説明

レンズ鏡筒および撮影装置

【課題】可撓性基板を備えた好適な構造を有するレンズ鏡筒および撮影装置を提供すること。
【解決手段】貫通溝4aが設けられた固定筒4と、前記固定筒4の内側に配置され、第1電気基板12と共に光軸方向に移動可能な移動枠10と、前記固定筒4の外側で撓んでいる撓み部8bを有する可撓性基板8と、前記可撓性基板8の少なくとも一部を固定し、前記可撓性基板8よりも剛性の高い剛性板20とを有し、前記剛性板20は、前記固定筒4の外側から内側にかけて前記貫通溝4aを貫通し、前記移動枠10に着脱自在であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒および撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、オートフォーカス用レンズやブレ補正レンズ等を保持するレンズ枠には、レンズ側電気基板が配置されている。レンズ鏡筒を構成する固定筒の内側のレンズ側電気基板と、固定筒の外側の主電気基板とは、フレキシブルケーブルを介して電気的に接続されている。
【0003】
一般にズームレンズ鏡筒では、ズーミングに伴い、オートフォーカス用レンズやブレ補正レンズが光軸方向へ移動する。従来、固定筒の内側の移動レンズユニットと、固定筒の外側の主電気基板とを電気的に接続するフレキシブルケーブルは、固定筒を光軸方向に迂回するように長めに配置され(特許文献1参照)、ズーミングに伴い、固定筒の内側でフレキシブルケーブルを変形させている。
【0004】
しかしながら、従来の構成では、フレキシブルケーブルが全体として長く、ズーミングに伴い他の部品と干渉する虞があると共に、ケーブルの電気抵抗が大きくなり、電圧降下が起きる虞があった。また、固定筒の内側でフレキシブルケーブルを変形させていたために、固定筒の内側に配置される部品と干渉し、フレキシブルケーブルの断線等の虞があると共に、入射光がフレキシブルケーブルの変形面で反射し、レンズ鏡筒の光学性能に悪影響を及ぼす虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−189848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、可撓性基板を備えた好適な構造を有するレンズ鏡筒および撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るレンズ鏡筒(2)は、
貫通溝(4a)が設けられた固定筒(4)と、
前記固定筒(4)の内側に配置され、第1電気基板(12)と共に光軸方向に移動可能な移動枠(10)と、
前記固定筒(4)の外側で撓んでいる撓み部(8b)を有する可撓性基板(8)と、
前記可撓性基板(8)の少なくとも一部を固定し、前記可撓性基板(8)よりも剛性の高い剛性板(20)とを有し、
前記剛性板(20)は、前記固定筒(4)の外側から内側にかけて前記貫通溝(4a)を貫通し、前記移動枠(10)に着脱自在であることを特徴とする。
【0008】
本発明では、剛性板(20)が貫通溝(4a)を貫通しているために、光軸方向に移動する移動枠(10)と一緒に、剛性板(20)も貫通溝(4a)に沿って移動する。可撓性基板(8)は、固定筒(4)の外側で、撓み部(8b)が撓んで配置されている。撓み部(8b)の光軸方向の長さは、移動枠(10)の移動に伴う剛性板(20)の移動によって変化するが、撓み部(8b)の光軸方向の長さ変化量は、剛性板(20)の移動量に比べて小さく済む。このため、移動枠(10)および剛性板(20)の移動量を、撓み部(8b)が、最小限に吸収できるようになっている。
【0009】
剛性板(20)の移動に伴い、可撓性基板(8)では、撓み部(8b)の光軸方向長さが変化するのみであると共に、固定筒(4)の外側は、固定筒(4)の内側に比べて部品点数が少ないので、固定筒(4)の外側で、可撓性基板(8)が他の部品と干渉しにくくなる。また、部品点数が多い固定筒(4)の内側では、可撓性基板(8)が撓まない構成となっているため、固定筒(4)の内側で可撓性基板(8)が他の部品と干渉することはない。このように、可撓性基板(8)が他の部品と干渉しにくいので、移動枠(10)の移動がスムーズになると共に、可撓性基板(8)が断線することも防止できる。さらに、固定筒(4)の内側で可撓性基板(8)が撓んだり、変形することがないため、入射光が反射して光学性能に悪影響を及ぼすことを防止できる。また、剛性板(20)は移動枠(10)に着脱自在であるため、剛性板(20)の組付けは容易である。
