説明

ロータ及びモータ

【課題】部品点数を抑えることができるロータを提供する。
【解決手段】第1及び第2爪状磁極21b,22bの背面に配置されるとともに第1及び第2の磁極と同極性が径方向外側となるように磁化された補助磁石としての第1及び第2背面補助磁石24,25を備える。第1及び第2背面補助磁石24,25は、第1及び第2コアベース21a,22aの少なくとも一方の軸方向端面としての軸方向外側面21gよりも突出させるように配置される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ及びモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータに使用されるロータとしては、周方向に複数の爪状磁極をそれぞれ有して組み合わされるロータコアを備え、それらの間に界磁磁石を配置して各爪状磁極を交互に異なる磁極に機能させる所謂永久磁石界磁のランデル型構造のロータがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−43749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなロータの回転位置検出を行う場合、ロータに別途センサ用磁石を配置するため、部品点数の増加の虞がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、部品点数を抑えることができるロータ及びモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、略円盤状の第1コアベースの外周部に、等間隔に複数の第1爪状磁極が径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成された第1ロータコアと、略円盤状の第2コアベースの外周部に、等間隔に複数の第2爪状磁極が径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成され、前記各第2爪状磁極がそれぞれ対応する前記第1ロータコアの各第1爪状磁極間に配置された第2ロータコアと、前記第1コアベースと第2コアベースとの軸方向の間に配置され、前記軸方向に磁化されることで、前記第1爪状磁極を第1の磁極として機能させ、前記第2爪状磁極を第2の磁極として機能させる界磁磁石と、を備えたロータであって、前記第1爪状磁極と前記第2爪状磁極との周方向の間に配置されるとともに前記第1及び第2爪状磁極と同じ極極となるように磁化された補助磁石と、前記第1及び第2爪状磁極の背面に配置されるとともに前記第1及び第2の磁極と同極性が径方向外側となるように磁化された補助磁石の少なくとも一方を1つ以上備え、前記補助磁石は、前記第1及び第2コアベースの少なくとも一方の軸方向端面よりも突出させるように配置されることをその要旨とする。
【0006】
この発明では、第1爪状磁極と第2爪状磁極との周方向の間に配置されるとともに第1及び第2爪状磁極と同じ極極となるように磁化された補助磁石と、第1及び第2爪状磁極の背面に配置されるとともに第1及び第2の磁極と同極性が径方向外側となるように磁化された補助磁石の少なくとも一方を1つ以上備える。補助磁石は、第1及び第2コアベースの少なくとも一方の軸方向端面よりも突出させるように配置されるため、例えばこの突出される補助磁石と軸方向において対向する検出センサを配置することで、ロータに別途センサ用磁石を設けることなく、ロータの回転位置検出を行うことが可能となる。これにより、部品点数を抑えることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記補助磁石は、前記第1爪状磁極と前記第2爪状磁極との周方向の間に配置され、前記第1及び第2爪状磁極と同じ極極となるように磁化される極間磁石であることをその要旨とする。
【0008】
この発明では、第1爪状磁極と第2爪状磁極との周方向の間に配置され、第1及び第2爪状磁極と同じ極極となるように磁化される極間磁石にてセンサ用磁石を兼用することができる。また、極間磁石を設けることで、各爪状磁極間で発生しうる漏れ磁束を低減させてモータ出力の向上を図ることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記補助磁石は、前記第1及び第2爪状磁極の背面に配置されるとともに前記第1及び第2の磁極と同極性が径方向外側となるように磁化された背面磁石であることをその要旨とする。
【0010】
この発明では、第1及び第2爪状磁極の背面に配置されるとともに前記第1及び第2の磁極と同極性が径方向外側となるように磁化された背面磁石にてセンサ用磁石を兼用することができる。また、背面磁石を設けることで、第1及び第2爪状磁極のそれぞれと界磁磁石との間で発生しうる漏れ磁束を低減させて、モータ出力の向上を図ることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のロータに備えられる前記補助磁石と対向する検出センサとを備えたことをその要旨とする。
