説明

レーザマーキング装置及びレーザマーキング方法

【課題】印字に要する時間を短縮することができるレーザマーキング装置を提供する。
【解決手段】レーザ発振制御手段は、2次元コード61を構成する単位セルであってレーザ光を照射する照射単位セル62aと、レーザ光を照射しない空白単位セル62bとを配列したコードデータを生成する。次いで、レーザ発振制御手段は、コードデータにおける照射単位セル62aと空白単位セル62bとを反転した反転コードデータを生成する。次いで、光走査機構によって、コードデータにおける照射単位セル62aに、第1のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して2次元コード61をワークに印字する。次いで、光走査機構によって、反転コードデータにおける照射単位セル62aに、第1のレーザパワーと異なる第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して反転2次元コード63を下地としてワークに印字する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次元コード若しくは2次元コードであるシンボルを印字するレーザマーキング装置及びレーザマーキング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
黒色セルが配列されてなる1次元コード(例えばバーコード)及び2次元コード(例えばQRコード(登録商標))といったシンボルを製品管理のために製品に印字することがある。このシンボルは、金属のように光沢面を有する場所や、鋳物のように凹凸形状を有する場所、起伏を有する形状である場合等、様々な場所に印字される。そして、シンボルの印字は、例えば特許文献1に記載されているようにレーザ光を照射して行われる。
【0003】
特許文献1に記載されたレーザマーキング方法を用いて光沢を有する面や凹凸形状を有する場所に2次元コードのシンボルを印字する場合には、まず、シンボルを印字するワークの表面にレーザ光を照射することにより印字するシンボルよりも一回り大きな四角形状の下地を形成する。この下地はシンボルの背景となるものである。そして、ワークの表面において下地が形成された領域は、光を乱反射する程度の粗面になるとともに平坦になる。その後、ワークの表面において下地が形成された領域内にレーザ光を照射することにより、シンボルを印字する。このように、シンボルを印字する前にワークの表面に下地を形成することにより、シンボルを構成する黒色セルと背景との明暗をはっきりさせることができるため、2次元コードを読み取る読取り装置において読み取りを円滑にすることができる。
【0004】
また、従来、レーザ光を照射した部位が白色となるワークにシンボルを印字する場合には、例えば特許文献2に記載されているように、シンボルコードの明暗を反転させた後に、ワークの表面にレーザ光を照射して白色セルを印字していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−108932号公報
【特許文献2】特開2005−310048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したように、特許文献1に記載されたレーザマーキング方法を用いて光沢を有する面や凹凸形状を有する場所にシンボルを印字する場合には、印字するシンボルの大きさに応じて下地の大きさを設定した後に、四角形の下地をワークに印字して、更にその後に下地が形成された領域内にシンボルの印字を行うことになる。そのため、シンボルの印字に時間がかかっていた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、シンボルの印字に要する時間を短縮することができるレーザマーキング装置及びレーザマーキング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、1次元コード若しくは2次元コードであるシンボルと、前記シンボルの背景となる下地とをワークに印字するレーザマーキング装置において、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記シンボルを構成する単位セルであってレーザ光を照射する照射単位セルとレーザ光を照射しない空白単位セルとを配列したシンボルデータを設定するシンボルデータ設定手段と、前記シンボルデータにおける前記照射単位セルと前記空白単位セルとを反転した反転シンボルデータを設定する反転シンボルデータ設定手段と、前記シンボルデータにおける前記照射単位セルにレーザ光を照射・走査して前記シンボルを印字するためのシンボル印字データと、前記反転シンボルデータにおける前記照射単位セルにレーザ光を照射・走査して反転シンボルを印字するための反転シンボル印字データとを生成する印字データ生成手段と、前記シンボル印字データに基づいて、第1のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記ワークに前記シンボルを印字するとともに、前記反転シンボル印字データに基づいて、前記第1のレーザパワーと異なる第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記ワークに前記反転シンボルを前記下地として印字する光走査手段とを備えたことをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、反転シンボルデータ設定手段が設定(生成若しくは取得)する反転シンボルデータにおいては、シンボルデータにおいて照射単位セルとなっている部分が空白単位セルとなっている。そのため、光走査手段は、背景となる反転シンボルを印字するときには、ワークの表面においてシンボルが印字される部位にはレーザ光を照射しない。従って、従来のように、背景となる四角形の下地を印字した後にシンボルを印字する場合に比べて、シンボルの印字に要する時間を短縮することができる。尚、本発明において、光走査手段は、シンボル及び反転シンボルを同時に印字するものではなく、何れか一方を先に印字し、何れか他方を後に印字するものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザマーキング装置において、前記光走査手段は、前記シンボル印字データに基づいて、前記第1のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記シンボルを前記ワークに印字した後に、前記反転シンボル印字データに基づいて、前記第1のレーザパワーよりも小さい前記第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記反転シンボルを前記ワークに印字することをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、光走査手段は、第1のレーザパワーに設定されたレーザ光をワークに照射してシンボルを印字した後に、第1のレーザパワーよりも小さい第2のレーザパワーに設定されたレーザ光をワークに照射して背景となる反転シンボルを印字する。そのため、シンボルを印字したときに飛散した加工屑を、反転シンボルを印字すると同時に、同反転シンボルを印字するためのレーザ光によって除去することができる。そして、第2のレーザパワーは第1のレーザパワーより小さいため、シンボルを印字するときに生じる加工屑に比べて反転シンボルを印字するときに生じる加工屑の方が少ない。これらのことから、シンボルと反転シンボルとのコントラストをより鮮明にすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のレーザマーキング装置において、少なくともレーザ光のスポット径を変更することにより、前記ワークに照射されるレーザ光の単位面積当たりのエネルギーを調整して前記第2のレーザパワーを前記第1のレーザパワーと異なる値に設定するレーザパワー変更手段と、前記シンボル印字データ及び前記反転シンボル印字データのうち後で使用する印字データを、前記レーザパワー変更手段で設定した第2のレーザパワーのレーザ光のスポット径に応じて補正する印字データ補正手段とを備えたことをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、第1のレーザパワーに設定されたレーザ光のスポット径よりも、第2のレーザパワーに設定されたレーザ光のスポット径が大きく設定されることになる。