説明

レンズ駆動機構

【課題】レンズとレンズバリアとを同一のモータで可動しながらも、モータの負荷を軽減する。
【解決手段】入射窓3を開閉するレンズバリア30と、光軸Xに沿った第1光軸方向X1および第2光軸方向X2に可動するレンズ保持枠14と、レンズ保持枠14に接触してレンズ保持枠14の第1光軸方向X1への可動を制限する可動制限部と、レンズ保持枠14と一体となって移動するレンズ駆動範囲Y1、および、レンズバリア30を変位させるとともにレンズ駆動範囲Y1よりも第1光軸方向X1に位置するバリア駆動範囲Y2を、モータの駆動力によって移動するナット17と、ナット17とレンズ保持枠14との間に介在され、レンズ保持枠14をナット17に対して第1光軸方向X1に付勢する第1引張コイルバネ19と、第1引張コイルバネ19と同一方向にレンズ保持枠14を付勢する第2引張コイルバネ26と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体内に光を入射させる入射窓開閉用のレンズバリア、および、フォーカス用またはズーム用のレンズを駆動する撮像装置のレンズ駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオカメラやスチールカメラなどの撮像装置においては、本体内にフォーカス用またはズーム用のレンズが設けられており、これらのレンズが当該レンズの光軸方向に可動するようになっている。また、本体内に光を入射させるための入射窓には、当該入射窓を開閉して、レンズや各種の光学部材を保護するレンズバリアが設けられている。これらのレンズやレンズバリアは、いずれもモータの駆動力によって駆動するものである。
【0003】
そして、特許文献1には、小型化や軽量化を実現すべく、フォーカス用またはズーム用のレンズとレンズバリアとが同一のモータによって駆動される撮像装置が開示されている。この撮像装置においては、レンズを保持するレンズ保持枠の光軸方向への可動を制限するストッパーと、このストッパーに向けてレンズ保持枠を付勢するバネと、が設けられている。そして、レンズ保持枠を可動する場合には、モータを駆動してガイドスクリューを回転させ、当該ガイドスクリューに螺合するナットを光軸方向に移動させる。これにより、レンズ駆動範囲においては、ナットがレンズ保持枠に係合するとともに、当該レンズ保持枠がバネの付勢力に抗して光軸方向に移動する。
【0004】
また、上記のナットは、レンズ保持枠がストッパーに接触して光軸方向への可動が制限された状態で、さらにバネの付勢方向にあるバリア駆動範囲を移動可能となっている。そして、このバリア駆動範囲においては、ナットがレンズバリアに係合して、当該レンズバリアを開状態または閉状態に変位させる。このように、上記の撮像装置のレンズ駆動機構においては、レンズとレンズバリアとの双方が同一のモータによって駆動されるので、レンズバリア専用の駆動源を不要とすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開特開2006/035580号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のレンズ駆動機構においては、ナットがバリア駆動範囲にあるときに、ナットとレンズ保持枠との係合関係が断たれる。そのため、ナットがバリア駆動範囲にある場合には、撮像装置内でレンズ保持枠ががたつかないように、当該レンズ保持枠をストッパーに付勢するバネの付勢力を一定以上確保しなければならないが、これによって次のような課題が生じる。
【0007】
図9は、レンズ駆動範囲およびバリア駆動範囲におけるモータの負荷について説明する図である。例えば、ナットがバリア駆動範囲にある場合に、レンズ保持枠のがたつきを防止すべく、レンズ保持枠に対して作用するバネの付勢力を0.2N確保したとする。しかしながら、ズーミングやフォーカシングの際には、このバネの付勢力に抗してナットを移動させなければならず、バネの付勢力がそのままモータの負荷となってしまう。しかも、バネの付勢力は、レンズ駆動範囲においてナットが移動してバネが圧縮されるにつれて徐々に大きくなるため、それに伴ってモータの負荷も大きくなってしまう。