この発明では、部品点数を抑えることができるモータを提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
従って、上記記載の発明によれば、部品点数を抑えることができるロータ及びモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態におけるモータの断面図。
【図2】同上におけるロータの斜視図。
【図3】同上におけるロータの断面図。
【図4】別例におけるロータの斜視図。
【図5】別例におけるロータの斜視図。
【図6】別例におけるロータの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、モータ1のモータケース2は、有底筒状に形成された筒状ハウジング3と、該筒状ハウジング3のフロント側(図1中、左側)の開口部を閉塞するフロントエンドプレート4とを有している。また、筒状ハウジング3のリア側(図1中、右側)の端部には、回路基板等の電源回路を収容した回路収容ボックス5が取着されている。
【0015】
筒状ハウジング3の内周面にはステータ6が固定されている。ステータ6は、径方向内側に延びる複数のティースを有する電機子コア7と、電機子コア7のティースに巻装されたセグメントコンダクタ(SC)巻線8とを有する。モータ1のロータ11は回転軸12を有し、ステータ6の内側に配置されている。回転軸12は非磁性体の金属シャフトであって、筒状ハウジング3の底部3a及びフロントエンドプレート4に支持された軸受13,14により回転可能に支持されている。
【0016】
ロータ11は、図2及び図3に示すように、第1及び第2ロータコア21,22と、界磁磁石としての環状磁石23と、第1及び第2背面補助磁石24,25と、第1及び第2極間磁石26,27とを備える。尚、図2及び図3中の実線で示す矢印は各磁石23,24,25,26,27の磁化方向(S極からN極向き)を示している。
【0017】
図2に示すように、第1ロータコア21は、略円盤状の第1コアベース21aの外周部に、等間隔に複数(本実施形態では5つ)の第1爪状磁極21bが径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成されている。第1爪状磁極21bの周方向端面21c,21dは径方向に延びる(軸方向から見て径方向に対して傾斜していない)平坦面とされ、第1爪状磁極21bは軸直交方向断面が扇形状とされている。各第1爪状磁極21bの周方向の角度、即ち前記周方向端面21c,21d間の角度は、周方向に隣り合う第1爪状磁極21b同士の隙間の角度より小さく設定されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、第2ロータコア22は、第1ロータコア21と同形状であって、略円盤状の第2コアベース22aの外周部に、等間隔に複数の第2爪状磁極22bが径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成されている。第2爪状磁極22bの周方向端面22c,22dは径方向に延びる平坦面とされ、第2爪状磁極22bは軸直交方向断面が扇形状とされている。各第2爪状磁極22bの周方向の角度、即ち前記周方向端面22c,22d間の角度は、周方向に隣り合う第2爪状磁極22b同士の隙間の角度より小さく設定されている。そして、第2ロータコア22は、前記各第2爪状磁極22bがそれぞれ対応する各第1爪状磁極21b間に配置されるようにして、第1コアベース21aと第2コアベース22aとの軸方向の間に環状磁石23(図3参照)が配置(挟持)されるようにして第1ロータコア21に対して組み付けられる。このとき、第1爪状磁極21bの一方の周方向端面21cと第2爪状磁極22bの他方の周方向端面22dとが軸方向に沿って平行をなすように形成されるため、各端面21c,22d間の間隙が軸方向に沿って略直線状をなすように形成されることとなる。また、第1爪状磁極21bの他方の周方向端面21dと第2爪状磁極22bの一方の周方向端面22cとが軸方向に沿って平行をなすように形成されるため、各端面21d,22c間の間隙が軸方向に沿って略直線状をなすように形成されることとなる。
【0019】
図3に示すように、環状磁石23は、その外径が第1及び第2コアベース21a,22aの外径と同じに設定され、第1爪状磁極21bを第1の磁極(本実施形態ではN極)として機能させ、第2爪状磁極22bを第2の磁極(本実施形態ではS極)として機能させるように、軸方向に磁化されている。
【0020】
