリンクが駆動源の駆動力を伝達させることによって、後側リンク機構を前側リンク機構よりも大きく回動させて、後側ルーフ部材を前側ルーフ部材よりも大きく位置変更させることができる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、上記前側及び後側ルーフ部材の上記全閉位置への位置変更が完了するときには、上記ジョイントリンクの他端部は、上記後側伝達リンク部材の車体側の枢支結合部回りに回動して、該ジョイントリンクの一端部と共に該枢支結合部を挟んで一直線上に並ぶ位置である思案点を超えた位置に位置するものとする。
【0017】
上記の構成の場合、前側及び後側ルーフ部材の全閉位置への位置変更が完了するときに、ジョイントリンクの他端部を後側伝達リンク部材の上記枢支結合部回りに回動させて上記思案点を超えた位置に位置させることによって、前側及び後側ルーフ部材が外乱等によって全閉位置から位置変更し難くすることができる。つまり、該ジョイントリンクの他端部を該思案点を超えた位置まで回動させておくと、再び思案点を超えて反対方向(前側及び後側ルーフ部材が全閉位置から開く方向)に回動させるためには、駆動源からの駆動力等、或る程度の大きさを有する駆動力を付与する必要がある。そのため、該ジョイントリンクの他端部を該思案点を超えた位置まで回動させておくことで、前側及び後側ルーフ部材を全閉位置で保持するための保持機構と共に該前側及び後側ルーフ部材を全閉位置に保持する、又は、該タイミング機構だけで前側及び後側ルーフ部材を全閉位置に保持することができる。
【0018】
また、前側及び後側ルーフ部材が全閉位置に位置するときに、ジョイントリンクの他端部を上記思案点を超えた位置に位置させておくことによって、前側及び後側ルーフ部材を該全閉位置から位置変更させ始めるときには、ジョイントリンクの他端部を該思案点を超えて、前側及び後側ルーフ部材を全閉位置に位置変更させるときとは反対方向に回動させることになる。このとき、枢支結合部回りに回動する後側伝達リンク部材からジョイントリンクの他端部が受ける駆動力の方向は、ジョイントリンクをその一端部回りに回動させる方向と一致又は近似するようになるため、ジョイントリンクは、主として、その一端部を中心に回動してその姿勢を変更し、その一端部が前側伝達リンク部材をその枢支結合部回りに回動させるようには少ししか移動しない。その結果、前側及び後側ルーフ部材を全閉位置から位置変更させ始めるときには、後側伝達リンク部材からジョイントリンクを介した前側伝達リンク部材への駆動力の伝達はあまり行われず、後側伝達リンク部材を前側伝達リンク部材と比べて大きく回動させることができる。
【0019】
第5の発明は、第1〜第4の何れか1つの発明において、上記前側リンク機構は、一端部が車体側に枢支結合される一方、他端部が上記前側ルーフ部材に枢支結合される第1前側リンク部材と、一端部が該第1前側リンク部材よりも車両後側において車体側に枢支結合される一方、他端部が該第1前側リンク部材よりも車両後側において上記前側ルーフ部材に枢支結合される第2前側リンク部材とを有し、上記前側ルーフ部材は、上記第1前側及び第2前側リンク部材の他端部が枢支結合される第1前側ルーフ部材と、該第1前側ルーフ部材の車両後側に位置して上記第2前側リンク部材に結合される第2後側ルーフ部材との分割構造になっているものとする。
【0020】
上記の構成の場合、上記前側ルーフ部材は、第1前側ルーフ部材と第2前側ルーフ部材との分割構造となっている。つまり、これら第1前側ルーフ部材と第2前側ルーフ部材と上記後側ルーフ部材とで、少なくとも3つのルーフ部材を位置変更させる必要ある。かかる場合には、2つ以上のリンク機構によってルーフ部材を位置変更させる構成が比較的容易に実現できる。そして、複数のリンク機構を1つの駆動源で駆動する構成においては、上記タイミング機構による前側ルーフ部材と後側ルーフ部材との干渉の回避が、特に有効となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記タイミング機構によって、上記前側及び後側ルーフ部材を位置変更させるときに、該前側ルーフ部材の移動量と該後側ルーフ部材の移動量とを異ならせるように上記駆動源の駆動力を上記前側及び後側リンク機構に伝達させることによって、複数のリンク機構を1つの駆動源で駆動する場合であっても、前側ルーフ部材と後側ルーフ部材との干渉を容易に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るリトラクタブルルーフの開閉装置を備えた車両において、リトラクタブルルーフが全閉状態のときの車両を示す概略側面図である。
【図2】リトラクタブルルーフが全閉状態から少し位置変更したときの車両を示す概略側面図である。
【図3】リトラクタブルルーフの大半が格納室に格納された状態のときの車両を示す概略側面図である。
【図4】リトラクタブルルーフが格納状態のときの車両を示す概略側面図である。
【図5】開閉装置を車両後方から見た概略斜視図である。
【図6】リトラクタブルルーフが全閉状態のときの開閉装置を示す概略側面図である。
【図7】リトラクタブルルーフが全閉状態から少し位置変更したときの開閉装置を示す概略側面図である。