【0008】
このように、レンズ駆動範囲においてモータの負荷が大きくなると、モータの駆動中にレンズが揺れたり、モータの駆動音が大きくなったりするとともに、不要に消力を消費するおそれがある。
【0009】
そこで本発明は、レンズとレンズバリアとを同一のモータで可動しながらも、モータの負荷を軽減することにより、レンズの揺れやモータの駆動音、さらには消費電力を低減することができるレンズ駆動機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のレンズ駆動機構は、本体に設けられた入射窓と、入射窓から本体内への光の入射を可能とする開状態および本体内への光の入射を遮断する閉状態に変位するレンズバリアと、レンズバリアが開状態にある場合に入射窓から入射される入射光が導かれるレンズと、レンズを保持するとともに当該レンズの光軸に沿ってレンズバリアに向かう第1光軸方向および当該第1光軸方向と反対方向である第2光軸方向に可動するレンズ保持枠と、レンズ保持枠に接触して当該レンズ保持枠の第1光軸方向への可動を制限する可動制限部と、レンズ保持枠に直接または間接的に係合可能なレンズ駆動範囲を移動するとともに、当該レンズ駆動範囲でレンズ保持枠に係合して移動することにより、当該レンズ保持枠を第1光軸方向または第2光軸方向に移動させ、レンズ駆動範囲よりも第1光軸方向に位置しレンズバリアに直接または間接的に係合可能なバリア駆動範囲を移動するとともに、当該バリア駆動範囲でレンズバリアに係合して移動することにより、当該レンズバリアを開状態または閉状態に変位させる移動部材と、移動部材を駆動するモータと、移動部材とレンズ保持枠との間に介在され、レンズ保持枠を移動部材に対して第1光軸方向に付勢する第1付勢部材と、第1付勢部材と同一方向にレンズ保持枠を付勢する第2付勢部材と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明のレンズ駆動機構は、移動部材がレンズ駆動範囲にある場合に、移動部材との係合関係が断たれてレンズバリアを開状態に維持する第1位置に保持され、移動部材がバリア駆動範囲にある場合に、移動部材に係合してレンズバリアを閉状態に維持する第2位置に保持されるバリア駆動部材を備えたことを特徴とする。
また、本発明のレンズ駆動機構は、第2付勢部材が、一端がレンズ保持枠に係止されて、当該レンズ保持枠を可動制限部に接触させる方向に付勢力を作用させ、他端がバリア駆動部材に係止されて、当該バリア駆動部材を第1位置に保持する方向に付勢力を作用させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明は、レンズとレンズバリアとを同一のモータで可動しながらも、モータの負荷が軽減されるので、レンズの揺れやモータの駆動音、さらにはモータ駆動時の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のデジタルビデオカメラを示す図である。
【図2】レンズ駆動機構の側面概略図である。
【図3】レンズ駆動機構の上面概略図である。
【図4】レンズ駆動機構の正面概略図である。
【図5】レンズ駆動機構の動作過程を説明する側面概略図である。
【図6】レンズ駆動機構の動作過程を説明する上面概略図である。
【図7】レンズ駆動機構の正面概略図であり、レンズバリアの閉状態を示す図である。
【図8】レンズ駆動範囲およびバリア駆動範囲におけるモータの負荷を説明する図である。
【図9】従来のレンズ駆動機構によるレンズ駆動範囲およびバリア駆動範囲におけるモータの負荷を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態のデジタルビデオカメラを示す図である。この図に示すように、デジタルビデオカメラ1の本体2には、当該本体2内に光を入射させる入射窓3と、この入射窓3を開閉するレンズバリア30とが設けられている。このレンズバリア30は、入射窓3から本体2内への光の入射を可能とする開状態、または、本体2内への光の入射を遮断する閉状態に変位する。
