説明

レンズ駆動装置およびレンズ駆動装置の製造方法

【課題】駆動用磁石で発生し駆動用コイルを通過する磁束の密度を高めることが可能で、かつ、可動体と固定体とを繋ぐ板バネを複雑な形状にしなくても、板バネを保護しつつ、構成を簡素化することが可能なレンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】レンズ駆動装置1は、可動体2と固定体3と駆動機構4と板バネ5とを備えている。駆動機構4は、可動体2に固定される駆動用コイル15と、固定体3に固定され、レンズの径方向の外側で駆動用コイル15に対向配置される駆動用磁石17とを備えている。固定体3は、磁性材料で形成され光軸方向における駆動用磁石17の一方の端面を覆うように配置される端板部13aと径方向における駆動用コイル15の内側に配置される内側ヨーク部13bとを有するヨーク部材13と、ヨーク部材13と別体で形成されるとともに磁性材料で形成され、可動体2、駆動機構4および板バネ5の外周側を覆うカバー部材10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるレンズ駆動装置、および、このレンズ駆動装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等に搭載されるカメラの撮影用レンズを駆動するレンズ駆動装置として、レンズを保持して光軸方向に移動するホルダと、ホルダを光軸方向へ駆動する駆動用コイルおよび駆動用磁石とを備えるレンズ駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズ駆動装置は、光軸方向から見たときの形状が正方形状となるように形成されている。このレンズ駆動装置は、板状に形成された8個の駆動用磁石を備えており、駆動用磁石は、レンズ駆動装置の四隅のそれぞれと、レンズ駆動装置の四辺のそれぞれに配置されている。また、このレンズ駆動装置では、駆動用コイルは、ホルダに固定されている。この駆動用コイルは、光軸方向から見たときの形状が八角形状となるように巻回されており、八角形状に巻回される駆動用コイルの各辺のそれぞれは、レンズ駆動装置の径方向の内側で、8個の駆動用磁石のそれぞれと対向している。
【0003】
また、このレンズ駆動装置は、駆動用コイルおよび駆動用磁石の外周側を覆うヨークを備えている。このヨークは、レンズ駆動装置の径方向における8個の駆動用磁石の外側面を覆う八角筒状の外側ヨーク片と、レンズ駆動装置の径方向における駆動用コイルの内周側に配置される4個の内側ヨーク片を備えている。4個の内側ヨーク片は、レンズ駆動装置の四隅に配置される駆動用磁石の内側面に駆動用コイルを介して対向配置されている。なお、このレンズ駆動装置では、内側ヨーク片は、光軸方向から見たときの形状が円弧状なる曲板状に形成されている。
【0004】
さらに、このレンズ駆動装置は、ホルダを光軸方向へ移動可能に保持するための上部板バネを備えている。この上部板バネは、ヨーク等に固定される外環部と、ホルダに固定される内環部と、外環部と内環部とを繋ぐ架橋部とから構成されている。このレンズ駆動装置のヨークは、外側ヨーク片と内側ヨーク片とが一体で形成されているため、ヨークの内部(すなわち、レンズ駆動装置の径方向における外側ヨーク片と内側ヨーク片との間)に外環部を配置すると、内側ヨーク片を避けるように架橋部を形成しなければならず、架橋部の形状が複雑になる。したがって、上部板バネは、ヨークの外側(ヨークよりも被写体側)に配置されている。また、このレンズ駆動装置では、上部板バネがヨークの外側に配置されているため、上部板バネを保護するためのカバーが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−191332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、8個の駆動用磁石の外側面が外側ヨーク片によって覆われるとともに、レンズ駆動装置の四隅に配置される駆動用磁石の内側面に駆動用コイルを介して、内側ヨーク片が対向配置されているため、駆動用磁石で発生し駆動用コイルを通過する磁束の密度を高めることが可能である。しかしながら、このレンズ駆動装置では、ヨークが内側ヨーク片を備えているため、上部板バネの形状が複雑にならないように、上部板バネがヨークの外側に配置されている。