【図8】リトラクタブルルーフの大半が格納室に格納された状態のときの開閉装置を示す概略側面図である。
【図9】リトラクタブルルーフが格納状態のときの開閉装置を示す概略側面図である。
【図10】リトラクタブルルーフが格納状態のときのジョイントリンクの状態を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
本発明の実施形態に係る車両1は、図1〜図4に示すように、リトラクタブルルーフ20を備えたルーフ部材の開閉装置2が搭載されている。リトラクタブルルーフ2は、車室10の上方を覆うフロントルーフパネル21及びミドルルーフパネル22と、車室10の後方を覆うリアルーフパネル23及びバックウインドウ24とを有している。そして、ルーフパネルの開閉装置2は、図5〜9に示すように、このリトラクタブルルーフ2と、フロント及びミドルルーフパネル21,22を車両1に連結している前側リンク機構3と、該リアルーフパネル23及びバックウインドウ24を車両1に連結している後側リンク機構4と、該前側及び後側リンク機構3,4を駆動する駆動モータ5とを備えている。
【0025】
上記フロントルーフパネル21は、車室10前部の上方を覆うように設けられている。上記ミドルルーフパネル22は、該フロントルーフパネル21の後方に隣接して設けられて、車室10後部の上方を覆うように設けられている。このフロントルーフパネル21が第1前側ルーフ部材を構成し、ミドルルーフパネル22が第2前側ルーフ部材を構成し、これらフロント及びミドルルーフパネル21,22で前側ルーフ部材を構成する。
【0026】
上記リアルーフパネル23は、該ミドルルーフパネル22と後述する車両1後部のトランクリッド11との間のスペースを覆うように設けられている。このリアルーフパネル23の中央部には開口が形成されており、この開口を塞ぐように上記バックウインドウ24が設けられている。バックウインドウ24は、図5に示すように、その上端部が車幅方向両端部において、ヒンジ24a(図5では、車幅方向右側の部分のみ図示)を介してリアルーフパネル23に取り付けられている。すなわち、バックウインドウ24は、ヒンジ24aを中心にリアルーフパネル23の内方(図1における車室側の空間)へ回動できるように構成されている。これらリアルーフパネル23とバックウインドウ24が後側ルーフ部材を構成する。
【0027】
車両1には、車室10の後方にトランクルームが形成されていると共に、車室10とトランクルームとの間には上記リトラクタブルルーフ20が格納される格納室12が上方に開口して形成されている。これらトランクルーム及び格納室12は、その上方開口がトランクリッド11によって開閉可能に閉塞されている。
【0028】
ここで、リトラクタブルルーフ20の位置変更動作、つまりリトラクタブルルーフ20が車室10を覆う全閉位置(この状態を全閉状態という。)から車室10を開放して格納室12に格納された格納位置(全閉位置に相当する。この状態を格納状態という。)への切り換え動作について、図1〜4を参照しながら簡単に説明する。尚、以下では、リトラクタブルルーフ2の全閉位置から格納位置への切り換え動作を開動作と、格納位置から全閉位置への切り換え動作を閉動作という。
【0029】
図1に示す全閉位置においては、フロントルーフパネル21の前端部が、車両1のフロントヘッダ13と当接した状態で、該フロントヘッダ13に対してロック機構(図示省略)によって保持されている。また、フロントルーフパネル21の後端部とミドルルーフパネル22の前端部とが、ミドルルーフパネル22の後端部とリアルーフパネル23の前端部とが、リアルーフパネル23の下端部とトランクリッド11の前端部とが、およびリアルーフパネル23の開口周縁部とバックウインドウ24の外周縁部とがそれぞれウェザストリップ(図示省略)を介して当接した状態となっている。こうして、フロント、ミドル、リアルーフパネル21,22,23及びバックウインドウ24とで車室10を覆っている。
【0030】
まず、トランクリッド11が、図示省略の駆動源及びリンク機構によって、図1に示す全閉位置から、図2に示す全開位置へと移動して、格納室12の上方開口を開放する。
【0031】
次に、詳しくは後述する駆動モータ5を作動させることによって、フロントルーフパネル21及びミドルルーフパネル22と、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24とが後方へ回動(図1において時計回り方向に回動)し始める。尚、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24とトランクリッド11とが干渉しない限りにおいては、上述のトランクリッド11の移動と並行して、リトラクタブルルーフ20の移動を行ってもよい。
【0032】
駆動モータ5の作動を継続すると、やがて、図3に示すように、フロントルーフパネル21とミドルルーフパネル22とは、後方に回動して、それぞれの車室側の面を内側にした山折り状態となる。一方、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24は、それぞれの車室側の面がおおよそ上方を向くように回動する。このとき、バックウインドウ24は、リアルーフパネル23の内方(図1の全閉位置における車室側)へ没入していく。