その結果、第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を走査する距離を短くできるため、印字データ補正手段で補正された印字データ(即ち第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を走査するためのシンボル印字データ若しくは反転シンボル印字データ)のデータ量が減少されるとともに、印字に要する時間をより短縮することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のレーザマーキング装置において、少なくともレーザ光源のレーザ出力を変更することにより、前記ワークに照射されるレーザ光の単位面積当たりのエネルギーを調整して前記第2のレーザパワーを前記第1のレーザパワーと異なる値に設定するレーザパワー変更手段を備えたことをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、一般的に、レーザ出力を変更するとレーザ光のレーザパワーは比例的に変化するため、レーザパワー変更手段は、レーザパワーを設定するための演算を容易に行うことができる。即ち、第1のレーザパワーから第2のレーザパワーへの変更を容易に行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のレーザマーキング装置において、前記ワークの種類を設定するワーク設定手段と、前記ワーク設定手段で設定された前記ワークの種類に応じて、前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーを設定するレーザパワー設定手段と、前記ワーク設定手段で設定された前記ワークの種類に対応させて、前記レーザパワー設定手段で設定された前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーを記憶する記憶手段とを備え、前記光走査手段は、前記ワーク設定手段で設定した前記ワークの種類に対応して記憶された前記第1のレーザパワーに設定されたレーザ光を前記ワークに照射して、前記シンボル印字データに基づいて前記ワークに前記シンボルを印字するとともに、前記ワーク設定手段で設定した前記ワークの種類に対応して記憶された前記第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を前記ワークに照射して、前記反転シンボル印字データに基づいて前記ワークに前記反転シンボルを前記下地として印字することをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、レーザパワー設定手段で設定された第1のレーザパワー及び第2のレーザパワーは、記憶手段において、ワーク設定手段で設定されたワークの種類に対応させて記憶される。そのため、例えば、過去にシンボルを印字したことのある種類のワークにシンボルの印字を行う場合に、レーザパワーを設定する手間を省くことができる。また、複数種類のワークに対応させて、印字に最適な第1のレーザパワー及び第2のレーザパワーを記憶しておくことにより、様々なワークへのシンボルの印字を容易に行うことが可能となる。尚、本発明において、光走査手段は、シンボル及び反転シンボルを同時に印字するものではなく、何れか一方を先に印字し、何れか他方を後に印字するものである。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のレーザマーキング装置において、前記レーザパワー設定手段は、前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーの少なくとも一方を任意に設定可能に構成されていることをその要旨としている。
【0019】
同構成によれば、第1のレーザパワー及び第2のレーザパワーの少なくとも一方を任意に設定可能であるため、第1のレーザパワー及び第2のレーザパワーの少なくとも一方を作業者が所望する値に設定できる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のレーザマーキング装置において、前記レーザパワー設定手段は、前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーの何れか一方のレーザパワーが任意に設定されると、何れか他方のレーザパワーを自動的に設定することをその要旨としている。
【0021】
同構成によれば、第1のレーザパワー及び第2のレーザパワーの何れか一方のレーザパワーが任意に設定されると、他方のレーザパワーは自動的に設定されるため、レーザパワーの設定が簡単になる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、1次元コード若しくは2次元コードであるシンボルと、前記シンボルの背景となる下地とをワークに印字するレーザマーキング方法であって、前記シンボルを構成する単位セルであってレーザ光を照射する照射単位セルとレーザ光を照射しない空白単位セルとを配列したシンボルデータを生成するシンボルデータ生成工程と、前記シンボルデータにおける前記照射単位セルと前記空白単位セルとを反転した反転シンボルデータを生成する反転シンボルデータ生成工程と、前記シンボルデータにおける前記照射単位セルにレーザ光を照射・走査して前記シンボルを印字するためのシンボル印字データと、前記反転シンボルデータにおける前記照射単位セルにレーザ光を照射・走査して反転シンボルを印字するための反転シンボル印字データとを生成する印字データ生成工程と、前記シンボル印字データに基づいて、第1のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記ワークに前記シンボルを印字する第1印字工程と、前記反転シンボル印字データに基づいて、前記第1のレーザパワーと異なる第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記ワークに前記反転シンボルを前記下地として印字する第2印字工程とを備えたことをその要旨としている。
【0023】
同方法によれば、反転シンボルデータにおいては、シンボルデータにおいて照射単位セルとなっている部分が空白単位セルとなっている。そのため、背景となる反転シンボルを印字するときには、ワークの表面においてシンボルが印字される部位にはレーザ光を照射しない。従って、従来のように、背景となる四角形の下地を印字した後にシンボルを印字する場合に比べて、シンボルの印字に要する時間を短縮することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のレーザマーキング方法において、前記第1印字工程の後に前記第2印字工程を行い、前記第2印字工程では、前記反転シンボル印字データに基づいて、前記第1のレーザパワーよりも小さい前記第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記反転シンボルを前記ワークに印字することをその要旨としている。
【0025】
同方法によれば、第1のレーザパワーに設定されたレーザ光をワークに照射してシンボルを印字した後に、第1のレーザパワーよりも小さい第2のレーザパワーに設定されたレーザ光をワークに照射して背景となる反転シンボルを印字する。そのため、第1印字工程において飛散した加工屑を、第2印字工程において反転シンボルを印字すると同時に、同反転シンボルを印字するためのレーザ光によって除去することができる。そして、第2のレーザパワーは第1のレーザパワーより小さいため、第1印字工程で生じる加工屑に比べて第2印字工程で生じる加工屑の方が少ない。これらのことから、シンボルと反転シンボルとのコントラストをより鮮明にすることができる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、請求項8又は請求項9に記載のレーザマーキング方法において、前記ワークは金属部材であることをその要旨としている。
同方法によれば、金属部材にシンボルを印字する場合において、当該シンボルの印字に要する時間を短縮することができる。一般的に、金属部材の表面は、光沢備えていたり、凹凸形状であったりする場合が多いため、シンボルの背景を印字することが望ましい。また、一般的に、レーザ光で金属材料に印字を行う場合、レーザ光による金属材料の表面状態の変化には高いエネルギーが必要となるため、印字に時間がかかりやすい。従って、このような金属部材にシンボルを印字する場合に、反転シンボルを印字して背景を形成する本発明を適用する意義は大きい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、印字に要する時間を短縮可能なレーザマーキング装置及びレーザマーキング方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】レーザマーキング装置の概略構成図。
