説明

レーザービームを放射するための軸方向冷却を伴う反横断レーザー発振装置

【課題】レーザービームを放射するための軸方向冷却を伴う反横断レーザー発振装置を提供する。
【解決手段】本発明は2つの面S1とS2をつなぐ表面積Σにより範囲を定められ、そして利得媒体となるためにその面の両方、又はその内の1つを通じてポンピングされることを目的とする、蛍光波長λを持つ円筒形の固体増幅媒体(1)を含む、レーザービームを放射するための装置に関する。装置は面のうちの1つにわたり増幅媒体(1)と接触する熱伝導率Crの冷却液(31)と、その表面積Σにわたり増幅媒体(1)と接触する熱伝導率Ci<0.3Crの、蛍光波長を吸収し又は散乱させる屈折率整合液(21)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は固体レーザー、特に1パルス当りで(10Jを超える)高いエネルギー及び(10Wを超える)高い平均出力を伴う短パルス(ナノ秒〜フェムト秒)を有する、パルスレーザーに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザービームを放射するための装置の動作モードが手短に想起されるであろう。それは主に増幅媒体と、エネルギーを増幅媒体内へ注入する励起光源とを含む。格子の形状であるこの増幅媒体は、結晶又は代わりにドーピングされたガラスであってもよい。増幅されるべきレーザービームは、続いて例えばミラーを備えた光学装置を使って1回以上、増幅器の格子を通過する。各通過の間、それはポンピングの間に注入されたエネルギーの一部分を抽出し、従って増幅器の格子内で増幅される。円筒形の増幅器の格子に対して、ポンピングの間に蓄積されたエネルギーは一般に、ポンピング・ビームの直径により範囲を定められる、増幅器の円筒形部分の中に閉じ込められる。
【0003】
レーザービーム増幅装置の、このタイプの構成において、横断レーザー発振と称される寄生現象が、光ポンピングによって増幅器の格子内にエネルギーが蓄積される時と、増幅されるビームによってそれが抽出される時との間に生じる。
【0004】
この現象は、増幅器の格子の縦軸に対して直角な軸に沿う増幅器の格子内の、レーザー小空洞の生成に関係し、増幅器の格子の環境での界面における屈折率の変化は、この小空洞に対するミラーの機能を満たす。横断レーザー発振は、この小空洞の発振条件が満足されるとき、すなわち小空洞内部の帰路にわたるエネルギーの保存が有るとき、又は言い換えれば横方向の利得Gが小空洞の損失Pを補うときに生じる。
【0005】
後で、結晶が増幅器の格子の一例として挙げられるであろう。それは勿論ドーピングされたガラスによって置き換えられ得る。
【0006】
図1cは、直径Lのポンピング・レーザービーム4により、その面S1、S2を通ってポンピングされる、長さeの円筒形増幅器の結晶1(図1a)における横方向の光学利得Gを表わす。線形利得密度がgにより表わされる場合、小信号利得gpsは縦軸方向Oxにはg×eに等しく、Oxに直角な横方向にはg×Lに等しい。通常、L≧eである。
【0007】
光学利得Gはe^gps(“^”は「べき乗」を示す)に比例するため、次のようになる:
g0.L>>eg0.e
【0008】
横方向の光学利得Gは、従って縦方向すなわちレーザービームが増幅される方向の光学利得Gよりも格段に大きい。
【0009】
横断レーザー発振は、増幅される目的のレーザービーム次第で、制御されない横方向の誘導放出によって引き起こされる、結晶内に蓄えられたエネルギーの急速な除去により明らかにされる。
【0010】
この横断レーザー発振は特に、高い利得と大きな寸法(一般に0.88の利得g及びポンプ直径70mm)を有する固体増幅媒体の場合、特に問題がある。例えば、それは100Jのオーダーの高エネルギーでポンピングされたチタン:サファイヤ(Ti:sapphire)結晶を用いる、一般に1000兆Wのオーダーの非常に高い出力を有する、フェムト秒のレーザーパルスの発生を妨げる。
【0011】
これまで、この横断レーザー発振を抑えるために、寄生ビームに関する利得を低減すること、及び寄生ビームに関する損失を増加させることにある、主として2つの解決策が存在している。
【0012】
