説明

ロボットシステムの制御方法

【課題】ロボット制御装置と可搬式操作装置との間で対向通信を維持した状態でネットワーク接続情報を変更できるロボットシステムの制御方法の提供。
【解決手段】ロボット制御装置及び可搬式操作装置の各々のネットワーク接続情報を、ロボット制御装置及び可搬式操作装置双方の接続情報格納部に記憶して一対一の対向通信を行うロボットシステムの制御方法において、ロボット制御装置及び可搬式操作装置間の通信を確立し(S1)、ロボット制御装置に記憶されたネットワーク接続情報の変更操作が可搬式操作装置によって行われたときは、変更後のネットワーク接続情報を各々の仮格納部に記憶し(S2)、通信遮断時または再起動完了後(S4)に、ロボット制御装置のネットワーク接続情報を仮格納部に記憶された変更後のネットワーク接続情報に書き換える(S5)。ネットワーク接続情報の変更に係る工数を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御装置と可搬式操作装置との間を無線接続し、一対一の対向通信を行うロボットシステムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットを動作制御するロボット制御装置と、ロボットを操作するための可搬式操作装置との間でIEEE802.11等の規格に対応した無線LANによる通信を実現した産業用のロボットシステムが提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。このようなロボットシステムでは、従来必要であったロボット制御装置と可搬式操作装置とを結ぶための物理的な信号線の代わりに、作業者が携帯する可搬式操作装置から教示信号を無線通信路を介してロボット制御装置に送信することによってロボットの操作、教示作業等が行われる。
【0003】
ところで、ロボット制御装置と可搬式操作装置とが一対一の対向通信(以下では、単に対向通信という。)を確立するためには、予めそれぞれの装置でネットワーク接続情報(IPアドレス、MACアドレス等)をお互いに矛盾なく設定するとともに、通信相手に対して教示信号を出力する際は、常に通信相手のIPアドレスを送信先アドレスとし、自身のIPアドレスを送信元アドレスとして含めたデータパケットを生成して送信することにより他の装置との誤接続を防ぐ方法がとられている。
【0004】
図6は、各装置におけるIPアドレスの設定内容と可搬式操作装置からの教示信号をロボット制御装置に送信する場合の通信パケットとを説明するための図である。同図において、可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの間は既に無線通信が確立しているものとする。
【0005】
同図に示すように、可搬式操作装置TPには、自身のIPアドレスと接続先のロボット制御装置RCのIPアドレスが設定されている。同様に、ロボット制御装置RCには、自身のIPアドレスと接続先の可搬式操作装置TPのIPアドレスが設定されている。なお、ネットワーク接続情報として上記IPアドレス以外に必要なサブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、MACアドレス等は図示せずに省略している。
【0006】
可搬式操作装置TPから送信される教示信号としてのデータパケットDpは、可搬式操作装置TPの図示しないCPUにより予め定められた通信プロトコルによってパケットの形式で生成される。データパケットDpには、可搬式操作装置TPから、送信先であるロボット制御装置RCを特定する送信先アドレス60、送信元である自身を特定する送信元アドレス61、操作されたキーの種類、教示データ等を示すデータ62等が含まれる。
【0007】
ところで、上記IPアドレスを含むネットワーク接続情報は、以下に示す幾つかの方法によって設定される。最も簡単な方法としては、可搬式操作装置TPに対しては可搬式操作装置TP自体が持つ設定メニュー等から可搬式操作装置TPおよびロボット制御装置RCのネットワーク接続情報を手動で設定し、ロボット制御装置RCに対しては可搬式操作装置TPを有線で接続してから可搬式操作装置TPを用いて手動で設定する方法がある。しかしながら、この方法では、可搬式操作装置TPおよびロボット制御装置RCの両方に設定が必要な上、装置の数が多いと誤った設定をしてしまう可能性がある。誤った設定をすると、無線通信の確立ができないだけでなく、誤って別のロボット制御装置に接続してしまうことがあるため、予期しない動作を引き起こす可能性がある。
【0008】