【0015】
図2および図3は、本体2に設けられるレンズ駆動機構の概略図であり、図2は本体2の側面概略図、図3は本体2の上面概略図である。なお、図2および図3においては、レンズ駆動機構の構成部品を主に示しており、本体2を破線で示している。また、以下では、本体2内に設けられる各レンズ群の光軸をXとするとともに、この光軸Xに沿った一方の方向を第1光軸方向X1とし、この第1光軸方向X1と反対方向を第2光軸方向X2として説明する。
【0016】
図2および図3に示すように、本体2内には、入射窓3から入射される入射光が導かれる第1レンズ群11および第2レンズ群12が設けられている。第1レンズ群11は、本体2に固定された第1レンズ保持枠13に保持されており、第2レンズ群12は、第1レンズ保持枠13よりも第2光軸方向X2に位置する第2レンズ保持枠14に保持されている。また、本体2内には、軸心を光軸Xに沿うようにして配置された一対のガイドシャフト15a、15bが固定されている。そして、上記の第2レンズ保持枠14は、一対のガイドシャフト15a、15bにガイドされて光軸Xに沿って可動するように設けられている。
【0017】
また、本体2内には、モータMの駆動力によって回転するガイドスクリュー16が設けられている。このガイドスクリュー16は、ガイドシャフト15aよりも本体2の高さ方向(図2の上下方向)外方において、一対のガイドシャフト15a、15bと平行に配置されている。そして、このガイドスクリュー16には、当該ガイドスクリュー16の回転に伴って光軸Xに沿って移動するナット17が螺合されており、このナット17の移動によって上記の第2レンズ保持枠14が光軸Xに沿って可動する構成としている。
【0018】
具体的には、第2レンズ保持枠14には、ガイドシャフト15aよりもガイドスクリュー16側に突出する突出係合部14aが設けられている。また、ナット17には、当該ナット17と一体となって光軸Xに沿って移動するレンズ駆動部材18が固定されている。このレンズ駆動部材18には、突出係合部14aに対して光軸方向X1側に対面配置される伝達面18aが設けられている。そして、ナット17が第2光軸方向X2に移動すると、伝達面18aと突出係合部14aとが接触状態となり、ナット17の第2光軸方向X2への推進力が、伝達面18aおよび突出係合部14aを介して第2レンズ保持枠14に伝達されることとなる。
【0019】
また、図3に示すように、ナット17には、本体2の幅方向(図3の上下方向)内方に突出するとともに、突出係合部14aに対面する係止部17aが設けられている。そして、この係止部17aには、第1付勢部材を構成する第1引張コイルバネ19の一端が係止され、突出係合部14aには、第1引張コイルバネ19の他端が係止されている。この第1引張コイルバネ19は、係止部17a(ナット17)に対して、図中右方向に作用する付勢力を付与するとともに、突出係合部14a(第2レンズ保持枠14)に対して、図中左方向に作用する付勢力を付与するものである。換言すれば、第1引張コイルバネ19は、係止部17a(ナット17)と突出係合部14a(第2レンズ保持枠14)とが互いに近づく方向の付勢力を作用させている。したがって、ナット17が第1光軸方向X1に移動すると、第1引張コイルバネ19の付勢力によって、突出係合部14aすなわち第2レンズ保持枠14が、ナット17に追従して第1光軸方向X1に移動することとなる。
【0020】
そして、ナット17には、当該ナット17と一体となって光軸Xに沿って移動する伝達部材20が設けられている。この伝達部材20は、ガイドスクリュー16の長手方向に沿って延在しており、第1光軸方向X1先端側には、鉛直上方に突出する係合ピン20aが設けられている。また、伝達部材20の光軸方向X1前方には、上記の係合ピン20aに係合して揺動されるバリア駆動部材21が設けられており、ナット17および伝達部材20の直線運動が、バリア駆動部材21の揺動運動に変換されるようになっている。
【0021】