前者は寄生ビームに対する利得の低減が、主ビームに対する利益の低減もまた含むため、余り使われず、余り良く評価されていない。利用可能なポンピング・エネルギーを分割し、それをポンピングされる材料へ異なる時に送ることにある、1つの巧みな解決策が本出願人により提案されている。この解決策は、仏国特許出願公開第0413734号明細書“Dispositif electronique de suppression du lasage transverse dans les amplificateurs laser haute energie” [Electronic device for the suppression of transverse lasing in high−energy laser amplifiers](高エネルギーレーザー増幅器における横断レーザー発振の抑制のための電子装置)の主題を形成している。
【0013】
しかしながら、大部分の解決策は寄生発振に関する損失を増加させることに基づく。
【0014】
第一の可能性は、結晶1の面S1とS2をつないでいる表面積Σの周りの空気を水に置き換えることであり、その利点は界面における反射係数を減少させ(当該材料は一般に1.5〜1.8の屈折率を持つのに対して、その屈折率が1〜1.33に変化する)、そして大量の熱が蓄積されている領域内の結晶の冷却を改善することである。この解決策は、仏国特許出願公開第04411815号明細書の主題を形成している。しかしながら、この解決策は界面における反射係数が依然として大き過ぎ、800nmの放射が機械的取付け台によって、さらに反射されて材料に送り返され得るため、完全には満足でない。
【0015】
現在用いられている解決策は実際、その屈折率がその材料の屈折率と同一か、又は極めて近い液体へと水を置き換えること(そのとき屈折率整合という用語が使われる)、及び800nmの放射を吸収する材料をこの屈折率整合液21に加えることにある。この吸収材料もまた液状(それは一般に染料)であり、屈折率整合液と混合される。従って、軸に直角に800nmに増幅された光子は、屈折率整合液のおかげで材料との界面において反射されず(従ってそれらは、さらに増幅されるために再び利得領域を通過することは出来ず)、次にそれらは染料によって吸収される。仏国特許出願公開第2901067号明細書に説明されている、この技術は、ポンピング・レーザーの低い繰り返し率(最大でも0.1Hz)のため、チタンでドーピングされたサファイヤの結晶における熱負荷は制限され(0.1Hzにおいて最大でも100Jのポンピングは、増幅効率を考慮に入れて6〜7Wの熱負荷を生み出す)、チタン−サファイヤ結晶の周りを循環しない屈折率整合液+染料の混合を有する構造は、完全に要求を満たすことが出来ているため、チタンでドーピングされたサファイヤに基づくレーザーシステムに対する横方向発振の除去に良く機能する。
【0016】
しかしながら、ポンピング・レーザーの技術はここ数年にわたって大幅に発展しており、今では1〜5Hzの間の繰り返し率で100Jを持つことが可能になっている。10Hzに非常に近い場合でも将来達成できる可能性があり、それは1KWのオーダーの平均ポンピング出力と、結晶内で600〜700Wオーダーの熱の蓄積とを与えるであろう。
【0017】
このレベルにおいては、その熱容量が水よりも大幅に小さい屈折率整合液+染料の混合を用いて、(矢印10で表わされる)熱の除去を利用することは、もはや有効ではない。使われる混合物(屈折率整合を確実にするための屈折率整合液と、寄生レーザー放射を吸収する染料)の熱的特性は、満足すべき熱の除去を可能にしない。これは、屈折率整合液が不十分な熱導体であり、それが、レーザーの繰り返し率を増加させるとき図1bに例証される放物線状の温度特性を誘起し、(ビーム質係数である)ストレール(Strehl)比を悪化させ、短い熱的焦点距離及び波面収差を誘起するためである。
【0018】
1つの解決策は、結晶の表面積Σと金属接触する低温のフィンガーへと屈折率整合液を置き換えることにある。これは熱影響を低減できるが、平均出力が400Wを超えるときには不十分である。さらに、そのような低温装置は重量が大きく、高価で振動を受け、横断レーザー発振を抑えることが出来ない。
【0019】
現在、軸方向のポンピング及び熱抽出を伴う、固体板の形態である増幅媒体を備え、そして屈折率整合と吸収材の機能を満足する側(表面積Σ)において、異なる固体材料を備えたレーザービームを放射するための装置もまた存在する。その材料は増幅媒体に「溶接される」か、分子付着により接触させられる。しかしながら、これらの縁又は環状帯は材料によっては必ずしも技術的に達成可能でない。
【0020】
結果的に、とりわけ横断レーザー発振の抑制、冷却、及び使用の簡便さに関して、前述の全ての要求を同時に満たすレーザービームを放射するための装置に対する必要性が、依然として残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、横断レーザー発振を抑制するための屈折率整合液の使用に適合する、軸方向の冷却に基づく。