上記した設定作業を簡素化かつ確実化するための方法が特許文献1および特許文献2に開示されている。特許文献1では、ロボット制御装置RCに予め設定したネットワーク接続情報をメモリカードに書き込み、メモリカードを媒体としてネットワーク接続情報をロボット制御装置RCから可搬式操作装置TPに転送することによって可搬式操作装置TPに設定する方法が開示されている(以下、従来技術1という)。特許文献2では、教示データを送受信するための第1の無線通信手段と、ネットワーク接続情報を送受信するための第2の無線通信手段とをロボット制御装置RCおよび可搬式操作装置TPに備えておき、ロボット制御装置RCは、自身に予め設定されたネットワーク接続情報を、第2の無線通信手段を用いて近接する可搬式操作装置TPに送信することによって設定する方法が開示されている(以下、従来技術2という)。このように、従来技術1および2では、ロボット制御装置RCにパソコン、可搬式操作装置TP等を有線接続した上でIPアドレスを含むネットワーク接続情報を設定し、可搬式操作装置TPに転送あるいは送信することによって可搬式操作装置TPに必要なネットワーク接続情報を設定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−157415号公報
【特許文献2】特開2007−188393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
自動車部品等を生産している生産現場では、従来型の少品種大量生産から多品種少量生産へ形態が変化しており、産業用ロボットを使用する製造ラインを再構築する機会が増えている。大規模な製造ラインでは、上述したロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPだけがネットワーク接続される場合は少なく、製造ラインに存在する全てのロボット制御装置が製造ラインを統括制御するシステムコントローラとネットワーク接続されている。さらに、ロボットに取り付けたセンサ装置、アーク溶接装置等まで含めて、製造ラインのほとんど全ての装置がネットワーク化されている場合もある。ネットワーク化された製造ラインを再構築する場合は、ネットワーク構成の再構築も合わせて行われることが多い。例えば、ロボットシステムの配置変更、ネットワーク上のデータ処理負荷を分散させるためのネットワークセグメントの変更等が行われる。このような場合は、ロボット制御装置RCに設定されているネットワーク接続情報を変更することが行われる。
【0011】
従来技術1および2では、ロボット制御装置RCに、有線通信専用の可搬式操作装置TP、パソコン等を有線接続した上でネットワーク接続情報を設定するようになっている。なお、有線通信専用の可搬式操作装置TPとは、無線通信手段は有しておらず、表示手段および入力手段としての最低限の機能を有した、従来から使用されている可搬式操作装置のことである。このため、すでにロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPとの間で無線通信が可能な状態にセットアップされて稼働しているロボットシステムであっても、ロボット制御装置RCのネットワーク接続情報の設定を変更する場合は、有線通信専用の可搬式操作装置TPを接続ケーブルで接続する必要がある。ロボット制御装置RCのネットワーク接続情報を変更する機会は上述した製造ライン再構築等の理由により少なくなく、無線接続可能な状態にセットアップされているにも関わらず有線接続を必要とすることは、ネットワーク接続情報の変更作業に多くの工数を必要とするという課題を有していた。
【0012】
仮に、ロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPとの間で無線通信が確立した状態で、可搬式操作装置TPからロボット制御装置RCのネットワーク接続情報を変更することが可能だとしても、変更した時点で、可搬式操作装置TPが通信相手と認識しているロボット制御装置RCのネットワーク接続情報の設定値と、実際の接続相手であるロボット制御装置RCで設定されているネットワーク接続情報の設定値とが、変更されたことによって異なるものとなる(図6で示した対向通信を行うために必須の設定に矛盾が生じる)ため、無線通信が遮断されてしまうという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、ロボット制御装置と可搬式操作装置との間で対向通信を維持した状態でネットワーク接続情報を変更でき、ネットワーク接続情報の変更作業に係る工数を低減できるロボットシステムの制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、第1の発明は、
