説明

レンズ鏡筒

【課題】盗難を有効に防止することができるレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】ユーザを識別するための識別情報を検出する識別情報検出部271と、ユーザの識別情報に基づいて、ユーザの識別を行う識別部250と、識別部250によるユーザの識別結果に基づいて、光学系による像を撮像するための動作を制御する制御部250と、を備えることを特徴とするレンズ鏡筒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、セキュリティ機能を備えた撮像装置が知られている。このような撮像装置において、盗難やいたずらを防止するために、予め設定されたパスワードが入力されるまで、撮影を不能とする技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−153430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、レンズ鏡筒自体にセキュリティ機能を備えるものではないため、レンズ鏡筒のみが盗難、転売されてしまうという問題があった。特に、レンズ鏡筒の種別によっては、レンズ鏡筒が、カメラボディよりも高価となる場合も多く、このような場合に、上記の問題が顕著となる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、盗難を有効に防止することができるレンズ鏡筒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、以下においては、本発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
[1]本発明に係るレンズ鏡筒は、ユーザを識別するための識別情報を検出する識別情報検出部(271)と、前記ユーザの識別情報に基づいて、ユーザの識別を行う識別部(250)と、前記識別部によるユーザの識別結果に基づいて、光学系による像を撮像するための動作を制御する制御部(250)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
[2]上記レンズ鏡筒に係る発明において、前記制御部(250)は、前記識別部(250)によりユーザを識別できない場合には、前記光学系による像の撮像を不能とするような制御を行うように構成することができる。
【0009】
[3]上記レンズ鏡筒に係る発明において、前記光学系を通過する光束を遮光するための遮光部(271)をさらに備え、前記制御部(250)は、前記識別部(250)によりユーザを認識できない場合には、前記遮光部により、前記光学系を通過する光束を遮光することで、前記光学系による像の撮像を不能とするように構成することができる。
【0010】
[4]上記レンズ鏡筒に係る発明において、前記識別情報検出部(271)は、前記遮光部(271)に設置されているように構成することができる。
【0011】
[5]上記レンズ鏡筒に係る発明において、前記制御部(250)は、前記識別部(250)によりユーザを識別できない場合には、前記光学系を駆動させることで、前記光学系による像の撮像を不能とするように構成することができる。
【0012】
[6]上記レンズ鏡筒に係る発明において、前記識別情報検出部(271)は、ユーザの網膜情報を、前記識別情報として検出するように構成することができる。
【0013】
[7]上記レンズ鏡筒に係る発明において、前記識別情報検出部(271)は、ユーザの虹彩情報を、前記識別情報として検出するように構成することができる。
【0014】
[8]上記レンズ鏡筒に係る発明において、前記識別情報検出部(271)は、ユーザの瞬きに関する情報を、前記識別情報として検出するように構成することができる。
【0015】
[9]上記レンズ鏡筒に係る発明において、前記識別情報検出部(271)は、ユーザが行ったジェスチャーに関する情報を、前記識別情報として検出するように構成することができる。
【0016】
[10]上記レンズ鏡筒に係る発明において、前記制御部(250)は、前記識別部(250)によりユーザを識別できた場合には、前記識別部により識別されたユーザに応じて、前記光学系の焦点距離を設定するように構成することができる。
【0017】
[11]上記レンズ鏡筒に係る発明において、前記制御部(250)は、前記識別部(250)によりユーザを識別できた場合には、前記識別部により識別されたユーザに応じて、ユーザ設定を読み出すように構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レンズ鏡筒の盗難を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施形態に係るカメラを示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る初期登録処理を示すフローチャートである。
【図3】図3は、ユーザ識別情報の検出方法を説明するための図である。