その結果、このレンズ駆動装置では、上部板バネを保護するためのカバーが別途、必要になり、レンズ駆動装置の構成が複雑になる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、駆動用磁石で発生し駆動用コイルを通過する磁束の密度を高めることが可能で、かつ、可動体と固定体とを繋ぐ板バネを複雑な形状にしなくても、板バネを保護しつつ、構成を簡素化することが可能なレンズ駆動装置を提供することにある。また、本発明の課題は、かかるレンズ駆動装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のレンズ駆動装置は、レンズを保持しレンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、可動体を光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、可動体を光軸方向へ駆動するための駆動機構と、可動体と固定体とを繋ぐ板バネとを備え、駆動機構は、可動体に固定される駆動用コイルと、固定体に固定され、レンズの径方向の外側で駆動用コイルに対向配置される駆動用磁石とを備え、固定体は、磁性材料で形成され、光軸方向における駆動用磁石の一方の端面を覆うように配置される端板部と径方向における駆動用コイルの内側に配置される内側ヨーク部とを有するヨーク部材と、ヨーク部材と別体で形成されるとともに磁性材料で形成され、可動体、駆動機構および板バネの外周側を覆うカバー部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のレンズ駆動装置では、レンズの径方向における駆動用コイルの内側に内側ヨーク部が配置され、かつ、駆動用コイルおよび駆動用磁石を有する駆動機構の外周側が磁性材料で形成されるカバー部材に覆われている。そのため、本発明では、駆動用磁石で発生し駆動用コイルを通過する磁束の密度を高めることが可能になる。
【0010】
また、本発明では、可動体、駆動機構および板バネの外周側を覆うカバー部材は、内側ヨーク部を有するヨーク部材と別体で形成されている。そのため、内側ヨーク部を避けた位置に、かつ、カバー部材の内部に板バネを配置することが可能になる。したがって、板バネの形状を複雑な形状にしなくても、カバー部材の内部に板バネを配置して、カバー部材によって板バネを保護することが可能になり、ヨークとして機能するカバー部材に加えて、板バネを保護するための部材を別途、設ける必要がなくなる。その結果、本発明では、板バネを複雑な形状にしなくても、板バネを保護しつつ、レンズ駆動装置の構成を簡素化することが可能になる。
【0011】
また、本発明では、カバー部材によって、可動体、駆動機構および板バネの外周側が覆われているため、カバー部材によって、レンズ駆動装置の内部への異物の侵入を防止することが可能になる。なお、特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、カバーの側面およびこのカバーに固定されるベースの側面に外側ヨーク片との干渉を防止するための開口部が形成されているため、このレンズ駆動装置では、カバーおよびベースを覆うケースを別途、設けなければ、レンズ駆動装置の内部への異物の侵入を防止することは困難である。
【0012】
本発明において、端板部は、略枠状に形成され、内側ヨーク部は、端板部の内周端面から光軸方向へ立ち上る平板状に形成されていることが好ましい。このように構成すると、内側ヨーク部を曲げ加工で形成することが可能になる。したがって、内側ヨーク部の厚さを端板部の厚さと同じにすることが可能になり、内側ヨーク部での磁気飽和を抑制することが可能になる。なお、特許文献1に記載の内側ヨーク片のように、内側ヨーク部が曲板状に形成される場合には、内側ヨーク部は、絞り加工で形成されるため、その厚さが端板部の厚さよりも薄くなり、その結果、内側ヨーク部で磁気飽和が生じやすくなる。
【0013】