ロボットを動作制御するロボット制御装置および前記ロボットを操作する可搬式操作装置の各々のネットワーク接続情報を、前記ロボット制御装置および前記可搬式操作装置の双方の接続情報格納部に記憶して一対一の対向通信を行うロボットシステムの制御方法において、
前記ロボット制御装置および前記可搬式操作装置間の対向通信を確立する通信確立ステップと、
前記ロボット制御装置に記憶されたネットワーク接続情報の変更操作が前記可搬式操作装置によって行われたときは、変更後のネットワーク接続情報を前記ロボット制御装置および前記可搬式操作装置の前記接続情報格納部とは異なる各々の仮格納部に記憶する接続情報記憶ステップと、
前記対向通信が確立していない所定の更新タイミングで、前記双方の接続情報格納部に記憶された前記ロボット制御装置のネットワーク接続情報を前記仮格納部に記憶された変更後のネットワーク接続情報に書き換える接続情報更新ステップと、
を備えたことを特徴とするロボットシステムの制御方法である。
【0015】
第2の発明は、前記通信確立ステップは、前記ロボット制御装置と前記可搬式操作装置とがネットワークケーブルで接続されていないときは無線による対向通信を確立し、接続されているときは有線による対向通信を確立する第1の発明に記載のロボットシステムの制御方法である。
【0016】
第3の発明は、前記更新タイミングは、前記対向通信が遮断されたとき、または前記ロボット制御装置および前記可搬式操作装置の各々の再起動が完了したときであることを特徴とする第1または第2の発明に記載のロボットシステムの制御方法である。
【0017】
第4の発明は、前記接続情報更新ステップの後に、前記対向通信を自動的に再確立する通信再確立ステップをさらに備えたことを特徴とする第1〜3のいずれか1の発明に記載のロボットシステムの制御方法である。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、ロボット制御装置と可搬式操作装置との間で対向通信を確立した状態で可搬式操作装置からロボット制御装置に記憶されているネットワーク接続情報が変更されたときに、ロボット制御装置および可搬式操作装置の双方に記憶されているロボット制御装置のネットワーク接続情報を仮記憶し、対向通信が確立していない所定の更新タイミングでネットワーク接続情報を書き換えるようにしている。このことによって、対向通信を確立した状態でネットワーク接続情報の変更操作ができるので、有線接続専用の可搬式操作装置、パソコン等を用意する必要が無く、ネットワーク接続情報の変更に係る工数を低減することができる。
【0019】
第2の発明によれば、ロボット制御装置と可搬式操作装置とがネットワークケーブルで接続されていないときは無線による対向通信を確立し、接続されているときは有線による対向通信を確立するようにしたことによって、第1の発明が奏する効果に加えて、有線または無線のどちらであってもネットワーク接続情報を書き換えることができる。
【0020】
第3の発明によれば、また、ネットワーク接続情報の更新タイミングを、対向通信が遮断されたとき、またはロボット制御装置および可搬式操作装置の各々の再起動が完了したときのどちらかとしている。より具体的には、単にネットワーク接続情報を変更するだけでロボット制御装置の移設等を行わない場合は、対向通信が遮断されたときにネットワーク接続情報を書き換えるようするとよい。このことによって、対向通信を遮断してネットワーク接続情報の書き換えが完了すれば、すぐに対向通信を再開することができる。一方、ネットワークセグメントを変更するためにロボット制御装置の移設あるいはルータの変更を伴うような場合は、ロボット制御装置の一次側電源を遮断する必要があるため、この場合は、移設、ネットワーク接続等の一連の作業が完了した後に、ネットワーク接続情報を書き換えるのが望ましい。したがって、再起動後(一次側電源を投入して起動させた後)に、ネットワーク接続情報を書き換えるようにするとよい。すなわち、第1および第2の発明が奏する効果に加えて、ネットワーク接続情報を変更する事由に応じたタイミングで書き換えることができる。
【0021】
第4の発明によれば、接続情報更新ステップの後に、ロボット制御装置および可搬式操作装置の対向通信を再確立する通信再確立ステップを備えたことによって、作業者による対向通信の確立操作を省略できるようにしたので、第1〜3の発明が奏する効果に加えて、さらに工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るロボットシステムの機能ブロック図である。
【図2】可搬式操作装置TPからロボット制御装置RCのネットワーク接続情報を変更した場合のロボットシステム全体のフローチャートである。