【図4】図4は、本実施形態に係るユーザ認証処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本実施形態に係るユーザ認証処理を説明するための図である。
【図6】図6は、本実施形態に係るユーザ認証処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態の一眼レフデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とを備え、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とは着脱可能に結合されている。本実施形態のカメラ1においては、レンズ鏡筒200は、撮影目的などに応じて、交換可能となっている。
【0022】
レンズ鏡筒200には、レンズ211,212,213、および絞り220を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0023】
フォーカスレンズ212は、レンズ鏡筒200の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ260によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ230によってその位置が調節される。そして、エンコーダ260で検出されたフォーカスレンズ212の現在位置情報は、レンズ制御部250を介して後述するカメラ制御部170へ送出される。そして、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ212の駆動量Δdが、カメラ制御部170からレンズ制御部250を介して送出され、これに基づいて、フォーカスレンズ駆動モータ230は駆動する。
【0024】
絞り220は、上記撮影光学系を通過して、カメラボディ100に備えられた撮像素子110に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り220による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部170からレンズ制御部250へ送信されることにより行われる。また、開口径の調節は、カメラボディ100に設けられた操作部150を介したマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部170からレンズ制御部250へ送信されることによっても行われる。なお、絞り220の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部250で現在の開口径が認識される。
【0025】
また、本実施形態において、レンズ制御部250は、レンズ鏡筒200の盗難、転売を有効に防止するために、レンズ鏡筒200を使用できるユーザの情報を、ユーザ認証情報としてメモリ240に記憶しており、このユーザ認証情報に基づいて、ユーザの認証を行う。そして、レンズ制御部250は、認証されたユーザのみが、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影することができるよう、ユーザの認証結果に基づいて、レンズ鏡筒200の制御を行う。
【0026】
スキャナ271は、ユーザを識別するためのユーザ識別情報を検出する。たとえば、スキャナ271は、スキャナ271に備える小型のカメラにより、ファインダ135を覗くユーザの目を撮影し、撮影したユーザの目の画像に基づいて、ユーザの虹彩パターンをユーザ識別情報として検出する。なお、スキャナ271により検出されたユーザ識別情報は、レンズ制御部250へと送出される。
【0027】
なお、ユーザ識別情報は、ユーザの虹彩パターンに限定されず、たとえば、ユーザの網膜パターン、ユーザの瞬きの速度、あるいは、ユーザの瞳の動き(ジェスチャー)を、ユーザ識別情報として用いることができる。たとえば、ユーザの網膜パターンをユーザ識別情報として検出する場合、スキャナ271は、スキャナ271に備えたセンサにより、ユーザの目により反射された光を検出し、検出した反射光に基づいて、ユーザの網膜パターンを、ユーザ識別情報として検出することができる。また、たとえば、ユーザの瞬きの速度、あるいはユーザの瞳の動き(ジェスチャー)を、ユーザ識別情報として検出する場合には、スキャナ271は、スキャナ271に備えた小型のカメラにより、ユーザの瞳を時系列に沿って撮影することで、ユーザの瞬きの速度、あるいはユーザの目の動き(ジェスチャー)を、ユーザ識別情報として検出することができる。
【0028】
スキャナ駆動モータ272は、被写体からの光束の光軸L1上から外れた位置に配置されており、レンズ制御部250の駆動指示に基づいて、スキャナ271を、光軸方向または光軸方向と垂直な方向に移動させる。
【0029】
たとえば、レンズ制御部250は、ユーザを認証できない場合には、スキャナ駆動モータ272により、被写体からの光束の光軸L1上の位置に、スキャナ271を移動させる。これにより、レンズ制御部250は、撮像素子110に向かう被写体からの光束(光軸L1)を、スキャナ271で遮ることができ、レンズ鏡筒200を、画像を撮像できない状態とすることができる。
