説明

ロータリーキルンの耐火れんが内張り構造

【目的】 ロータリーキルンの操業中に発生する内張り耐火れんがの緩みによる抜け落ちを効果的に防止することの可能なロータリーキルンの耐火れんが内張り構造を提供する。
【構成】 ロータリキルンの内側に内張りされた耐火れんが積み構造において、耐火れんがのテーパー面の一面に1箇所以上の凹部を設けたロータリーキルンの内張り耐火れんがと、該内張り耐火れんがの前記凹部に対応し、嵌め込み可能な凸部を設けた目地用鉄板とを、互いに隣接して耐火れんがの凹部と目地用鉄板の凸部とが嵌合するように、ロータリーキルンの内側にれんが積みされたことを特徴とするロータリーキルンの耐火れんが内張り構造。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、ロータリーキルンの耐火れんがの抜け落ち防止効果を持つロータリーキルンの耐火れんが内張り構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ロータリーキルンはセメントや石灰などの製造に使用されており、従来の一般的なロータリーキルン耐火れんが積み構造は図6に示すように、テーパーのついた耐火れんが2をロータリーキルン1の鉄皮3の内側に積む構造である。
前記ロータリーキルン1に内張りされた耐火れんが2は、ロータリーキルン1の回転によるその鉄皮3の撓み、捩じれおよびオーバリティなどにより、各種の機械的応力を受け損傷する。
【0003】
また、ロータリーキルン1の耐火れんが2の寿命は、れんが全体の残存厚さのみで決まるものではなく、局部な耐火れんが2の脱落により、れんが寿命が決まることも多く、そのためロータリーキルン1の操業を停止して耐火れんが2の修理をせざるを得ないという問題もあった。
特に、大径のロータリーキルン1においては、耐火れんが2は大きな機械的応力を受けて損傷が大きく、その抜け落ちが多いので、抜け落ち防止対策について種々改善が行われてきた。
【0004】
例えば、耐火れんが2の抜け落ちを防止するために、図7のように耐火れんが2の片側のテーパー面に目地用鉄板4を貼り付けたものを大径のロータリーキルンにれんが積みをし、耐火れんが2と目地用鉄板4との化学反応を利用して、各々の耐火れんが2を目地用鉄板4を介して強固な構造とする方法や、図8に示すように耐火れんが2の形状を扇形にして扇形耐火れんが5とし、その稼働面と鉄皮側の面との寸法差を大きくする、すなわち扇形耐火れんが5のテーパー角度αを大きくすることにより、扇形耐火れんが5の抜け落ちを防止する方法が行われている。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、大径のロータリーキルン1においては、鉄皮の撓み、捩じれおよびオーバリティなどが大きく、耐火れんが2に目地用鉄板4が反応溶着する前に、耐火れんが2と目地用鉄板4が肌分かれして大径のロータリーキルン1の回転中に耐火れんが2が弛み抜け落ちる現象が生じた。
【0006】
次に、扇形耐火れんが5の場合、大径のロータリーキルン1の円周方向の扇形耐火れんが寸法が大きくなるので、大径のロータリーキルン1の回転による応力により、扇形耐火れんが5の中央部などにクラックが入り、そのため扇形耐火れんが5が脱落することが多々生じた。また、大径のロータリーキルン1の円周方向の扇形耐火れんが5の目地数が少なくなることにより、高温部においては扇形耐火れんが5内に発生する熱膨張応力を目地によって吸収することが不充分なので扇形耐火れんが5内に亀裂を生じ、剥落するという問題があった。
【0007】
本考案は、前記問題点を解決したロータリーキルンの耐火れんが内張り構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本考案は、ロータリーキルンに内張りされた耐火れんが積み構造において、耐火れんがのテーパー面の一面に1箇所以上の凹部を設けたロータリーキルンの耐火れんがと、該耐火れんがの凹部に対応する位置に嵌め込み可能な凸部を設けた目地用鉄板とを、互いに隣接して耐火れんがの凹部と目地用鉄板の凸部とが嵌合するようにして、ロータリーキルンの内側にれんが積みされたことを特徴とするロータリーキルンの耐火れんが内張り構造である。
【0009】
【作 用】
本考案によれば、耐火れんがのテーパー面の一面に凹部を設けたロータリーキルンの耐火れんがと、該耐火れんがの凹部に嵌め込み可能な凸部を設けた目地用鉄板とを、互いに隣接して耐火れんがの凹部と目地用鉄板の凸部とが嵌合するように、ロータリーキルンの内側にれんが積みしたので、れんが積みされた耐火れんがが一体構造となり、耐火れんがの部分的脱落を防止することが可能となる。
【0010】
【実施例】
以下に本考案の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本考案の1実施例を示す部分断面図である。
予め凹部を設けた耐火れんが6の凹部付きテーパー面と反対のテーパー面に凸部を設けた目地用鉄板7を貼りつけ、それを大径のロータリーキルン1の内側に積むか、または、前記凹部を設けた耐火れんが6を積み、そのテーパー面上に凸部を設けた目地用鉄板7を嵌め込みながら、前記耐火れんが6と前記目地用鉄板7とを交互に積んでれんが積み作業を行い、本考案の耐火れんが内張り構造を完成させる。ここで、最後の耐火れんがのせめは、前記耐火れんが6を加工して行う。
