説明

ロボット

【課題】動作中の多関節アームに作用する慣性力を抑えたロボットを提供する。
【解決手段】ロボットにおいて、第4アーム34は第3アーム33に対して屈伸動作し、第5アーム35は第4アーム34に対してねじり動作する。第4アーム34は、屈伸機構40とねじれ機構50との協働により屈伸動作する。第5アーム35は、ねじれ機構50によりねじれ動作する。これら屈伸機構40のモーター34M及びねじれ機構50のモーター35Mが第3アーム33内に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の関節を有する多関節アームを備えたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造業においては、複数の関節を有する多関節アームを備えたロボットを組立ラインに導入することによって、作業対象物に対して作業者が行っていた作業を自動化する動きが活発になってきている。例えば特許文献1には、床面に対して固定される固定部に対して正逆両方向へ回転可能な胴体の左右両側に多関節アームが連結されたロボットが開示されている。こうしたロボットにおいては、各関節を駆動することによって作業に応じて人と同じような動きをすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−188699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、動作中のロボットにおいては、その動作にともなう慣性力が多関節アームの各関節に作用することになる。こうした慣性力は、例えば多関節アームの振動を招くためロボットの作業精度を低下させるとともに、ロボットの動作が高速になればなるほど、また多関節アームの先端側における重量が重くなるほど大きくなる。そのため、動作中のロボットの振動を抑えつつ該ロボットの高速化を図るうえでは、多関節アームに作用する慣性力を抑える必要があった。
【0005】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、動作中の多関節アームに作用する慣性力を抑えたロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロボットは、アーム保持体と、第1回転軸部材を介して前記アーム保持体に連結された屈伸アームと、第2回転軸部材を介して前記屈伸アームに連結されたねじりアームと、前記アーム保持体に設けられ、前記第1回転軸部材を中心に前記屈伸アームを回転することで前記アーム保持体に対し前記屈伸アームを屈伸させる第1駆動機構と、前記第2回転軸部材を中心に前記ねじりアームを回転することで前記屈伸アームに対して前記ねじりアームをねじる第2駆動機構と、を備えたロボットであって、前記第2回転軸部材は、前記ねじりアームに固定されるとともに、前記屈伸アームに対し回転自在に貫挿され、前記第2駆動機構は、前記アーム保持体内に配置された第2モーターの出力軸に固定され、前記アーム保持体内に配置された駆動回転体と、前記第1回転軸部材の軸周りに回転自在に軸着され、前記駆動回転体の回転に従動する中間回転体と、前記第2回転軸部材に固定され、前記アーム保持体内にて前記中間回転体の回転に従動する従動回転体とを有する。
【0007】
本発明のロボットによれば、アーム保持体に対して屈伸アームを屈伸させる第1駆動機構、及び屈伸アームに対してねじりアームをねじる第2駆動機構をアーム保持体の内部に配設することが可能であることから、アーム保持体よりも先端側のアームである屈伸アーム及びねじりアームの軽量化を図ることができる。それゆえに、ロボットが有する多関節アームにおいて、該多関節アームに生じる慣性力を小さくすることができる。
【0008】
このロボットにおいて、前記第1駆動機構は、前記アーム保持体内に配置された第1モーターと、該第1モーターの出力を前記屈伸アームの回転に変換する変換機構とを有し、前記第1モーターの駆動と前記第2モーターの駆動とを制御する制御装置をさらに備え、前記制御装置は、前記第1モーターを駆動して前記屈伸アームを屈伸する際に、前記屈伸アームに対する前記ねじりアームのねじりが維持されるように、前記第2モーターの駆動を通じて、前記駆動回転体により前記中間回転体を回転させることが好ましい。