【図2】レーザマーキング方法を説明するためのフロー図。
【図3】(a)〜(c)はレーザマーキング方法を説明するための説明図。
【図4】(a)〜(c)は別の形態のレーザマーキング方法を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態のレーザマーキング方法で使用するレーザマーキング装置1を説明する。図1に示すように、レーザマーキング装置1は、本体ユニット2と、ヘッドユニット3と、これら本体ユニット2とヘッドユニット3とを連結する伝送ケーブル4とを備えている。
【0030】
本体ユニット2を構成するレーザ発振制御手段11は、ドライバ12を介して信号用半導体レーザ13を駆動するとともに、駆動された信号用半導体レーザ13は、赤外線レーザをパルス発振する。そして、信号用半導体レーザ13からのレーザ光は、予備増幅器14において、ワークWへの印字が可能なレベルより低い光強度まで増幅される。
【0031】
予備増幅器14は、第1希土類ドープ光ファイバ15、第1光結合部16、光アイソレータ17、第1ドライバ18及び第1励起用半導体レーザ19を備えている。
第1希土類ドープ光ファイバ15は、希土類元素である例えばイットリビウム(Yb)を含むガラスファイバである。この第1希土類ドープ光ファイバ15は、屈曲可能であるとともに、図示しないボビンに多数回巻回することにより所要の長さの光路が確保されている。そして、第1希土類ドープ光ファイバ15の入射端部(図1において左側の端部)には第1光結合部16が設けられるとともに、出射端部(図1において右側の端部)には光アイソレータ17が設けられている。これらの第1希土類ドープ光ファイバ15、第1光結合部16及び光アイソレータ17は、図示しない直方体状のケース内に収容されるとともに、当該ケースの内部に充填されたシリコン樹脂によって同ケース内に固定されている。
【0032】
前記第1光結合部16は、前記信号用半導体レーザ13からのレーザ光を第1希土類ドープ光ファイバ15の入射端に入射させる。また、第1光結合部16は、第1ドライバ18を介して前記レーザ発振制御手段11にて駆動される第1励起用半導体レーザ19からのレーザ光を、同第1希土類ドープ光ファイバ15の入射端から出射端に向かって入射させる。従って、第1光結合部16の作用により、第1希土類ドープ光ファイバ15において、信号用半導体レーザ13からのレーザ光に、第1励起用半導体レーザ19からのレーザ光が合流される。
【0033】
前記光アイソレータ17はレーザ光を一方向(入射端から出射端に向かう方向)にのみ通過させる。この光アイソレータ17は、光ファイバの接合部分やレーザ照射面から反射するレーザ光が信号用半導体レーザ13、第1励起用半導体レーザ19及び第1希土類ドープ光ファイバ15に逆流することによってこれらが損傷することを防止するために設けられている。そして、光アイソレータ17には、信号用半導体レーザ13及び第1励起用半導体レーザ19からのレーザ光をヘッドユニット3に伝送するための第1伝送用光ファイバ20の入射端部(図1において左側の端部)が接続されている。
【0034】
信号用半導体レーザ13からのレーザ光は、このような予備増幅器14によって、ワークWへの印字が可能なレベルに対して相対的に低い光強度に増幅された後に、第1伝送用光ファイバ20によってヘッドユニット3側に伝送される。そして、ヘッドユニット3において、ワークWへの印字が可能な光強度に最終的に増幅される。
【0035】
また、本体ユニット2は、ヘッドユニット3においてレーザ光の増幅を行うための本体側増幅器21を備えている。本体側増幅器21は、前記レーザ発振制御手段11にて第2ドライバ22を介して駆動される第2励起用半導体レーザ23、及び、同じくレーザ発振制御手段11にて第3ドライバ24を介して駆動される第3励起用半導体レーザ25を備えている。第2励起用半導体レーザ23及び第3励起用半導体レーザ25は、レーザ発振制御手段11によって何れも一定出力レベルで駆動される。また、第2励起用半導体レーザ23及び第3励起用半導体レーザ25の発振波長は、後述する第2希土類ドープ光ファイバ41の希土類元素を励起するに適した波長帯に設定されている。そして、第2励起用半導体レーザ23からのレーザ光(励起光)は、ヘッドユニット3に延びる第2伝送用光ファイバ26の入射端部(図1において左側の端部)に入射される一方、第3励起用半導体レーザ25からのレーザ光(励起光)は、ヘッドユニット3に延びる第3伝送用光ファイバ27の入射端部(図1において左側の端部)に入射される。尚、前記伝送ケーブル4は、これら第2伝送用光ファイバ26及び第3伝送用光ファイバ27と、前記第1伝送用光ファイバ20とを束ねて1本のケーブル状に構成したものである。
【0036】
また、本体ユニット2には、ヘッドユニット3との間で信号のやりとりをするための信号入力回路28が設けられている。この信号入力回路28は、レーザ発振制御手段11に電気的に接続されている。
【0037】
前記ヘッドユニット3は、ヘッド側増幅器31、収束光学系32、光走査機構33、集光レンズ34、及び前記本体ユニット2との間で信号のやりとりをするための入出力回路35を備えている。
【0038】
ヘッド側増幅器31は、ヘッドユニット3において前記本体側増幅器21と共に、本体ユニット2の予備増幅器14において予備増幅された信号用半導体レーザ13からのレーザ光を、ワークWへの印字が可能なレベルまで増幅するためのものである。このヘッド側増幅器31の第2希土類ドープ光ファイバ41は、第1希土類ドープ光ファイバ15と同様に、希土類元素である例えばイットリビウム(Yb)を含むガラスファイバである。そして、第2希土類ドープ光ファイバ41は、屈曲可能であるとともに、図示しないボビンに多数回巻回することにより所要の長さの光路が確保されている。この第2希土類ドープ光ファイバ41の入射端部(図1において左側の端部)には第2光結合部42が設けられるとともに、出射端部(図1において右側の端部)には第3光結合部43が設けられている。尚、第2希土類ドープ光ファイバ41、第2光結合部42及び第3光結合部43は、図示しない直方体状のケース内に収容されるとともに、当該ケースの内部に充填されたシリコン樹脂によって同ケース内に固定されている。
【0039】
前記第2光結合部42には、第1伝送用光ファイバ20の出射端部(図1において右側の端部)及び第2伝送用光ファイバ26の出射端部(図1において右側の端部)が接続されている。そして、第2光結合部42は、予備増幅器14で予備増幅された第1励起用半導体レーザ19からのレーザ光であって、第1伝送用光ファイバ20を介して伝送されたレーザ光を第2希土類ドープ光ファイバ41の入射端に入射させる。また、第2光結合部42は、第2伝送用光ファイバ26を介して伝送される第2励起用半導体レーザ23からのレーザ光を、第2希土類ドープ光ファイバ41に対し該第2希土類ドープ光ファイバ41の出射端に向かって入射させる。従って、第2光結合部42の作用により、第2希土類ドープ光ファイバ41において、第1伝送用光ファイバ20にて伝送される予備増幅されたレーザ光に、第2励起用半導体レーザ23からのレーザ光が合流される。
【0040】
前記第3光結合部43は、第3伝送用光ファイバ27を介して伝送される第3励起用半導体レーザ25からのレーザ光を、第2希土類ドープ光ファイバ41の入射端側に向けて入射させる機能を有する。
【0041】
そして、第2希土類ドープ光ファイバ41の出射端面の外側には、該出射端面から出射したレーザ光が入射される収束光学系32が設けられている。収束光学系32は、第1収束レンズ32aと第2収束レンズ32bとの2つのレンズを備えている。これらの第1収束レンズ32a及び第2収束レンズ32bは、第3光結合部43から出射したレーザ光を平行光若しくは収束光とする。そして、収束光学系32において平行光若しくは収束光とされたレーザ光は光走査機構33に入射する。
【0042】
前記光走査機構33は、収束光学系32を通過したレーザ光を縦横に走査するためのX軸ガルバノミラー33a及びY軸ガルバノミラー33bを備えた周知の構成である。光走査機構33で反射されたレーザ光は、集光レンズ(fθレンズ)34によって平行光若しくは収束光から更に絞り込まれてワークWの表面に照射される。
【0043】
尚、本実施形態のレーザマーキング装置1においては、前記第1収束レンズ32a及び第2収束レンズ32bは、図示しない駆動機構によって駆動されることによりレーザ光の進行方向に沿って移動可能になっている(図1において両矢印A1,A2参照)。そのため、第1収束レンズ32a及び第2収束レンズ32bの少なくとも一方を移動させることにより、ワークWに照射されるレーザ光のスポット径を調整できる。