【0010】
さらに、可撓性基板(8)の少なくとも一部を固定した剛性板(20)が、固定筒(4)に設けられた貫通溝(4a)を貫通しているため、可撓性基板(8)の長さを比較的短く設計できる。そのため、可撓性基板(8)の電気抵抗が小さくなり、電圧降下が起きる可能性が小さくなり、部品の安定動作に貢献できる。
【0011】
前記可撓性基板(8)の第1接続端(8a)が前記固定筒(4)の外側にあり、前記可撓性基板(8)の第2接続端(8d)が前記固定筒(4)の内側で前記第1電気基板(12)と接続され、前記可撓性基板(8)の前記撓み部(8b)と前記第2接続端(8d)の間に位置する固定領域(8c)が、前記剛性板(20)に固定されても良い。
【0012】
可撓性基板(8)の固定領域(8c)は、剛性板(20)と一体的に貫通溝(4a)を貫通しているため、可撓性基板(8)が固定筒(4)の内側で他の部品と干渉することを防止できる。
【0013】
前記移動枠(10)には、前記剛性板(20)の差込溝(13)が形成されていても良い。剛性板(20)は、差込溝(13)に抜き差しすることで着脱自在であり、剛性板(20)の組付けが容易になる。
【0014】
前記剛性板(20’)が配線基板であり、前記可撓性基板(8)の第1接続端(8a)および第2接続端(8b)が前記固定筒(4)の外側にあり、前記配線基板の外側接続端(21)は、前記固定筒(4)の外側で前記可撓性基板(8)の前記第2接続端(8b)と接続し、前記配線基板の内側接続端(22)は前記第1電気基板(12)に着脱自在に接続しても良い。
【0015】
このように構成することで、配線基板の内側接続端(22)を、第1電気基板(12)に容易に接続することができる。可撓性基板(8)の第1接続端(8a)は固定筒(4)の外側にあり、可撓性基板(8)の第2接続端(8b)を配線基板の外側接続端(21)と接続するため、可撓性基板(8)を貫通溝(4a)に貫通させる必要がない。したがって、可撓性基板(8)の組付け性が容易になる。
【0016】
前記配線基板の前記内側接続端(22)は、前記第1電気基板(12)にコネクタ(22C)で接続されても良い。このため、剛性板(20)の第1電気基板(12)への組付けが容易になる。
【0017】
前記剛性板(20)が貫通する前記貫通溝(4a)が、前記移動枠(10)を移動させるカム溝に対応する貫通溝(4a)と共用してあっても良い。貫通溝(4a)の数を増やすことなく、剛性板(20)を固定筒(4)に貫通させるので、固定筒(4)の構造をシンプルにできると共に、固定筒(4)の強度を維持することができる。
【0018】
第2電気基板(24)が前記固定筒(4)の外側に配置され、前記可撓性基板(8)の前記第1接続端(8a)が、前記第2電気基板(24)に接続されても良い。これにより、固定筒(4)の外側の第2電気基板(24)と、固定筒(4)の内側の第1電気基板(12)とを、電気的に接続することができる。
【0019】
本発明に係る撮影装置は、上記のレンズ鏡筒(2)を含む。
【0020】
なお、上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために、実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒のワイド端における半断面図である。
【図2】図2は、図1に示すレンズ鏡筒のテレ端における半断面図である。
【図3】図3は、図1に示す剛性板の斜視図である。
【図4】図4は、図1に示すレンズ鏡筒のワイド端における外周面展開図である。
【図5】図5は、図1に示すレンズ鏡筒のテレ端における外周面展開図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施形態に係るレンズ鏡筒のテレ端における半断面図である。
【図7】図7は、図6に示す剛性板の斜視図である。