図4は、本体2の正面概略図である。この図に示すように、バリア駆動部材21は、揺動軸22と、この揺動軸22を中心として揺動する揺動本体23とを備えている。揺動本体23には、係合ピン20aの移動軌跡上に突出する係合突片23aが設けられており、係合ピン20aが、その移動過程で係合突片23aに係合することにより、揺動本体23が揺動軸22を中心として揺動することとなる。また、揺動本体23の下面には、当該揺動本体23と一体となって揺動する揺動プレート24が設けられており、この揺動プレート24の下面から鉛直下方に揺動ピン24aを突出させている。
【0022】
そして、本体2の正面には、光軸Xを揺動中心として周方向に揺動する環状のリング部材25が設けられている。このリング部材25は、当該リング部材25の径方向外方に突出する一対の挟持片25aを備えており、これら一対の挟持片25aを、上記の揺動ピン24aの揺動方向両側に接触させている。したがって、リング部材25は、揺動ピン24aの揺動に伴って周方向に揺動することとなる。
【0023】
また、リング部材25よりも本体2の正面側には、当該リング部材25に対面配置されるレンズバリア30が設けられている。このレンズバリア30は、一対の第1レンズバリア31および一対の第2レンズバリア32を備えている。詳しい説明は省略するが、これら両レンズバリア31、32は、リング部材25に連結された支持部33に軸支されている。この支持部33は、リング部材25の揺動にともなって所定角度のみ回動するように構成されており、リング部材25が図示の揺動位置にある場合には、両レンズバリア31、32が図示のように開状態となる。そして、この状態からリング部材25が図中時計回り方向に揺動すると、支持部33が回動するとともに、この支持部33の回動に伴って両レンズバリア31、32が閉状態へと切り換わることとなる(図7参照)。
【0024】
なお、図2および図3に示すように、バリア駆動部材21と第2レンズ保持枠14との間には、第2付勢部材を構成する第2引張コイルバネ26が介在されている。より具体的には、バリア駆動部材21の揺動本体23には、第2引張コイルバネ26の一端が係止され、第2レンズ保持枠14の突出係合部14aには、第2引張コイルバネ26の他端が係止されている。この第2引張コイルバネ26は、揺動本体23に対して、図中右方向より詳細には図3中時計回り方向に作用する付勢力を付与するとともに、突出係合部14a(第2レンズ保持枠14)に対して、図中左方向に作用する付勢力を付与するものである。換言すれば、第2引張コイルバネ26は、揺動本体23と突出係合部14a(第2レンズ保持枠14)とが互いに近づく方向の付勢力を作用させている。したがって、第2レンズ保持枠14には、上記した第1引張コイルバネ19と第2引張コイルバネ26とによって、第1光軸方向X1の付勢力が常時作用することとなる。
【0025】
次に、図5および図6を用いて、上記の構成からなる本実施形態のレンズ駆動機構の動作について説明する。図5および図6は、本実施形態のレンズ駆動機構の動作過程を説明する図であり、図5は側面概略図、図6は上面概略図である。
【0026】
いま、例えば、デジタルビデオカメラ1において撮影を行うにあたって、ズーミングやフォーカシングを行う場合には、図5(a)および図6(a)に示すように、ナット17がレンズ駆動範囲Y1にある。このように、ナット17がレンズ駆動範囲Y1にあるときには、第1引張コイルバネ19によって、第2レンズ保持枠14を第1光軸方向X1に付勢する付勢力が作用し、第2レンズ保持枠14の突出係合部14aとレンズ駆動部材18とが接触状態となる。つまり、ナット17がレンズ駆動範囲Y1にあるときには、第2レンズ保持枠14がナット17に係合して所定位置に保持されることとなる。
【0027】
そして、レンズ駆動範囲Y1において、第1光軸方向X1にナット17が移動すると、第2レンズ保持枠14は、第1引張コイルバネ19および第2引張コイルバネ26の付勢力によって、ナット17に追従するように、レンズバリア30に向かう方向である第1光軸方向X1に移動する。これに対して、レンズ駆動範囲Y1において、第2光軸方向X2にナット17が移動すると、第2レンズ保持枠14は、第2引張コイルバネ26の付勢力に抗して、レンズバリア30から離間する方向である第2光軸方向X2に移動することとなる。