【0033】
そして、駆動モータ5の作動をさらに継続していくと、リトラクタブルルーフ20は、図4に示すように、格納室12内に格納された状態となる。このとき、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24は、車室側の面が完全に上方を向いた状態で格納されている。また、バックウインドウ24は、リアルーフパネル23の内方に没入した状態となっている。こうすることで、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24が格納されたときの厚み(格納室12内における上下方向寸法)を低減している。そして、フロント及びミドルフールパネル21,22は、それぞれの車室側の面が対向するように折り畳まれて上下に重なった状態で、上記リアルーフパネル23及びバックウインドウ24の内側の空間に収まっている。
【0034】
リトラクタブルルーフ20が格納室12に格納された後に、トランクリッド11が、全開位置から格納室12を閉塞する全閉位置へと移動する。こうして、リトラクタブルルーフ20は、車室10を開放する格納状態になる。
【0035】
尚、リトラクタブルルーフ20の閉動作は、上記とは逆になる。
【0036】
このように動作するリトラクタブルルーフ20は、図5〜9に示すように、上記前側リンク機構3及び後側リンク機構4を介して車両1の車体に連結されている。これら前側及び後側リンク機構3,4は、リトラクタブルルーフ20の車室側において、車幅方向の両側位置にそれぞれ配設されている。図5〜9においては、車両右側の前側及び後側リンク機構3,4を図示している。
【0037】
上記前側リンク機構3は、フロントルーフパネル21に取り付けられたルーフ側ブラケット31と、車体側に取り付けられたメインブラケット32と、それぞれ該ルーフ側ブラケット31に枢支結合されると共にメインブラケット32に枢支結合される第1前側リンク33及び第2前側リンク34を含んでいる。
【0038】
ルーフ側ブラケット31は、フロントルーフパネル21の車幅方向両端部に車室内側から取り付けられている。
【0039】
メインブラケット32は、格納室12内の車幅方向両端において車体に取り付けられている。
【0040】
第1前側リンク33は、一端部がルーフ側ブラケット31に枢支結合されている一方、他端部がメインブラケット32に枢軸33aを介して枢支結合されている。また、第2前側リンク34は、一端部が該第1前側リンク33の一端部よりも後方位置でルーフ側ブラケット31に枢支結合されている一方、他端部が該第1前側リンク33の他端部よりも後方位置でメインブラケット32に枢軸34aを介して枢支結合されている。これら第1及び第2前側リンク33,34は、リトラクタブルルーフ20が全閉状態であるときに、フロント、ミドル、リアルーフパネル21,22,23の側端縁に沿う形状となっている(図6参照)。そして、第2前側リンク34には、第1及び第2ブラケット34b,34cを介してミドルルーフパネル22が取り付けられている。この第1前側リンク33が第1前側リンク部材を構成し、第2前側リンク34が第2前側リンク部材を構成する。
【0041】
こうして、前側リンク機構3は、ルーフ側ブラケット31、メインブラケット32、第1前側リンク33及び第2前側リンク34で、いわゆる4節リンクを構成している。
【0042】
また、前側リンク機構3は、メインブラケット32に枢支結合されたドライブリンク35と、該ドライブリンク35と上記第2前側リンク34とを連結するコネクティングリンク36とをさらに含んでいる。
【0043】
ドライブリンク35は、第2前側リンク34の枢軸34aの下方において枢軸35aを介してメインブラケット32に枢支結合されている。そして、ドライブリンク35は、図5に示すリトラクタブルルーフ20の全閉状態において、第2前側リンク34の他端部をその後方を回って迂回して該他端部の上方まで延びる鉤状部35bと、枢軸35aよりも下方に形成された結合部35cとを有している。この結合部35cには、後述するジョイントリンク6が枢支結合される。
【0044】
コネクティングリンク36は、一端部がドライブリンク35の鉤状部35bの先端部に枢支結合される一方、他端部が第2前側リンク34の枢軸34aの近傍部分に枢支結合されている。
【0045】
一方、上記後側リンク機構4は、上記メインブラケット32と、車体側に取り付けられた車体側ブラケット41と、リアウインドウ24に取り付けられたウインドウ側ブラケット42と、メインブラケット32及びリアルーフパネル23にそれぞれ枢支結合されるリアリンク43と、車体側ブラケット41及びウインドウ側ブラケット42にそれぞれ枢支結合されるコントロールリンク44とを含んでいる。
【0046】
車体側ブラケット41は、格納室12内の車幅方向両端においてメインブラケット32の車幅方向内側の位置で車体に取り付けられている(図5参照)。
【0047】
ウインドウ側ブラケット42は、リアウインドウ24の下端部における車幅方向端部に取り付けられている。
【0048】