【図3】対向通信接続処理のフローチャートである。
【図4】接続情報記憶処理のフローチャートである。
【図5】更新タイミングの選択処理のフローチャートである。
【図6】ロボット制御装置および可搬式操作装置におけるIPアドレスの設定内容と可搬式操作装置からの教示信号をロボット制御装置に送信する場合の通信パケットとを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施の形態1]
以下、発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明に係るロボットシステムの機能ブロック図である。ロボットシステム1は、アーク溶接、スポット溶接等の作業を行うロボットR、ロボットRを動作制御するロボット制御装置RC、ロボットRの操作および教示作業を行うための可搬式操作装置TPから構成される。可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとは、有線または無線による対向通信が可能になっている。
【0025】
まず、可搬式操作装置TPについて説明する。可搬式操作装置TPは、中央演算処理装置であるCPU33、一時的な計算領域であるRAM34、教示データ等の各種データを入力するキーボード50、各種情報を表示する液晶ディスプレイ51、ロボット制御装置RCと対向通信を行うための送受信機32、可搬式操作装置TPの駆動源としての二次電池36、各種データを記憶するためのハードディスク15、制御中枢である主制御部35の各部を備えている。なお、各部はバス39を介して接続されている。
【0026】
送受信機32は、無線LANインタフェース32Aおよび有線LANインタフェース32Bを有しており、ロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPがネットワークケーブルCで接続されている場合は有線となり、接続されていない場合は無線となるように構成されている。二次電池36は、図示しない充電装置に電気的に接続されることによって充電され、可搬式操作装置TPを作動させる。
【0027】
ハードディスク15の接続情報格納部47には、ロボット制御装置RCと対向通信を行うためのネットワーク接続情報が記憶されている。ネットワーク接続情報とは、例えばIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、MACアドレス等を指す。図6で説明したように、接続情報格納部47には、可搬式操作装置TPと接続先のロボット制御装置RCの両方のネットワーク接続情報が設定されている。仮格納部48は、ロボット制御装置RCに記憶されたネットワーク接続情報がキーボード50から変更されたときに、変更後のネットワーク接続情報を一時的に格納する記憶領域である。
【0028】
主制御部35は、上記各部を総括的に制御するものであり、図示しないオペレーティングシステム上で動作するソフトウェアプログラムとして、液晶ディスプレイ51に表示用データを表示する表示制御部45、キーボード50からのキー入力を監視するキー入力監視部46、ロボット制御装置RCとの対向通信処理を行うための通信処理部41を備えている。キーボード50によって入力された各種データは、通信処理部41および送受信機32を介してロボット制御装置RCにパケット形式のデータで送信される。
【0029】
主制御部35はまた、接続情報記憶処理部42、接続情報更新処理部43、再起動処理部44および更新タイミング記憶部49を備えている。接続情報記憶処理部42は、ロボット制御装置RCに記憶されたネットワーク接続情報がキーボード50から変更されたときに、変更後のネットワーク接続情報を接続情報格納部47とは異なる仮格納部48に記憶する。接続情報更新処理部43は、対向通信が遮断されたとき、または可搬式操作装置TPの再起動が完了したときに、接続情報格納部47に記憶されているロボット制御装置RCのネットワーク接続情報を、仮格納部48に記憶された変更後のネットワーク接続情報に書き換える。再起動処理部44は、作業者によって再起動操作がなされた場合に、可搬式操作装置TPを自動的に再起動(リブート)する。更新タイミング記憶部49は、ネットワーク接続情報の更新タイミング(対向通信が遮断されたときとするか、または可搬式操作装置TPの再起動が完了したときとするか)を、ハードディスク15に記憶する処理を行う。
【0030】