【0030】
また、レンズ制御部250は、ユーザを認証できた場合には、スキャナ駆動モータ272により、被写体からの光束の光軸L1上から退避した位置に、スキャナ271を移動させる。これにより、レンズ制御部250は、被写体からの光束(光軸L1)を撮像素子110まで到達させることができ、レンズ鏡筒200を、画像を撮影することができる状態とすることができる。
【0031】
発光部281,282は、たとえば、人間が感知できない赤外光を発光するLED光源であり、レンズ制御部250の制御に基づいて、ファインダ135を覗くユーザの目に赤外光を照射する。発光部281,282により照射された赤外光の一部は、ユーザの目によって反射され、ユーザの目によって反射された赤外光が、スキャナ271により検出される。
【0032】
一方、カメラボディ100は、被写体からの光束を撮像素子110、ファインダ135、測光センサ137および焦点検出モジュール160へ導くためのミラー系120を備える。このミラー系120は、回転軸123を中心にして被写体の観察位置と撮影位置との間で所定角度だけ回転するクイックリターンミラー121と、このクイックリターンミラー121に軸支されてクイックリターンミラー121の回動に合わせて回転するサブミラー122とを備える。図1においては、ミラー系120が被写体の観察位置にある状態を実線で示し、被写体の撮影位置にある状態を二点鎖線で示す。
【0033】
ミラー系120は、被写体の観察位置にある状態では光軸L1の光路上に挿入される一方で、被写体の撮影位置にある状態では光軸L1の光路から退避するように回転する。
【0034】
クイックリターンミラー121はハーフミラーで構成され、被写体の観察位置にある状態では、被写体からの光束(光軸L1)の一部の光束(光軸L2,L3)を当該クイックリターンミラー121で反射してファインダ135および測光センサ137へ導き、一部の光束(光軸L4)を透過させてサブミラー122へ導く。これに対して、サブミラー122は全反射ミラーで構成され、クイックリターンミラー121を透過した光束(光軸L4)を焦点検出モジュール160へ導く。
【0035】
したがって、ミラー系120が観察位置にある場合は、被写体からの光束(光軸L1)はファインダ135、測光センサ137および焦点検出モジュール160へ導かれ、ユーザにより被写体が観察されるとともに、露出演算やフォーカスレンズ212の焦点調節状態の検出が実行される。そして、ユーザがシャッターレリーズボタン(不図示)を全押しするとミラー系120が撮影位置に回動し、被写体からの光束(光軸L1)は全て撮像素子110へ導かれ、撮影した画像データを図示しないメモリに保存する。
【0036】
クイックリターンミラー120で反射された被写体からの光束は、撮像素子110と光学的に等価な面に配置された焦点板131に結像し、ペンタプリズム133と接眼レンズ134とを介して観察可能になっている。このとき、透過型液晶表示器132は、焦点板131上の被写体像に焦点検出エリアマークなどを重畳して表示するとともに、被写体像外のエリアにシャッター速度、絞り値、撮影枚数などの撮影に関する情報を表示する。これにより、撮影者は、撮影準備状態において、ファインダ135を通して被写体およびその背景ならびに撮影関連情報などを観察することができる。
【0037】
測光センサ137は、二次元カラーCCDイメージセンサなどで構成され、撮影の際の露出値を演算するため、撮像画面を複数の領域に分割して領域ごとの輝度に応じた測光信号を出力する。測光センサ137で検出された信号はカメラ制御部170へ出力され、たとえば、静止画を撮影する際の自動露出制御に用いられる。
【0038】
焦点検出モジュール160は、被写体光を用いた位相差検出方式による自動合焦制御を実行するための焦点検出素子であり、サブミラー122で反射した光束(光軸L4)の、撮像素子110の撮像面と光学的に等価な位置に固定されている。
【0039】
撮像素子110は、カメラボディ100の、被写体からの光束の光軸L1上であって、レンズ211,212,213を含む撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター111が設けられている。この撮像素子110は、複数の光電変換素子が二次元に配置されたものであって、二次元CCDイメージセンサ、MOSセンサまたはCIDなどのデバイスから構成することができる。撮像素子110で光電変換された画像信号は、カメラ制御部170で画像処理されたのち図示しないメモリに保存される。なお、撮影画像を格納するメモリは内蔵型メモリやカード型メモリなどで構成することができる。
【0040】
操作部150は、シャッターレリーズボタンや撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、自動露出モード/マニュアル露出モード、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換などの設定が行えるようになっている。また、シャッターレリーズボタンのスイッチは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