【0044】
また、レーザマーキング装置1には、例えばコンソール等の入力手段51が設けられている。入力手段51は、前記レーザ発振制御手段11に接続されるとともに、この入力手段51から印字内容の入力を行うことができる。更に、レーザマーキング装置1には、図示はしないが、冷却装置や装置各部に動作電力を供給する電源回路等も備えられている。
【0045】
上記したレーザマーキング装置1では、入力手段51によって入力された設定値等及び文字・図形等の印字内容の入力データや印字プログラムを受けて、レーザ発振制御手段11は、この入力されたプログラム及び各種設定値に従って、レーザ出力を制御するための制御信号をドライバ12、第1〜第3ドライバ18,22,24に与える。それと同時に、レーザ発振制御手段11は、X軸ガルバノミラー33a及びY軸ガルバノミラー33bを駆動するための制御信号を、信号入力回路28及び入出力回路35を介して光走査機構33に与える。
【0046】
ここで、レーザマーキング装置1の図示しない励起用スイッチをオン操作することにより第1励起用半導体レーザ19は第1ドライバ18により直接駆動され、出射されたレーザ光は第1光結合部16を介して第1希土類ドープ光ファイバ15内に入射される。この結果、第1希土類ドープ光ファイバ15内が励起されてレーザ光が発生するが、その出力強度はワークW上に出射されても印字を行うのには不十分なレベルとなるように、第1励起用半導体レーザ19は所定の低レベルに連続的に維持されている。従って、この状態では第1希土類ドープ光ファイバ15は、ある一定のレベルで励起状態になっているが、これによって発生したレーザ光がワークWに照射されても印字はされない。
【0047】
印字動作が開始されると、レーザ発振制御手段11からの信号に基づき信号用半導体レーザ13がパルス発振するとともに、第2励起用半導体レーザ23及び第3励起用半導体レーザ25が所定レベルで連続発振する。このことは、励起用レーザ光源(即ち第2励起用半導体レーザ23及び第3励起用半導体レーザ25)の出力が増大したことを意味する。第2励起用半導体レーザ23及び第3励起用半導体レーザ25からのレーザ光は、第2伝送用光ファイバ26、第3伝送用光ファイバ、第2光結合部42及び第3光結合部43を介して第2希土類ドープ光ファイバ41内に入射されて該第2希土類ドープ光ファイバ41の内部を高励起状態とする。そして、信号用半導体レーザ13からのパルスレーザ光は、予備増幅器14において低増幅状態とされた後に、第1伝送用光ファイバ20を介して高励起状態にある第2希土類ドープ光ファイバ41に入射して通過することにより増幅されて該第2希土類ドープ光ファイバ41の出射端面から出射される。
【0048】
ここで、第2励起用半導体レーザ23及び第3励起用半導体レーザ25は、希土類元素を励起するに適した波長帯のレーザ光を出射するものが選択されるとともに、信号用半導体レーザ13には励起された希土類元素がエネルギーを失って発光するときの波長帯の光を有するものが使用されている。そのため、誘導放出による発光が促進され、レーザ光が効率良く増幅される。このときのレーザ光の出力レベルは、ワークW上に照射されて印字を行うことが可能なレベルを十分に超え、印字するのに十分なレベルとなる。
【0049】
第2希土類ドープ光ファイバ41の出射端面から出射されたパルスレーザ光は、収束光学系32によって平行光若しくは収束光に絞られ、レーザ発振制御手段11からの制御信号により駆動される光走査機構33によって所要の方向に反射される。ここで、光走査機構33は、X軸ガルバノミラー33aによって1つの方向に走査し、Y軸ガルバノミラー33bによって、X軸ガルバノミラー33aが走査する方向と直交する方向に走査することで2次元のあらゆる方向にレーザ光を走査することができる。光走査機構33で反射されたレーザ光は、集光レンズ34によってスポットレーザ光に絞り込まれ、このレーザ光がワークWの表面上を走査することにより所望の印字が行われる。
【0050】
このように、上記のレーザマーキング装置1では、ワークWへの印字が可能なレベルに対して相対的に低い光強度のレーザ光を第1伝送用光ファイバ20にてヘッドユニット3に伝送し、最終的な増幅はヘッドユニット3にて行っている。そのため、本体ユニット2において予備増幅されたレーザ光が第1伝送用光ファイバ20でヘッドユニット3に伝送される際、ラマン散乱が発生することが抑制される。従って、ラマン散乱に起因する印字品質の低下を抑制することができる。
【0051】
ここで、ラマン散乱とは、一般に、単色光であるレーザ光を伝送用光ファイバに入射させた場合に、入射したレーザ光とは異なる波長の散乱光が生じる現象である。この現象のため、伝送用光ファイバから出射されたレーザ光は、複数の波長を有するレーザ光となる。そして、伝送用光ファイバから出射されたレーザ光が複数の波長を有するレーザ光になると、集光レンズでの屈曲率が波長によって異なるため、ワークに照射されるレーザ光の焦点がぼけてしまう。因みに、この現象は極めて高い光強度のレーザ光を伝送用光ファイバにて伝送する場合に特に顕著に現れる。従って、加工可能な高いレベルに増幅したレーザ光を伝送用光ファイバにて伝送する構成では、ラマン散乱の影響が大きいために、ワークでのレーザ光の焦点ぼけが顕著となってしまい、印字品質が低下するという問題が出てくる。そこで、本実施形態では、その対策として、本体ユニット2で予備増幅した印字不能な低パワーのレーザ光を第1伝送用光ファイバ20にてヘッドユニット3に伝送し、ヘッドユニット3において印字可能な高パワーのレーザ光に増幅する構成としている。
【0052】
また、レーザ光を増幅するためのレーザ増幅手段には、屈曲可能な希土類ドープ光ファイバを利用している。従って、第1希土類ドープ光ファイバ15及び第2希土類ドープ光ファイバ41を巻回することにより、レーザマーキング装置1の小型化が可能となる。更に、第1希土類ドープ光ファイバ15及び第2希土類ドープ光ファイバ41の長さを変える事により、励起の度合いを比較的簡単に調整することができる。また更に、第2希土類ドープ光ファイバ41を励起状態にするための第2励起用半導体レーザ23及び第3励起用半導体レーザ25を本体ユニット2に設けているため、ヘッドユニット3の更なる小型化を図ることができる。
【0053】
次に、上記したレーザマーキング装置1を用いてワークWに2次元コードを印字するレーザマーキング方法を説明する。尚、本実施形態では、ワークWは、金属部材である。この金属部材は、例えば、ステンレス等の鏡面状の表面を有する部材、鋳物等の凹凸形状の表面を有する部材、表面が起伏した部材等である。
【0054】
ここで、2次元コードについて説明する。図3(a)に示すように、本実施形態でワークWに印字する2次元コード61(シンボル)はQRコード(登録商標)である。2次元コード61は、四角形の領域内に四角形状(本実施形態では正方形状)の黒色セル61aを配列して構成されている。図3(a)において、四角形の領域における、左上の角部、左下の角部及び右上の角部の3箇所には、読み取り装置にて読み取る際の基準となる読取り基準部61sがそれぞれ黒色セル61aによって構成されている。そして、読み取り装置では、CCDスキャナ等によって2次元コード61全体を画像として取り込んだ後に、黒色セル61aと黒色セル61aの周囲の背景部分との明暗を判断する。更に、明暗の判断結果から、「1」及び「0」のデータコードを割り当ててマトリクス状のマトリクスデータを生成する。尚、黒色セル61aが配置されている部位には、データコード「1」が割り当てられる一方、2次元コード61の背景を構成する白色セル61bにはデータコード「0」が割り当てられる。そして、読み取り装置では、生成したマトリクスデータから読取り基準部61sを判別する。更に、読み取り装置では、判別した読取り基準部61sを基準として2次元コード61においてデータが格納された部位を確定するとともに、格納されたデータを読み取る。
【0055】
以下、レーザマーキング装置1にて行われるレーザマーキング方法を、図1乃至図3を参照して説明する。
まず、ステップS1において、レーザ発振制御手段11は、入力手段51を操作して入力された情報から2次元コード61を印字するために必要なデータを取得する。取得したデータには、2次元コード61を生成するためのデータ(英数字等)が含まれている。また、レーザ発振制御手段11は、入力手段51を操作して入力された情報に基づいて、2次元コード61をワークに印字するための印字条件(レーザ出力、レーザ光を走査する走査スピード、レーザ照射の周波数、レーザスポット径、2次元コード61を印字するX座標及びY座標等)も合わせて設定する。