【0009】
アーム保持体に対して屈伸アームが屈伸する際、第1回転軸部材に対する屈伸アームの回転力は、第1回転軸部材に対する従動回転体の回転を通じて、第1回転軸部材を中心とする中間回転体の回転に変換されることになる。この際、中間回転体の回転によって従動回転体までもが回転してしまうと、ねじりアームに新たなねじれが生じてしまうこととなる。この点、上記構成のロボットにおける制御装置は、第1モーターを駆動する際に、屈伸アームに対するねじりアームのねじりが維持されるように、第2モーターも駆動する。それゆえに、ねじりアームが新たにねじられることなく屈伸アームを屈伸させることができる。
【0010】
このロボットにおいて、前記第1駆動機構の変換機構は、前記第1モーターの出力軸に固定された駆動プーリーと、前記第1回転軸部材に固定された従動プーリーと、前記駆動プーリーと前記従動プーリーとの間に掛け渡された動力伝達部材とを備えていることが好ましい。
【0011】
このロボットによれば、アーム保持体内における第1モーターの配置に関する自由度が拡張される。すなわち、多関節アームに生じる慣性力を低減するうえで、第1モーターの配置に関する自由度を拡張することができる。
【0012】
このロボットにおいて、前記アーム保持体は、前記屈伸アームが先端部に連結された一方向に延びる基端アームであり、前記第1モーターと前記第2モーターは、前記第1モーターが前記基端アームの基端部側に位置するように前記基端アームの延出方向に並んで配置されていることが好ましい。
【0013】
このロボットによれば、第1モーターと第2モーターとが基端アームの延びる延出方向に沿って並んで配置されていることから、延出方向と直交する方向において、基端アームの大型化を抑えることができる。
【0014】
このロボットは、複数の多関節アームを備え、前記複数の多関節アームの各々が、前記基端アーム、前記屈伸アーム、及び前記ねじりアームを有する構成であってもよい。
このロボットにおいては、複数の多関節アームの各々における慣性力が低減されることから、各多関節アームを用いた協調動作を行ったとしてもロボットに生じる振動を抑えることができる。
【0015】
このロボットでは、前記駆動回転体、前記中間回転体、前記従動回転体の各々が歯車であり、前記中間回転体の歯数が前記駆動回転体の歯数よりも多いことが好ましい。
このロボットによれば、駆動回転体、中間回転体、従動回転体の各々が歯車であって、中間回転体の歯数が駆動回転体の歯数よりも多いことから、中間回転体の歯数が駆動回転体の歯数よりも少ない場合に比べて、第2モーターの駆動によって回転する中間回転体の回転角度に関する精度を高めることができる。
【0016】
このロボットは、ロボットの基体に連結される肩部と、前記肩部に連結される上腕部と、前記上腕部に連結される前腕部と、前記前腕部に連結される手首部とで構成される多関節アームを備え、前記前腕部が、前記上腕部を構成する上腕アームに対して回転可能に連結された第1前腕アームと、前記第1前腕アームに対して回転可能に連結された第2前腕アームとを有しており、前記アーム保持体が前記上腕アーム、前記屈伸アームが前記第1前腕アーム、前記ねじりアームが前記第2前腕アームであってもよい。
【0017】
具体的には、このロボットのように、アーム保持体として上腕アーム、屈伸アームとして上腕アームに連結された第1前腕アーム、ねじりアームとして第1前腕アームに連結された第2前腕アームとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる一実施形態のロボットの斜視構造を示す斜視図であって、基本姿勢にあるロボットを示す図。
【図2】屈伸機構の斜視構造を示す斜視図であって、屈伸機構以外の部材の一部を省略して示す図。
【図3】ねじり機構の斜視構造を示す斜視図であって、ねじり機構以外の部材の一部を省略して示す図。
【図4】第3アームに対して第4アームを伸長させるときのねじり機構の動作態様を示す図。
【図5】第3アームに対して第4アームを屈曲させるときのねじり機構の動作態様を示す図。
【図6】第4アームに対して第5アームをねじるときのねじり機構の動作態様を示す図。