本発明において、レンズ駆動装置は、光軸方向から見たときの形状が略四角形状となるように形成され、駆動機構は、駆動用磁石として、レンズ駆動装置の四隅のそれぞれに配置される第1駆動用磁石を備え、駆動用コイルは、光軸方向から見たときの形状が略八角形状となるように巻回されて形成されるとともに、略八角形状に形成される駆動用コイルの八辺のうちの四辺がレンズ駆動装置の4つの側面のそれぞれと略平行になり、かつ、駆動用コイルの八辺のうちの残りの四辺がレンズ駆動装置の四隅に配置されるように配置され、内側ヨーク部は、駆動用コイルを介して、第1駆動用磁石に対向配置され、第1駆動用磁石の駆動用コイルとの対向面は、平面状に形成されていることが好ましい。このように構成すると、第1駆動用磁石の駆動用コイルとの対向面と、内側ヨーク部との距離を均等に保ちつつ、第1駆動用磁石の駆動用コイルとの対向面に対向する内側ヨーク部の対向面積を大きくすることが可能になる。したがって、駆動用磁石で発生し駆動用コイルを通過する磁束の密度を効果的に高めることが可能になる。
【0014】
本発明において、駆動機構は、駆動用磁石として、レンズ駆動装置の4つの側面のそれぞれに沿って配置される第2駆動用磁石を備えることが好ましい。このように構成すると、駆動機構の駆動力を高めることが可能になる。
【0015】
本発明において、レンズ駆動装置は、光軸方向から見たときの形状が略四角形状となるように形成され、駆動機構は、駆動用磁石として、レンズ駆動装置の四隅のそれぞれに配置される第1駆動用磁石を備え、第1駆動用磁石は、光軸方向から見たときの形状が略台形状となる柱状に形成され、内側ヨーク部は、駆動用コイルを介して、第1駆動用磁石に対向配置され、ヨーク部材は、径方向の外側から第1駆動用磁石を覆う外側ヨーク部を備えることが好ましい。このように構成すると、デッドスペースとなりやすいレンズ駆動装置の四隅を利用して、外側ヨーク部を配置することができる。したがって、レンズ駆動装置を大型化させることなく、駆動用磁石で発生し駆動用コイルを通過する磁束の密度を効果的に高めることが可能になる。
【0016】
本発明において、レンズ駆動装置は、レンズ駆動装置の被写体側の端面を構成するカバー部材の被写体側端面部に対するヨーク部材の、光軸方向における位置決めを行うための位置決め部材を備え、位置決め部材は、ヨーク部材と別体で形成されていることが好ましい。このように構成すると、光軸方向において、ヨーク部材を精度良く位置決めすることが可能になる。
【0017】
本発明のレンズ駆動装置は、たとえば、被写体側端面部の反被写体側の面に、位置決め部材、板バネ、ヨーク部材および駆動用磁石をこの順番に順次積み重ねる組立工程を備えるレンズ駆動装置の製造方法によって製造される。本発明のレンズ駆動装置では、ヨーク部材とカバー部材とが別体で形成されているため、位置決め部材、板バネ、ヨーク部材および駆動用磁石をこの順番でカバー部材の中に積み重ねることで、光軸方向におけるこれらの部材の位置決めやこれらの部材同士の固定を簡単に行うことが可能になる。したがって、レンズ駆動装置の組立を容易に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のレンズ駆動装置では、駆動用磁石で発生し駆動用コイルを通過する磁束の密度を高めることが可能で、かつ、可動体と固定体とを繋ぐ板バネを複雑な形状にしなくても、板バネを保護しつつ、構成を簡素化することが可能になる。また、本発明のレンズ駆動装置の製造方法によれば、レンズ駆動装置の組立を容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置の斜視図である。
【図2】図1のE−E断面の断面図である。
【図3】図1に示すレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図4】図1に示すレンズ駆動装置からカバー部材およびスペーサを取り外した状態の斜視図である。
【図5】図2に示す駆動機構およびヨーク部材を反被写体側から示す底面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態にかかるヨーク部材の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
(レンズ駆動装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置1の斜視図である。図2は、図1のE−E断面の断面図である。図3は、図1に示すレンズ駆動装置1の分解斜視図である。なお、以下の説明では、図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、図1等のZ1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0022】