【0041】
カメラボディ100にはカメラ制御部170が設けられている。カメラ制御部170はマイクロプロセッサ、ASIC、RAMなどの周辺部品から構成され、撮像素子110から出力された画像データを取得する。そして、カメラ制御部170は、撮像素子110から出力された画像データに、所定の画像処理を施すことで、スルー画像および撮像画像の生成を行う。また、カメラ制御部170は、レンズ制御部250と電気的に接続され、レンズ制御部250から、レンズ鏡筒200の焦点調節範囲の情報などを含むレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部250へ絞り制御信号などの情報を送信する。
【0042】
次いで、本実施形態に係る初期登録処理について説明する。初期登録処理とは、レンズ鏡筒200を使用できるユーザを、レンズ鏡筒200で認証するためのユーザ認証情報を登録するための処理である。以下においては、図2を参照して、本実施形態に係る初期登録処理について説明する。なお、図2は、本実施形態に係る初期登録処理を示すフローチャートである。初期登録処理は、たとえば、レンズ鏡筒200が、ユーザ認証情報が登録されていない初期状態(出荷状態)である場合に、カメラ1の電源がオンされることにより開始される。
【0043】
まず、ステップS101では、レンズ制御部250により、ユーザ認証情報の登録要求が行われる。たとえば、レンズ制御部250は、レンズ鏡筒200に備えるスピーカ(不図示)により所定の音声を出力することで、ユーザ認証情報の登録を要求することができる。あるいは、レンズ制御部250は、カメラ制御部170を介して、カメラボディ100に備えるディスプレイ(不図示)に、ユーザ認証情報の登録を要求する旨のメッセージを表示することで、ユーザ認証情報の登録を要求する構成としてもよい。
【0044】
ステップS102では、レンズ制御部250により、ステップS101のユーザ認証情報の登録要求に応じて、ユーザにより、ユーザ情報登録ボタンが押下されたか否かの判断が行われる。ユーザ情報登録ボタンが押下された場合は、ユーザ認証情報を登録するために、ステップS103に進み、一方、ユーザ情報登録ボタンが押下されていない場合は、ユーザ情報登録ボタンが押下されるまで、ステップS102で待機する。なお、本実施形態では、たとえば、シャッターレリーズボタンを、ユーザ情報登録ボタンとして用いることができる。また、レンズ鏡筒200に、ユーザ情報登録ボタンを設ける構成としてもよい。
【0045】
ステップS102で、ユーザ情報登録ボタンが押下された場合には、ステップS103に進み、ステップS103〜S106において、ユーザ認証情報の登録が行われる。
【0046】
具体的には、まず、ステップS103において、レンズ制御部250により、図3に示すように、発光部281,282の発光が開始される。これにより、発光部281,282により発せられた赤外光が、クイックリターンミラー121、ペンタプリズム133、接眼レンズ134、およびファインダ135を介して、ユーザの目に照射される。そして、ユーザの目に照射された赤外光の一部は、ユーザの目によって反射され、図3に示すように、ユーザの目によって反射された光束(光軸L5)が、ファインダ135、接眼レンズ134、ペンタプリズム133、およびクイックリターンミラー121を介して、スキャナ271へと到達される。なお、図3は、ユーザ識別情報の検出方法を説明するための図である。
【0047】
そして、ステップS104では、スキャナ271により、ユーザを識別するためのユーザ識別情報の検出が行われる。たとえば、スキャナ271は、図3に示すように、ユーザの目によって反射された光束(光軸L5)に基づいて、ユーザの目の画像を撮像し、撮像したユーザの目の画像に基づいて、ユーザの虹彩パターンを、ユーザ識別情報として検出する。
【0048】
なお、ユーザ識別情報は、ユーザの虹彩パターンに限定されず、たとえば、ユーザの目によって反射された光束(光軸L5)に基づいて、ユーザの網膜パターンを、ユーザ識別情報として検出してもよい。あるいは、ユーザの目によって反射された光束(光軸L5)に基づいて、ユーザの目の画像を時系列に沿って撮像し、撮像したユーザの目の時系列データに基づいて、ユーザの瞬きの速度や、ユーザの瞳の動き(ジェスチャー)を、ユーザ識別情報として検出してもよい。
【0049】
また、ユーザ識別情報を検出する際に、レンズ制御部250は、ユーザの目の像がスキャナ271の撮像面で結像するよう、スキャナ駆動モータ272に駆動指示を送出する。これにより、スキャナ駆動モータ272は、レンズ制御部250からの駆動指示に基づいて、スキャナ271を光軸方向に移動させ、スキャナ271の撮像面の位置を、ユーザの目の像の結像面に一致するように調節する。
【0050】
ステップS105では、レンズ制御部250により、ステップS104で検出されたユーザ識別情報が、ユーザ認証情報として、レンズ鏡筒200のメモリ240に記憶される。そして、ステップS106において、レンズ制御部250により、発光部281,282の発光が終了され、この初期登録処理を終了する。
【0051】