リアリンク43は、メインブラケット32に枢支結合される枢支部43aとリアルーフパネル23に取り付けられる取付部43bとを有している。枢支部43aは、上記ドライブリンク35の枢軸35aよりも後方位置において枢軸43cを介してメインブラケット32に枢支結合されている。取付部43bは、図6に示すリトラクタブルルーフ20の全閉状態において、枢支部43aから上方に延びるようにして該枢支部43aに結合されている。この取付部43bは、3箇所でリアルーフパネル23に取り付けられている。
【0049】
また、枢支部43aには、枢軸43cを中心としたセクタギヤ43dが結合されている。さらに、枢支部43aには、図6に示すリトラクタブルルーフ20の全閉状態において、枢軸43cよりも後方に形成された結合部43eを有している。この結合部43eには、後述するジョイントリンク6が枢支結合される。
【0050】
こうして、後側リンク機構4は、メインブラケット32及び車体側ブラケット41を含む車体側の部材と、リアリンク43及びリアルーフパネル23と、バックウインドウ24及びウインドウ側ブラケット42と、コントロールリンク44とで、いわゆる4節リンクを構成している。
【0051】
また、メインブラケット32には、上記駆動モータ5が取り付けられている。駆動モータ5は、電動式のモータである。また、駆動モータ5は、回転駆動力を出力する駆動ギヤ51を有しており、この駆動ギヤ51が上記リアリンク43のセクタギヤ43dと噛合している。つまり、駆動モータ5によって、後側リンク機構4のリアリンク43が直接的に駆動される。ここで、駆動ギヤ51とセクタギヤ43dとのギヤ比は、駆動モータ5の回転駆動力が減速されてセクタギヤ43dに伝達するように設定されている。この駆動モータ5が駆動源を構成する。
【0052】
また、後側リンク機構4のリアリンク43と、前側リンク機構3のドライブリンク35とはジョイントリンク6で連結されている。詳しくは、ジョイントリンク6は、一端部がドライブリンク35の結合部35cに一端側枢軸61を介して枢支結合され、中間部がセクタギヤ43dをその下方を回って迂回して後方に延び、他端部がリアリンク43の結合部43eに他端側枢軸62を介して枢支結合されている。つまり、メインブラケット32と、該メインブラケット32に対して枢軸35aを介して枢支結合されたドライブリンク35と、該メインブラケット32に対して枢軸43cを介して枢支結合されたリアリンク43と、該ドライブリンク35及びリアリンク43にそれぞれ枢支結合され両者を連結するジョイントリンク6とは、いわゆる4節リンクを構成している。その結果、後側リンク機構4のリアリンク43が駆動モータ5によって駆動されて枢軸43c回りに回動すると、ジョイントリンク6を介してドライブリンク35も枢軸35a回りに回動する。すなわち、駆動モータ5の駆動力が、ジョイントリンク6を介して前側リンク機構3にも伝達して前側リンク機構3も駆動される。このドライブリンク35が第1リンク部材を構成し、リアリンク43が第2リンク部材を構成する。
【0053】
このように構成された前側及び後側リンク機構3,4の詳細な動作を、リトラクタブルルーフ20の開閉動作と共に、図6〜9を参照して説明する。尚、以下の説明において、「時計回り」及び「反時計回り」はそれぞれ、図6〜9における時計回り及び反時計回りを意味する。
【0054】
図6は、全閉状態におけるリトラクタブルルーフ20並びに前側及び後側リンク機構3,4を示している。
【0055】
全閉状態においては、上述の如く、フロントルーフパネル21の前端部がフロントヘッダ13に当接した状態で保持されていると共に、フロント、ミドル、リアルーフパネル21,22,23及びバックウインドウ24が各部材の隙間をウェザストリップ(図示省略)でシールされた状態で車室10を覆っている。
【0056】
図7は、リトラクタブルルーフ20が全閉状態から格納状態へ向けて開動作を始めた直後の状態を示している。
【0057】
まず、駆動モータ5を、リアリンク43を車両後方へ回動させる方向(即ち、時計回り)に作動させることによってリトラクタブルルーフ20の開動作が開始される。詳しくは、駆動モータ5を反時計回りに作動させ始めると、セクタギヤ43dによってトルクが増幅され、後側リンク機構4のリアリンク43が、枢軸43cを中心に時計回りに回動を開始する。このリアリンク43の回動と共に、リアルーフパネル23が後方へ回動を開始する。また、リアルーフパネル23が回動すると、後側リンク機構4の一部を構成するバックウインドウ24も後方へ回動し始める。このとき、リアルーフパネル23とバックウインドウ24とは4節リンクの一部を構成しているため、該リアルーフパネル23及びバックウインドウ24はそれぞれの姿勢が規制されながら後方へ回動する。詳しくは、全閉状態においてリアルーフパネル23の開口に対してウェザストリップ(図示省略)を介してシールされた状態で嵌り込んでいたバックウインドウ24は、後方への回動が進むにつれて、ヒンジ24aの回転軸を中心にリアルーフパネル23に対して回転して該リアルーフパネル23の内方に没入し始める(図8,9参照)。
【0058】
こうしてリアリンク43が時計回りに回動すると、リアリンク43の結合部43eに枢支結合されたジョイントリンク6の他端部も枢軸43cを中心に時計回りに回動する。そうすると、ジョイントリンク6は、その一端側枢軸61回りに回転して姿勢を変えつつ、該一端側枢軸61をドライブリンク35の枢軸35aを中心に時計回りに回動させるように移動する。その結果、ドライブリンク35が枢軸35aを中心に時計回りに回動し、コネクティングリンク36を介して第2前側リンク34が枢軸34aを中心に時計回りに回転駆動される。