次に、ロボット制御装置RCについて説明する。ロボット制御装置RCは、中央演算処理装置であるCPU13、一時的な計算領域であるRAM14、制御中枢となる主制御部3、教示データ等の各種データ、定数等を記憶するためのハードディスク5、ロボットRの軌跡演算等を行って演算結果を駆動信号として駆動指令部8に出力する動作制御部7、ロボットRの各サーボモータを回転制御するためのサーボ制御信号を出力する駆動指令部8、可搬式操作装置TPと対向通信を行うための送受信機12の各部を備えている。なお、各部はバス9を介して接続されている。
【0031】
送受信機12は、無線LANインタフェース12Aおよび有線LANインタフェース12Bを有しており、ロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPがネットワークケーブルCで接続されている場合は有線となり、接続されていない場合は無線となるように構成されている。
【0032】
ハードディスク5の教示データ格納部30には、可搬式操作装置TPによって入力された教示データが記憶されている。接続情報格納部27には、可搬式操作装置TPと対向通信を行うためのネットワーク接続情報が記憶されている。ネットワーク接続情報とは、例えばIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、MACアドレス等を指す。図6で説明したように、接続情報格納部27には、ロボット制御装置RCと接続先の可搬式操作装置TPの両方のネットワーク接続情報が設定されている。仮格納部28は、ロボット制御装置RCに記憶されたネットワーク接続情報がキーボード50から変更されたときに、変更後のネットワーク接続情報を一時的に格納する記憶領域である。
【0033】
主制御部3は、上記各部を総括的に制御するものであり、図示しないオペレーティングシステム上で動作するソフトウェアプログラムとして、可搬式操作装置TPの液晶ディスプレイ51に表示する表示用データを生成する表示処理部25、可搬式操作装置TPとの対向通信処理を行うための通信処理部21、教示データ格納部30に記憶された教示データを解釈して動作制御部7に動作制御信号を出力する解釈実行部26を備えている。
【0034】
主制御部3はまた、接続情報記憶処理部22、接続情報更新処理部23、再起動処理部24および更新タイミング処理部29を備えている。接続情報記憶処理部22は、接続情報格納部27に記憶されたネットワーク接続情報が可搬式操作装置TPのキーボード50から変更されたときに、変更後のネットワーク接続情報を接続情報格納部27とは異なる仮格納部28に記憶する。接続情報更新処理部23は、対向通信が遮断されたとき、またはロボット制御装置RCの再起動が完了したときに、接続情報格納部27に記憶されたロボット制御装置RCのネットワーク接続情報を、仮格納部28に記憶された変更後のネットワーク接続情報に書き換える。再起動処理部24は、作業者によって再起動操作がなされた場合に、ロボット制御装置RCを再起動(リブート)する。更新タイミング処理部29は、ネットワーク接続情報の更新タイミングを、対向通信が遮断されたときとするか、またはロボット制御装置RCの再起動が完了したときとするかを、作業者に選択させるための処理を行う。
【0035】
ここで、ロボット制御装置RCおよび可搬式操作装置TP間の通信時においてGUI(Graphical User Interface)を制御する方法について説明する。1つの方法として、可搬式操作装置TPに表示される画面、設定メニュー等を、自身のオペレーティングシステム上で動作するブラウザ機能を介してロボット制御装置RCより取得して、液晶ディスプレイ51に表示するよう構成する方法がある。キーボード50によってブラウザ上に入力された各種データは、通信処理部41および無線送受信機32を介してロボット制御装置RCに送信される。ブラウザ機能を利用する場合の利点は、ブラウザ上に入力された各種データを可搬式操作装置TP自身が認識することができることであり、例えば、ネットワーク接続情報が変更された場合は、変更後の設定値等を可搬式操作装置TP自身が認識し、記憶したりロボット制御装置RCに送信したりすることができる。
【0036】
別の方法として、オペレーティングシステム上で提供されるリモートデスクトップ機能を利用し、可搬式操作装置TPをクライアント、ロボット制御装置RCをサーバとして可搬式操作装置TPからロボット制御装置RCにリモート接続する方法がある。この場合、可搬式操作装置TPは、ロボット制御装置が生成する仮想的なワークスペースの画面を表示するとともに、キーボード50による操作情報をロボット制御装置RCに送信する手段となる。リモートデスクトップ機能を利用する場合の利点は、ブラウザ機能を利用する場合に比べて送受信する画面情報が少なくなることにより通信負荷が小さくなる点であるが、入力された各種データを可搬式操作装置TP自身が認識することはできない。例えば、ネットワーク接続情報が変更された場合は、変更後の設定値等を可搬式操作装置TP自身は認識できないため、自身に記憶したい場合は、ロボット制御装置RCから受信する必要がある。以下では、リモートデスクトップ機能を利用するように構成されていることを前提に説明する。