このように、本実施形態では、ユーザ認証情報がレンズ鏡筒200に登録されていない初期状態において、初期登録処理が行われ、ユーザを識別するための識別情報が、レンズ鏡筒200を使用できるユーザを認証するためのユーザ認証情報として、レンズ鏡筒200のメモリ240に登録される。
【0052】
次に、本実施形態に係るユーザ認証処理について説明する。ユーザ認証処理は、レンズ鏡筒200を使用できるユーザであるかを判断するために、ユーザ認証を行い、ユーザが認証された場合に、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影できるように、レンズ鏡筒200を制御する処理である。以下においては、図4を参照して、本実施形態に係るユーザ認証処理について説明する。なお、図4は、本実施形態に係るユーザ認証処理を示すフローチャートである。ユーザ認証処理は、たとえば、図2に示す初期登録処理により、ユーザ認証情報が登録された後において、カメラ1の電源がオンとなることで開始される。
【0053】
また、ユーザ認証処理を開始する時点では、スキャナ271は、図5に示すように、被写体からの光束の光軸L1上に挿入されており、スキャナ271により、撮像素子110に向かう光束(光軸L1)が遮られるため、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影することができない状態となっている。なお、図5は、本実施形態に係るユーザ認証処理を説明するための図である。
【0054】
まず、ステップS201では、レンズ制御部250により、ユーザに対して、ユーザ認証を行うよう要求が行われる。たとえば、レンズ制御部250は、レンズ鏡筒200に備えるスピーカ(不図示)により所定の音声を出力することで、ユーザに対して、ユーザ認証を行うことを要求することができる。また、レンズ制御部250は、カメラ制御部170を介して、カメラボディ100に備えるディスプレイ(不図示)に、ユーザ認証の実行を要求するメッセージを表示させることで、ユーザに対して、ユーザ認証を行うよう要求することができる。
【0055】
ステップS202では、レンズ制御部250により、ステップS201の要求に応じて、ユーザにより、ユーザ認証ボタンが押下されたか否かの判断が行われる。ユーザ認証ボタンが押下された場合には、ユーザ認証を行うために、ステップS203に進み、一方、ユーザ認証ボタンが押下されていない場合には、ステップS202で待機する。なお、本実施形態においては、たとえば、シャッターレリーズボタンを、ユーザ認証ボタンとして用いてもよい。また、ユーザ認証ボタンを、レンズ鏡筒200に設ける構成としてもよい。
【0056】
ステップS203では、ステップS103と同様に、レンズ制御部250により、発光部281,282による発光が開始され、発光部281,282により発せられた赤外光が、ファインダ135を覗いているユーザの目に照射される。ユーザの目に照射された赤外光は、ユーザの目により反射され、図3に示すように、ユーザの目により反射された光束(光軸L5)が、ファインダ135、接眼レンズ134、ペンタプリズム133、およびクイックリターンミラー121を介して、スキャナ271に到達される。
【0057】
そして、ステップS204では、ステップS104と同様に、スキャナ271により、ユーザ識別情報の検出が行われる。たとえば、スキャナ271は、図3に示すように、ユーザの目によって反射された光束(光軸L5)に基づいて、ユーザの目の画像を撮像し、撮像したユーザの目の画像に基づいて、ユーザの虹彩パターンを、ユーザ識別情報として検出する。そして、検出されたユーザ識別情報は、スキャナ271からレンズ制御部250へと送出される。なお、ユーザ識別情報を検出する際に、レンズ制御部250は、ステップS104と同様に、ユーザの目の像がスキャナ271の撮像面で結像するように、スキャナ271の光軸方向における位置を調節することができる。
【0058】
ステップS205では、レンズ制御部250により、ステップS204で検出されたユーザ識別情報と、初期登録処理で登録されたユーザ認証情報との照合が行われる。たとえば、レンズ制御部250は、ステップS204で、ユーザの虹彩パターンをユーザ識別情報として検出している場合には、ステップS204で検出されたユーザの虹彩パターンと、ユーザ認証情報としてメモリ240に登録されている虹彩パターンとを照合する。
【0059】
同様に、レンズ制御部250は、ユーザの網膜パターンをユーザ識別情報として検出している場合には、ステップS204で検出されたユーザの網膜パターンと、ユーザ認証情報として登録されている網膜パターンとを照合し、あるいは、ユーザの瞬きの速度をユーザ識別情報として検出している場合には、ステップS204で検出されたユーザの瞬きの速度と、ユーザ認証情報として登録されているユーザの瞬きの速度とを照合する。さらに、レンズ制御部250は、ユーザの瞳の動き(ジェスチャー)をユーザ識別情報として検出している場合には、ステップS204で検出したユーザの瞳の動き(ジェスチャー)と、ユーザ認証情報として登録されている特定の瞳の動き(たとえば、左右上下の順に瞳を動かすなど)を照合する。