【0059】
そして、第2前側リンク34が枢軸34aを中心に時計回りに回動すると、該第2前側リンク34と共に4節リンクを構成するフロントルーフパネル21が後方へ回動を始める。また、第2前側リンク34に取り付けられたミドルルーフパネル22も該第2前側リンク34と共に時計回りに、即ち、後方へ回動し始める。
【0060】
このように駆動モータ5を作動させると、その駆動力が後側リンク機構4に伝達してリアルーフパネル23及びバックウインドウ24を後方へ回動させ始めると共に、後側リンク機構4に伝達した駆動力がジョイントリンク6を介して前側リンク機構3にも伝達してフロント及びミドルルーフパネル21,22を後方へ回動させ始める。
【0061】
図8は、リトラクタブルルーフ20が全閉位置から格納位置まで移動する過程において、全閉位置からおおよそ2/3の過程が経過した状態を示している。
【0062】
上記駆動モータ5の作動が継続してリトラクタブルルーフ20の開動作が進むと、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24は、それらのおおよそ半分くらいが格納室12に格納された状態となる。このとき、該リアルーフパネル23及びバックウインドウ24は、その車室側の面がおおよそ上方を向く状態となっている。また、バックウインドウ24は、開動作の開始直後よりもさらに、リアルーフパネル23の内方(図6における車室側の空間)へ没入している。
【0063】
また、フロントルーフパネル21は、第1及び第2前側リンク33,34等で構成される4節リンクによって、全閉状態と略同じ姿勢が維持されたまま車両後方へ移動している。一方、ミドルルーフパネル22は、第2前側リンク34の回動に併せて、その車室側の面が前方を、その車外側の面が後方を向く状態まで回動している。こうして、フロント及びミドルルーフパネル21,22は、それぞれの車室側の面が近接するように折り畳まれていく。
【0064】
図9は、格納状態におけるリトラクタブルルーフ20並びに前側及び後側リンク機構3,4を示している。
【0065】
上記駆動モータ5の作動をさらに継続させると、リトラクタブルルーフ20が格納室12に完全に格納された状態となる。
【0066】
このとき、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24は、バックウインドウ24が略水平な状態となるまで回動して、格納室12内に格納されている。また、バックウインドウ24は、リアルルーフパネル23の内方(図6における車室側の空間)へ最も没入した状態となっている。
【0067】
一方、フロント及びミドルルーフパネル21,22は、それぞれの車室内側の面が互いに対向して上下に折り重なった状態となる。このとき、ミドルルーフパネル22は、格納室12に格納されたリアルーフパネル23の内方の空間内に収まった状態となっている。また、フロントルーフパネル21は、一部が格納室12よりも上方に露出しているが、大半の部分が格納室12内に格納された状態となっている。
【0068】
こうして、フロント、ミドル、リアルールパネル21,22,23及びバックウインドウ24が格納室12内に格納された後に、トランクリッド11が全閉状態にされている。
【0069】
尚、リトラクタブルルーフ20は、上記とは逆の動きで、格納位置から全閉位置へとその位置を変更する。
【0070】
このように全閉位置と格納位置との間で位置変更されるリトラクタブルルーフ20においては、各ルーフ部材が干渉し合わないように位置変更が行われる必要がある。特に、本実施形態では、別々のリンク機構で移動させられるフロント及びミドルフールパネル21,22(前側リンク機構3によって位置変更)と、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24(後側リンク機構4によって位置変更)との干渉を回避する必要がある。
【0071】
そこで、本実施形態に係る開閉装置2は、リトラクタブルルーフ20の全閉位置からの開動作開始直後において、駆動モータ5の駆動力を後側リンク機構4から前側リンク機構3へ抑制して伝達させるタイミング機構8を備えている。このタイミング機構8は、上記ドライブリンク35とリアリンク43とジョイントリンク6とで構成されている。
【0072】
詳しくは、リアリンク43が回動すると、上記ジョイントリンク6の他端側枢軸62には、リアリンク43の枢軸43cを中心として他端側枢軸62を通る円の該他端側枢軸62における接線方向(枢軸43cを中心とするジョイントリンク6の他端側枢軸62の回転半径に直交する方向)へ駆動力が付与される。そして、この接線方向の駆動力のうちジョイントリンク6の他端側枢軸62と一端側枢軸61とを結ぶ直線と直交する方向の成分(以下、回転成分という)によって、ジョイントリンク6は、その一端側枢軸61を中心に回転して姿勢を変更する。それと共に、この接線方向の駆動力のうちドライブリンク35の枢軸35aを中心としてジョイントリンク6の一端側枢軸61通る円の該一端側枢軸61における接線方向(即ち、枢軸35aを中心とするジョイントリンク6の一端側枢軸61の回転半径に直交する方向)と平行な成分(以下、移動成分という)によってジョイントリンク6は、その一端側枢軸61がドライブリンク35の枢軸35aを中心に回動するように移動する。このように、ジョイントリンク6は、上記駆動力のうちの回転成分と移動成分とが相俟って、その姿勢を変更しつつ、一端側枢軸61がドライブリンク35の枢軸35aを中心に回動するように移動する。
