説明

レオキャスト鋳造法

【課題】スラリー作製容器の外周部にスラリー作製容器を軸方向に潰れやすくするための細工を施すことが可能なレオキャスト鋳造法を提供すること。
【解決手段】冷却ホルダー21で保持されたスラリー作製容器7内に溶融金属を注ぎ入れる工程と、その後冷却して半凝固状態の金属スラリーを作製する工程と、その後金属スラリーを収容したまま容器7ごと鋳造機の加圧スリーブに装填する工程と、該スラリー作製容器7をプランジャーで加圧成形する工程とからなるレオキャスト鋳造法において、冷却ホルダー21の内周面に、スラリー作製容器7の外周部に圧接する凹凸模様31を形成し、スラリー作製容器7内に溶融金属を注ぎ入れる工程中に凹凸模様31をスラリー作製容器の外周部に転写せしめる。スラリー作製容器の外周部に転写された凹凸模様12によりプランジャーで加圧成形する工程においてスラリー作製容器7を軸方向に潰れやすく構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト機等の高圧鋳造機を用いた成形法のうち、金属の半溶融加工法の1つであるレオキャスト鋳造法(半凝固成形法とも称される。)に関するものである。
ちなみに、レオキャスト鋳造法とは、溶融金属を固液共存域まで冷却して半凝固状態となし(これを金属スラリーと称する。)、この金属スラリーを鋳造機の加圧スリーブに装填しプランジャチップで加圧して成形(鋳造)する鋳造法をいう。
【背景技術】
【0002】
従来のレオキャスト鋳造法では、通常、レオメーカーで作製された金属スラリーを使用している。しかしこの方法では、溶融金属を半凝固状態とした後に成形量を分離・定量するので、金属スラリーの定量が難しく、それ故に、金属スラリーの供給量にばらつきが生じやすく、成形した製品の品質が安定しない。
しかも、作製された金属スラリーは形状が不定形であるので、鋳造機の加圧スリーブ中に装填すること自体が難しく、鋳造機の加圧スリーブ中に金属スラリーを安定して供給することが困難であると共に、レオメーカー中で作製された金属スラリーを鋳造機の加圧スリーブに装填するまでの温度コントロールが難しいという問題もあった。
【0003】
そこで上述した課題を解決するべく、溶融金属を一旦スラリー作製容器に注入し、スラリー作製容器内に注入した溶融金属が所定の半凝固状態になったら金属スラリーをそのままスラリー作製容器ごと鋳造機の加圧スリーブ内に装填して加圧成形するようにした新規なレオキャスト鋳造法が提案された(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、金属スラリーを収容したスラリー作製容器を水平状に配設された加圧スリーブのスラリー供給口から装填して加圧成形する横射出方式のレオキャスト鋳造機において、金属スラリーを収容したスラリー作製容器を加圧スリーブ内に装填してプランジャーで加圧した際に、スラリー作製容器が軸方向にほぼ均一に潰れるように細工を施すことが先に本願出願人によって提案された(特許文献2参照。)。
しかし、この先の提案では、スラリー作製容器を軸方向にほぼ均一に潰れやすくするために、鋳造工程とは別の工程でもってスラリー作製容器の外周部等に細工を施していたので、スラリー作製容器自体の製作コストが高くなってしまう不具合があった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−138248号公報
