説明

レーザ装置

【目的】1台の光パワーセンサによって導光体の透過率を検出することができ、小型・軽量で、安価なレーザ装置を提供できる。
【構成】共振器1から入射したレーザ光の一部を透過し、一部を反射する第1のビームスプリッタ2を設け、この第1のビームスプリッタ2を透過したレーザ光を導光するレーザプローブ5と、このレーザプローブ5によって導光されたレーザ光と第1のビームスプリッタ2で反射されたレーザ光を受光する1つの光パワーセンサ11を設け、前記レーザプローブ5を透過したレーザ光と第1のビームスプリッタ2で反射されたレーザ光を光パワーセンサ11に選択的に入力させるダイ1と第2のシャッタ8,10を設けたことにある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、生体の組織にレーザ光を照射して外科手術等を行うためのレーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】生体の組織に接触する光透過性チップを有したレーザプローブを用い、このプローブを介して先端部の光透過性チップにレーザ光を放射して外科手術を行うレーザ装置が知られている。
【0003】このレーザプローブは、体腔内に挿入する内視鏡に設けた挿通チャンネルにレーザプローブを挿入し、その先端部の光透過性チップを生体の組織に接触させ、レーザプローブを介して光透過性チップからレーザ光を照射して外科的手術を行うことができるようになっている。
【0004】このようなレーザ装置は、レーザプローブを内視鏡とともに体腔内に挿入して使用するのでレーザプローブの先端から出射されるレーザ光の出力を知るためにあらかじめレーザプローブの透過率を求めておく必要がある。
【0005】このレーザプローブの透過率を求めるために、従来のレーザ装置は図5に示すように構成されている。1は共振器であり、この共振器1から出射されたレーザ光Lはビームスプリッタ2によって一部は反射し、一部は透過する。ビームスプリッタ2によって反射したレーザ光L1 は第1の光パワーセンサ3に入り、透過したレーザ光L2 は入力部4からレーザプローブ5に入る。レーザ光L2 はレーザプローブ5を光伝送され、その出力部6から第2の光パワーセンサ7に入る。
【0006】このようにレーザプローブ5を透過しないレーザ光L1 は第1の光パワーセンサ3に入り、レーザプローブ5を透過したレーザ光L2 は第2の光パワーセンサ7に入るため、この第1と第2の光パワーセンサ3,7によって検出したパワーを比較することにより、レーザプローブ5の透過率が求まる。
【0007】レーザプローブ5の透過率をメモリに記憶しておき、レーザプローブ5の出力部6を体腔内の患部組織に向け、レーザ光を出射したとき、第1の光パワーセンサ3の検出値に、メモリが記憶しているレーザプローブ5の透過率を乗算することによって治療中のレーザプローブ5の出力部6から出射しているレーザ出力値を知ることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、パワーセンサは冷却する必要があり、冷却のために体積が大きくなるが、従来のレーザ装置では2台の光パワーセンサを内蔵しているために装置が大型化し、また高価になっている。
【0009】この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、1台の光パワーセンサによって導光体の透過率を検出することができ、小型・軽量で、安価なレーザ装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明は、前記目的を達成するために、レーザ発生装置から入射したレーザ光の一部を透過し、一部を反射する光学部材と、この光学部材を透過したレーザ光を導光する導光体と、この導光体によって導光されたレーザ光と前記光学部材で反射されたレーザ光を選択的に受光する1つの光パワーセンサと、前記導光体を透過したレーザ光と前記光学部材で反射されたレーザ光を前記光パワーセンサに選択的に入力させる選択手段とを具備したことにある。
【0011】
【作用】レーザ発生装置から入射したレーザ光の一部は光学部材を透過し、一部は反射する。選択手段によって光学部材を反射したレーザ光と光学部材を透過し、かつ導光体を透過したレーザ光が時間差を持って光パワーセンサに入り、両レーザ光の光パワーを比較することにより、導光体の透過率を検出する。
【0012】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面に基づいて説明するが、従来と共通する部分は同一番号を付して説明を省略する。
【0013】図1に示すように、共振器1から出射されたレーザ光Pは光学部材としての第1のビームスプリッタ2によって一部は反射し、一部は透過するが、この反射率R1 および透過率T1 はあらかじめ分かっており、R1 Pは反射したレーザ光のパワーで、T1 Pは透過したレーザ光のパワーである。第1のビームスプリッタ2によって反射したレーザ光R1 Pの光路上には第1のシャッタ8および光学部材としての第2のビームスプリッタ9が設けられている。
【0014】第2のビームスプリッタ9は、第1のビームスプリッタ2によって反射したレーザ光R1 Pを透過するが、レーザプローブ5の出力部6から出射されたレーザ光αT1 Pは反射するようになっている。この反射率R1 および透過率R2 はあらかじめ分かっており、R1 2 Pは透過したレーザ光のパワー、αR2 1 Pは反射したレーザ光のパワーである。さらに、レーザプローブ5の出力部6から出射されるレーザ光の光路上には第2のシャッタ10が設けられている。
【0015】また、第2のビームスプリッタ9を透過する透過光R1 2 Pと反射光αR21 Pは光軸が一致するようになっており、この光軸上には1つの光パワーセンサ11が設けられている。
【0016】この光パワーセンサ11の入力抵抗Z1 はアンプ12のマイナス端子に接続され、プラス端子は接地されている。アンプ12のマイナス端子とアンプ12の出力側との間には第1の帰還抵抗Z21と第2の帰還抵抗Z22およびこれらを切替えるスイッチ13が設けられている。
【0017】次に、前述のように構成されたレーザ装置の作用について説明する。まず、第1のシャッタ8を開き、第2のシャッタ10を閉じ、スイッチ13を第1の帰還抵抗Z21に切替える。そして、共振器1から出射されたレーザ光のパワーをPとすると、第1のビームスプリッタ2で反射され、その反射するパワーはR1 Pとなり、さらに第2のビームスプリッタ9を透過して光パワーセンサ11に入るパワーはR1 2 Pとなる。そして、これがアンプ12で増幅されて観測されるパワーPout(1) は、
【0018】
【数1】