【0028】
また、上記のようにナット17がレンズ駆動範囲Y1にある場合には、バリア駆動部材21とナット17との係合関係が断たれた状態にあり、バリア駆動部材21は、図示の第1揺動位置に保持されている。バリア駆動部材21が第1揺動位置にある場合には、図4に示すように、レンズバリア30が開状態となっている。なお、図6(a)に示すように、第2引張コイルバネ26の一端は、揺動本体23に対して、それを図中時計回り方向に揺動させる付勢力が作用する位置、換言すれば、レンズ駆動部材21を第1揺動位置に保持するように係止されている。
【0029】
そして、例えば、上記のようにナット17がレンズ駆動範囲Y1にある状態で、デジタルビデオカメラ1の電源をオフする操作がなされると、モータMが駆動してナット17が第1光軸方向X1に移動する。すると、上記したとおり、第2レンズ保持枠14がナット17に追従して第1光軸方向X1に移動するが、この移動過程において、図5(b)および図6(b)に示すように、第2レンズ保持枠14が第1レンズ保持枠13に接触し、それ以上の第1光軸方向X1への移動が制限される。つまり、第1レンズ保持枠13が、第2レンズ保持枠14の第1光軸方向X1への可動を制限する可動制限部(ストッパー)として機能することとなる。したがって、第2レンズ保持枠14が第1レンズ保持枠13に接触したときのナット17の位置が、第1光軸方向X1におけるレンズ駆動範囲Y1の終点となる。
【0030】
また、第2レンズ保持枠14が、第1光軸方向X1への移動を制限された状態では、係合ピン20aが揺動本体23の係合突片23aに接触し、ナット17とバリア駆動部材21とが伝達部材20を介してちょうど係合した状態となる。したがって、第2レンズ保持枠14が第1レンズ保持枠13に接触したときのナット17の位置は、第1光軸方向X1におけるレンズ駆動範囲Y1の終点になるのと同時にバリア駆動範囲Y2の始点となる。
【0031】
そして、この状態からさらにナット17が第1光軸方向X1に移動すると、図5(c)および図6(c)に示すように、ナット17の移動過程で、係合ピン20aが係合突片23aに係合して、バリア駆動部材21を第2揺動位置まで揺動させる。このようにして、バリア駆動部材21が揺動すると、当該バリア駆動部材21の揺動動作がリング部材25を介してレンズバリア30に伝達され、図7に示すように、レンズバリア30が閉状態に変位することとなる。
【0032】
なお、図5(b)および図6(b)に示す状態から、ナット17が第1光軸方向X1へ移動すると、ナット17と第2レンズ保持枠14との係合関係が断たれるが、このとき、第2レンズ保持枠14には、第1引張コイルバネ19および第2引張コイルバネ26の双方の付勢力が第1光軸方向X1に作用する。したがって、第2レンズ保持枠14は、ナット17との係合関係が断たれた状態でも、第1レンズ保持枠13に接触した状態に維持されることとなる。
【0033】
また、ナット17がバリア駆動範囲Y2において移動する際には、ナット17に対して、第1引張コイルバネ19の付勢力と、バリア駆動部材21を図5(b)および図6(b)に示す第1揺動位置に保持しようとする保持力とが負荷となって作用する。このようにしてナット17を移動させる際に作用するモータMの負荷と、ナット17の移動範囲との関係について、以下に説明する。
【0034】
図8は、レンズ駆動範囲Y1およびバリア駆動範囲Y2におけるモータMの負荷を説明する図である。この実施形態においても、ナット17がバリア駆動範囲Y2にある場合に、当該第2レンズ保持枠14を第1レンズ保持枠13に対して押し付ける力を0.2N確保したとする。ただし、このときの付勢力は、第1引張コイルバネ19と第2引張コイルバネ26とでそれぞれ0.1Nずつ作用させ、その合力によって0.2Nを確保している。
【0035】