各第1爪状磁極21bの背面21e(径方向内側の面)と第2コアベース22aの外周面22fとの間には、第1背面補助磁石24が配置されている。また、各第2爪状磁極22bの背面22eには、第1爪状磁極21bと同様に、第2背面補助磁石25が配置されている。第1背面補助磁石24は、その軸直交方向断面が扇形状とされ、第1爪状磁極21bの背面21eに当接する側と第1コアベース21aの外周面21fに当接する側とがN極となるように磁化されている。そして、第2背面補助磁石25は、第2コアベース22aの外周面22fに当接する側と第2爪状磁極22bの背面22eに当接する側とが同第2コアベース22aと同極のS極となるように磁化されている。
【0021】
各第1及び第2背面補助磁石24,25は、環状磁石23が配置されるロータ11の軸方向位置で互いに軸方向に重なるように、言い換えると、ロータ11の両面から環状磁石23が配置される軸方向位置に達するまで配置されるように軸方向の長さが設定されている。
【0022】
また、第2背面補助磁石25は、図3に示すように、第1コアベース21aの軸方向外側面21gと第2爪状磁極22bの先端面22hよりも軸方向に突出するように構成される。
【0023】
また、図2に示すように、第1爪状磁極21bと第2爪状磁極22bとの周方向の間には、第1及び第2極間磁石26,27が配置されている。より詳しくは、本実施形態の第1極間磁石26は、第1爪状磁極21bの一方の周方向端面21dと、第2爪状磁極22bの他方の周方向端面22eとの間に配置されている。そして、もう一方の第2極間磁石26は、第1爪状磁極21bの他方の周方向端面21eと、第2爪状磁極22bの一方の周方向端面22dとの間に配置されている。各第1及び第2極間磁石26,27は、第1及び第2爪状磁極21b,22bとそれぞれ同極性が対向するように(第1爪状磁極21b側がN極で、第2爪状磁極22b側がS極となるように)周方向に磁化されている。また、第1及び第2極間磁石26,27の径方向内側である回転軸12側には、漏れ磁束防止の空隙Kが形成される。
【0024】
ここで、本実施形態のモータ1には、前記ロータ11の回転位置を検出するための検出センサSを備えている。この検出センサSは、図1及び図3に示す支持部材Siに支持されるものであり、前記ロータ11を回転させた際に、第2背面補助磁石25が通る軌道上と軸方向に対向するように配置されている。そして、検出センサSは、前記第2背面補助磁石25の磁気を検出してロータ11の回転位置を検出するようになっている。また、この検出センサSは、図示しない制御回路と電気的に接続され、前記ロータ11の回転位置情報を出力する。このため、制御回路はその回転位置情報に基づいてロータ11及びモータ1の回転制御が可能となっている。
【0025】
上記のように構成されたモータ1は、回路収容ボックス5内の電源回路を介してセグメントコンダクタ(SC)巻線8に駆動電流が供給されると、ステータ6でロータ11を回転させるための磁界が発生され、ロータ11が回転駆動される。
【0026】
次に、上記のように構成されたモータ1の作用について説明する。
本実施形態のモータ1のロータ11は、第2背面補助磁石25が第1コアベース21aの軸方向外側面21gと第2爪状磁極22bの先端面22hよりも軸方向に突出するように構成される。そして、第2背面補助磁石25の回転軌道上において軸方向に対向する検出センサSが配置される。このため、検出センサSによって軸方向に突出される第2背面補助磁石25をセンサ用マグネットとして検出することが可能となり、ロータ11の回転位置が検出される。
【0027】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)第1及び第2爪状磁極21b,22bの背面に配置されるとともに第1及び第2の磁極と同極性が径方向外側となるように磁化された補助磁石としての第1及び第2背面補助磁石24,25を備える。第2背面補助磁石25は、第1コアベース21aの軸方向端面としての軸方向外側面21gよりも突出させるように配置されるため、例えばこの突出される第2背面補助磁石25と軸方向において対向する検出センサSを配置することで、ロータ11に別途センサ用磁石を設けることなく、検出センサSによりロータ11の回転位置検出を行うことが可能となる。これにより、部品点数を抑えることができる。
【0028】
(2)また、第1及び第2極間磁石26,27を設けることで、各爪状磁極21b,22b間で発生しうる漏れ磁束を低減させてモータ出力の向上を図ることができる。
(3)また、第1及び第2背面補助磁石24,25を設けることで、第1及び第2爪状磁極のそれぞれと界磁磁石との間で発生しうる漏れ磁束を低減させて、モータ出力の向上を図ることができる。
【0029】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、第2背面補助磁石25を第1コアベース21aの軸方向外側面21g(ロータコア21の端面)よりも軸方向に突出するように構成したが、これに限らない。例えば第1背面補助磁石24を第2コアベース22aの軸方向外側面22gよりも軸方向に突出するように構成してもよい。この場合、検出センサSは、ロータ11を回転させた際に第1背面補助磁石24の回転軌道上において軸方向に対向するように配置する。