【0056】
次に、ステップS2において、レーザ発振制御手段11は、前記ステップS1において取得したデータ(即ち2次元コード61を生成するためのデータ)から、これに対応する2次元コード61を生成(設定)する。また、レーザ発振制御手段11は、生成した2次元コード61に基づいて、2次元コードデータ(シンボルデータ)を生成する(シンボルデータ生成工程)。図3(a)に示すように、2次元コードデータは、2次元コード61を構成する黒色セル61aに対応した照射単位セル62aと、白色セル61bに対応した空白単位セル62bとの配列パターンである。照射単位セル62aはレーザ光を照射する単位セルである一方、空白単位セル62bはレーザ光を照射しない単位セルである。即ち、2次元コードデータにおいては、2次元コード61の背景となる部位に空白単位セル62bが割り当てられている。
【0057】
次に、ステップS3において、レーザ発振制御手段11は、前記ステップS2で生成した2次元コードデータから、反転2次元コードデータ(反転シンボルデータ)を生成(設定)する(反転シンボルデータ生成工程)。この反転2次元コードデータは、図3(b)に示すように、2次元コードデータにおける照射単位セル62aと空白単位セル62bとを反転した(入れ替えた)データである。この反転2次元コードデータには、該反転2次元コードデータにおいて空白単位セル62bにて構成される2次元コード61の周囲にクワイエットゾーン64を構成するべく配列された照射単位セル62aが含まれている。即ち、本実施形態では、レーザ発振制御手段11は、反転2次元コードデータを生成するために2次元コードデータにおける照射単位セル62aと空白単位セル62bとを反転する際に、空白単位セル62bにて表される2次元コード61の周囲に照射単位セル62aにて表されるクワイエットゾーン64を付加している。尚、2次元コードデータにおいて照射単位セル62aと空白単位セル62bとを反転させて反転2次元コードデータを生成する際に、クワイエットゾーン64を合わせて形成する方法は、周知の方法(例えば特許文献2)を利用している。
【0058】
次に、ステップS4において、レーザ発振制御手段11は、生成した2次元コードデータ及び反転2次元コードデータに基づいて、光走査機構33に与える印字データを生成する(印字データ生成工程)。レーザ発振制御手段11は、2次元コードデータにおける照射単位セル62aにレーザ光を照射して2次元コード61を印字するための2次元コード印字データ(シンボル印字データ)を生成する。また、レーザ発振制御手段11は、反転2次元コードデータにおける照射単位セル62aにレーザ光を照射して反転2次元コード63を印字するための反転2次元コード印字データ(反転シンボル印字データ)を生成する。尚、各印字データは、レーザ光を走査するための座標データを含むものである。
【0059】
次に、ステップS5において、レーザ発振制御手段11は、ワークWに照射するレーザ光のレーザパワー(エネルギー密度)を第1設定値P1(第1のレーザパワー)に設定する。この第1設定値P1は、レーザパワーが第1設定値P1に設定されたレーザ光をワークWに照射したときに、ワークWに黒色セル61aを描画可能な値である。即ち、第1設定値P1は、レーザパワーが第1設定値P1に設定されたレーザ光をワークWに照射したときに、ワークWの表面状態が変化(変色、変質、改質、発色等)する値である。
【0060】
次に、ステップS6において、レーザ発振制御手段11は、前記ステップS5で第1設定値P1に設定されたレーザパワーのレーザ光をワークWに照射して2次元コード61を印字する(第1印字工程)。レーザ発振制御手段11は、前記ステップS4で生成した2次元コード印字データに基づいて、X軸ガルバノミラー33a及びY軸ガルバノミラー33bを駆動するための制御信号を、信号入力回路28及び入出力回路35を介して光走査機構33に与える。従って、光走査機構33が与えられた制御信号に応じてX軸ガルバノミラー33a及びY軸ガルバノミラー33bを駆動して、これにより、2次元コードデータにおいて照射単位セル62aが配置された領域にレーザ光が照射される。その結果、図3(a)に示すように、ワークWに2次元コード61が印字される。即ち、2次元コード61を構成する黒色セル61aがワークWに描画される。
【0061】
次に、ステップS7において、レーザ発振制御手段11は、ワークWに照射するレーザ光のレーザパワー(エネルギー密度)を第2設定値P2(第2のレーザパワー)に設定する(レーザパワー変更工程)。この第2設定値P2は、第1設定値P1よりも小さい値である。また、本実施形態では、レーザパワーの調整は、収束光学系32の第1収束レンズ32a及び第2収束レンズ32bの少なくとも一方のレンズを移動させることにより、ワークWに照射されるレーザ光のスポット径を変更して行われる。具体的には、レーザパワーが第2設定値P2に設定されたレーザ光のスポット径が、レーザパワーが第1設定値P1に設定されたレーザ光のスポット径よりも大きくなるように調整される。これにより、レーザパワーが第2設定値P2に設定されたレーザ光は、レーザパワーが第1設定値P1に設定されたレーザ光よりもエネルギー密度が小さくなる(即ち単位面積当たりのエネルギーが小さくなる)。また、この第2設定値P2は、レーザパワーが第2設定値P2に設定されたレーザ光をワークWに照射したときに、光を乱反射する白色セル61bをワークWに描画可能な値である。
【0062】
また、同ステップS7において、レーザ発振制御手段11は、前記ステップS4で生成した反転2次元コード印字データを、レーザパワーが第2設定値P2に設定されたレーザ光のスポット径に応じて補正する(印字データ補正工程)。前記ステップS4で生成された反転2次元コード印字データは、2次元コード印字データと同様に、レーザパワーが第1設定値P1に設定されたレーザ光のスポット径に対応したデータとなっている。そこで、ステップS4で生成された反転2次元コード印字データに含まれる座標データ、走査スピード等を、レーザパワーが第2設定値P2に設定されたレーザ光のスポット径に応じて補正する。詳しくは、レーザ発振制御手段11は、予め設定されている複数種類の走査パターン(レーザ光の照射点の軌跡)から、レーザパワーが第2設定値P2に設定されたレーザ光のスポット径にて照射単位セル62aを描画するに適した走査パターンを選択する。そして、選択した走査パターンで照射単位セル62aを描画することができるように、レーザ発振制御手段11は、反転2次元コード印字データに含まれる座標データ等を補正する。尚、走査パターンとしては、例えば、レーザ光の照射点の軌跡が、照射単位セル62aの内部で渦巻状に蛇行するものがある。また、走査パターンには、レーザ光の照射点の軌跡が、矩形のパルス波形のようになるものもある。更に、走査パターンには、レーザ光の照射点の軌跡が、1本若しくは複数本の直線となるものもある。
【0063】
次に、ステップS8において、レーザ発振制御手段11は、前記ステップS8で第2設定値P2に設定されたレーザパワーのレーザ光をワークWに照射して反転2次元コード63を下地として印字する(第2印字工程)。レーザ発振制御手段11は、前記ステップS7で補正した反転2次元コード印字データに基づいて、X軸ガルバノミラー33a及びY軸ガルバノミラー33bを駆動するための制御信号を、信号入力回路28及び入出力回路35を介して光走査機構33に与える。従って、光走査機構33が与えられた制御信号に応じてX軸ガルバノミラー33a及びY軸ガルバノミラー33bを駆動して、これにより、反転2次元コードデータにおいて照射単位セル62aが配置された領域にレーザ光が照射される。その結果、図3(b)に示すように、ワークWに反転2次元コード63が印字される。即ち、白色セル61bから構成される反転2次元コード63がワークWに描画される。このとき、反転2次元コードデータにおいて空白単位セル62bとなっていた部位、即ち前記ステップS7で2次元コード61が印字された部位には、印字がなされない。
【0064】
ここで、反転2次元印字コードでは、反転2次元コードデータにおいて照射単位セル62aが割り当てられた部位には座標データが存在する一方、空白単位セル62bが割り当てられた部位は座標データが存在しない。そして、レーザ発振制御手段11は、座標データが存在しないところ(即ち空白単位セル62a)を光走査機構33にて走査するときには、信号用半導体レーザ13をオフしてレーザ光を出射させない。また、レーザ光の照射によってワークWに印字をする場合には、ワークWの表面状態を変化させながらレーザ光を走査することになるため、ワークWに印字をせずに光走査機構33を駆動する場合によりも走査スピードが小さくなる。従って、光走査機構33が空白単位セル62bを走査するときは、照射単位セル62aを走査するときよりも大きな走査スピードで走査が行われる。