【0022】
より正確には、本発明は2つの面S1とS2をつなぐ表面積Σにより範囲を定められ、そして利得媒体となるためにその面の両方、又はその内の1つを通じてポンピングされることを目的とする、蛍光波長λを持つ円筒形の固体増幅媒体を含む、レーザービームを放射するための装置に関する。装置は主として、面のうちの1つにわたり増幅媒体と接触する熱伝導率Crの冷却液と、その表面積Σにわたり増幅媒体と接触する熱伝導率Ci<0.3Crの、蛍光波長を吸収し又は散乱させる屈折率整合液とを含むことを特徴とする。
【0023】
この装置の利点の1つは、半径方向の冷却と対照的に、熱勾配が(材料内における熱のほぼ一様な蓄積の仮定で)伝搬軸Oxに沿って大きく、その軸に直角方向に小さいことである。それゆえ熱レンズ効果は大幅に低減され、波面の質が従って改善され、ポンピング出力のレベルと殆ど無関係となる。
【0024】
さらに、横断レーザー発振を抑制するための液体の使用は、増幅媒体に溶接された固体の環状帯を有する先行技術の解決策とは対照的に、それが液体21を(例えば染料を変えることによって)選ばれた増幅媒体1に適合させるのが非常に容易である限り、巧みで一般的な解決策を与える。
【0025】
望ましくは、冷却液と接触する増幅媒体の面は、レーザービームを増幅媒体に向けて反射するための、波長λにおいて反射する加工を含む。
【0026】
増幅媒体が両方の面を通じてポンピングされることを目的とする場合、波長λにおいて反射する加工は、ポンピングの波長においては透明である。
【0027】
装置は、場合によってはもう一つの面と接触する熱伝導率Crの冷却液もまた含む。
【0028】
冷却液は、例えば水又はヘリウムであり、増幅媒体はTi:Sa(チタン:サファイヤ)結晶である。
【0029】
特定の実施形態によれば、装置は冷却液の下流にある、出力ビームの位相を修正するための要素を含む。
【0030】
レーザービームを放射するための、この装置はレーザー発振器又はレーザー増幅器として使用され得る。
【0031】
本発明の別の特徴及び利点は、制限されない例のために与えられる以下の記述を読み、そして添付図を参照することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1a】既に説明されているが、先行技術による、横断レーザー発振を抑制する装置を備えたレーザービームを増幅するための、そして半径方向の冷却を有する装置の一例を概略的に表わす。
【図1b】既に説明されているが、先行技術による、格子の半径rの関数としての関連する温度特性の一例を概略的に表わす。
【図1c】既に説明されているが、先行技術による、横方向の利得の一例を概略的に表わす。
【図2a】本発明による、横断レーザー発振を抑制する装置を備えたレーザービームを増幅するための、そして軸方向の冷却を有する装置の一例を概略的に表わす。
【図2b】本発明による、格子の半径rの関数としての関連する温度特性の一例を概略的に表わす。
【0033】
1つの図から次の図へと、同一の要素は同じ参照番号/記号により表わされる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下において、半径Dの円形面S1、S2を有する結晶の格子は、増幅媒体1の一例として選ばれるであろう。想定される結晶は単結晶又は多結晶セラミックのいずれでもあり得る。
【0035】
図2に関連して記述される、本発明によるレーザービームを増幅するための装置は、主として:
―寄生の横方向発振に対抗することを目的とし、蛍光波長において吸収し又は散乱させる屈折率整合液21が、結晶1の表面積Σと接触するように置かれる装置20と、
―冷却液31が結晶1の表面積S1又はS2(図中では表面積S2)と接触するように置かれる、冷却液31を循環させるための装置30と
を備える。
【0036】
冷却装置30は、望ましくはそれがポンピング放射4を通過させ得るように構成される。増幅媒体は従って両方の面S1及びS2を通じてポンピングされ得る。
【0037】
結晶の全長eにわたって、屈折率整合液21+染料の混合物は結晶1の表面積Σと接触し、従って横方向の発振を抑制する機能を満たすことを可能にする。それは当業者には既知である、シール22を備えた機械部品を用いて結晶との接触を保たれる。
【0038】
流体31の独立した循環が加えられ、それは結晶1の面S2(望ましくは全表面積S2)と接触し、ポンピング放射4により結晶1内で発生した熱を除去するであろう。この冷却液31は、シール32をまた備え、この流体が表面積S2に沿って循環できるようにする、機械部品30を用いて結晶1との接触を保たれる。これらの部品20及び30は、屈折率整合液21と冷却液31とが接触しないように配置される。