【0037】
図2は、可搬式操作装置TPからロボット制御装置RCのネットワーク接続情報を変更した場合のロボットシステム全体のフローチャートである。図3は、対向通信接続処理のフローチャートである。図4は、接続情報記憶処理のフローチャートである。図5は、更新タイミング選択処理のフローチャートである。同図に基づき本実施形態の作用について説明する。
【0038】
図2のステップS1において、ロボット制御装置RCおよび可搬式操作装置TP間の対向通信を確立する処理を行う(以下、対向通信確立処理という)。
【0039】
次にステップS2において、可搬式操作装置TPから変更されたネットワーク接続情報を、ロボット制御装置RCおよび可搬式操作装置TPの各々の仮格納部28、48に記憶する処理を行う(以下、接続情報記憶処理という)。
【0040】
次にステップS3において、ネットワーク接続情報の更新を、対向通信を遮断したとき、またはロボット制御装置RCおよび可搬式操作装置TPの各々の再起動が完了したときのどちらにするかを問い合わせる処理を行う(以下、更新タイミング選択処理という)。
【0041】
次にステップS4において、対向通信の遮断操作が行われたときは対向通信の遮断処理を行い、再起動操作が行われたときは再起動処理を行う。ここでいう再起動とは、各装置の電源を遮断して再投入することと、各装置の電源を遮断せずに再起動(リブート)することの両方の意味を合わせ持つ(以下、通信遮断・再起動処理という)。
【0042】
最後にステップS5において、ロボット制御装置RCおよび可搬式操作装置TPの双方の接続情報格納部27、47に記憶されたロボット制御装置RCのネットワーク接続情報を、仮格納部28、30に記憶された変更後のネットワーク接続情報に各々書き換える(以下、接続情報更新処理という)。
【0043】
以下、上記したステップS1の対向通信確立処理、ステップS2のネットワーク接続情報記憶処理、ステップS3の更新タイミング選択処理、ステップS4の通信遮断・再起動処理、およびステップS5のネットワーク接続情報更新処理について、詳細に説明する。
【0044】
(1.対向通信確立処理)
図3は、対向通信確立処理のフローチャートである。同図のステップS101において、作業者が可搬式操作装置TPのキーボード50を操作することによって対向通信の接続要求が行われると、通信処理部41は、通信接続を要求するデータパケットを生成してロボット制御装置RCに送信する。
【0045】
ステップS102において、ロボット制御装置RCの通信処理部21は、上記データパケットを受信すると、該データパケットを検証して自身への通信接続が要求されているものと判断し、可搬式操作装置TPとの対向通信を確立する処理を行う。対向通信の確立後は、その旨を可搬式操作装置TPに送信する。以上で、対向通信確立処理が完了する。
【0046】
(2.接続情報記憶処理)
図4は、接続情報記憶処理のフローチャートである。同図のステップS201において、作業者が可搬式操作装置TPのキーボード50を操作することによって、ロボット制御装置RCのネットワーク接続情報の変更操作が行われると、可搬式操作装置TPの通信処理部41は、変更後のネットワーク接続情報を含むデータパケットを生成してロボット制御装置RCに送信する。
【0047】
ステップS202において、ロボット制御装置RCの通信処理部21は、送信されたデータパケットを検証して接続情報記憶処理部22に渡す。接続情報記憶処理部22は、変更後のネットワーク接続情報を、ハードディスク5の仮格納部28に記憶する。
【0048】
ステップS203において、通信処理部21は、仮格納部28に記憶された変更後のネットワーク接続情報を含むデータパケットを生成して可搬式操作装置TPに送信する。
【0049】
ステップS204において、可搬式操作装置TPの接続情報記憶処理部42は、仮格納部48にネットワーク接続情報を記憶する。
【0050】
ステップS205において、記憶が完了した旨のデータパケットを生成してロボット制御装置RCに送信する。以上で、接続情報記憶処理が完了する。
【0051】
(3.更新タイミング選択処理)