【図7】変形例におけるロボットの斜視構造を示す斜視図であって、基本姿勢にあるロボットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかるロボットの一実施の形態について、図1〜図6を参照して説明する。なお、本実施形態における「回転」とは、正転及び逆転を意味する。
図1に示されるように、ロボットを構成するロボット本体11には、鉛直方向に延びる円柱状の本体13の上端部に、基体としてのベース部14が固設されている。ベース部14には、鉛直方向と直交する水平方向に沿って紙面の手前側に延びる平板状の第1支持部材15と、同じく水平方向に沿って紙面手前側に延びる平板状の第2支持部材16とが、鉛直方向にて互いに向かい合うように延設されている。第1支持部材15には、該第1支持部材15における第2支持部材16側に多関節アーム30が連結されている。なお、ロボット本体11の背面側には、ロボットを構成してロボット本体11の動作を制御する制御装置としてのコントローラー12が設置されている。
【0020】
第1支持部材15の下側には、多関節アーム30を構成する第1アーム31の基端部31aが連結されている。肩部を構成する第1アーム31では、水平方向に延びる平板状の基端部31aが第1支持部材15の下側に重なるように配置されるとともに、該基端部31aの先端側が鉛直方向の下方に向かって屈曲されている。この第1アーム31の基端部31aには、鉛直方向に延びる第1回転軸線J1に回転中心を有して第1支持部材15を貫通する図示されない回転軸部材が連結されている。第1支持部材15の上側には、第1アーム31の基端部31aが有する回転軸に連結されて第1回転軸線J1の軸周りの回転トルクを該回転軸部材に出力するモーター31Mが連結されている。
【0021】
第1アーム31において鉛直方向の下方に屈曲された先端部31bには、該先端部31bに対して基端部31aとは反対側に、肩部を構成する第2アーム32の基端部が連結されている。この第2アーム32の基端部には、第1アーム31の先端部31bを貫通する図示されない回転軸部材が連結されている。この回転軸部材は、第1回転軸線J1に直交する第2回転軸線J2上に回転中心を有している。第1アーム31における基端部31aの下側には、第2アーム32の基端部が有する上記回転軸部材に連結されて第2回転軸線J2の軸回りの回転トルクを該回転軸部材に出力するモーター32Mが連結されている。
【0022】
第2アーム32の先端部には、第2回転軸線J2に直交する第3回転軸線J3を回転中心として回転可能に、上腕部を構成する上腕アーム及びアーム保持体としての第3アーム33の基端部が連結されている。第3アーム33は、同第3アーム33内に配設されたモーター33Mが駆動されることにより、第2アーム32に対して第3回転軸線J3を中心に回転する。
【0023】
第3アーム33の先端部には、第3回転軸線J3に直交する第4回転軸線J4を回転中心として回転可能に、前腕部を構成する第1前腕アーム及び屈伸アームとしての第4アーム34の基端部が連結されている。第4アーム34は、第3アーム33内に配設された屈伸機構40のモーター34M及びねじり機構50のモーター35Mが駆動されることにより、第3アーム33に対して第4回転軸線J4を中心に回転する。すなわち第4アーム34は、第3アーム33に対して屈伸動作する。
【0024】
第4アーム34の先端部には、第4回転軸線J4に直交する第5回転軸線J5を回転中心として回転可能に、前腕部を構成する第2前腕アーム及びねじりアームとしての第5アーム35の基端部が連結されている。第5アーム35は、第3アーム33内に配設されたねじり機構50のモーター35Mが駆動されることにより、第4アーム34に対して第5回転軸線J5を中心に回転する。すなわち第5アーム35は、第4アーム34に対してねじり動作する。
【0025】
第5アーム35の先端部には、第5回転軸線J5に直交する第6回転軸線J6を回転中心として回転可能に、手首部を構成する第6アーム36の基端部が連結されている。第6アーム36は、第5アーム35の先端部に配設されたモーター36Mが駆動されることにより、第5アーム35に対して第6回転軸線J6を中心に回転する。
【0026】