【特許文献2】特開2002−361389公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような従来の不具合に鑑みてなされたものであり、スラリー作製容器を鋳造機の加圧スリーブに装填し加圧するまでの間、すなわちスラリー作製容器内に溶融金属を注ぎ入れて当該スラリー作製容器内で半凝固状態の金属スラリーを作製し鋳造機の加圧スリーブに装填し加圧するまでの工程中に、スラリー作製容器の外周部に当該スラリー作製容器を軸方向に潰れやすくするための細工を施すことが可能なレオキャスト鋳造法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成する本発明の請求項1に記載のレオキャスト鋳造法は、冷却ホルダーで保持されたスラリー作製容器内に溶融金属を注ぎ入れる工程と、その後当該スラリー作製容器を冷却して半凝固状態の金属スラリーを作製する工程と、その後金属スラリーを収容したままスラリー作製容器ごと鋳造機の加圧スリーブに装填する工程と、該スラリー作製容器をプランジャーで加圧成形する工程とからなるレオキャスト鋳造法において、前記冷却ホルダーの内周面に、前記スラリー作製容器の外周部に接する凹凸模様を形成し、当該スラリー作製容器内に溶融金属を注ぎ入れる工程中に上記凹凸模様をスラリー作製容器の外周部に転写せしめ、スラリー作製容器の外周部に転写された凹凸模様によりプランジャーで加圧成形する工程において当該スラリー作製容器を軸方向に細かく潰れやすくしたことを特徴としたものである。これにより、半凝固状態の金属スラリーが収容されたスラリー作成容器が軸方向に細かくスムーズに潰され、もって、半凝固状態の金属スラリーを金型キャビティ中にスムーズに充満させることができるようになる。
また、本発明の請求項2に記載のレオキャスト鋳造法は、前記スラリー作製容器を冷却して半凝固状態の金属スラリーを作製する工程中に、当該スラリー作製容器の外周部に凹凸模様を打刻せしめ、該凹凸模様によりプランジャーで加圧成形する工程において当該スラリー作製容器を軸方向に細かく潰れやすくしたことを特徴としたものである。これにより、半凝固状態の金属スラリーが収容されたスラリー作成容器が軸方向に細かくスムーズに潰され、もって、半凝固状態の金属スラリーを金型キャビティ中にスムーズに充満させることができるようになる。
前記冷却ホルダーの内周面に形成される凹凸模様としては、連続又は不連続な直線或いは曲線形状をした断面が略山形をしている突条が前記スラリー作製容器の軸方向に一定間隔で形成されたもの等を挙げることが出来る。
また、本発明の請求項3に記載のレオキャスト鋳造法は、半凝固状態の金属スラリーを収容したスラリー作製容器を鋳造機の加圧スリーブへ搬送し装填するための搬送用ホルダーの内周面に、前記スラリー作製容器の外周部に接する凹凸模様を形成し、該搬送用ホルダーでスラリー作製容器を鋳造機の加圧スリーブへ装填する工程で上記凹凸模様をスラリー作製容器の外周部に転写せしめ、該転写された凹凸模様によりプランジャーで加圧成形する工程において当該スラリー作製容器を軸方向に細かく潰れやすくしたことを特徴としたものである。これにより、半凝固状態の金属スラリーが収容されたスラリー作成容器が軸方向に細かくスムーズに潰され、もって、半凝固状態の金属スラリーを金型キャビティ中にスムーズに充満させることができるようになる。
この場合も、前記搬送用ホルダーの内周面に形成される凹凸模様は、冷却ホルダーの場合と同様に、連続又は不連続な直線或いは曲線形状をした断面が略山形をしている突条が前記スラリー作製容器の軸方向に一定間隔で形成されたもの等を挙げることが出来る。
更に、本発明の請求項4に記載のレオキャスト鋳造法は、前記スラリー作製容器の外周部又は前記加圧スリーブ内に、スラリー作製容器の外周部と接する凹凸転写部材を設け、前記スラリー作製容器を前記プランジャーで加圧成形する工程で、前記スラリー作製容器が前記プランジャーの加圧により分流子との間で前記スリーブ内周方向に押し広げられ、その結果、上記凹凸転写部材の凹凸模様がスラリー作製容器の外周部に転写され、該転写された凹凸模様によりプランジャーで加圧成形する工程において当該スラリー作製容器を軸方向に細かく潰れやすくしたことを特徴としたものである。これにより、半凝固状態の金属スラリーが収容されたスラリー作成容器が軸方向に細かくスムーズに潰され、もって、半凝固状態の金属スラリーを金型キャビティ中にスムーズに充満させることができるようになる。