【図8】図8は、剛性板の貫通するカム溝を、カムピンが係合するカム溝と共用した場合におけるレンズ鏡筒の外周面展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒2のワイド端における半断面図である。図4は、図1に示すレンズ鏡筒2のワイド端における外周面展開図であり、図1と図4とにおいて、各部材が対応する位置関係にある。
【0023】
図1に示すように、レンズ鏡筒2は、円筒形状の固定筒4と、固定筒4の内側に配置された円筒形状のカム筒6とを有している。固定筒4は、光軸Zに平行に形成された貫通溝4aを有している。カム筒6は、固定筒4に対して回転自在に装着され、カム筒6には、貫通溝4aと交わる方向に、らせん状に複数のカム溝6a〜6d(図4に示す)が形成されている。貫通溝4aとカム溝6a〜6dの詳細については、後述する。
【0024】
図1に示すように、カム筒6の内側には、中心部に孔が形成された円盤形状のレンズ枠(移動枠)10が、光軸Z方向にスライド自在に配置されている。レンズ枠10は、本実施形態では、孔の内周面でオートフォーカス用レンズ11を保持している。レンズ枠10には、中央部に孔が形成された円盤状のレンズ側電気基板(第1電気基板)12が固定されている。レンズ側電気基板12には、たとえば超音波モータ部品やブレ補正用コイルなどを制御する制御部品12aや各種センサあるいはその他の電子部品が搭載されていても良い。
【0025】
レンズ枠10の外周面で、貫通溝4aに対応する位置には、差込溝13が形成されている。差込溝13には、貫通溝4aおよびカム溝6aを貫通した剛性板20が着脱自在に配置される(詳細は図3の説明で述べる)。また、レンズ枠10の外周面で、貫通溝4aに対応する位置には、カムピン受け穴14が形成されている。カムピン15aは、貫通溝4aおよびカム溝6bと係合し、カムピン受け穴14に固定されている。
【0026】
オートフォーカス用レンズ11の光軸方向の撮像面側には、撮像面側レンズ31が配置されている。撮像面側レンズ31は、円盤形状の撮像面側レンズ枠30の中央部に形成された孔の内周面に保持されている。撮像面側レンズ枠30の外周面には、貫通溝4aおよびカム溝6cと係合したカムピン15bが固定されていても良く、撮像面側レンズ枠30が光軸Z方向に移動するように構成してあっても良い。
【0027】
図1および図4に示すように、固定筒4の外周面には、中央に孔が形成された円盤形状のメイン電気基板(第2電気基板)24が固定されている。メイン電気基板24は、不図示のマウント部を介して、カメラボディと電気的に接続可能になっている。メイン電気基板24は、コネクタ23を介して、フレキシブルケーブル8の第1接続端8aと接続している。
【0028】
第1接続端8aから延びるフレキシブルケーブル8は、撓み部8b、剛性板20との固定領域8cを経て(図3にて、詳細に説明を行う)、図1に示す第2接続端8dで、レンズ側電気基板12と接続している。剛性板20は、固定筒4の外側に配置される外側接続端21と、固定筒4の内側に配置され、差込溝13に差し込まれる内側接続端22を有している。剛性板20は、フレキシブルケーブル8に比較して剛性の高い部材であり、容易には変形しない。剛性板20は、絶縁性を有していることが好ましく、たとえば樹脂で形成されていることが好ましい。フレキシブルケーブル8の固定領域8cは、たとえば接着等によって剛性板20に固定されている。図3に示すように、フレキシブルケーブル8の固定領域8cは、剛性板20と共に、貫通溝4aおよびカム溝6aを貫通している。
【0029】
図3に示すように、レンズ枠10の外周面には、差込溝13が、光軸方向に対して、角度θを持つように形成されている。角度θは、特に限定されないが、30度〜50度であることが好ましい。剛性板20は、このように角度θを有した差込溝13に差し込まれるため、剛性板20も、光軸方向に対して角度θで配置される。差込溝13および剛性板20が、光軸方向に対して角度をもたない(角度θ=0度)場合には、カム筒6に形成するカム溝6aの幅を大きくする必要がある。差込溝13および剛性板20が、光軸方向に対して角度θ=30度〜50度を有することにより、カム筒6に形成するカム溝6aを最小幅にできる。
【0030】
図3に示すように、フレキシブルケーブル8は、略U字形に折り返している撓み部8bを有している。撓み部8bは、第1接続端8aから連続して光軸に平行に直線状に延びており(直線状部分8b1)、撓み部8bの途中から所定のRを有しながら折り返し(R部分8b2)、固定領域8cが、直線状部分8b1に対し130〜150度の向きで、剛性板20に固定されている。