第6アーム36の先端部には、第6回転軸線J6に直交する第7回転軸線J7を回転中心として回転可能に、手首部を構成するハンド部37が連結されている。ハンド部37は、第6アーム36内に配設された図示しないモーターが駆動されることにより第7回転軸線J7を中心に回転するとともに、ロボット本体11に実行させる作業に応じたエンドエフェクターが取り付けられる。
【0027】
また、上記多関節アーム30の各モーターには、本体13の後側に設置されているコントローラー12との間で各種信号の授受を行うための電気配線が接続される。
多関節アーム30の各モーターに接続される電気配線は、伸縮性を有する円筒形状の配管部材38の内部を通されて、対応するモーターの近傍まで案内される。配管部材38は、第1支持部材15の上方の空間を通じて、本体13の背面側から本体13の正面側であって第1アーム31を回転させるモーター31Mの直上へと引き回されている。そして、第1アーム31の基端部31aが有する回転軸を第1回転軸線J1に沿って貫通する図示しない通路を通じて、第1アーム31の基端部31aと第2支持部材16とによって挟まれる空間へと引き回されている。
【0028】
配管部材38は、第1アーム31の基端部31aと第2支持部材16とによって挟まれる空間において、モーター32Mに向かって湾曲している。そして、第2アーム32の基端部が有する回転軸を第2回転軸線J2に沿って貫通する図示しない通路を通じて、第3アーム33〜ハンド部37に対応する各モーターへと引き回されている。
【0029】
次に、第3アーム33に対して第4アーム34を屈伸動作させる第1駆動機構としての屈伸機構40、第4アーム34に対して第5アーム35をねじり動作させる第2駆動機構としてのねじり機構50について図2及び図3を参照して説明する。
【0030】
図2に示されるように、屈伸機構40は、図示しない支持部材によって第3アーム33内における基端部側に固設され、コントローラー12から所定の制御周期ごとに駆動量を示す信号が入力される第1駆動源としてのモーター34Mを有している。
【0031】
モーター34Mは、図示しないブレーキ機構や減速機を内蔵しており、コントローラー12から入力される駆動量に応じた回転角度に出力軸41が回転する。モーター34Mは、出力軸41が第4回転軸線J4と平行となるように配置されており、該出力軸41の先端部には駆動プーリー42が固設されている。
【0032】
また、第3アーム33の先端部には、第4回転軸線J4に沿って延びる第1回転軸部材43が、第3アーム33に対して回転可能に軸支され、且つ第4アーム34の基端部に固定されている。第1回転軸部材43における軸方向の途中には、動力伝達部材としてのタイミングベルト44を介して、駆動プーリー42に連結された従動プーリー45が固設されている。そして、モーター34Mの駆動力は、変換機構を構成するこれら駆動プーリー42、タイミングベルト44、従動プーリー45を介して、第4アーム34が固設された第1回転軸部材43へと伝達される。
【0033】
図3に示されるように、ねじり機構50は、図示しない支持部材によってモーター34Mよりも第3アーム33内における先端部側に固設され、コントローラー12から所定の制御周期ごとに駆動量を示す信号が入力されるモーター35Mを有している。
【0034】
モーター35Mは、図示しないブレーキ機構や減速機が内蔵されており、コントローラー12から入力される駆動量に応じた回転角度に出力軸51が回転する。モーター35Mは、出力軸51が第3アーム33の長手方向に沿って第4回転軸線J4と直交するように配置されており、該出力軸51の先端部には噛合面52aを有する駆動回転体としての駆動ベベルギヤ52が固設されている。
【0035】
駆動ベベルギヤ52の噛合面52aには、中間回転体としての中間ベベルギヤ53の噛合面53aが噛合している。この中間ベベルギヤ53は、屈伸機構40の第1回転軸部材43が該中間ベベルギヤ53に挿通されることにより、該第1回転軸部材43に回転自在に軸支されている。中間ベベルギヤ53は、第1回転軸部材43の軸方向における移動が規制されて駆動ベベルギヤ52と常に噛合しているとともに、その噛合面53aには駆動ベベルギヤ52の噛合面52aに形成された歯よりも多くの歯が形成されている。
【0036】