【0030】
また、第1及び第2背面補助磁石24,25ではなく、図4に示すように第1及び第2極間磁石26,27を第1コアベース21aの軸方向外側面21g又は第2コアベース22aの軸方向外側面22gよりも突出するように構成してもよい。この場合、検出センサSは、ロータ11を回転させた際に第1及び第2極間磁石26,27の回転軌道上において軸方向に対向するように配置する。
【0031】
また、図5に示すように、第2背面補助磁石25に加えて、第1及び第2極間磁石26,27を第1コアベース21aの軸方向外側面21g又は第2コアベース22aの軸方向外側面22gよりも突出するように構成してもよい。
【0032】
また、第1及び第2背面補助磁石24,25ではなく、図6に示すように第1及び第2極間磁石26,27のいずれか一方を第1コアベース21aの軸方向外側面21g又は第2コアベース22aの軸方向外側面22gよりも突出するように構成してもよい。この場合、検出センサSは、ロータ11を回転させた際に第1及び第2極間磁石26,27の回転軌道上において軸方向に対向するように配置する。
【0033】
・上記実施形態では、第1及び第2ロータコア21,22間に界磁磁石として1つの環状磁石23を設けたが、これに限らない。例えば、複数に分割した永久磁石を回転軸12の周囲で対のロータコア21,22のコアベース21a,22aの軸方向間に配置する構成を採用してもよい。
【0034】
・上記実施形態では、特に言及していないが、第1及び第2ロータコア21,22と電機子コア7は、例えば磁性金属板材の積層や、磁性粉体の成形にて構成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…モータ、11…ロータ、21…第1ロータコア、21a…第1コアベース、21b…第1爪状磁極、21e,22e…背面、22…第2ロータコア、22a…第2コアベース、22b…第2爪状磁極、24…補助磁石としての第1背面補助磁石、25…補助磁石としての第2背面補助磁石、26…補助磁石としての第1極間磁石、27…補助磁石としての第2極間磁石、S…検出センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円盤状の第1コアベースの外周部に、等間隔に複数の第1爪状磁極が径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成された第1ロータコアと、
略円盤状の第2コアベースの外周部に、等間隔に複数の第2爪状磁極が径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成され、前記各第2爪状磁極がそれぞれ対応する前記第1ロータコアの各第1爪状磁極間に配置された第2ロータコアと、
前記第1コアベースと第2コアベースとの軸方向の間に配置され、前記軸方向に磁化されることで、前記第1爪状磁極を第1の磁極として機能させ、前記第2爪状磁極を第2の磁極として機能させる界磁磁石と、
を備えたロータであって、
前記第1爪状磁極と前記第2爪状磁極との周方向の間に配置されるとともに前記第1及び第2爪状磁極と同じ極極となるように磁化された補助磁石と、前記第1及び第2爪状磁極の背面に配置されるとともに前記第1及び第2の磁極と同極性が径方向外側となるように磁化された補助磁石の少なくとも一方を1つ以上備え、
前記補助磁石は、前記第1及び第2コアベースの少なくとも一方の軸方向端面よりも突出させるように配置されることを特徴とするロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータにおいて、
前記補助磁石は、前記第1爪状磁極と前記第2爪状磁極との周方向の間に配置され、前記第1及び第2爪状磁極と同じ極極となるように磁化される極間磁石であることを特徴とするロータ。
【請求項3】
請求項1に記載のロータにおいて、
前記補助磁石は、前記第1及び第2爪状磁極の背面に配置されるとともに前記第1及び第2の磁極と同極性が径方向外側となるように磁化された背面磁石であることを特徴とするロータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のロータに備えられる前記補助磁石と対向する検出センサとを備えたことを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−106404(P2013−106404A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247668(P2011−247668)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】