【0065】
そして、第2設定値P2に設定されたレーザパワーのレーザ光が照射された領域(即ち反転2次元コード63が形成された領域)は、光を乱反射する程度の粗面になるとともに平坦になる。反転2次元コード63の印字が終了すると、ワークWには、図3(c)に示すように、白色セル61bよりなるクワイエットゾーン64を周囲に備えた2次元コード61が完成する。
【0066】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)反転2次元コードデータにおいては、2次元コードデータにおいて照射単位セル62aとなっている部分が空白単位セル62bとなっている。そのため、背景となる反転2次元コード63を印字するときには、ワークWの表面において2次元コード61が印字される部位にはレーザ光を照射しない。従って、従来のように、背景となる四角形の下地を印字した後に2次元コードを印字する場合に比べて、2次元コード61の印字に要する時間を短縮することができる。
【0067】
(2)ステップS6において2次元コード61を印字する際、加工屑が飛散することがある。この加工屑は、読み取り装置で2次元コード61を読み取る際に、ノイズとなる虞があるものである。そこで、本実施形態では、ステップS6においてレーザパワーが第1設定値P1に設定されたレーザ光をワークWに照射して2次元コード61を印字した後に、ステップS8においてレーザパワーが第1設定値P1よりも小さい第2設定値P2に設定されたレーザ光をワークWに照射して背景となる反転2次元コード63を印字する。これにより、ステップS6において飛散した加工屑を、ステップS8において反転2次元コード63を印字すると同時に、同反転2次元コード63を印字するためのレーザ光によって効果的に除去することができる。そして、第2設定値P2は第1設定値P1より小さいため、ステップS6で生じる加工屑に比べてステップS8で生じる加工屑の方が少ない。これらのことから、2次元コード61と反転2次元コード63とのコントラストをより鮮明にすることができる。
【0068】
(3)ステップS7において、レーザ発振制御手段11は、ワークWに照射されるレーザ光のスポット径を変更することにより、レーザ光のレーザパワーを第1設定値P1から該第1設定値P1よりも小さい第2設定値P2に変更する。このようにすると、レーザパワーが第1設定値P1に設定されたレーザ光のスポット径よりも、レーザパワーが第2設定値P2に設定されたレーザ光のスポット径の方が大きくなる。その結果、ステップS8においてレーザパワーが第2設定値P2に設定されたレーザ光を走査する距離を短くできるため、反転コード印字データのデータ量が減少されるとともに、印字に要する時間をより短縮することができる。
【0069】
(4)本実施形態ではワークWは金属部材である。一般的に、金属部材の表面は、光沢備えていたり、凹凸形状であったりする場合が多いため、2次元コード61の背景を印字することが望ましい。従って、このような金属部材に2次元コード61を印字する場合に、反転2次元コード63を印字して背景を形成する本実施形態のレーザマーキング方法を用いる意義は大きい。
【0070】
(5)ステップS3において、2次元コードデータにおける照射単位セル62aと空白単位セル62bとを反転した反転2次元コードデータを生成する場合に、レーザマーキング装置1に従来備えられている周知の反転機能を使用することにより、容易に反転2次元コードデータを作成することができる。即ち、ステップS3において、クワイエットゾーン64を形成するための照射単位セル62aが含まれる反転2次元コードデータが容易に生成される。従って、2次元コード61の周囲にクワイエットゾーン64を形成する場合であっても、印字に要する時間を短縮することができる。
【0071】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・レーザ発振制御手段11は、入力手段51を操作して入力されたワークWの種類(アルミニウム合金、樹脂等)を、印字を行うワークWの種類として設定し(ワーク設定工程)、その後、設定したワークWの種類に応じて、第1設定値P1及び第2設定値P2を設定する(レーザパワー設定工程)ように構成されてもよい。この場合、レーザ発振制御手段11は、設定したワークWの種類に対応させて、設定した第1設定値P1及び第2設定値P2を記憶する(記憶工程)。そして、レーザ発振制御手段11は、設定したワークWの種類に対応して記憶した第1設定値P1に設定されたレーザ光をワークWに照射して2次元コード61を印字するようにシンボル印字データに基づいて光走査機構33を駆動する。その後、レーザ発振制御手段11は、設定したワークWの種類に対応して記憶した第2設定値P2に設定されたレーザ光をワークWに照射して反転2次元コード63を印字するように反転シンボル印字データに基づいて光走査機構33を駆動する。
【0072】
このようにすると、例えば、過去に2次元コード61を印字したことのある種類のワークWに2次元コード61の印字を行う場合に、レーザパワーを設定する手間を省くことができる。また、複数種類のワークWに対応させて、印字に最適な第1設定値P1及び第2設定値P2を記憶しておくことにより、様々なワークWへの2次元コード61の印字を容易に行うことが可能となる。
【0073】
・レーザ発振制御手段11は、作業者が入力手段51を操作して任意に入力した第1設定値P1及び第2設定値P2の少なくとも一方を、印字に使用するレーザパワーとして設定する(レーザパワー設定工程)ように構成れてもよい。このようにすると、第1設定値P1及び第2設定値P2の少なくとも一方を作業者が所望する値に設定できる。
【0074】
また、レーザ発振制御手段11は、作業者によって入力手段51を操作して入力された第1設定値P1及び第2設定値P2の何れか一方の設定値に応じて、何れか他方の設定値を自動的に設定する(レーザパワー設定工程)ように構成されてもよい。例えば、作業者が入力手段51から入力した値を第1設定値P1に設定した場合、レーザ発振制御手段11は、設定された第1設定値P1の所定割合となる値を第2設定値P2として設定するように構成される。また、例えば、作業者が入力手段51から入力した値を第1設定値P1に設定した場合、レーザ発振制御手段11は、第1設定値P1から所定値だけ減算した値を第2設定値P2として設定するように構成される。このようにすると、第1設定値P1及び第2設定値P2の何れか一方の設定値が任意に設定されると、他方の設定値は自動的に設定されるため、レーザパワーの設定が簡単になる。特に、背景となる反転2次元コード63は、読取り装置による2次元コード61の読取りを阻害しないように形成されればよいため、反転2次元コード63を印字するときのレーザパワーは、作業者側での設定を強く望まれるものではない。従って、第1設定値P1及び第2設定値P2の何れか一方の設定のみで2種類のレーザパワーを設定することができると、レーザマーキング装置1の操作性が向上する。
【0075】
・上記実施形態では、ワークWは金属部材であるが、これに限らない。例えば、複数枚のラベルが積層されてなる多層ラベルに本発明を適用してもよい。この場合、2次元コード(シンボル)と反転2次元コード(反転シンボル)との印字の順序を任意に設定することができる。
【0076】
・上記実施形態では、ステップS7において、レーザ発振制御手段11は、ワークWに照射されるレーザ光のスポット径を変更することにより、レーザ光のレーザパワーを第1設定値P1から該第1設定値P1よりも小さい第2設定値P2に変更する。しかしながら、レーザ発振制御手段11は、信号用半導体レーザ13のレーザ出力を変更することにより、レーザ光のレーザパワーを第1設定値P1から該第1設定値P1よりも小さい第2設定値P2に変更してもよい。即ち、レーザ発振制御手段11は、第1設定値P1と第2設定値P2とは、信号用半導体レーザ13のレーザ出力を変更することにより、ワークWに照射するレーザ光の単位面積当たりのエネルギーを調整して異なる値に設定してもよい。このようにすると、一般的にレーザ出力を変更するとレーザ光のレーザパワーは比例的に変化するため、レーザパワーを設定するための演算を容易に行うことができる。即ち、第1設定値P1から第2設定値P2へのレーザパワーの変更を容易に行うことができる。
【0077】