また、中間ベベルギヤ53の噛合面53aには、駆動回転体としての駆動ベベルギヤ52の他、従動ベベルギヤ54の噛合面54aが噛合している。この従動ベベルギヤ54は、第5アーム35に基端部が固設されて第5回転軸線J5に沿って延びる第2回転軸部材58の先端部に固設されている。第2回転軸部材58は、第4アーム34内に設けられた円筒形状の支持部材56,57によって回転自在に軸支されている。従動ベベルギヤ54の噛合面54aには、駆動ベベルギヤ52の噛合面52aに形成された歯よりも多くの歯が形成されている。
【0037】
次に、第3アーム33に対して第4アーム34を屈伸させる際のロボットの動作態様について図4及び図5を参照して説明する。第3アーム33に対して第4アーム34を屈伸させる際には、コントローラー12によって屈伸機構40のモーター34Mとねじり機構50のモーター35Mとの双方が駆動される。
【0038】
ちなみに、モーター35Mが駆動されることなく、モーター34Mのみが駆動されると、第3アーム33に対して第4アーム34が屈伸する一方、駆動ベベルギヤ52及び中間ベベルギヤ53が回転しないことになる。その結果、従動ベベルギヤ54が、その噛合面54aに中間ベベルギヤ53からの反力を受けて、中間ベベルギヤ53の噛合面53a上で第5回転軸線J5を中心に回転しながら移動することになる。そして、第4アーム34が屈伸することにともない、第5アーム35までもが第5回転軸線J5を中心に回転してしまうことになる。
【0039】
そこで、上述したように、第4アーム34が屈伸動作を行う際には、屈伸機構40のモーター34Mとともに、ねじり機構50のモーター35Mが駆動される。そして、第4回転軸線J4を中心として第4アーム34が回転したとしても、中間ベベルギヤ53における従動ベベルギヤ54の噛合位置が維持されるように、屈伸機構40のモーター34Mの駆動量に応じた駆動量でねじり機構50のモーター35Mが駆動される。
【0040】
例えば、図4に示されるように、第4回転軸線J4を中心にして第4アーム34が矢印61の方向に回転し、第3アーム33に対して第4アーム34が伸腕状態になる際には、屈伸機構40のモーター34Mの駆動量に応じた駆動量で、出力軸51がZ1方向に回転するようにねじり機構50のモーター35Mが駆動される。これにより、中間ベベルギヤ53がX1方向に回転することから、従動ベベルギヤ54と中間ベベルギヤ53との噛合位置が維持されたまま、従動ベベルギヤ54が第4回転軸線J4を中心に矢印61の方向へ回転する。
【0041】
また、例えば、図5に示されるように、第4回転軸線J4を中心にして第4アーム34が矢印62の方向に回転し、第3アーム33に対して第4アーム34が屈曲状態になる際には、屈伸機構40のモーター34Mの駆動量に応じた駆動量で、出力軸51がZ2方向に回転するようにねじり機構50のモーター35Mが駆動される。これにより、中間ベベルギヤ53がX2方向に回転することから、従動ベベルギヤ54と中間ベベルギヤ53との噛合位置が維持されたまま、従動ベベルギヤ54が第4回転軸線J4を中心に矢印62の方向へ回転する。
【0042】
なお、第3アーム33に対して第4アーム34が屈伸しつつ、第4アーム34に対して第5アームが所定のねじれ角でねじられる際には、屈伸機構40のモーター34Mの駆動量に応じた駆動量と上記ねじれ角に応じた駆動量でねじり機構50のモーター35Mが駆動される。
【0043】
こうしたモーター34M,35Mの駆動態様は、例えば、以下のような構成により実現される。すなわち、第4回転軸線J4を中心として第4アーム34が回転する際に従動ベベルギヤ54と中間ベベルギヤ53との噛合位置が維持されるように、モーター34Mの駆動量に対応付けられたねじり機構50のモーター35Mの駆動量が示されたデータをコントローラー12に記憶させておく。そして、屈伸機構40のモーター34Mを駆動する際には、モーター34Mの駆動量と上記データとに基づいてモーター35Mの駆動量を選択し、それらの駆動量を示す信号を対応するモーターに出力することにより実現される。
【0044】
次に、第4アーム34に対して第5アーム35をねじる際のロボットの動作態様について図6を用いて説明する。第4アーム34に対して第5アーム35をねじる際には、ねじり機構50のモーター35Mのみが駆動される。