【0011】
図2、図3、図4および図5は凹部を設けた耐火れんが6に凸部を設けた目地用鉄板7を貼りつけた状態を示す正面図(a) およびそのA−A矢視断面図(b) である。
これらの凹凸部の形状は角形および丸形など嵌合し易い形とし、凹部の位置はれんがの長さlの半分以下で鉄皮側に1箇所以上、好ましくは1〜2箇所設けるのが望ましい。前記耐火れんが6の材質は、ドロマイト質、マグクロ質およびスピネル質などであり、使用する鉄板の材質は普通鋼で、その厚みは1〜3mmが好ましく、その凸部はプレス成形、溶接またはこれらの組み合わせで5〜20mm厚みに成形される。
【0012】
図2〜図5に示す前記目地用鉄板7を貼りつけた前記耐火れんが6を内張りした構造の大径のロータリーキルン1を操業した結果、その回転による鉄皮の撓み、ねじれおよびオーバリティなどから発生する耐火れんがの緩みによる脱落が無くなった。
また、前記耐火れんが6が損耗してその厚みが薄くなっても、前記耐火れんが6と目地用鉄板7とが凹凸部により互いに嵌合しているため、前記耐火れんが6の抜け落ちが防止され、従ってその抜け落ちによるロータリーキルンの操業停止が無くなり、操業時間を一段と延長することが可能となる。
【0013】
そして大径のロータリーキルン1の耐火れんが2のテーパー角度αが小さく1.2 度以下の場合、前記耐火れんが6の使用によりさらに効果的に抜け落ちを防止することが可能となる。
一方、凸部を鉄板で形成することにより、前記耐火れんが6の製造が容易になり、その製造生産性もよく、歩留りも向上できる。
【0014】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案のロータリーキルンの耐火れんが内張り構造によれば、ロータリーキルンの操業中に発生する耐火れんがの緩みによる抜け落ちおよび損耗による抜け落ちを効果的に防止することが可能となり、従って耐火れんがの寿命も向上し、前記耐火れんがの脱落によるロータリーキルンの操業停止もなくなり操業も延長され、その生産性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の1実施例を示す部分断面図である。
【図2】(a) 凹部を設けた耐火れんが6の形状およびそれに貼りつけた凸部を設けた目地用鉄板7の形状の1例を示す正面図である。
(b) (a) 図のA−A矢視断面図である。
【図3】(a) 凹部を設けた耐火れんが6の形状およびそれに貼りつけた凸部を設けた目地用鉄板7の形状の1例を示す正面図である。
(b) (a) 図のA−A矢視断面図である。
【図4】(a) 凹部を設けた耐火れんが6形状およびそれに貼りつけた凸部を設けた目地用鉄板7の形状の1例を示す正面図である。
(b) (a) 図のA−A矢視断面図である。
【図5】(a) 凹部を設けた耐火れんが6の形状およびそれに貼りつけた凸部を設けた目地用鉄板7の形状の1例を示す正面図である。
(b) (a) 図のA−A矢視断面図である。
【図6】従来の一般的なロータリーキルン耐火れんが積み構造を示す部分断面図である。
【図7】(a) 耐火れんが2に目地用鉄板4を貼りつけたロータリーキルン耐火れんがを示す正面図である。
(b) (a) 図の側面図である。
【図8】(a) 扇形のロータリーキルン耐火れんが5を示す正面図である。
(b) (a) 図の側面図である。
【符号の説明】
1 ロータリーキルン
2 耐火れんが
3 鉄皮
4 目地用鉄板
5 扇形耐火れんが
6 凹部を設けた耐火れんが
6a〜6c凹部を設けた耐火れんが
7 凸部を設けた目地用鉄板
7a〜c凸部を設けた目地用鉄板
8 目地用鉄板の凸部
8a〜c目地用鉄板の凸部
9 耐火れんがの凹部
9a〜c耐火れんがの凹部

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ロータリーキルンに内張りされた耐火れんが積み構造において、耐火れんがのテーパー面の一面に1箇所以上の凹部を設けたロータリーキルンの耐火れんがと、該耐火れんがの凹部に対応する位置に嵌め込み可能な凸部を設けた目地用鉄板とを、互いに隣接して耐火れんがの凹部と目地用鉄板の凸部とが嵌合するようにして、ロータリーキルンの内側にれんが積みされたことを特徴とするロータリーキルンの耐火れんが内張り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【登録番号】第3001557号
【登録日】平成6年(1994)6月22日
【発行日】平成6年(1994)8月30日
【考案の名称】ロータリーキルンの耐火れんが内張り構造
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−1384
【出願日】平成6年(1994)3月1日
【出願人】(000199821)川崎炉材株式会社 (42)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)