・上記実施形態におけるステップS5〜S8は、ステップS7、ステップS8、ステップS5、ステップS6の順に行ってもよい。このようにすると、まず、ワークには、図4(a)に示すように、反転2次元コード63が印字される。その後、図4(b)に示すように、2次元コード61が印字される。その結果、図4(c)に示すように、白色セル61bよりなるクワイエットゾーン64を周囲に備えた2次元コード61が完成する。このようにしても、上記実施形態の(1)と同様の作用効果を得ることができる。
【0078】
・上記実施形態では、2次元コード61を印字するときのレーザ光のレーザパワーである第1設定値P1は、反転2次元コード63を印字するときのレーザ光のレーザパワーである第2設定値P2よりも大きい。しかしながら、第1設定値P1と第2設定値P2とは、異なる値であればよく、第2設定値P2の方が第1設定値P1より大きい値に設定されてもよい。即ち、第1設定値P1と第2設定値P2とは、2次元コード61に対して反転2次元コード63が背景となるようにワークWに印字を行うことができるように設定すればよい。
【0079】
・上記実施形態では、ステップS2において、レーザ発振制御手段11は、ステップS1において取得したデータに基づいて2次元コード61を生成した後に、生成した2次元コード61に基づいて2次元コードデータを生成する。しかしながら、2次元コード61及び2次元コードデータは、必ずしもレーザ発振制御手段11にて生成されなくてもよい。例えば、外部で作成された2次元コード61を、レーザ発振制御手段11に転送するようにしてもよい。この場合、レーザ発振制御手段11は、転送された2次元コード61を取得した後に、取得した2次元コード61に基づいて2次元コードデータを生成する。また、外部で作成した2次元コードデータをレーザ発振制御手段11に転送するようにしてもよい。この場合、レーザ発振制御手段11は、転送された2次元コードデータを取得(設定)した後に、取得した2次元コード61に基づいて2次元コード印字データを生成する。このことは、反転2次元コード63及び反転2次元コードデータについても同様である。
【0080】
・上記実施形態では、ワークWに印字するシンボルとして二次元コードであるQRコード(登録商標)を例に説明した。しかしながら、ワークに印字するシンボルは、QRコード(登録商標)以外の2次元コード(例えば、データマトリクスコード、コンポジットコード等)であってもよいし、バーコード等の1次元コードであってもよい。
【0081】
上記各実施形態及び上記各変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のレーザマーキング装置において、前記反転シンボルデータ設定手段は、前記シンボルデータにおける前記照射単位セルと前記空白単位セルとを反転し、前記空白単位セルにて構成される前記シンボルの周囲にクワイエットゾーンを構成するべく配列された前記照射単位セルを含む前記反転シンボルデータを設定することを特徴とするレーザマーキング装置。
【0082】
同構成によれば、シンボルの周囲にクワイエットゾーンを形成する場合であっても、印字に要する時間を短縮することができる。
(ロ)請求項9に記載のレーザマーキング方法において、前記第1印字工程の後に、少なくともレーザ光のスポット径を変更することにより、前記ワークに照射されるレーザ光の単位面積当たりのエネルギーを調整して前記第2のレーザパワーを前記第1のレーザパワーと異なる値に設定するレーザパワー変更工程と、前記レーザパワー変更工程の後であって前記第2印字工程の前に、前記シンボル印字データ及び前記反転シンボル印字データのうち前記第2印字工程で使用する印字データを、前記レーザパワー変更工程で設定した第2のレーザパワーのレーザ光のスポット径に応じて補正する印字データ補正工程とを備えたことを特徴とするレーザマーキング方法。
【0083】
同方法によれば、第1のレーザパワーに設定されたレーザ光のスポット径よりも、第2のレーザパワーに設定されたレーザ光のスポット径が大きく設定されることになる。その結果、第2印字工程において第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を走査する距離を短くできるため、印字データ補正工程で補正された印字データ(即ち第2印字工程で使用するシンボル印字データ若しくは反転シンボル印字データ)のデータ量が減少されるとともに、印字に要する時間をより短縮することができる。
【0084】
(ハ)請求項9に記載のレーザマーキング方法において、前記第1印字工程の後に、少なくともレーザ光源のレーザ出力を変更することにより、前記ワークに照射されるレーザ光の単位面積当たりのエネルギーを調整して前記第2のレーザパワーを前記第1のレーザパワーと異なる値に設定するレーザパワー変更工程を備えたことを特徴とするレーザマーキング方法。
【0085】
同方法によれば、一般的に、レーザ出力を変更するとレーザ光のレーザパワーは比例的に変化するため、レーザパワーを設定するための演算を容易に行うことができる。即ち、第1のレーザパワーから第2のレーザパワーへの変更を容易に行うことができる。
【0086】
(ニ)請求項8、請求項9、前記(ロ)及び前記(ハ)の何れか1項に記載のレーザマーキング方法において、前記ワークの種類を設定するワーク設定工程と、前記ワーク設定工程において設定された前記ワークの種類に応じて、前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーを設定するレーザパワー設定工程と、前記ワーク設定工程で設定された前記ワークの種類に対応させて、前記レーザパワー設定工程で設定された前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーを記憶する記憶工程とを備え、前記第1印字工程では、前記ワーク設定工程で設定した前記ワークの種類に対応して記憶された前記第1のレーザパワーに設定されたレーザ光を前記ワークに照射して、前記シンボル印字データに基づいて前記ワークに前記シンボルを印字し、前記第2印字工程では、前記ワーク設定工程で設定した前記ワークの種類に対応して記憶された前記第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を前記ワークに照射して、前記反転シンボル印字データに基づいて前記ワークに前記反転シンボルを前記下地として印字することを特徴とするレーザマーキング方法。
【0087】
同方法によれば、レーザパワー設定工程で設定された第1のレーザパワー及び第2のレーザパワーは、記憶工程において、ワーク設定工程で設定されたワークの種類に対応させて記憶される。そのため、例えば、過去にシンボルを印字したことのある種類のワークにシンボルの印字を行う場合に、レーザパワーを設定する手間を省くことができる。また、複数種類のワークに対応させて、印字に最適な第1のレーザパワー及び第2のレーザパワーを記憶しておくことにより、様々なワークへのシンボルの印字を容易に行うことが可能となる。
【0088】
(ホ)前記(ニ)に記載のレーザマーキング方法において、前記レーザパワー設定工程では、前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーの少なくとも一方を任意に設定可能であることを特徴とするレーザマーキング方法。
【0089】
同方法によれば、第1のレーザパワー及び第2のレーザパワーの少なくとも一方を任意に設定可能であるため、第1のレーザパワー及び第2のレーザパワーの少なくとも一方を作業者が所望する値に設定することができる。
【0090】
(ヘ)前記(ホ)に記載のレーザマーキング方法において、前記レーザパワー設定工程では、前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーの何れか一方のレーザパワーが任意に設定されると、何れか他方のレーザパワーが自動的に設定されることを特徴とするレーザマーキング方法。
【0091】
同方法によれば、第1のレーザパワー及び第2のレーザパワーの何れか一方のレーザパワーが任意に設定されると、他方のレーザパワーは自動的に設定されるため、レーザパワーの設定が簡単になる。
【0092】
(ト)請求項8、請求項9、前記(ロ)乃至前記(ヘ)の何れか1項に記載のレーザマーキング方法において、前記反転シンボルデータ生成工程では、前記シンボルデータにおける前記照射単位セルと前記空白単位セルとを反転し、前記空白単位セルにて構成される前記シンボルの周囲にクワイエットゾーンを構成するべく配列された前記照射単位セルを含む前記反転シンボルデータを生成することを特徴とするレーザマーキング方法。
【0093】
同方法によれば、シンボルの周囲にクワイエットゾーンを形成する場合であっても、印字に要する時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0094】