【0039】
(矢印10’により表わされる)熱の除去が基本的に(Oxに沿って)軸方向になり、あらゆる温度の横方向勾配及び従って(rに沿った)横方向屈折率の発生を防止し、それゆえ増幅媒体内での熱レンズの形成を避けるため、その熱伝導率Ciが熱伝導率Crよりも小さい屈折率整合液が使用され、ここでCi<0.3Crである。
【0040】
例えば、屈折率整合液21として0.1W/(m.K)に等しい熱伝導率Ciを有するジヨードメタン、及び冷却液31として0.6W/(m.K)に等しい熱伝導率Crを有する水を用いるとき、図2bに見られるように、Ti:Sa結晶内には殆ど熱レンズの形成が無い。
【0041】
この反横断レーザー発振機能と冷却機能の分離は、従って水の熱定数の観点から、大量の熱を除去可能にする。熱の除去は増幅媒体が厚過ぎないとき、比例してより効果的である。e<D/2であることが望ましく、Dは増幅媒体の直径である。さらに、横断レーザー発振を抑制するための液体の使用は、増幅媒体に溶接された堅固な環状帯を有する先行技術の解決策とは対照的に、液体21を選定された増幅媒体1に適合させる事が容易である限り、一般的な解決策を提供する。
【0042】
別の非常に大きな利点は、半径方向の冷却とは対照的に、熱勾配が(材料内の熱のほぼ一様な蓄積の仮定で)伝搬軸Oxに沿って大きく、その軸に直角方向に小さいことである。それゆえ熱レンズ効果は大幅に低減され、波面の質が従って改善され、ポンピング出力のレベルと殆ど無関係となる。
【0043】
基本的な構成において、増幅媒体1は熱の蓄積を一様にするために重要である、両方の面S1とS2を通じてポンピングされ、一方でレーザービームは冷却液31と接触する増幅媒体の表面積S2によって反射される。具体的に、最初の解析においてポンピング・ビーム4は、それが吸収されない(水は可視スペクトル及び近赤外線スペクトルの大部分にわたって透明である)ため、水の層を困難なく通過でき、仮に水を通過するときにその波面が僅かに乱される場合でも、ポンピングのプロセスは放射の吸収に続くエネルギーの移動にあるため、これは取るに足りず、そして例えば増幅媒体を損ない得る過電流をもたらす、ポンピング・ビームを劣化させる危険性がないため、この放射は十分迅速に吸収されることが想定され得る。他方で、この基本的構成において、増幅されるべきビームはその波面を悪化させ得る、水の層をそれが通過する必要がないように、増幅媒体−水の界面(表面積S2)において反射される。このために、増幅媒体の(後面と称される)面S2は、増幅媒体の蛍光波長に対して高い反射率(一般に、R>98%)で、しかしポンピング・ビーム4の波長に対して良好な透明度(一般に、T>95%)で加工される。
【0044】
増幅媒体1が面S1を通じてのみポンピングされるとき、ポンピング・ビーム4の波長に対する面S2の(反射加工の)透明度に関する条件は、もはや必要でない。
【0045】
増幅されるべき波長に対する高い反射率を伴って加工された材料の面S2を有する事実は、その軸における利得が低くても、その反射防止加工による利得をそれ自体で阻止しなければならないのが、(前面と称される)面S1であり、一方でレーザー光束に耐性を持つ必要がある広帯域を含む、デュアルバンド(1つの帯域はレーザー用で、1つの帯域はポンピング用)の反射防止加工は、残留反射率に関して余りうまく機能しないことが既知であるため、(増幅媒体の2つの面、S1とS2の間の)軸方向の寄生発振を促進する危険性をはらむ。
【0046】
これが、第一の代替構成によれば、増幅されるべきビームが水の層を通過し、そして必要な場合は、放射されるレーザービームの経路上の水の層の下流側で結晶の外側に配置される、例えば変形可能なミラーである位相修正部品を用いて、その波面に関して修正され得ることが可能な理由である。
【0047】
第二の変形によれば、第二の冷却装置が、増幅媒体のもう一つの面である、面S1に加えられる。
【0048】
選定される構成がどうであれ、水は例えばエチレン、エチレングリコール、又は水+エチレングリコールの混合物のような別の液体、もしくは代わりに良好な熱交換を確保するために最適化されたガス(例えばヘリウム)の流れに置き換えられ得る。特に流れが乱れている場合、ガスの流れは水の層を通過するよりも波面の乱れを少なくするため、代替構成用にとりわけ適している。
【0049】
1つの例示的実施形態が、水を冷却液とし、Ti:Sa結晶を増幅媒体とし、20cmの直径を有する円形の表面積S1及びS2を伴って、ここで説明されるであろう。
次の略語が使用される:
F=水の流量、l/min
ρ=水の密度=1000kg/m
Cp=水の熱容量=4180J/(kg.℃)
ΔT=冷却水の温度上昇、℃
V=水の流速、m/s
S=糸状の水流の断面積、m=a×D
P=Ti:Saから抽出される熱出力、W
以下が得られる:
P(W)=F×(1/60000)×ρ×Cp×ΔT
ここでF(l/min)=V×S×60000
その結果:
除去されるべきP=1kW;a=5mm;D=20cm;ΔT=1℃であり、それゆえ流量F=14.35l/min、すなわち0.24m/s(又は0.8km/h)を得ることが必要である。
【0050】
言い換えれば、20cmの直径を有するTi:Saの後面(S2)が、14.4l/minに等しい流量において5mmの厚さを持つ水膜で冷却される場合、1kWの熱(すなわち、2Hzにおいて10PWのレーザーシステムの主増幅器ステージ)が、水温において僅か1℃の上昇で抽出され得る。
【0051】
この構成は次の利点を有する:
―熱レンズ無しでは、800nm(=Ti:Saの蛍光波長)におけるビームの伝搬条件に影響することなく、ポンピング・エネルギーを変更することができ、
―1kWを超える平均ポンピング出力が可能であり、
―水と接触するTi:Sa結晶の面S2が800nmにおいて反射するように加工される。800nmのビームは、従って薄い水膜を通過せず、それは波面の悪化回避を可能にし、
―横断レーザー発振無しに、20000迄の横方向利得exp(g0×L)が達成可能であり、それは10PWのピーク出力(800Jのポンピングで、直径17cmにわたる300Jの増幅器出力)に達することができる。
【0052】
増幅媒体に関して言及され得る、その他の例は:Nd:YAG、Nd:YLF、Yb:YAG等である。
【0053】
発振器により放射されるレーザーを増幅するための装置の一例が提示されてきたが、本発明による装置は、レーザービームを発生するレーザー発振器においても使用され得る。
【符号の説明】
【0054】
1 増幅媒体
4 ポンピング・レーザービーム
10 矢印
10’ 矢印
20 装置
21 屈折率整合液
22 シール
30 冷却装置
31 冷却液
32 シール
S1 面
S2 面
Σ 結晶の表面積
e 結晶の全長
L 直径
D 増幅媒体の直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームを放射するための装置であって、2つの面S1とS2をつなぐ表面積Σにより範囲を定められ、そして利得媒体となるために前記面の両方、又はその内の1つを通じてポンピングされることを目的とする、蛍光波長λを持つ円筒形の固体増幅媒体(1)を含み、前記面のうちの1つにわたり前記増幅媒体(1)と接触する熱伝導率Crの冷却液(31)と、その表面積Σにわたり前記増幅媒体(1)と接触する熱伝導率Ci<0.3Crの、前記蛍光波長を吸収し又は散乱させる屈折率整合液(21)とを含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記冷却液(31)と接触する前記増幅媒体(1)の面が、前記レーザービームを前記増幅媒体に向けて反射するための、前記波長λにおいて反射する加工を含むことを特徴とする、請求項1に記載のレーザービームを放射するための装置。
【請求項3】
前記波長λにおいて反射する加工がポンピング波長において透明であることを特徴とする、請求項2に記載のレーザービームを放射するための装置。
【請求項4】
もう一つの面と接触する熱伝導率Crの冷却液を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザービームを放射するための装置。
【請求項5】
前記冷却液の下流側の、放射されるビームの出力経路において、位相修正要素を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザービームを放射するための装置。
【請求項6】
前記冷却液が水又はヘリウムであり、前記増幅媒体がTi:Sa結晶であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザービームを放射するための装置。
【請求項7】
レーザー発振器又はレーザー増幅器である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のレーザービームを放射するための装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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