そして、この場合において、モータMに作用する負荷は次のようになる。すなわち、ナット17がバリア駆動範囲Y2にある場合には、第2レンズ保持枠14とナット17との係合関係が断たれるため、図中破線で示す第2引張コイルバネ26の付勢力がモータMの負荷となることはない。ただし、本実施形態においては、第2引張コイルバネ26の付勢力を、バリア駆動部材21を第1揺動位置に保持する保持力となるように作用させているため、第2引張コイルバネ26の付勢力は、図中実線(細)で示すように、レンズバリア30を開閉するための負荷となって作用する。
【0036】
また、バリア駆動範囲Y2においては、図中一点鎖線で示すように、第1引張コイルバネ19の付勢力がモータMの負荷となって作用する。したがって、バリア駆動範囲Y2におけるモータMの負荷は、図中実線(太)で示すとおりとなる。
【0037】
一方、ナット17がレンズ駆動範囲Y1にある場合には、第2レンズ保持枠14とナット17とが係合関係にあるため、図中破線で示すように、第2引張コイルバネ26の付勢力がモータMの負荷となる。ただし、レンズ駆動範囲Y1においては、第1引張コイルバネ19の付勢力がモータMの負荷となって作用することはない。したがって、レンズ駆動範囲Y1におけるモータMの負荷は、図中実線(太)で示すとおり、ほぼ第2引張コイルバネ26の付勢力と等しくなる。
【0038】
上記したとおり、本実施形態においては、第2レンズ保持枠14を第1レンズ保持枠13に対して押し付ける力を、第1引張コイルバネ19と第2引張コイルバネ26とでそれぞれ0.1Nずつ作用させている。したがって、第2レンズ保持枠14の保持力を従来と同じように確保したとしても、レンズ駆動範囲Y1において、第2引張コイルバネ26によってもたらされるモータMの負荷がほぼ半減されることとなる。
【0039】
このように、本実施形態によれば、モータMに作用する負荷が軽減されるので、特に、ズーミングやフォーカシングの際のレンズ揺れや、モータMの駆動音、さらにはモータMを駆動するための消費電力を低減することができる。また、モータMの最大負荷が軽減されるので、モータMのさらなる小型化を実現することもできる。
【0040】
なお、本実施形態においては、第2レンズ保持枠14に作用させる付勢力を、第1引張コイルバネ19と第2引張コイルバネ26とで半分ずつ作用させることとしたが、第2レンズ保持枠14に作用させる付勢力の割合は特に限定されるものではない。いずれにしても、第1引張コイルバネ19と第2引張コイルバネ26との付勢力の割合は、レンズ駆動範囲Y1におけるモータMの負荷と、バリア駆動範囲Y2におけるモータMの負荷とを考慮して適宜設定すればよい。
【0041】
また、本実施形態においては、デジタルビデオカメラ1にレンズ駆動機構を適用した場合について説明したが、上記のレンズ駆動機構は、デジタルスチールカメラや、アナログ式のビデオカメラ、スチールカメラなど、レンズとレンズバリアとを有する撮像装置に広く適用可能である。ただし、レンズの揺れやモータMの駆動音によってモータMらされる性能への影響は、デジタルビデオカメラにおいてより大きくなる。したがって、上記のレンズ駆動機構は、デジタルビデオカメラに対して特に有効である。
【0042】
また、本実施形態においては、ナット17、レンズ駆動部材18および伝達部材20によって移動部材を構成し、この移動部材を介して第2レンズ保持枠14やレンズバリア30に伝達することとしたが、モータMの駆動力を伝達するための構成は特に限定されるものではない。例えば、モータMの駆動力によって移動する移動部材を、第2レンズ保持枠14またはレンズバリア30に直接係合させるようにしてもよい。また、例えば、モータの回転運動は、ラックピニオン機構によって直線運動に変換してもよい。いずれにしても、1つのモータの駆動力によって、レンズとレンズバリアとの双方を可動するとともに、上記と同様の作用効果を実現可能であれば、動力を伝達するための構成は特に限定されるものではない。
【0043】