【0031】
上記のようにフレキシブルケーブル8を配置する方法としては、フレキシブルケーブル8の固定領域8cを剛性板20に固定した後で、フレキシブルケーブル8の固定領域8cが固定された剛性板20を、固定筒4の外側から、貫通溝4aおよびカム溝6aに貫通させて差込溝13に差込固定し、その後、フレキシブルケーブル8の第2接続端8d(図1に示す)を、レンズ側電気基板12に取り付けても良い。または、フレキシブルケーブル8の第2接続端8dを、予めレンズ側電気基板12に接続しておき、カム筒6の内側にレンズ枠10を組み込んだ後で、フレキシブルケーブル8を、固定筒4の内側から、貫通溝4aおよびカム溝6aに貫通させて、撓み部8bを固定筒4の外側に出した後、剛性板20を、レンズ枠10の差込溝13に差込固定し、フレキシブルケーブル8の固定領域8cを、剛性板20に対して固定しても良い。
【0032】
図4に示すように、固定筒4には、カムピン15cが係合する直進溝4bと、カムピン15a,15bが係合すると共に、しかも剛性板20が貫通する直進溝4aが形成されている。また、カム筒6には、カムピンが係合するカム溝6b〜6dと、カムピンが係合せず、剛性板20が貫通するためのカム溝6aが形成されている。
【0033】
図1および図4では、レンズ鏡筒2がワイド端にある時の各部材の配置を説明しているが、不図示のズーム環をテレ側に回転させることで、カム筒6が光軸Zを中心に回転する。カム筒6が回転することにより発生する動力は、カムピン15aによって、レンズ枠10に伝えられる。カム筒6が回転することで、カム筒6に形成されたカム溝6bと、固定筒4に形成された直進溝4aに係合するカムピン15aには回転力が伝わるが、図4に示すようなカム移動機構40により、回転運動が光軸Zと平行な方向への運動に変換され、レンズ枠10は、固定筒4に対して光軸方向に直進運動を行う。すなわち、固定筒4に形成された直進溝4aによって、レンズ枠10は回転方向の運動を規制され、光軸Zに平行な運動を行う。ズーミングに伴うカムピン15aの動きに伴い、図1および図4に示すワイド端と、図2および図5に示すテレ端との間において、カムピン15aを固定しているレンズ枠10は、所定位置において光軸Zに平行な運動を行う。なお、カム筒6の回転と、図4および図5に示すカム移動機構41,42により、カムピン15b,15cにも光軸方向に平行な力が伝わり、固定筒の内側に配置された他の部品も、光軸Zに平行な運動をする。
【0034】
図1に示すように、フレキシブルケーブル8の直線状部分8b1の平面と垂直方向から見たフレキシブルケーブル8のみかけ上の長さL2は、フレキシブルケーブル8を長手方向に沿って計測する実長さとは異なる。図1および図2に示すように、レンズ枠10および剛性板20の移動に伴い、フレキシブルケーブル8のみかけ上の長さL2は、L2maxとL2minとの間で変化する。レンズ枠10および剛性板20の移動(図2に示す最大移動量L1)に伴い、フレキシブルケーブル8の撓み部8bのみかけ上の長さL3は、L3maxとL3minとの間で変化する。したがって、フレキシブルケーブル8の撓み部8bのみかけ上の最大変化量は、|L3max−L3min|で表すことができる。図3を用いて説明したように、フレキシブルケーブル8の撓み部8bは、R部分8b2で折り返しているので、L1>|L3max−L3min|の関係が成立する。すなわち、剛性板20の移動量を、フレキシブルケーブル8の撓み部8bの変位によって吸収することができる。なお、図1および図4に示すように、剛性板20が、メイン電気基板24から最大限に離れた時にも、フレキシブルケーブル8の撓み部8bのみかけ上の長さL3=L3min>0であることが好ましく、撓み部8bにはゆとり(L3min>0)がある。
【0035】
本実施形態では、剛性板20が貫通溝4aを貫通しているために、光軸方向に移動する移動枠10と一緒に、剛性板20も貫通溝4aに沿って移動する。フレキシブルケーブル8は、固定筒4の外側で、撓み部8bが撓んで配置されている。撓み部8bの光軸方向の長さは、移動枠10の移動に伴う剛性板20の移動によって変化するが、撓み部8bの光軸方向のみかけ上の長さ変化量|L3max−L3min|は、剛性板20の移動量L1に比べて小さく済む。このため、移動枠10および剛性板20の移動量L1を、撓み部8bが、最小限に吸収できる。