ここで、前記凹凸転写部材としては、金属コイルや、紐状の金属又は帯状の金属又は断熱材を筒形状又は半円筒形状に編んで作成された等を挙げることが出来る(請求項5)。
また、前記スラリー作製容器の外周部に転写される凹凸模様としては、連続又は不連続な直線或いは曲線形状で前記スラリー作製容器の軸方向に一定間隔に形成されているものが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るレオキャスト鋳造法によれば、スラリー作製容器内に溶融金属を注ぎ入れて当該スラリー作製容器内で半凝固状態の金属スラリーを作製する過程(スラリー作製工程)、若しくはスラリー作製容器ごと鋳造機の加圧スリーブに装填して金属スラリーを加圧する過程(装填・加圧工程)で、スラリー作製容器の外周部にプランジャーで加圧成形する工程において当該スラリー作製容器を軸方向に細かく潰れやすくするための細工を施すことが可能となる。
よって、従来のように別工程でもってスラリー作製容器の外周部に潰れやすくするための細工を施す場合と比較して、スラリー作製容器自体の製作コストを含めてコストの低減化を期することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るレオキャスト鋳造法の具体的な好適実施例を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は図示実施例のものに限定されるものではない。
なお、全図面を通して同様の構成部材には同じ符号を付してある。
【0010】
本発明に係るレオキャスト鋳造法は、基本的に、冷却ホルダーで保持されたスラリー作製容器内に溶融金属を注ぎ入れる工程と、その後当該スラリー作製容器を冷却して半凝固状態の金属スラリーを作製する工程と、その後半凝固状態の金属スラリーを収容したままスラリー作製容器を搬送用ホルダーで鋳造機の加圧スリーブへ搬送し金属スラリーを収容したままスラリー作製容器ごと加圧スリーブに装填する工程と、加圧スリーブに装填された金属スラリー入りスラリー作製容器をプランジャーで加圧成形する工程とからなる。
【0011】
図1は、本発明に係るレオキャスト鋳造法を実施する鋳造機の要部を断面して示す模式図であり、図中の符号1は加圧スリーブ、符号2は固定型3と可動型4とで形成される金型キャビティを示す。
【0012】
加圧スリーブ1は、固定型3を支持している固定プラテン5を水平方向に貫通して水平状に配設され、その先端開口部(鋳込み口)が可動型4側に組込まれた分流子6と接離するように相対向状に配置され、さらに鋳込み口と反対側には金属スラリーを収容したスラリー作製容器7を装填するためのスラリー供給口1aが上向きに開口形成され、その加圧スリーブ1に、スラリー供給口1a側から鋳込み口側へ向けて進退動作するプランジャー8が摺動自在に嵌挿されている。
【0013】
一方、スラリー作製容器7は冷却ホルダー21に保持され、その状態で当該スラリー作製容器7内に保持炉から溶融金属が注ぎ込まれる。溶融金属が注ぎ込まれたスラリー作製容器7は冷却ホルダー21が分離され、中の溶融金属が自然冷却されることにより、当該スラリー作製容器7の中で所定の固相率に調整された半凝固状態の金属スラリーが作製される。
【0014】
そして、半凝固状態になった金属スラリーを収容したスラリー作製容器7は、搬送用ホルダー(図示せず)でもって鋳造機の加圧スリーブ1へと搬送され、金属スラリーを収容したままスラリー作製容器7ごとスラリー供給口1aから加圧スリーブ1内へと装填される。然る後、金属スラリー入りスラリー作製容器7をプランジャー8で加圧することにより、スラリー作製容器7が分流子6との間で押し潰されるため、スラリー作製容器7が一旦加圧スリーブ1の内周面方向に膨らんで押し広げられ、分流子6の開口部6b’でスラリー作製容器7が破れて、中の金属スラリーのみがスラリー作製容器7から押し出され、分流子6で上向きにほぼ直角に向きを変えられ、金型のゲート部分(湯道)2aを通って金型キャビティ2に圧入されて製品が鋳造される。