【0073】
ここで、リトラクタブルルーフ20の全閉状態においては、ジョイントリンク6の他端側枢軸62は、リアリンク43の枢軸43cを挟んで、該ジョイントリンク6の一端側枢軸61と反対側の位置に位置している(厳密には、ジョイントリンク6の他端側枢軸62は、一端側枢軸61とリアリンク43の枢軸43cとを結ぶ直線よりも、リトラクタブルルーフ20を開動作させるときのセクタギヤ43dの回転方向とは反対側(即ち、反時計回り側)に所定角度(例えば、5°)だけ入り込んだ位置(以下、停止位置という)に位置している)。この停止位置からリトラクタブルルーフ20を回動動作させる方向にセクタギヤ43dが回転するときに、ジョイントリンク6の他端側枢軸62が受ける駆動力の方向(即ち、リアリンク43の枢軸43cを中心とする円の該他端側枢軸62における接線方向)は、ジョイントリンク6の一端側枢軸61を中心とする円の該他端側枢軸62における接線方向と略一致する。つまり、停止位置において、ジョイントリンク6が受ける駆動力は、ほとんどが回転成分となる。その結果、リトラクタブルルーフ20の開動作が開始してしばらくの間は、ジョイントリンク6は主に一端側枢軸61を中心に回転して姿勢を変更し、その一端側枢軸61が枢軸35a回りに回動するようなジョイントリンク6の移動は少ししか行われない。換言すれば、ジョイントリンク6の他端側枢軸62に付与された駆動力は、ジョイントリンク6の姿勢変更に主に用いられ、一端側枢軸61がドライブリンク35の枢軸35a回りに回動するようなジョイントリンク6の移動にはあまり使われない。したがって、上述のリトラクタブルルーフ20の開動作が開始してしばらくの間は、ドライブリンク35があまり回動せず、後側リンク機構4から前側リンク機構3へのジョイントリンク6を介した駆動力の伝達はあまり行われない。
【0074】
このように後側リンク機構4から前側リンク機構3へは駆動力があまり伝達しないも一方、リアリンク43は駆動モータ5の作動に応じて回動しているため、前側リンク機構3に連結されたフロント及びミドルルーフパネル21,22は小さくしか移動しない一方、後側リンク機構4に連結されたリアルーフパネル23及びバックウインドウ24は大きく移動する。その結果、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24が先に後方へ大きく回動することによって、フロント及びミドルルーフパネル21,22の後方に該フロント及びミドルルーフパネル21,22が移動可能なスペースが確保される。
【0075】
リアリンク43が回動していくと、やがて、ジョイントリンク6の他端側枢軸62に付与される駆動力のうちの回転成分と移動成分との比率が変化し、リトラクタブルルーフ20の開動作の開始直後に比べて、駆動力が後側リンク機構4から前側リンク機構3へ効率良く伝達するようになり、フロント及びミドルルーフパネル21,22がより大きく後方へ回動し始める。
【0076】
こうして、フロント及びミドルルーフパネル21,22が後方へ大きく回動し始めたときには、該フロント及びミドルルーフパネル21,22の後方には、上述の移動可能なスペースが確保されているため、該フロント及びミドルルーフパネル21,22とリアルーフパネル23及びバックウインドウ24との干渉が回避される。
【0077】
このように、ジョイントリンク6は、その一端側枢軸61及び他端側枢軸62並びにリアリンク43の枢軸43cとの位置関係によって、後側リンク機構4から前側リンク機構3へ、伝達効率を変化させながら駆動力を伝達させている。つまり、リトラクタブルルーフ20の全閉位置付近では、後側リンク機構4から前側リンク機構3への駆動力の伝達効率が相対的に低く、リトラクタブルルーフ20の全閉位置付近以外では、後側リンク機構4から前側リンク機構3への駆動力の伝達効率が相対的に高くなっている。
【0078】
ところで、駆動モータ5を駆動ギヤ51が反時計回りに回転するように作動させることによって、リアリンク43及びドライブリンク35が上述の説明とは反対回り、即ち反時計回りに回動して、リトラクタブルルーフ20が格納状態から全閉状態へと移動していく。この閉動作においても、リトラクタブルルーフ20の全閉位置付近では、後側リンク機構4から前側リンク機構3への駆動力の伝達効率が相対的に低いため、フロント及びミドルルーフパネル21,22の移動量が相対的に小さい一方、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24の移動量が相対的に大きくなる。つまり、リトラクタブルルーフ20が全閉状態となるときには、まず、フロント及びミドルルーフパネル21,22が、フロントルーフパネル21の前端がフロントヘッド13に近接する位置まで位置変更されてほとんど全閉状態と同じ状態となり、その後、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24が大きく移動してリアルーフパネル23の前端がミドルルーフパネル23の後端と当接する状態となる。このように、リトラクタブルルーフ20の近傍では、フロント及びミドルルーフパネル21,22の移動量が相対的に小さい一方、リアルーフパネル23及びバックウインドウ24の移動量が相対的に大きいため、リトラクタブルルーフ20を全閉状態へ閉動作するときも、フロント及びミドルルーフパネル21,22とリアルーフパネル23及びバックウインドウ24との干渉を回避することができる。