【0036】
剛性板20の移動に伴い、フレキシブルケーブル8では、撓み部8bの光軸方向長さが変化するのみであると共に、固定筒4の外側は、固定筒4の内側に比べて部品点数が少ないので、固定筒4の外側で、フレキシブルケーブル8が他の部品と干渉しにくくなる。また、部品点数が多い固定筒4の内側では、フレキシブルケーブル8が撓まない構成となっているため、固定筒4の内側でフレキシブルケーブル8が他の部品と干渉することはない。このように、フレキシブルケーブル8が他の部品と干渉しにくいので、移動枠10の移動がスムーズになると共に、フレキシブルケーブル8が断線することも防止できる。さらに、固定筒4の内側でフレキシブルケーブル8が撓んだり、変形することがないため、入射光が反射して光学性能に悪影響を及ぼすことを防止できる。また、剛性板20は移動枠10に着脱自在であるため、剛性板20の組付けは容易である。
【0037】
さらに、フレキシブルケーブル8の少なくとも一部を固定した剛性板20が、固定筒4に設けられた貫通溝4aを貫通しているため、フレキシブルケーブル8の長さを比較的短く設計できる。そのため、フレキシブルケーブル8の電気抵抗が小さくなり、電圧降下が起きる可能性が小さくなり、部品の安定動作に貢献できる。
【0038】
フレキシブルケーブル8の固定領域8cは、剛性板20と一体的に貫通溝4aを貫通しているため、フレキシブルケーブル8が固定筒4の内側で他の部品と干渉することを防止できる。剛性板20は、差込溝13に抜き差しすることで着脱自在であり、剛性板20の組付けが容易になる。
【0039】
また、貫通溝4aの数を増やすことなく、剛性板20を固定筒4に貫通させるので、固定筒4の構造をシンプルにできると共に、固定筒4の強度を維持することができる。
【0040】
さらに、メイン電気基板24が前記固定筒4の外側に配置され、フレキシブルケーブル8の第1接続端8aが、メイン電気基板24に接続されるので、固定筒4の外側のメイン電気基板24と、固定筒4の内側のレンズ側電気基板12とを、電気的に接続することができる。
【0041】
第2実施形態
以下に述べる以外は、上述した第1実施形態と同様であり、重複する説明を省略する。本実施形態では、図6および図7に示すように、剛性板20’が、外側接続端21と内側接続端22とを電気的に接続する配線基板になっている。
【0042】
図7に示すように、剛性板20’の内側接続端22には、複数の端子電極22eが形成されている。内側コネクタ22Cは、剛性板20’の内側接続端22がオス形状であり、レンズ側電気基板12の外周面に形成された差込溝13がメス形状になっていることが好ましい。剛性板20’の内側接続端22がオス形状になっていることにより、剛性板20’を、固定筒4の外側から貫通溝4aおよびカム溝6aに貫通させる作業がスムーズになり、カム溝6aの横幅を最小限に抑えることができる。
【0043】
剛性板20’の外側接続端21にも、複数の端子電極21eが形成されている。図7に示すように、外側コネクタ21Cは、剛性板20’の外側接続端21がオス形状であり、フレキシブルケーブル8の第2接続端8dがメス形状になっていても良い。または、図示しないが、外側コネクタ21Cは、剛性板20’の外側接続端21がメス形状であり、フレキシブルケーブル8の第2接続端8dがオス形状になっていても良い。
【0044】
剛性板20’およびフレキシブルケーブル8を配置する方法としては、まず、図7に示すように、剛性板20’を、固定筒4の外側から、貫通溝4aおよびカム溝6aに貫通させて、内側接続端22を差込溝13に差し込み、内側コネクタ22Cを接続する。その後、固定筒4の外側で、外側接続端21をフレキシブルケーブル8の第2接続端8dに差し込み、外側コネクタ21Cを接続する。
【0045】
剛性板20’の内側接続端22は、差込溝13に着脱自在である。図示しないが、レンズ枠10の外周面で、貫通溝4aに対応する位置に、レンズ側電気基板12と電気的に接続された差込溝13を予め形成しておき、内側接続端22を差込溝13に差し込み、内側コネクタ22Cを接続しても良い。
【0046】