【0015】
なお、図1中の符号9は、固定型3側に組込まれて分流子6の外周に接離自在に嵌合する鋳込み口ブッシュであり、図中の符号10は加圧スリーブ1の鋳込み口を冷却するための循環式冷却水通路である。
【0016】
スラリー作製容器7は、その内部で作製される金属スラリーと同種系統の金属材料が好適に用いられ、その金属材料からなる薄い金属板を深絞り加工またはインパクト成形等により、1回の鋳造に必要な金属スラリーを収容し得る容積を有し且つ加圧スリーブ1の内径より少し小さい外径を有する略コップ形状(有底円筒形状)に形成される。
【0017】
また、スラリー作製容器7には、加圧スリーブ1内に装填してプランジャー8で加圧した際に当該スラリー作製容器7が軸方向に全体的に細かく折り畳まれるような形状にほぼ均一に潰れて中の金属スラリーが当該スラリー作製容器7からスムーズに押し出されるように、格別の細工が施される。具体的に、スラリー作製容器7の外周部に施される格別な細工とは、連続又は不連続な直線或いは曲線形状をした折れ目線または適当な幅・面積を有する折れ目域(以下、凹凸模様と総称する。)12の事を言う。
【0018】
そしてこの凹凸模様12は、スラリー作製容器7内に溶融金属を注ぎ入れ当該スラリー作製容器7内に半凝固状態の金属スラリーを収容したまま鋳造機の加圧スリーブ1に装填し加圧するまでの間、詳しくは、冷却ホルダー21に保持されたスラリー作製容器7内に溶融金属を注ぎ入れて当該スラリー作製容器7内で半凝固状態の金属スラリーを作製するスラリー作製工程から、スラリー作製容器7内で半凝固状態の金属スラリーを加圧スリーブにスラリー作製容器7ごと装填して加圧成形する装填・加圧工程までの間に施される。
【0019】
凹凸模様12は、スラリー作製容器7の外周部に浅く凹状に窪んだ線(筋)または凸状に膨らんだ線(筋)或いは適当な幅・面積を有する領域として形成される。具体的には、図2の(a)〜(h)に模式的に例示したごとく、スラリー作製容器7の外周部に複数本の破線や実線からなる折れ目線ないしは折れ目域をスラリー作製容器7の軸方向に沿ってほぼ等間隔に水平状または傾斜状或いは螺旋状に形成することにより形成される。
ここで、「折れ目域」とは、折れ目線に対して線よりも広い適当な幅・面積を有する部分のことを言う。
【0020】
図3は、スラリー作製容器7の外周部に形成される凹凸模様12が、冷却ホルダー21で保持されたスラリー作製容器7内に溶融金属を注ぎ入れる工程から当該スラリー作製容器7内で半凝固状態の金属スラリーを作製する工程(金属スラリー作製工程)の中で形成される実施の一例を示したものである。
【0021】
本実施例では、スラリー作製容器7を鋳造機の加圧スリーブ1へ搬送するための冷却ホルダー21の内周面に、スラリー作製容器7の外周部に形成したい凹凸模様12と同様な連続又は不連続な直線或いは曲線形状をした突条で形成される凹凸模様31を形成しておき、スラリー作製容器7内に溶融金属を注ぎ入れる工程中に上記凹凸模様31をスラリー作製容器7の外周部に転写せしめることにより、スラリー作製容器7の外周部に凹凸模様12を形成するようにしたものである。
なお、図2において上段の(a)と(b)は模式平面図であり、下段の(a’)(b’)はそれらの模式正面図を示したものである。また、(c)は外周部に凹凸模様12が転写されたスラリー作製容器7の模式正面図であり、(d)は冷却ホルダー21の内周面に形成された凹凸模様31の一例を示す模式正面図である。
【0022】