本形態のレンズ駆動装置1は、携帯電話、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるものであり、図1に示すように、全体として扁平な略四角柱状に形成されている。具体的には、レンズ駆動装置1は、撮影用のレンズの光軸Lの方向(光軸方向)から見たときの形状が略正方形状となるように形成されている。また、レンズ駆動装置1の4つの側面は、左右方向または前後方向と略平行になっている。
【0023】
本形態では、Z方向(上下方向)が光軸方向とほぼ一致している。また、本形態のレンズ駆動装置1が搭載されるカメラでは、下側に図示を省略する撮像素子が配置されており、上側に配置される被写体が撮影される。すなわち、本形態では、上側(Z1方向側)は被写体側(物体側)であり、下側(Z2方向側)は反被写体側(撮像素子側、像側)である。
【0024】
レンズ駆動装置1は、図1、図2に示すように、撮影用のレンズを保持し光軸方向へ移動可能な可動体2と、可動体2を光軸方向へ移動可能に保持する固定体3と、可動体2を光軸方向へ駆動するための駆動機構4とを備えている。また、レンズ駆動装置1は、可動体2と固定体3とを繋ぐ板バネ5、6(図2参照)を備えている。すなわち、可動体2は、板バネ5、6を介して固定体3に移動可能に保持されている。本形態では、板バネ5が可動体2の上端側に配置され、板バネ6が可動体2の下端側に配置されている。なお、図3では、板バネ5、6の図示を省略している。
【0025】
可動体2は、複数のレンズが固定されたレンズホルダ7を保持するスリーブ8を備えている。固定体3は、レンズ駆動装置1の側面を構成するカバー部材10と、レンズ駆動装置1の反被写体側の端面を構成するベース部材11と、板バネ5の一部が固定されるスペーサ12と、カバー部材10と別体で形成されるとともに磁性材料で形成されたヨーク部材13とを備えている。なお、図2、図3では、レンズホルダ7の図示を省略している。
【0026】
レンズホルダ7は、略円筒状に形成されている。このレンズホルダ7の内周側には、光軸方向から見たときの形状が円形状となる複数のレンズが固定されている。以下では、このレンズの径方向を「径方向」とする。
【0027】
スリーブ8は、たとえば、樹脂材料で形成されるとともに、略筒状に形成されている。図3に示すように、スリーブ8の内周面は、光軸方向から見たときの形状が略円形状となるように形成されている。スリーブ8の上端側の外周面は、光軸方向から見たときの形状が略円形状となるように形成されている。スリーブ8の下端側の外周面は、光軸方向から見たときの形状が略八角形状となるように形成されている。スリーブ8の下端側の外周面を構成する8つの側面のうちの4つの側面は、レンズ駆動装置1の4つの側面のそれぞれと略平行になるように配置され、スリーブ8の下端側の外周面を構成する8つの側面のうちの残りの4つの側面は、前後方向および左右方向に対して略45°傾いた状態でレンズ駆動装置1の四隅に配置されている。また、スリーブ8の下端部分には、径方向の外側へ広がる略八角形状の鍔部8aが形成されている。スリーブ8の内周面には、レンズホルダ7の外周面が固定されている。
【0028】
カバー部材10は、磁性材料で形成されている。また、カバー部材10は、底部10aと筒部10bとを有する底付きの略四角筒状に形成されている。上側に配置される底部10aは、レンズ駆動装置1の被写体側の端面を構成している。すなわち、本形態の底部10aは、レンズ駆動装置1の被写体側の端面を構成する被写体側端面部である。底部10aの中心には、貫通孔10cが形成されている。カバー部材10は、可動体2、駆動機構4および板バネ5、6の外周側を覆っている。本形態では、カバー部材10は、可動体2、駆動機構4および板バネ5、6の外周側をほぼ完全に覆っている。また、本形態では、カバー部材10は、スペーサ12およびヨーク部材13の外周側を完全に覆っている。
【0029】
ベース部材11は、たとえば、樹脂材料で形成されている。また、ベース部材11は、光軸方向から見たときの形状が略正方形となるブロック状に形成されている。このベース部材11は、カバー部材10の下端側に取り付けられている。ベース部材11の中心には、貫通孔11aが形成されている。
【0030】