図5は、更新タイミング選択処理のフローチャートである。同図のステップS301において、ロボット制御装置RCの更新タイミング処理部29は、ネットワーク接続情報の更新を、対向通信を遮断したとき、またはロボット制御装置RCおよび可搬式操作装置TPの各々の再起動が完了したときのどちらにするかを問い合わせるためのダイアログメッセージを生成し、可搬式操作装置TPに表示するよう要求する。
【0052】
ステップS302において、可搬式操作装置TPの通信処理部41は、作業者の選択結果を示すデータパケットをロボット制御装置RCに送信する。
【0053】
ステップS303において、更新タイミング処理部29は、データパケットを検証し、対向通信の遮断時またはロボット制御装置RCの再起動完了後のどちらのタイミングでネットワーク接続情報を更新するかを示すフラグデータを、ハードディスク5に記憶する。また、ネットワーク接続情報の更新を要求するデータパケットを可搬式操作装置TPに送信する。
【0054】
ステップS304において、可搬式操作装置TPの更新タイミング記憶部49は、対向通信の遮断時または可搬式操作装置TPの再起動完了後のどちらのタイミングでネットワーク接続情報を更新するかを示すフラグデータをハードディスク15に記憶すると共に、そのタイミングで接続情報更新処理部43が起動されるよう予約する。
【0055】
ステップS305において、更新タイミングの記憶処理および接続情報更新処理部43の起動予約が完了した旨を示すデータパケットをロボット制御装置RCに送信する。
【0056】
ステップS306において、可搬式操作装置TPでの準備が整ったものと見なして、自身の接続情報更新処理部23が所定の更新タイミングで起動されるよう予約する。以上で、更新タイミングの選択処理が完了する。
【0057】
(4.通信遮断・再起動処理)
作業者の操作によって対向通信の遮断操作が行われたときは対向通信の遮断処理を行い、再起動操作が行われたときは再起動処理を行う。これらの処理は、可搬式操作装置TPおよびロボット制御装置RCのそれぞれの処理部で行われる。
【0058】
(5.接続情報更新処理)
最後に、接続情報更新処理を行う。具体的には、ロボット制御装置RCでは、予約されているタイミングで接続情報更新処理部23が起動される。接続情報更新処理部23は、接続情報格納部27に記憶されたロボット制御装置RCのネットワーク接続情報を、仮格納部28に記憶された変更後のネットワーク接続情報に書き換える。可搬式操作装置TPでは、予約されている更新タイミングで接続情報更新処理部43が起動される。接続情報更新処理部43は、接続情報格納部47に記憶されたロボット制御装置RCのネットワーク接続情報を仮格納部48に記憶された変更後のネットワーク接続情報に書き換える。
【0059】
以上説明したように、ロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPとの間で対向通信を確立した状態で可搬式操作装置TPからロボット制御装置RCに記憶されているネットワーク接続情報が変更されたときに、ロボット制御装置RCおよび可搬式操作装置TPの双方に記憶されているロボット制御装置RCのネットワーク接続情報を仮記憶し、対向通信が確立していない所定の更新タイミングでネットワーク接続情報を書き換えるようにしている。このことによって、対向通信を確立した状態でネットワーク接続情報の変更操作ができるので、有線接続専用の可搬式操作装置、パソコン等を用意する必要が無く、ネットワーク接続情報の変更に係る工数を低減することができる。
【0060】
また、ネットワーク接続情報の更新タイミングを、対向通信が遮断されたとき、またはロボット制御装置RCおよび可搬式操作装置TPの各々の再起動が完了したときのどちらかとしている。より具体的には、単にネットワーク接続情報を変更するだけでロボット制御装置RCの移設等を行わない場合は、対向通信が遮断されたときにネットワーク接続情報を書き換えるようするとよい。このことによって、対向通信を遮断してネットワーク接続情報の書き換えが完了すれば、すぐに対向通信を再開することができる。一方、ネットワークセグメントを変更するためにロボット制御装置RCの移設あるいはルータの変更を伴うような場合は、ロボット制御装置RCの一次側電源を遮断する必要があるため、この場合は、移設、ネットワーク接続等の一連の作業が完了した後に、ネットワーク接続情報を書き換えるのが望ましい。したがって、再起動後(一次側電源を投入して起動させた後)に、ネットワーク接続情報を書き換えるようにするとよい。すなわち、上記効果に加えて、ネットワーク接続情報を変更する事由に応じたタイミングで書き換えることができる。
【0061】