【0045】
図6に示されるように、ねじり機構50のモーター35Mのみを駆動して出力軸51をZ1方向に回転させると、駆動ベベルギヤ52に噛合する中間ベベルギヤ53はX1方向に回転する。そして、この中間ベベルギヤ53のX1方向への回転によって、該中間ベベルギヤ53に噛合する従動ベベルギヤ54はY1方向に回転する。これにより第5アーム35は、第4アーム34に対して第5回転軸線J5を中心にY1方向に回転することになる。
【0046】
一方、出力軸51をZ2方向に回転させると、駆動ベベルギヤ52に噛合する中間ベベルギヤ53はX2方向に回転する。そして、この中間ベベルギヤ53のX2方向への回転によって、該中間ベベルギヤ53に噛合する従動ベベルギヤ54はY2方向に回転する。これにより第5アーム35は、第4アーム34に対して第5回転軸線J5を中心にY2方向に回転することになる。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態に係るロボットによれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)上記実施形態のロボットによれば、第3アーム33に対して第4アーム34が屈伸動作を行うためのモーター34Mが第3アームに配設されている。また、第4アーム34に対して第5アーム35がねじり動作を行うためのモーター35Mが第3アーム33に配設されている。これにより、第4及び第5アーム34,35の軽量化を図ることができることから、多関節アーム30に生じる慣性力を小さくすることができる。
【0048】
(2)上記実施形態によれば、ねじり機構50において中間ベベルギヤ53に対して駆動ベベルギヤ52及び従動ベベルギヤ54が常に噛合しているとともに、屈伸機構40とねじり機構50との協働によって第3アーム33に対する第4アーム34の屈伸が実現される。これにより、第3アーム33に対して第4アーム34を屈伸させる際に、第4アーム34に対して第5アーム35がねじれてしまうことを抑えることができる。
【0049】
(3)上記実施形態の第3アーム33には、モーター34Mが当該第3アーム33の基端部側に位置するように、モーター34Mとモーター35Mとが第3アーム33の延出方向に並んで配置されている。これにより、これらモーター34M,35Mによって、第3アーム33がその延出方向に直交する方向において大型化してしまうことを抑えることができる。
【0050】
(4)上記実施形態によれば、中間ベベルギヤ53の歯数が駆動ベベルギヤ52の歯数よりも多いことから、駆動ベベルギヤ52の回転によって回転する中間ベベルギヤ53の回転角度に関する精度を高めることができる。その結果、第4アーム34を屈伸させる際に第4回転軸線J4を中心とした中間ベベルギヤ53の回転角度に関する精度を高めることができることから、第3アーム33に対して第4アーム34を屈伸させる際に第5アーム35がねじれてしまうことをさらに抑えることができる。
【0051】
(5)上記実施形態の屈伸機構40においては、モーター34Mの駆動力が駆動プーリー42、タイミングベルト44,従動プーリー45を介して、第4アーム34が固設された第1回転軸部材43へと伝達される。これにより、第3アーム33内におけるモーター34Mの配置に関する自由度が拡張されることから、多関節アーム30に生じる慣性力を低減するうえで、モーター34Mの配置に関する自由度を拡張することができる。
【0052】
なお、上記実施の形態は、以下のように適宜変更して実施することも可能である。
・上記実施形態のロボットは、屈伸機構40及びねじり機構50を備えた多関節アーム30を1つ有している。これに限らず、ロボットは、例えば図7に示されるように、第2支持部材16に多関節アーム30と同様の構成の多関節アーム60をさらに備えた双腕ロボットであってもよい。また多関節アーム30と同様の構成の多関節アームを3つ以上有したロボットであってもよい。こうした複数の多関節アームを有するロボットであっても、各多関節アームに対して動作時にかかる慣性力が小さくなっていることから、複数の多関節アームを用いた協調動作を行ったとしてもロボットに生じる振動が抑えられる。
【0053】