スペーサ12は、たとえば、樹脂材料で形成されるとともに、略正方形の扁平なブロック状に形成されている。また、スペーサ12の中心には、光軸方向から見たときの形状が略八角形状となる貫通孔12aが形成されており、スペーサ12は、枠状に形成されている。スペーサ12は、カバー部材10の底部10aの下面に固定されている。
【0031】
板バネ5は、スリーブ8の上端側に固定される円環状の可動体固定部と、スペーサ12とヨーク部材13との間に固定される固定体固定部と、可動体固定部と固定体固定部とを繋ぐ複数の腕部とを備えている。この板バネ5は、その厚さ方向と光軸方向とが略一致するように、スリーブ8、スペーサ12およびヨーク部材13に固定されている。板バネ6は、スリーブ8の下端側に固定される可動体固定部と、ベース部材11に固定される固定体固定部と、可動体固定部と固定体固定部とを繋ぐ腕部とを備えている。板バネ6は、その厚さ方向と光軸方向とが略一致するように、スリーブ8およびベース部材11に固定されている。なお、板バネ6は、2個のバネ片に電気的に分割されており、駆動機構4を構成する後述の駆動用コイル15への給電端子の機能も併せ持っている。
【0032】
(駆動機構およびヨーク部材の構成)
図4は、図1に示すレンズ駆動装置1からカバー部材10およびスペーサ12を取り外した状態の斜視図である。図5は、図2に示す駆動機構4およびヨーク部材13を反被写体側から示す底面図である。
【0033】
駆動機構4は、スリーブ8の外周側に固定される駆動用コイル15と、レンズ駆動装置1の四隅のそれぞれに配置される第1駆動用磁石としての駆動用磁石17と、レンズ駆動装置1の4つの側面のそれぞれに沿って配置される第2駆動用磁石としての駆動用磁石18とを備えている。
【0034】
駆動用コイル15は、光軸方向から見たときの形状が略八角形状となるように巻回されて形成されている。この駆動用コイル15は、図3に示すように、スリーブ8の鍔部8aの上面に固定されている。具体的には、駆動用コイル15は、前後方向または左右方向と略平行に配置される4個の長辺部15aと、長辺部15aよりも短く形成され、前後方向および左右方向に対して略45°傾いた状態で配置される4個の短辺部15bとによって構成されており、長辺部15aがレンズ駆動装置1の4つの側面のそれぞれと略平行になり、かつ、短辺部15bがレンズ駆動装置1の四隅に配置されるように、駆動用コイル15は、鍔部8aの上面に固定されている。すなわち、略八角形状に形成される駆動用コイル15の八辺のうちの四辺のそれぞれがレンズ駆動装置1の4つの側面のそれぞれと略平行になり、かつ、駆動用コイル15の八辺のうちの残りの四辺のそれぞれがレンズ駆動装置1の四隅のそれぞれに配置されるように、駆動用コイル15は、鍔部8aの上面に固定されている。
【0035】
長辺部15aの内側面は、レンズ駆動装置1の4つの側面のそれぞれと略平行に配置されるスリーブ8の下端側の4つの側面に当接している。短辺部15bの内側面と、レンズ駆動装置1の四隅に配置されるスリーブ8の下端側の4つの側面との間には、隙間Sが形成されている(図3参照)。
【0036】
駆動用磁石17は、光軸方向から見たときの形状が略等脚台形状となる柱状に形成されており、図5に示すように、互いに略平行な平面状の2個の平行面17a、17bと、平行面17a、17bに対して傾斜する平面状の2個の傾斜面17cとを備えている。平行面17aは、平行面17bよりもその面積が広くなるように形成されている。駆動用磁石17は、駆動用コイル15の短辺部15bの外側面と平行面17aとが対向するように、カバー部材10の筒部10bの四隅の内側面等に固定されており、駆動用磁石17は、径方向の外側で駆動用コイル15に対向配置されている。本形態の平行面17aは、駆動用磁石17の駆動用コイル15との対向面である。
【0037】
駆動用磁石18は、略矩形の板状に形成されている。具体的には、駆動用磁石18は、光軸方向から見たときの形状が扁平な長方形状となる略矩形の板状に形成されている。この駆動用磁石18は、駆動用コイル15の長辺部15aの外側面に対向するようにカバー部材10の筒部10bの内側面等に固定されており、駆動用磁石18は、径方向の外側で駆動用コイル15に対向配置されている。光軸方向における駆動用磁石18の長さは、光軸方向における駆動用磁石17の長さと略等しくなっている。
【0038】