【0060】
ステップS206では、レンズ制御部250により、ステップS205の照合結果に基づいて、ユーザ認証が行われる。たとえば、レンズ制御部250は、ステップS204で検出されたユーザの虹彩パターンと、ユーザ認証情報としてメモリ240に登録されている虹彩パターンとの一致度が、所定値以上であるか否かを判断し、ステップS204で検出されたユーザの虹彩パターンとメモリ240に登録されている虹彩パターンとの一致度が、所定値以上である場合には、認証登録されたユーザであると判断し、ステップS207に進む。一方、ステップS204で検出したユーザの虹彩パターンと、メモリ240に登録されている虹彩パターンとの一致度が、所定値未満である場合には、ステップS211に進む。
【0061】
ステップS207では、レンズ制御部250により、発光部281,282の発光が終了される。そして、続くステップS208では、レンズ制御部250により、光軸L1上からスキャナ271を退避させるように、スキャナ駆動モータ272に対して駆動指示が送出される。これにより、スキャナ駆動モータ272は、図6に示すように、光軸L1上からスキャナ271を退避させ、被写体からの光束(光軸L1)をカメラボディ100の撮像素子110へと導くことができる。これにより、カメラ1において、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影できる状態とすることができる。なお、図6は、本実施形態に係るユーザ認証処理を説明するための図である。
【0062】
ステップS209では、レンズ制御部250により、電源をオフするために、電源ボタンが押下されたか否かの判断が行われる。電源ボタンが押下された場合には、ステップS210に進む。一方、電源ボタンが押下されていない場合には、ステップS209で待機する。このように、電源ボタンが押下されるまでは、スキャナ271が、被写体からの光束の光軸L1から退避しているため、認証されたユーザは、レンズ鏡筒200を使用して、画像の撮影することができる。
【0063】
ステップS209で、電源をオフにするために電源ボタンが押下された場合には、ステップS210に進む。ステップS210では、レンズ制御部250により、光軸L1上にスキャナ271を挿入するように、スキャナ駆動272に対して駆動指示が送出され、スキャナ駆動モータ272により、スキャナ271が、被写体からの光束の光軸L1上に挿入される。これにより、撮像素子110に向かう被写体からの光束(光軸L1)が、スキャナ271により遮られ、カメラ1において、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影することができない状態とされる。
【0064】
また、ステップS206でユーザを認証できなかった場合には、ステップS211に進む。ステップS211では、レンズ制御部250により、ユーザ識別情報の検出回数が、予め設定された所定回数以上となったか否かの判断が行われる。ユーザ識別情報の検出回数が所定回数未満であると判断された場合には、ステップS204に戻り、ユーザ識別情報の検出(ステップS204)と、ユーザ識別情報に基づくユーザ認証(ステップS205,S206)とが繰り返し行われる。一方、ユーザ識別情報の検出回数が所定回数以上であると判断された場合には、認証登録されたユーザではないと判断され、ステップS212に進み、ステップS212で発光部281,282による発光が終了された後、このユーザ認証処理を終了する。このように、レンズ制御部250は、ユーザを認証できない場合には、認証登録されたユーザではないと判断し、認証登録されていないユーザが、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影することができように制御を行う。
【0065】
以上のように、本実施形態では、ファインダ135を覗いたユーザの目の画像などから、ユーザを識別するためのユーザ識別情報を検出し、検出したユーザ識別情報に基づいて、ユーザの認証を行う。そして、ユーザが認証された場合には、図6に示すように、スキャナ271を、被写体からの光束の光軸L1上から退避させることにより、被写体からの光束(光軸L1)を撮像素子110に導くことができるため、ユーザに、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影させることができる。一方、ユーザを認証できない場合には、図5に示すように、スキャナ271を、被写体からの光束の光軸L1上に挿入し、撮像素子110に向かう光束(光軸L1)をスキャナ271で遮ることにより、ユーザに、レンズ鏡筒200を使用したままでは、画像を撮影させないようにすることができる。このように、本実施形態では、レンズ鏡筒200に認証登録されたユーザではない限り、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影することができないため、レンズ鏡筒200の盗難、転売を有効に防止することができる。また、本実施形態では、カメラボディ100に依存することなく、レンズ鏡筒200のみで、ユーザ認証を行うことができるため、どのようなカメラボディに対しても、上記効果を奏することができる。さらに、本実施形態では、ユーザがファインダ135を覗くだけで、ユーザ認証が行われるため、ユーザ認証を行う際のユーザの負担を軽減することができる。