11…シンボルデータ設定手段、反転シンボルデータ設定手段、印字データ生成手段、レーザパワー変更手段、印字データ補正手段、ワーク設定手段、レーザパワー設定手段及び記憶手段としてのレーザ発振制御手段、13…レーザ光源としての信号用半導体レーザ、33…光走査手段としての光走査機構、61…シンボルとしての2次元コード、62a…照射単位セル、62b…空白単位セル、63…反転シンボルとしての反転2次元コード、P1…第1のレーザパワーとしての第1設定値、P2…第2のレーザパワーとしての第2設定値、W…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次元コード若しくは2次元コードであるシンボルと、前記シンボルの背景となる下地とをワークに印字するレーザマーキング装置において、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記シンボルを構成する単位セルであってレーザ光を照射する照射単位セルとレーザ光を照射しない空白単位セルとを配列したシンボルデータを設定するシンボルデータ設定手段と、
前記シンボルデータにおける前記照射単位セルと前記空白単位セルとを反転した反転シンボルデータを設定する反転シンボルデータ設定手段と、
前記シンボルデータにおける前記照射単位セルにレーザ光を照射・走査して前記シンボルを印字するためのシンボル印字データと、前記反転シンボルデータにおける前記照射単位セルにレーザ光を照射・走査して反転シンボルを印字するための反転シンボル印字データとを生成する印字データ生成手段と、
前記シンボル印字データに基づいて、第1のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記ワークに前記シンボルを印字するとともに、前記反転シンボル印字データに基づいて、前記第1のレーザパワーと異なる第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記ワークに前記反転シンボルを前記下地として印字する光走査手段と
を備えたことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザマーキング装置において、
前記光走査手段は、前記シンボル印字データに基づいて、前記第1のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記シンボルを前記ワークに印字した後に、前記反転シンボル印字データに基づいて、前記第1のレーザパワーよりも小さい前記第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記反転シンボルを前記ワークに印字することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザマーキング装置において、
少なくともレーザ光のスポット径を変更することにより、前記ワークに照射されるレーザ光の単位面積当たりのエネルギーを調整して前記第2のレーザパワーを前記第1のレーザパワーと異なる値に設定するレーザパワー変更手段と、
前記シンボル印字データ及び前記反転シンボル印字データのうち後で使用する印字データを、前記レーザパワー変更手段で設定した第2のレーザパワーのレーザ光のスポット径に応じて補正する印字データ補正手段と
を備えたことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項4】
請求項2に記載のレーザマーキング装置において、
少なくともレーザ光源のレーザ出力を変更することにより、前記ワークに照射されるレーザ光の単位面積当たりのエネルギーを調整して前記第2のレーザパワーを前記第1のレーザパワーと異なる値に設定するレーザパワー変更手段を備えたことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のレーザマーキング装置において、
前記ワークの種類を設定するワーク設定手段と、
前記ワーク設定手段で設定された前記ワークの種類に応じて、前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーを設定するレーザパワー設定手段と、
前記ワーク設定手段で設定された前記ワークの種類に対応させて、前記レーザパワー設定手段で設定された前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーを記憶する記憶手段とを備え、
前記光走査手段は、前記ワーク設定手段で設定した前記ワークの種類に対応して記憶された前記第1のレーザパワーに設定されたレーザ光を前記ワークに照射して、前記シンボル印字データに基づいて前記ワークに前記シンボルを印字するとともに、前記ワーク設定手段で設定した前記ワークの種類に対応して記憶された前記第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を前記ワークに照射して、前記反転シンボル印字データに基づいて前記ワークに前記反転シンボルを前記下地として印字することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザマーキング装置において、
前記レーザパワー設定手段は、前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーの少なくとも一方を任意に設定可能に構成されていることを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザマーキング装置において、
前記レーザパワー設定手段は、前記第1のレーザパワー及び前記第2のレーザパワーの何れか一方のレーザパワーが任意に設定されると、何れか他方のレーザパワーを自動的に設定することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項8】
1次元コード若しくは2次元コードであるシンボルと、前記シンボルの背景となる下地とをワークに印字するレーザマーキング方法であって、
前記シンボルを構成する単位セルであってレーザ光を照射する照射単位セルとレーザ光を照射しない空白単位セルとを配列したシンボルデータを生成するシンボルデータ生成工程と、
前記シンボルデータにおける前記照射単位セルと前記空白単位セルとを反転した反転シンボルデータを生成する反転シンボルデータ生成工程と、
前記シンボルデータにおける前記照射単位セルにレーザ光を照射・走査して前記シンボルを印字するためのシンボル印字データと、前記反転シンボルデータにおける前記照射単位セルにレーザ光を照射・走査して反転シンボルを印字するための反転シンボル印字データとを生成する印字データ生成工程と、
前記シンボル印字データに基づいて、第1のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記ワークに前記シンボルを印字する第1印字工程と、
前記反転シンボル印字データに基づいて、前記第1のレーザパワーと異なる第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記ワークに前記反転シンボルを前記下地として印字する第2印字工程と
を備えたことを特徴とするレーザマーキング方法。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザマーキング方法において、
前記第1印字工程の後に前記第2印字工程を行い、
前記第2印字工程では、前記反転シンボル印字データに基づいて、前記第1のレーザパワーよりも小さい前記第2のレーザパワーに設定されたレーザ光を照射して前記反転シンボルを前記ワークに印字することを特徴とするレーザマーキング方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のレーザマーキング方法において、
前記ワークは金属部材であることを特徴とするレーザマーキング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−212728(P2011−212728A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84654(P2010−84654)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000106221)パナソニック電工SUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】