ヨーク部材13は、駆動用磁石17、18の上端面を覆うように配置される端板部13aと、径方向における駆動用コイル15の内側に配置される内側ヨーク部13bとを備えている。ヨーク部材13は、磁性材料からなる金属板をプレス加工することで形成される。具体的には、ヨーク部材13は、プレスによる抜き加工とプレスによる曲げ加工で形成される。
【0039】
端板部13aは、光軸方向に略直交する平板状に形成されている。また、端板部13aは、略枠状に形成されている。具体的には、端板部13aは、外周端面の形状が略正方形状となり、内周端面の形状が略八角形状となる略枠状に形成されている。略八角形状に形成される端板部13aの内周端面の八辺のうちの四辺のそれぞれは、レンズ駆動装置1の4つの側面のそれぞれと略平行に配置され、端板部13aの内周端面の八辺のうちの残りの四辺のそれぞれは、前後方向および左右方向に対して略45°傾いた状態でレンズ駆動装置1の四隅のそれぞれに配置されている。端板部13aの下面には、駆動用磁石17、18の上端面が当接している。なお、端板部13aの外周端面の四隅の角は、面取りされている。
【0040】
内側ヨーク部13bは、略長方形または略正方形の平板状に形成されている。また、内側ヨーク部材13bは、端板部13aの内周端面から光軸方向へ立ち上るように形成されている。具体的には、内側ヨーク部材13bは、レンズ駆動装置1の四隅に配置される端板部13aの内周端面の四辺のそれぞれから下側に向かって立ち上るように形成されている。内側ヨーク部13bは、レンズ駆動装置1の四隅に配置されるスリーブ8の下端側の4つの側面と、駆動用コイル15の短辺部15bの内側面との間に形成される隙間Sの中に配置されている。すなわち、内側ヨーク部13bは、径方向における短辺部15bの内側に配置され、短辺部15bを介して、駆動用磁石17に対向配置されている。光軸方向における内側ヨーク部13bの長さは、光軸方向における駆動用磁石17の長さよりも短くなっている。
【0041】
ヨーク部材13の上面は、スペーサ12の下面に固定されている。また、ヨーク部材13の上面は、板バネ5の固定体固定部の下面に当接している。板バネ5の固定体固定部の上面は、スペーサ12の下面に当接している。本形態では、スペーサ12は、光軸方向において、カバー部材10の底部10aに対して、ヨーク部材13を位置決めする機能を果たしており、本形態のスペーサ12は、底部10aに対するヨーク部材13の、光軸方向における位置決めを行うための位置決め部材である。また、本形態では、カバー部材10およびヨーク部材13は、駆動機構4の磁気回路を形成するためのヨークの機能を果たしている。
【0042】
(レンズ駆動装置の製造方法)
以上のように構成されたレンズ駆動装置1の製造時には、カバー部材10を上下反転させた状態で、カバー部材10の反被写体側から、カバー部材10の底部10aに、スペーサ12、板バネ5、ヨーク部材13および駆動用磁石17、18をこの順番で順次、積み重ねて組み立てる(組立工程)。また、その後、スリーブ8、板バネ6およびベース部材11を取り付ける。
【0043】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、径方向における駆動用コイル15の内側に内側ヨーク部13bが配置され、また、駆動用コイル15および駆動用磁石17、18の外周側がカバー部材10に覆われている。そのため、本形態では、駆動用磁石17で発生し駆動用コイル15を通過する磁束の密度を高めることができる。
【0044】
本形態では、カバー部材10とヨーク部材13とが別体で形成されている。そのため、内側ヨーク部13bを避けた位置に(具体的には、ヨーク部材13の上側に)、かつ、カバー部材10の内部に板バネ5を配置することができる。したがって、板バネ5の腕部の形状を複雑な形状にしなくても、カバー部材10の内部に板バネ5を配置して、カバー部材10によって板バネ5を保護することが可能になり、ヨークとして機能するカバー部材10に加えて、板バネ5を保護するための部材を別途、設ける必要がない。その結果、本形態では、板バネ5を複雑な形状にしなくても、板バネ5を保護しつつ、レンズ駆動装置1の構成を簡素化することが可能になる。
【0045】
また、本形態では、カバー部材10とヨーク部材13とが別体で形成されているため、上述のように、カバー部材10の反被写体側から、カバー部材10の底部10aに、スペーサ12、板バネ5、ヨーク部材13および駆動用磁石17、18をこの順番で順次、積み重ねることで、光軸方向におけるこれらの部材の位置決めやこれらの部材同士の固定を簡単に行うことが可能になる。したがって、本形態では、レンズ駆動装置1の組立が容易になる。