また、上記双腕ロボットにおいては、図7に示されるように、各多関節アームにおける第1アームの第1回転軸線J1を同一線上に配置している。これにより、例えば、多関節アーム30の第1アーム31を前方へ回転させるとともに多関節アーム60の第1アームを後方へ回転させることによって、腰関節と同等の機能を具現化することができる。また例えば、多関節アーム30の第1アーム31のみを前方へ回転させること、多関節アーム30,60の第1アームをともに前方あるいは後方へ回転させることも可能である。その結果、腰関節を有するロボットに比べて、他方の多関節アームの可動範囲が変更されることを抑えつつ一方の多関節アームの可動範囲を拡張することができるとともに、2つの多関節アームによる協調動作が可能な範囲を拡張することもできる。
【0054】
・上記実施形態において、中間ベベルギヤ53は、その歯数が駆動ベベルギヤ52の歯数よりも少なくてもよいし同じ歯数であってもよい。
・上記実施形態のモーター34Mとモーター35Mは、モーター34Mが第3アーム33の基端部側に位置するように、該第3アーム33の延出方向に並んで配置されている。これを変更して、例えば第3アーム33の延出方向に直交する方向にモーター34Mとモーター35Mとを並んで配置してもよい。
【0055】
・上記実施形態においては、中間ベベルギヤ53に対して駆動ベベルギヤ52及び従動ベベルギヤ54が常に噛合している。これに限らず、次のような構成にすることによって、これら各ベベルギヤ52,53,54が選択的に噛合されるようにしてもよい。
【0056】
すなわち、例えば、駆動ベベルギヤ52及び従動ベベルギヤ54と噛合する噛合位置と噛合しない非噛合位置との間で中間ベベルギヤ53を第1回転軸部材43に移動可能に軸支するとともに、該中間ベベルギヤ53を移動させる移動装置を設ける。そして、その移動装置を用いて、第4アーム34の屈伸動作の際には中間ベベルギヤ53を非噛合位置に配置し、第5アーム35のねじり動作の際には中間ベベルギヤ53を噛合位置に配置することにより実現可能である。こうした構成によれば、ねじり機構50と屈伸機構40とを協働させることなく第4アーム34の屈伸動作を実行することができる。
【0057】
・上記実施形態では、第1及び第2アーム31,32を介してベース部14に連結された第3アーム33をアーム保持体としている。これに限らず、例えば、設置面に固設されたベース部に腰関節を介して連結された胴体に多関節アームが連結されている態様のロボットであれば、胴体をアーム保持体としてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、動力伝達部材をタイミングベルト44としたが、動力伝達部材は、駆動プーリー42と従動プーリー45との間で動力が伝達可能であればよく、例えば金属製のワイヤなどであってもよい。
【0059】
・ロボットが有する多関節アームは、屈伸機構40及びねじり機構50が設けられている多関節アームであればよく、その軸数は7軸に限られるものではなく、5軸以下であってもよいし、8軸以上であってもよい。
【0060】
・上記実施形態では、駆動回転体、中間回転体、従動回転体をベベルギヤとしたが、これに限らず、例えば、駆動回転体及び従動回転体をピニオンギヤ、中間回転体をクラウンギヤとする組み合わせでもよい。また、これら回転体における駆動力の伝達もギヤの噛合だけに限らず、例えば面接触にともなう摩擦力などであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
J1,J2,J3,J4,J5,J6,J7…第1,第2,第3,第4,第5,第6,第7回転軸線、11…ロボット本体、12…コントローラー、13…本体、13a…貫通孔、14…ベース部、15…第1支持部材、16…第2支持部材、30…多関節アーム、31…第1アーム、31a…基端部、31b…先端部、31M…モーター、32…第2アーム、32M…モーター、33…第3アーム、34…第4アーム、34M…モーター、35…第5アーム、35M…モーター、36…第6アーム、37…ハンド部、38…配管部材、40…屈伸機構、41…出力軸、42…駆動プーリー、43…第1回転軸部材、44…タイミングベルト、45…従動プーリー、50…ねじり機構、51…出力軸、52…駆動ベベルギヤ、52a…噛合面、53…中間ベベルギヤ、53a…噛合面、54…従動ベベルギヤ、54a…噛合面、56,57…支持部材、58…第2回転軸部材、60…多関節アーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム保持体と、