なお、本実施形態において、上記したネットワーク接続情報の書き換え後に、ロボット制御装置RCおよび可搬式操作装置TP間の対向通信を自動的に再確立する通信再確立処理を設けるとさらに良い。具体的には、可搬式操作装置TPの通信処理部41が、ネットワーク接続情報の書き換え後に対向通信が一度も確立されていないことを認識できるように、上述した接続情報更新処理部43においてフラグを立てておく。そして、通信処理部41において、上記フラグを参照するとともに直前に接続していたロボット制御装置RCの書き換え後のネットワーク接続情報を仮格納部48から読み出すことで、図3で示した対向通信接続の要求操作を自動的に行うようにする。
【0062】
このように、接続情報の更新処理の後に、ロボット制御装置RCおよび可搬式操作装置TPの対向通信を再確立する通信再確立処理を備えたことによって、作業者による対向通信の確立操作を省略できるようにしたので、さらに工数を低減することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 ロボットシステム
3 主制御部
5 ハードディスク
7 動作制御部
8 駆動指令部
9 バス
12 送受信機
12A 無線インタフェース
12B 有線インタフェース
13 CPU
14 RAM
15 ハードディスク
21 通信処理部
22 接続情報記憶処理部
23 接続情報更新処理部
24 再起動処理部
25 表示処理部
26 解釈実行部
27 接続情報格納部
28 仮格納部
29 更新タイミング処理部
30 教示データ格納部
32 送受信機
32A 無線インタフェース
32B 有線インタフェース
33 CPU
34 RAM
35 主制御部
36 二次電池
39 バス
41 通信処理部
42 接続情報記憶処理部
43 接続情報更新処理部
44 再起動処理部
45 表示制御部
46 キー入力監視部
47 接続情報格納部
48 仮格納部
49 更新タイミング記憶部
50 キーボード
51 液晶ディスプレイ
60 送信先アドレス
61 送信元アドレス
62 データ
C ネットワークケーブル
Dp データパケット
R ロボット
RC ロボット制御装置
TP 可搬式操作装置
S1 対向通信確立処理
S2 接続情報記憶処理
S3 更新タイミング選択処理
S4 対向通信の遮断または再起動処理
S5 接続情報更新処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを動作制御するロボット制御装置および前記ロボットを操作する可搬式操作装置の各々のネットワーク接続情報を、前記ロボット制御装置および前記可搬式操作装置の双方の接続情報格納部に記憶して一対一の対向通信を行うロボットシステムの制御方法において、
前記ロボット制御装置および前記可搬式操作装置間の対向通信を確立する通信確立ステップと、
前記ロボット制御装置に記憶されたネットワーク接続情報の変更操作が前記可搬式操作装置によって行われたときは、変更後のネットワーク接続情報を前記ロボット制御装置および前記可搬式操作装置の前記接続情報格納部とは異なる各々の仮格納部に記憶する接続情報記憶ステップと、
前記対向通信が確立していない所定の更新タイミングで、前記双方の接続情報格納部に記憶された前記ロボット制御装置のネットワーク接続情報を前記仮格納部に記憶された変更後のネットワーク接続情報に書き換える接続情報更新ステップと、
を備えたことを特徴とするロボットシステムの制御方法。
【請求項2】
前記通信確立ステップは、前記ロボット制御装置と前記可搬式操作装置とがネットワークケーブルで接続されていないときは無線による対向通信を確立し、接続されているときは有線による対向通信を確立する請求項1記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項3】
前記更新タイミングは、前記対向通信が遮断されたとき、または前記ロボット制御装置および前記可搬式操作装置の各々の再起動が完了したときであることを特徴とする請求項1または2記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項4】
前記接続情報更新ステップの後に、前記対向通信を自動的に再確立する通信再確立ステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボットシステムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−219736(P2010−219736A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62590(P2009−62590)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】