【0066】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0067】
たとえば、上述した実施形態では、ユーザ認証情報が登録されていない初期状態である場合に、初期登録処理を行う構成を例示したが、たとえば、複数のユーザでレンズ鏡筒200を利用する場合には、既に登録されたユーザが認証されている状態で、ユーザ情報登録ボタンが押下された場合にも、初期登録処理を行える構成としてもよい。これにより、新たなユーザのユーザ認証情報を追加することができ、新たなユーザが、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影することができる。また、1人のユーザで、左右両方の目に対応するユーザ認証情報をそれぞれ登録し、左右両方の目に対応する各ユーザ認証情報に基づいて、ユーザ認証を行う構成としてもよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、ユーザを認証できない場合には、被写体からの光束の光軸L1上にスキャナ271を挿入することで、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影することができないよう制御を行う構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、たとえば、ユーザを認証できない場合には、被写体にピントが合わないように、フォーカスレンズ212を駆動させることで、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影することができないよう制御を行う構成としてもよい。また、たとえば、ユーザを認証できない場合には、フォーカスレンズ212を至近端に固定することで、無限遠側に位置する被写体を、レンズ鏡筒200を使用して、撮影することができないよう制御を行う構成としてもよい。さらに、ユーザを認証できない場合には、たとえば、ズームレンズを所定のレンズ位置に固定することで、ユーザが望む焦点距離で撮影を行えないよう制御を行う構成としてもよい。加えて、ユーザを認証できない場合には、たとえば、光学系を光軸方向に傾けて、被写体からの光束の光軸L1が、撮像素子110に照射されないようにすることで、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影できないよう制御を行う構成としてもよい。さらに、上記した構成を組み合わせた構成とすることもできる。
【0069】
さらに、ユーザを認証できない場合には、レンズ制御部250からカメラ制御部170に対して、ユーザを認証できなかった旨の信号を送信することで、カメラ制御部170に、画像を撮像できないように制御を行わせる構成としてもよい。たとえば、ユーザを認証できない場合には、カメラ制御部170に、カメラ1の電源をオフにさせ、あるいは、カメラ制御部170に、シャッターレリーズボタンの全押し操作が行われた場合でも、シャッター111を開けないように制御させることで、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮像できないよう制御を行うことができる。加えて、ユーザを認証できない場合には、カメラ制御部170に、撮影した画像を、ユーザが閲覧できないように制御を行わせる構成としてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、ユーザを認証できた場合に、被写体からの光束の光軸L1上からスキャナ271を退避させることで、レンズ鏡筒200を使用して、画像を撮影できるよう制御を行う構成を例示したが、この構成に加えて、ユーザを認証できた場合には、たとえば、認証されたユーザに適した視度となるように、視度調整を行う構成としてもよい。また、ユーザを認証できた場合には、たとえば、認証されたユーザが最も高い頻度で使用する焦点距離となるように制御を行う構成としてもよい。さらに、ユーザを認証できた場合には、認証されたユーザのユーザ設定を読み出し、読み出したユーザ設定に応じて制御を行う構成としてもよい。
【0071】
さらに、上述した実施形態では、電源がオンにされたタイミングで、ユーザ認証処理を行う構成を例示したが、この構成に加えて、たとえば、シャッターレリーズボタンの半押し操作などにより、カメラ1がスリープモードから復帰したタイミングにおいても、ユーザ認証処理を行う構成としてもよい。さらに、上述した実施形態では、電源をオフにするために電源ボタンが押下されたタイミングで、スキャナ271を、被写体からの光束の光軸L1上に挿入し、レンズ鏡筒200を使用できない状態とする構成を例示したが、この構成に加えて、たとえば、カメラ1の動作モードがスリープモードに移行したタイミングや、カメラ1がロックされたタイミングにおいても、スキャナ271を光軸L1上に挿入し、レンズ鏡筒200を使用できない状態とする構成としてもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、スキャナ271を、被写体からの光束の光軸L1上に挿入することで、スキャナ271により、撮像素子110に向かう光束(光軸L1)を遮る構成を例示したが、この場合、スキャナ271を、撮像素子110に向かう光束の全てを遮るような構成としてもよく、あるいは、撮像素子110に向かう光束の一部のみを遮るような構成としてもよい。また、上述した実施形態では、スキャナ駆動モータ272を、光軸L1から外れた位置に配置する構成を例示したが、たとえば、スキャナ駆動モータ272を、スキャナ271とともに移動可能とする構成としてもよい。