したがって、本実施形態においては、第1付勢部材および第2付勢部材を、引張バネである第1引張コイルバネ19および第2引張コイルバネ26によって構成したが、付勢力の作用方向や作用対象が上記実施形態と同様であれば、両付勢部材を圧縮バネで構成してもよい。また、本実施形態においては、第2引張コイルバネ26の一端をバリア駆動部材21(揺動本体23)に係止することとしたが、上記と同様の付勢力を第2レンズ保持枠14に作用させることができれば、第2引張コイルバネ26の一端は、ナット17以外のいずれの部品に係止してもよいし、本体2に直接係止してもよい。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、本体内に光を入射させる入射窓を開閉するレンズバリア、および、フォーカス用またはズーム用のレンズを駆動する撮像装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
X 光軸
X1 第1光軸方向
X2 第2光軸方向
Y1 レンズ駆動範囲
Y2 バリア駆動範囲
1 デジタルビデオカメラ
2 本体
3 入射窓
12 第2レンズ群
13 第1レンズ保持枠
14 第2レンズ保持枠
16 ガイドスクリュー
17 ナット
18 レンズ駆動部材
19 第1引張コイルバネ
20 伝達部材
21 バリア駆動部材
26 第2引張コイルバネ
30 レンズバリア
31 第1レンズバリア
32 第2レンズバリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に設けられた入射窓と、
前記入射窓から本体内への光の入射を可能とする開状態および前記本体内への光の入射を遮断する閉状態に変位するレンズバリアと、
前記レンズバリアが開状態にある場合に前記入射窓から入射される入射光が導かれるレンズと、
前記レンズを保持するとともに当該レンズの光軸に沿って前記レンズバリアに向かう第1光軸方向および当該第1光軸方向と反対方向である第2光軸方向に可動するレンズ保持枠と、
前記レンズ保持枠に接触して当該レンズ保持枠の第1光軸方向への可動を制限する可動制限部と、
前記レンズ保持枠に直接または間接的に係合可能なレンズ駆動範囲を移動するとともに、当該レンズ駆動範囲で前記レンズ保持枠に係合して移動することにより、当該レンズ保持枠を前記第1光軸方向または第2光軸方向に移動させ、前記レンズ駆動範囲よりも前記第1光軸方向に位置し前記レンズバリアに直接または間接的に係合可能なバリア駆動範囲を移動するとともに、当該バリア駆動範囲で前記レンズバリアに係合して移動することにより、当該レンズバリアを前記開状態または閉状態に変位させる移動部材と、
前記移動部材を駆動するモータと、
前記移動部材とレンズ保持枠との間に介在され、前記レンズ保持枠を前記移動部材に対して第1光軸方向に付勢する第1付勢部材と、
前記第1付勢部材と同一方向に前記レンズ保持枠を付勢する第2付勢部材と、を備えたことを特徴とするレンズ駆動機構。
【請求項2】
前記移動部材が前記レンズ駆動範囲にある場合に、前記移動部材との係合関係が断たれて前記レンズバリアを開状態に維持する第1位置に保持され、前記移動部材が前記バリア駆動範囲にある場合に、前記移動部材に係合して前記レンズバリアを閉状態に維持する第2位置に保持されるバリア駆動部材を備えたことを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動機構。
【請求項3】
前記第2付勢部材は、
一端が前記レンズ保持枠に係止されて、当該レンズ保持枠を前記可動制限部に接触させる方向に付勢力を作用させ、他端が前記バリア駆動部材に係止されて、当該バリア駆動部材を第1位置に保持する方向に付勢力を作用させることを特徴とする請求項2記載のレンズ駆動機構。

【図1】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−194383(P2012−194383A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58327(P2011−58327)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】