第1回転軸部材を介して前記アーム保持体に連結された屈伸アームと、
第2回転軸部材を介して前記屈伸アームに連結されたねじりアームと、
前記アーム保持体に設けられ、前記第1回転軸部材を中心に前記屈伸アームを回転することで前記アーム保持体に対し前記屈伸アームを屈伸させる第1駆動機構と、
前記第2回転軸部材を中心に前記ねじりアームを回転することで前記屈伸アームに対して前記ねじりアームをねじる第2駆動機構と、を備えたロボットであって、
前記第2回転軸部材は、
前記ねじりアームに固定されるとともに、前記屈伸アームに対し回転自在に貫挿され、
前記第2駆動機構は、
前記アーム保持体内に配置された第2モーターの出力軸に固定され、前記アーム保持体内に配置された駆動回転体と、
前記第1回転軸部材の軸周りに回転自在に軸着され、前記駆動回転体の回転に従動する中間回転体と、
前記第2回転軸部材に固定され、前記アーム保持体内にて前記中間回転体の回転に従動する従動回転体とを有する
ことを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記第1駆動機構は、
前記アーム保持体内に配置された第1モーターと、
該第1モーターの出力を前記屈伸アームの回転に変換する変換機構とを有し、
前記第1モーターの駆動と前記第2モーターの駆動とを制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第1モーターを駆動して前記屈伸アームを屈伸する際に、前記屈伸アームに対する前記ねじりアームのねじりが維持されるように、前記第2モーターの駆動を通じて、前記駆動回転体により前記中間回転体を回転させる
請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記第1駆動機構の前記変換機構は、
前記第1モーターの出力軸に固定された駆動プーリーと、
前記第1回転軸部材に固定された従動プーリーと、
前記駆動プーリーと前記従動プーリーとの間に掛け渡された動力伝達部材と
を備えている
請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記アーム保持体は、
前記屈伸アームが先端部に連結された一方向に延びる基端アームであり、
前記第1モーターと前記第2モーターは、
前記第1モーターが前記基端アームの基端部側に位置するように前記基端アームの延出方向に並んで配置されている
請求項2または3に記載のロボット。
【請求項5】
複数の多関節アームを備え、
前記複数の多関節アームの各々が、前記基端アーム、前記屈伸アーム、及び前記ねじりアームを有する
請求項4に記載のロボット。
【請求項6】
前記駆動回転体、前記中間回転体、前記従動回転体の各々が歯車であり、前記中間回転体の歯数が前記駆動回転体の歯数よりも多い
請求項1〜5のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項7】
ロボットの基体に連結される肩部と、前記肩部に連結される上腕部と、前記上腕部に連結される前腕部と、前記前腕部に連結される手首部とで構成される多関節アームを備え、
前記前腕部が、
前記上腕部を構成する上腕アームに対して回転可能に連結された第1前腕アームと、前記第1前腕アームに対して回転可能に連結された第2前腕アームとを有しており、
前記アーム保持体が前記上腕アーム、前記屈伸アームが前記第1前腕アーム、前記ねじりアームが前記第2前腕アームである
請求項1〜6のいずれか一項に記載のロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86198(P2013−86198A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227188(P2011−227188)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】