【0073】
加えて、上述した初期登録処理およびユーザ認証処理を実行するか否かを、ユーザが選択できる構成としてもよい。なお、この場合、初期登録処理およびユーザ認証処理を実行しないとの選択は、レンズ鏡筒200が初期状態である場合、または、ユーザが認証されている場合にのみ行うことができる。
【0074】
なお、本実施形態のカメラ1は特に限定されず、例えば、銀塩フィルムカメラに、本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0075】
1…一眼レフデジタルカメラ
100…カメラボディ
110…撮像素子
137…測光センサ
150…操作部
160…焦点検出モジュール
170…カメラ制御部
200…レンズ鏡筒
212…フォーカスレンズ
230…フォーカスレンズ駆動モータ
240…メモリ
250…レンズ制御部
271…スキャナ
272…スキャナ駆動モータ
281,282…発光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザを識別するための識別情報を検出する識別情報検出部と、
前記ユーザの識別情報に基づいて、ユーザの識別を行う識別部と、
前記識別部によるユーザの識別結果に基づいて、光学系による像を撮像するための動作を制御する制御部と、を備えることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ鏡筒であって、
前記制御部は、前記識別部によりユーザを識別できない場合には、前記光学系による像の撮像を不能とするような制御を行うことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズ鏡筒であって、
前記光学系を通過する光束を遮光するための遮光部をさらに備え、
前記制御部は、前記識別部によりユーザを認識できない場合には、前記遮光部により、前記光学系を通過する光束を遮光することで、前記光学系による像の撮像を不能とすることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項3に記載のレンズ鏡筒であって、
前記識別情報検出部は、前記遮光部に設置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒であって、
前記制御部は、前記識別部によりユーザを識別できない場合には、前記光学系を駆動させることで、前記光学系による像の撮像を不能とすることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のレンズ鏡筒であって、
前記識別情報検出部は、ユーザの網膜情報を、前記識別情報として検出することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のレンズ鏡筒であって、
前記識別情報検出部は、ユーザの虹彩情報を、前記識別情報として検出することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のレンズ鏡筒であって、
前記識別情報検出部は、ユーザの瞬きに関する情報を、前記識別情報として検出することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のレンズ鏡筒であって、
前記識別情報検出部は、ユーザが行ったジェスチャーに関する情報を、前記識別情報として検出することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のレンズ鏡筒であって、
前記制御部は、前記識別部によりユーザを識別できた場合には、識別されたユーザに応じて、前記光学系の焦点距離を設定することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のレンズ鏡筒であって、
前記制御部は、前記識別部によりユーザを識別できた場合には、識別されたユーザに応じて、ユーザ設定を読み出すことを特徴とするレンズ鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−61508(P2013−61508A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200203(P2011−200203)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】