【0079】
また、リトラクタブルルーフ20を全閉状態とするときには、図10に示すように、ジョイントリンク6の他端側枢軸62が、リアリンク43の枢軸43cを挟んでジョイントリンク6の一端側枢軸61と反対側の位置であって、ジョイントリンク6の一端側枢軸61とリアリンク43の枢軸43cとの結ぶ直線Xを越えた位置まで該リアリンク43の枢軸43c回りに回動させている。つまり、リトラクタブルルーフ20が全閉状態のときに、ジョイントリンク6の他端側枢軸62を、ジョイントリンク6の一端側枢軸61、リアリンク43の枢軸43c、ジョイントリンク6の他端側枢軸62がこの順で一直線上に並ぶ位置である思案点を超えた位置まで回動させることによって、ジョイントリンク6の状態を保持することができる。すなわち、ジョイントリンク6の他端側枢軸62を思案点を超えた位置に位置させると、再度思案点を超えて反対方向へ回動するには或る程度の回転駆動力が必要となる。そのため、車両走行時の振動等により、ジョイントリンク6の他端側枢軸62が思案点を超えて反対方向、即ち、リトラクタブルルーフ20を開動作させる方向へ回動することを規制することができる。
【0080】
したがって、本実施形態によれば、リトラクタブルルーフ20を全閉位置から位置変更させ始めるときに、後側リンク機構4に連結されたリアルーフパネル23及びバックウインドウ24が前側リンク機構3に連結されたフロント及びミドルルーフパネル21,22よりも相対的に大きく移動するように、駆動モータ5から後側リンク機構4に付与された駆動力をタイミング機構8を介して前側リンク機構3へ伝達させることによって、フロント及びミドルルーフパネル21,22とリアルーフパネル23及びバックウインドウ24との干渉を回避することができる。その結果、前側リンク機構3と後側リンク機構4との複数のリンク機構を備える構成であっても、各ルーフ部材が干渉することなく、該複数のリンク機構を1つの駆動モータ5で駆動することができる。
【0081】
より具体的には、リトラクタブルルーフ20を全閉位置から位置変更させるときに、ジョイントリンク6の他端側枢軸62が、リアリンク43の枢軸43c回りの円周上において、ジョイントリンク6の他端部に付与される駆動力のうち、ジョイントリンク6を一端側枢軸61を中心に回転させる回転成分の方が、ジョイントリンク6を一端側枢軸61がドライブリンク35の枢軸35a回りに回動するように移動させる移動成分よりも大きくなる領域を移動するように構成することで、後側リンク機構4から前側リンク機構3への伝達効率を抑えて駆動力を伝達させることができる。
【0082】
また、リトラクタブルルーフ20を全閉位置へ位置変更させるときには、ジョイントリンク6の他端側枢軸62を上記思案点を超えてリアリンク43の枢軸43c回りに回動させることによって、該タイミング機構8でリトラクタブルルーフ20の全閉状態を保持することができる。尚、本実施形態では、該タイミング機構8と、フロントヘッド13に設けられたロック機構(図示省略)によってリトラクタブルルーフ20の全閉状態を保持している。
【0083】
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0084】
すなわち、上記実施形態では、バックウインドウ24はリアルーフパネル23に対して変位可能に構成されているが、これに限られるものではない。バックウインドウ24がリアルーフパネル23に対して変位不能に取り付けられた構成であってもよい。その場合、後側リンク機構は4節リンクではなく、1節のリンクで構成してもよい。
【0085】
また、前側リンク機構3に連結されるルーフ部材は、フロント及びミドルルーフパネル21,22の分割構造となったルーフでなくてもよい。つまり、前側リンク機構3に連結されるルーフ部材が1枚のルーフパネルであってもよい。
【0086】
さらに、ジョイントリンク6は、前側リンク機構3のドライブリンク35と、後側リンク機構4のリアリンク43とに連結されているが、これに限られず、後側リンク機構4から前側リンク機構3へ駆動力を伝達させることができる構成であれば、任意の構成を採用することができる。例えば、前側リンク機構3は、ドライブリンク35やコネクティングリンク36を有さなくてもよく、その場合は、ジョイントリンク6の一端部を、第1前側リンク33又は第2前側リンク34に枢支結合すればよい。
【0087】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明は、ルーフパネルの開閉装置、特に、複数のリンク機構を備えた開閉装置について有用である。