本実施例の場合、スラリー作製容器7の中に溶融金属を注ぎ入れる注湯工程において、(a)溶融金属を注ぎ入れる前、若しくは溶融金属を注ぎ入れた後に、(b)スラリー作製容器7の外周部を、例えば2分割された冷却ホルダー21(21a,21b)で圧迫することにより、当該スラリー作製容器7が溶融金属の熱で軟化しているので、(c)冷却ホルダー21(21a,21b) の内周面に形成された凹凸模様31がスラリー作製容器7の外周部に確実に転写され、その結果、スラリー作製容器7の外周部に凹凸模様12が形成される。
【0023】
また、スラリー作製容器7内に溶融金属を注ぎ入れることにより当該スラリー作製容器7が軟化し同時に外周方向に熱膨張するので、溶融金属の重みによりスラリー作成容器7が外周方向に広がる力も加わって、スラリー作製容器7が熱膨張した時にその外周部が冷却ホルダー21(21a,21b)の内周面に密着するように構成すれば、冷却ホルダー21(21a,21b)で積極的に圧迫せずとも冷却ホルダー21(21a,21b) の内周面に形成された凹凸模様31がスラリー作製容器7の外周部に転写され、スラリー作製容器7の外周部に凹凸模様12が形成される。
【0024】
なお、冷却ホルダー21(21a,21b) の内周面に格別凹凸模様31を形成せずに、冷却ホルダー21(21a,21b)とは別に専用型(図示せず)を用意し、その専用型の内周面に凹凸模様31を形成することにより、スラリー作成容器7を冷却ホルダー21から分離し、中の溶融金属が自然冷却して半凝固状態の金属スラリーになるまで冷却される工程の間に、上記と同様にしてスラリー作製容器7の外周部に凹凸模様12を形成することも考えられる。この場合、専用型をスラリー作製容器7の外周部に対して昇降或いは回転自在に構成することにより、1個の型で複数種の凹凸模様12を創出することが可能となる。
【0025】
更に、半凝固状態の金属スラリーが収容されたスラリー作製容器7を鋳造機の加圧スリーブ1へ搬送するための搬送用ホルダー(図示せず)の内周面に、冷却ホルダー21(21a,21b)と同様に、スラリー作製容器7の外周部に圧接する連続又は不連続な直線或いは曲線形状をした突条で形成され凹凸模様を形成し、該搬送用ホルダーでスラリー作製容器7を鋳造機の加圧スリーブへ装填するまでの間に上記凹凸模様をスラリー作製容器の外周部に転写せしめるようにしても良い。
【0026】
また、図4に示した実施例は、スラリー作製容器7の中に溶融金属を注ぎ入れた後半凝固状態の金属スラリーを作製する工程中に、当該スラリー作製容器7の外周部に凹凸模様12を打刻により形成せしめことにより、プランジャーで加圧成形する工程において当該スラリー作製容器7を軸方向に潰れやすく形成したものである。
すなわち、スラリー作製容器7の周囲に、エアシリンダ等の往復運動が可能な機器41に金属板等で形成された打撃体42を1個或いは複数個配設せしめ、当該スラリー作製容器7内に溶融金属を注ぎ入れた後であって半凝固状態の金属スラリーを作製中に、溶融金属の熱で軟化しているスラリー作製容器7の外周部を打撃体42で打撃することにより凹凸模様12を打刻形成せしめたものである。
この際、上記打撃体42をスラリー作製容器7の外周部に対して昇降或いは回転自在に構成することにより、少ない打撃体42で複数種の凹凸模様12を創出することが可能となる。
【0027】
また、図5は、スラリー作製容器7の外周部に、スラリー作製容器の外周部と接触する凹凸転写部材51を設け、その状態で、溶融金属を注ぎ入れる前、若しくは溶融金属を注ぎ入れた後に、スラリー作製容器7の外周部を、例えば2分割された冷却ホルダー21(21a,21b)或いは搬送用ホルダーで圧迫することにより、凹凸転写部材51の凹凸模様をスラリー作製容器7の外周部に転写せしめ、スラリー作製容器7の外周部に凹凸模様12を形成するようにしたものである。
ちなみに、凹凸転写部材51としては、金属コイルや、紐状の金属又は帯状の金属又は断熱材を筒形状又は半円筒形状に編んで作成された等を挙げることができる。
【0028】