本実施形態では、上記のように構成することで、剛性板20’の内側接続端22を、レンズ側電気基板12に容易に接続することができる。フレキシブルケーブル8の第1接続端8aは固定筒4の外側にあり、フレキシブルケーブル8の第2接続端8dを剛性板20’の外側接続端21と接続するため、フレキシブルケーブル8を貫通溝4aに貫通させる必要がない。したがって、フレキシブルケーブル8の組付け性が容易になる。また、剛性板20のレンズ側電気基板12への組付けが容易になる。
【0047】
なお、図8に示すように、カム筒6に形成されているカムピン用カム溝の一つ(たとえばカム溝6b)を、剛性板20(20’)が貫通・移動するためのカム溝と共用しても良い。この場合には、剛性板20(20’)が光軸方向へ移動するための直進溝4cを、固定筒4に専用に形成する必要がある。
【0048】
また、上述した実施形態では、レンズ交換型の一眼レフカメラを例に説明を行ったが、これに限定されず、レンズ機構とボディが一体型のカメラにも適用することができる。また、カメラボディにおけるミラー機構を省いたミラーレスカメラや、ビデオカメラにも適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
2…レンズ鏡筒
4…固定筒
4a…貫通溝
8…フレキシブルケーブル
8a…第1接続端
8b…撓み部
8c…固定領域
8d…第2接続端
10…レンズ枠
12…レンズ側電気基板
13…差込溝
20…剛性板
21…外側接続端
22…内側接続端
22C…コネクタ
24…メイン電気基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通溝が設けられた固定筒と、
前記固定筒の内側に配置され、第1電気基板と共に光軸方向に移動可能な移動枠と、
前記固定筒の外側で撓んでいる撓み部を有する可撓性基板と、
前記可撓性基板の少なくとも一部を固定し、前記可撓性基板よりも剛性の高い剛性板とを有し、
前記剛性板は、前記固定筒の外側から内側にかけて前記貫通溝を貫通し、前記移動枠に着脱自在であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記可撓性基板の第1接続端が前記固定筒の外側にあり、前記可撓性基板の第2接続端が前記固定筒の内側で前記第1電気基板と接続され、
前記可撓性基板の前記撓み部と前記第2接続端の間に位置する固定領域が、前記剛性板に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記移動枠には、前記剛性板の差込溝が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記剛性板が配線基板であり、
前記可撓性基板の第1接続端および第2接続端が前記固定筒の外側にあり、
前記配線基板の外側接続端は、前記固定筒の外側で前記可撓性基板の前記第2接続端と接続し、前記配線基板の内側接続端は前記第1電気基板に着脱自在に接続していることを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記配線基板の前記内側接続端は、前記第1電気基板にコネクタで接続されていることを特徴とする請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記剛性板が貫通する前記貫通溝が、前記移動枠を移動させるカム溝に対応する貫通溝と共用してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
第2電気基板が前記固定筒の外側に配置され、前記可撓性基板の前記第1接続端が、前記第2電気基板に接続されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のレンズ鏡筒を含むことを特徴とする撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−185376(P2012−185376A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49185(P2011−49185)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】