【0046】
本形態では、カバー部材10によって、可動体2、駆動機構4、板バネ5、6、スペーサ12およびヨーク部材13の外周側が覆われている。そのため、カバー部材10によって、レンズ駆動装置1の内部への異物の侵入を防止することが可能になる。
【0047】
本形態では、端板部13aの内周端面から立ち上るように形成される内側ヨーク部13bが平板状に形成されている。そのため、内側ヨーク部13bを曲げ加工で形成することができる。したがって、本形態では、内側ヨーク部13bの厚さを端板部13aの厚さと同じにすることが可能になり、内側ヨーク部13bでの磁気飽和を抑制することが可能になる。なお、特許文献1に記載の内側ヨーク片のように、内側ヨーク部13bが曲板状に形成される場合には、内側ヨーク部13bは、絞り加工で形成されるため、その厚さが端板部13aの厚さよりも薄くなり、その結果、内側ヨーク部13bで磁気飽和が生じやすくなる。
【0048】
また、本形態では、内側ヨーク部13bが平板状に形成されるとともに、駆動用コイル15を介して内側ヨーク部13bに対向配置される駆動用磁石17の平行面17aは、平面状に形成されている。そのため、平行面17aと内側ヨーク部13bとの距離を均等に保ちつつ、平行面17aに対向する内側ヨーク部13bの対向面積を大きくすることが可能になる。したがって、本形態では、駆動用磁石17で発生し駆動用コイル15を通過する磁束の密度を効果的に高めることが可能になる。
【0049】
本形態では、光軸方向において、カバー部材10の底部10aに対して、ヨーク部材13を位置決めする機能を果たすスペーサ12が、ヨーク部材13bと別体で形成されている。そのため、本形態では、光軸方向において、ヨーク部材13を精度良く位置決めすることが可能になる。
【0050】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0051】
上述した形態では、ヨーク部材13は、径方向における駆動用コイル15の内側に配置される内側ヨーク部13bを備えている。この他にもたとえば、ヨーク部材13は、図6に示すように、内側ヨーク部13bに加え、径方向の外側から駆動用磁石17の平行面17bを覆う外側ヨーク部13cを備えていても良い。この場合には、デッドスペースとなりやすいレンズ駆動装置1の四隅を利用して、外側ヨーク部13cを配置することができるため、レンズ駆動装置1を大型化させることなく、駆動用磁石17で発生し駆動用コイル15を通過する磁束の密度を効果的に高めることが可能になる。
【0052】
上述した形態では、ヨーク部材13は、駆動用磁石17に対向配置される内側ヨーク部13bを備えている。この他にもたとえば、ヨーク部材13は、内側ヨーク部13bに加えて、または、内側ヨーク部13bに代えて、径方向における駆動用コイル15の内側に配置されるとともに駆動用磁石18に対向配置される内側ヨーク部を備えていても良い。
【0053】
上述した形態では、内側ヨーク部13bは、平板状に形成されているが、内側ヨーク部13bは、曲板状に形成されても良い。この場合には、たとえば、駆動用磁石17の平行面17aが曲面状に形成され、駆動用コイル15の平行面17aとの対向部分が曲面状に形成されても良い。
【0054】
上述した形態では、駆動機構4は、1個の駆動用コイル15を備えているが、駆動機構4は、2個の駆動用コイル15を備えていても良い。この場合には、駆動用磁石17の駆動用コイル15との対向面、および、駆動用磁石18の駆動用コイル15との対向面は、2極に着磁される。また、上述した形態では、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されているが、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略長方形状となるように形成されても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 レンズ駆動装置
2 可動体
3 固定体
4 駆動機構
5 板バネ
10 カバー部材
10a 底部(被写体側端面部)
12 スペーサ(位置決め部材)
13 ヨーク部材
13a 端板部
13b 内側ヨーク部
13c 外側ヨーク部