この実施例の場合も、スラリー作製容器7内に溶融金属を注ぎ入れることにより当該スラリー作製容器7が溶融金属の熱で軟化し同時に外周方向に熱膨張する性質を利用して、スラリー作製容器7の外周部を凹凸転写部材51で拘束することにより、該凹凸転写部材51の凹凸模様がスラリー作製容器7の外周部に転写され、スラリー作製容器7の外周部に凹凸模様12を形成することができる。従って、この実施例では上記実施例のように冷却ホルダー21(21a,21b)で圧迫する必要がなくなる。
【0029】
更に、格別図示はしなかったが、溶融金属を注ぎ入れた後のスラリー作製容器7の外周部に上記凹凸転写部材51を取付け、スラリー作製容器7内で半凝固状態の金属スラリーが作製されたらそのままスラリー作製容器7を鋳造機の加圧スリーブ1に装填することにより、スラリー作製容器7の外周部に擬似凹凸模様を形成することも考えられる。すなわち、半凝固状態の金属スラリーが作製されたスラリー作製容器7の外周部に上記凹凸転写部材51を取付け、そのまま鋳造機の加圧スリーブ1に装填してプランジャー8で加圧すると、スラリー作製容器7が外周方向に加圧スリーブ1の内径まで膨張するが、スラリー作製容器7の外周部は鋳造機の加圧スリーブ1内において凹凸転写部材51で拘束された状態になるので、加圧の初期段階において凹凸転写部材51の凹凸模様がスラリー作製容器7の外周部に転写されたと同様となり、その結果、スラリー作製容器7が軸方向に潰れやすくなる。
【0030】
更に前記した実施例の変形例として、凹凸転写部材51をスラリー作製容器7の外周部に取付けずに、予め鋳造機の加圧スリーブ1内にセットしておくことも考えられる。この場合、スラリー作製容器7を加圧スリーブ1内に装填するため、凹凸転写部材51を上下半分割して、凹凸転写部材51の下側半分は予め加圧スリーブ1内にセットしておき、スラリー作製容器7を加圧スリーブ1内に装填した後に凹凸転写部材51の上側半分をスラリー作製容器7に被せるようにセットする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るレオキャスト鋳造機の要部を断面して示す模式図。
【図2】(a)〜(h)は本発明に係るスラリー作製容器の外周部に形成された凹凸模様の各実施例を示す模式図。
【図3】スラリー作製容器の外周部に凹凸模様を転写する仕組みの実施の一例を説明する工程図であり、(a)及び(b)は模式平面図、(a’)(b’)はそれらの模式正面図、(c)は外周部に凹凸模様が転写されたスラリー作製容器の模式正面図、(d)は冷却ホルダーの内周面に形成された凹凸模様の一例を示す模式正面図。
【図4】スラリー作製容器の外周部に凹凸模様を転写する仕組みの他の実施例を示す説明図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式正面図。
【図5】スラリー作製容器の外周部に凹凸模様を転写する仕組みの更に他の実施例を示す説明図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式正面図。
【符号の説明】
【0032】
1:加圧スリーブ 2:金型キャビティ
3:固定型 4:可動型
5:固定プラテン 6:分流子
6a:導入正面 6b:スラリー導入トンネル
7:スラリー作製容器 7a:スラリー作製容器の底部
8:プランジャー 9:鋳込み口ブッシュ
10:冷却水通路
12:凹凸模様 21:冷却ホルダー
31:冷却ホルダーの凹凸模様
41:機器 42:打撃体
51:凹凸転写部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ホルダーで保持されたスラリー作製容器内に溶融金属を注ぎ入れる工程と、その後当該スラリー作製容器を冷却して半凝固状態の金属スラリーを作製する工程と、その後金属スラリーを収容したままスラリー作製容器ごと鋳造機の加圧スリーブに装填する工程と、該スラリー作製容器をプランジャーで加圧成形する工程とからなるレオキャスト鋳造法において、