【符号の説明】
【0089】
20 リトラクタブルルーフ
21 フロントルーフパネル(第1前側ルーフ部材、前側ルーフ部材)
22 ミドルルーフパネル(第1前側ルーフ部材、前側ルーフ部材)
23 リアルーフパネル(後側ルーフ部材)
24 バックウインドウ(後側ルーフ部材)
3 前側リンク機構
33 第1前側リンク(第1前側リンク部材)
34 第2前側リンク(第2前側リンク部材)
35 ドライブリンク(第1リンク部材)
4 後側リンク機構
43 リアリンク(第2リンク部材)
5 駆動モータ(駆動源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前部を覆う前側ルーフ部材及び該車室の後部を覆う後側ルーフ部材と、
上記前側及び後側ルーフ部材を、上記車室を覆う全閉位置と上記車室を開放する全開位置とに相互に位置変更させるリンク機構とを備えたルーフパネルの開閉装置であって、
上記リンク機構は、上記前側ルーフ部材を移動させる前側リンク機構と、上記後側ルーフ部材を移動させる後側リンク機構とを有し、
上記前側及び後側リンク機構を駆動する駆動源と、
上記前側及び後側ルーフ部材を位置変更させるときに、該前側ルーフ部材の移動量と該後側ルーフ部材の移動量とを異ならせるように上記駆動源の駆動力を上記前側及び後側リンク機構に伝達させて、該前側ルーフ部材と該後側ルーフ部材との干渉を回避させるタイミング機構とをさらに備え、
上記タイミング機構は、
一端部が上記前側リンク機構に含まれる第1リンク部材に枢支結合される一方、他端部が上記後側リンク機構に含まれる第2リンク部材に枢支結合されて、上記駆動源の駆動力を該後側リンク機構から該前側リンク機構へ伝達させるジョイントリンクを有し、
上記前側及び後側ルーフ部材を上記全閉位置から位置変更させ始めるときに、該第2リンク部材を該第1リンク部材よりも大きく回動させることによって該後側ルーフ部材が該前側ルーフ部材よりも大きく移動するように上記駆動源の駆動力を上記前側及び後側リンク機構に伝達させるルーフパネルの開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載のルーフパネルの開閉装置において、
上記駆動源は、上記後側リンク機構に連結され、
上記ジョイントリンクは、上記前側及び後側ルーフ部材を上記全閉位置から位置変更させ始めるときには、前記駆動力のうち該前側リンク機構側の端部を中心として該ジョイントリンクを回転させる成分がしだいに減少し且つ該前側リンク機構側の端部が移動するように該ジョイントリンクを移動させる成分がしだいに増加するように、該後側リンク機構から該前側リンク機構へ該駆動源の駆動力を伝達させるルーフパネルの開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のルーフパネルの開閉装置において、
上記駆動源は、上記後側リンク機構に連結され、
上記第1リンク部材は、
上記前側リンク機構は、一端部が車体側に枢支結合され且つ他端部が上記前側ルーフ部材に枢支結合された前側リンク部材を有し、
上記第1リンク部材は、一端部が車体側に枢支結合され且つ他端部が該前側リンク部材に枢支結合され、
上記第2リンク部材は、一端部が車体側に枢支結合され且つ他端部が上記後側ルーフ部材に結合されているルーフパネルの開閉装置。
【請求項4】
請求項3に記載のルーフパネルの開閉装置において、
上記前側及び後側ルーフ部材の上記全閉位置への位置変更が完了するときには、上記ジョイントリンクの他端部は、上記後側伝達リンク部材の車体側の枢支結合部回りに回動して、該ジョイントリンクの一端部と共に該枢支結合部を挟んで一直線上に並ぶ位置である思案点を超えた位置に位置するルーフパネルの開閉装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載のルーフパネルの開閉装置において、
上記前側リンク機構は、一端部が車体側に枢支結合される一方、他端部が上記前側ルーフ部材に枢支結合される第1前側リンク部材と、一端部が該第1前側リンク部材よりも車両後側において車体側に枢支結合される一方、他端部が該第1前側リンク部材よりも車両後側において上記前側ルーフ部材に枢支結合される第2前側リンク部材とを有し、
上記前側ルーフ部材は、上記第1前側及び第2前側リンク部材の他端部が枢支結合される第1前側ルーフ部材と、該第1前側ルーフ部材の車両後側に位置して上記第2前側リンク部材に結合される第2後側ルーフ部材との分割構造になっているルーフパネルの開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−6600(P2013−6600A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225285(P2012−225285)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【分割の表示】特願2007−146077(P2007−146077)の分割
【原出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000108889)ベバスト ジャパン株式会社 (36)