15 駆動用コイル
17 駆動用磁石(第1駆動用磁石)
17a 平行面(駆動用コイルとの対向面)
18 駆動用磁石(第2駆動用磁石)
L 光軸
Z 光軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持し前記レンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、前記可動体を前記光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、前記可動体を前記光軸方向へ駆動するための駆動機構と、前記可動体と前記固定体とを繋ぐ板バネとを備え、
前記駆動機構は、前記可動体に固定される駆動用コイルと、前記固定体に固定され、前記レンズの径方向の外側で前記駆動用コイルに対向配置される駆動用磁石とを備え、
前記固定体は、磁性材料で形成され、前記光軸方向における前記駆動用磁石の一方の端面を覆うように配置される端板部と前記径方向における前記駆動用コイルの内側に配置される内側ヨーク部とを有するヨーク部材と、前記ヨーク部材と別体で形成されるとともに磁性材料で形成され、前記可動体、前記駆動機構および前記板バネの外周側を覆うカバー部材とを備えることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記端板部は、略枠状に形成され、
前記内側ヨーク部は、前記端板部の内周端面から前記光軸方向へ立ち上る平板状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記光軸方向から見たときの形状が略四角形状となるように形成され、
前記駆動機構は、前記駆動用磁石として、前記レンズ駆動装置の四隅のそれぞれに配置される第1駆動用磁石を備え、
前記駆動用コイルは、前記光軸方向から見たときの形状が略八角形状となるように巻回されて形成されるとともに、略八角形状に形成される前記駆動用コイルの八辺のうちの四辺が前記レンズ駆動装置の4つの側面のそれぞれと略平行になり、かつ、前記駆動用コイルの八辺のうちの残りの四辺が前記レンズ駆動装置の四隅に配置されるように配置され、
前記内側ヨーク部は、前記駆動用コイルを介して、前記第1駆動用磁石に対向配置され、
前記第1駆動用磁石の前記駆動用コイルとの対向面は、平面状に形成されていることを特徴とする請求項2記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記駆動用磁石として、前記レンズ駆動装置の4つの側面のそれぞれに沿って配置される第2駆動用磁石を備えることを特徴とする請求項3記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記光軸方向から見たときの形状が略四角形状となるように形成され、
前記駆動機構は、前記駆動用磁石として、前記レンズ駆動装置の四隅のそれぞれに配置される第1駆動用磁石を備え、
前記第1駆動用磁石は、前記光軸方向から見たときの形状が略台形状となる柱状に形成され、
前記内側ヨーク部は、前記駆動用コイルを介して、前記第1駆動用磁石に対向配置され、
前記ヨーク部材は、前記径方向の外側から前記第1駆動用磁石を覆う外側ヨーク部を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記レンズ駆動装置の被写体側の端面を構成する前記カバー部材の被写体側端面部に対する前記ヨーク部材の、前記光軸方向における位置決めを行うための位置決め部材を備え、
前記位置決め部材は、前記ヨーク部材と別体で形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載のレンズ駆動装置の製造方法であって、
前記被写体側端面部の反被写体側の面に、前記位置決め部材、前記板バネ、前記ヨーク部材および前記駆動用磁石をこの順番に順次積み重ねる組立工程を備えることを特徴とするレンズ駆動装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−255888(P2012−255888A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128484(P2011−128484)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】