前記冷却ホルダーの内周面に凹凸模様を形成し、当該スラリー作製容器内に溶融金属を注ぎ入れる工程中に上記凹凸模様をスラリー作製容器の外周部に転写せしめ、スラリー作製容器の外周部に転写された凹凸模様によりプランジャーで加圧成形する工程において当該スラリー作製容器を軸方向に潰れやすくしたことを特徴とするレオキャスト鋳造法。
【請求項2】
冷却ホルダーで保持されたスラリー作製容器内に溶融金属を注ぎ入れる工程と、その後当該スラリー作製容器を冷却して半凝固状態の金属スラリーを作製する工程と、その後金属スラリーを収容したままスラリー作製容器ごと鋳造機の加圧スリーブに装填する工程と、該スラリー作製容器をプランジャーで加圧成形する工程からなるレオキャスト鋳造法において、
前記スラリー作製容器を冷却して半凝固状態の金属スラリーを作製する工程中に、当該スラリー作製容器の外周部に凹凸模様を打刻せしめ、該凹凸模様によりプランジャーで加圧成形する工程において当該スラリー作製容器を軸方向に潰れやすくしたことを特徴とするレオキャスト鋳造法。
【請求項3】
冷却ホルダーで保持されたスラリー作製容器内に溶融金属を注ぎ入れる工程と、その後当該スラリー作製容器を冷却して半凝固状態の金属スラリーを作製する工程と、その後半凝固状態の金属スラリーを収容したままスラリー作製容器を搬送用ホルダーで鋳造機の加圧スリーブへ搬送し金属スラリーを収容したままスラリー作製容器ごと加圧スリーブに装填する工程と、該スラリー作製容器をプランジャーで加圧成形する工程からなるレオキャスト鋳造法において、
前記搬送用ホルダーの内周面に凹凸模様を形成し、該搬送用ホルダーでスラリー作製容器を鋳造機の加圧スリーブへ装填する工程で上記凹凸模様をスラリー作製容器の外周部に転写せしめ、該転写された凹凸模様によりプランジャーで加圧成形する工程において当該スラリー作製容器を軸方向に潰れやすくしたことを特徴とするレオキャスト鋳造法。
【請求項4】
冷却ホルダーで保持されたスラリー作製容器内に溶融金属を注ぎ入れる工程と、その後当該スラリー作製容器を冷却して半凝固状態の金属スラリーを作製する工程と、その後半凝固状態の金属スラリーを収容したままスラリー作製容器を搬送用ホルダーで鋳造機の加圧スリーブへ搬送し金属スラリーを収容したままスラリー作製容器ごと加圧スリーブに装填する工程と、該スラリー作製容器をプランジャーで加圧成形する工程からなるレオキャスト鋳造法において、
前記スラリー作製容器の外周部又は前記加圧スリーブ内に凹凸転写部材を設け、前記スラリー作製容器を前記プランジャーで加圧成形する工程で、上記凹凸転写部材の凹凸模様をスラリー作製容器の外周部に転写せしめ、該転写された凹凸模様によりプランジャーで加圧成形する工程において当該スラリー作製容器を軸方向に潰れやすくしたことを特徴とするレオキャスト鋳造法。
【請求項5】
前記凹凸転写部材が、金属コイル又は、紐状の金属材又は帯状の金属材又は断熱材を編んで作られたものであることを特徴とする請求項4に記載のレオキャスト鋳造法。
【請求項6】
前記スラリー作製容器の外周部に転写される凹凸模様が、連続又は不連続な直線或いは曲線形状で形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のレオキャスト鋳造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−175723(P2007−175723A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374837(P2005−374837)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000005256)株式会社アーレスティ (44)