となる。
【0019】次に、第1のシャッタ8を閉じ、第2のシャッタ10を開き、スイッチ13を第2の帰還抵抗Z22に切替えると、第1のビームスプリッタ2を透過するレーザ光のパワーはT1 P,レーザプローブ5の透過率αとすると、レーザプローブ5を光伝送して出力部6から出射するレーザ光のパワーはαT1 P,さらに第2のビームスプリッタ9で反射して光パワーセンサ11に入るのはαR2 1 Pと成る。アンプ12で増幅されると、観測されるパワーPout(2) は、
【0020】
【数2】


となる。ここで、Z21とZ22の比を
【0021】
【数3】


となるようにしておけば、
【0022】
【数4】


【0023】と成る。すなわち、Pout(2) とPout(1) の比をとれば、レーザプローブ5の透過率をαが求まる。したがって、従来のように2つの光パワーセンサを用いることなく、1つの光パワーセンサ11によってレーザプローブ5の透過率を求めることができる。
【0024】また、第1のビームスプリッタ2,第2のビームスプリッタ9の反射率、透過率がそれぞれ等しい場合には(3)式の右辺は1となり、すなわちZ21=Z22となるが、この場合、Z21とZ22を別々に設ける必要はなく、兼用させることができる。当然、この時スイッチ13は必要なく、さらに構成の簡略化を図ることができる。
【0025】図2は、経内視鏡的に胆のう摘出手術を行う際に、肝臓と胆のうの剥離に用いられるレーザプローブの使用状態を示すもので、21は内径が10mmのトラカールで、このトラカール21の基端部にはゴムキャップ22が装着されている。
【0026】23はレーザプローブで、これはホルダ23aと、パイプからなる挿入部23bと、この挿入部23bの先端部に設けた接触型チップ23cとからなり、挿入部23bおよびホルダ23aにはファイバー(図示しない)が内装され、この基端側はレーザ発生装置(図示しない)に、先端側は接触型チップ23cに光学的に接続されている。
【0027】前記挿入部23bの先端側には屈曲部23dが形成され、この屈曲の程度は接触型チップ23cの先端、屈曲部23dの角部、挿入部23bのゴムキャップ22位置の軸中心の3点が内径φが10mmのトラカール21に入るものである。
【0028】図3(a)(b)はレーザプローブ24の挿入部24bの屈曲部24dの屈曲程度をさらに大きくしたものであるが、この屈曲部24dの部分を内径φが10mmのトラカール21に挿入しても、塑性変形しない曲げ角度、材料で形成したものである。レーザプローブ24の挿入部24bをトラカール21に完全に挿通した際、(b)に示すように角度が付き、視野が確保され、また切開部分にどの角度からもアプローチできることになる。
【0029】図4(a)(b)はレーザプローブ25の挿入部25bの途中に密巻コイルばね26を設け、トラカール21に挿通後、オーバシース27を挿入部25bに嵌合することにより、密巻コイルばね26を補強して真直ぐに矯正できるようにしたものであり、屈曲部25dの屈曲角を大きくすることが可能である。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、レーザ発生装置から入射したレーザ光の一部を透過し、一部を反射する光学部材を設け、この光学部材を透過したレーザ光を導光体によって導光したレーザ光と、光学部材で反射されたレーザ光を選択的に受光する1つの光パワーセンサを設けることにより、1台の光パワーセンサによって導光体の透過率を検出することができ、小型・軽量で、安価なレーザ装置を提供できる。また、従来のように2つの光パワーセンサを使用した場合にはそれぞれのセンサの感度等の特性のバラツキを補正するための調整が必要であるが、この発明においては調整が不要であり、操作性も向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係わるレーザ装置の構成図。
【図2】レーザプローブの使用状態の縦断側面図。
【図3】(a)(b)はレーザプローブの使用状態の縦断側面図。
【図4】(a)(b)はレーザプローブの使用状態の縦断側面図。
【図5】従来のレーザ装置の構成図。
【符号の説明】
1…共振器、2…第1のビームスプリッタ、5…レーザプローブ、9…第2のビームスプリッタ、11…光パワーセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 レーザ発生装置から入射したレーザ光の一部を透過し、一部を反射する光学部材と、この光学部材を透過したレーザ光を導光する導光体と、この導光体によって導光されたレーザ光と前記光学部材で反射されたレーザ光を受光する1つの光パワーセンサと、前記導光体を透過したレーザ光と前記光学部材で反射されたレーザ光を前記光パワーセンサに選択的に入力させる選択手段とを具備したことを特徴とするレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−212051
【公開日】平成5年(1993)8月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−21436
【出願日】平成4年(1992)2月6日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)